※この作品はR-18です。

狩りゲー世界転生輪   作:時守 暦

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第320話

神逝月

 

 

 割とうまく出来た時の報酬に、マタタビを渡してみたらガチギレされた。どうやら、先日ナナの目の前でこれ見よがしに食ってたこんがり肉Gを期待していたらしい。

 猫扱いは割とノッてくるナナだが、食い物に関しては冗談が通じない。……いや、割と本気でマタタビにしようと思ったのが悪かったんだろうか…。食えるんだけどなぁ、塩漬けとかにして…。

  

 ま、そのガチギレバトルのおかげで、大幅にレベルアップできたからいいでしょ。ショットガンの扱いも一気にうまくなった。

 と言うより殺意を感じ取れる撃ち方を身に着けてきた。至近距離からバァンバァンは当たり前、ハンマーの一撃をガードしたと思ったら、その瞬間に隙間を狙うように銃口を捻じ込んでブッパしてくるとか。

 うむ、いい塩梅にスレている。以前にも思ったが、こりゃ殺意満載の獣の戦い方だな。ネコではない。虎よの! 虎にごつ!

 

 ちょっとロミオとジュリウスに怒られたけど、まぁ問題ないよね。

 何? やりすぎ? 

 バッカおめー、これから間もなく極東に向かうんだろ? あそこのアラガミ、お前らが知ってるのとは色んな意味で別次元だからな。

 それまでにちょっとでもレベルアップさせとかなきゃ、ガチでアラガミの腹の中に納まる事になるぞ。

 

 とは言え、確かに歪な強さになっちゃったのは確かだから、これから整えていくけどな。

 ロミオの時とは逆だなぁ。お前の時は、根っこがコンプレックスやら何やらで壊れそうだった事もあって、ゆっくり丁寧に下地を作ったっけ。

 でも、下地は確かに何より重要だが、逆の事も言える。小さな器にアレコレと装飾を飾り付けるより、大きな器を作って余分を削ぎ落す方が、名器ができやすいんやで? あと名器には意味深とか無いからね。

 

 まぁとにかくだ。今後もナナをブラッド隊員として戦わせていくなら、現状の実力じゃどうやっても足りん。単なるゴッドイーターとして評価するなら、ルーキーにしては上出来だけど。

 ジュリウス、お前もまだ実感湧いてないんじゃないか? ブラッドが必要とされるのは、感応種が相手の時だぞ。

 多分だけど、感応種だってバカじゃない。神機を停止される力を中和する俺達を、優先的に狙ってくるだろう。絶対に倒れてはいけない。

 万一、ブラッド隊員が一人しか居ない状況で倒れてしまえば、あっという間に他の皆の神機が動かなくなる。ぶっちゃけた話、それを防ごうと思ったら、アラガミに接触する危険を極力減らして、トレーラーの中で撤退の準備を整えてた方がいいくらいだ。

 

 

 それを、自分から前線に出て、更に次世代のゴッドイーターの教導役…見本手本になろうってんだ。指揮官と兵士を兼用しようってんだ。どんだけ強くならなきゃならんと思う?

 俺の基準で言えば、ジュリウス。お前だって及第点に届くか届かないか、ギリギリのレベルなんだよ。

 

 

 

 

 

 ……むぅ、ちと空気が悪くなってしまった。それだけの事を言ったという自覚もあるが。

 ジュリウス、見た目通りにプライド高いからなぁ。

 逆にあまり気にしてない…と言うより、自分が弱いと言う事を受け入れていて、それを気に病んでいないのがロミオ。ナナは……マタタビの件で暴れて寝てます。

 

 

 厳しい言葉、フロンティアで地力が上がったからこその上から目線の言葉だったと思うが、ブラッドにはこういう批判も必要だと思う。

 前回の事も思い返して気付いたんだが……何と言うか、ブラッドは閉鎖的な一面がある。ジュリウスをトップとして、曖昧に出来上がった上下関係。

 多分、半ばラケルてんてーが意図的に仕組んだ環境なのだろう。ジュリウスの『純度』を保ち、自分の計画通りに行動させる為、余計な影響を与えそうなファクターを排除してきた。移動拠点であるフライアも、外からの干渉を阻む為の要塞であるのかもしれない。

 

 要するに、世間の悪意や荒波に揉まれた経験は俺以上だろうけど、身内から批判を受けた事が少なすぎるんだな。俺が身内かって言われると、微妙なラインだが…。

 

 

 ふむ、ジュリウスとの仲は険悪になるかもしれないが、ラケルてんてーの定めた軌道を外れるように、アレコレ吹き込むと言うのは…有りかな。

 ジュリウスだってバカじゃないから(妙な所でヌケてるけど)、俺がジュリウスを誘導しようとしている事に気付くだろう。敵対していると思われなければいいんだが…

 

 

 

 

 

 さて、それはともかくギル到着である。当然っちゃ当然だが、今回もロミオとの激突は無し。

 極めて温厚に入隊した。当然の事ながら、まだ血の力の覚醒は無い。

 

 なので、暫くはブラッド隊として、任務をこなしながら、俺の元で教導を受ける事になった。

 …のはいいんだが。

 

 

「…アンタ、ゴッドイーターじゃないのか?」

 

 

 んぁ?

 

 

「いや、腕輪がないのが気になってな。それにしては神機を平然と使ってる…」

 

 

 ああ、これ? ちょっと色々と…。

 まぁ、俺は確かにゴッドイーターだよ。ただし、フェンリルにも登録はされてない。当然、このフライアにだって、書類上で言えば居ない人間だ。

 …いや、居る事は居るのかな? 荒野でぶっ倒れて、一般人を半殺しにしてた浮浪者をフライアに運び込んだって事になってるから。

 

 

「お前、そんな事やったのか!? ゴッドイーターが一般人に手を出したら、極刑モノの問題になるぞ!?」

 

 

 さっきも言ったが俺はゴッドイーターとして登録されてはいない。この世界でゴッドイーターになるには、フェンリル管轄下の施設で手術を受けるしかないから、漏れはありえない。

 なので、フェンリルに登録されていない俺は、神機を使えようがアラガミに噛みついて光だそうが、ゴッドイーターではないのだ。

 

 …真面目な話、ラケルてんてーが揉み消したっぽいけどな。と言うか、ボコッた記憶がないんだよなぁ。半死半生の状態だったらしいから、それで記憶が飛んだのかな?

 

 

「…もういい、お前に喋らせても、訳が分からない事が増えるだけだ…。だが、腕輪が無くても大丈夫な理由だけは話せ」

 

 

 へいへい。…やけに拘るなぁ…。前回もこんなやり取りしたっけ? ギルだったかは覚えてないが、腕輪をつけてない事には何度か言及された覚えがあるが。

 ま、無理もないか。ゴッドイーターにとって、腕輪の破損は何より忌むべき事態だからな。自分が死ぬだけでなく、アラガミと化して、他のゴッドイーターに散々手間かけさせて『介錯』を……って、そうか、それやったんだよな。そりゃ拘りもするわ。

 

 しかし、理由と言っても…実のところ、正確には分かってないんだよなぁ。

 アラガミ細胞を制御下においている訳だが、その理屈が分からない。『凄いね人体』したらいいのか? ハンターよりもグラップラーになれと?

 

 …まぁ、結局のところ、血の力による影響と言うしかない。それも極まった血の力。俺と同じレベルにならないと、アラガミ細胞は制御できない。(という緻密な設定)

 レベルがどーのと言う以前に、この頃のギルは血の力自体に半信半疑だからなぁ。「そういう物」と納得させるしかない。

 

 

 

 が、それだけでは押し切れなかった。妙に押しが強いな。

 こんな性格だったっけ…。まぁ、コジツケしまくって何とか押し通したが。

 

 

 

 

 そも、ブラッドの使う血の力とは何ぞや? 極端な事を言えば、感応種が使う力と同じである。あの力は、神機を停止させる効果を持っている。ある意味、『アラガミを停止させている』のだ。神機自体も、アラガミみたいなもんだしね。

 ならば、ゴッドイーターが使う力にも、同じ効果があってもおかしくない。使い手の出力と能力にもよるけど、アラガミの動きを阻害したりする力だってあるのだ。具体的には不動金縛り。あれはタマフリだけど、血の力って事になってるから。

 

 要するに、俺はそのアラガミを停止させる力を、常に自分に向けているから、アラガミ化しなくて済むのだよ。

 それだと、ゴッドイーターとして強化された力が無くなる? まぁそうだな。確かに、アラガミ細胞の力は失われる。が、それまで培ってきた肉体は別だ。

 筋肉の量も骨の密度も、臓器の活発さだって、普通の人間とは段違い。それだけ下地があれば、アラガミと渡り合う事はそう難しくない。

 

 要するに、強化は少し弱くなるが、その分鍛え上げてりゃ差し引きプラスって事だよ。

 大体からして、一般人がアラガミと戦えないのって、単に神機を使えない…相手にダメージを通す手段が無いからってだけだ。そこさえクリアできれば、完全に一般人ボディでも充分戦えるぞ。

 

 

 

「いや、流石にそれは無いだろう…」

 

 

 そうか? お前はどう思う、さっきから妙に感心した様子で聞いてるジュリウス。

 

 

「あぁ…血の力とは、俺が思っていた以上に奥深い物のようだな。体得したと思っていたが、井の中の蛙だったか…。しかし、お前が言う事も分かるが、極論ではないか? 確かに、例えばアラガミが一切動かず反撃もしない状態なら、一般人でも戦えはするだろうが…」

 

 

 それを可能にするのが戦術戦略ってもんだよ? 相手の動きを封じてタコ殴りは基本でしょ。

 机上の空論だと思うなら、一回極東の連中を見てみろ。極東は地獄だっつーけど、その地獄で暮らしてる連中は修羅か羅刹だよ。ゴッドイーターだけじゃなくて一般人も。

 あいつら、神機も持たずにアラガミを捕縛して、ピンポンダッシュして逃げてきやがるからな。お前らより動きがいい一般人とか、最初に見た時は目を疑ったわ。

 

 

「冗談でも、それ以上言うなら侮辱と取るぞ」

 

 

 

 …あいよ。まぁ、言われるだけじゃそう取られるのも仕方ないか。極東に行った時が見物だな。……自信喪失しなけりゃいいが。

 

 

「話には聞いてたけど、極東ってそんなにおっかない所なんだ…」

 

「まぁ、教官が死んだ場所って言われてたから、正直地獄なのは想定内だけど…」

 

 

 代わりに、美味い物とか面白い物も沢山あるぞ。…前回は風呂だったから、今回は炬燵に連れ込んでみるかな。

 

 

 

神逝月

 

 

 ジュリウスとの間に若干溝が出来た気がしなくもないが、教練は順調である。

 ゴッドイーターとしての教練は、ね。血の力に関しては、ギルが手古摺っている。元より胡散臭い力な上、えーと……あれだ、ムーブメント師匠の嫁さんの事で、色々葛藤があるんだろう。『あの時に血の力があれば』と、『今更…』って気持ちが交じり合ってるんだろうな。

 

 逆に、ナナは想定以上に順調だった。美食で釣ったのこれでもかと言う程効果的だったようだ。…ただ、ナナの場合なー。順調すぎるのも問題っちゃ問題なんだよな。

 それだけ、トラウマ爆発のタイミングが近づいてきてるんだから。

 

 ゲームのシナリオを考えてみると、ある意味奇跡的なタイミングだったと思う。…前回ループでもほぼ同じタイミングで爆発したけど。

 アラガミが集ってきても防衛できる戦力、拠点、住民の被害は…0ではなかったと思うが、それでも色んな意味で修羅揃いの極東の連中だ。他所で爆発されるより、被害が少なかったのは間違いない。

 …これ、ラケルてんてーとしては狙ったタイミングだったのか? ジュリウスも防衛に出ていたと思うが…その時に赤い雨が降っていたら? …かなりヤバかったな。

 しかし、それならもっと切羽詰まった状況で爆発させると思うが…。

 

 

 …ま、この辺は考えるだけ無駄だ。

 とりあえず、ナナは最悪、こっちで気絶させることを考えておこう。そんなに難しくないし。

 

 

 

 

 

 

 …いや待て、上手くやれば混乱に乗じてラケルてんてーを暗殺する事も…。

 ………できなくはないが…リスクが高すぎるな。刃物使ったら一発で人間の仕業だとバレる。アラガミの仕業に見せかけるには手間がかかるし、フライアの中までアラガミが侵入するのは至難の業。ラケルてんてーが、自発的にフライアの外まで、護衛も連れずに出てくる状況を作らなければならない。ちょいと手札が少なすぎる。

 

 何より、それをやったらレアがどんな顔をする事になるか…。

 ラケルてんてーの状態を知らなかった頃なら誤魔化す事も出来たかもしれないが、今手を下したら確実に気付かれる。

 

 自分のせいでアラガミに乗っ取られた妹を、自分の男が殺す。

 

 ……廃人待った無し。少なくとも、俺とレアは今まで通りの関係ではいられないだろう。…そう考えると、ラケルてんてーも何とかして生き残らせなきゃならんのか…。核爆弾を持ってる気分だ。解体してしまいたいけど出来ない、扱いを誤ったり隙を見せれば世界規模でドカン。

 ぬぅ…レアを泣かせない為なら、死ぬ気で…いや死んだらアカンよ、デスワープを意地でも回避する気で行かなきゃアカンやないか。

 ラケルてんてーをアラガミから解き放つ方法を考えにゃならんのか…。どんだけループすれば見つかるかな。更に言うなら、ラケルてんてーがやらかしてきた事がバレたら、当人が犯罪者として扱われるだけでなく、レアの事も芋蔓式にバレる訳で…

 あー畜生、逃げ場無い。

 

 

 

 

 ふむ、教導の事はいいとして、今のうちに色々と仕込をしておきたい。パッと思いつくだけでも、閉鎖されたフライアに乗り込むときの為の侵入通路、グレムのおっさんが余計な口を挟んできた時の為のアレやコレや、ジュリウスが黒蛛病に感染してシナリオ通りに動いてしまった場合の救出路…と言うより奪還手段か。

 とりあえず、グレム局長の仕込から行きますかね。…そういや、今回ループではまだ会ってなかったな。

 流石に挨拶くらいはしておいた方がいいか? …でも、今はフライアには居なかったな。なら、とっとと電撃でも睡眠薬でも仕込むとしますかね。

 

 

 

 

 

 …はい一仕事終了。電子ロックで施錠されていようと、アサシンがその気になればこんなもんよ。

 ところでさ、仕掛けておいてなんだけど、ヒプノックの睡眠ガスを使うのは不味かっただろうか? 決して大量に仕掛けた訳ではないが、睡眠薬の致死量って、意外と少ないんだよね。ハンターは幾ら睡眠ブレスを喰らっても死なないけど(話に聞いた悪夢の歌はともかく)、一般人はどうなんだろう…。

 …まぁいいか。憎まれっこ世に憚ると言うし、図体デカいし、普通の人よりタフだろ。確実性を取ったって事にしておこう。

 

 

 

 

 ……なんて事を考えたら……あれ、見覚えのある人が居ますよ? …サツキじゃないか、あれ? ユノの付き人と言うかマネージャーの。

 うん…? ひょっとして、ユノ来訪イベントか? しかしそれにしてはグレム局長が居ない。確かあのおっさん、普段は商談の為にあちこち動き回ってるらしいから、ちょっとした切っ掛けで前回と違う行動になってもおかしくはないが…。

 聞いてみればいっか。

 

 

 失礼、お客様ですか?

 

 

「え? えぇ…。貴方は?」

 

 

 ブラッドの教導員をしてる者なんですが…そんな所で突っ立って何を? なんとも…言えない表情だったように見えましたが。

 

 

「…大した事じゃ…ないわ。うん、大した事じゃないのよね? 理解しがたい何かに遭遇した気分だけど」

 

 

 …? こいつにしては大人しいな。フライアに乗ってるゴッドイーターって時点で、俺の知ってるサツキなら厭味ったらしい口調で突っかかってきそうなもんだが。

 落ち込んでいるようにも見える。……よもや、ユノの為に枕営業でもしてきたんじゃ………いや、第一候補のグレム局長が居ないし、ソッチ系の痕跡も無い。枕をした事があるにしても、今日の事じゃないだろう。

 

 本当に何があったんだ? 少なくとも、このフライアの中で、この女をここまで凹ませられる人種には心当たりがない。職員連中は、良くも悪くも矢鱈と意識が高いと言うか、高尚な考え方ばっかする連中だ。客人に対して妙な罵倒をするとは考え辛いし、何か言われたとしても、反発する事があっても受け入れるとはとても思えない。

 と言う事は………?

 

 

 …あの、一人で大丈夫ですか? お連れさんとか居ます? 

 

 

 

「! ユノ!」

 

 

 声をかけた途端、我に返ったようにすっ飛んでいく。血相変えてたな。何が何だか分からんが、こいつがここまで焦ってるんだ。何かあったのは違いな

 

 

 

「僕はエミール……栄えある極東支部第一部隊所属! エミール・フォン・シュトラスブルクだッ!!」

 

「そして僕はエリック。華麗なるエリック・デア=フォーデルバイデ。僕達が来たからには、ヒンデンブルグ号から飛び降りたつもりで安心してくれたまえ!」

 

 

 

 …なるほど、サツキが出鼻をくじかれる訳だ。会話できてるのか出来てないのか、わからねーもんなぁこいつら…。

 大方、突っかかった挙句に意味不明な対応をされて、SAN値を削られたんだろう。

 意外とメンタル脆いよな。確かにアレな人達だが、この程度で呆然自失としてちゃ、極東ではとてもやっていけない。

 

 

 二人の前では、困ったような顔のユノが固まっている。ま、初見で戸惑うのは仕方ない。…暫く見物してみよう。

 

 

「お初お目にかかる…。かの憎き黒蛛病を退ける、世紀の歌姫に出会う機会に恵まれるとは、今日は素晴らしい日だ!」

 

「僕は、以前にお目にかかったかな? 社交パーティで、華麗に注目を集めていたと自負しているよ」

 

「は、はぁ…。確かに、フォーデルバイデさんは目立っていましたね」

 

 

 …確実に悪目立ちしてたんだろうなぁ…。いや、ひょっとしたらウケが良かった可能性も、無くは無い? パピ! ヨン! がハイソな女学院で蝶々の妖精さん扱いされていたように、上流階級は感覚がズレているのかも…。

 …もしもこの推測が当たっていたとしたら……うん、エリナがエリックさんに反発せずに育っている理由も、説明がついてしまうなぁ。

 いや、それよりも問題なのは、上流階級って事は政治とかにも当然影響力がある訳で。今後の人類の方針を決定していく立場にある連中な訳で……。

 

 考えるの止めよ。

 

 

 

 

 近くにはギルとナナも居るようだが、こいつらも会話できずに困っているようだ。…いや、会話は出来るんだけどなー。二人ともユノに会ってテンションが高くなっているらしく、いつも以上に強引グ我が道状態になっている。

 ロミオが居れば、強制的に相手を反応させる血の力を使って、意識を逸らす事もできるだろうが…しゃーないか。

 

 

 

 はいはい、ちょっと落ち着けお前ら。エミールさんお久。

 

 

「な!? み、緑の君! 戻ってきたという噂は本当だったのかね!?」

 

「緑の君? GKNGの予言は真実だったと言うのか! だがそれはそれとして、お初お目にかかる! 僕はエミール……栄えある極東支部第一部隊所属!エミール・フォン・シュトラスブルクだッ!!」

 

 

 噂はともかく、予言ってなんじゃい。GKNGが妙な宗教団体みたいになっとる…。いや、前回だって似たようなもんだった気はするが。…あんまり接触してないんだよなぁ。俺を創始者として崇めてくるような連中に、関わりたくありません。

 いや、やってる事は至極真っ当な事なんだけどね…。農業やって技術も広めて、日中に汗を流して一風呂浴びて帰るのが日課って連中だし。

 

 はいはい、騒がない騒がない。…えー、葦原ユノさん、そっちで呆けているサツキ連れて撤退して。

 ナナ、案内は任せる。…と言うか、ロミオはどうした。

 

 

「ロミオだったら、次のミッションの事で話があるってジュリウスに呼び出されてるぞ。…逃げた訳じゃないから、怒る訳にもいかん。と言うか、その緑の君だのGKNGだの、何だそれは?」

 

 

 まぁ…ロミオが逃げる理由も無いわな。多少戸惑うだろうけど、あいつはコミュ力高いし。

 

 

「説明しよう! まず緑の君とは、GKNGの首領にして創始者…。ここに居る彼に与えられた称号だ!」

 

 

 誰から?

 

 

「無論、GKNGの大幹部であるノゾミ嬢からだ。君を称える為の称号を、夜も眠らず昼寝して考えたそうだよ。子供の夜更かしは感心しないが、考え始めると止まらなくて、目が冴えてしまったんだそうだ。心の籠った、華麗でいい称号だね!」

 

 

 …どうしよう。お子様からの贈り物だと言われると、返上もできん。必死で考えた物なら、猶更。

 厨二チックな名前でなくてよかったと思っておくべきか…。とりあえず、今度コウタにあったら蹴っ飛ばしておこう。

 

 

「いやだから、そのGKNGってのは何だよ…」

 

 

 もう話すのもメンドイって顔になりながらも突っ込むギル。苦労人である。

 ちなみに、ナナに案内されてユノ達はどっか行った。

 

 

「うむ、GKNGとは、この現世の地獄を緑の楽園にせんと励む、ゴッドイーターとは違った形で世界と戦う集団なのだ!」

 

「……なぁ」

 

 

 余計な質問をしたギルが悪い。

 

 

「彼らの働きにより、かつて地獄と呼ばれていた…いや今でも呼ばれているが…極東は、ある意味では楽園と化した。この荒廃しきった世界の中に、ジュラ紀もかくやと思うような緑に包まれた場所など、一体どれだけ存在するか! 正に奇跡を起こす集団! このエミール・フォン・シュトラスブルク、もしもゴッドイーターとして選ばれていなかったら、彼らの元に馳せ参じ、鍬を手に取って死力を尽くしていた事だろう! いや、実を言うと今でも時折、彼らの活動に参加させてもらっている! 新たな世界を築き上げる為の試みに参加できる、この喜び! 我がポラーシュターンも歓喜の雄叫びをあげているぞぉぉぉ!」

 

「ジュラ紀? 鍬?」

 

 

 話せば話すだけ疑問符が増える事など分かっているだろうに、それでも突っ込みを続ける律儀な男、ギル。学習能力が無いのか、惰性で対応しているだけなのかは分からない。

 …ま、実際、エミールの説明も間違っちゃいないんだけどね、詩的(?)な表現が多いだけで。アレばかりは実物を見なければ信じられないだろう。特にこの世界では。

 俺も、前回ループで極東に戻った時は目を疑ったもんなぁ…。フライアの職員たちも大騒ぎだった。

 

 よし、極東に着くまで秘密にしとこ。そして慌てる様子をこっそりと撮影し、「何も知らないゴッドイーターが、極東リアリティショックを受けたら」という題名でネットに挙げるのだ。あ、でも顔バレは不味いかな…。

 

 

 

 エリックさんとエミールを、「責任者に挨拶は重要。古事記にも秘書検定の本にもそう書いてある」と言い包め、ラケルてんてーの元に向かわせる。

 …どんな反応をするのか、ちょっと気になる。相変わらず無表情無感動を貫くのか、それとも中身のアラガミも含めて「なんだこのニンゲン」ってなるのか。

 でもついて行って巻き込まれるのはゴメンだな。二人の相手が面倒臭くなって、俺に丸投げするという事も考えられる。嫌なキャッチボールだ。

 

 

 

 さて、ユノとサツキは何処かな? 会ってどうするというつもりも無いが、縁を繋いでおいて悪い事は無い。

 …ナナの痕跡は……あっちか。鷹の目ってストーカーにとって最高に便利だね。あれ、でも一人っぽい。とりあえず行ってみるか。

 

 

 おーい、ナナ。お連れさんどうした?

 

 

「うん? あの二人なら、ジュリウスと話してるよ。ロミオも居たね。……やっぱり、有名人だと目移りしちゃう? 噂の恋人さんに怒られちゃうよ」

 

 

 目移りとは言わないと思うが、今後の事を考えると、顔見知りくらいにはなっておきたくてな。別に、ロミオみたいにアイドルがどうのって舞い上がってるんじゃない。

 

 

「ロミオ先輩、別に舞い上がってなかったよ? 作戦についての会議中だったから、真面目モード。でもそういうの好きそうではあるね」

 

 

 公私の区別がついてるようで結構な事だ。と言うか、作戦会議が面倒で逃げてきたな?

 

 

「てへ、バレた。ところで、あの二人は?」

 

 

 今はラケルてんてーの所に挨拶に行ってるよ。あのアルカイックスマイル(風の鉄面皮)がどんな反応をするか見物だな。

 

 

「ふーん…ちょっと興味あるかも。行ってくるね!」

 

 

 はいよー。…無事に逃げてこれる事を祈ろう。

 さて、後はユノ達の所に行くかね。

 

 

 

 

 

 

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