※この作品はR-18です。

狩りゲー世界転生輪   作:時守 暦

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飲まなきゃやってられねぇ!
アサシンクリードとバイク免許で浮かれていたら、俺が居ない5分くらいの間にスタッフが大ポカやらかすし、俺自身も仕事のミスが続くし、些細な事から上司に説教くらうし、挙句訳の分からない所に拘る客にブチ当たるし、転勤の可能性が出てくるし、最終的には本物のキチガイがやってくる。
最後の奴は、警察か黄色い救急車に任せるべきだった。報告があと3分早ければ迷わず呼んで、逮捕まで間に合っただろうに。

これ、全部この5日間の出来事です。
やっぱ何かに祟られてるのか?

あ“~、こういう時にこそバイクだ、バイクでどっかの川沿いとか田んぼが広がる道とかをのんびり走るんだ…。
いや飲酒運転はしませんよ!

免許更新も済んだので早速バイク店に行ってみようとしたら、ものの見事に休日だった。

これでバイク買った直後に事故ったら、間違いなく祟りか呪いだな…。


第308話

PS4月

 

 さて、昨晩の肝試しだが………大成功を収めたと言っていいだろう。ただし大惨事だ。

 

 

 …え、何を言ってるのか分からない?

 ならばまずはこれだけは宣言しておこう。

 

 

 

 俺は悪くぬぇ。イヤマジデホントニ、俺は悪くヌェ。

 

 

 …なんつーかね、コーヅィも冷や汗垂らしてました。誰が悪いって訳じゃないんだよ?

 ただ、ちょっと熱が籠り過ぎたんだろうなぁ。

 

 

 誰のって…勝てなかった方々のね。

 勝者が居れば敗者が居る。これはどうしようもない事だ。毎度毎度、全員ハッピーで丸く収まってWin-Winなんて出来やしない。人間関係だと特に。

 

 そう…このバカンス兼合コンで、上手く異性をゲットしたりゲットされたりした者が居れば、狙っていた油揚げを鳶に掻っ攫われた人だっているのだ! 優良物件は競争率が高いからね…猶更ね…。

 優良物件に幾ら群がっても、番いになれるのは一人ずつ。それに敗れたからと矛先を変えても、妥協の産物であるのは目に見えているし、妥協先は妥協先で同じような事を考えた連中が群がっていたりね…。

 

 二股かけようとした剛の者も居たらしいのだが、それで今後の人間関係に悪影響が出たら…と言うより、それが露呈したら、この旅行を考え、実行したセラブレスやミーシャや領主のシキ、ついでに俺の顔に泥を塗る事になってしまう。考えるまでもなく、その後は最悪の結末が待っているだろう。

 …普通はそうなるんだよな、普通は…。まぁ、普通であるより統率がとれたハーレム率いる方がずっといいけど。

 

 

 ついでに言えば、引っ込み思案だったり、見栄張って「そんな事どうでもいい」と言い放って後戻りできなくなったり、純粋に見向きもされなかった方々も居てね…。半分くらいは自業自得な面もあるんだが、それでもカップル爆発しろの呪詛が際限なく膨れ上がって…。

 

 

 …まぁ、一線を越えたり、直接的な危害を及ぼさなかっただけまだ理性的だったと考えておこう。

 某煩悩霊能力者と、全方位噴射式超迷惑執事と、プリズマな世界に突拍子もなく湧いて出た万華鏡式ステッキが面白がって事態を引っ掻き回したしたような、酷い惨状が出来上がったが。

 アレを文章、ないし絵として記録する力は、俺には無い…。ビデオで記録してたって怪しいもんだ。

 

 

 とりあえず結果から言うと、島は無事だった。消し飛んだりはしてない。あんまり近寄りたくないが。

 

 成立したカップル達も無事だった。ちょっと性癖が歪んだりしてしまった節があるが。

 …例えば? …そうだなぁ…。あまりの恐怖に、パートナーの前で漏らしてしまった奴が、「見られてると思うと、ゾクゾクっとして催すように…」とか呟いたり、マジ泣きしてしまった男を見てSに目覚めつつある女性が居たり、初体験の筈なのに邪教の儀式風プレイ(しかもアオカン)に目覚めてしまった子が居たり…。

 

 え、最期の? 

 

 ……黙秘します。

 俺だけじゃないのよ、そこそこ経験があって手が早いの…。まー、遊びのつもりじゃなさそうだから、俺は何も言わないけどさ。

 

 

 

 

 

 いや俺もやる事ヤッたけどね。昨日もそうだったけど、あの子のダンスがまた煽情的でなぁ…。自覚がないのがまた…。

 バルンバルンダンス、素晴らしいね。ついつい、同志と一緒にあの子を乳神様への生贄にしてしまった。

 むぅ、乳神様だけではバランスが悪いな。誰か尻神様へ…しかしそうなると、うなじ神様とか脇神様とかにも……悩ましい。

 

 

 

 とりあえず、なんだ、カップル成立して、敗者達は憂さ晴らしも充分できたし、肝試しはともかく次の合コンの話も進んでるし、いいんじゃないかなコレで。

 

 

 

 

 

 

 …で。それとは別に、ちと問題が……ある、のか? うーん……ぶっちゃけ、ただ夢を見ただけなんだが。俺の夢って色々普通じゃないからね。

 でも、今回はミキもそれらしい夢は見たりしなかったようだし、いつも見るどこぞの世界に放り出されているような夢とも、また違う。

 

 かと言って、単なる夢だと思うには迫力があり過ぎたし…。

 アレと関係があるのかな。コーヅィが言ってた謎の現象。あの、謎の光が振ってくるという現象に遭遇したんだ。ただし、遭遇したのは俺一人で、極めて短時間。

 肝試しの仕込の為に一人で行動していたんで、他に確認できる奴はいない。この現象の原因っぽいモンスター、クサレイヅチ、その他諸々の気配も無し。白昼夢を見ていたんだよ、と言われると、納得してしまいそうなくらいだ。

 

 

 若干の警戒を抱きつつも、やはり何事もなく肝試しは(リア充達の阿鼻叫喚の内に)終わり、 本日もよろしくヤってマキやネリやショーカをお披露目して眠りについた。

 

 

 

 …夢を見たのはその時だ。ふと気が付くと俺は、星明かり一つない空間に立っていた。足元すら見えない真っ暗な闇の中、落ち着いていられたのは似たような状況を知っているからだろう。GE世界の電脳空間によく似ている。

 いや、それより何より……そこに居た一匹の龍から、目が離せなかったからだろう。

 

 

 

 

 ミラボレアス。

 

 

 いや、違う。体が白い。

 

 

 ミラルーツ…。

 

 

 

 

 

 これがミラルーツ。

 

 

 

 

 

 格が違う。はっきりわかんだね、いや本当に。半ば夢だと気づいてなかったけど、ガチで死を覚悟した。仮に夢だと確信していたとしても、それを忘れて自分の死を確信しただろう。

 デスワープじゃなくて、文字通りジ・エンドの死。ループ終了。投稿打ち切り。人生アカバン。

 

 

 

 無。

 

 

 

 そこから立ち直れたのは、怒りのおかげだ。…いや、おかげとは死んでも言いたくないが。

 クサレイヅチの気配を感じた。

 

 

 ハンターとしてもゴッドイーターとしてもモノノフとしてもお粗末な事に、俺の脳みそは絶対強者(ティガレックスなぞメではない)の事を即座に放り出し、クサレイヅチをブチ殺す事だけで満たされた。もしもこれが現実であったなら、気を逸らした瞬間にミラルーツの体当たりでお陀仏だったろう。

 そうならなかったのは………多分、あのミラルーツ? が手加減したんだと思う。

 

 

 俺が我に返った(夢から覚めた訳ではないが)のは、ミラルーツのパンチで何度か吹っ飛ばされてからだったようだ。体があっちこっち傷だらけだった。多分骨も折れてた。夢の中で、だけど。…ガチで痛かった…。

 

 ぶっ飛ばされて我に返って、真っ暗な空を見上げて…ふと目をやったミラルーツに違和感を感じた。全身から、淡い光が零れている。

 ミラルーツの鱗粉なんかあったっけ? と思っていたら、それはあの時に目にした光によく似ていた。島で見た、空から降ってくる光に。

 

 

 訝しむ暇もなく、攻撃を仕掛けてくるミラルーツ。

 ミラボレアスですらあの戦闘力だったのだ。ミラルーツの攻撃何ぞ喰らったら、タマフリも効かずにお陀仏しちまう。

 必死こいて避け、とても効いているとは思えない反撃を繰り返すうちに、段々と違和感を覚えていった。

 

 

 

 手加減されている。それはいい。

 

 

 でも、あの戦い方は……俺が間違える筈がない。

 

 あの戦い方は、ハンターの戦い方だ。

 そしてゴッドイーターの戦い方で、モノノフの戦い方でもある。

 

 

 俺と同じ戦い方だ。間違える筈がない。

 

 

 確かに、武器も神機もタマフリも使ってない。

 あの龍が使ったのは、ゲームにもあったような物理攻撃、雷、ブレスのみ。だけど、あれは……物理をハンター、雷はタマフリ、ブレスをオラクルバレットと考えれば、見事な程にしっくりと来る。

 コジツケではない。あの使い方、タイミングは、明確な戦術戦略に基づいたものだ。最強最悪を通り越して、どうにもならないような古龍が扱うような戦い方じゃない。

 

 何よりも、あの理性的なのに機械的な、無機質な視線! 生物との命の遣り取りではない。あれは『獲物を狩る』という事だけを考えている目だ。ハンターの究極系ともいえる姿だ。

 そう、あのミラボレアスは俺を狩ろうとしていたのだ! その上で、殺さないよう手加減をした。

 

 まるで、師匠が未熟な弟子に稽古をつけるように、俺の動きを見通し、押し返し、時に手痛い反撃を加えながらも、トドメを刺さずに戦い続けた。

 

 

 

 夢のような…いや実際に夢だったと思うんだけど、夢幻のような時間だった。あのミラルーツに一矢報いてやるという気概と同時に、奇妙なシンパシーすら感じた。

 

 

 

 それから、どれくらい戦い続けただろうか。アラガミ化も鬼杭千切も含め、打てる手は全て打ったのに、ミラルーツは無傷のまま。逃げる事さえ出来ない実力差。

 にも関わらず、なんだか妙に楽しくて。

 さぁ次はどうしてみよう。そろそろ残弾が、文字通りの命しかなくなってきた。しかし単なる自爆では、一矢程度にもなりゃしない。さぁこの命、どう使おうか…。

 

 

 

 …そんな風に考え始めた頃、ふとミラルーツが距離を取った。ノシノシと向きを変え、何処ともなく…進行方向に生み出された、真っ暗な穴へと去っていく。最後に俺を一瞥して。

 

 その体から零れ落ちるキラキラした光は、何も無いようにしか見えない癖にしっかりと踏みしめられる地面を通り抜け、落ちて、堕ちて、墜ちて。

 

 

 

 コテージの中、女に埋もれて眠る俺に吸い込まれた。

 

 

 

 …あー、なんだ、その、長々と語ってしまってすまぬ。他人の夢の話を聞く程、無駄な時間はないのにな。

 ただ、色々と思いついた事とか気付いた事とかがあって、ちょっと心を静める為に語ってみたんだ。

 

 まず気付いた事を、順番に記していく。

 

 

 あの島で見た、降ってくる光と、夢の中で見た俺に吸い込まれた光。あれは因果だ。

 イヅチカナタが喰らう因果。それが何故、ミラルーツから零れていたのかは分からない。

 

 が、例えば…だ。あの島で見た光は、俺に降り注いだ。因果が降り注いだ。…つまり……ミラルーツから零れ落ちた因果が、俺に吸収された事にならないか?

 ミラルーツから吸収した因果が俺に宿った為に、俺はミラルーツの夢を見た。夢の中でミラルーツと戦って、その戦いの最中に零れ落ちた因果が、島に居た時の俺に降り注ぐ。

 

 時系列が前後しているが、イヅチの仕業だと考えると不思議はない。奴は時間軸を行き来するからな。

 あの暗い場所がイヅチの巣穴だったとしたら(討鬼伝世界で一度見た時は、沢山星のようなものがあった気がするが)、ミラルーツは何故そこに居るのだろうか。

 まるでイヅチカナタを追いかけているような。

 

 

 

 

 

 

 

 と、ここで俺に電撃的天啓が走った。

 

 

 

 ミラルーツとミラボレアス。この2体は、嘘か真か、非常に近い個体だと考えられている。同族だが、祖龍ミラボレアスが憎悪に染まり、黒くなったのが邪龍ミラボレアス。

 では、俺が遭遇したミラボレアスは、何から現れた? そう、人間から現れた。

 

 と言う事は、あのミラルーツも、元は人間…?

 憎悪に染まった、シキの元カレはミラボレアスになった。対して、あのミラルーツの元になった『誰か』は、憎悪や怒り、喜びさえ忘れ去り、ただ純粋な何かを宿して変化した結果…或いは、宿っていた何かが全て零れ落ちてしまった結果、ミラルーツになった。

 

 

 そう考えると辻褄は合う。あの戦い方は、明らかに人間のものだ。

 アラガミ因子に乗っ取られ、完全に姿形が変わってしまったハンター。そう考えれば、あいつの戦い方は納得がいく。

 

 …ゴッドイーターとモノノフの戦い方を除けばね。

 

 

 

 が、これも説明する方法がある。あってしまう。

 

 

 1体目のミラボレアスは俺達が葬った。…が、あの時のミラボレアスが…アラガミに侵食されたハンターが1人目だと、誰が保証できる?

 居たんだよ。あいつよりももっと前に現れたミラボレアスが。

 俺と同じように、何度も死を繰り返しながら、3つの世界の戦う術を集めた『誰か』が。

 

 そいつが何らかの切っ掛けで、アラガミ細胞に完全に呑み込まれながらも自我を保ち、デスワープしなかったのがミラルーツ。

 イヅチカナタを倒す為、龍となった姿であの空間を彷徨い、追い続ける。

 因果が体から零れ落ち、何故イヅチカナタを追っているのか忘れても、戦う術だけは覚えたまま、ずっとずっと追い続ける。

 

 

 

 

 俺も、いずれそうなるんだろうか。

 もしも上記の推測が当たっているとすれば、イヅチカナタを倒せなかったとしても、何れ俺のループは終わり、時間と空間の狭間を彷徨い歩く存在になる。

 そして次のループに巻き込まれる『誰か』が現れる。この現象の本当の原因を根絶するまで、それは続く。

 

 

 

 

 これも妄想と言われりゃそれまで何だが…不思議なくらいに確信がある。まるで、自分がそれが事実である事を確認したみたいに。

 …ミラルーツから零れ落ちた因果か? イヅチに因果を喰われると、色々な事を忘れてしまったりした。じゃあ、逆に因果を付け加えられると? …知らなかった事を、いつの間にか知っているようになる?

 有り得るなぁ…。

 

 

 

 

 

 まぁ、何にせよ……元がハンターであっても、モンスターに負けた事には変わりない。

 いやモンスターだろうがハンターだろうが、ゴッドイーターだろうがアラガミだろうが、モノノフだろうが鬼だろうが。

 

 

 

 悔しい。

 いつかリベンジしたる。

 

 

 

 

 

 

 

PS4月

 

 

 そろそろバカンスも後半かぁ…。なんかこう、色々あったような、そうでもなかったような。

 もうちょっとダラダラしていくのもいいんだが、あんまり長く休むと気力が逆に萎えるからな。

 

 …しかし…朝から晩まで盛ってた記憶しかないな。いや、夢の中とは言えミラルーツと遭遇とか、サンマ人間とか、結構なインパクトはあったけど。

 

 

 ちなみに、現在もアリクイさんチームとよろしくヤッていたりする。

 何故か野外でTRPGに興じていたナルガニャー(瓶底眼鏡)・ケチャガー(ケチャワチャの眼帯)・ヒプタン(ヒプノック素材の髪紐)の3人に混ぜてもらったら、流れでね。ちなみにこの名前、全てコードネームである。本名は恥ずかしがって教えてくれない。

 ちなみにこの子達、ミラボレアス戦で動けなくなったハンター達を最も多く助けて協力をとりつけた、影の立役者だったりする。

 

 まー、元がパンツァー猟団だけあって…と言うのも何だけど、この子達もミキのお手付きだ。それはもうしっかりと躾けられていました。

 …TRPGで、ちょっとエロげなシナリオになったら、ついついその気になっちゃって、屋内だとレズプレイに走ってしまうくらいには。

 最近そればっかりで、TRPGが最後まで出来ないのが悩み。『外でやればいいじゃない。他人に見られてれば、流石にそんな雰囲気にはならないでしょう』という結論に落ち着き、実際成功していたんだが……俺が来ちゃったからねぇ。

 

 美味しゅうございました。ナルガニャーの眼鏡を外した顔も可愛かったけど、瓶底眼鏡にぶっかけもいいものだ。ついでに言うと、結構発育がいい。

 本人達も、TRPGより気持ちよかったと言ってるし、問題はない。そもそも、俺のちんぽケースにするべく躾けられていた子達なので、あまり抵抗もなかった。

 

 

 しkし、TRPGって初めてやったけど、結構面白いもんだな。

 

 

 

 

 

 それはともかく、今日も今日とて一日遊んでいるが、皆が皆海に出る訳ではない。

 カップル成立して二人きりになりたい奴らは何処ぞに姿を消しているし、二人きりでなくてもいいから思い出作りにと、近所の観光名所を巡り歩いている者も居る。

 

 俺も、適当な理由を作って何人か誘い、肝試しに使った島に行ってみたんだが……隠す物の無いビーチで思いっきり乱交したくらいしかなかったな。うん、いつもの事なので特筆すべきでもない。

 あの光が降ってくる現象も、ミラルーツらしき気配も、何も感じられなかった。ただただ、昨晩回収されてなかった、ヌルいコンニャクをゴミ袋に詰めるだけである。

 

 

 

 適当に性欲を満たしつつ(つまりそれだけ食い散らかした訳だけど、骨までしゃぶり尽くすので修羅場は起きないと思う)ブラブラしていたら、レイラとプリズムが目に入った。そういや、泳ぎの練習させてるんだったな…。

 ギスギスした雰囲気も無くなって、本当に良かった…。

 

 

 …まぁ、レイラの練習はかなり過酷だったらしく、今度はプリズムの方が少々オコな気配があるが、それは置いといて。

 うーす、泳げるようになったのな。

 

 

「っ…は、何ですか…? 潜っていたから声が…」

 

「泳げるようになったんだな、だとさ。全く、教えるのに苦労したぜ」

 

「私は教わるのに命の危機を感じましたけどね…!」

 

 

 どうどう、抑えて抑えて。

 つーても、あんまり長く潜ったり泳いだりはできないみたいね。

 

 

「当然でしょう。ハンターを基準にしないでください…。私は数年以上も不健康な生活を送って、ようやく運動し始めたばかりの一般人ですよ」

 

「言ってて虚しくならないか? まぁ、昔っからドン臭い所はあったと思うけど」

 

「そこまで酷くは無かったと思いますが…。ハァ、しかしいい運動になりました。海と言うのも楽しいものですね」

 

 

 平和で安全が確保されてれば、だけどな。一回大津波にあって、えらい目にあったぜ…。(あの時のナバルデウス、張り倒してやりてぇなぁ)

 しかし何だな、レイラはバカンス中に遊んでないのか? 俺が見た限りだと、ずーっとプリズムに泳ぎを教えてたと思うが。

 

 

「あー……いやそれは…」

 

「それがですね、この子ったら『遊び方が分からない』なんて言うんですよ」

 

「なっ、テメッ!」

 

「これまで時間を見つけては、鍛錬鍛錬鍛錬鍛錬。穿龍棍を振り回して、誰かと遊びに出かける事すらしなかったそうです」

 

 

 そりゃオメーもだろ。鍛錬どころか何もせずに引き籠ってたのは誰だ?

 

 

「聞こえませんね。で、何をすればいいのか呆けていた所に、私の泳ぎの練習って建前が飛び込んできたんです。休憩時間にポツポツ語り合ってはいましたが、結局私の練習以外、何もしてないんですよね、この子」

 

「う、うっせーな…。仕方ないだろ。お師匠様の仇討ちだけ考えてきたんだ。…海で出来る遊びって言っても、泳ぐのも釣りも狩りの一環としか思えないし、砂で出来た城なんぞ作っても何が面白いのか分からない」

 

 

 難儀なやっちゃの、本当に。まー鍛錬以外に何かしようって気になってきたなら、それは進歩と言っていいんじゃないかな。

 しかし、それだとレイラは楽しくなかったか? …いやこの言い方は卑怯かな…。

 

 

「いや? それとこれとは話が別と言うか、確かに開放感は満喫してるし、頭をカラッポにして狩りをしない日を作るってのも悪くない。晩飯時の……ライブと言うかのど自慢コンテストと言うか隠し芸大会とか、まぁかなり楽しめたしな」

 

「レイラ、あなたも参加してみてはどうですか」

 

「…穿龍棍の演武くらいしかできる事ないな。或いは……お前とガチでやってみるとか?」

 

 

 止めろ、ハンター同志の諍いだと思われたらギルドナイトがすっ飛んでくる。

 体を動かす以外で趣味は無いんか?

 

 

「……あるにはあるな。創作料理のレシピ考案とか」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「その沈黙は何だよ!?」

 

「いえ………その………………ひ、被災者は何人居ますか?」

 

 

 その古龍は何て名前だ?

 

 

「人の作った飯を災害だの古龍だの扱いしてんじゃねぇ! ちゃんと食える飯だよ! お師匠様にもキッチンアイルー達にも評判良かったんだからな! ついでに言えば、レシピ考案だけじゃなくて実際に作るのだって出来た!」

 

 

 何故過去形。

 

 

「…お師匠様が亡くなってからは、レシピ考えてる暇があったら、穿龍棍をどう振るうかを考えてたから…。自分で料理するのも、ずっとやってないな。久々にやろうかな…」

 

「…逃げるべきでしょうか? これは我々が味見役に選ばれる流れ…」

 

 

 いや、逃げるなら逃げるでスケープゴートを用意する必要がある。

 それに、案外美味いかもしれん。

 

 

「ですが…レイラですよ?」

 

 

 それはそうなんだが、キッチンアイルーが料理の事で世辞を言うとも思えん。ハンターは野外での肉焼き魚焼きのみとは言え、料理も一応仕込まれるし…。

 

 

「テメーら聞こえてるからな。目にモノみせてやる…。元は簡易食糧とかがあんまりにも味気ないから、何か美味く食べる手段はないかと考え始めたんだよ…。必要に駆られてって事だ。と言うかそっちはどうなんだよ。料理とかできんのか?」

 

 

 多少は。元の世界に居た頃は情報が溢れかえってたし、有名な料理の作り方なら頭に入ってる。大雑把極まりない男の料理なら出来るぞ。

 討鬼伝世界で、和食のノウハウを教わった事もある。

 

 

「え、う……私は…その…」

 

 

 …レイラ。ちなみに料理以外の家事は?

 裁縫。

 

 

「破れた服を直したり、そこを目立たせないカバーを付けるくらいなら出来る。一から作るのは流石にやった事ないが、方法だけなら旅の途中に教わった事があるぞ」

 

 

 洗濯。

 

 

「必須項目だろ? 洗ってもいない服じゃ、モンスターに臭いで気付かれるじゃないか。不衛生だと、思わぬ病気に繋がる事もあるし」

 

 

 掃除。

 

 

「根無し草で放浪してたから、部屋の中を散らかすって事がまず無かった。宿に泊まる時も、あんまり散らかしたままだと苦情を入れられたり、後で揉め事になる。勿論、バカンス中に泊まっている部屋もちゃんと片付けてるぞ」

 

 

 財布の管理…。

 

 

「これらを全部自分でやってたのは、下手に店に頼むと一人旅している間に資金が尽きそうな事に気付いたからだ。一時はクエストを受領する時の契約金すら無くなりかけた。金が尽きちゃ、旅もできんし、情報も手に入れられんし、仇討ちもできん」

 

「ひょっとして、フロンティアに留まっている今でも…」

 

「そりゃ、堕落して身に着けた技術を失うのも勿体ないし」

 

 

 女子力、いや主婦力高ぁい! これで飯まで作るようになったら、殆ど完璧超人じゃないか! コミュ障気味なのと服装の問題を除けば!

 ……ち、ちなみにプリズムは?

 

 

「ゑ゛。………そ、その、昔はやっていた…のですが、それもお手伝いくらいしか出来ない幼い頃でして…その後は歌の力が発見されて歌姫として扱われ、料理や掃除をするのはトッツィ達が全てやってくれるようになり…最初は手伝おうとしたのですが『歌姫様にそのような事をさせるなんて、とんでもないですニャ!』と…。初めて包丁を握って、指を少し切ってしまっただけで大騒ぎになりましたし。引き籠っていた頃は言うに及ばず、部屋は散らかってこそ居ませんでしたが、それも何もせずにただじっとしていたからで…」

 

 

 判定、レイラの完全勝利!

 何だこの完璧超人。

 

 

「泣きますよマジで! いえ、そう言われても仕方ない有様ですけど! …いえ、まだ、まだワンチャンあります! レイラが実は料理下手で、或いは長年やってなかったから腕が墜ちまくっているという可能性が!」

 

 

 

 

 …微粒子レベルでも存在しなかった。と言うか普通に美味かった。

 本人は『腕が落ちたな…』って不満そうだったけど。

 

 

 プリズムは崩れ落ちていたが、残さず食っていた。…食い意地の為か、それとも心にダメージを与えるような料理でも、妹が作ってくれたものを残せなかったのか…。

 

 

 

 

 

 

 

 うーん、なんというかプリズムは歌関係のスキルに極振りしてるタイプだな。その分、歌は本当に凄いんだが。

 と言うか持ち歌何曲あるんだ。今日のはレイラに、女として敗北したやるせなさを存分に乗せた演歌だった。

 

 …しかし、本当に立ち直ったんだなぁ、プリズムもレイラも。今日の会話の中でも、トキシの名前を自然と出していたが、あまり落ち込むような様子は無かった。寂寥や後悔が無くなったのではないだろうが、過剰に引き摺ってはいない。

 二人の仲も、良好…だと思う。俺も悪くは思われてない筈だ。

 何せ、このバカンスが終わった後、レイラにちょっと付き合うように頼まれたしね。

 

 …トキシの墓参りに行くから、って。

 墓と言っても、そこに何かがある訳じゃない。遺体は見つからなかったし、唯一見つかった得物のコーレクラフィーは、いつか復活させようとレイラが持ち歩いていた。

 歌姫達の里があった場所は、モンスター達がうろつき回る森のド真ん中なので、下手な人工物を作っても即潰されてしまう。だから墓を建てたのは、トキシの死に場所からも里からも遠い場所。

 実も蓋も無い言い方をすれば、何もない所に土饅頭を作り、「これがあの人の墓だ」と主張しているようなものだ。何処か別の場所に同じような墓があれば、どっちが本物か分からなくなる程度には。

 

 それでも、トキシの墓はレイラが作った墓だと思っていいだろう。少なくとも、レイラ以上にトキシと縁が深い人間は、多分居ないから。

 ……供養されずに霊が残ってたりしないよな?

 

 

 

 

 

 追記

 レイラは隠し芸として、仕留めてきたガノトトスの解体ショーをやっていた。何で穿龍棍で包丁の代わりが出来るんだ…。

 

 

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