※この作品はR-18です。

狩りゲー世界転生輪   作:時守 暦

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肌がまだ痛い…カサブタが擦れて痛いんだと思ってたけど、ひょっとしてこれが神経の痛み?
とりあえず温めてみるか…。

ゼノバースも飽きてきた。
面白いっちゃ面白いんだけど、最後の方のパラレルクエストで折角倒した敵が復活、を繰り返されると萎える…。
ヴァルキュリアとかGジェネとか買おうかな…。

しかし、今月は出費がかさむなぁ。
医者代に加え、眼鏡が壊れて1万円。
コンロが壊れかけてるんで、新品購入するか迷ってます。

これはアレだろうか、FGOのジャックちゃんを見て、「無知なジャックちゃんに顔面騎乗で責められつつ、逆にprprしてド嵌りさせたい」とか妄想した天罰だろうか。
ごめんなさい私です。
…こういう妄想は、エロの為にストックしておきます…。


第206話

魔禍月

 

 

 新しい月になると同時に、マホロバの里を立つ。…いや、紅月の準備が済んでなくて、1日延長したんだけどね。

 見送りは西歌のお頭と久音さん、後は…まぁ、俺じゃなくて紅月の見送りが数人か。

 

 …あれだけ大暴れした俺を、何の蟠りも感じさせずに送り出してくれる主計のおっちゃんに頭が下がる。性別が女だったら、おかんと呼んでいたかもしれない。

 ちなみに、その主計のおっちゃんから、霊山に居るという娘さんに手紙を預かった。…主計のおっちゃんの子供か…。流石にちょっかいを出す気にならんな。いや、見た目の予想がどうのとか、主計のおっちゃんをお義父さんと呼びたくないとかじゃなくて。

 

 

 

 大暴れしてなきゃ、もう2~3人くらいは増えたかな。具体的には真鶴とか。

 

 博士は「世話をしてやったな。恩に着ろよ」の二言だけで、後ろ手でヒラヒラてを振るばかり。…世話になったな、じゃなくてしてやった、と言うのが博士らしい。

 博士預かりになっている元盗賊…焔は焔で、「おっそろしい奴らが居なくなって清々する」なんて言ってたが…一番ヤバいのはお前を預かってる博士だからな? マの系譜って事を差し引いても。精々コキ使われるがいい。まぁ、散々追い回したホロウと、最後に叩きのめして捕縛した紅月と、里の戦力をほぼ一人で潰した俺が居なくなって一安心、ってのは分からんでもないが。

 

 

 

 さて、気を取り直して、本日付けでマホロバから離れるメンバーを紹介しよう!

 まずは一人目、居ないと話にならない! だってこの日記描いてるの俺だもんね。 ズバリ俺!

 続いて二人目、真顔でジョークかマジか分からない発言をする、基本的に非常識なのに妙な所で常識的な銃使い、ホロウ!

 更に三人目、武者修行のつもりだが微妙に嫁入りと勘違いしているような気がする、紅月!

 

 

 

 

 そして四人目、何かしらんが何処からともなく「里の柱に括りつけとけ」言われているよーな気がする、何かっちゃあ神機を触ろうとする色んな意味で危険な男、清磨。

 

 

 

 …え、何? お前ついてくんの?

 

 

 

 いや、この際別についてくるのはいいけどさ。神機に触るなよ。俺の管理不行き届きのせいで死ぬとか重症とか、流石に御免被る。

 …『分かっている』じゃねーよ、同じ事言いつつ何度触ろうとしたと思ってんだ。

  

 

 なんか色々な意味で不安を掻き立てられるメンバーに、久音さんの「貴方のお陰で自分の道を見つけられました」と゛鬼゛の肝炒め弁当なる怪しい弁当を貰って出発。

 色々名残惜しかったが、まぁ何度も繰り返してりゃまた来る事もあるだろうさ。この里は、鬼の手の産地になる訳だからな…次回ループで生産が可能かはわからんが。

 

 

 

 

 

 さて、出発した訳だが、残念ながら馬とかは使えない。馬はこの世界では超が付く程貴重だからな。それを考えると、結構な数を保有していた百鬼隊とかはかなり特別な部隊だったんだな。

 鬼疾風で馬に近いスピードは出せるが、長旅だとスタミナが保たないし、先日発覚した欠点…鬼疾風中の安全な伝達…が改善されてない。

 

 そもそも清磨が鬼疾風出来ない。

 まぁ、ゆっくり行くしかない訳だ。

 

 別にいいけどなー。こりゃ、ウタカタに到着するのは思った以上に遅くなりそうだ。一か月も遅れてるんだからもういいじゃないか、と言われそうだが。

 実際、ここまで到着が遅れると、旅路の間にオオマガトキが再発しちまう、なんて事も考えられる。いつデスワープしてもおかしくないって事は覚えておくか。

 

 

 …この際だから、霊山にも少し滞在していくか? ウタカタとマホロバは、霊山を挟んで西と東…丁度反対側にある。最短ルートを通ろうとすれば、自然と霊山を通過する。

 以前に霊山にいた時は、結構居心地はよかったよな…。上から目線のモノノフも多かったが、そいつらも殆どは一本筋が通った連中だった。

 しかし、闇を感じさせる部分もある。あの時、一緒にウタカタに行った美柚と美麻……どっちが青でどっちが赤だったっけ……が言っていたように、情報が統制されていたり、先日の雷蔵さんが言っていたように禁軍がちゃんと稼働してないような節もある。

 まぁ、それがしっかりと機能しているのが、どれだけ貴重かって話でもあるが。

 

 

 ここまで遅れたらもうどれだけ時間が経っても同じって事で、霊山でも一か月…いやダメだ、あそこは暇だ。強力な結界がある為か、鬼が殆どわかない。狩りをしない生活なんて、あと200年くらいしないと俺には無理だ。…いや、200年もすれば新しい狩りの方法とか生み出されて…でもループしてるんだよな……と言うか200年程度じゃフロンティアを制する事なんぞできん。

 霊山に明確な用事がある訳でもないし、やっぱ素通りかな…。ま、何か要件でもできたら、暫く滞在するくらいならいっか。

 

 

 地図を片手に、森を進む。境界石があればそこを宿にして野宿。…いや、異界の中でもないんだから境界石の近くである必要はないんだが…まぁ、結界の中なら鬼も入ってこれないから、ゆっくり寝られるのは事実だが。

 意外だったのは、鬼疾風こそできないものの、清磨が旅慣れていた事だ。異界の中を彷徨い歩いていたのは伊達ではないらしい。……里の柱に括りつけとかねーと死ぬぞそのうち。

 

 逆に、危なっかしくて目が離せないのは紅月。ひ弱なんて事はない。むしろ体力的にはピンピンしていて、ホロウ以上なんじゃないかと思う事さえある。

 だが野宿が下手だ。根本的に不器用な人らしい。しかも、旅立つ前に久音さん辺りに妙な事でも吹き込まれたのか、食える物食えない物問わず、片っ端から鍋に叩き込みたがる。

 

 ホロウは……何と言うか、野宿が上手すぎて逆に下手に見える。やろうと思えば立ったまま寝るとか周囲を警戒しながら寝るとか、食べられる物が無くても限界まで活動可能とか、スペックでゴリ押ししているようだ。

 

 

 そんなデコボコ4人組で、適当に鬼を狩りつつ進んでいた訳だが、どのルートを通って霊山・ウタカタに向かうかは、紅月に任せている。地図はあるけど、俺達より道に詳しいみたいだし。

 途中で何度か、鬼と戦っているモノノフに遭遇した。どこの所属かよくわからなかったが、どうやら俺達同様に流れ者みたいな生活をしているモノノフ達だったらしい。一か所に定住せず、修行の為に各里や集落を渡り歩くような。…それにしては、腕前は大した事なかったけど…。

 …ああ、考えてみりゃ、富獄の兄貴も流れ者みたいな人だったっけ。暫くウタカタに腰を据えてはいたが、元は仇のダイマエンを追って旅をしているんだった。

 

 

 

 

魔禍月

 

 

 霊山までの道程は、何事も無ければ歩いて4日程。鬼を警戒しつつ進み、雨を凌いで足止めを喰らったりしたので、5日。割とアッサリ到着した。

 清磨と紅月は何度か来た事があるらしく落ち着いていたが、ホロウは見たまんまお上りさんだ。無表情のままでキョロキョロと辺りを見回していた。

 

 …お上りさん状態なのは俺もか。久しぶりに来た霊山だが…うーん、色々と印象が違うなぁ。何が違うって、言っちゃ悪いがモノノフの強さとかの感触がな…。

 モノノフの本拠地なだけあって、一般人に混じって武器を持ったモノノフがウロチョロしている。

 以前来た時は俺もひよっこ状態だったから、『強いモノノフが沢山いる』と感じたもんだ。居丈高な口調で「一般人は引っ込んでいろ。戦うのは我々の役割だ」みたいな事を言われた事もある。危ない事は自分達に任せて無理をするな、を捻くれた言い方をしていたんだ…と思っていたが……今見ると、なぁ…。そこまで大したモノノフは居ないように思えるんだよなぁ…。

 

 

 

 強い力を得れば、モノの見方が変わるのは当たり前だ。良くも悪くも、弱者と強者の視点は同じではない。

 だからと言って、ちょっと隔絶した力量差が出来たからと言って、ここの皆を見下すような考え方はしたくないな。武力にせよ権力にせよ、力を得て増上慢となった人間の末路は惨めなもんだ。…しかし、今となっては彼らの力量が、自分達で口にする程高く見えないのも事実…。

 

 

 ………考えるだけ無駄か。彼らの力量が足りているかなんて、所詮は相手次第でしかないんだ。絶対的でない力量差など容易く覆る、って言うしな。彼らの相手は人間よりも遥かに強い鬼達だ。どれだけ強くなっても、ちょっとした油断であっさりとひっくり返ってしまうだろう。

 強い弱いで考えるのではなく、「相手が何で、どこまで出来るのか」で考えればいい。

 

 

 

 

 

 さて、話は変わるが、霊山でやっておく事は幾つかある。旅をするには色々準備が必要だ。食料の補給、道具の手入れ、ちゃんとした寝床で休んで疲れを癒す等々。

 それに加えて、出発前に主計のおっちゃんから預かった手紙を渡さなければいけない。

 おっちゃんの娘さん…椿というらしい…は数年前からマホロバを離れて、霊山でモノノフになるべく訓練を積んでいるらしい。随分と出来がよく、「主席になったんだそうだ」と主計のおっちゃんが嬉しそうにしていた。

 

 

 …主席はいいんだけど、モノノフになる訓練ってそんなに何年もかかるのか? 俺、確か長く見ても半年程度しか訓練受けてないぞ。

 その辺どうなん、紅月?

 

 

「それは幾らなんでも短すぎます。どれだけ短く見積もっても、体を作り上げるのに1年はかかりますよ? …貴方は、正式な訓練を受けたモノノフではないのですか?」

 

 

 正式ってのが何を指すのかよく分からんが、モノノフの訓練をする前から体は…まぁ、下手なモノノフよりは出来上がってたぞ。

 モノノフのイロハを教えてくれた人も、霊山で訓練を受けた人じゃなくて、里のモノノフに教わってモノノフになった人だった。霊山からの正式な許可も無かったらしいな。

 経文唱の為の念仏暗記にはホント苦労したけど、それも詰め込み式で3か月くらいだったか…今思うと、あんなの3か月で覚えきれる筈ねぇよなぁ……あの時に教わった知識、もうオボロゲだし。

 

 

「筆記で頭を痛めた気持ちはよくわかりますが…。しかし、それであの強さですか…恐ろしいお話ですね。貴方の師に会ってみたくなりました」

 

 

 いや、モノノフの師匠は普通の…言っちゃなんだけど、十把ヒトカゲもとい一絡げな力量しかなかったよ。腕の立つモノノフに世話になってた時期もあったけど、あの人は…師匠って程教わってないし。

 モノノフ以外の師匠も何人かいるけど、会おうにも会えないし…別に死んでないよ?

 

 話は変わる、と言うか元に戻るけど、主計のおっちゃんの娘さんって知ってる?

 

 

「ええ、何度かあった事ありますし…彼女が里を立つ際、面と向かって宣言されましたよ。『モノノフの天辺取るから、紅月さんにも勝って見せる!』と」

 

 

 それはそれは。仮にも次期お頭候補に向かっていい度胸してるじゃん。

 

 

「見込みはあると思いますよ。あの負けん気の強さは、間違いなく買いです。事実、訓練生の主席なのでしょう? …これでも霊山の訓練所に、少しは顔が効きます。呼び出すくらいは出来ると思いますよ」

 

 

 いや、訓練の邪魔をするのはよろしくない。どんな事をしてるのかにも興味あるし。

 客が居るから、訓練が終わった後に少し時間を作ってくれ、とだけ言ってほしい。

 

 

「わかりました。…ふふ、これも内助の功ですね」

 

 

 …やっぱり嫁入りと勘違いしている気がする。しかし、内助の功の最初が、他の女に文を渡す手伝いとはどういう事やら。

 

 それはそれとして、訓練場まで行って暫く見物していた。訓練場はモノノフ関係者しか入れないが、訓練風景自体は一般公開されているようだ。ま、それも秘伝と呼べるような訓練じゃなく、体造りの為だけのようだが。

 まー随分と真っ当な訓練やってんなぁ。これを見てると、ハンターになる為の訓練がどんだけ無茶苦茶だったのかよく分かる。その分効果は高かったんだろうが、あれは成果が出る前に全滅してもおかしくない…と言うより全滅しないとおかしい。それでほぼ全員がある程度の効果を得て卒業していったのだから、MH世界は一般人からしてスペックが違うのかもしれない。

 

 

 

 ふむ、呼ばなくていいとは言ったものの、実際ヒマだな。訓練も基礎練ばっかで、動きがある訳でもなし…それが大事な事なのは身に染みて分かるんだが、エンターテイメント的に退屈なのは否定できんし。

 知ってる顔でもいないかな…と周囲を見回していたが、元々霊山に知り合いは多くない。以前に来た時に顔を覚えたのだって、相馬さんとか美柚美央とかくらいだ。

 

 …代わりに、ちょっと珍しい奴を見つけた。

 なんか色彩的に違和感があるよーな、と思っていたら、何故か金髪碧眼の女の子が居た。…いや、今更髪や目の色程度でgdgd言う気はないけども。金髪どころか、遺伝子的におかしいと言われる色があっても不思議じゃない。キャラメイク的な意味で。染髪だって珍しくないし。

 ただ、顔付からしてガチの外国人? モノノフ訓練兵の中で孤立…とまでは言わなくても、若干距離を置かれているようだ。ま、モノノフっつっても日本人だしね…。

 

 しかし外国人だとしたら、どこの国の人だろうか。討鬼伝世界の歴史は、どーも幕末の頃にオオマガトキが起こっていたように思う。刀也や神無のように、本物の刀を持って斬った張ったしていた事を思えば、少なくとも明治維新よりは前だと思うが。

 要は日本は鎖国していた時代の筈。あ、でもその時代でも多少は外国とのやりとりもあったんだよな。ポルトガル辺りか? いやオランダだったっけ?

 しかし、仮にその国の人だったとしても、何で日本にいるんだろうか。何でモノノフ訓練場に居るんだろうか。

 そもそも外国ってどうなってるんだ。日本は異界に沈んでいるが、外国はまだ無事なのか?

 

 

 …聞いてみたくはあるが、訓練中だな。邪魔をするのはよろしくない。またの機会にするとしよう。

 

 

 

 

 そんな事を考えていたら、何故か紅月が訓練場で猛威を奮っていた。 …何故? 

 …どうやら稽古をせがまれたらしい。そういや、紅月って結構有名人だったな。英雄に一手指南、あわよくば倒して名を挙げようってか? 気持ちは分からないではないが、ここに居るモノノフ達は訓練兵止まり。はっきり言って、紅月に指南を頼もうとする時点で身の程知らずとしか言いようがない。

 おーおー、軽々とブッ飛ばしちゃってまぁ…。妙に力入ってるな。

 

 …お、何か女の子と話してる。力量的には他のモノノフより頭半分くらい優れているようだが…それだけだな。

 二言三言言葉を交わして…あら、やっぱりアッサリと終わったな。えらく悔しそうだが…妥当な結果だ。

 

 

 あれ、こっち来る?

 

 

 

 

「…初めまして。椿です」

 

 

 ああ、君が。流れ者のモノノフです。主計のおっちゃんにはお世話になりました。

 と言う訳で、手紙を預かってきてます。

 

 

「どうも。……あの、紅月さんより強い、と言うのは本当ですか?」

 

 

 …まぁ、2回ばかり戦って両方勝ったのは事実だよ。どしたん? いきなり溜息ついて。

 

 

「いえ…天辺への道が、思ってた以上に遠かっただけです。父さんは元気でしたか?」

 

 

 ああ、サムライ達からも慕われてるようだよ。多分、これから死ぬほど忙しくなると思うけど。

 

 

「…は? それは、どういう…?」

 

 

 いやちょっと里で揉め事が起きて(起こして、だけど)その後始末がね。ああ大丈夫、少なくとも直接主計のおっちゃんがどうこうって事は無いと思うから。

 詳しい事は紅月に、人が居ない場所で聞いてくれ。どこまで話していいものなのか、俺には分からん。

 

 

 え? え? と混乱し始める椿を置いて、紅月も戻ってきたのでエスケープ。知りたきゃ手紙でも出して自分で聞きなー。

 

 

 

 

魔禍月

 

 

 さて手紙も渡したし、これからどうしようか。ぶっちゃけ、俺は霊山にはあまり用事は無い。旅の準備はとっくに終わった。

 が、紅月は雷蔵が居る筈だから会っていきたいと言うし、ホロウはモノノフの総本山に来たのは初めてらしいので、色々見ていきたい。どうでもいいが、清磨は鍛冶屋を何件か尋ねた後、すぐに興味を失ってしまったようだ。「悪くはないが、それだけ」との事。

 

 俺はどうするかな…。霊山のお偉いさんにでも伝手があれば、鬼の手の宣伝とかもできるかもしれんが。

 仮に宣伝したとして、それがいい方向に転ぶかはわからんけどな。最悪、霊山が強権を発動させて博士を連れてこようとするって事も考えられる。

 

 

 

 

 …半日ほど時間を持て余した後、俺は原点に返る事にした。いや、大した事じゃない。今の俺を形作った、最たる要因をもう一回見ておこう、と思っただけだ。何だかんだで、アレは一体どういうモノなのか、今一つ判明していないのだし。

 しかし、やはりというべきか、逆に何故かと言うべきか……『アレ』は見つからなかった。

 

 

 

 

 

 代わりに見つけたのは。

 

 

 

 

 

 

 裏真言立川流指南書・其之参。

 

 

 

 

 

 いや待て待て待て、ちょっと落ち着くんだ俺。

 其之参。そもさん。尊野さん。

 

 参って何だ参って。三でも酸でも惨でもないのはまぁいい。でもナンバリング3番目って事は、2番目があるって事だろう?

 いや、それ以前に裏って事は表もあって…いや、表は世間一般(?)に出回っていた、邪教扱いされた普通の立川流の事じゃないか? でもそれが霊山の書庫にあるって事は…やはり世間一般の立川流とは別に、オカルト版真言立川流の指南書があるのでは? そうだとしたら、俺があの時見つけて必死で覚えた指南書が真言立川流指南書・其之壱なのではないか。

 どちらにせよ、裏の三があるって事は、表の1・2・3と裏の1・2があるのはほぼ確定事項。俺が読んでいると思われるのは、表の1のみ…。順番に読まずに理解できるか?

 

 少し読み進めてみたところ、指南書…と言うより問題集のような内容だった。その問題は…正直に言おう。サッパリ分からん。

 色々と常識外れな効果を何度も体験した俺をして、「これ何てバカエロ抜きゲーの話?」と言いたくなるような内容が多すぎる。本当にこんな事出来るのか? できるならロマンは広がるな。

 しかし、仮にできるにしても、やはり正しい順番で読み進めていかないと理解できそうにない。と言うか、この問題集…一言一句に図形まで記憶に叩き込みはしたが、下手をすると暗号で書かれている可能性すらある。

 

 どっちにしろ、今の俺では読めんし理解もできん…。色事の道は奥が深いものよ…。色事に溺れて毎度毎度道を踏み外している俺が、胸張って言える事でもないけども。

 

 

 

 とりあえず、蔵書の管理者に問い合わせてみたところ、これは記録に無い本だった。つまり、誰かが勝手に持ち込んだか、ずっと前からあったけど管理対象外となっていたか、だ。

 だったら持って行っていい? と聞いてみたモノの、ダメだって。蔵書であるなら管理しなければならないし、そうでなければ落とし物だ。…ちなみに管理者さんは女性だった為、エロ本を買う男を見る目を向けられました。その程度で一々動揺しねーよもう。

 

 ま、空いてる本を先に見つけなきゃ、応用編だけあっても意味ないし。覚え込んだけども。

 とりあえず、皆が霊山に留まっている間は、2巻とか探してみますかね。…まぁ、この本ってHowTo本としても普通のモノノフからすればデタラメしか書いてない本なんで、「こんなの探してどうするの」って表情されるのも仕方ないわ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 蔵書と睨めっこして帰ってきたら、紅月が料理作ってた。…にっこにっこしながら差し出してくるし、しっかり味見もしてたから、断れなかったよ…。

 ホロウをして脱兎の勢いで外出させる代物だったもんなぁ…。

 

 

 

魔禍月

 

 

 また紅月に飯作られちゃ敵わんので、一緒に図書館デート……か? まぁ、清磨もどうせ食うなら美味いモノ、というのは同感だったようで、俺が紅月の気を引いている間に食事を作る係についてくれた。

 

 

 …つまり、紅月連れてHowTo本探さにゃならん訳だ。しかも、普通の人からすればデタラメばっかり書かれている本を。

 「この人何をやってんの」って顔をされるのも当たり前だよなぁ…。彼女連れてそんな胡散臭い本を探す暇があったら、一緒にどっか出かけてこいって話だ。さもなきゃ、せめて真っ当な本を探せと。

 

 …実際、俺も何の疑問もなく指南書を探す手伝いをさせるつもりだったが…これって「紅月で試したいんだ」みたいに受け取られてないだろうか?

 …色々な意味でひどい話だ。紅月の、食えるか食えないかギリギリ境界線の料理を全て掻っ込まなきゃいけないくらいには。

 

 

 

 

 

 ま、結局それらしい本は見つからず。以前俺が読んだ、指南書表の其之壱(だと思われる)本も無い。うーむ、これって単なるバタフライ効果的なナニカなんだろうか…。

 エロ本探しを手伝わされたに等しい紅月はと言うと……上機嫌であった。いや、探すのがエロ本というのを聞いた時には流石に眉を顰めていたが、意外と穏やかな時間を過ごせたからだろうか。

 少々埃っぽいとは言え、蔵書に囲まれ、ほぼ二人きり、静かに本を読んでは時々緑茶(霊山に紅茶とコーヒーは無いらしい)を啜る。羊羹あればより完璧だった。…まぁ、KENZENなデートにはなったんじゃなかろうか。

 日向ぼっことどっちが良かったかな。

 

 

 

 んで、清磨が飯を作り終える頃合いを見計らって帰ろうとしたんだが…ちょっと気になる事が。

 帰る時、暗がりに向かって消えていく一つの影が見えた。それだけなら珍しくもないんだが、金色だったんだよね、髪が。

 

 

「…どうしました?」

 

 

 いや、あっちに金髪の女の子が走っていったみたいなんだが。

 

 

「確かに居ましたね。…この先は確か、霊山の結界の外に向かう裏道…家屋も店もなかった筈ですが」

 

 

 …あの、なんか不機嫌じゃね?

 

 

「…折角一緒に居るのに、他の人に目移りするのはどうかと」

 

 

 エロ本探しに文句も言わずに付き合ってくれたのに、他の女を見るだけでもアカンのか? でもホロウとかには何も言わんし…基準が分からん。

 それはともかく、世にも珍しい外国人らしいモノノフが、夜分に人気のない道に駆け込んでいく……なんかきな臭くないか?

 

 

「確かに…。訓練場で見た時も、少し孤立している印象はありました。それに、近くで見て気づきましたが、生傷の跡も多かったようです」

 

 

 …それは気付かなかったな。酷いやつか?

 

 

「ええ…ですが、訓練生達の仕業とも考え辛い。裂傷と火傷の跡…あれは、明らかに鬼と戦った痕跡です。より正確に言えば…鬼に襲われた痕跡」

 

 

 結界に覆われた、この霊山で? んで、その怪我しているヤツが霊山の外に走っていく。

 

 

 …獲物の匂いがするな。…いや、エロ的な意味ではなく、トラブル的な意味で。

 

 

「そうですね。もしも結界の外で鬼と戦っているようなら、止めるべきでしょう。実戦経験を積むにしても、一人でやれる力量ではありません」

 

 

 

 

 そういう訳で、鷹の目を使って追いかける事になったのだ。…そういや、鬼の手に鷹の目みたいな機能を付ける、と博士は言ってたが…結局出来たんだろうか?

 流石に霊山内で鬼疾風を使う訳にもいかないので、普通に走って追いかける。…結構いいペースで走ってるみたいだな。やっぱアレか、外国人は筋肉とか肺活量が違うのか。まぁ、ハンターボディからすれば誤差の範囲内だが。

 

 うーむ、しかし痕跡から読み取れる情報になんというか、食い違いがあるな。

 身体能力はそこそこ…一般的なモノノフ訓練生よりちょっと高い程度。なのに、足跡に乱れが少ない…こうして夜道を走るのには妙に慣れているようだ。何度も繰り返してきたように。が、反面焦ってもいる。強い恐怖もある。…風上から流れてくる、汗の匂いで分かるんだよ。変態チックな意味じゃねーぞ、ペイントボールとか血の匂いとかを嗅ぎ分けてるようなもんだ。

 総括すると…今まで何度もやってきた事だが、非常に危険な困難に挑む? しかも逃げるに逃げられない?

 加えて鬼との戦いの跡。

 

 

 

 うーん、益々獲物の匂いがするね。歯応えがある相手だといいんだが。

 

 

 

 

 

 

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