HR月
詮索するなとは言ったが、気にはなるな。コーヅィが落ちぶれるのに、何があったのか。
ま、ある程度予想はつくけどな。
あの真面目でお人好しなコーヅィが、酒に溺れて何もしなくなる…。以前にも考えたが、心の問題だろう。精神と言うか、支柱と言うか、コーヅィを支えていた何かがブチ壊れてしまったんだろう。
ハンターやってると、あんまり珍しい事でもない。目の前で誰かが死ぬ、食われる。自分自身の大怪我や死の恐怖。クエスト中の何かによって誰かが死んでしまったり。
一番多いパターンは、初見のトンデモモンスターの迫力に心を圧し折られるパターンかな。俺だって、昔と言うか初ループ近辺では、卵抱えてレウスやらレイアに追われてトラウマ作ったもんなぁ…。人肌に癒されなければ、そのままコーヅイ同様酒浸りコースだったかもしれない。
コーヅイが「ここまで戻って来た」と言ってるから、多分事が起こったのは上級ハンター昇格試験か、その直後辺り。上級は何処の世界も別次元だからなぁ…。レベルの差にやられたか、それとも上級から出てきた奴にやられたか。
相手がどんなモンスターなのかは流石に分からんが………あれ、でもコーヅィって超が付く程慎重派だよな。上級に昇格したら、それこそ初心に戻ってモスくらいからコツコツやっていきそうだが…。
…ふむ、まぁ機会があれば聞いてみるか。何せ俺は「押すな」と書かれたボタンと誰の居ない部屋のコンビにも余裕で勝てる男(自称)だからな! ボタンじゃなくて女体の何処かだったら確実に負けるが。野郎の事だからどうでもいいと思っている訳ではないぞ、うん。
さて、それは置いといて…コーヅィが上級に昇格しそうなのとほぼ同時、俺もG級進出の話が出てきた。出てきたんだが……正直、マジで? としか思わない。
確かに、フロンティアに来て腕はあがったと思う。一か月に満たない程度だが、このループが始まったころの俺と、今の俺がやり合ったら、練度の違いで圧倒できるくらいには。
しかし、周りを見てみればどうか。上級ハンターでとどまっている人達にも、俺以上の実力者はゴロゴロいる筈だ。
フロンティアのG級は、最高位ではあるがその実スタートラインでしかない…と言うのは分かっているが、それにしたって早すぎないか? 別に陰謀論者になったつもりはないが、なーんか誰かが後押ししてる気がするな。
実際、どっかから推薦されたって話もあるし…ギルドマスターからチラッと聞いた程度だが。
そうそう、その時の話で、ちょっと重要な案件があった。霊力の事だ。
俺が防衛戦で治癒の力を使ったり、ヤマツカミを鬼の手で《グロ画像》した事により、奇妙な力を持っている事は知られてしまっている。実際、俺も隠したりしてない。適当に狩りに出る時に組んだパーティメンバーから、本当にそういう力があるのか聞かれて、実演してみた事だってある。
そうやっている内に、異能の存在はどんどん知れ渡っていった。……と言っても、現状じゃ知る人ぞ知る、って程度だけども。
で、それにギルドが目を付けた訳だ。そこまで珍しい話じゃない。超越奥義だって、元は誰かが考えた事を、ギルドがマニュアル化して広めたものだ。まぁ、流行り廃りの激しいフロンティアでギルドが目を付けるには、それなり以上に優秀なモノでなければならないが。
勿論、ロハで技術を取り上げられる訳じゃない。どのぐらい有効なのか、そう認定されるかにもよるが、報酬は大体莫大だ。それこそ、達人ビールを広めた元ハンターを鼻で笑い、下手するとそこらの王族よりも資産が多くなる……らしい。
実際の所、特許申請みたいなもので、それを使うハンターがどれだけ居るか、そのハンターがどれだけ貢献したかによって、定期的に支払われる報酬が変わってくるのだが。
で、俺の霊力の技術を、それに使ってみないかと言われた訳だ。
だが断る。
この俺が最も好きでも嫌いでもない事のひとつは、当然受けるだろうと思ってる奴に「NO」と断ってやる事だ…。
「ほう、好きでも嫌いでもないと。ならば何故断るのか、聞かせてくれんかのう? ああ、この返答がG級昇格に影響を及ぼす事は無いぞ」
動じないねギルドマスター。まー実際のトコ、単純な話なのよ。メリットデメリットを度外視している、と言ってもいい。
前にも話したっけか? いや別の人にだっけ? …まぁいいや。
とにかく、俺は現状、金銭や物欲的な利益を放り出して、全メゼポルタの、ひいては燻っている全ハンターの戦力アップを目的として行動している。まぁ、それが最終的に俺の利益と言うか、目的達成に効果があると考えてるからだけどね。
これは別にギルドの体制を批判している訳じゃないんだが、超越秘儀や武器の型…コレは俺もまだ覚えてないけど…みたいな扱いになると、上位ハンターになるまで教える事はできなくなるだろ?
強いハンターをより強くするのではなく、弱いハンターを押し上げる為に教えたい。
「ふむ…しかし、現状ではその能力をどれ程に広められると思うておる? 話に聞いた所によると、お主の猟団の中でも、会得しようと考えているのは一人二人。後は…猟団ストライカーに教えようとしているんじゃったか?」
よく知ってますな。
「先日、ストライカーのベリヰヌが騒いでおったのを、何人か見に行ったからの。中々興味深い事をしておったそうじゃな。ワシも見たかった」
あー…確かに大騒ぎだったな。話を戻しますが、確かに現状ではその程度しか教えられてないです。
正直な事を言うと、ギルドにマニュアルを提出できる程、明確なやり方がある訳じゃないってのが一つ。現状、習得できたデンナーに対しても、満足な指導が出来たとはとても言えない。瞑想を続けさせて、半ば自力で会得させたようなもんだ。
まぁ、こっちから霊力を分け与えてブーストさせ、力を認識しやすくする程度の事はやったけど。
「その方法は、お主以外でもできるか? …ああ、ストライカーの内情なら儂も知っておるから、隠さんでもええぞ」
出来る事は出来ると思うが、デンナーもストライカーも、それが出来るレベルには達してない。現状、指導できるのも監督できるのも、マニュアルを作れるのも、事実上俺だけって事だ。…俺の知らない使い手が居るなら、話は分からんが。
「成程のう。ギルドがその技術を広めようにも、指導員も居らねば指導法自体も確立されておらん、か。それはギルドでも広める事はできんな。しかし、そうなるとお主の目的を達成する事は困難じゃぞ。下位ハンターを強くするとは言うが、どうやってその力を広める」
…そこを突かれると痛いが……一応、考えはある。
ストライカーの内情は知ってる、と言ったよな? つまり「そういう人」が居る事も知ってる訳だ。ソッチ系の人達なら、普通の人に比べて霊力を自覚しやすい……ようなんだ。まだ確定した訳じゃないが。
力を隠したり持て余したりしているハンター達は、結構いるみたいだし…そういう人達を集めていけば、実績やマニュアルも出来上がっていくかなーと。
「正直、見通しが甘いとしか言いようがないが…ふむ、技術買い取りを拒否した例が無い訳ではない。また、ギルドが買い取ったものではない以上、お主の技術はお主のものじゃ。誰に教えるのも、誰にも教えないのも、他者に害を為さぬ限り制約は無い。…が、マニュアルが出来た場合は、ギルドはそれを買い取る意思がある事は伝えておこう。……ああ、それと…」
…と、まぁこんな塩梅だ。要は俺の能力に…もうちょっと言えば、今まで多くのハンターが隠していた力に、ギルドが目を付けた訳だな。
前述の通り、そっち系の技術を売り渡すのは拒否した。まだ広められるようなものではないと主張した為か、ギルドもそこまで強硬な事はしなかったが……それで話が終わる訳でもなかったんだよなぁ。
俺が主張したからって、ギルドがその主張を丸呑みにするかは別問題。嘘八百を並べているとは思ってないだろうが、額面通りに受け取って裏付けすらしようとしないなら、そりゃ組織が取るべき態度じゃない。
当然、ギルドも俺の言葉が何処まで信じられるのか、仮に事実だったとして、このままで問題は無いのかを調べようとしている。ま、ただでさえ怪しい力だし、しかも教えようとしているのは燻っている下位ハンター…元にしろ現在進行形にしろ、寄生やタカリと呼ばれるハンター達だ。教えて問題を起こさないとは、とても思うまい。
実情と、どのような場面でどのくらい使える力なのか、調べようとしている。
…まぁ、仕方ないとは言え、あんまり気分のいい事ではないな。腹の内と言うか手の内を探られているんだから。
しかし、建前まで用意されているんだから抗弁する事もできん。
曰く、ギルドとしてその能力には、非常に期待を寄せている。買い取りが出来なくても、ぜひとも出来るところまで育てて、有効活用してほしい。なので、その為の協力者として…。
「やっほー! 来たよー!」
おふっ!? む、オパーイの感触!
…コホン。その為の協力者として、同じような力を会得したらしきレジェンドラスタを送る。ぶっちゃけフラウ。この前散々ヤりまくった時に、リアと一緒に霊力を自覚しちゃったからなぁ。
どないすんべコレ。夜毎夜毎のKENZENな遊びは確定事項として、コレ猟団がエラい事にならんか? ギルドからの仕事とは言え、レジェンドラスタが一時的に所属(しているように見える)猟団だぞ?
「その辺は問題ないよ? ボクはあくまでレジェンドラスタ。君の猟団に所属してるんじゃなくて、君の所に遊びに来てるんだから。狩りには個人的に付き合いのある君としか行く予定は無いしね。ま、君が他の団員を誘うのも止めないけど」
遊び(意味深かつ意味複数)ですねわかります。
ところで、猟団の連中がなんか大騒ぎしてないか? フラウをアイドル扱いしているような、或いは逆に見えない何かに怯えているような。
「あー………まぁその、これでも結構人気はあると思うよ、ボク。怯えてるのは……多分、リアちゃんにじゃないかな」
リア? 別に来てないだろうに。それに、元タカリのあいつらとレジェンドラスタにどんな関係があると?
団員を悪く言うのもなんだが、あいつらレジェンドラスタをどうこうしようとは…。
「甘い甘い。人間、誰しも相手を見れるとは限らないんだよ。どんなに強くても、相手が女性である時点で侮る人は居る。数が揃えば猶更ね」
………? …………あぁ…。
要するにアレか? 3対1なら勝てると思って、リアを襲おうとした?
「或いは、レジェンドラスタだけ戦わせて、自分達はお零れだけゲットしようとしたかだねー。リアちゃんを襲ったら、流石にナマス…じゃないにしても、ギルドナイト案件だから、タカリの方かな?」
うっへぇ……。普段は穏やか(に見える)な人だから、丸め込めると思ったんだろうなぁ…。で、実際に狩場に出て押し付けようとしてみたら…。
「即狩りモードの発動。押し付けるどころか、逆らおうとしたり逃げようとした瞬間にカチ上げが飛んでくるだろうね。勿論、落ちた先には今まさに行動しようとするモンスターが」
そんなモンより、戦闘モードのリアの気迫の方が怖かろ。前門のモンスター、後門のリア。どう考えても前門に突撃するしかないね。
で、無事生き残ったはいいが、トラウマになっちまった…か。自業自得だな。
「さもなきゃ、普通にレジェンドラスタと一緒に狩りをしようとしたら、リアちゃんがトラウマになって立ち直れずに、タカリ一直線…とか?」
あんま考えない方が良さそうね。まぁ、ウチの猟団で真面目にやってる限り、リアの大剣は飛んでこないって言っとくか。
で、実際霊力についてはどう考えてる? 力の自覚は出来てるだろ?
「うん、ある程度は自分で動かせるようになったよ。…と言うより、これって体が動くと勝手に連動して動くんだね。体を動かさずに、この力だけ動かすのがメンドイなぁ…」
もうそこまで理解してるのか…流石と言うかなんというか。ギルドは習得してこいって言ってるんじゃないの?
「別に。将来的にはそうかもしれないけど、いきなりそこまで突っ込ませる気はないみたいだね。まぁ、どれくらい有効なものかも分からないしね~。あ、でもでも、君が前の防衛戦で使った大きな手には興味あるかも」
鬼の手かぁ…確かに、汎用性にしろ破壊力にしろ、トップクラスではあるな。でも出来るかどうか…。あれ、本来なら専用の道具を使ってやるんだよ。俺は…まぁ、色々特殊な体質なんで、素のままやれるけどさ。
大型モンスターが相手なら色々応用が利きそうだな。
「色々…くすぐったりナデナデしたりグリグリしたりとか?」
ジンオウガをモフモフしろと申したか。いや出来なくはないと思うけど、なんという一繋ぎの大秘宝扉絵。ま、アレはある意味奥義と言える技なんで、いくらフラウでもそうそう覚えられんし教えられんよ。
「えー…。どうしてもぉ…?」
どーしても。背中からおっぱい押し付けたって、出来ないものは出来ないんだからねっ! ケチってるんじゃなくて、技術的に無理なんだからねっ!
あ、でも習得への近道ならあるかも。
「ホント? どうすればいいの?」
この前、フラウとリアにやりまくった事を沢山する。鬼の手は高密度の霊力操作の極致みたいなもんだし、とにかく基礎と霊力量を上げなきゃ話にならん。
操作は自分で覚えなければどうしようもないけど、霊力の底上げは出来る。まぁ、これもあくまで一時的なブーストみたいなもんで、結局ちょっと効率がいい手段でしかないんだけどね。
「えー、そんなので本当に出来るようになるの? えっちな事する為の口実じゃない?」
疑うなら試してみようか? ヤッた後にフラウの中の霊力が強くなってれば事実だって分かるよな?
で、仮に口実だったらイヤかな? 今日はリアが居ないから、一人で受け止める事になっちゃうけどね。
「…♪」
この後無茶苦茶(ry
HR月
朝一番から、ほっぺを抓られて目が覚めた。何事? と思ったら、フラウがちょっと拗ね顔だ。言うまでもなくシーツのみ。
…どったの?
「…ひどいよぉ」
あれ、昨晩は満足いただけなかったかな。割とヨロコんでたと思ったけど。
「そりゃ、2回目とは思えないくらいにすっごく良かったけど…最初の時みたいに、メチャクチャにされるって思ってたんだよ? なのに、あんなに優しくされるなんて…しかも、最後までしっかり意識があって、全身がすっごく深いところまで気持ちよくなって…」
激しさだけが気持ちいい事じゃないのさね。真面目な話、前の時は下剋上と言うか襲われたお仕置きも兼ねてたし。…まぁ、そのお仕置きされるような事したのは俺だったんだけど。
…違うぞ? 激しさと優しさ丁寧さとのギャップで、どんどん泥沼に引き摺り込もうってんじゃないんだぞ?
「…それでもいいかな……ところで、本当にこれで霊力が強くなってるの?」
ああ。普段と比べて、かなり活力が湧いている筈だが? …ああ、昨日の疲れが残ってて分からないのかな。
…もちっとブーストしてみる?
「それじゃ、もう一回!」
…この後朝っぱらから無茶苦茶(ry
さて、コーヅィ、俺の昇格試験が間近となった今日このごろ。ちょっと信じられない情報が飛び込んできた。一緒にその情報を聞いたフラウも、微妙な顔をしている。
想像が追いつかないと言いますか、いくらフロンティアでもそりゃヒデェよと言いますか。
何が起きたかっていうと……古龍襲来。今度はラオシャンロンだ。
まぁ、それだけならフロンティアでは珍しい事ではない。いつも通りの防衛戦でカタをつければいい。メゼポルタ広場到着まで、短く見積もっても数日はある。防衛戦の準備もバッチリ。
例によって例のごとく、トッツイ達が必要としている古龍がやってきたことも気になるが、そこも大目に見よう。
問題なのは、2体同時にやってきた事。
でもない。確かに2頭のラオシャンロンが接近してきてはいるが、そいつらの距離は離れている。別々に行動していると言う事だ。
問題は。そう、問題は。
遠くに居る方のラオシャンロンが、2足歩行のダッシュでメゼポルタ広場に接近してきている事だ。
何言っているか分からない? 俺だって分からねーよ。
狂走ラオシャンロンと名付けられたソレは、通常のラオシャンロンの数倍のスピードでメゼポルタ広場に迫っている。
蛇から逃げるエリマキトカゲを彷彿とさせる恰好で、凄まじい地響きと共に進軍し、立ち塞がるモンスターを蹴り飛ばし、不格好に腕(と言うか前足)を振り乱して、口から泡を吹きながら突っ走る。
何の冗談かと思ったが、ギルドの職員は限りなくマジだった。アホみたいな状況であることは否定できないが、それ以上にこの脅威を否定する事ができない。
ちょっと考えてみれば分かるだろう。ラオシャンロンがその巨体に反し、そこまでの脅威とされてないのは、その行動が非常にゆっくりとしたものだからだ。極端な話、撃退に失敗しても、人が逃げるだけの時間はある。
しかし、これがダッシュしてきたらどうか?
質量×速度=破壊力と言うのは、この世界でも有名な法則だ。まぁ、この世界の場合、属性値とかのよーわからん法則が絡んでいそうな気もするが。
とにかく、ラオシャンロンが走ると言う事は、それだけで凄まじい破壊力を保証してしまう。巨体が勢いを付けて体当たりする事もそうだが、一般人が逃げる時間もなく、絶え間なく起きる足踏みの地響きで耐震スキル無しでは攻撃もできず、万が一蹴っ飛ばされようものならミンチ程度じゃ済まないだろう。
その為、近接攻撃はほぼ不可能と考えられる。相当に上手く当てないと、最高速度の新幹線に生身で殴り掛かったかのような惨状が出来上がるだろう。
…ま、ラオの相手はガンナーが鉄板だから、そう影響はないと思うが。
幸いにして、狂走ラオシャンロンは真っ直ぐメゼポルタに向かっているのではない。フラフラフラフラ蛇行しながら、時々道を誤ったように明後日の方向にズレ(頼むからそのまま迷ってどっか行ってくれ)、そして半日くらいしたら結局メゼポルタ近辺への方向に戻る。
…で、試算の結果、どーゆー偶然か導き合わせか、単純計算だともう一頭の通常ラオシャンロンとほぼ同時に、メゼポルタ広場に到着すると来た。うぅむ、運命の悪意を感じる。
真面目な話、どうしたものか。どう思う、コーヅィ、デンナー。
「走るラオシャンロンとか、絵面的にも悪夢なんですが…。普通のラオシャンロンなら、私達でも集団でかかれば…進路を変える事くらいなら、出来ると思います」
「俺が万全の状態なら、フロンティアのラオシャンロンでもやれない事は無いぞ。まぁ、ガチ装備に底力とかいろいろ条件はあるから、やりたくはないが。俺一人でそれなんだから、そこそこ使えるハンターが揃えば、撃退は可能だ。一体目は…な」
そうなんだよなぁ。二頭目が問題なんだ。1体目を早々に倒さないと、2頭目のラオシャンロンが乱入してくる。流石にそうなったら、大質量で暴れ回られて勝てる気がしない。
つまり電撃戦が必要な訳だが…1体目に火力を集中すると、当然弾薬の減りも早くなる。1頭目を早く倒そうとすればするほど、2頭目に注げる火力が少なくなる訳だ。
「それを考えると、砦以外で撃退するのまず不可能だな。いくらハンターでも個人の火力には限界がある。砦に籠って戦うのは、ラオシャンロンの進軍を阻むためだけではなく、爆薬その他を充分に用意する為だ」
「野戦だと、事実上殴り掛かる事しかできませんしね…。何より、ラオシャンロンはどういう訳だか、常に狭い一本道を通ろうとします。脇道に逸らせようにも、道が無い場所まで進んでいるようです」
「砦を建てる場所は、ラオシャンロンが通る道の上で、数少ない分岐点がある場所だ。そこでなんとか食い止めれば、横の道に逸れるだろう…と言う事だな。先人達がラオシャンロンに踏みつけられながら、ようやく見つけた抜け道だ」
ちなみにその踏まれたハンター、何割くらい生きてますかね。何、6割よりは多い? さすハン。
それはともかく、あー…確かに、あいつらいっつも峡谷みたいなトコ通ってくるからな…。道が無いんじゃ、方向転換できないのも当たり前か。
「あれ…でも狂走るラオシャンロンは、何もない平原を走り回っていますね? まぁ、我々も直に見た訳ではありませんが」
む、確かに。ひょっとして…左右に壁が無い所に放り出されて、錯乱しているとか?
「いやいや、それは無いだろう。壁のあるところを好むというだけで、それ以外の場所を歩く例が無い訳じゃない。…しかし、何だな」
「なんです、デンナーさん」
「こういうのを考えるのはそれこそギルドの仕事だろうに、何で俺達がこんな事を当事者みたいに話してるんだろうな。そりゃ他人事とは思わんが、迫ってきているのは他所のメゼポルタ広場だし、俺達が対応に当たると決まった訳ではないだろうに」
まー確かになー。俺は諸事情でラオシャンロン素材が必要だけど、別にギルドメンバーまで動員するつもりはないし。ま、転ばぬ先の杖って事で。もうちょっと考えを続けてみようか。