※この作品はR-18です。

狩りゲー世界転生輪   作:時守 暦

208 / 611
帯状疱疹の診察台(多分1万超え)
メガネが壊れたので新調(1万)
保険の切れた自転車がパンク。
Destenyの誤購入。
呪われてんのか。

投稿が1日早くなっちゃったけどまぁいいや。


第208話

 

魔禍月

 

 

 3日経過。

 

 悪いが、グウェンを育てるのが間に合わない。彼女を護衛しながら、白炎を倒す必要がある。

 何、諦めるのが早すぎる? 寝言抜かすな、たった数日でトレイニーをルーキーにできると思ってんのか。そもそも仮にできたとしても、大型鬼はルーキーが相手するようなもんじゃない。先日戦った時の情報だけでも、幾つか特殊能力があるみたいだしな。

 

 結局、霊山に居る間に大した進展は得られなかった。グウェンのトレーニングもそうだし、オカルト版真言立川流指南書もそうだし、九葉のオッサンからも特に連絡があった訳でもなし。

 霊山で禁軍に所属している筈の、雷蔵さんとも会わなかった。紅月も会えなかったそうなのだが…何かの調査で忙しいのだろうか?

 

 ホロウや清磨も、特に収穫がない日々を過ごしていたらしい。この辺には鬼も出ないからな…体が鈍る。

 

 

 

 ただ、ちょっと気になる事が無いではない。

 ホロウに、霊山のとある軍師が接触してきたそーな。ただ、その話の内容は全く当たり障りがない…と言うか抽象的なものだったとか。

 「頭のいい方なのは分かりますが、意図が掴みかねます」だそうな。…ナンパ…か? いや、結構な年だったみたいだし…。

 

 ちなみに、名前は識。…難しい漢字を使うなと言いたい。人柄は…少し話しただけじゃわからんが、とりあえず外見は九葉のオッサンとタメを張れるくらいに悪人顔、らしい。そしてホロウ曰く、「よくわからない事を話すだけ話して勝手に帰っていきました。自分の話したい事だけ口にする、言葉が通じても会話ができない人種のようです」だそうな…辛口だな。

 

 気になっているのは、ホロウと話した際に、少しだけ右手に目を走らせた事だ。利き手の確認でもないようだし。

 その後すぐに、「マホロバの里から来たホロウか」と問いかけてきた。

 

 …ホロウは確かにいい腕のモノノフだが、名が知られている訳ではない。マホロバの里での大暴れも俺がやった事だし、言っちゃなんだが名指しで問われる訳がないんだ。しかも、マホロバの里から来た、という情報までつけて。

 

 

 

 …つまり、識とやらは何らかの理由でマホロバに情報網を広げていて、ホロウがそれに引っ掛かった?

 何を気にしているのか…右手に目を走らせたって事は、鬼の手か? 確かに、霊山の軍師が注目してもおかしくない代物だと思うが。じゃあ、ちょっと話して離れて行ったのは何故?

 

 …気にしすぎだろうか…。会話の内容が分かれば…と思ったが、ホロウは団子が美味かった事しか記憶にないそうだ。まぁ、食い物の事がなくても、意味不明な事しか言ってないなら記憶には残らんわな…。

 

 

 

 

 

 

 …よもや…変質者の類か? 人間、立場に関係なく特殊性癖は芽生えるもんだが、お偉いさんになればなる程アレな人になりやすいってのは歴史が証明しているし。

 ホロウは一見すると残念な所が無いクールビューティに見えなくもないし、どことなく無機質な雰囲気は人形を連想させる。…人形に性欲を抱くのって何て言ったっけな…ピグマリオンだっけ?

 

 ぬぅ、ホロウに警戒するよう言っておくべきか。いや、仮にも相手は軍師だ。何かやらかすつもりなら、直接ではなく囲い込みに来るだろう。となると…九葉のオッサンに頼むべきか。

 いやいや待て待て、流石に決めつけるのは早すぎるだろ。直接の行動に出てから…じゃ遅すぎるから、せめて直接一目会って、内面観察術を使ってからだな…。

 そうでなくとも、あと1週間もしない内に俺達は霊山を出るんだ。…いや、霊山でそれなりの地位にあるなら、追いかけてくるなりできるだろうし、何より謀略に距離はあんまり関係ない。

 …警戒しておいてくれ、くらいは言っておくかな…。まぁ、言っておいたとしても、あのオッサンが思った通りに動いてくれるなんて、全く思えないけども。

 

 

 

 

魔禍月

 

 

 ウタカタ目指して出発である。その途中に白炎を潰すけどな。

 どうでもいいが、グウェンが自分のミタマの名前をバラした。…モノノフ的には、あまり推奨される行為じゃないな。ミタマ同士の生前によって小競り合いに繋がりかねないって理由で、他人が持つミタマを詮索する事は無い。まぁ、自分からバラしてはいけないって理由もないのだが。

 

 それに、予想通りグウェンのミタマは外国の英雄のミタマだ。日本のミタマと関係があるとは、あまり思えない。

 しかし、ベオウルフ…ベーオウルフ? ベオウルフねぇ…。

 どんな英雄だっけか。円卓の騎士関係? 誰かに反逆したんだっけ? 確か、何かのドラゴンとやりあったと思うんだが……ああ、白炎は見た目竜だしな。だからベオウルフなんだろうか。

 ベオウルフと言えば、ガッカリウルフの方も思い浮かぶ。…盾剣の一穿ち、パイルバンカーっぽいよなぁ…。

 

 そういや、盾剣のモノノフ式扱いも、初めて見たな。この際だし覚えてみるか…。

 

 

 その辺は歩きながらの話の種にするとして、グウェンは意外と旅慣れていた。しかも周囲を警戒しながら動くのに慣れているようだ。多分に我流だと思うが、見事なもんだ。

 ずっと一人で旅してきたらしいからなぁ…。危険は白炎だけじゃなかっただろう。色々と欝になりそうな話に遭遇した事だってあっただろうに。よくぞここまで真面目に生きてられるもんだ。

 

 

「ところで、以前から聞こうと思っていたのですが…グウェン、貴方が探している人というのは、どんな人なのですか?」

 

「どんな人と言われても、私も会った事がないんだ。あの祖父と友誼を結んでいたと言う事は、結構なモノズキだと思うんだが」

 

「名前くらいは聞いてないのか? 日ノ本にたった一人でやってきて、手がかりも無く誰かを探し出せと言うのは、いささか酷だろうに」

 

「…ネイリングは触らないようにしてくれ、清磨…。名前はクラネ、というそうだ。九葉にも伝えて調べてもらっていたんだが、それらしい人は居ない」

 

 

 クラネ、倉根、倉音…暗祢…心当たり無いな。どんな字を当てるのかも分からん。今までのループを含めても、心当たりはない。

 

 

「私も聞いた事はありませんね。少なくとも、マホロバにはそのような名前の方は居なかったと思います」

 

「俺も…同じ名前の人間は2人知っているが、どちらもオオマガトキ以降の生まれだな。ホロウ、お前はどうだ」

 

「私もありません。そもそも、この時代で知人がいるのはマホロバくらいですので」

 

「時代…? ううん、やっぱり見つからないか…。当時は鎖国していた日本で、イギリスの祖父と親交があって、更にモノノフであるなら、相当に絞り込めると思っていたんだけど」

 

 

 ああ、確かにそんなモノノフはそうそう居ないだろうな。

 …そういや、横浜に居る時にオオマガトキに巻き込まれたって言ってたな。そのクラネって人、横浜に居ると思ってたのか?

 外国人とモノノフ…いや、当時の日本人が接触できるのは、外国人居留地くらいだろうし。

 

 

「ああ。尤も、到着して数日でオオマガトキが起こったけどな…。あまつさえ白炎が湧いて出て、他の人達と一緒に避難する事すらできなかったし…」

 

 

 …どんだけ不幸キャラなんだよ、グウェン…。

 

 

「まぁ…白炎に襲われているところを九葉殿の舞台に発見されて、訳を話して霊山に連れてきてもらったのだから、何が幸いするか分からないな」

 

「それを幸いと称する時点で不運な気が…」

 

 

 言うな清磨。しかしどうすんだ? これからも探してもらうのか?

 

 

「九葉殿の負担にならない範囲で、だが…。祖父から預かった手紙もある。訃報も届けないと…」

 

「そもそも、外国は今どうなっているのですか? 中つ国以外は全て異界に沈んでいますが、もしも異国もだとすると…」

 

「ホロウ、止めなさい。確かにどうなっているか分かりませんが、無事な可能性もあるのです。異国の大陸は、日ノ本とは比べ物にならない程広大だと聞きます。ならば異界の侵食にも時間がかかるでしょう。鬼についての事を知らない人々でも、異変に気付いて避難できる可能性は十分にあります」

 

 

 …避難できた先でどうなってっかは分からんけどな…。人が多いとその分軋轢も多いだろうし。

 鬼に対しては…まぁ、向こうにもモノノフっぽいのは居るかもしれんね。

 

 

「気にしなくていい。元より祖父以外には身寄りがない…。まぁ、故郷の美味しくないご飯を食べたくなる事はあるかな。そしてお茶」

 

 

 お茶でえげれす…あー…紅茶かぁ…。GE世界…にもないではないが、滅多に手に入らなかったなぁ。MH世界のは、紅茶と言っていいのかよく分からんし。味や茶葉は似てるっぽいんだが。

 次のループでそれっぽいのとっておいて、送りつけてやろうかな。

 

 

 

 

 

魔禍月

 

 

「思えば幼い頃、貴様を呼び出しイクセイソウ。何度貴様と、不本意ながら戯れた事か…。祖父の仇、とは言わん。だが諸々の因縁、今日で断たせてもらう!」

 

 

 お前は後ろで控えてるだけがな。

 

 

「呼び出すのは私だ! …いや、実のところ真面目に申し訳ないとは思っているんだが」

 

 

 はい、そういう訳で九葉のオッサンに指定された決戦場です。デカい洞窟ですな。

 ぶっちゃけ何もないが。強いて言うなら、近くに境界石があるくらいか。

 緊張しているのはグウェンくらいで(気炎を上げてるところを見ると、あんまり緊張しているようには見えないが)、ホロウは相変わらず無表情で銃の手入れ、紅月は周囲を散策して小型鬼の排除と地形の把握、俺は飯の準備。ちなみに清磨は戦力外なんで、境界石の隣で何故か仁王立ちしたままだ。お前そのポーズ何か意味あんの?

 

 言っちゃなんだが、白炎はまず余裕だもんなぁ…。俺と紅月が、霊山近くで戦った時も終始圧倒できた。それに加えて、今度は後方射撃担当のホロウまでいる。

 問題があるとすれば時間制限と、そしてタマハミ等による奥の手か。逃げられないかと言う事については、洞窟の中なので空も飛べない状態になっている。これがオッサンの狙いだったのかな?

 

 

 

 …まぁ、グウェンが白炎を呼び出す時のエネルギー柱で、天井ブチ抜いてしまったからあまり意味はなかったが。

 

 

 現れた白炎は咆哮して、自分を呼び出したグウェンを睨みつけている。グウェンは睨み返して、エゲレス語で何か語ったと言うか宣言していたが…そんな事している暇があったら、さっさと境界石に入りなさい。

 …気を引いてくれたおかげで、楽に翼を破壊できたのは否定しないけども。

 

 完全部位破壊が出来なかったから再生はしたものの、これでそうそう飛べなくなっただろう。飛行速度が落ちれば、最悪アラガミ化してジャンプすれば追いつける。

 

 

 

 

 

 

 

 

 とりあえず、戦った感想は一言。蒸し暑いわ。洞窟の中でポンポン炎を吐きやがって、酸欠になったらどうしてくれる。…鬼って呼吸してるのかな…。呼吸してるような動きは確かにあるんだけど。

 それ以外に特筆するような事は、正直なかった。懸念していたタマハミ変化も無いに等しかったし、空を飛んで逃げようともしなかった。時間切れだけが唯一の心配だったが、最初から「ガンガンいこうぜ!」した為に、一度ダウンさせたら後は早かった。起き上がろうとする度に、どっかが破壊されてまたダウンしたり、鬼千切が決まってまたダウンしたり、仕舞には本邦初公開…ではないが、初めて使うよーな気がする鬼千切・極が直撃したりした。

 グウェンが「今まで散々殺意を抱いてきたが、むしろ哀れに思えてきた」と後に零した程である。上位装備で下位の鬼と戦えば、大体そんな感じになるよね。

 

 

 

 その夜、グウェンは何だか黄昏ていた。夜中だが。

 

 

 結局、白炎の再召喚は無いと思われる。ネイリングの使い手…契約者?…であるグウェンが、白炎が倒れた時に何らかの繋がりが壊れたのを感じたそうだ。

 あくまで主観なので、どうなるかは時間をおかねば分からないけども…。

 

 

 まぁ、とりあえずグウェンの面倒事は片付いた。最悪、再度召喚されるようなら、ネイリングに鬼杭千切真バージョンを打ち込んででも停止させようと思っている。

 が、グウェンにとって最も過酷なのはこれからだろう。これから一緒にウタカタの里へ行く事が決定している。

 

 半人前、それこそ未だにタマフリすら満足にできない、初穂以下の実力しかないと言うのに、オオマガトキが起こるかもしれない修羅場へ、嫌が応にも放り込まれるのである。

 …実際、放り込んだところで戦力になるかは微妙だな。既に実戦経験者だし、大型鬼と戦わせれば一皮むける…なんて都合のいい事もないだろう。白炎だって、ミフチなんぞより強かったんだし。

 ……となると、初穂に『妹』扱いされる可能性が高いかな。千歳の時みたいに。…外国人と言う事もあり、グウェンの方が年上に見えるけど。

 

 

 ま、今日くらいはそっとしておいてやるか。

 …これから来る地獄の為に。

 

 

 

 

魔禍月

 

 

 ウタカタに到着するまで、あと2日くらいか。馬があるか、鬼疾風を使えればもうちょっと早く着くんだけどな。グウェンと清磨がなぁ…。グウェンは「練習すればなんとか」って程度の力はあるんだが、清磨は完全に無理だ。反射神経と動体視力が全く追いついてない。まぁ、一介の鍛冶屋にそこまで要求する事がおかしい、と言ってしまえばそれまでだが。

 道中では大したトラブルは無い。うん、トラブルはね。

 

 気になるのは、グウェンが…何と言うか、妙にアグレッシブと言うか、そのクセ斜に構えたがっていると言うか…下手な中二病を見ている気分になってくる。小難しい事を考えていたり、それに対して意見を求めてきたり。

 …紅月はまともに考えているし、清磨はKJ的に…鍛冶師的に考えて謎理論で答えているし、ホロウに至っては含蓄があるのか無いのか分からない返答をする始末。

 俺? 適当に答えたら色々な意味で深読みされていますが?

 

 何事だろね、一体。そういやエゲレス人って、何かと議論をしたがって、意見を持ってないと『つまらない奴』みたいな感想を持つって聞いた事があるが…グウェンも元々そういう性格だったんだろうか? それが白炎みたいな心配事面倒事が無くなって、表に出てき始めたとか。

 …ただ、議論をしたがるにしたってその話題はどうんなんよ。どうでもいい事を、さも重要に考えてるようにしかみえねーよ。きのこたけのこ戦争どころか、中世くらいの議員とか評議会とかが、華美な服装はどこまで許されるのか、なんて話をしたがっているようにしか見えない。

 いや議論したがるのはいいとして、言われた事を大真面目に受け取って、やたらと深読みするのは止めなさい。世の中には中身のない意見や返答もあって、それを考慮しないで真面目に受け取ってばっかじゃ、それこそ誰の意見も聞いてないのも同じ………いやだから、これだって思い付きで言っただけなんだっての。

 

 …まぁいいか。生来の気質なら、抑え込むべき物じゃない。適当な事を言ったり「知らないよ」って返したら鼻で笑うような態度を取られるならともかく、何でもない事を矢鱈深読みして過大評価してくるくらいだ。イラッとする理由もない。若干戸惑うが。

 それにしても、グウェンは努力家だ。その上妙にリアリストと言うか…。

 もう白炎は出てきそうにないし、無理にモノノフ続ける必要はないんじゃないか、と聞いた所、「老後の生活の為にも続ける」と返された。…老後どころか1年後も来るか分からない状況だけどね。

 

 まー言ってる事は確かだったな。このご時世、モノノフは危険な職業でもあるが、鬼に対抗する力を持つ事が出来るし、危険手当等もあってそれなりに待遇はいい。(給料自体は、凄腕にならないと高くないが)

 グウェンはただでさえ外国人…見た目と言葉と偏見の問題で、日本では職に就きにくい立場にいる。だが、モノノフならば相応の実力があれば確固とした立場、居場所を作る事が出来る。

 白炎に対抗する為でなく、生活の為にモノノフを続ける。人類の為に戦っていることになるので、社会貢献度も高い。と言うか、そうやって一人でも多く戦わなければ、ガチで人類が滅び、老後の生活も何もなくなってしまう。

 故に、自分の立場の為、経済の為、社会の為、3つの理由からモノノフを続ける…と。

 

 …そこまで考えるか? 普通…。いや、確かに戦力が足りてなきゃ、色々滅ぶけども。

 

 

 しかし、そうは言ってもグウェンが半人前(ウタカタ基準でなく、一般基準で)なのは変わりない。トレーニングも欠かさないが、それだけで埋まる程、半人前と一人前の差は小さくなかった。

 うーむ…こりゃアレかな、鬼の手は主にグウェンに持たせるか? 多少の戦力増強にはなるだろう。幸い、着脱可能との事だったから、任務受領時に誰かひとりが持っていく、と言う事も出来る。

 しかし、タマフリさえ上手くできない、使いこなせてないのに、別の技を突っ込んでも混乱させるだけかなぁ…。

 

 

 

 考えても仕方ないや。とりあえず使わせてみよう。

 

 

 

 

 

魔禍月

 

 実験しながら歩いたが、グウェンは割と鬼の手を使えていた。タマフリも上手くできないというのに…いや、それはあんまり関係ないのかな。

 本人曰く、「ネイリングが起動しそうな時と感覚が似ている」だそうな。ある程度はグウェンの意思で抑え込む…と言うより発動を遅らせようとする事ができたそうなのだが、その感覚で鬼の手を具現化できるそうな。よく分からんが、そーいうもんか?

 

 同じように紅月が使ってみたが、これは…あまり安定しないようだが、使うタイミングが上手いな。あくまで補助として考え、今まで鍛え上げてきた技こそがメインウェポン。それも一つの戦い方やね。

 清磨はと言うと……起動させる事すらできなかったんだが、それ以上に何やら閃いたらしく、猛烈な勢いで手帳に何かを書き綴っている。確かに、鬼の手は色んな意味で革新的な武器だもんなぁ。鍛冶師とは分野が違うと思うけど、刺激を受けるのは当たり前か。ふむ…武器…使用者の意思とかを力にする武器……光魔の杖みたいなのを作り出すかもな。

 

 ちなみに、俺が手本として見せた鬼の手は完全に安定した状態。もっと強くすれば、物質化も出来るかもしれない。…レベルがまだまだ足りんだろうけども。

 手袋も無いのにどうやって実体化させているのかと聞かれ、文字通り体内にカラクリ石を埋め込んだと言ったらドン引きされた。どうやら、肌を切開して文字通り体の中に石を入れたと思われたらしい。

 …そうだとしても、俺はあんまり抵抗ないなぁ。元居た世界だと、ペースメーカーを初めとして体の中に機械を埋め込むのは左程珍しい話じゃなかったし。

 だが、文明開化の音が響いてないこの世界の人達には、ちょっと刺激が強すぎたらしい。ひょっとしたら、歴史的には既に発生している技術なのかもしれんが、あまり馴染みののある物とは思えんしな。

 

 

 で、ホロウはと言うと…何と言うか、便利に使っています。今後ずっと手袋を外さなくても問題ない、という意識が忌避感とかを無くしているのか、それともカラクリ石を扱うのに適正でもあったのか、非常に器用に使っている。いや器用というか便利と言うか、伸び縮みする腕扱いだ、完全に。

 ちょっと離れた所にある道具を取るのにうにょーん。沸いて出た鬼をブン殴るのにウニョーン。背中を掻くのにウニョーン。体を拭くのにウニョーン。…横着スンナと言いたくなるくらいに使いまくっている。

 ここまで使いまくってるから、こんなに器用に動かせるようになったんだ…と言われれば、それも納得か。

 

 

 …体を拭くの下りが気になる? いやアイツ本当に無頓着だからさぁ…博士の家に居た時だって、風呂から上がると平然と歩き回ってたし。

 ちなみに体を拭くのにどうやって使うかと言うと、体を撫でるように動かして水滴を拭っているのだ。で、鬼の手を霧散させれば、拭い取った水だけが残る。もう一回出現させれば、濡れてないタオル代わりの鬼の手の誕生だ。…まさかこんな使い方をするとは、博士も思っていなかったろう…。

 このままいくと、包丁とか鍋掴みとか、いやさ鍋そのものの代わりにまで使い始めるような気がする。最終的には、「実体化させた鬼の手は美味しいのでしょうか」とまで言い出しても驚かない。

 

 …まぁ、それはそれで面白いのでアリだな。実体化させた鬼の手の味の感想を聞かされた博士が、どんな顔をするか楽しみだ。次のループに至っては、まだ完成させてもいない道具の味(?)まで手紙で知らされるとなれば…。そのリアクション、是非とも見てみたいものだ。次もマホロバ付近に出るといいのだが。

 

 

 

 

 

 夜。

 

 

 

 明日にはウタカタに到着するだろう。霊山でも情報を集めていたが、ウタカタは一杯一杯な状況ではあるが、オオマガトキの兆候もなく、目撃される鬼もミフチかヒノマガトリ程度。最近ではカゼキリも顔を出すようになってきたらしいが。

 と言う事は、博士も可能性の一つとして挙げていた通り、俺がウタカタに到着する事でストーリーが始まるのか。つまり、俺が他所をうろつき回って色々と準備や根回しをしまくっても、ウタカタは充分保つ…?

 いやまだ分からない。ウタカタ近くの情報を集めたとは言え、異界の中の情報まで把握できている訳ではない。ひょっとしたら、ゲームストーリーや前回ループ程じゃなくても、準備は進んでいるのかもしれない。

 

 とりあえず、あっちに到着したらすぐさま異界巡りだな。最初は雅の領域にしか入れてくれないだろうけど、そんなもんは忍び込めば済む事だ。速鳥以外じゃ、現行犯逮捕は無理だろう。

 とにかく、今回は色々な意味で勝手が違う。油断は禁物。打てる手は全て打て。些細な変化は死因の前触れだと自覚しろ……それが全てだ。

 

 

 

 

 

 それはそれとして、地道に型の練習をしているグウェンを見て思った。

 

 

 必殺技が欲しい。鬼杭千切みたいな攻撃系の技じゃなくて、自分を強化するタイプのが。アラガミ化とはまた違う。あれは…なんちゅーか、体質と言うか素質だから。欲しいのはアレだ、界王拳的な技術でパワーアップするサムシングだ。

 技術はロマンだ。体質…スーパーサイヤ人化もロマンだが、界王拳もロマンだろう。自分だけの超レア素質を活かすか、敢えて皆が使える技術を比肩しうる者が居ないレベルにまで引き上げるか。どっちも好きだ。

 

 …しかし、真面目かつ地道にやってるグウェンを見て、こんな一足飛びの発想に至る辺り、人としてアレである。

 

 

 

 

 

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