※この作品はR-18です。

狩りゲー世界転生輪   作:時守 暦

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ちょっと更新が滞るかもしれません。次の次くらいでエロ語りが入りそうですが…。


第212話

魔禍月

 

 

 ホロウが偵察に出たままなんで、俺は橘花と訓練中。紅月は今日は防衛班の仕事はお休みらしいんで、橘花の訓練の見物をしています。

 …これって盗られないように監視してんのかな…。一回ちゃんと話し合ったし、自意識過剰か? 

 

 ま、それはともかく、訓練だけじゃ橘花も息が詰まるだろうから、「息抜き」も健全な範囲で教えています。今までのループで、どんなのがお気に入りかは知ってるからね。

 …いや、木登りに鬼の手を使うのは邪道…でもそれもちゃんとした扱い方のうちだしなぁ。

 

 

 他に目立ったイベントと言えば、紅月の料理で橘花が倒れた事くらいだろうか。桜花が狂乱して、あわや斬りかかるかと思われたが、「姉様の料理も同じくらいでしたよ」と橘花に言われて凹んでいた。

 ちなみに紅月には、罰として暫く料理禁止令が出された。練習もダメよ?

 

 

 

 

 話は変わるが、清磨が里に戻ってきていた。

 …言っちゃなんだが、影薄いなぁ…。それも仕方ないけどね。里人との交流があまりなく、異界をフラフラ歩き回ってるし。

 天才鍛冶師と言っても、ウタカタにはその上を行くタタラさんが居る。時々しか姿を見せない清磨に頼まないといけない仕事なんて、そうそう無い。

 で、当人も前に感じた壁とやらを破れず悩んだままらしいし。

 

 それはそれとして、異界の中で妙な物を見なかったか聞いてみた。具体的には鬼下半身とか、大型鬼が集まっている状況とか。

 

 

 

 

 …それらしいものは見た、らしい。遠目にだったが……鬼下半身、エラく暴れていたとかなんとか。

 流石にアレに近寄るのは危険すぎるのでさっさと逃げたらしいが、聞いたところによると………あくまで清磨の、遠目からの感想だが…鬼達は、あの下半身を崇めているような気がした…のだそうだ。

 …下半身を崇めるってなぁ…そりゃあんだけデカい下半身なら、マーラ様だって相応に御立派だとは思うが。

 

 鬼が鬼を崇めるなんて事、あるんだろうか? 崇めるとは言わないまでも、どうも鬼にも指揮系統はあるみたいだし、上司や社長に対して礼を尽くす、みたいな話ならまだ分からんでもないが…でも、今回の場合、その相手は状況や相手を顧みずにただ只管暴れ回る、下半身のみの鬼だぞ?

 うむむむ…。

 

 とりあえず、清磨が目撃した場所と時間を聞き出してみると、どうやら速鳥が撤退した後、またどこかに移動した後だったようだ。

 つまり、現状では最新の目撃情報である。大和のお頭の所に引っ張っていき、作戦会議。

 

 

 …していたところに、秋水が情報を持ってやってきた。

 あの鬼下半身について、「あくまでそれらしい情報というだけですが」と前置きをして。…こいつがこんな風に言うって、結構珍しいよな。いつもだったら何かしらの確信を持ってから話をすると思うんだが。

 

 

 

「皆さんが見たという下半身だけの鬼ですが、「マガツミカド」と呼ばれる鬼かもしれません」

 

「マガツミカド…聞いた事が無いな」

 

「いえ、名前はともかく、モノノフなら誰でも一度はある筈です。これを見てください」

 

 

 秋水が差しだした資料は……まぁその、所謂……子供向けの物語? 昔話とか、おとぎ話とかの本だった。別に珍しいもんじゃない。その辺の本屋にでも行けば、一冊二冊は置いてあるようなものだ。

 …これが?

 

 

「子供向けの話ではありますが、その原型となる物語は古来より伝えられてきたものです。分かりやすい例を挙げるなら、鬼は地獄の獄卒であり、地獄に落ちた罪人を責める役割を持っている…等ですね。このような絵巻に書かれている鬼は、大体同じ姿形をしています。二本の角があり、屈強な体をしていて、金棒を持っている」

 

「実際の鬼とは、似ても似つかんな。人型の鬼すら珍しいと言うのに」

 

「ええ。ですが、こうは考えられませんか? 鬼と言えば、大抵の人はまずこのような姿を思い浮かべます。ならば、原型となる…そう、『鬼』と言われると真っ先に思い浮かぶ、他の鬼よりもずっと強力な『何か』がいたのだと」

 

 

 それは…まぁ、考えられない事ではないが。単純にこの姿が偶然広まっていっただけかもしれんけど。

 

 

「ええ、その辺りは水掛け論になってしまうのは承知しています。では、次にこの資料を」

 

 

 次に差し出されたのは、妙に新しい巻物。…だが、書かれている文章や絵は非常に古臭い。

 …写本か?

 

 

「はい、その通りです。とある筋から仕入れた物なのですが、霊山でも珍しい程に古い資料が基になっています。そこに書いてあるのが、マガツミカド」

 

「…む、読みづらいな…」

 

「ひどく古い文体ですから…。マガツミカド。見上げる程の、他の鬼を圧倒する程の巨体を持ち、四本の腕、二本の角、片腕には図太い金棒を持ち、火、水、風、地、そして天の力を操る怪力乱神の鬼」

 

 

 節操がない鬼だな…その話が本当だとすると、弱点属性は無いかもしれん。

 それで、その鬼があの下半身だと思う理由は? 単に図体のデカさが問題か?

 

 

「それもありますが、ここに書かれている資料によると、この鬼は他の鬼とは少し違う性質を持っているようなのです。この鬼は多くの鬼の祖であると同時に、鬼と群れる事をしない鬼。祖として崇められると同時に、畏れられ、荒れ狂い、果てに封じ込められた鬼でもあります」

 

「封じられた…鬼が鬼を封じたというのか?」

 

「はい。鬼達にも、曲がりなりにも社会性や指揮系統がある、と考えられているのはご存知だと思います。ですが、マガツミカドにそれは当て嵌まりません。…この資料が本当であれば、ですがね。その昔、数を増やしてきた鬼達とも関係なく荒れ狂い、人にも鬼にも多大な被害を出したとあります。見境なく荒れ狂う内に、何が切っ掛けだったのか、その体を両断されて封じ込められたそうです」

 

 

 …その下半身が、あの鬼と言いたい訳だ。確かに、アレが初めて出現した時、封じられていたモノが出てきたような印象はあったが…。

 そもそも何故鬼はこいつの封印を解いたんだ? 伝承が確かなら、鬼にだって相当な被害が出るのは分かり切ってるだろうに。

 

 

「さぁ、それは僕にも。鬼がマガツミカドの事を伝承として伝えているのかもわかりませんし。封印を見つけたから解いてみただけかもしれません。味方が封じられていると思っていたら、大災害が出てきたのか。存外、何者かの意思が介入しているのかもしれませんね」

 

 

 

 …あっ。

 

 

「何か心当たりでも?」

 

 

 いや何でもね。

 

 

「…何にせよ、この鬼の半身が、まだどこかに封じられていると言う事だな。放っておけば鬼の被害も出るだろうが、人間側に今まで以上の被害が出るだろう。封印を解くのを妨害するか、今のうちに下半身だけでも始末しておかねばならん」

 

 

 正直キツいっすよ…? まぁ、やれなくもないとは思いますが。

 しかし、本当に上半身がどっかに封印されてたとして、仮に融合したら…。

 

 

「戦力は2倍どころでは済まないでしょうね。僕はもう少し伝手を辿って、半身がどこかに封じられてないか調べてみます」

 

「うむ、ご苦労だった。…さて、どうしたものか。鬼が集結しているのも気になるが、まずは問題の鬼の居場所を特定せねば…」

 

 

 あー、そんなら適当な鬼を狩ってきて、橘花に千里眼の術とか使ってもらえばいいでしょ。多分、指揮官の居場所とか分かるっしょ。

 んじゃ、悪いけど考えるのはお頭に任せます。俺はちょっと用事が出来たんで。

 

 

「む、分かった。近い内に、討伐作戦を組むことになるだろう。…イツクサの英雄を超えるというその腕、存分に奮ってもらうぞ。…『隠し玉』とやらも含めてな」

 

 

 隠し玉を使うかどうかは俺の判断次第っすな。

 …さて。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 おーい秋水ー、B-29を撃墜しようぜー。

 

 

「あなたは何を言っているんですか」

 

 

 じゃあ武装錬金でもいいよ。

 小粋な駄冗句はともかくとして、ちょっと聞きたい事があるんだけど。

 

 

「…どうぞ」

 

 

 率直に聞くが、鬼下半身の封印を解いたのって陰陽方?

 

 

「ええ、その通りです。よくわかりましたね」

 

 

 そら、見計らったような時期にそれらしい情報を持ってくるし、お前の背後関係を考えるとな。

 …虚海か?

 

 

「そこまでご存じとは。…ですが、虚海さんではありません。お知り合いですか?」

 

 

 いや、俺が一方的に知ってるだけ。…ああ、そうだ。今度虚海に会う事があったら、「ホロウおねえちゃんが来てる」って伝えておいてくれ。

 

 

「ホロウさん? …分かりました。要件はそれだけですか?」

 

 

 いやいや、色々聞きたい事はあるよ。何であんなモノを復活させたのか、何に使うつもりなのか、とか。

 でも差し当たり気になるのは、なーんかお前、妙に俺らに風当たりがきつくね? 特にグウェンに。

 洋モノは苦手か? シーハーシーハーアイムカミングよりも、大和撫子っぽく声を抑えようとするのが好みか?

 

 

「よくわかりませんが、凄まじい名誉棄損を受けている気がします。………貴方達は、九葉軍師の庇護下にあると聞きました。それが理由です」

 

 

 九葉のオッサン? まぁ、確かにグウェンは庇護下っちゃ庇護下だが。それがどう繋がる? 確かに悪人面で、良くも悪くも腹括って非道をやるタイプだと思うが、お前と関係があるのか?

 

 

「……『血塗れの鬼』を御存知ないので?」

 

 

 知らん。あのおっさんの事だから、何か非常な決断を下した結果の渾名……ああ、それで見捨てられた方…か。

 

 

「ええ。…僕は、北の地の出身ですので」

 

 

 見捨てられたんだったか…。その決断を下したのが、九葉のオッサンか。

 それは分かったが、この際だからもう一つ聞いておく。

 里の結界を強化しようとした理由はなんだ? お前が陰陽方からの間諜で、橘花を揺さぶって結界を揺るがそうとしてたのは知ってる。

 だが、先日の鬼の手を使った提案はその真逆。確かに不確定要素の高い提案だったが、橘花の心理に圧迫を与える訳じゃないし、肉体的にも負担を軽減する内容だった。

 陰陽方の言いなりになるようなヤツじゃないのは分かってるが…何が目的だ?

 

 

 

「……僕も、貴方達が来ていなければ、あのような提案はしてなかったでしょうね」

 

 

 うん?

 

 

「先程も言いましたが、僕はあの男が見捨てた北の地の出身です。そんな僕が、あの男への意趣返しをするとしたら、どんな手を使うと思いますか?」

 

 

 意趣返し…お前が、あのオッサンに?

 心臓を一突きとか、身柄を攫って鬼の群れの中に置いて来る…じゃないよな。

 頭のいい奴らが考える事は分からんよ。「それがお返しになってんの?」って思うような行動だろうけど。

 

 

「そんなに難しい話ではありませんよ。…あの男は犠牲を出す事を容認し、北の地を捨てて霊山を守った。なら、その見捨てられた北の地が、誰一人見捨てずに困難を打破できれば……あの男の選択は間違いだったと証明できる」

 

 

 …できる、か? 仮に出来たとしても、あのオッサンはそれでどうこうなるタマじゃないと思うが…。

 まぁ、分かったような分からんような。要は…意地みたいなものか。

 

 

「ええ、そうですね。突き詰めてしまえば、その一言です。元より、橘花さんを揺さぶれば、すぐに逃げ出すだろうとは思っていましたがね」

 

 

 逃げれば神垣の巫女として死ぬ事もない…か。まぁ、その後生きていけるかは別問題だけど。

 

 

「原因が他の事であるならまだしも、今回のマガツミカドの出現には、陰陽方も関わっています。その為に神垣の巫女を使い潰すような事は、容認できません」

 

 

 意外と意地っ張りと言うか、妙な所で筋を通すヤツだな…。で、俺達が結界を強化できそうな手段を持っていたので、これ幸いと提案したと」

 

 

「そういう事です。…マガツミカドの封印を解いた陰陽方の長老は、その後音信不通となっています。何を考えて封印を解いたのか、封印を解いた後にどうなったのかはわかりませんが…」

 

 

 ロクでもない事しか起きないだろうな。…あれ、でもアレの封印を解いたのって鬼じゃないのか?

 出現した時、近くにそれらしい人間は居なかったぞ。

 

 

「多少であれば、鬼を操る事も出来るんですよ。そうでなくとも、封印を限りなく弱めておけば、近くの鬼がちょっかいを出して、完全に解き放つ事も考えられます」

 

 

 ふーん。厄介な話だこと…。

 ま、いいか。とりあえず聞きたい事はそれだけだ。

 …っと、お前はこれからどうするんだ?

 

 

「これまでと変わりありませんよ。陰陽方との繋がりにしても、大和のお頭にはとっくに筒抜けで、泳がされているのですしね。少なくとも、マガツミカドをどうにかするという点については全面協力しますよ」

 

 

 そうかい。ま、橘花に妙なちょっかいを出して桜花に斬られかけたり、那木さんのおっぱいに顔を埋めてボコられたりしないようにな。

 

 

「…何を想定しているのか分かりませんね。よくわかりませんが、気を付けるとしましょう。それでは、僕はこれで」

 

 

 

 秋水はそのまま去っていった。相変わらず、考え方がよく分からないヤツだ。

 しかし、実際どうしたものやら。今回、秋水はこれ以上警戒しなくてもよさそうだが、陰陽方がな…。マガツミカドを使って何をしようとしたのやら。

 放っておくとロクな事になりそうにない。

 しかし、俺にも秋水にもあまり伝手はなさそうだし………やっぱ、虚海を篭絡するか?

 

 

 

 

 

 

 

魔禍月

 

 

 マガツミカドの事はともかくとして、今日も今日とて任務任務。

 今日は那木さんと二人で出かける事になった。速鳥の傷に妙な毒がひっついていたらしく、命に別状は無いが解毒薬が欲しいとの事。

 先日から運営を始めた菜園にも、これに当たる物は無い。幸い、その薬の原料になる物はあまり珍しいものではないようなので、二人で採取に来た訳だ。

 

 

 …他に誰も居ないし、ここに来た理由が理由だから、丁度いいかな。

 

 那木さん、ちょっと踏み入った事聞くんだけど。

 

 

「はい、何でしょう?」

 

 

 那木さんって医者だよな? 前に速鳥が傷を負って戻ってきた時、どうしてその場で応急処置とかしなかったのかな、と思って。

 

 

「………それは」

 

 

 …いやすまん、言い方が悪かった。こんなご時世だし、医者が潰れそうになる切っ掛けは相場が決まってる。自信を無くしたか、誰かを助けられなかったか…。

 別にその切っ掛けを聞きたい訳じゃないんだ。俺には何もできる気がしないし。

 

 ただ、ね…。

 

 

「……ただ?」

 

 

 …前にも同じような人が居て(と言うか前ループの那木さんだけど)、同じ事を言ったんだけど………別に診療とか手術とかはしなくていいから、タマフリ使って治療すりゃいいじゃん。

 内臓とか繊細な部分はともかくとして、タマフリで応急処置するだけなら細かい事考えんでええやろ。任務の最中にもやってる事だし。

 

 

 

「………き、驚天動地にございます…」

 

 

 

 …リアクションも前回と同じか。

 そういや、速鳥の様態はどうなってんの?

 

 

「速鳥様でしたら、体はほぼ回復しています。『この程度なら問題ない』と、負傷を押して任務に戻るのを止める方が苦労しましたわ」

 

 

 俺もそうだけど、結構医者泣かせだなぁ…。速鳥も結構拗らせてるしなぁ。

 

 

「拗らせる?」

 

 

 いや、何でもねっす。

 …ただ……あんまり口外するのもなんだけど、これから鬼との闘いは加速度的に厳しくなる。俺何ぞに言われるまでもなく理解はしてるだろうし、一番どうにかしたいと思ってるのは那木さん本人なんだろうが、やっぱ医者が居ると居ないとでは環境が全く違う。

 何とか、医者として復帰してほしい……と思う。

 

 

「………えぇ、分かっております。……言われずとも…」

 

 

 …言われずとも、か。那木さんにしちゃ、苛立ちと言うか含みがある返答だ。…ま、そりゃそうだよな。本当に、ずっと悩んで苦しみ続けてるのは那木さんだ。どうにかしたいと、誰よりも思ってるんだ。それを、ロクに事情も知らない俺に、簡単な事のように口出しされちゃ反発もする。

 ドジったかな…。せめて紅月との仲に影響が出なければいいんだが。

 

 

 

 

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