※この作品はR-18です。

狩りゲー世界転生輪   作:時守 暦

210 / 611
pixivで投稿された討鬼伝マンガを見ている。
…多少ホモ色があっても、面白いものは面白いな。
人の怨恨とか、俺が触れない部分にも多少は触れてるし。
バナーのスイーツ(笑)だとナメてた漫画も、そう考えると多少は…。

あと、ウォッチドッグス2買いました。
面白くはあるんだろうけど、まだ勝手が分からん…カーチェイスで逃げられん。
一度車を捨てて逃げてから戻ればいいんだろうけど、風情がねぇなぁ…。

と言うか、脇に置いてるサブPCを見ながら運転してたら、既に数人跳ねてしまった。
そしてモブがモブを跳ねている。
攻略とかどうでもいいから、飲酒運転と余所見運転の危険を教えてくれる動画として投稿してみようかなぁ…やり方分からんけど。


第210話

魔禍月

 

 紅月、かなーり落ち込んでいる。流石に気絶されるとは思ってなかったようだ。味見までしっかりやっていたので、猶更。

 …紅月の舌は色々とおかしな事になってるみたいだからなぁ…。いや、舌じゃなくて味に対するハードルかな? ハードルは本来飛ぶものであって、下を潜るものでも、お構いなしに吹っ飛ばして直進するモノでもないんだが。

 まぁ、流石に自分が料理下手で、その辺の感覚が他人と違うという自覚は有る為、「気絶する程感激してくれるなんて!」みたいな斜め上にすっ飛んだ結論は出なかった。

 俺が倒れたのも、後先考えず取り込んだのが原因であって、味がそこまで悪かった訳ではない。(人に食わせる味じゃいとは言わせてもらうが)ああまで落ち込まれると、流石に良心が咎める。

 

 真面目な話、飯以外は完璧なんだよなぁ。真面目に花嫁修業(?)をやっていた為か、それとも自分の身の回りの事くらい自分でやるように躾けられたのか、掃除洗濯、裁縫までこなす。

 あとお茶を淹れるのが異様に上手い。ホッと一息。

 

 

 …いやそうじゃなくて、紅月の飯の話だ。本人もどうにかしたいと思っているし、作って貰って…しまった俺としても直したい。

 家事を分担するのはどうか、と提案もしたのだが、どうも紅月には「食事は妻が作るもの」的なイメージがあり、掃除洗濯を譲れはしても、ここだけは譲りたくないらしい。料理修行をしてでも味オンチを治そうとしていたのは、その表れか。

 

 しかし、味オンチなんて一人で治せるもんじゃない。となると、師匠が必要な訳だが……。

 

 

 

 そういう訳で、診察ついでにどうにかできませんかね、那木さん。

 

 

「はぁ…。私でよろしいのでしたら、多少の心得はございますけども」

 

 

 …俺がぶっ倒れた時、紅月がダッシュで呼んできた那木さんでした。何度か一緒に任務に行って、もうかなり打ち解けているようだ。

 那木さんは、謙遜しているけども、料理の腕はかなりのものだ。いつぞやのループで同棲していた俺が保証する。…最後に射抜かれた時の恐怖が、まだ残ってるけども。

 

 …ただ、紅月をちょっと恨めし気に見ていて、紅月も居心地悪そうにしているのは気にかかる。

 

 

「…当てつけですか?」

 

「……いえ…その、申し訳ないです…」

 

 

 

 …?

 

 

「…まぁ、事情は分かりました。私も同じ女として、殿方にお食事を作ってあげたいという気持ちは分かります。色々と引っ掛かる部分はありますが、ご協力させていただきます」

 

 

 ありがたい。謝礼…と言うのもちと無粋なので、何かあったら出来る限り協力します。

 

 

「はい。ですが、今日の所は安静にしておいてください。紅月も…料理の修行は、また今度と言う事で」

 

「わかりました。では、後は私が診ておきますので」

 

「…おかゆも作ってはいけませんよ?」

 

「わかっています…」

 

 

 ちょっと残念そうだ。ヤバかったかも。

 

 

 

 …しかし、那木さんと仲良さそうだな。

 

 

「ええ、色々と……話が合ってしまいまして」

 

 

 微妙な言い回しが気になるが……。

 

 

「お気になさらず。…彼女の事を、御存知なんですか?」

 

 

 ああ、向こうは知らない…と言うより覚えてないだろうけど、色々と世話になった事があるんだ。(ゲームの中でも、共同生活的な意味でも)

 散々助けられたなぁ…。

 

 

「そんなに? ですが、それなら彼女も貴方を覚えているのでは」

 

 

 ナイナイ。…あー…そうだな、昔の患者の事を一々覚えているかって話だよ。いやあの人なら意外と覚えてるかもしれないけど、あの時はちょっと特殊な環境だったから。

 …ところで、あの人って今も医者やってるの?(棒)

 

 

「いえ、医者の真似事程度ならできる、と言っていましたが。…あの時の表情を見るに、何かあったようですね。…こう言ってはなんですが、珍しい事ではありません。人の生死に関わる医者であるなら、猶更…」

 

 

 …そういうもんか?

 

 

「那木がどう考えているのかは分かりません。珍しくないからと言って、それで傷が浅くなる訳でもなし。私も医者ではありませんが、目の前で仲間に死なれた事は何度もあります…あの時は、もう戦える気がしない程落ち込みましたね。…それでも、戦うしかありませんでしたが」

 

 

 …そうか。ま、こんなご時世だしな…。

 それでも、医者でありたいとは思ってるだろうよ。もしもその時が来たら、出来る限りの手伝いはするかな。

 

 

「そうですね。『その時』は恐らく、人の生死が関わる状況になっているでしょう。最悪、那木が指示して私が…という事も考えなければいけません」

 

 

 そりゃちょっと無謀が過ぎるだろ…。多少の傷ならともかく、外科手術や注射の類をちゃんとやれるかって…。

 話は変わるが、さっき那木さんが「当てつけですか」って言ってたけど、あれは何ぞ?

 

 

 

 

「あ………そのー、それはあれで……。その、那木は許嫁を失って、それ以来男性との付き合いがなくて…。そろそろ結婚を諦める年齢が近づいてきて焦っていまして…。そこへ私とあなたが…」

 

 

 

 ………あー…あーあー…。

 

 そういや那木さんって、この時点では巨乳手つかず奥手未亡人モノノフだったっけ…。なのに、自分より年上…つまりモノノフの文化で考えれば、那木さん以上の行き○れの紅月が俺とくっつこうとしている訳で…。

 うわぁ、考えてみりゃスゲェ皮肉と言うか…。失礼な表現をすれば、喪女同盟を組める相手を見つけたと思ったら、既に喪女脱出寸前だったと…。しかもその相手のお相手…俺の為に料理修行したいから手伝ってくれ?

 ……紅月の居心地の悪さたるや、想像を絶する…。悪い事したかな、両方に…。

 

 

 

 

 …これで仲が拗れ始めるとは思わんけど、何かフォローはしておいた方がいいかもしれない。

 

 

 

 

魔禍月

 

 

 那木さんと紅月の事は置いといて、今日は防衛班の仕事はお休み。もし大型鬼が出たら、伊吹とホロウで対処する事になっている。

 …が、正直、休み貰っても仕方ないんだよなぁ。まだマトモに戦いになるような鬼は出てきてないから、最近は毎日がお休みみたいなもんだ。呼び出しがあっても、鬼疾風で駆けつけて瞬殺すれば10分かからない。

 疲れが溜まっている訳でもなし、遊び相手もほぼ居ない、意味深も出来ない。紅月は今日も仕事だし。

 橘花との遭遇を期待してフラフラ歩き回ってみたものの、どうやら今日は外出していないらしく、痕跡すら見つからなかった。

  

 となると、暇が潰せる事と言えば、勝手に出撃したり、グウェンと初穂の訓練を見たり、相変わらず微妙に刺々しい秋水に話をしてみたり、と言う所だが……まぁ、グウェンと初穂一択だわな。野郎よりも出撃、手応えの無い出撃よりもガキンチョでも女の子が優先だ。

 

 という訳で様子を見に来たんだが、やっぱ上手く行ってないなぁ。グウェンは相変わらずタマフリで躓いたままだし、初穂は…基本は充分鍛えてるんだけど、立ち回りに甘さが多い。

 グウェンは仕方ないとしても初穂には早いところ一皮剥けてもらわんと困る。

 そういう訳で、一遍鬼の手を使わせてみようと思った訳だ。

 

 怪しげっちゃ怪しげなアイテムだから最初は警戒されたが、そこはまぁ、ほら所詮は初穂だし。「将来有望なモノノフに使い心地を試してもらいたい」と、適当におだてればアッサリと。…この子の将来がちと心配だ。

 

 

 折角だからと言う事で、グウェンも連れて近場の異界を捜索する。小型鬼の相手なら、二人は安定して動けていた。タマフリが必要な相手もそうそう居ないし、油断したり多数に囲まれたりしなければ、そうそう危険は無い。

 

 

 …のだが、考えてみりゃ、それならどこで鬼の手を使うんだって話でね。鬼の手の機能自体、基本的に大型鬼を想定して作られているからなぁ…。小型鬼が相手じゃ、遠くから手を伸ばして接近するくらいしかできる事がない。地脈もそうそう見つからないし。

 マホロバ付近の異界に比べると、ウタカタの異界は入り組んでいる為、その辺の木を掴んで移動するのもあまり高い効果は無い。

 

 初穂曰く、「面白い道具だとは思うけど、使いどころが分からないわね」だそうだ。

 うーん、意外な欠点…。別に、初穂の使い方が悪い訳ではない。驚きはしたものの、初めてにしては充分使いこなせていた。手の具現化も安定していたし、狙いの付け方も充分。分銅を放つ感覚と似ているのだそうな。

 しかし、鬼に急接近するなら分銅を絡めて飛べばいい。リーチは分銅より長いが、そこまで距離を取る事は稀だ。確かに、鎖鎌だと微妙に機能が被ってるんだよな。

 

 

 

 

 まぁ、その評価も、ミフチを発見して撃退するまでだったけども。

 

 

 

 こりゃアレだな、毎回毎回流れ作業的に潰してるけど、ゲームでは主人公と初穂の跡を付けてくるヤツ。よくもまぁ、毎度毎度見つけてくれるもんだ。自殺しに来てるとしか思えんレベルだ。

 ミフチとの闘いで、グウェンと初穂は一皮剥けてくれたようだ。初穂は自信もつけたし、立ち回りが少し鋭く、狡猾になった。グウェンは死線を潜った為か(どう見ても白炎に襲われる時の方が、よっぽど危険だったが)タマフリの発動が安定するようになった。

 

 で、鬼の手の評価だが、鬼の突進を止められるのが非常にいい。巨体の体当たりってのは、どの世界でも相応に脅威だからな。無論、全ての体当たりを止められる訳じゃないが、今までは離れるしかなかった敵の行動を、チャンスに変えられると言うのは非常にデカい。

 更に、鬼葬の効果の高さたるや…いやまぁ、流石にこれは初穂じゃなくて俺が発動させたんだけどね。

 

 討鬼伝ゲームプレイヤーなら、誰だって一度は思っただろう。回転蜘蛛マジウゼェ、と。ストーリーを進めて、左程苦労せず勝てるようになっても、あのタマハミ状態の回転だけはどうにもならない。抵抗手段と言えば、不動金縛りか、破敵ノ法くらい。しかもそれで動きを止めたとしても、すぐに復活してまた回転。仕掛けるタイミングによっては、タマハミ終わり→部位破壊→即回転再開という殺意が沸くようなコンボも発動してしまう。

 アレのおかげで、余計な時間やダメージを何度喰らった事か。回転で吹っ飛ばされ、起き上がった所に丁度突っ込んで来やがった経験も一度や二度ではないだろう。避けたと思ったら、飛び散る岩が直撃し、動けなくなったところにまた突っ込んできて……ああ、思い返せば殺意が沸くさ。定めとあれば心を決めるさ、ガンギマリで。

 

 だが、あの実にクソッタレな回転も、鬼葬さえあれば怖くない! 流石に回転中に狙って決めるのは難しいが、まぁできない事も無いし。普通に回転が終わるのを待ってからやった方がいいけどね。

 足を全部吹っ飛ばされ、ジタバタする蜘蛛を見ると気分がスーッとするものだ。別に愉悦はしない。Sではあるが、俺は異形や虫を相手にそーいった楽しみを感じる人ではないからな。やるなら女の子を喜悦で狂わせ…ゲフンゲフン

 

 ともあれ、これには初穂も目を丸くしていた。グウェンは…ウタカタまでの旅で、何度か見せた事があるからな。

 是非とも習得したい、と勢い込んで頼まれたが……いやまぁ、別にいいけどよ。鬼の手使って戦ってれば、なんつーか自然に出来てしまうぞ? ホロウだって似たような感じで、特別な訓練とかした訳じゃないし。

 

 ただ、あんまり当てにしすぎるのはよろしくない。自然に出来る事ではあるが、それはつまり不自然な起動…言い換えれば、十分な気力や霊力が籠ってない状態ではできないって事でもあるんだ。つまり、一発外したら、或いは別の相手に使ったら、暫く使う事はできない。そもそも、何度か試したが、再生させない部分と、潰しても再生する部分があるようだし。

 何より、現状この鬼の手を使う為の道具は一つしかない。これを全員で…俺とホロウを除く全員で、交代しながら使う事になる。当然、自分じゃ使えない場面だって出てくる訳だ。

 決まればとんでもなく戦況を有利にできるが、これに頼り過ぎてると油断が生じて実力も落ちるぞ。

 

 

 

 …分かればよろしい。次に何かとやりあう機会があったら、その時に試してみよーぜ。

 ま、今回の戦いで、二人とも何か感覚掴んだんだろ。次の機会までは、その反復練習してなよ。基本に勝るものは無いよ。

 

 

 

 そんな塩梅で帰ってきたのだ。

 いつもだったら、「これで私も一人前!」みたいに騒ぎそうな初穂も、それより先にグウェンと二人で演習場に行ってしまった。…練習熱心なのはいい事だし、覚えた感覚を忘れないうちにって事なんだろうが…ちゃんと休めよー。

 

 

 追記 初穂に渡していた鬼の手は、しっかり返してもらいました。

 

 

 

魔禍月

 

 

 大和のお頭から、俺、ホロウが呼び出された。行ってみたところ、紅月と話している最中。

 …里のお頭の心得でも聞いてるのかな? 大和のお頭の器量はちょっと珍しいくらいだし、参考にしない手はないと思う。

 

 

 …と思っていたら、どうやら大和のお頭が、紅月から鬼の手の事を聞いていたらしい。ああ、多分初穂が自慢(?)話して、それがお頭に行ったのね。確かに、そりゃ話を聞く為に呼び出されるのも当たり前だわ。

 誰にでも使えるのか、どのように使えるのか、量産は可能なのか、その他諸々。

 が、言うまでもないが、量産は現状では不可能だ。作れるとしても、まずはマホロバの里に広めるだろうし、そもそも材料のカラクリ石は未だに安定した供給が不可能である。

 ウタカタ付近に無いかな、と思っていたんだが、全く見当たらず。万能の石さえ見つからない。やはり、マホロバ近辺でしか出来上がらないのか。

 

 

 ま、無いモノ強請りしても、手に入らないものは手に入らない。大和のお頭もそれは分かっているし、今後量産可能になった時の為に伝手を作っておきたい…という話なら、既に次期頭領候補筆頭である紅月とも面識が出来ている。

 ああだこうだ言わず、すぐにどう活用するかの話に移った。

 実際問題、どうするかは普通に悩ましいんだよな。戦いにおいて一番厄介なのは、ただでさえ強大な敵が更に力を手に入れて、手が付けられない程強大になる事。二番目に厄介なのは、大した力を持ってなくても、敵が拡散・増殖しまくって手が回らなくなる事だ。

 これを味方側にして考えると、一人で敵軍をぶっ潰せるような無双ゲーム主人公を作り上げるか、それとも徹底的にまともに戦わないゲリラ戦術に終始するかって事になるが…どっちも不可能だよなぁ。

 鬼の手を持ったって、基本的に人間のスペックは大型鬼よりもずっと下だ。一人で敵を軽く蹴散らせるようなユニットなんぞ作れない。ゲリラ戦はと言うと、これにはかなり高度が技術や連携、徹底した冷酷さが必要になるし、何より一度潰されたら人間はそう簡単に増殖できない。

 

 

 とりあえず、主要メンバー全員で使ってみて、適正を見る事になった。その為、鬼の手の第一人者(?)である俺とホロウがついて、順番に任務をこなす事になった。

 その間、防衛班の抜けた戦力は他の人達が担当、と。

 順番は桜花、伊吹、まだ会ってない富獄の兄貴、那木さん、今は遠征しているモノノフ…速鳥か。

 

 

 

 そこまでは良かったんだが、受付所の端っこで相変わらず巻物に目を通していた秋水が待ったをかけた。相変わらず、空気を読まないヤツである。

 しかし、その提案は一考に値するものだったと思う。

 

 曰く、神垣の巫女にそれを持たせてみないか、と言う事だ。桜花が反発するかと思ったが、意外と大人しく話を聞いていた。まぁ、現状じゃ武器を持たせてみるってだけで、橘花に強い負担はかからないだろうしな。

 しかし、橘花に持たせて意味があるのか?

 秋水曰く。

 

 

「カラクリ石と呼ばれる石の事は、僕も少しですが知っています。このような形に仕立て上げた、博士なる人物とは是非話をしてみたいものですが…」

 

 

 多分、良くも悪くも相手にされんぞ。傍若無人なヤツだし。

 

 

「…心に留めおきましょう。このカラクリ石、彼らが言うように、使い手の想像を具現化する力を持っています。通常の物は、うっすらと幻が出る程度と聞いていましたが、これ程に具現化できるのであれば、より効率的な使い方も出来るでしょう」

 

「だから、その使い方ってのを話せって。軽口もいいけど、お前さんの話し方はくどいぞ?」

 

「伊吹さんに言われては形無しですね。では率直に。この鬼の手を橘花さんが使えば、ウタカタの里を守る結界をより強力にできる可能性があります」

 

「ほう…確かに、それは魅力的だな」

 

「お頭! 橘花に無理をさせずとも、鬼は私が全て斬って捨てます!」

 

「桜花さん、落ち着いてください。今のは言い方が悪かったようです。より正確に言いましょう。ウタカタの里を守る結界を、より小さな力で、そして強力に張る事が出来ます。橘花さんの負担も、今よりは少なくなるでしょう」

 

「何…?」

 

 

 上手く行けば…の話だろ? その辺どうなんよ、ホロウ。

 

 

「可能性はあります。鬼の手を使い続けるうちに分かりましたが、手を具現化するのに必要なのは、より詳細な想像と、そして効率的な霊力の使い方です。例えば鬼葬で鬼を殴りつけるにしても、漠然と握った手をぶつけるのを想像するより、しっかりと拳を握り、急所を狙い、四肢を連動させるかのように霊力を流し込めば、それだけ効果が上がります。従って、鬼の手を介して結界を張る術を使えば、『結界が具現化される』という結果もあるやもしれません」

 

 

 結界を張るのではなく、結界が具現化ねぇ…。まぁ、実際やってみないと分からんけどさ。

 危険は?

 

 

「私が使う鬼の手では、特にありませんでした。未完成のこれで大丈夫だったのですから、完全版でも大丈夫でしょう」

 

「ふむ…。一考の余地ありと見た。どの道、一度持たせたらずっと任せ続ける訳でもない。大きな戦がありそうな時はモノノフに持たせ、それ以外の時は橘花に持たせるのでもよかろう。

 

 

 

 うーん、何だか予想外の方向に話が転がったが、まぁ有効な使い方が増えるのは問題ない。

 ただ、秋水の目的…橘花を揺さぶって逃げださせようとする…を考えると、何故提案したのかが分からないが。…楽になった、と思わせておいて、その後に更なる苦難に突き落とす? 面倒なやり口だな。

 確かゲームでは「揺すってやればすぐに逃げ出すと思っていた」なんて発言もあったし、そう入り組んだ手は使わないと思うんだが。

 

 

 ま、いいか。秋水はどうにも胡散臭いし、スパイなのも事実だが、どういう訳だかウタカタに大きな損害を与えるような行動はしていない。陰陽方からの命令だって、もっと楽なやり方も山ほどあるだろうに。

 …その手法をとるのを嫌っているんだろうか。或いは、何やら譲れない拘りや意地、美学でも持っているのか。

 一辺話をしてみたいところだが、妙に嫌われてるんだよな、今回。

 

 

 

 ともあれ、鬼の手の性能・適正テストだ。

 

 

 

魔禍月

 

 

 同じ鬼の手でも、使い手によって差が出てくるなぁ。アラタマフリ・ニギタマフリを含めれば猶更だ。

 とりあえず桜花と伊吹が試したが、桜花は防御に、伊吹は攻撃に使う事が多い。イメージと逆…でもないか? 桜花のミタマスタイルは基本的に防だし。

 

 

 桜花の基本的な使い方は、鬼返が基本になる。突進を跳ね返してからの、アラタマフリが強いのなんのって。捧護剣、だっけ? 使ってる間は防御が薄くなるらしいけど、その分火力が高い高い。敵がひっくり返ってる間に使うから、横槍が来なければデメリットも無い。

 伊吹はと言うと、魂スタイルのニギタマフリ…呪禁を活用しまくっている。敵の動きを制限する術だが、タメ技が多い槍にとっては非常に相性が良かったようだ。逆に、鬼返しはあまり使わない。突進してくるのを止めるには、槍衾を使う事の方が多い。

 

 ふぅんむ、可もなく不可もなく…ってとこか?

 効果は絶賛されてはいるが、どうしても必要って感想ではない。まぁ、今はまだストーリー序盤だからそれだけ余裕があるって事なんだろうけども。

 

 

 んじゃ、次は富獄の兄貴か。今回ループでは会うのは初めてだな。

 適当な任務で試すから、後から合流してこい………っておい、これカゼキリが相手のイベントじゃないか? 突然襲われるモノノフが増えている、って…。

 しかし那木さんは居ない。代わりにホロウが居るし、そもそも下位のカゼキリに今更手古摺りはしないが。

 

 とりあえず、その辺で適当に素材を拾いつつ現場に向かうと、何やら瞑想している富獄の兄貴を発見。周囲に敵がいるのに瞑想するのもどうなんよ。まぁ、無事だったし、この人の事だから周囲の警戒は怠ってないだろうけども。

 実際、俺達が到着すると同時にすぐ立ち上がったしな。

 

 

「よぉ、待ってたぜ。相当やるらしいじゃねぇか」

 

 

 歯をむき出しにして笑いかけてくる富獄の兄貴(23歳老け顔)。これで那木さんより年下ってのが信じられん。

 

 まぁ、そこそこの自信はあるよ。ただ武術に関してはあんまり期待しないでくれ。人間相手の技法は殆ど修めてない。

 

 

「そうは見えねぇが…まぁ、確かに正面からの殴り合いより、後ろから脾腹を一突きする体してるな」

 

「どんな体ですか」

 

「お前はお前で…筋肉の付き方がよく分からん。不自然すぎる。どこをどう鍛えりゃそうなるんだ」

 

「私は最初からこうでしたので、鍛え方に関しては全く分かりません」

 

「なんだそりゃ?」

 

 

 あー…人造人間だもんなぁ。

 

 

「まぁいい。んで、例の妙な道具とやらはどうなんだ。面倒な物は嫌いなんだがな」

 

 

 着けて霊力流し込めば勝手に発動するから、別に面倒じゃないと思いますが。まぁ、現在の戦いにどうやって組み込むかは任せますが」

 

 

「どれ…ほぉ、この手袋か。ちっと小せえな…入るには入ったが、思い切り力入れたら破れるんじゃないか?」

 

「大きさを調節する機能もあります…はい、できました。ところで、モノノフを突然襲ってくる鬼は?」

 

「ここに来てから暫く経ったが、全く出現しねえな。雑魚を相手に実験ってのもつまらねぇが」

 

 

 小型が相手だと、あんまり意味がないんだよなぁ。

 ふむ……鬼の目+鷹の目!

 

 

 

 …お、あったあった。二人とも、鬼はこっちだわ。

 

 

「ん? 何だ、手がかりでも見つけたのか」

 

 

 ああ、足跡が微かに残ってる。で、ここから霊力の残り香を辿って………ちょっと前までこの辺に居たらしいし、そこまで遠くじゃなさそうだ。

 富獄の兄貴と入れ替わりで立ち去ったみたいだな。

 

 

「はっ、そりゃ悪運の強い鬼だな。ま、こうやって追いかけられるなら、結果は変わらないだろうけどよ」

 

「自信家なのは結構ですが、鬼の手の実験を忘れないようにしてください。例えば移動中でも、このように…」

 

 

 うにょーんとホロウの腕が伸び、次の瞬間には木の枝の上に陣取った。

 

 

「このように、楽して移動ができます」

 

「動きは速そうだが、俺は好かんな。空中に居るって事は、それだけ動きが制限されるって事だからな」

 

 

 おお、武術家らしい意見だこと。ま、確かに人間はガン○ムみたいに大地に立つのが基本だわな。実際はガン○ムが人間みたいに大地に立つ訳だが。ただしコロニーの。

 

 

「よく分からんが、それより鬼はまだか?」

 

 

 …近づいては居る…ようだけど、こりゃちょっと問題かな。一匹だけじゃなさそうだ。どうやら鬼の巣に戻ってるようだぞ。

 

 

「巣…ですか。規模は?」

 

 

 同じくらいの大きさ四足歩行が少なくとも5匹以上、7匹以下。って事は、カゼキリだろうな。

 

 

「そんだけいりゃあ、アマキリも一匹くらいは混じってるだろうな。しかも巣って事は乱戦になるか…」

 

 

 …人の活動領域に近いところに巣を作るとはなぁ。こりゃ放っておく訳にはいかん。このまま巣の規模が大きくなれば、この領域全般でカゼキリが猛威を奮う事になる。

 その名の通り、風を斬るように近づいてきてモノノフに食らいつくのがカゼキリだ。つまり奇襲。不意を突いた一撃で行動不能になるのが一番ヤバい。俺達もそうだが、偵察班は戦闘能力やしぶとさが低いから更にヤバい。

 一匹だけならまだしも、何匹も連続で襲ってきて、しかも逃げた先にもカゼキリが待っている、なんて事になりかねない。

 

 

「一匹一匹はともかく、乱戦は避けるべきだな。…おい、この鬼の手とやらで、なんか都合のいい機能とか無いのかよ」

 

 

 強いて言うなら、鬼絡かな。さっきホロウがやってたやつ。アレを使って長距離を一気に移動して、囲まれる前に脱出するとか。

 ま、幸いこっちも3人いるんだし、それなりにやりようはあるな。

 

 案①一匹ずつ上手く誘い出し、3人で袋叩き。

 案②最初から3人で分散して戦う。上手く引き付ければ1人につき2体+1体。

 案③鬼の手で一本釣りして動けなくさせ、助けようと近寄ってきたカゼキリを集中攻撃。所謂釣り野伏せ

 

 

「②は却下だ。二人に一匹ずつカゼキリが来て、残った一人に他の鬼が殺到する。あいつらにもそれくらいの頭はある」

 

「③を推奨したいところですが、一本釣りとは?」

 

 

 文字通りだ。具現化した鬼の手を使って鷲掴みにして釣り上げる。これをやるなら、ホロウが適任だと思う。日頃から何かと使いまくってるし。 

 

 

「確かに、鬼の手を使ってお茶やお菓子を取ってくるのも日常茶飯事です。…あの鬼達を饅頭だと思えばやれるでしょう」

 

 

 饅頭よりも野菜巻きだと思った方がいいんじゃねーの。マホロバの里で、久音さんがカゼキリの肉を使って作ろうとしてたな。

 

 

「…率直に言って食いたくねぇが…まぁいい。そんじゃ、一丁やるか。鬼の手とやらの効果、見せてもらおうかい」

 

 

 アンタも使ってみるんだよぉ!

 

 

 

 

 

 

 

 …ま、勝つには勝ったが、えらい増えたな。

 確かにカゼキリアマキリは合わせて7体以下だった。が、空飛んでヒノマガトリが乱入してくるは、よく似ているけどちょっと違う…なんか異様に声が煩いのも飛んでくるは。

 

 おまけになんだ、あの……なんちゅうの、足? としか言いようがない鬼は。いやもう本当に目を疑ったわ。カゼキリ達の巣の真ん中あたりにあった巨石だか巨木だかから出現したように見えたんだが、その姿がな…。

 下半身オンリーだった。しかもバカみたいにデカい。少なくとも足だけでトコヨノオウとかより大きくて、仮にアレに上半身が乗ってれば、確実に全長はイヅチカナタより大きくなるだろう。

 ご丁寧にもパンツ(柄は典型的な鬼のパンツ)……と言うか前掛けと言うか…をつけていて、繰り出される蹴りや踏み付けは強力無比。間違って蹴られたアマキリが消し飛んだわ。

 

 しかし間抜けな事に、下半身だけしかないから敵味方の区別がつかないらしい。偶然当たった物を蹴っ飛ばすだけで、後はフラフラフラフラ…。アマキリ一体の他には、木が3~4本圧し折れただけ。暫くしたら消えて行ってしまった。

 何だったんだ…。しかし、あのパワーからして、上半身があったら苦戦、下手すると変身してようやく相手が出来るくらいの強さである可能性が高い。これはちょっと報告しておかないとな…。

 

 

 

 尚、富獄の兄貴からの鬼の手は好評。高いところへの攻撃が非常にやりやすいそうな。ああ、手甲ってリーチ短いもんね。反面、威力については全く期待していないとの事。武術家としては、自分の拳こそが至高の武器という考えか。

 

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