※この作品はR-18です。

狩りゲー世界転生輪   作:時守 暦

316 / 611
E.D.F隊則ー。

①EDFの任務は地球防衛である。人類防衛ではない。
②EDFが優先すべきは、些細な犠牲より勝利である。故にミッション成功するなら、味方をどう扱ってもよい。
③EDFが防衛すべきは星であり、文明並びに建物ではない。邪魔と判断した場合、及びモチベーション維持に貢献できると判断した場合、団地であろうが住宅街であろうが躊躇わず更地とすべし。
④EDFが重視すべきは任務達成であり、市民の生存ではない。むしろ、市民は体を張ってエネミーを引き付ける、一流の戦士(と書いてデコイと読む)と心得よ。
⑤誤爆と味方殺しの汚名を恐れぬ者だけが、地球を守れる。具体的にはプレイヤー。
⑥死して屍、使用後の箸。(死んだら誰も使わない)
⑦味方の悲鳴はBGM。市民の悲鳴は賑やかし。
⑧自爆を恐れるべからず。己の命を弾頭と心得よ。具体的には、電灯や樹によって誤爆しようとも、懲りずにブッパせよ。市民は積極的に狙え。
⑨バカ。
⑩E.D.Fは超法規軍である。古事記にもEDF2の粗筋にもはっきり書いてある。故に、どのような行為も違法ではない。(合法だとは言ってない)



とりあえず18までクリア。難易度ノーマルのみだけど、全兵科でやってます。
別の兵科の武器も手に入るようになったし、アーマーも上がるし、便利になったなぁ。

でも歌は4.1のほうが好き。


GE世界7
第316話


ゲーム用PC月

 

 

 …ついに来た…のかな?

 いや、レイラとプリズムが完全な色情狂になったとかじゃなくて。

 

 褒章祭が一段落し、プリズムとレイラも普通の生活(ヤりたくなった時除く)に戻り始めた頃、ギルドからとある情報が舞い込んできた。ここ最近、フロンティア近辺のとある島で奇妙な現象が発生している、という話だ。

 それだけだったら珍しくも無い。フロンティアに限らず、この世界で妙な自然現象があるなんて、確実に異変の前触れだ。そして、その異変は年がら年中、どっかで発生している。

 俺がこの情報に注目したのは、覚えがある現象だったからだ。

 

 

 曰く、島全体から奇妙な光が立ち上って、空にある黒い穴に入っていく。

 

 

 …言うまでもなく、クソイヅチの起こす因果崩壊だろう。

 ただ、ちょいと気になるのは、立ち上る光だけではなく、降ってくる光もあるのだと言う。…討鬼伝世界で因果崩壊が起こった時は、立ち上る光だけだったよな?

 何かあるのか…。例えば、バカンス中に夢で会ったミラルーツがあそこに居たり?

 

 …まぁ、行ってみれば分かるか。どっちにしろ、イヅチが居るなら殺りにいかない理由は無い。

 

 

 …デスワープの危険が非常に高いとしても。

 

 

 とは言え、実際のところ、今更イヅチでデスワープするか? って疑問もある。相手を甘く見るつもりはないが、フロンティアに来る前の俺ですら、奴の触手を斬り飛ばしたり、ウタカタの戦力総がかりとは言え、あと一歩のところまで追い込む事ができていた。

 確かに因果を略奪する能力は脅威だが、俺はどうやらそれに抵抗できるようだし、フロンティアで作り上げてきた装備や神機、アラガミ化その他諸々を纏めてブッ込めば、対峙して10分かからず四肢と触手と首を斬り飛ばせる自信はある。

 

 …ああ、でもまず見つけるまでが問題か。あの時と同じであれば、イヅチは多分空の穴の中に居る。空までどうやって行くかな。幽体離脱も出来なくはないが、あの因果崩壊の中でやるのは危険だな。そうでなくても、野生のモンスターが寄ってきかねない。

 とりあえず、調査部隊に志願し、受理はされたから、後はもう現地で考えるしかないかなぁ…。まぁ、とにかく準備しておくか。

 

 

 

 調査に赴く事については、多少の問題はあったが、皆も納得してくれた。…ただ、産休を主張していたフラウが、『お休みの前の最後のお仕事』と言ってついて来る事になったけど。

 …明らかに、俺の監視と言うか護衛と言うか…。まぁ、有難い事だ。

 

 

 しかし、クソイヅチは一体何をやってるんだろうな。今まで出現したのは、全て俺の近くだった。どうやら、自動で補充される餌として、俺に付き纏っているようだったが……何で今回に限って、あんなに離れた場所に? フロンティアに含まれはするが、絶海の孤島と言って差し支えない場所なのに。

 島に何かあるんだろうか…。或いは、ここ最近のループではイヅチが体調不良っぽい形跡があったけど、それが何か関係があるか?

 

 うーん…結局のところ、行って調べてみないと分からない…という結論になるんだが、それで今まで何度も痛い目と言うか死ぬ目を見てるからな。

 違和感や疑問をスルーして突っ込むと、特大の地雷が連鎖大爆発するパターンだ。さりとて、やはり考えても考えても答えは出ず。

 

 どうしたものか…。フラウに相談してみるか。何処まで話すかなぁ…。

 異世界云々は…フラウなら信じてはくれそうだけど、流石に話がデカすぎるし、余計な情報は切り落として整理して話すべきだろう。

 ……そうだな、端的に、イヅチの能力の事だけでも話しておくか。

 

 フラウ、ちょっと話があ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

神無月

 

 

 デスワープしたのもショックだけど、なんか色んな意味で混乱しまくってんですけど。

 あれ? 何で? 今更何で?

 

 何で俺、フライヤーの中に居るの?

 いやフライヤーじゃねぇよ。誰がカラッと揚げられとるねん。実際、体感温度的には似たようなもんだったような気がするけど。

 

 

 

 

 

 

 

 つか真面目な話、ここフライアだよな?

 GE世界だよな?

 

 何でいつもの廃墟で、オウガテイル達に囲まれてないんだ? 日記を読み返すに、普通にデスワープしたけど今の今まで記憶と意識を失っていた…という訳ではないようだ。

 前回の日記はデスワープする直前に書いていた日記に間違いないし、痕跡からしても記されて数日と経っていない。

 …なんか、体の節々は痛むけど…。なんか覚えがあるな、この痛み…。懐かしいような、そうでもないような、少なくともループが始まってから殆ど感じた事が無いような痛みである。

 

 いやそれはともかく。

 

 …時間が進んだって事か? GE無印(並びに、多分俺の知らないゴッドイーターの追加シナリオ編)から、GE2に?

 何で。どうして。何度も何度も同じ場面を繰り返させておいて、どうして今更。

 

 検証こそできないが、想像だけなら幾らでも考えられる。

 気づかない内に、何らかの条件を満たしたか。

 終末捕食を阻止したからか。

 前回のループで、地球の外まで飛び出したからか。

 誰も死んでないからか。(毎回殺してるのが居たような気がするが、俺はアレを人間と認識する事を辞めている)

 或いは、やはり異常が起きていたクサレイヅチの影響か。

 

 

 …そうだよなぁ。クサレイヅチ、また斬り損ねたんだよな。いや斬るには斬ったけど、アレでくたばったとは思えん。状況が状況だったしな。

 

 

 いやまぁ、そこは置いておこう。どうせ生きてるんだし、またどっかでカチ合う筈だ。その時に改めてナマスにしてやるまでよ。……あの時の状態のまま出てきたら、流石に勝てるか分からないけど…。

 

 

 

 さて、状況の整理も兼ねて、恒例のデスワープ時の事を

 

 

「あ、教官」

 

 

 扉を開けて、見覚えのある顔が入って来た。

 ……ロミオ? …ああ、そうか。GE世界でフライアの中に居るんだから、当然ロミオも居るよな。

 あれ、でも俺を教官と呼ぶって事は、前回ループ時の事をそのまま引き継いでるって事か? むぅ、益々持って訳が分からん。

 

 

「起きたんすね、教官。…まぁ、あんまり心配してなかったですけど…イテテ」

 

 

 どした、その頬。

 

 

「アンタに殴られたんだよぉ! ジュリウスまで一発ド突かれただけで、上半身が地面に埋まるくらいになったぞオイ!」

 

 

 え、マジで。……全然記憶が無いんだけど、その、すまん?

 

 

「疑問符付きで謝られても、全然誠意が感じられないっす。…はぁ、まぁいいけどさ。…生きてたんすね、教官」

 

 

 あー……うん、まぁ、色々あってな。

 (……前回どうだったっけ…。フライアで目が覚めて、ロミオがこんな態度って事は、確か……月から戻って来た頃か?)

 

 と言うか、俺が死んだ事になってる状況って、あらゆる意味でややこしい状況だったんだが……ロミオ、何処まで聞いてる?

 

 

 

「…………その一通り。教官と一緒に月に行ったっていうアレが起こす現象の事とか、それを教官がどうやって止めたかとか…」

 

 

 ……何? …誰から聞いた。一応、極秘事項だぞ。

 おい、何故目を逸らす。

 

 

「……ざ、ザマァと言ってやる!」

 

 

 うぉい!? 何しやがったテメェ!

 

 

「うっさいな! 俺だってアンタを心配してたんだよ! ナナと話してる間に昔を思い出してちょっとしんみりしてたら、突然ボロボロで一般人をタコ殴りにしながら出てきやがって! 俺の心配とかショックとかそう言うのを返せえぇぇぇ!!!」

 

 

 

 

 

 

 ……一頻叫びあって、ふと我に返った。これを盗聴しているかもしれない腹黒博士も、呆れてスイッチを切った頃ではなかろうか。

 

 ロミオ、真面目な話、ついさっきまでの記憶が無い。俺は非常に特殊な状況下に居て、知り得る情報が限定されていた。

 元教官としての命令だ。質問に答えろ。

 

 

「やだね!」

 

 

 ほう、面白い事を言う奴だ。吊るすのは最後にしてやろう。

 

 

「…冗談っすよ。はぁ、相変わらずみたいで安心したよ、教官。…で、何から知りたいんだ?」

 

 

 色々あるが……ボロボロの状態で、俺が一般人をタコ殴りにしてたって何ぞ?

 

 

「あー……何でそうなったかは俺にも分からないんだけど、なんかバスを追いかけていたアラガミを、教官が登場と同時に叩き潰したらしい。で、教官は気絶。でも、追いかけられて恐慌状態だった乗客の一人が、『もっと早く助けに来い、この役立たずのゴッドイーターが!』ってヒステリーを起こしてガンガン蹴っ飛ばしてたら、いきなり動き出してアイアンクロウ。頭蓋骨が軋む音を響かせながら、思いっきり地面に叩きつけたとか…」

 

 

 ふーん。そいつ、生きてる?

 

 

「生きてる。不思議な事に」

 

 

 じゃあ思いっきりじゃないな。…言われてみれば、赤い衝撃で意識が飛びかけた直後、誰かに反撃したような記憶が薄っすらと…。

 

 

「それは止めようとした俺達に反撃した記憶かもしれないな? いつかの教練に比べても、とんでもなく重い拳だったぜ…」

 

 

 お、おう、それは素直に悪い。ていうか、それって問題になってないか? ゴッドイーターが一般人を攻撃したとか。

 

 

「誤魔化したみたいだな。大体教官、腕輪つけてないじゃないか。ゴッドイーターなら腕輪があるのに、それが無い。ついでにフェンリルのゴッドイーター一覧にも名前は無い。いやあるのかもしれないけど、公式には死んでるから別人だ。だから、勇敢にもアラガミを足止めしようとした一般人を、恩知らずが殴って、逆に殴り飛ばされた。これでQ.E.D」

 

 

 なんともまぁ力技な事で。ラケル博士に借りを作るとか、コワイ話だねぇ。

 

 

「………教官も、そう思う?」

 

 

 ああ、思うさ。大体、お前の持ってる疑念は大当たりだ。あくまで俺視点だけど。

 

 

「………やっぱり、そうなのか…」

 

 

 …ちなみに、俺が登場したってどんな状況だったか聞いてるか?

 

 

「あ? あぁ…えーっと、クァドリガからバスが逃げてたんだけど、正面上方から隕石みたいに降ってきた…らしい。乗客達も半ば混乱気味だったから、あんまり当てにはならない情報だけど」

 

 

 はぁん…。落下してきたって事は、あの時と同じように月からガンダム張りに大気圏突入してきたのは間違いなさそうだ。薄っすら記憶に残っている、赤い衝撃は摩擦熱だろう。ついでに言えば、既に引いている痛みは、落下による衝撃のダメージだと思われる。ハンターになってから、落下ダメージって全く感じなくなったからなぁ…。

 しかし、状況が違うとは言え、これまでのループの性質を考えると……ある一定のタイミングの全てを再現したループである筈。何度繰り返しても、オウガテイルの配置が同じだったように、落下している瞬間の俺も全く同じ状況に戻されている筈。

 なのに、落下地点が前回と違うし、何よりこのダメージ…。

 

 

 

 …ああ、成程。あの時は、半ば無意識にブラッドレイジを発動させてたんだ。しかし、デスワープでその真っ最中にやってきた俺は、精神的な問題か体調的な問題か、ブラッドレイジを継続する事ができなかった。エネルギーが途切れ、無敵時間が終わった俺は、モロに大気圏突入のダメージを受けてしまい、また落下コースも変わってしまったって訳だ。

 たぶん。てゆーか、流石によく生きてたと自分を褒めてやりたい。下手しなくても、GE世界をすっ飛ばして討鬼伝世界まで逝ってしまうところだったろう。

 

 ……或いは、俺が覚えてないだけで、また一周してきた可能性もあるけども。

 

 

 で、話を戻すが、ザマァって何よ。

 

 

「あー……いやその、流石に予想外だったんだけど…ほら、死んだと聞かされてた教官が、生きてた訳じゃん? …事情に詳しい人に話を聞きたいって思うのは、当然の反応だよね? ほら、一般人を半殺しにしちゃった件で、身元引受人と言うか、バックが必要だった事もあって」

 

 

 まぁ、余計な事に首を突っ込んで、蛇を出さないんならな。

 ……あれ、ひょっとして。

 

 

「………レア博士に電話して問い詰めようとしたら、逆に凄い剣幕で……。信じられないって言うから、寝てる教官の写真を撮って送ったくらいだよ」

 

 

 ををぅ…。

 それは…仕方ないけど、なんというか素晴らしくややこしい状況が…。

 

 確か、レアやアリサ視点だと、俺は月に居て、俺を迎えに行く為にロケット開発やら何やらに力を注いでいた筈。それが、知らない内にいつの間にやら地球に居るとなると…。

 ……前回、どうだったっけなぁ。再会と同時に熱烈なキスを受けて、そのままベッドに直行した事は覚えてるんだが。

 

 と言うか、再開時以外も色々とどうだったっけ? 正直、印象に残ってる部分以外はうろ覚えなんだよな。一度、日記を読み返す必要があるな。

 

 

「まーアレだよ、レア博士も、娘さん? のアリサって人も、こっちに向かってるらしいよ。まぁ、ドイツからの移動だから、結構時間がかかるらしいけど」

 

 

 ドイツ? そんなトコで何やってんだ?

 まぁ…いいか。前回は確か戻ってきても連絡入れてなかったんで、かなーり怒られたからな。全裸正座だったっけ? 待機もしてなかったと言うのに。

 それをロミオが自主的にやってくれたのであれば、むしろ助かったくらいだ。……問題があるとすれば、ラケル博士が何か妙な情報を仕入れてないかって事だが……ロミオは既にラケル博士への疑念も持っているし、盗聴の危険だって考えていただろう。余計な事は言ってない筈だし、そもそも聞かれて困るような事はロミオ自身が知らない筈だ。

 

 …ああ、もう一つ問題があったかな。レアにとって、ラケル博士の居城であるこのフライアは、どう見えているだろうか。俺を迎えに来ると言うのなら、フライアに乗り込まずにはいられまい。

 俺を迎えに来る為とは言え、自分の半生以上を抑圧・束縛し続けたラケル博士の前に立てるだろうか?

 

 

 …愚問だったな。レアは根っこが打たれ弱いタイプだけど、尽くす相手の為なら限界を超えていくタイプだ。かつてのトラウマの元凶であろうと、突っ込んでくるだろう。…その後どうなるかは、不安だが。

 

 

「…本当はもっと色々話したいし、どうして死んだことになってるのか聞きたいけど…もう行かなきゃ。ナナ…ああ、俺やジュリウスの部隊に新しく入った子に、色々と教えなきゃいけないしな」

 

 

 ん? …ああ、俺もまだ体が治り切ってないし、ちょっと休みたいと思ってたんだ。治ったらラケル博士にも挨拶に行くって言っといてくれ。

 

 

「それまでは立ち入るな、って意味かな? りょーかいっす」

 

 

 気楽な感じで敬礼し、ロミオは部屋から出て行った。

 

 

 

 

 …さて、どうしたものか。前のループの日記を読み返すのは当然として…いつものデスワープ時の整理といくか。

 

 

 いつもだったらドグサレイヅチに対して怨嗟の叫びをあげるんだが、今回は流石になぁ…。いやアイツが余計な事したからの結果なんだろうけど、ある意味ハンターとして真っ当に負けた、と言えなくもない。それ以上に怒りと怨嗟を燃やす理由もあるんだが、一周回って冷静になった……のか、或いはそれも『奪い取られた』のか。

 と言うか、いつか目にする機会があるかも、とは思っていたが…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 あれがラヴィエンテ……。

 

 うん、白旗上げるようで気に入らんが、手に負えんわアレは。今回は何が出てくるのかと思ってたら、真っ当に叩き潰されてしまった。まさか、MH世界でも屈指の巨大生物を動員してくるとは。話には聞いていたが、ナバルデウスすら可愛く見えるね。

 …まぁ、もう一体の超巨大生物、ダラ・アマデュラと同時に出てこなかった事だけが救いかな…。いや救われずに死んじゃった訳だけど。

 

 フロンティアの孤島で因果崩壊らしき現象が起きていたと聞いた時点で、察するべきだったなぁ。孤島自体はベルナ村に居た頃にも行ってたから、勘違いしてしまった。フロンティアで言う孤島と、村で言う孤島は全くの別物だ。と言うかフロンティアの場合、絶海の孤島で絶島である。

 はぁ…毎度毎度、間抜けな死因が多いなぁ。

 

 いや、今回のは多分、勘違いしてなくても負けたと思うけどね。実力差と言うか、圧倒的すぎる質量差で。

 

 

 酷い奇襲だった。

 

 

 日記を書いて、フラウに相談しようとした時、ふと地面が揺れているのに気が付いた。地震じゃない。こう……なんだ、大質量の何かが、繰り返し地面にぶつかっているような振動。

 …今にして思うと、既にこの時点で手遅れだった。

 

 

 ラヴィエンテって、縦に蛇行しながら移動するのな…。しかも、やろうと思えばあの超巨体で跳躍なんて真似まで出来る。全力で跳躍したら、古塔くらいなら飛び越えられるんじゃないだろうか?

 つまり、大質量×高さ×落下速度。

 

 

 

 

 

 おわかりいただけただろうか。

 

 

 この理不尽なファーストアタック。格闘ゲームで、開始前のデモシーンで一撃必殺技を喰らって勝敗が決したようなもんだ。それこそ隕石、いや彗星がメゼポルタ広場に直撃したようなもんだよ。

 アレだな、その辺の居酒屋で酒飲んでて、ふと振り返ったら範馬勇次郎の踵押しが直撃する瞬間だったら、こんな気分になると思う。

 

 そりゃもう、メゼポルタ広場は酷い有様になってしまった。ミラボレアス騒ぎの時の被害が、軽い物に思えてしまうくらいに。

 それでもすぐ様立ち直り、救助活動やラヴィエンテに対抗しようとするハンターが多くいた辺り、本当にハンターは精神的にも物理的にも頑丈だと思う。ウチの団員達も、大混乱したり不運に対する呪いの言葉を吐きながら、それぞれ出来る事をやろうとしていた。

 

 ただ、それにしたって相手が悪すぎた。レジェンドラスタも多く揃っており、非常事態につき彼らも全力でやってくれたんだが……焼け石に水。

 それでもあれ以上ラヴィエンテが暴れないように、足止め成功していた。…やっぱ、俺はまだまだあの人達には及ばないなぁ。本来なら、50人以上いるハンターで必死に援護し、それでも勝てないトンデモ生物を、10人にも満たない数で釘付けにするとか…。

 

 特にフラウは凄かった。ノリは普段と同じなのだが、迫力が違う。…あれが、我が子を守ろうとする母親の姿なのかな。妊娠検査薬、まだ使ってなかったけど。

 

 

 

 

 

 …ラヴィエンテだけなら…あのまま、レジェンドラスタ達でどうにかできたかもしれない。俺も戦線に加わるか、或いは逆に皆を避難させて、レジェンドラスタも逃げられるようにしていれば。

 でも、因果崩壊がそれをさせなかった。いや、因果崩壊までは至ってなかったんだろうが、とにかくラヴィエンテにイヅチがくっ付いてきていたのだ。背中に乗っている……と言うと少々語弊があるが、とにかく一緒に襲来してきた。

 多分、絶島で起こっていた光の現象…因果崩壊によって、何らかの方法でラヴィエンテが目覚めさせられたんだろう。『眠る』という因果を剥奪したとか?

 

 

 

 

 戦闘能力だけで言えば、イヅチカナタを仕留めるには、フロンティアのG級ハンターが一人居れば充分すぎるくらいだ。ただし、それは正面から戦う事ができれば…の話。

 フロンティアの人達には、因果略奪の能力に対する免疫が無かった。ラヴィエンテの襲来に右往左往している間に、あっという間に因果を奪われ、今自分が何をしているのかすら認識できなくなってしまう。

 異能持ちや、霊力を体得していた人達は、多少は抵抗できたが…イヅチって鬼の中でも最上級の力を持ってるからな。いくらフロンティアのハンターが生命力に満ち溢れまくってるとは言え、年季が違う。

 

 動けるハンターはあっという間に居なくなり、レジェンドラスタの皆も互いの事が認識できなくなったり、子供時代に戻ったり……………ギネルさんのショタ口調という恐ろしい物を聞いた気がするが、因果を略奪されたので覚えてないな!

 結局、俺一人になってしまった。

 

 

 ここで俺は2択を迫られた。

 ①少しでも犠牲を少なくする為、誰でもいいから引っ張って逃げる。

 ②誰かが犠牲になるのを諦め、とにかくイヅチを狩る。

 

 

 …②を選ぶ。犠牲になる人の中に、俺の女も居るかもしれない。俺の猟団の団員だっているかもしれない。それを承知で、俺は選んだ。

 当然の事だ。①を選んだところで、抱えて逃げられるのは多くて3人程度。ついでに言えば、逃げたところで追いかけられれば一巻の終わり。

 ②は…イヅチさえ仕留めてしまえば、因果崩壊は防げるし、因果略奪能力も消える。そうなれば、呆けてしまったハンター達だって動けるようになる筈だ。そうすりゃ、一緒に戦うなり、救助活動に手を貸すなり、最低でも自力で逃げ出すくらいの事はできるだろう。

 

 

 おっと、もう一つの選択として、③一人で逃げる、というのもあった

 …今考えると、これが一番有効だったかもしれん。イヅチが俺を狙っているなら、俺が離れればイヅチは追ってくる。イヅチが乗っているラヴィエンテも、メゼポルタ広場から離れる。

 まぁ、そうなると俺は一人でラヴィエンテと対峙する事になって、確実にデスワープだけどな…。

 結果的には変わらなかったか。

 

 

 

 まぁとにかく、俺は何とかしてラヴィエンテの頭の上に居るイヅチを叩き斬ろうとした訳だ。 

 ラヴィエンテは…正直、見ているだけでも震えがくるくらいのプレッシャーだったが、動き自体はそう素早いもんじゃなかった。いや、あの移動法と筋力を見るに、やろうと思えば鬼疾風以上のスピードで動けるんだろうけど、初速はそこまでじゃない。

 と言うより、動く気が無かったんだろう。少なくとも、ラヴィエンテは自分の意思でメゼポルタ広場に襲来したのではなさそうだ。

 

 

 感覚が鈍いのか、鷹揚なのか、単に人一人に乗られた所で痛痒すら感じないのか。鬼の手でラヴィエンテの体の突起を掴み、体の上に駆け上っても、何らアクションを起こそうとはしなかった。

 そのまま、蛇の道を駆ける悟空のように、背中を走ってイヅチへ接近を図る。無論、アラガミモードも発動中だ。

 ラヴィエンテが動き出したら、まず間違いなくお陀仏。俺じゃなくても誰かが死ぬ。交戦時間は限りなく短く、一気呵成にカタを付ける。

 

 

 …そのつもりで、ある程度まで接近した時、イヅチの異変に気が付いた。

 やはり、体に変調が起きていたのは確かだったようだ。そんな生易しい問題でもなかったが。

 

 あれは、吸収……いや、ラヴィエンテにそんな能力があるとも思えんしイヅチの方から同化…あるいは侵蝕?

 とにかく、アレだ。

 

 

 

 イヅチの下半身が、ラヴィエンテの頭にめり込んでた。いや、溶け込んでいたって言った方がいいか?

 

 

 物理的に融合してたんじゃないと思う。下半身が霊体化してた感じ?

 そして、イヅチの体から光が漏れて、それがラヴィエンテに注がれている。あれって因果だよな。

 

 つまりこうなる。

 ①メゼポルタ広場全域から、因果を略奪する。

 ②略奪された因果がイヅチの一部になるが、それらを縛り付けて置く為の力が無いので、零れ落ちる。人間で言えば、腹に大穴が空いて、そこから食った物が飛び出していくようなものか。

 ③零れ落ちた因果が、ラヴィエンテにくっつく。

 

 …因果がくっついたらどうなるんだ、って話だが…俺の体験談から行くと、他人の記憶や経験が、さも自分の物であるかのように思い出せるようになる。つまり、本来なら別の誰かがやった事…その因果が、自分の物になってしまうと言う事だろう。

 ラヴィエンテにとっては、どうだったろうなぁ。百人以上の人達の因果…記憶が、いきなり流れ込んでくるんだ。しかも種族さえ違う連中の記憶。

 何が何だか分からず混乱したか、そもそも混乱する程興味を示さなかったのか。

 

 とりあえず、下半身消失状態で動けないイヅチを、積年の恨みとばかりに背後からドタマカチ割ってやった。また千歳を人質にするんじゃないかって危惧もあったので、咄嗟に太刀筋変更できる程度の攻撃だったが。

 結果は直撃。人質どころか、避けようとすらしなかった。ただ、手応えも殆ど無かったな。因果を蓄えておくための力が弱まっている為か、斬ったと言うよりは、無造作に置かれた石ころの山を、蹴っ飛ばして散らしたような感覚だった。

 

 その時、飛び散った因果の一部を、俺が吸収してしまった。

 

 

 

 ああそうだ、吸収だよ、吸収。言い方を変えれば、俺は『因果を食った』んだ。イヅチカナタと同じように。

 零れ落ちた因果が付着するのとは、またちょっと違う。付着しただけなら、他人の記憶がさも自分の物のようになるだけだが、俺はその因果をエネルギーに変えたんだ。変えてしまったんだ。

 …吸収した因果は、限りなくどうでもいい内容だったからまだ良かったものの…。

 

 

 

 これで確信した。イヅチカナタは、元は俺と同じ『何か』だ。人間なのかバケモノなのか、或いは物質だったのかは分からないが、因果を吸収する性質を持った『何か』だ。

 集まってくる因果が多くなりすぎ、消化しきれなくなった結果があの姿なんだろう。

 

 ついでに言うと、ループが始まる前の俺の記憶についても説明がついた。元は電子情報の塊であったらしい俺が、何故普通の生活を送っていた記憶を持っているのか。…簡単だ。それこそ、因果が付着したからに決まってる。

 あの記憶は、俺じゃなくて、別の誰かの記憶なんだ。

 

 …まぁ、誰の記憶なのかはどうでもいい。あっちの世界と、今俺が居る世界とでは環境が色んな意味で違い過ぎるし、無理にあっちに戻る事を考えなくてもいい分、気楽なくらいだ。向こうじゃハーレム作ってヤりまくりなんて、まず出来ないしな。

 ただ、俺という人格の始まりは、元となった誰かのコピーであるっぽいし、名前はそのままもらっちゃっていいかな。ネットで本名はご法度かもしれないが、ここじゃ現実だ。見た目も同じだし、どーせ本人に会う事もないだろう。

 

 

 問題は…俺も、いつかはあのイヅチと同じようになってしまうかもしれない、って事か…。考えてみれば、アラガミ化や触鬼の力等、色々な物をあっさりと身につけられたのも、この力によるものなのかもしれない。

 アラガミや触鬼の因果が付着した事によって、その力を得た…のか? いやでも、触鬼の力を得たのは、触媒をうっかり食っちゃったからだし…。 とにかく、今後も色々とゴチャゴチャ後付け設定が追加されて、最終的に矛盾だらけの何が何だか分からないモノになってしまいそうだ。

 

 

 

 先の事…先の事だよな?…は置いといて、イヅチとラヴィエンテだが、ラヴィエンテは何を考えているのかボーッとしているだけ。

 イヅチは俺に気付いたのか、反撃してきた。とは言え、ただでさえ動きが鈍いイヅチが、全く移動せずに背中の触手だけ振り回してきても、正直どうって事は無い。フロンティア印のドスランポスの方が、余程恐ろしい。

 触手はすぐさま斬り飛ばし…。

 

 

 

 

 触手から食われようとしていた因果に気付いて、プッツン。

 

 

 そこにあったのは、『フラウの赤ん坊』の因果だった。つまり俺の子が、フラウの腹の中で今正に育っているという因果だった。

 もしもコレを奪われたら? …流産か。或いは、最初から着床していなかった、となるのか。

 何れにせよ、これ程にビキビキ来たのは、千歳を人質にしやがった時以来だ。意識してもいないのに、ブラッドレイジが発動した。

 

 

 

 っとに、どこまでヘイト貯めれば気が済むんですかねぇ…。元が同類だったとか、そんな事はもうどうでもいい。中に居るであろう千歳に当たらないようにナマス斬りにして、もう何もできないようにしてやる。

 

 

 

 

 

 果たせなかったけど。

 

 

 タイミングが悪いよ、タイミングが。いや、イヅチを斬れば斬るだけ因果が零れて、ラヴィエンテに注がれていたから、ある意味では当然の結果だったのか?

 千歳を斬らないようにする為、端からちょっとずつ刻んだのが仇になったな…。私怨が全く無かったとも言えないし。

 まぁ、どっちにしろイヅチを殺すには、首を斬るとか角を折るとかHPを0にするとかじゃなくて、どうやら貯えた因果を全て吐き出させなければならないらしいから、延々と殴り続ける必要があったみたいだけど。考えてみりゃ、それも当然か。相手は因果を食って自分の命に変える鬼。命が無くなれば、因果を対価として再生する…なんて事が出来てもおかしくはない。

 

 

 とにかく。俺はイヅチを延々と斬りまくってて、それで零れた因果がラヴィエンテに注がれて。

 …体を好き勝手に刻まれる因果が付着したラヴィエンテは、どうなると思う?

 

 

 

 猛狂期状態に突入しました。

 

 

 

 

 

 

 

 ていうか狂竜病状態になってね? 俺の見間違いでなければ、発症して10秒もせずに紫黒いオーラが発生し始めたんですがね。あのオーラは極限状態ですよ…。

 

 …あ、そうか! 前からイヅチの調子が悪そうだったのって、狂竜病か! いつぞやのループで、ウィルスにかかったまま死んだ事があったな。あの時の因果を食って、今度は自分が感染したのか。バカみてぇ。

 ……そのバカの中に居る千歳が心配だが…人質にされた時は、感染の兆候はなかったように思うな。それに、人間であれば酷い事には……あ、半分鬼か…。イヅチも狂竜病にかかるとしたら、鬼もかかるとみてよさそうだな。…やっぱ心配…。

 

 

 まぁとにかくだ、イヅチを仕留めきれない内に、猛狂期ラヴィエンテ極限状態なんて、イミフな代物が動き出した。

 ここらに来ると、俺も焦ってイヅチを大きく斬り始めたんだが、さっきも書いたように、イヅチを殺しきるには因果を全て吐き出させる必要があるらしい。会心の手応えが何度も入っているのに、イヅチ自身も全く動けていないのに、死なない殺せないという状態が出来上がってしまった。

 

 で、それだけ好き勝手に刻まれた感覚と記憶がラヴィエンテに付着したなら…当然、狙いは俺になる訳だ。

 

 

 咆哮一発で、メゼポルタ広場の外まで吹っ飛ばされました。着地のダメージは無かったけど、空気の振動だけで生命力の9割持ってかれたよ…。まぁ、相手が相手だ。死ななきゃ安い。

 不幸中の幸いなのは、メゼポルタ広場から離れた事かな。ラヴィエンテが広場で暴れたら、もうどうしようもない。助ける前に、正気に戻る前に、皆プチっと潰されてしまう。…つっても、今のアイツじゃ、適当に尻尾を振るだけで、広場の8割くらいを崩壊させてしまいそうだけど…。

 

 

 

 とは言え、本気でどうしようもねぇよ、あの状況は。

 たった一人で、ラヴィエンテを仕留めるか、その隙を突いてイヅチを殺しきれってのは…。ま、泣き言言っても仕方ない。やるしかない。

 

 …その時、俺の脳裏に不安が浮かんだ。出来るか出来ないか、じゃない。『出来てしまったら』という不安だ。

 イヅチを殺して、ループが終わったら? 俺はそのまま生きていられるか? どれだけの幸運に助けられたとしても、こいつらをどうにかするまでに、どれだけの傷を負うか。

 いや、俺の事はいい。もしも、ラヴィエンテの奇襲で、誰か知人が死んでいたら? …もうループしない以上、会う事は二度とできない?

 

 …このまま、仕留めてしまってもいいのか? 誰かが居なくなった後、俺は今までのように生きていけるか?

 

 

 

 

 ほんの僅かに過ぎった躊躇いを押し殺して、ラヴィエンテの口元に漏れる炎と電撃を、逆に撃ち抜こうとした。

 ブレスを暴発させる事ができれば、それを目晦まして接近できる! コイツ相手じゃ、離れてたら勝ち目なんぞ欠片も無い。

 

 やるだけやるしかない、と覚悟を決めたその時。

 

 

 

 

 

 

 

 スゴイモンが現れた。

 

 

 いやポケモンでもデジモンでもない。凄いモンスターだ。

 

 

 

 

 

 

 先生ェ! 先生じゃないですか!

 

 

 

 いやこの(偉)大きさは!

 

 

 

 

 正に!

 

 

 

 

 大!

 

 

 

 

 

 大ッ!

 

 

 

 

 大ッ!

 

 

 

 イャンクック大先生ッッ!

 

 

 

 

 ではないですかァァァーーーz____!!

 

 

 

 …って、アレ。

 

 

 

 ちょっ、待って! 待って先生! システムさんと言うか世界観さんからのお話です大先生!

 あれほど、あれほど本気を出すのは止めてくださいとお願いしたでは…ぬぁぁぁぁノーモーション尻尾! 突進! ああっ、羽ばたきで竜巻が! 嵐が! 火炎液を巻き込んだ炎の竜巻が! 足踏みなんてしないで! ああっ、逃げ損ねたラングロトラがクンチュウみたいに叩き付けられた! コピペが! 例のコピペが!

 

 と言うか何だコレは! どこのゴジラだと言うのだ! いやイャンクック大先生だけど! 怪獣王とどっちが強いかと聞かれたら、果てない議論が巻き起こりそうだけど!

 そもそも、何処に居たんだこの大先生。

 正確なサイズがちょっと目視で測れないくらいの巨大さなんですが。あのプレッシャーと言うか圧力と言うか、覇気でサイズが2~3割大きく見えているのを考えても、ラヴィエンテの顔面と相撲を取れるくらいのデカさはある。

 こんなのがメゼポルタ広場近辺に潜んでいて、気付かない筈がないんだが。…ひょっとしてアレか、このデカさの理由は、海とか湖とかに潜み続けていたから? でも構造自体は普通のイャンクックと大差無さそうだし、エラ呼吸が出来るとも思えん。  

 それとも大先生は、素で某段ボール工作員並のスニーキングが出来るのだろうか。…大先生ならやりかねない、と思うのが恐ろしい。

 

 

 

 

 いやまぁ、何だその。結局のところ、俺の事とかイヅチの事とかどーでもよくなったらしいラヴィエンテと、大先生のブレス対決で周辺一帯が吹っ飛んでデスワープした。

 うぅむ、大先生ってばスパルタね…。なんであんなにビキビキきてたのかしら…。ナワバリを犯されて怒った? 近所の生徒達(メゼポルタ広場のハンター達)がエライ事になって怒った? この世界に選り得ない筈のイヅチカナタを排除しようとした? ただデカブツがイキがってるのが頭に来たので、喧嘩売っただけ?

 

 

 

 

 

 

 

 むぅ…。とりあえず凄い物見たって事にしておこうか。今度フロンティアに行ったら、探して弟子入りしてみようかなぁ…。大先生なら人語も理解できそうな気がするし。

 まぁ、このようにして今回はデスワープした訳だ。真っ当にハンターとして負けたのかは、議論の余地があると思う。

 イヅチが叩き起こして、誘導したらしいラヴィエンテの襲来。それに反応するように出てきた、大先生との対決の余波。原因はクサレイヅチだが、結局自然の驚異に対処しきれなかった時点で、ハンターとしては敗北したも同然だ。

 

 敗北はともかくとして…。やはり、デスワープする度に、俺はイヅチに因果を奪われているらしい。

 この場合の因果とは、記憶や感情だ。記憶は……どこが食われているのか自分ではよく分からないが、感情は…多少予想外の事があって混乱したとはいえ、こうやって落ち着いていられるのが一番の証拠だ。

 前々から薄々気付いてはいたが……あの野郎、死に際の恐怖とか記憶とか、デスワープして何もかもがリセットされた時の嘆きとか、そんな感情を食ってやがる。

 

 あの時…イヅチがフラウの子の因果を食おうとしていたのに気付いた時、これまでに無い程強い怒り…その一言で済ませられるレベルじゃなかったが…が湧き出てきた。イャンクック大先生が大暴れしている間も、その感情は消えてなかった。

 だが、GE世界で目を覚ましてみれば、鎮静剤でも打たれたかのように落ち着いており、あの時の場面を思い返しても、ハラワタが煮えくり返りはするものの、我を忘れる程の怒りは湧いてこない。自分の不甲斐なさに対する憎しみさえなく、それどころか「あれはデスワープしても仕方ない」と納得さえする体たらく。

 …子に手を出された親の怒りさえ、奴にとっては餌にすぎないのだろうか。

 

 

 

 

 恐らく、これはデスワープが始まった時から、ずっとそうだったんだろう。自分の精神構造がちょっとおかしいんだと思っていたが、何度も死や別れを経験して平然としていられたのは、心の負荷になる部分を奪われていたからに他ならない。

 そう言えば、以前に討鬼伝世界に出た時、いつになく心が重かった。その後、イヅチと遭遇してすぐに別の場所に飛ばされた後は、随分と気が楽になっていたが……あれは体調不良のイヅチが、デスワープの時に俺の感情を食いきれず、その後の遭遇でそう言った感情を奪われ、結果的に気が楽になってしまったんだろう。

 つまり、俺が壊れずに今までやってこれたのは、イヅチに喰われてたおかげって事になるな。…想像しただけで反吐が出る。

 

 しかし反吐が出ようと、「あいつのおかげで生きていられるなんざ、死んだ方がマシ」と喚いて切腹しようが、俺は死ねない。ただ次の世界に移るだけだ。

 それでも自殺したくなるくらいの嫌悪感はあったが、何とか堪えられる。

 

 

 

 …ふぅ。

 

 

 さて、何だかんだ言ったところで、今はGE世界を生きていかなければいけないのには変わりない。

 しかし、前回がどういう状態だったのか、今一つ覚えてないんだよな。これも記憶を食われたって事なのか、それとも単に濃い出来事が延々と続いたおかげで、印象が薄れているだけなのか。

 レアとアリサのサンドイッチ(意味深)の感触はよーく覚えてるんだが。

 

 …そもそも、あの二人以外とはどんな関係を持ってたっけ? 関係を築いたとして、それはどの時期? 俺が月に行く前か、それとも戻って来た後か…つまり、今この時点で、その関係は成立しているのか。

 つーか、アリサに関してはループする毎に異なった関係を築いていた(ご主人様と愛奴なのはほぼ変わらんけど)から、どの出会い方なのか今一ハッキリしない。

 一度、日記を読み返す必要があるな。骨の髄まで犯しつくした相手に「初めまして」なんて言ったら、阿鼻叫喚なんてもんじゃない。

 

 

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