神無月望日
前回はこんな事は無かったよなぁ。
普通に難民として扱われて、支部の外にある居住区に外れに棲まされたんだが。
と思っていたら、なんか檻の上の方に窓が開いて、お偉いさんらしい二人が現れた。
で、
「はじめまして。このような形での対面となる事をお詫びしよう。
私はこの極東支部の支部長、ヨハネス・フォン・シックザールだ」
「ペイラー・榊だよ。
よろしくね」
頭が凍った。
この二人、確かGEの登場人物だ。
そして支部長がまだ健在って事は、少なく見積もってもGE本編の真っ最中からそれ以前?
取り敢えず挨拶を返し、自分は一体どういう経緯でこの檻に入れられているのか尋ねてみた。
すると、予想通りに俺はアラガミか、或いは犯罪者の類と思われていたらしい。
何で?と思っていると、まぁ有る意味納得と言うか。
このご時勢で、アラガミがウロウロしている地域をゴッドイーターでもないのに歩いていて。
しかも見慣れない…と言うか思いっきり鎧を着て、神機でもない剣を持っている。
あまつさえ、鎧には結構な血が付いていた…デスワープする前の俺の血と、狩りをした時の獲物の血だ。
うん、逃げるのに精一杯で気付かなかったけど、どう少なく見積もっても不審者だな。
「さて、本題に入ろう。
私達は、君がアラガミだと考えていた訳だが、どうやら違うらしい」
まぁ、人間ですから。
ハンターだけど。
この檻に入れられる前、ちょっとおかしい位に計器(だと思っていたけど、多分アレは拘束具だ)を付けられて検査されたが、それで俺がアラガミではないという事は証明されたらしい。
ペイラー博士が素でツッコミ入れる程に、おかしい位に鍛えられていたが。
ならば一体何者なのか、と私物入れの袋の中や剣を調べてみたところ、今度は技術者達が仰天したそうだ。
明らかに異常な道具の数々。
回復薬は、医学的な根拠は全く解明できなかったが、傷を負ったモルモット(文字通りのネズミのようだ)に与えて見たところ、明らかに活力を取り戻した。
解毒薬も同様、生物の体内に入った毒の殆どを、時間はかかるが種類を問わず中和してしまう。
その程度の効果で済んでいるのは、ハンター秘伝の肉体操作術が合わさっていないからだろう。
閃光玉に至っては、ボールの中に数匹の蟲の死骸(光蟲)や石ころ(陽光石)が入っているだけなのに、衝撃を与えるとスタングレネード顔負けの閃光が放たれる。
しかも、その蟲や石は専門家に問い合わせても全く分からない程の未知の物だった。
剣も同様で、未知の鉱物が使われている上、構成している素材の一部に明らかに獣の牙が打ち込まれている。
しかも、その牙は信じがたい事に、生きた恐竜・或いはそれに近い生物から得たものと思われる。
ちなみに持っていたのはヴァイパーバイト。
麻痺剣便利です。
…うん、話に聞いているだけだと、何が何だかわからんね。
技術者達は喧々囂々しているが、もう何を言っても推測どころか妄想の領域にしかならないので、直接確かめに来たそうな。
俺としても別に話す事自体は問題ない。
別に知られて困る事でもない。
ああ、でもこの世界のストーリーについて知っているような事を仄めかしたら即始末されるかも。
だがデスワープするだけなので、問題ないっちゃ問題ない。
ただ、できれば暫くこの世界で暮らしたいものだ。
と言う訳で、モンハン世界の事をぶっちゃけてみた。
流石にすぐには信じられないようだったが、ペイラー博士が何やら頷きまくっていた。
多分、話の整合性とかを検証しようと……いや、あの性格なら好奇心に従ってるだけの可能性が…。
と言うか、これってひょっとしてアレか、喋ってたのにアラガミ扱いって…。
俺がシオと同じ特異点だか何だかと思われていたんだろうか?
神無月BAR日
取り敢えず人間なのは確かだし、特に反抗的な態度も取らなかったのが幸いしたか、極東支部の客人扱いで滞在する事になった。
でも多分、監視とか付いてるんだろうな。
そう考えると、日記をつけるのも危険な気がする。
MH世界に居る時から、あっちの文字に慣れる為に日本語とMH世界言語を混ぜこぜで使っていたのだが、意外なところで防諜効果が出たようだ。(ごつごうしゅぎ)
さて、それはともかくこれからどうするべきだろうか。
暫くこの世界に滞在する事になるだろう。
前回と違い、フェンリル内部に住む事になったので(監視しやすいからだろう)襲撃にあってお陀仏とはならないと思う。
現在は客分として迎えられているが、それはいつまでも続くものではないだろう。
物資に余裕のないこの世界では尚更だ。
未知の素材・物質の研究という事で、私物入れ(返してもらった)から幾つかの道具を提供しているが、それにも限りがある。
デスワープに備えるため、イーオス装備は早めに返してくれと頼んでおいた。
神無月婆日
ジャイアントトウモロコシばっかりだ。
自然が壊滅しているのは見て知っていたが、甘く見ていた。
肉野菜魚各種、より取り見取り(ただし自力調達)だったモンハン世界が懐かしい。
こんがり肉持ってきておいて、本当に良かった…。
しかし、食うべきかな?
食料が少なかったのは、討鬼伝世界も同じだ。
前回はそこらの野草を食って飢えを凌いだが、全部の野草が食える訳でもないだろう。
うーむ、ここは温存するべきか…
いいや、ケチケチ言ってラスボス戦までラストエリクサーを持って行くのが俺のパターンだった。
しかも使わない。
温存ばかり考えるとキリが無いし、食っちゃえ食っちゃえ。
と言うか放っておくと腐りそうで怖い。
何故か腐らないのがモンハンクヲリテヰだけども。
神無月歯日
前回の日記から、少し間が空いた。
と言うのも、暫く悩んでいたからだ。
先日、シックザール支部長に呼び出された。
思ったより早かったけど、客分扱いも終わりかな?と思ったら、ちょっと違う。
何と客分から一転して、「ゴッドイーターにならないか」というお誘いだった。
言いたい事は分からないではない。
資源・人材を遊ばせておく余裕がないこの世界だし、これでもヘッポコとは言え俺もハンター。
狩りをする事に抵抗はないし、一般人よりは慣れている。
それに、P(何番だっけ?)ナンタラ偏食因子を投入すれば、アラ不思議。
昨日までは一般人の貧弱君だった彼が、たった一日でクソ重たい神機を振り回しながらアラガミと戦えるパワフルGOD EATERに!
怪しいを通り越して誇大広告で訴えられそうなフレーズだが、これはガチで効果があるから困る。
これを、ハンターとして鍛えられた俺に投入したらどうなるか?
元が鍛えられていた場合、偏食因子の効果もやはり大きく期待できるらしい。
3つの世界で生き抜く事を考えるなら、ステータスは幾ら高くても足りない。
だってG級とかクリアできる気がしないし。
それに、GE世界のシナリオに関わるには、ゴッドイーターになるのは必須だろう。
でもなー、正直今回は狩りとかオヤスミしたい気分やねん。
何度も何度もデスワープ繰り返して荒んでるから、暫くゆっくりしたいねん。
ゴッドイーターにならんでも、ドカタにでも使ってくれれば結構役立つと思うぞ。
何より、何か嫌な予感がするんだよな。
何度も死を繰り返したからか、MH世界では仕事の受付をした時に「あ、これクエスト中に死ぬんじゃね?」的な感覚が時々走るようになった。
勿論ハズレの時も多いが、このカンに従って色々備えて、何とか生き延びた事が何度もあった。
そのカンによると…。
ゴッドイーターになる ⇒ 死ぬ
ゴッドイーターにならない ⇒ 死ぬ
せめて分岐しろよ!
神無月憂鬱日
どっちも死ぬなら、やってやれだコンチクショウ。
今度GE世界に来た時には、ゴッドイーター達と会う時には鎧を外して一般人として潜入すっかんな!
という訳で、明日にゴッドイーターの適合試験が行われます。
何でも極東死ぬ…もとい支部初の新型の神機を使うとか。
あれ、それってGEの主人公なんじゃね?
いあいあ、いやいや待てよ。
もしかしたら…というよりヒジョーに有り得る事だとは思ってたけど、俺にアレをやれと?
ウロボロスを単独討伐したり、雨宮リンドウが抜けた穴を埋めてリーダーやったり、なんか感応現象しろと?
「生きる事から逃げるなぁぁぁ!」の名台詞を、死んでも死なない身で言えと?
もしその時には、服は水着で顔にはキグルミを希望したい。
ムチャな話だ。
ミッションについては、多分何とかなる。
デスワープで何度もスタート地点に戻るとしても、経験で有る程度はカバーできるし、私物入れに武器とか入れておけば、所謂「引き継いで最初から」だって出来るだろう。
が、カリスマと言うか信頼については話は別だ。
元々他人に執着しない性格な為か、他人からも信頼をあまり寄せられた事は無い。
うぬぬぬ……仕方ない、もう流れに任せる。
と言うかカンが正しいのだったら、どっちにしろ死んでデスワープだ。
その後の世界の事なんぞ知らん。
こんがり肉食ってもう寝る。
シックザール支部長月視点日
ある日、私に奇妙な報告がされてきた。
「人間なのかアラガミなのか分からない奴を発見した」と。
それは姿形は人間なのだが、ゴッドイーターでもないのに立ち入り禁止地点を一人で動き回り、あまつさえ血糊がついた鎧と剣を装備していたそうだ。
意思疎通も可能で友好的であった為、現在は捉えて各種検査をしているそうだ。
この報告を聞き、私は内心で色めきたった。
探し続けていた特異点となるアラガミが、こちらの手に転がり込んできたのでは?と思ったのだ。
だが、それはぬか喜びだった。
単なる人間だったのだ。
むしろ騒いでいたのは検査をした者達だった。
気持ちは分かる。
私も昔は研究者だったので理解できるが、この男の体は異常だ。
鍛えるという言葉では足りない程に鍛えぬかれ、生身だと言うのにゴッドイーターに匹敵しかねない身体能力を持っている。
内臓の各種数値も、体全体が異常な程に活性化されている事を示していた。
これに興味を示したのは、私よりもペイラーだった。
彼が目を真ん丸に見開いて絶叫する姿など初めて見た。
写真か動画に撮って保存しておきたいくらいである。
更に、今度は彼の持ち物の検査に及んだが、これまた異常。
こちらには私も興味があった。
明らかにこの地球上には居ない生物の素材が幾つも見られたのだ。
一体彼は何者なのか?
私は直接対面してみる事に決めた。
ペイラーを伴い彼と面談した結果、驚くべき事を言い出した。
何と彼は、こことは違う別の世界からやってきたと言うのだ。
世迷言と一蹴するのは簡単だが、あの持ち物の素材を説明するにはそれくらいしか考えられないのも事実。
同時に、この世界の事も幾つか聞かれたので説明した。
彼の持ち物から推測される文明レベルでは、恐らく理解できない単語を意図的に含めてだ。
「…ペイラー、どう思う?」
「そうだね、嘘は言っていないんじゃないかな」
同感だ。
少なくとも嘘ではないだろう。
「だが、全てを話している訳でもない」
「だろうね。
彼の持ち物からして、恐らく技術水準は中世より幾らか進んだ程度だろう。
僕達の文明とは、別の方向に進んでいる可能性は高いけどね。
だけども、彼はこの世界の事について随分あっさりと受け入れたようだ。
アラガミ、ゴッドイーター、偏食因子、神機…。
これらについて質問はあったけど、ひどくあっさりと理解した。
この世界でさえ、初めて公表された時にはかなりの混乱があったのに」
「聞くだけ聞いて、実際は理解してないだけという可能性も無くは無いが…」
それは考えない方がいいだろう。
どうやら彼の人物は、腹芸は苦手なようだ。
聞いた通りの世界の聞いた通りの人物なら、人間相手に化かしあいをするような機会はそうそう無いだろうから、当然と言えば当然か。
何れにせよ、そう危険な人物ではないようだ。
理性もあり、基本的には温厚…突然檻に入れられても、無意味に喚いたり暴れたりしなかった点からもそれが伺える。
事情を説明して謝罪を入れておけば、強い反感は持たれまい。
とは言え、何かを隠しているのは確かだ。
手元において管理し、監視だけつけておくとしよう。
「ヨハン、彼の持っている物を研究させてもらうよ。
出来る事なら、あのノートにも目を通したいんだけど」
「…好きにしろ。
映像記録で確認したが、そもそもあのノートに書いてあるのは殆どが未知の言語だったろう」
「僕らが使っているのと同じ言語もあったよ。
接続語がかなり見られた。
話の文脈から追っていけば、未知の言語が何を示しているのか、ある程度は推測がつく。
う~ん、それにしても別の世界からやってきたのに、どうして同じ言葉と言語を使っているのか…実に興味深いねぇ」
…すまん、こうなったペイラーは私でも止められん。
数日後、ふと気になってペイラーに状況を尋ねてみた。
「ああ、彼、どうやら計画の事を何か知ってるみたいだねぇ」
「…何?」
「彼が部屋で日記を書いているのを監視カメラの映像で見ていたんだけどね」
…監視を命じたのは私だ。
今更プライバシーがどうのとは言うまい。
「彼、独り言が多いんだよ。
それと同時に書いていた文章を組み合わせて考えると…どうも未来がどうの、塩がどうの、特異点がどうのと…。
デスワープだとかよく分からない言葉も多いけど、計画の内容か、それに準じるものを知っているのは確実だと思うね」
「………そうか」
報告しろ、と言いたくなったが、ペイラーは傍観者…スターゲイザーだ。
それに彼は部下ではあるが、同士ではない。
これくらいなら、正直に言った分だけ安いものだろう。
それにしても、どうしたものか。
思わぬところから障害が現れた。
彼が別世界から来たのは確かなようだし、何処かと連絡を取り合っている様子も無い。
何処で計画の事を知ったのかは気になるが、それ以上に拡散の可能性を潰さなければならない。
彼が何処かの回し者であると疑っている訳ではない。
だが、私を探っている者…例えば雨宮リンドウ…に取り込まれる可能性もあるし、それ以上にありそうなのが特に意識もしないでポロッと口を滑らせてしまう事だ。
彼には人間に対する危機感が少ない。
「どうするんだい?」
「………決まっている」
既に血塗られた道だ。
だが、ただ死なせるのは惜しい。
「ペイラー、新型神機の適合者を探していたな?
彼の神機の適正はどうだ」
「高くも無く低くもなく、かな。
普通の神機なら何とか適応できるかもしれないけど、新型は厳しいといわざるを得ないね」
まさか、とも言わないし、止めようともしない。
例えそれが人倫に悖る事でも。
そして私も止まらない。
「もし適合しないなら、それまでの事。
適合するなら、かなりの戦力になると期待できる」
「ゴッドイーターになりたくない場合は?」
「それでも構わん。
だが、フェンリルはゴッドイーターの設備だ。
見られてはならない物も多くある…。
周辺の居住区に移動してもらう事になるだろう」
居住区で残っている場所は、外壁が脆い辺りの家しか無いがな。
さて、この奇禍、如何に出るか。
彼からゴッドイーターになると了承の返事が来たのは、翌日の事だった。
そして、今、彼は施術室の前に居る。
出来る事なら、適応に耐え抜き、私の下でその力を振るって欲しいものだ。
彼の価値は、その戦闘技能だけではない。
異世界の情報も興味深いが、私としては彼らハンターが持つ秘伝の肉体操作術とやらに興味がある。
恐らく、彼の体をあそこまで鍛え上げたのも、その操作術の恩恵が少なからずあるだろう。
また、監視と同時にバイタルチェックも行っていたが、彼の眠りは異常な程深く、そして心身を癒している。
短時間で充分な急速を取れる睡眠方法が広まれば、ゴッドイーター達の負担はかなり軽減されるだろう。
それらの技術を是非とも教えてもらいたいものだ。
短時間では概要しか聞けそうになかったし、秘伝だけあってそうそう教えてくれそうになかったので、無理に聞き出そうとはしなかったが…惜しい事をしたかもしれんな。
概要だけでもあれば、ペイラーなら存外再現できたかもしれない。
何れにせよ、彼がこれから適応を乗り切れるかどうか、だ。
私が案内した施術室に入ろうとする彼に、最後に一言だけ投げかけておく。
「一つだけ言っておく。
…君は独り言を言うクセを治したほうがいい」
君自身の為にも。
…では、幸運を祈る。
書き溜め尽きました。
あと、感想がログインユーザーからのみになっていたので訂正しました。