ただし特に伏線は無い。
今回は読み飛ばしてしまっても問題ないです。
ちょっと欝な話になってしまったので、即興で書き上げた外伝つけてます。
PS4月
一晩ぐっすり眠って、気分爽快。とは言え、未知のモンスターと遭遇した直後なだけに、好き勝手に行動させてはくれない。
以前のループでもあったが、病原菌の類が無いかの確認もある。暫く隔離される事になってしまった。まぁ、猟団は相変わらずデンナーとコーヅィで保たせてくれてるようだが。
今回討伐したミラボレアス…伝承に謳われているのと同じ個体かはともかくとして、メゼポルタ広場一つを壊滅させる力を持ったモンスターだ。こいつを討伐した功績は大きいし、当然報酬だってかなりのものだ。まぁ、素材はともかく報酬は猟団運営に突っ込むようにと伝えてしまったが。
ちなみに、俺のところにはほぼ途切れなく見舞客が訪れていた。病原菌の疑いで隔離されてるのに、いいのかなぁ…。
まぁ、通してくれるって事は問題ないんだろう。それこそ、ベッドに連れ込んでしまっても。あと、クロエを相手に「自分の意思でイクのと、誰かに強制的にイカされるのではどちらが気持ちいいか」というセクハラクエスチョンを投げたりもしたな。
今回の勝利の立役者ともいえるミキは、シキに世話されながら眠り続けている。無理もない。いきなりあんなのにカチ合っちゃなぁ…。あそこまで堂々と指揮をとれたのは、本当に凄い。自慢の娘と言い切れる。
トドメとなった、巨龍砲→撃龍槍飛ばし→巨龍砲落下による打撃→爆発のコンボは、槍飛ばしまでは計算に入れ、落下打撃は『運が良ければ』くらいにしか考えていなかったのだそうな。爆発は純粋に幸運だったらしい。ま、幸運も実力の内ってね。
さて……見舞いラッシュも一段落したし、シキと本格的に話すのはミキが起きてからになりそうだし、少しばかり整理しておくか。或いは、新たに判明した事実を繋ぎ合わせた、いつもの妄想。
どこから書いたものかな…。そうだな、先日の日記に書いた推測の内容にも、幾つか間違いがあったようだし、最初から書くか。
まず、ミラボレアスはアラガミであり、また同時に人間でもあった。これは間違いない。その出現の切っ掛けになったのが、ミキがウェストライブ家から持ち出した『何か』である事は間違いないだろう。
この『何か』は、ミラボレアスが息絶えた辺りに転がっていた、灰の塊…だと思う。そこだけ妙に強い力を感じた。燃え尽きたのか砕けたのか、いずれにせよ既に原型を留めていない。ミラボレアスが力尽きると同時に、力を使い果たして自壊したんだと思う。
そして、その傍で燃えていた死骸。これがミラボレアスの素になった人間のようだが………この男、数年以上前に死んでいたようだ。野晒しでボロボロになった鎧と剣、そして血の跡を見れば分かる。
鷹の目で見てしまった際、死して尚死骸に宿り続ける怨念、鬱憤が嫌と言う程見て取れた。この怨念を見初めて、ミラボレアスの『素』はミキの元から離れたんだろう。元が死体であれば、精神干渉して正気を押さえ込む必要もない。
鬱屈していたミキを操ってフロンティアに向かおうとしていたところ、更に良い素質を持つ素体が転がっていたので、そっちに乗り換え。ミキは正気を取り戻さないまま、フラフラとフロンティアへ。…この辺を勘違いしてたんだよな。精神に干渉されて操られていたのなら、その大本が離れたとしてもすぐに正気に戻るとは限らない。ミキが目を覚ましたのはフロンティアだったとしても、大本が離れたのはそこに至るまでの道中の何処かだ。
一方、ミラボレアスの素に魅入られた死体は、僅かに残った意思…怨念と共にフロンティアに向かう。そして如何なる意思によるものか、ミキを監視するようになり、それに近付いた俺も監視するようになって…。とうとうミラボレアス出現。
これだけだと、本当に何が何だか分からない。何故、ミラボレアスと化すほどの怨念を宿していたのか、何故ミキや俺を付け狙っていたのか。
だが、ここに一つの要素が付け加わると……全てとは言わないが、ある程度説明はついてしまう。
ここからが今回判明した事だが……あの死骸、恐らくはミキの実父、シキの元旦那さんだ。
あの燃えていく絵に描かれていたのは、まだ若かった頃(別に今、年増とは言ってない。それはそれで大好物だし)のシキ(ちょっとお腹大きめ)と、物心ついたかどうか微妙な年齢のマキ。
念のため、シキにも少し聞いてみたが、元旦那と別れる少し前くらいに、家族絵として描いてもらった事があるそうな。尤も、シキは旦那の痕跡を消し去る為、既に始末してしまったらしいが。
さて、ここからは鷹の目で読み取った、元旦那の情報を並べておこう。あまりいい気分ではないので、読み飛ばしてしまっても構わない。
知っての通り、彼はハンターだった。望んで就いた訳ではない。故郷にハンターが居なかった為、周囲の圧力に流されてハンター役を引き受けただけだ。
優しい男だと言われていた。だが、彼自身は自分をそのように思った事など無い。常に何かに怯え、周りの顔色を窺っている自覚があった。真面目だと言われていたのは、定められた道筋から逸れるのが怖かったから。他者に対して強い物言いをしないのは、その言葉が自分に返って来た時に反論できないからでしかなかった。
それは狩りでも同じだった。ハンターとして訓練をつけてくれた教官からは、「かけるべき情けと、かけてはならない情けを区別しろ」と口を酸っぱくして言われたものだ。
ある日、女と出会った。明らかに上流階級の出身で、頭もいい、度胸もある、見目麗しい若い女。
何が切っ掛けだったのかは彼も覚えていないが、気が付けば彼女と恋仲になっていた。
自分には勿体ないくらいのいい女だ。そう思ったのは嘘ではない。…ただ、心の奥底に、自分にはない物を沢山持っている彼女への嫉妬が、僅かにこびり付いているのを見ないふりして。
幸せだった。それは間違いない。
小さなクエストしか受けられず、時にそれすら失敗する事もあったが、可愛い娘も産まれ、美しい妻が待っている家に帰れば、心の底から暖かくなった。
いつからだろうか。それが重石に感じられ始めたのは。
うだつの上がらない3流ハンターと、後輩に軽んじられた時か。
時折見せる、妻との経済感覚の違いに戸惑った時か。
もう少しで昇格クエストを達成できそうだった時に、突如乱入してきたモンスターに襲われて命からがら逃げかえって来た時か。
心地よく暖かかったものが、真綿で首を絞めるように、水を吸ったかのように、閉塞感に変わっていく。
切っ掛けは何だっただろうか。とてつもなく下らない事だった事だけは覚えている。気が付けば、暖かかった筈の妻は鉄の如き重さで彼を苦しめ、娘でさえもその泣き声に鬱憤しか感じなくなった。
初めて……そう、記憶にある限り、初めて鬱屈し続けた感情を吐き出した彼に待っていたのは、妻との破局だった。売り言葉に買い言葉、互いに衝動的に住処を飛び出し、気が付けば全てを失っていた。
最初こそ、重石が取れて気楽な心持でいられたものの、一人旅の空では温もりもなく、自分を繋ぎとめられる軛も無い。
かといって、あれだけ啖呵を切ったシキに頭を下げるのも、なけなしのプライドが邪魔をする。
暫くは放浪するようにハンターとしての活動を続けるが、今までうだつの上がらなかったハンターが、突然腕が上がる筈もない。
どれくらい放浪を続けていたのか……。マキの妹が産まれたのは確かだろう。
彼は一つの決断を下す。
いや、決断と言える程のものではない。このままでは、消耗し、年老いて、ハンターとして立つ事すらできなくなるのが目に見えている。
ならば、少しでも動ける内に、大きな賭けに出よう。フロンティアに行こう。
…フロンティアに行ったところで、何か当てがある訳ではない。ただ、そこに行けば一発逆転の目があると、妄想にも近い想いで縋っただけだ。
往々にして、人生に追い詰められている人間の行動原理はこんなものである。…そして、その一発逆転の目があるとして、それをモノにできる人間は数える程しか居ない。
だが、それを考えられるだけの理性と自省を、彼はとっくに失っていた。
何をやっても上手く行かない。妻と娘とは別れてしまった。たった一度、内心を吐露しただけで全てが台無し。
どうしてだ、どうしてこんなに失敗ばかりなのだ。自分はしっかりやっている筈だ。真面目に生きてきた筈だ。どうして誰も助けてくれないんだ。
もしも失敗があるとすれば、あの時シキを罵った事か。あの時も、ずっとずっとそうしてきたように、自分の言葉も意思も全て呑み込んで、唯々諾々と頷いていれば良かったと言うのか。
ずっと、ドロドロとしたものを貯め込んでいた彼は、自分の中でそれが凝縮されている事に気付かず、吐き出し方も、溶かし方も知らなかった。
心の中が、コールタールより黒いモノに埋め尽くされそうになりながら、未練がましく持っていた家族の絵を眺め、フロンティア行の馬車の中で溜息を吐く。
…彼の幸運値は、何処までも低かったらしい。
ここで更なる追い打ちがやってくる。馬車が大型モンスターに襲撃されたのだ。思い出に浸っていた彼は逃げるのが遅れ、重傷を負い、咄嗟に街道を外れた森の中に逃げ込んだ。
…重症。回復薬もなく、狩りの中なら助けに来てくれるアイルー達も居らず、力尽きて倒れ込む。
薄れていく意識の中で考えていたのは、上手く行かないこの世界に対する憎しみと、僅かに残った『あの子の顔を見たかった』という二つだけ。
……誰にも看取られず、モンスターに荒らされる事も無く、死骸は長くそこにあった。いつの間にか、彼は幽霊…地縛霊と化してそこに佇んでいた。
それからどれだけ時間が経ったろうか。ふと、自分を呼ぶ『何か』を感知する。それが何なのか分からず、呼ばれたどうなるか考える事もできず…ミラボレアスの素となる何かを持って、死骸が再び動き出す。アラガミに変えられ、表面だけ繕われた体を操られて。
最後に向かおうとしていた、フロンティアに向かって。
……なんだかなー。どんだけ巡り合わせが悪いんだよ。いや俺の想像でしかないって言っちまえばそれまでだけど、鷹の目で読み取った情報もあるから、そう的外れでもないと思うんだが。
フロンティアに行って一発逆転…はまず無理だが、せめて到着してクエスト失敗時に誰かに看取られたり、埋葬されてさえいれば、こうまで話はややこしくならなかっただろうに。地縛霊として無駄に年月重ねたおかげで、黒い感情が更に増幅されたんだろうなぁ…。
そして、更なるトドメ。
何かって? 言うまでもないだろう。ミキだ。本当に自分の娘として認識していたかは分からんが、まぁ同じアラガミって事で同族と思っていた可能性はある。
で、そのミキはと言うと……育ちに育った姿で、見知らぬ男を『パパ』呼ばわりだぞ? 実父にしてみりゃ拷問だろう。
あまつさえ、その『パパ』は色んな女をとっかえひっかえ…。しかも『パパ』と肉体関係あり。これは気づいたか分からないけど。
誠実な父親であればまだ納得もできたかもしれんが、唯一残った拠り所をそんな奴に奪われれば、そりゃブチ切れ程度じゃすまねーわ。ミラボレアス通り越して、バルカン辺りまで一気に進化しかねなんだわ。
色んな意味で限界が訪れ、ミラボレアスに変化する準備も整ったところで、俺、セラブレス、ミキという家族団欒(?)を見せ付けられて、最期の一線を越えてしまったと。
…なんつぅか……悲惨どころの話じゃないな。色んな事が拗れに拗れ、良縁が悪縁に転じて絡みに絡み…。成仏してくれ、としか言いようがない。少なくとも、冥途の裁きでは酌量の余地はあると思いたい。何もかもに失敗した所に最悪の結末が舞い込み、更にミラボレアスの素に唆されたんだ。多少の救いがなければ、つり合いがとれないだろう。お慈悲を映姫様! …あ、あの人幻想郷付近担当だから、多分こっち管轄外だわ。
真面目な話、俺にとっても他人事じゃない。彼が辿った道は、いつかは自分が通る道だ。死んでも終われないような人生を送っているのなら、猶更。成功の絶頂があれば、失敗の転落は避けられない。今はG級ハンターとして活動できてるし、女性関係にも恵まれすぎる程恵まれているが、いつか致命的な失敗が積み重なる時は来る。動く気力を失い、誰も彼もがいつか俺を見放し、ついでにセクロスにも飽きたり、不能になったりする日が来るかもしれない。
…そう思うと、嘲笑う気にも、安易に同情する気にもなれなかった。
シキ達に話すべきか、暫し迷ったが……結局話すべきではないと結論した。所詮は推測だし、検証しようにも死骸・家族絵共に燃え尽きてしまった。
もしもこれが全て推測通りだったとしても、シキ達一家に余計な重荷を背負わせる必要はないだろう。シキに感知すらされない、故人には悪いと思うけどな…。祟るなら俺にしとけよ。ちゃんと(力尽くで)払うから。
…扉がノックされた。この気配はシキだな。ちょっと深い話をするつもりだが(肉体言語があるかは時間次第)、今日はここまで。
さてもさても、例によって夢を見ているようであるが、今回はまた随分と破天荒な夢である。率直に言って悪夢のよーだ。
具体的に言うと……俺は波に巻き上げられて板切れの上で正座をしつつ、逆様になって湯呑から茶を飲もうとして、うまく口に入らないのでバキュームして飲んでいる。
……何が何だかわからない? 俺だってそうだよ。
ちゅーか、明らかに超常現象だなぁ…しかも時間系の。周囲を見回せば、下手な船よりも高く逆巻いた波が、ビデオのスローモーション再生をされているかのようにゆっくりと、ゆっくりと動いている。
俺の手の中にある湯呑に注がれているほうじ茶も、ゆ~~っくりと落下しようとしてるのが見えるんだよね。時間が止まっているのではなく、ゆっくりと流れているんだろう。
俺だって、板切れに乗って平然と正座しているが、宙に投げ出される感覚と、水面に押し上げられる感触が体に残っている。
さらに、どう見ても大嵐だというのに、空にはヘリコプターが飛んでいた。
……で、何より訳が分からんのは…その海の上に、なんか超巨大な白いモンスターが居るんですよねぇ。微妙に機械っぽいが、逆に神秘の塊系のような…。
これ、ラオシャンロンどころか、下手するとナバルデウス級だぞ。しかも変な顔がついてる。…人の顔っつーより、お面っぽいな。
そしてさらに分からないのは、なぜか美麗なお姉さまが板切れでサーフィンしながらそのデカブツとバトっている事だ。こっちは時がゆっくりしている空間の中で、普通に動いている。…というより、普通より遅くなっている筈なのに、なお俺の目に留まらないくらいのスピードだ。どう見ても、逆算したら生身で音速突破している。
メッチャつえぇ。
なんか時々飛び出してくる、でっかい足とか拳とかもさる事ながら、お手本にしたいくらいの回避の上手さ。
今の俺じゃ歯が立たん。
…この人、どう見てもアッチ系の人だよなぁ…。ボディラインが丸出しで嬉しい恰好もさることながら、この強さと美しさはアレだ、魔性のモノだ。
現に、いつぞや夢に見た某デビルハンターの方々(実際に会ったのは、片腕悪魔の人だけだったけど)に通じる雰囲気を感じる。
…あ、なんか白いのと同じくらいデカい蜘蛛っぽいの出てきた。魔具でも使って召喚したのかな?
ああ、白いでかい奴が殴られ焼かれて悲惨な事に。だが助けることはできない。美人のおねーさまが勝ってほしいという個人的な願望だけでなく、正直何もできねーんだよね今。時間がゆっくり流れてるだけで、今の俺って津波に打ち上げられて自由落下が始まる体制だもの。空中で何をしろというのだよ。そもそも体を動かそうとしても、これまたゆっくりとしか動かせない。茶を啜る動きだけは、何故かスムーズにできるが。
ああ、白いのがなんか潜って、大きな渦巻きが…って、なんで俺の真下に渦ができるんだよ!?
夢とはいえ溺死は嫌だなー、まぁハンターボディなら水圧で死んだりする事はないが、流石に酸素量には限界があるよな、どうすっかな…。
そんな事呑気に考えてたら、おねーさまと目が合った。「あら?」て顔をされたが、お構いなく。状況はよくわかりませんけど、こっちはこっちで多分何とかなりますから。
肩を竦められた。そのリアクションはどういう意味なんですかねぇ…。
とりあえず、俺の事を気にかけてくれたらしいおねーさまと違って、デカブツは俺が巻き込まれるのも構わず、光線やら炎やら乱射してきたがったから、こっちは俺にとっても敵だな。
……? 気のせいかな? さっきまで、おねーさまも白デカブツも、ろくに視認できない動きだったけど、段々遅くなってきてるような…?
いや、明らかに気のせいじゃない。彼女たちの動きが見える。動きの速さの比率が変わった訳じゃないんで、俺の体感速度が変わったのか?
見えても、おねーさまには追い付ける気がしないけどな。ひらりひらりと、捉えづらいったらありゃしない。あれは殆ど、体術のみでの回避だな…。あそこまで特化した人は初めて見た。ブシドースタイルですら児戯に見えてくるよ。
…それでも相変わらず、俺の体は宙に投げ出されたままで………あれ、なんか俺の動きの速度も速くなり始めてない? 体感速度に合わせて、体の動きの速さが変わったというのか?
どっちにしろ落下しかできませんがね! 何せ大渦の真上なんで! 畜生、どうせなら月歩とかできるくらいに動きが早くなればいいのに!
あ~~~れぇ~~~~~~~
…あ、なんか足元にでかい蜘蛛が出てきて受け止めてくれた。ネルスキュラの親玉かな? …いや、やばい気配と感触がする。鬼や魔の系統っぽいから、親玉っつーよりは種族の守護神とかか?
なんか下でグロ画像が展開されてる気がするが、これも自然の掟か。どう見ても自然現象じゃないし、自然な生物でもないと思うが、きっとこの世界ではこれが自然当然なのだろう。世の無常を考えるが、ハンターだって似たような事して剥ぎ取ったりしてるんだから、文句なんぞつけようがない。
好奇心でぺたぺた触っていると、いつの間にか隣におねーさまが立っていた。
こりゃどうも。助けてくれたようで、ありがとうございました。
「**********」
………え、英語? フランス語?
言葉がわからないとジェスチャーで伝えると、呆れたように頭を振って、なんか突然口に飴を突っ込まれた。
「これでわかるでしょう」
…翻訳こんにゃくかな?
「ロリポップよ。悪魔の舌じゃないわ。ミラクルヌードルは嫌いじゃないけど。…どうやら魔女でも天使でもないようね」
見ての通り、むさくるしい野郎で、どっちかっつーと鬼か、局所的に神扱いされたりもします。人間が一番恐ろしいと感じさせるハンターでもあります。
「予備知識もなしか…。驚いた。素質もなさそうな素人が、ウィッチタイムに同期してくるなんて。面倒だし、わざわざ世話をする義理もないわね。自力で帰れる?」
陸地まで自力で辿り着けって事なら、方向さえわかれば勝手に帰りますが。この嵐の中でも、泳いで帰るだけの体力はありますし。
「そ。なら、あっちに向かって泳ぎなさい。尤も、辿り着くのは地球の反対側かもしれないけどね」
多分そこに辿り着く前に、目が覚めて別の世界に帰ることになりますな。
できればおねーさまともお近づきになりたかったですが、残念ながら俺のレベルが足りない様子。お礼に何か………ああそうだ、よかったらコレどうぞ。邪魔なら捨てるなり、乞食にでもあげればいいんで。
それじゃ、邪魔にならないように退散しますよ。
「いい心がけね。…で、さっきから何を飲んでるのかしら」
ほうじ茶。塩水入りまくった…。
では、助けてくれてありがとうございました。あでゅ~!!
「……本当に海に飛び込んで泳いでいったわ。魔女でもないのに、妙な人間がいるわね。しかもコレ…」
礼と称されて手渡された、巨大ロリポップ(という名のハンマー)を、どうしようかと思うおねーさまだった。
…ちなみに、シロクマに遭遇するまで泳ぎ続け、目が覚める前にうっすら見えた記憶では、メガネが似合う小さな女の子に、遊び道具として渡していたようだ。
巡り巡って、その遊び道具がおねーさまの唇紫パパンに炸裂する事になったのかは、俺の知るところではない。
…目が覚めて以来、ブシドースタイルで回避やジャストガードを成功させた際、妙な感覚を感じるようになった。
あの夢で、また妙なスキルを覚えてしまったんだろうが……これは曲者だな。
おねーさまがウィッチタイムと呼んでいた現象だと思うが、神経が研ぎ澄まされ、すさまじい速度で動くことができる。俺もアラガミ化状態で、一時的に3倍速になる技があるが、明らかにそれ以上だ。
…ただし、欠点もある。発動している間、霊力をバカ食いするのも問題だ。何より、本家のウィッチタイムがどういうものなのかはわからないが、どうも俺の場合、相手の動きというか意識速度に合わされるみたいなんだよね。
相手が、俺より素早かったり、集中力があったり、動体視力に優れている相手ならいい。その時は俺が速くなるだけだ。
が、逆に遅い相手だとどうだろう。例えばモス、ドボルベルグ等。
その時は、俺が逆に遅くなってしまう。
周囲に複数の相手がいる場合も問題だ。誰の意識に波長が合うかわからないし、突然解けてしまう場合もあった。
この前なんか、うっかり間違った相手に発動させてしまったところ、ドスファンゴが驚異の八倍速で連続突進してきて死ぬかと思った。
逆にミドガロン相手に使ったところ、最大の武器である素早さを相殺してしまい、単なるでかくて炎を使うオオカミになってしまった。一緒に行っていたクロエ曰く、「人類が出していいスピードではなかった」との事。それでもほぼ完全に見切れるとか、レジェンドラスタはどうなってんだろうか。
…つまり、一対一の場合に限り、相手との速度差を無くすスキルだと思った方がいいだろう。ドラクエみたいに、ターン制に近くなるのか。
奥の手とするには、十分すぎるほど強力だな。相手が自分より遅い場合、発動させなきゃいいだけだ。
外伝:ベヨネッタ編