※この作品はR-18です。

狩りゲー世界転生輪   作:時守 暦

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第213話

 

魔禍月

 

 

 

 速鳥が復帰した。那木さん的には、もう少し休んでおいてほしい所だったが、本人は大丈夫だと言ってきかないし……何より、それどころではなくなってしまった。

 そろそろ来るかな、とは思ってたんだよ、大攻勢。

 マガツミカドの下半身というイレギュラーがあって、あっちも足並みを乱されていたようだけど、大きな戦力が集まっていたのは事実だし。

 

 

 ただなぁ、正直今回は焦ったわ。前触れらしい前触れが無かったと言うか、あった事はあったけどずーっと続いていたから分からなかった。異界の中で集まる鬼なんぞ、今までは発見したら即大規模な襲撃に繋がってた。でも今回は、集まってはいるけどこっちには来ない…。

 そんな状況が続いてた。それで気を緩めてしまう、というのが一番阿呆な事で、俺達全員それをやっちまった訳だが。

 九葉のオッサンが見たら、凄まじく心を抉る一言が飛んできそうである。

 

 

 

 ともあれ、実は今でも大攻勢のド真ん中で、ちょっと休憩しつつ日記を書いている。

 

 

 いやはや、今回は本当に色々と想定外だわ。大攻勢のタイミングが変わるは、トンデモ下半身鬼は出てくるは、初穂にアラガミ化を見られるはよぉ…。

 

 

 

 とりあえず、順番に書いていこうか。

 事の始まりは、里の防衛隊が見回り中に襲撃を受けた、という知らせだった。うん、ぶっちゃけゲームで言う伊吹のイベントのアレだね。

 ゲームや前ループでは、襲撃を防げず、死者が出て、伊吹が塞ぎ込んだもんだが…今回はそれは無かった。ホロウが教えた、鬼疾風のおかげである。

 まぁ、重傷者は出たんだけどね。最初の襲撃で傷を負った班員が居て、彼らを庇う為に3人が攪乱に回り、一人が里へ走った。全員が鬼疾風を駆使して鬼を攪乱し、見事生き延びたのである。戦場で一番重要なのは逃げ足なんだね、よく分かるね。

 

 

 襲ってきたのは、毎度お馴染み・追い詰められると逆立ちするファンキー野郎として名高い、タケイクサである。

 

 

 

 

 

 ただし下半身がついている。

 

 

 

 下半身がついている。

 

 

 

 しかもどっかで見たような下半身が。

 

 

 

 と言うかサイズ比がちょっとおかしいな。下半身に比べ、上半身は2周りくらい小さい。筋肉の付き方も、タケイクサも大概だが、下半身はその更に上を行く。…まぁ、鬼の筋肉の付き方なんて、人間と同じ比率で語れるかって話だが。

 

 

 

 

 

 …ああもう、分かってるよ考えるだけ無駄だよ。何でマガツイクサの下半身の上に、タケイクサが合体してんだよ。

 アレか、実はタケイクサってのはマガツイクサの事だったのか。そういや、タケイクサの下半身は封印されてるって話を聞いた事があるような無いような。

 

 …うん、確かに封印されてたね、マガツイクサと言うか下半身。

 

 

 

 

 いやぁ、真っ先に伊吹と一緒に駆け付けたんだけど、久しぶりにマジでキツかった。下手な古龍より強力だった。討鬼伝世界の底力を見た気分だな。

 足の力は手の3倍はあるっていうけど、あの厄介さは3倍程度じゃ済まなかったぞ。下半身がアホみたいに強力なのは知ってたつもりだったが、上半身…文字通り、下半身を制御する頭脳がついただけで、ああまで厄介に化けやがる。

 下半身が出来た事による機動力の上昇、近づけば即死級の蹴りが飛んでくる、更に、元々タケイクサが持っていた攻撃方法…炎と氷の攻撃力や効果範囲がアホみたいに高い。

 絨毯爆撃ってああいうのを言うんだな。

 

 強力な力を得て舞い上がってるのが目に見えていた。とにかく力をバラ撒くだけで、とんでもない脅威になる。これを相手に、負傷した味方を庇って攪乱を続けていた連中は、本当にいい腕してる。モノノフの主力部隊に組み込めないかと思うくらいに。

 

 

 

 …で、まぁ、そこまでは良かったんだ、まだ。負傷した班員も、俺と伊吹がタケイクサ+マガツミカドを引き付けている内に回収され、此奴の攻撃にも慣れてきた。何て事はない、範囲攻撃をばらまいてるだけで、こっちを狙っちゃいないのだ。コイツが『誰を見て』ではなく『どこを見て』力を放出するかを観察すれば、鬼疾風を使って攻撃範囲から逃げ切るのは難しくない。

 援軍として初穂(一番近くに居たらしい)も到着し、伊吹と二人係で時間を稼いでもらって、チャンスを見計らって鬼葬を決める。

 タケイクサの氷を宿した手が吹っ飛んだ。

 

 

 「よっしゃ!」と伊吹と初穂が叫んだが……異変はそこからだった。

 

 

 なんつうかね……タケイクサが潰れたんだわ。俺らが倒した訳じゃない。鬼葬でぶっ飛ばした訳でもない。内側…いや、『下側』から潰された、と言うのが一番正しい表現だったと思う。

 丸で、腹の中に仕込まれていた爆弾が破裂したかのようだった。タケイクサの腹から上で、とてつもない衝撃で吹き飛ばされたようだった。

 思わず皆して意識を飛ばしてしまい、丁度飛び掛かっていた初穂に至っては着地に失敗して尻餅ついたくらいだ。

 

 何か色々よく分からんと言うかスッキリしないが、勝ちは勝ち…なのか? しかし、マガツミカドの下半身はまだ残ってるし…あれ、でも今までと違って暴れださないな…と考えた時、一匹の鬼が飛んできた。

 面倒くさい鬼のトップ3に入る、ダイマエンである。まぁ、今更単なるダイマエンなんて、瞬殺して終り…と考えたのがフラグだったのだろうか。

 

 

 

 合体しやがった。

 

 

 ガシャーンと。ジャキーンと。いや、実際はそんな超合金っぽい音じゃなくて、肉と肉が交じり合うよーなジュブジュブグニュグニュした音だったんだけども。

 

 

 ともかく、上半身が無くなってたマガツミカド下半身と、今度はダイマエンが合体した。下半身と下半身で合体したんじゃなくて…いやある意味そうなのか?マガツミカドの下半身に、ダイマエンが自分の下半身を突っ込んだんだし。

 しかし合体の仕方は、ホモやゲイがまだマトモに見えるくらいに生物学的機能を無視した合体だ。ある意味リョナだ。

 

 

 で、今度はダイマエンが上半身になって暴れ始めた。…その下半身はアレか、マジンガーのボディ的な何かなのか。タケイクサやダイマエンがホバーパイルダーなのか。

 鬼の生態って分からねーな。

 

 でもまぁ、取り敢えず暴れ始めたダイマエン+マガツミカド、略してダイマミカドをどうにかせにゃならん訳で。

 更に面倒な事に、ダイマエンが飛んできた方向から、多数の鬼の気配。……これか、このタイミングで大攻勢か! いや、さっきのタケイクサ+マガツミカドが先方だったのか?

 

 まぁ、押し寄せてくる軍勢に関しては、丁度里のモノノフ達が総出で出撃してきたから、そっちに任せるとして。

 

 

 

 …俺と伊吹、初穂はこのダイマミカドをどうにかせにゃならん訳だ。

 攻撃属性は土一択になったが、厄介さはさっき以上だな。蹴りの威力はさっきと同等、だってのに足踏みしたら離れた場所の地面が隆起する。…ああ、こんな攻撃あったよなー。小ジャンプして着地したら、距離に関係なく狙われるっての。

 更に羽を飛ばしてくるし、サイズ比を無視して平然と空を飛ぶし。

 なんだっつーのだ、全く。

 

 

 ただ、こっちにも勝機が無いでは無い。下半身はアホみたいにタフだから、上半身のダイマエンを狙う。

 そして、さっきのタケイクサが吹き飛んだ現象…アレがカギだ。恐らく、他の鬼がパイルダーオンする事で、下半身を制御しているのだろう。しかし、その方法もノーリスクではない。充分な力で抑え込まなければ、反発と言うか反動で吹き飛ばされる。

 タケイクサは、鬼葬を受けて力のバランスが崩れたか何かで、下半身を抑え込めなくなったのだろう。その結果、噴き出した力で合体していたタケイクサが吹き飛んだ。

 

 これと同じ事を、今度のダイマエンでもやればいい。そして下半身が動かなくなっている間に、小指なりポークビッツ(大)なり向う脛なりを全力でブン殴って潰す。これしかない。

 

 

 …と言う訳で、なんかもう加速度的にややこしくなる状況の中、もう一発鬼葬を放とうと、エネルギーとかテンションとか武器ゲージとか浪漫回路とか、そーいった物をフル回転させてたんだが……久々に凡ミスしたわ…。

 チャージからの回避が間に合わなかった。ダイマミカドの突進が思ってたより早かったとか、言い訳にもならんな。

 

 ゲージ(実際にはそんなモン無いからあくまで比喩な!)がフルになって、ブーストを辞めた隙を突かれた。伊吹と初穂が攪乱していたのに、それを突然無視して俺に突っ込んで来やがった。

 哀れと言うかブザマと言うか、俺は突進からのサッカーボールキックを見事に貰ってしまった訳だ。

 

 吹っ飛ばされる間に、岸壁をちょっと削ったと思う。何度か強い衝撃と、岩が砕けるような感触が伝わってきたし。まぁ骨が砕ける感覚もあった訳ですが。

 

 

 

 

 

 

 

 

 …多分、1分くらいは気絶してたと思う。まー無理もないよな。いくらハンターゴッドイーターモノノフアラガミ以下略だって言っても、ドラゴンボールみたいな吹っ飛ばされ方をしたら気絶もするわ。

 尤も、目が覚めた時には、痛みもダメージも、戦闘続行可能なまでには回復してたんだけどね。それでも、二乙した挙句に瀕死状態って感じだったけど。

 

 ダメージが少なかったんじゃなくて、逆に多かった。最初は分からなかったが、体が勝手にアラガミ化していたのだ。

 いつ以来だっけ…何だかんだ色々とエラい目にはあってきたけど、勝手にアラガミ化が発動したのは剣術バルドに腕を斬られて以来だったか。いや、デカボレアスとナの龍との闘いの間になったっけ? …あの時は自分でアラガミ化してたような。

 

 

 

 

 フラフラする頭を抱えつつ、何とか立ち上がったんだが……目の前に鎌を構えてる初穂が居ました。

 

 

 

 …ああ、そりゃそうか。吹っ飛ばされた俺を探しに来たのね。「あれじゃ助からない、放っておけ」なんて、ウタカタの連中にできる訳ねーよ。

 

 

 

 …思わず気が抜けて、アラガミ化も解けちゃいました。目の前で変身してちゃ言い訳のしようもないね。どうしよう。

 

 

 

 

 

 …無かった事にしよ。

 

 

 

 

 初穂、戦況はどうなってる?

 

 

「どうって…いやそれよりも今のは何よ!?」

 

 

 戦況は? あのデカブツ、伊吹一人じゃ止められないだろ。

 

 

「そっちは紅月と富獄が応援に来てくれたわ。代わりに伊吹が他の鬼の足止めに向かったけど。それで今のは」

 

 

 そんじゃ、戻ってもう一戦するとしますか。…む、体が重い…?

 

 

「ああもう、あれだけ強烈に吹き飛ばされて、生きてるのが不思議なくらいなのに! まだ戦おうとか無茶言ってるんじゃないわ、いいから休んでなさい! さっきの姿も今は何も言わない。後はお姉さんが何とかしてあげるから」

 

 

 そう言われてもなぁ。鬼が迫ってきてるんだから、戦わなきゃまとめてお陀仏だろ。

 む…思ったよりダメージが残ってる…。アラガミ化が中途半端なタイミングで解けたから、回復しきれてないのか。

 

 もう一回変身するか? …ダメだ、タイムラグと言うかチャージが終わってない。もっとこう、テンション上げないと…。

 

 

 

 テンション…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 初穂、足触らせて。

 

 

 

「ふぁっ!?」

 

 

 

 …ごめん、今の無し。触っても何か溜まりそうにない。

 

 

 

「よく分からないけど、足手まといになるのは御免だからこのまま死にたいって宣言ね?」

 

 

 むぅ、真面目に動けん。ハンターたるもの、ライフが1でも残っていれば平然と動き続ける事が出来ると言うのに…。

 

 

「初穂様!」

 

 

 む? 初穂を様付けするのは…あ、やっぱ那木さん。

 

 

「こっちよ、生きてるわ!」

 

「ああ、ご無事で……いえ、無事ではないようですね」

 

 

 いやいや、まだまだこの程度なら。初穂、俺はもう大丈夫だから、あっちの応援に回ってくれ。

 言っちゃ悪いが、ここで話してても好転はしない。

 

 

「…そうね。丁度よく医者も来たんだし」

 

「は? あの、私は…」

 

「いいから、診察とかよりも、とにかく動くなって言ってやって! こんなにボロボロで動けないのに、まだ戦おうとしてるのよ!」

 

 

 おねーさんの言う事が聞けないなら、お医者さんの言う事を聞きなさい!と怒鳴りつけ、初穂は戦いに戻っていった。

 

 

 …とりあえず那木さん、手当とかはいいからタマフリ頼むわ。それで動けるようになると思うから。

 

 

「は…い。 ………? ……! い、いいえ、どう見ても動けないのですが!? 何と、こんなにも傷ついて…ああ、血も…血も、こんなに……」

 

 

 俺の体は色々特別性なんで、ちょっと休めば動けるようになるまで治ります。

 現に、吹っ飛ばされた時の傷の半分くらいはもう治ってるんで。あー……ほら、震える手のままでもいいから、取り敢えず診てくれ。深刻な骨折は無いし、派手に血が出てるけど、出血の元はもう塞がった。

 まーなんだ、リハビリだとでも思って、ちょっと診るだけ診てくれい。

 

 

 

「あ、あぁぁ……いけ、いけません…私は…いえ、貴方は…」

 

 

 どーせ死なないって、俺の場合は。普通だったらどうせ死ぬだろうけどね、ああまで派手にやられたら。

 …黒い冗談はともかくとして、とにかくタマフリだけでも頼むわ。一休みして気が抜けたからか、痛みが鬱陶しくなってきた。

 

 中途半端な状態で戦いに行っても足手纏いになるしかないし、もう少し回復するまで休むかな…。

 

 

「……そんな、人は…そんなに頑丈ではありません。もし、もしもそうなら、彼女が…彼女が………?    …ほ、本当に、傷が殆ど塞がっております…」

 

 

 だから言ってるじゃん、色々特別性なんだって。

 別に那木さんが突然、診察もロクにできないヤブになったんじゃなくてだな…。いやまぁ、真っ当な体じゃないのに、普通の人用の診察しても意味あるかはともかくとして。

 

 …あ、もう一回タマフリ。痛みも大分引いてきたけど、ちょっと神経が麻痺ってるっぽいな。

 まぁ寝れば治るか。

 

 

「神経の傷とは、そのようなものではないのですが…」

 

 

 ハンター式睡眠法なら問題ない。

 …あ、ちょっとヤバいかも。鬼が近づいてくる。

 

 

「鬼が? …どちらですか?」

 

 

 あっち。…これは…大型じゃないが、小型でもない……ヒダルか? ここらで出たのは初めて見たが。

 うーむ…近付けるとちょっとヤバいかな。もう少し体を休ませたい。

 

 

「…先ほど、眠れば治ると仰いました。どれくらいですか?」

 

 

 ん? いつもなら20秒くらいかな。今回はちょっと傷が深いから、2~3分くらいか…。

 

 

「…想定した以上に短いのですが…。でしたら、どうぞお休みになってください。…医者としての働きはできませんが、モノノフとして貴方をお守りします」

 

 

 覚悟を決めた目になった。

 …那木さんも、医者である前にモノノフ…なのか、医者であれないから今はモノノフなのか。

 

 

 でもタマフリしてくれ。

 

 

「あ、はい、失礼して…」

 

 

 

 …やっぱ、手術は出来なくても、治療はできるんだな。

 あー、ちょっと安心したら眠くなってきた。ごめん、後任せるお休み。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 そして目が覚めて、那木さんが殲滅した(火力低い人なのになぁ…)ヒダルの残骸を尻目に、日記を書いている訳である。

 那木さんは、俺の血とかを拭いながら体を調べている。…傷の診断もあるが、3分寝ただけで本当に元気になっている俺の体に、疑問を持っているようにも見える。マー実際、俺だって自分の体にクエスチョンマークが一杯だけどね。

 

 

 俺としては今すぐにでも戦いに戻りたい。蹴っ飛ばされた怒りや屈辱もあるが、久しぶりに手応えのある相手が出てきたんだから、徹底的に狩ってやりたい。

 こんなバトルマニアみたいな考え、持ってなかった筈なんだがなぁ。

 やっぱ、なんだかんだ言って退屈していたのだろうか。狩り応えのある相手が、ここの所居なかった。

 

 

 

 

 

 フロンティアに行ってから、そーいう事を言えって話だがな!

 

 

 

 まぁフロンティアはデスワープしてからとして、とりあえずマガツミカドである。

 上のダイマエンはこの際どうでもいい。腕の一本でも吹っ飛ばしてやれば、自分を保てずに消滅するだろうしね。

 

 さーて、あのデカい下半身、どうやって狩ってやろうか。

 しっかり休んだし、那木さんからのゴーサインも出たし(自分の医学的知識を疑うような顔してたが)、戦線復帰と行きますかね!)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

魔禍月

 

 

 勝利!

 …ではあるんだが、こう、モヤると言うかモニョると言うか。

 結局不完全燃焼に終わってしまった。

 

 何だかなぁ…。

 

 

 

 まぁ、そこそこ楽しめたのは事実だが。

 そして不完全燃焼の熱が、後になって色々焼き尽くすくらいに燃焼しまくったが。

 

 そうだな、例によって順番に書いていこうか。

 

 

 

 俺が戦線復帰したのを見て、初穂が「何やってるの!」と激怒したものの、ほぼ無傷状態にまで回復していた俺を見て、目を回しそうになった。『変身』の影響と言う事で片付けたが、そのうち本格的に説明せねばなるまい。

 で、久しぶりに本気でやろうと思ってたダイマミカドだが……ああうん、なんていうかね、俺蚊帳の外だったよ。

 富獄の兄貴が、今まで見ない程にヒートアップしててさぁ…。

 

 もうアレだね、穏やかな心なんて持ってなかったけど(いや、話に聞く「チビスケ」と一緒に居た時は穏やかだったのかな)激しい怒りで目覚めたスーパー富獄さんだよ。

 前のループでも同じような覚醒の仕方してたね。怒りがこれまでにない程高まって、雑念が消えて底力が引き出されて。

 

 ま、そうなるのも無理はないけどねー。

 

 まず第一に、ダイマミカドのダイマエン…富獄の兄貴が追っかけていた、仇のダイマエンだったらしい。そういやそうだな、ウタカタに最初に訪れるダイマエンだったもんな。これはある意味納得だ。

 で、そのダイマエンがマガツミカドにパイルダーオンしていた訳だが…この時、マガツミカドの下半身を抑え込むため、今まで取り込んできた魂とかを酷使と言うか生贄状態にしていたらしい。

 …つまりは、「チビスケ」を筆頭に、ホオズキの里の住民の魂を。

 

 

 殺して食っただけでなく、生贄にするとはなぁ…。そりゃブチギレ金剛どころかガチギレ戦略核である。意味不明? 知らん。

 で、最初は俺も、ダイマエン部分に鬼葬して消し飛ばそうと考えてたんだが、それをやると中身の魂達も消し飛ぶ可能性が非常に高い。

 

 そんな訳で、鬼葬を封じられ、下手にダメージも与えられなくなった訳だが…また富獄の兄貴が妙なスキルに目覚めた。前ループでは乗り攻撃だったけど、今回は……。

 

 

 

 

 

 ぼ、菩薩の拳?

 

 

 

 

 いや赤子と同じ手の形とかじゃなくてね、こう…成仏させる的な意味で。

 別に慈愛の心に目覚めたとか、突然術の効果が上がったとかじゃない。アレだ、怒りと哀しみが極まって、北斗神拳的な意味でインドラとか狩り入れる者とかの化身になったんじゃなかろうか。

 理屈はサッパリ分からんが、ブン殴ったダイマエンから、囚われていた魂達が抜けていったよ。

 

 

 

 …うん、訳が分からない!

 

 

 

 訳が分からんが、とりあえず有効な攻撃方法である事は変わりない。暴れ回ろうとするダイマミカドを鬼返でダウンさせ、この場に居た全メンバーで起き上がらないようにあちこちを攻撃。最終的には、ダイマエン部分の正面に陣取った富獄の兄貴が、祈りの動作からの鉄拳でダイマエンに止めを刺した。

 …ぬぅ、富獄の兄貴の後ろに、不動明王が見えるよ…。前回といい今回といい、富獄の兄貴はどこまでパワーアップするんだろうか。

 

 

 

 まぁ、ダイマエンはいい。「チビスケ」を始めとして、魂達は解放され、ダイマエンも息絶えた。

 

 

 

 問題はマガツミカドの下半身だ。散々ブン殴ったが、致命傷にまでは至ってない。ホント頑丈だなぁ…下位の武器で上位ミッションに出てくるアラガミを殴ってる気分だ。

 そして、このままであればまた新たな鬼がパイルダーオンし、暴れ始めるだろう。

 

 暫し考えたが、このまま削り切るには時間が足りない。敵はマガツミカドだけではないのだ。今この瞬間も、あちこちで鬼の大群を押し返そうと、モノノフ達が戦っている。

 …放置は愚策、復活してまた暴れだす。倒すには時間が足りない。

 

 となれば……よし、敵の中で暴れさせてしまえ。

 

 

 いや初穂、ちゃんと考えて言ってんだよ? こいつ、出現当初から、制御している上半身が居なければ敵味方関係なく延々と大暴れしてたじゃないか。鬼しか居ない所に放り込んでしまえば、後は勝手に向こうに損害を出してくれる。

 どうやって連れて行くかって? 蹴っ飛ばすんだよ。いやマジで。こいつ、目が無い間は外的な刺激に対して反応してるだけみたいだから。

 

 例えば、こうやって一回斬り付けるとだな。

 

 

 

 

 蹴りが飛んできたんで回避ィ!

 

 

 

 はっはー、こっちだこっち! ほーれ遠距離からもう一発! そうだそうだこっちに来いやぁ!

 

 

 と言う訳で、自分を攻撃した(不快な感覚を齎した?)相手を、闇雲に追いかけてきます! 勿論、目が無い状態なんで感覚に任せて適当に蹴ってくるだけ。その辺の岩とか鬼とか蹴っ飛ばすと、そいつが標的だったと思い込んで動きが止まる場合があるので、繰り返し攻撃してヘイトを稼ぎましょう。

 そのまま鬼が乱戦している所に突っ込んでいった結果、見事に大当たり。

 鬼達にとっても、暴れているマガツミカドを大人しくさせて、パイルダーオンするのは相当難しい事だったようだ。動きを止めようとする鬼、逃げようとする鬼、構わず目の前のモノノフを倒そうとする鬼、色々居たが……まぁ、ヒデェ状態だったよ。

 マガツミカドが一回足を振り上げれば、大型鬼がボールみたいに飛んでいくんだもんなぁ…。

 

 いやもう酷いもんだったよ。その分効果的だったけどね。

 

 ま、おかげで…と言うべきなのか、鬼達の攻勢も弱まり、暫く時間が経つ頃には、残党狩りを行えるようになった。

 今日は流石に疲れたぜ…。

 

 

 

 

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