・・・おや!? のっぺらぼうのようすが・・・
神喰月サクヤ視点日
リンドウが、最近危ない橋を渡っているのは知っていた。
シックザール支部長が掲げる、エイジス計画…その裏にある『何か』を探る為、危険な任務についている事も。
彼を心配しない日はない。
リンドウは凄腕で、どんな状況からでも生き延びてきたけれど、それがいつまでも続くとは限らない。
どんな強者でも、切欠一つで死に至る……それがゴッドイーターよ。
そうでなくても、シックザール支部長の裏に何かがあるというなら、迂闊に近付けば暗殺される可能性もある。
リンドウはそれを承知で秘密を探っていたのだけれど……私は手伝えなかった。
秘密を探るのには、シックザール支部長の直属のゴッドイーターとして動く必要がある。
特務という、並みのゴッドイーターなら死の宣告同様の任務を単独でこなさなければならない。
口惜しいけれど、今の私にそこまでの力量は無かった。
だから、私は私にできるやり方で、リンドウを援護している。
例えば、特務以外の任務のサポートをしたり、最近手を焼かされているアリサの面倒をみたりしてね。
正直に言えば、こんな日が来るのは覚悟していた。
仮にもゴッドイーターをやっているのだから、命がかかった戦いは当たり前で、突然の不利もあって当然。
だけど……。
まさか、こんな狭い場所で、ディアウス・ピターとプリティヴィ・マータの群れに囲まれるなんて…。
事の起こりは、私、リンドウ、アリサの3人で任務に出た事だ。
アリサの態度も大分軟化してきたし、その任務自体は問題なく終わったのだけれど……問題はその後だった。
任務が終わり、さぁ帰ろうと言う時になって、同様に任務に来たというジーナ、カノンちゃん、そして奇人変人と名高い彼の3人と鉢合わせした。
一つの区画で、別々のチームが任務についているなんて…これは本来ありえない事。
嫌な予感を感じたわ。
そしてその予感は、すぐに現実になった。
突然響き渡る、複数のアラガミの咆哮。
既に絶滅してしまった、ライオンを思わせる声。
私自身も何度も聞いたその声は、最悪な事に、一つが明らかに低く、他の声の幾つかは甲高い。
この時点で、ディアウス・ピターとプリティヴィ・マータが居る事は確定した。
しかも囲まれている。
アラガミと戦う際の鉄則は、複数の相手を同時にしない事。
いくらゴッドイーターとしての機能で強化されていると言っても、人間とアラガミ…特に大型のアラガミとのスペックの差は歴然としている。
格上を相手に、脆い人間が乱戦するなど、自殺行為もいいところだ。
こちらの戦力になりそうなのは、私、リンドウ、ジーナ。
奇人変人と名高い彼も多分戦えると思うけど、どれくらいなのかは検討もつかない。
アリサは、技量的にはそれなりに戦えるのだけど……先日一度ヴァジュラに会った時、体が震えていた。
恐らく何かトラウマがあるのだろうから、精神的にはガタガタだと思った方がいい。
…カノンちゃんは、まぁ、その、ねぇ?
相手が悪く、状況が更に悪すぎる。
だけど、そんな泣き言を言っている暇は無い。
一刻も早く、ここから逃げ切らないと。
だけど、逃げる間もなくディアウス・ピターが、廃墟の寺の上から姿を現した。
…まずい、この威圧感。
ただのディアウス・ピターじゃない。
年経て経験を詰んだ、強力で狡猾な群れの主だ。
…それも当然か。
そうでもないと、これだけのヴァジュラ達に気付かれずに包囲される筈が無い。
統率力も抜群……イヤになってくるわ。
この時、私はアラガミ達に気を取られ、アリサの様子が加速度的におかしくなっている事に気付けなかった。
ディアウス・ピターの咆哮と同時に襲い掛かってくる、牙と爪と雷と氷。
更に、襲い掛かられる瞬間に使われた、彼が使った異常なまでに強力なスタングレネード。
…目を背けて閉じていても、頭がクラクラしたわ。
それでも、アラガミ達の7~8割の動きを封じられた。
逃げるなら今!
リンドウとアイコンタクトして、即座に撤収命令を出す。
各自、目が眩んでいるヴァジュラ達の隙間を擦り抜けて走りだす。
怒りの咆哮が聞こえて目をやれば、閃光の効果から回復したディアウス・ピターが飛び掛ってきた。
狙いは…スタングレネードを使った彼。
離れていた分、閃光の効果が弱かったのだろうけど…余程頭にきたんでしょうね。
彼は素早く避けて(あんな重そうなパイルバンカーを持っているのに、よく身軽に動けるものだ)、周囲のプリヴィティ・マータを盾にして逃走を試みる。
同じように、不意を突いてリンドウが影から接近し、ディアウス・ピターに斬り付けた。
私とジーナさんは、まだ動けるプリヴィティ・マータを最小限の狙撃で片付け、逃走経路の確保。
アリサとカノンちゃんが逃げ切れ次第、私達も……。
そう考えていたのだけど、ここで最大の誤算が起きた。
「いやああぁぁぁぁぁぁ!!!!」
突如、アリサが乱心する。
リンドウの援護をしようとしていたのか、ディアウス・ピターに向けられていた銃口が、リンドウに向かっている。
この瞬間ほど、世界の全てがスローに感じた事は無い。
あのままアリサの銃弾が放たれれば、リンドウに当たるにせよ避けるにせよ、致命的な隙が生じてしまう。
それをディアウス・ピターは見逃さない。
死ぬ。
リンドウが死ぬ。
嫌だ
ここから援護はできない、間に入ったヴァジュラが邪魔になる
そんなのは嫌だ。
想像するだけで吐きそうに、叫びだしそうになる。
彼も攻撃を凌いだばかりで動けない
いやだ
ジーナは私より遠い
いやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだ
かみさまたすけて、ああだめだかみさまはあらがみだ
リンドウがしぬ
ありさのじゅうこうが
りんどうにむいて
ひきがねをひくのが、みょうにゆっくりはっきりみえて
「トチ狂ってんじゃないわよ!!」
「へっぷぁ!!!???」
爆音、倒れ伏すアリサ。
驚きながらもディアウス・ピターにカウンターを喰らわせるリンドウ。
ああ、よかった生きてた。
とりあえずアリサを回収。
…プスプス煙が出ている……それとさっきの悲鳴は女の子としてどうかと思うわ。
……後になって思う。
あの誤射を放った時の、カノンちゃん(裏)に後光が差して見えた…単に位置取りの関係で、偶然彼女の後ろに太陽があっただけだけども。
ありがとう、そしてごめんなさいカノンちゃん。
貴方に銃を教えたのは、決して間違いなんかじゃなかったようね。
見事なタイミングでの誤射(故意)だったわ……故意じゃ誤射じゃない?
旧世界にはこんな言葉があったそうよ。
「一発だけなら誤射。
ただし食品偽造は下手人万象滅尽滅相。
魔改造しまくってフルファイアでも可」。
後半はよく分からないけど、この際重要なのは前半だけよ。
……普段の誤射数はカウントしない方向で。
とにかく、一難は去ったものの、危機的状況には変わり無い。
アリサを担いだ私…あ、カノンちゃん持ってくれる?
お願い。
アリサを担いだカノンちゃんは、戦闘行動どころか逃げるだけで精一杯だし、そろそろヴァジュラ達も回復してき始めた。
私とジーナで道を作ってはいるけど、これ以上の圧力が来たらもう保たない。
リンドウは…ディアウス・ピターとの応戦で手一杯。
彼の援護があって、何とか凌いでいる状態だ。
それでも、ディアウス・ピターの顔面が結合崩壊しているのは流石というべきかしら。
二人とも、周囲のアラガミの攻撃を受けながら戦っているので、大分傷がついている。
このままだと、回復したアラガミ達総出で蹂躙される。
だけど、どうしたら…さっきの強力なスタングレネード、もう一発無いの?
そう問いかけようとした時だった。
彼から、異常な『何か』を感じ取った。
圧迫感とでも言うのだろうか。
思わず状況も忘れて、一瞬目をやる。
慌てて我に返ったけど、目を取られていたのはアラガミ達も同じだった。
「おい待て、何するつもりだ止せ!」
リンドウの叫びも他所に、彼は叫ぶ。
「ここでコイツを殺らなきゃ、どっちにしろ全滅確定だ!
俺の最後の切り札、見せてやる!」
切り札?
彼の代名詞にもなりつつある、あのパイルバンカーの事だろうか?
だが駄目だ。
アレは確かに強力だが、それでもディアウス・ピターを仕留められる程ではない。
むしろ、その後反動で彼が動けなくなり、荷物が増えるだけになってしまう。
やめさせようとリンドウが動くが、もう遅い。
突如彼の動きはボロボロの体とは思えない程に鋭く速くなり、ディアウス・ピターに急接近する。
すれ違い様に捕食してリンクバーストし、ディアウス・ピターの……正面に陣取ってチャージクラッシュの溜め!?
当然、ディアウス・ピターは彼の体を食いちぎろうと噛み付いた。
ああ、だめだ、しんでしまった。
「大丈夫。
理屈は分からないけど、避けてる」
え、ジーナ?
…本当だ。
確かに食いつかれた筈なのに、何事もなかったかのようにチャージを続けている。
もう一度食いつこうとするディアウス・ピターの動きが、突如止まった。
ホールドトラップ、何時の間に!?
ディアウス・ピターが動けない瞬間を見逃さず、神機がその顔面に喰いついた。
明らかに通常の捕食形態よりも、強く太い顎がディアウス・ピターの体を固定し、そしてパイルバンカーの輝きが一際強くなる…チャージ完了だ。
「怪力の種・リンクバーストLv1・筋力増強剤、科戸ノ風に空蝉の重ね掛け、結合崩壊した顔面を狙って剣の達人、その他諸々…。
現状考えられる限りの攻撃力とスピードアップ!
見さらせ俺の生き様!
こいつが俺の魂(1回だけ3倍のダメージを与えられる、気分になる)の一撃だッ!
アリサの仇ィィィィ!!」
死んで無いわよ。
あと撃ったのはそのアラガミじゃなくてカノンちゃんよ…個人的には助かったけど。
「本邦初公開!
奥義!
鬼『杭』千切 ~其は人生の穴を意味もなく掘っては埋める一本の杭~ !!!!!」
血走った目で、肺の中の空気を全て吐き出すような咆哮から叩き込まれる、殴りつけるようなパイルバンカーの一撃だった。
正直な話、あの瞬間の事は目に焼きついているが、思い出しても何がどうなったのか殆ど理解できない。
神機を両手で持ち、体全体を連動させ、接触の瞬間にパイルバンカーの杭…よく見たらドリルだったけど…が発射される。
やった事は、これだけだった筈。
パイルバンカーの機能として考えれば、無茶苦茶もいいところよ。
形状から考えて、相手に密着させた状態から引き金を引くものだと思うのだけど…わざわざ殴りつける瞬間に発射する意味が分からない。
と言うか、気のせいでなければあの時のパイルバンカーは、よくわからない『何か』が轟いて迸ってうねっていたように思うのだけど。
…何が何だか分からないのだけど、その効果は絶大なんてレベルじゃなかった。
何せ、ディアウス・ピターの上半身が、まるごと引き千切られたのだから。
…シユウを跡形もなく爆砕させたという話は聞いていたが、シユウとディアウス・ピターでは頑丈さが段違いだ。
しかも、年経た強力な個体であるなら、その差は比較する意味さえ見失う程。
それを、たったの一撃で…絶命させた上、直接触れたワケでもない上半身を、勢いのままに下半身から引き剥がす?
冗談ではない。
パイルバンカーの機能もそうだが……あの一撃は、従来のゴッドイーターのどんな攻撃とも一線を画す一撃だった。
…引きちぎられた部分の内臓が見えない角度だったのは幸運だったわ…グロ画像なんて、好んで見る物じゃないもの。
驚き、戸惑いはしたけども、状況はそれを許してくれない。
ディアウス・ピターが倒れたのはいいが、それと同時に「彼」も凄まじい消耗をしたらしく、動けなくなってしまっていた。
…リンクエイドでどうにかなる範囲だというのが信じられない。
反動だけで、爆裂四散しそうな破壊力だったのに。
とにかく、リンドウにリンクエイドされた彼…それでもロクに動けない為、リンドウが担いだ…は、ボスが死んで戸惑っているアラガミ達に向け、先ほどのスタングレネードを片っ端から放り投げ始めた。
最初にそれをやれ…と言いたくなったけど、すぐに理解できた。
あの閃光と音響は強力すぎる。
何とか生還できたけど、まだ耳鳴りがする。
こんなのを最初から乱発していたら、耳が聞こえなくなって連携がとれなくなってしまうだろう。
とにかく、群れの混乱が収まる前に、何とか私達は撤退する事が出来た。
彼にはお礼を言って、その後ムチャをしないようにキツく言っておかないとね。
アリサはカノンちゃんの誤射(強弁)で倒れたまま、昏倒して目を覚ましていない。
医務室で今も眠っている。
様子がおかしかったけど、今は目が覚めるのを待つしかない…。
カノンちゃんが「わ、私のせいなんでしょうか…」と、人を殺してしまったような表情をしていたけど…確かにおかしな話よ。
ゴッドイーターの銃撃は、オラクルの特殊な性質を利用して、同じゴッドイーターには効かないよう調節されている筈だけど……ああ、衝撃は受けるけどダメージは無いという意味でね?
それにしても、あの攻撃は何だったのかしら。
オニクイチギリ、と言っていたけど…鬼を食いちぎる一撃?
相手は神だけど、言い得て妙ね。
その後に言っていた、人生を掘っては埋める云々はよく分からないけど。
あの攻撃には皆驚いていた。
特にジーナの目が、任務前とは全く違っていたものになっていたわ。
耳鳴りでよく聞こえなかったけど、確か帰りにこんな事を言っていたような…。
「素晴らしいわ……生と死の境界線で現れた、生の輝き全てを注ぎ込んだような、絶対的な死を与える一撃だった…。
あれこそ、きっと生と死の交流の果てを象徴するもの…。
……ふふ……胸が…ざわめく……いえ……濡れるわ…」
…何が?
いや私も経験者だし、何がかは分かるんだけど…。
「いい人を見つけた…」
…何か物騒な方向も込みで、彼にロックオンしてしまったようね。
二人に幸運を祈るわ…。
とにかく、今日はもう私もリンドウも限界よ。
…よく生きていてくれたわ、リンドウ…。
神無月鯨日
えー、支部長への対応をどうするかとか以前にだな。
妙な事になっている。
最近影が薄かった、ミタマののっぺらぼう。
何が切欠なのかよく分からないが、またパワーアップしたようです。
で、覚えたスキルがまた問題。
MH世界、GE世界のスキルを覚えたので、今度こそは討鬼伝世界のスキルを覚えるだろう…と思っていた。
それは確かに的中したのだが。
「特化・強化」ってナニ?
討鬼伝にはそんなスキル無かったぞ。
いやあるにはあったが、「防特化・○○」「攻特化・○○」みたいに、ミタマスタイルをそれにしている場合、特殊な効果が付くヤツが。
でも単なる特化、というのは無かった筈だ。
ここへ来てオリジナルスキル?
…かと思ったのだが、どうやら違ったらしい。
ある意味オリジナルではあるのだが……どうやら、ミタマスタイルをどれかに確定し、暫く時間が経つと、単なる「特化・強化」がそのスタイルに対応した特化になるらしい。
攻スタイルにしていれば、渾身強化・周囲。
防スタイルにしていれば、防特化・突破。
迅スタイルにしていれば、空蝉強化・二段
癒スタイルにしていれば、癒特化・手当…と言った感じで。
ちなみに、各スタイルに変更して発動される特化スキルは固定らしい。
…この現象って、討鬼伝世界的にはどうなんだろうか?
ゲームと違い、ミタマのスタイルは使い手の引き出し方によって変えられる。
それと同じ現象だとすると、他のミタマでも同じように「特化・強化」のスキルがあるんだろうか?
討鬼伝世界的には、他人のミタマについて質問するのはあまり良い行為ではなかったので、聞いた事が無い…。
いや、それ以前に霊山にあった資料を思い返してみるが、「特化・強化」というスキルは無かったように思う。
のっぺらぼう特有のスキルだろうか?
のっぺらぼうと言うのは、自分の特徴を持たない人間を揶揄する言葉でもある。
特徴が無いから、全部のスタイルに使えるスキルを使える……子供騙しの理屈だな。
まぁいい、とにかく便利なスキルである事には間違いない。
ついでに言うと、今回レベルアップした切欠も検討が付く。
まず間違いなく、鬼杭千切だろう。
黒爺猫を仕留める為に死線を潜り、昂ぶりのままに全力以上の力を振るおうとしたあの時。
多分、一種のトランス状態になった事が切欠だ。
あの時の事を思い返してみると、どうも俺、あの時から迅特化スタイルの空蝉強化・二段を使っていたっぽいんだよね。
黒爺猫の正面に立ってチャージをした、あの時だ。
一発目の黒爺猫の攻撃は、空蝉で無効化できた。
そしてその後、ドリルバンカーを叩き込んだワケだが……全力での一撃にしては、反動が少なすぎたのだ。(それでもリンクエイド必須だったが)
正直な話、あの一撃の反動で体の内臓や骨がグチャグチャになるくらいの覚悟はしていた。
だが、実際にはリンクエイドされたら何とか動ける程度のダメージしか無い。
あの時、我知らず発動していた空蝉強化・二段の効果だろう。
反動の殆どを、空蝉で無効化したからその程度で済んだ。
……うん、ここまではいいんだ。
特化という謎スキルも便利だし、それによって幾つかの事も説明がつくようになった。
主にドリルバンカーの反動があの程度で済んだ事についてだが。
ああ、すまない。
前置きが長くなってしまったね。
そう、『前置き』なんだ。
特化の話もミタマのレベルアップ条件の話も、前置きなんだ。
んじゃ、のっぺらぼうのナニが一体問題なんだって?
増えてるんだよ。
のっぺらぼうがふえてるんだよ。
のっぺらぼうが3にんにふえてるんだよ。
なにいきなり増えてんだよ増えるならせめて一人ずつ増えろよ一人から3人ってディグダからダグトリオかこのやろうおまえなんてふえるワカメで充分だ!
「おめでとう! ディグダはダグトリオにしんかした!」ってやかましいわコンチクショウ!
どっかでB弾幕が飛んだのを受信したぞ!
疲れる…。
とにかくこののっぺらトリオ、妙に活動的になっている。
3人揃って遊んで(?)いる事も多いようだし、揃ってふらふら歩き回ったり、意味もなく組体操したり、ミタマを覗いている俺を煽っているとしか思えない動作を延々と繰り返したり……うああああ、思い出しただけで胃が荒れるウザさだ!
酒! 飲まずにはいられないッ!
ノンドルバアイカ! 1.5!
…少し錯乱していたようだ。
真面目な話、どうもこののっぺらトリオだが…最初ののっぺらぼうが分裂してできたっぽい?
現在、3つのスキルを習得していたワケだが…スキルを見てみると、一体一体が一つ一つのスキルを保持している。
単純に考えて、新しいのが2体出てきたんじゃなくて、元々居た1体が元になって3体になったんだろうが…。
これってどういう事だろうか?
と言うか分かりきってはいたが、分裂するとか人間のミタマじゃねーな。
いや、そうでもないか?
これも一種の分霊だと思えば…討鬼伝世界でも、ミタマを分かち合う事は出来た筈。
となると、増える事自体はおかしい事じゃないのか。
ただその増えたミタマが、相変わらず俺の中に留まって、しかもスキルをバラバラに持っているのはおかしい。
人間のミタマと妖怪のミタマの差か?
分からん…。
だがしかし待てよ。
理由はどうあれ、俺の中に3体のミタマが宿っている事には変わりない。
もしも、何らかの条件により(例えばスキルを3つ覚えるとか)、のっぺらぼう達がどんどん増殖していくとなると、どうだろう?
…ポケットを叩くとノッペラボウが三つ、か。
ネズミ算式に増えていって…最終的には俺の中に数えるのも億劫なのっぺらぼうが……しかも集団組体操でヤグラを作ったりマイムマイムを踊ったり…………想像するだけで気が狂いそうになる。
SAN値が削れる…。
し、しかしだ。
もしもこの想像が現実になってしまえば、討鬼伝世界をどうにかできるかもしれない。
数多のミタマを従えて、その絆を結ぶ事で、討鬼伝世界最大の山場であるオオマガドキを封じる。
つまり、複数のミタマを宿す事ができない(のっぺらトリオはもう纏めて一体扱い)俺でも、ムスヒノキミの役割を果たせるかもしれないのだ。
問題は、これが実現可能かどうかと、のっぺらぼうをそこまで増殖させるのにどれくらい時間がかかるかって事だな。
これについては、地道にやっていくしかないだろう。
3体同時にレベルアップして増殖するようなら、3×3で9人、さらに増殖で27人になるかもしれんし。
……ウザいってレベルじゃない。
SAN値直葬確実である。
ああ、考えるのもイヤになってきた…。
今日はもう休もう。
いつもなら出撃しまくってる時間だけど、神機と杭君がメンテナンス中だから何もできない。
支部長への報復として、リンドウさんにアーク計画の事を話そうかと思ったが、なんか知らんがリンドウさんを見かけない。
サクヤさんに聞いたら、特務に行っているそうなんだが…昨日の今日で、か?
お互い、暗殺しようとしたって事は気付いている筈なんだが……それで釘を刺しに行ったか?
狙うなら自分ひとりを狙え、巻き込むな……なーんて言ったところで、支部長が素直に聞く訳ないわな。
それで聞くような支部長だったら、最初から暗殺なんて狙わないよ。
目的のためなら、何処までも非常に徹するタイプだ、あの人……俺を暗殺に巻き込もうとしたのだってそうだしな。
………特務に行ったのは、「まだ完全に反旗を翻す気は無い」ってアピールか?
しかし一人でとは幾らなんでも…でも普段の特務も一人でやってるっぽい。
連続で暗殺を狙われる可能性は?
…昨日のような大掛かりな罠は、恐らく無い。
そうそう準備できるもんじゃない。
ただ、大きな罠を潜り抜けた直後ほど隙が生まれるのも事実。
……リンドウさんなら大丈夫…と思うしかないか。
特務が「転校」もとい転任になりませんように。
鬼『杭』千切 ~其は人生の穴を意味もなく掘っては埋める一本の杭~
オリジナル技です。
~ 一本の杭~までが正式名称なのは言うまでもない。
その内、主人公の保持技能一覧とか作った方がいいかも…。