※この作品はR-18です。

狩りゲー世界転生輪   作:時守 暦

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第325話

 

 

神逝月

 

 

 さて、何から書いていくべきか。レアとアリサと合流したんだけど、その時にも色々とイベントがなぁ…。

 

 …うん、前回ループやゲームシナリオに沿った事から書いていくべきか。

 まずは、ブラッド及びフライアは無事に極東入りする事ができた。ミッションはまだだけどね。

 

 相変わらず胡散臭い榊博士や、元ラスボスだったのに黒幕臭という意味では博士に一段劣る支部長。

 …言っちゃ悪いが、ジュリウスじゃちょっと太刀打ちできんな。役者が違うわ。確かにジュリウスは優秀で高潔だけど、狡猾さが足りてないのがよく分かった。…純粋培養だからねぇ。

 

 ま、それはいいんだ。いきなり敵対する理由も無し、ラケルてんてーを警戒してはいるだろうけど、感応種に対抗する手段は、喉から手が出る程欲しいだろう。無駄に婉曲かつ遠回し、思わせぶりな会話だったが、無事に受け入れは終了した。

 その後の歓迎パーティも、ほぼ前回と同じ流れだったので、特筆すべき事は無い。

 強いて言うなら、ナナがムツミちゃんを崇め始めたくらいか。

 

 ムーブメント師匠は…ギルと会うタイミングはどこだったっけな。少なくとも、俺の目の届くところでは遭遇してなかったようだ。

 

 

 

 

 

 さて、ゲームシナリオ・前回ループではなかったイベントについてだが…まず第一に。

 支部長たちに顔遠しする為に極東支部の廊下を歩いていると、突然知らない人から声をかけられました。

 

 

 

「あ! あの時の人!」

 

 

 

 ………んぁ? え? 俺? 

 見覚えのない女の子が、思いっきり俺に指を突き付けている。後ろを見ても誰も居ない。左を見ればシエルが居て、右を見ればロミオが居て、前を見ればジュリウスとナナとギル。

 俺以外の誰かかと思ったが…え、俺なの? マジで? 

 

 

「あの時はありがとうございました! おかげで、皆無事で……。あ、ここに居るって事は、やっぱりゴッドイーターだったんですか? 他の皆さんも、腕輪をつけてるし…」

 

 

 お、おう? いや俺は一応ゴッドイーターではないんだが…。と言うか、ゴッドイーターへの忌避感が無い子だな。

 

 ふむ…率直に言えば可愛い子だな。元気印と笑顔がよく似合う。

 腰元まで伸ばした髪はしっかり手入れが行き届いていて、服もピカピカ。…この世界の女性にしては珍しく、露出度が低い。…ああ、これはゴッドイーターじゃないからかな。

 …学生服に近いかな? セーラー服じゃなくて、ブレザーっぽい。 年齢的にも、高くて高校生程度…。でも、この世界で学校なんぞ…まぁ、あるところにはあるけど、極東にはそんなモン無かったような。

 

 

「何々? シマムー、何かあったの? ……あ、この前の人だ!」

 

 

 また新しい子が。…こっちもタイプは違うけど、可愛い子だね。ナンパできればなー、と思っちゃうくらいには。

 

 

「おーい、レッスンに遅れるよ…あ!」

 

 

 またかよ。…なんかゾロゾロ集まって来たんですが。何事? 容姿レベルの高い子ばかりで、いい目の保養になるわぁ。

 ナナやシエルだって負けてないが、この子達は……なんていうか、しっかり意識して磨き上げてる気がする。

 

 

 と言うか、マジで何事。どちら様。こんな可愛い達なら、会ったら絶対覚えてると思うんだけど。

 

 

「…会ってから一か月も経ってないんだけど。本当に忘れてるの?」

 

 

 大人びた印象の子が、呆れたように言ってくる。そう言われてもなぁ…一か月前? …って事は、今回ループが始まる前…いや、それだと月に居た頃になるよな。

 えーっと……? 人違いって事は?

 

 

「あー、教官教官、この子達多分アレっす、教官が助けた…と言っていいのか分からないけど、アラガミを潰した時に居た子達だわ」

 

「ロミオ、それだとこの人には分からんだろう。あの時は意識が半ば飛んでいたようだし…」

 

「え? 私達の事、覚えてないの?」

 

「…まぁ、それも無理もないかも…。ボロボロだったし…。と言うか、大丈夫なの? どう見ても重症か致命傷だったんだけど」

 

 

 死ななきゃ治るから、怪我に関しては問題ないが。ジュリウス、具体的にいつの事なんだ?

 

 

「お前がフライアに運び込まれる直前だ。この人達は、バスで移動していたんだが、その時にクァドリガに追いかけられていたそうだ。もう駄目かと思った時、お前が空から降ってきて、クァドリガを粉々にしたとか」

 

 

 

 

 なにそれわけがわからない。

 

 

 

「…失礼。率直に言わせていただきますが、当時の我々も同じ気分でした。今も言葉にすると更に分かりません」

 

 

 あ、でっかいにーちゃん出てきた。どちら様?

 

 

「こういうものです」

 

 

 名刺どうも。タケウチ……………アイドル会社の、社長さん…?

 

 

「は。プロデューサーと兼用ですが」

 

 

 社長とプロデューサーって兼ねられるもんなの? と言う事は、この子達ってひょっとして?

 

 

「当社に所属している、アイドルです。…それはともかく。あの時は、大変な失礼をいたしました。恩人に対して、あのような事を…」

 

 

 失礼…?

 

 

「…彼らと行動を共にしていたアイドルの一人が、ボロボロのお前に対して暴行を加えたんだそうだ。『もっと早く助けに来い!』と」

 

 

 はーん。覚えてないから何とも言えないんだけど、そーゆー人種は助けても助けなくてもどこかに消えるし、リザルトに影響ないから無視でおk。地球防衛軍的に考えて。

 

 

「で、そちらの社長や他の子達の制止も無視して暴行を続けていたところ…ふと目を覚ました教官に頭を鷲掴みにされて、逆にフルボッコにされました」

 

 

 記憶にないんだけど。

 

 

「そしてそこに到着した俺とロミオが、死んだと聞かされていたお前の姿に驚きながらも、何とか羽交い絞めにした。止めようとした俺達まで殴り飛ばしてな」

 

 

 記憶にないんだけど!?

 

 

「教官、フライアで目が覚めた時に話した筈ですよ」

 

 

 マジで? そう言えば、そんな話をされたようなされてないような…。 …後で日記読み返しておこう。

 しかし、会社の人を殴り飛ばしてしまったか。殴り掛かって来た方が悪いとは言え、ちょっと申し訳ない。

 

 

「いえ。当社のユニットではなく、企画の為に同行していた者でしたので、我々に被害らしい被害は…。自業自得とは言え、流石にやりすぎだとは思いましたが」

 

 

 何だか状況がまた分からなくなってきたな。

 要約すると?

 

 

「…我々がアラガミに追いかけられていた時、助けてくださいました。その後、同行者の一人が暴行に及んだ為、返り討ちにしています」

 

 

 はぁ…。ああ、デスワープ直後って事か。前回はブラッドレイジ状態で落下してきたから無傷だったけど、今回は突然の事でブラッドレイジ状態が解けて、妙な軌道を描いて落下。その着地地点に、この人達を追いかけていたアラガミが居たと。

 うーん、凄い偶然。

 

 しかし、そのアイドルの人達がここに居るって事は…ひょっとして、オーディション?

 

 

「はい。既に一次審査は通過し、次の審査までは極東支部内で過ごす許可を得ています。…何かと会う事もあるかと思いますので、どうぞ応援のほどを」

 

 

 はいはい。

 じゃ、悪いけど俺達、これから支部長に挨拶に行かなきゃならないんで。

 

 

 アイドルの事はよく分からんけど、頑張ってなー。

 

 

 

 

 

 …と言うような事がありましたとさ。

 このご時世に、アイドルねぇ…。それで会社をやっていけるくらいに儲かるのかね。興味はあるな。

 …どっかで会ったら、少し話をしてみようかな。

 

 

 と言うか、この後はブラッド隊の歓迎会があった筈だし、そこで一曲披露してもらうように頼めばよかったかな。

 でも葦原ユノも居るしなぁ…。

 

 

 

 

 

 

 

 歓迎会をやってる間、俺は執務室で怪しい黒幕臭を振りまく二人と、会談してたんだけどね。

 ああ、さっきのアイドル達との会話でなんかホカホカしていた心が荒んでいく…。

 

 

「久しいな。月での暮らしはどうだったかね」

 

 

 退屈極まりなかったですな。脳みそが常温のまま溶けていく、とはよく言ったもんです。

 

 

「自力で帰ってくる可能性も、考えないではなかったけど…大気圏を突破してきたって? 旧世界のアニメーションにそんなロボットが居たね。…どちらかと言うと、アリサ君とレア君の二人と対面して、無事だった事に驚いているけど」

 

 

 全くの無事だったとは言えませんが…。エラい目にあいましたよ。あの後、ケツがヒリヒリして…まぁアレはアレで良かったけど。

 

 

「君の特殊性癖について聞きたいとは思わないな。…もっとも、二人が君から聞き出した秘密については、話は別だが」

 

「一通りの事は聞いているよ。繰り返し、三つの世界、因果を喰らう『鬼』という超常生物、『ゴッドイーター』の物語…。いやはや、信じがたい、希望に満ちた話だね」

 

 

 …希望…?

 

 

「この世界以外にも、人と世界は広がっている。例え我々が死滅したとしても、人そのものは絶滅する訳ではない…。尤も、このまま滅びるつもりもないが」

 

 

 それ希望って言えるのかね。MH世界はともかく、討鬼伝世界の追い詰められっぷりは、この世界とどっこどっこいだし。

 

 

「言っちゃなんだけど、知った事じゃない…と言うのが本音だね。より正確に言うなら、知ったところで何もできない。私達はこの世界で生き延びるのに必死だし、別の世界に干渉できるような技術だってない。君と言う例外を除いて」

 

 

 まーそうですな。極東のこのありさまも、元はと言えばMH世界から引っ張って来た種やら何やらのおかげだし…。

 挙句、繰り返しとゲームシナリオのおかげで、知り得ない情報や未来の事まである程度分かる、と。

 

 榊博士的には、とても受け入れられないやり方かな、やり直し…つまりは失敗を前提とした、所謂『死んで覚える』を実践するのは。

 

 

「ペイラーにとっては不快だとしても、使えるものは使う。最優先すべきは、人類のこの世界での生存。次点で終末捕食の恒久的阻止だ。ラケル博士については、正直私の見積もりが甘かった。何かあるとは感じていたが、予想以上だったよ…」

 

「そういう事だね。私としても、個人の矜持や理念の為に、救える者を救わないという選択肢を取る気はない。特に黒蛛病の克服は、あらゆる意味で重要な事だ。……ああ、表に出している、オーディションの看板を見たかい? あれが正にその一環だよ」

 

 

 あれが? …オーディションに参加している子達に会ったけど…あの子達が、どう黒蛛病の克服に繋がると?

 

 

「何、単純な話さ。アリサ君とレア君が、君から聞き出した事だよ? 君が言う『ゲームシナリオ』の中で、どうやって終末捕食を食い止めた? 君が実際に見てきた黒蛛病は、君が言う『霊力』と同じ力を持っていると言う。古来から、『霊力』を高めるのに有効な手段と言えば? 人の強い感情、心を動かされた感動、それこそが終末捕食を退ける鍵だ」

 

 

 ……歌…と言うか、音楽。つまりは祭祀…一種のライブ?

 コジツケっぽいけど…。

 

 

「無論、流石にそれだけではない。しかし、黒蛛病を歌で抑え込める、葦原ユノという実例は、確かにいる。ならば、同じ事が出来る人間が他に居てもおかしくはないだろう」

 

 

 それはまぁ、確かに…。他に手段があるとしても、『実例』に近い所から探し始めるのは不思議じゃないですな。

 それでオーディション、と。

 

 

「フェンリルに対する悪感情を緩和する為の策でもある。また、仕事を作って回す事で経済的な循環を作り出し、雇用枠を無理なく増やす事もできる。要は手段、メリット、デメリット、その他諸々が集約された結果が、このオーディションという訳だ」

 

「そこで、だ。君もその審査員として、参加してもらいたい」

 

 

 

 

 

 

 は?

 

 

「は、ではない。現状、黒蛛病…血の力と霊力について、君以上の専門家は居ない。そもそもからして、このプロジェクトの発端になったのは君からの情報だ。無理矢理聞き出された情報を元に行動し、それに対して『責任を取れ』と言う気は無いが、自分の影響力というものをもう少し自覚したまえ」

 

「それに君、非公式の情報だけど、黒蛛病に感染したブラッド隊員をその場で完治させたんだって? 『実演者』が居れば、このプロジェクトにも箔が付くよ。……テレビとかの前で、実際に患者を治してもらわないといけないけどね」

 

 

 やるのは構わんけど、それって『次はこの人、次はこの人』『こっちも治してくれ!』ってコキ使われるパターンじゃねーかなぁ…。そりゃ出来るトコまでは治療するけどさぁ。

 『これ以上は無理』なんて言い出したら、患者を見捨てるクサレ外道呼ばわりがオチじゃん。

 

 

「それを防ぐ為、治療の手段をより多くするためのオーディションだ。…正直、このご時世にアイドルなんて物に関わる事になるとは、夢にも思わなかったが」

 

 

 同感ですな…。ああもう、やればいいんでしょやれば。

 ちゃんと狩りもさせてくださいよ。

 

 

 

 

 

 …と、こんなイベントがありました。むぅ、なんでいきなりアイドルオーディションなんか始めたのかと思えば…。

 どうせ探すなら、大々的にやって応募者を増やしたり、フェンリルのイメージアップに繋げようって発想はまぁ分かるけど。

 

 この後、アリサとレアと合流した。

 オーディションなんて展開になったのは、二人にとっても色んな意味で予想外だったらしく、苦笑いしていたものだ。

 

 

 

神逝月

 

 アリサとレアを連れて、極東見物。

 ブラッド隊も引き連れて、前回同様に銭湯に行こうと思っていたら、予想外の人と会った。…と言っても、昨日会ったばかりだし、アナグラに滞在するって言ってたから、不思議じゃないんだけど。

 

 

「…あ」

 

 

 ん? ……ああ、昨日の…えーっと、アイドルの…。

 

 

「リン。…改めて、お礼言っておくよ」

 

「? どちらですか?」

 

「この時期に穴倉に居て、ゴッドイーターでも技術者でも、フェンリル職員でもないって事は…オーディションの参加者かしら?」

 

 

 レア、正解。名前を聞いたのは、今日が初めてだけど。

 よく覚えてないけど、こっち(地球)に戻って来た時に、成り行きでアラガミから助けてたらしい。

 …ああ、そうだ。タケウチ社長に言っておいてほしいんだけど。

 

 

「…何?」

 

 

 個人的には応援するつもりだったけど、オーディションの審査役に収まってしまった。贔屓になると困るんで、応援に関しては極力ノータッチで行くから。

 

 

「……審査役? 何で?」

 

 

 あー…オーディションにも表沙汰にしてない…いやある意味してるけど…目的と算段があって、それの第一人者が俺だったってだけ。悪いけどこれ以上は機密になるんで言えない。

 

 

「…そう。よく分からないけど、分かった。代わりに、一つ聞いていいかな」

 

 

 内容次第だけど…。

 

 

「…助けられた時に見たんだけど……あの光、何?」

 

 

 …光? あの時の記憶が飛んでるんで、何とも言えないけど……ひょっとして、金色?

 

 

「そう。背中から出てたと思うんだけど。…アラガミをやっつけたら、すぐに消えちゃった」

 

 

 …多分、ブラッドレイジだと思うけど…これ、機密事項じゃないよな? ぶっちゃけ、現状では俺以外には使えないようだし、俺だって完全に使いこなせてる訳じゃない…と言うか、起動させられた事だって殆ど無い。

 …血の力っつー、一種の超能力みたいなものだとだけ言っておく。現状、ブラッド隊という一部のゴッドイーターのみが、ようやく使えるようになり始めてる力…の一端だ。

 

 ちゅーか、何でそんな事気にするんだ?

 

 

「アイドルに使えないかな、と思っただけ。自分から光るって、目立ちそうだし」

 

「物理的に輝けば、それは目立ちそうですけど。…それだけですか? 何となく、他に何かある気がするんですが」

 

 

 

 アリサに問われたリンは、少し困ったように目を背け、小さく息を吐いた。

 

 

「別に…。単に、何だかよく分からないけど、気になって仕方がないってだけだよ。あの時の光降りかかってきてから、気になって気になって…。アラガミに追いかけられてあんなに怖い想いをしたのに、気が付けばあの光の事を考えてる。私だけじゃなくて、一緒に居た他の人も、大なり小なりそういう傾向があるみたいなんだ」

 

「…貴方、何かした?」

 

 

 いや…正直、記憶もないし意識も飛んでたから、聞かれても答えようがない。

 そもそも、ブラッドレイジのあの光にそんな効果があるとは思えんし…。

 

 

「うーん……一人二人なら、『アラガミに追われた恐怖から逃れる為に、精神が無意識に目を逸らしている』という事もあるでしょうけど、全員が同じじゃねぇ…」

 

「集団心理と言う事も考えられるのでは?」

 

「…それを本人の前で言われても。…こっちから話を振っておいてなんだけど、悪いけどもう行くね。レッスンがあるから。…プロデューサーへの伝言は伝えておくよ」

 

 

 

 ん、頼むなー。

 …さて、妙な所で妙な縁が出来たが、行くとしますか。

 

 

「こうなった極東は、2度目なのよね? ブラッドの子達も連れて、何処に行く気?」

 

 

 んー、前回は銭湯が大好評だったから、まずそこ。

 GKNGにも顔を出しておきたいし、ロミオの元カノとやらも探しておきたいし、実を言うとアイドル達にも興味はあるし。

 

 

「一応言っておくけど…前回がどうだったのかはともかくとして、今は私もアリサも浮気なんか認めてないからね」

 

 

 ん、そこはカラダで認めさせるから大丈夫。

 と言うかリアル話、こっちから向かっていくにせよあっちから来るにせよ、レアとアリサのガードを抜けって普通に至難の業だからな? フツーは俺らの関係にドン引きするか、二人のレベル(外見的な)の高さに二の足踏むからな。それでも突っ込んで来ようとすると、性癖的なレベルの高さで三の足四の足を踏むだろう。

 

 

「最後はともかく、褒められてるんだと思っておきます。…と言うか、ひょっとして、さっきの話ってアレじゃないですか? ほら、因果がどうのこうのって奴」

 

 

 あぁ……あぁ、そういやそれがあったか! デスワープ直後だし、クサレイヅチとやり合った直後だったし、なんか因果とか因縁的な物が零れ落ちてたのかも…。言われてみれば、あれも光に見えるんだよな。

 と言う事は何か? その因果を浴びたあの子達は、MH世界でネンゴロになってたあいつらみたいに、俺に好意的な感情を持ってるって事?

 

 

「……真偽はともかく、ガードを強化する必要があるようね」

 

「しかもあの口ぶりだと、光を浴びたのはリンさんだけでなく、同じバスに乗っていた多くのアイドル……あ、そう言えばあのタケウチって社長も…」

 

 

 申し訳ないがホモ疑惑はNG。とは言え、現状では本当にこっちからちょっかいを出す気はないって。

 

 

「現状じゃなくても普通は無いんですよ! 私とママの間で認められてるからって、これ以上は許しませんからね!」

 

「体が保てばね…」

 

 

 最悪、この前にみたいに俺の罪悪感を刺激して、拘束してM役やらせればいんじゃね? それはそれで新しい世界が見える。

 

 

「それ絶対後で逆襲するじゃないですか。プレイならともかく、真面目な話だとちょっと…。まぁいいです。私とママでガッチリガードしてればいいんですから」

 

 

 はいフラグ立った。…それで納得する辺り、チョロいと言うかなんというか…。

 

 

 

 

 

 

 

 さて、そーゆー訳で、ブラッド隊を引き連れて極東に繰り出した訳だ。

 レアとブラッド隊の再会で盛り上がったりもしたが、まぁ置いておこう。そういや、ジュリウス・ロミオ・シエルとは顔馴染みなんだよなぁ。尤も、どうしてレアがラケルてんてーから離れたのかは、気付いてないようだけども。

 

 

「さて、まずは何処に行く? と言っても、何処に行っても驚異的な光景しか見られそうにないが」

 

「はいはい! それじゃまずはご飯食べたい! 食べ歩きって、一回やってみたかったんだ!」

 

「ま、極東以外じゃ、まず無理な話ですね…。増して、美味しい料理ともなれば」

 

 

 飯か…。おすすめスポットとかは分からないから、鼻が導くままに進んでみますか。

 いや、折角だからナナ、先頭歩いてみるか? お前の直感に任せる。

 

 

「ん~~~………こっちかな?」

 

 

 楽しさが抑えきれないと言いたげに、ナナは軽快に歩いていく。…ここら辺も随分治安がよくなったもんだなぁ。3年前は完全にスラムだったのに。

 それ以外にも、道端を歩くだけで目に入る草木に何度も目移りしているようだ。

 

 

「3年間見守って来たけど、感慨深いわね…」

 

「レア博士は、この光景を見慣れているんですか?」

 

「見慣れているって程でもないけど……ちょくちょく極東に戻ってきていたの。GKNGとも、そこそこ顔見知りよ」

 

「最初は小さな農園だったのに、途中から規模が一気に膨れ上がったんですよね…」

 

 

 そりゃ、この植物達だもんなぁ…。GKNGの尽力に、こいつらの生命力が合わさればこうもなるか。

 …ん? なんか、向こうの方、騒がしくないか?

 

 

「ホントだ…あっ、でもあっちから美味しそうな匂いがする! …決めた、最初はあそこのご飯! 突撃ー!」

 

「待ってくださいナナ! 何かトラブルかも…」

 

 

 周囲を警戒もせずに突っ込んでいくナナに、それを止めようとするシエル。…食い意地全開のナナを止めるのは難しかろう。

 しかし、ホントに何事だ? 騒ぎは起こっているようだが、物騒な気配はしない。

 周囲も騒ぎ立てたり不安がったりしている様子はなく……? いや、むしろ落ち着いている? 

 いや、むしろ自分から走っていく人も居るな。

 本当に何事だ?

 

 

 放っておくわけにもいかず、追いかけた先にあったのは…………屋台?

 そんなに珍しい物じゃない。いや、この世界で木製の屋台とかむしろ貴重かもしれないが、言っちゃ悪いが素人の手作り感満載の屋台だ。

 

 売ってるのは………こりゃパスタか? ナポリタンか? スパゲティ? とにかく麺類のようだ。

 …美味そうだな。作っているのがカワイイ子なのもポイントが高い。

 しかし、そう騒ぐ程の事でもない気がするが…。

 

 ナナは既に屋台に取りつき、料理が出来上がっていくのを齧り付き…もとい、かぶりつきで眺めている。

 

 

 ま、飯としちゃ丁度いいか。おねーちゃん、いくら?

 

 

「ちょっと、聞き方が何だかイヤらしいわよ」

 

 

 そんなつもりはないんだけど!? レアに言われてちょっと真面目に傷つくが、料理しているねーちゃんは笑ってとんでもない事言い出した。

 

 

「おっ、お兄さん達、極東は初めてっすか!? だったらお代は要らないッス! 食べていくといいっすよ!

 

「いいの!?」

 

「ナナ、待て! …いや食べるなと言ってるんじゃない、好意はありがたいが、対価は支払わないと」

 

「いいんすよ! ここにある分、皆に食べてもらう分スから!」

 

 

 …は? え、何、無償提供? マジで? 何で?

 

 

「そうッス!」

 

「おや、ゴッドイーターさん達かい。…まぁ、色々あるが、ここじゃどうこう言わねぇよ。いつもの事なんだ、コレ。この後、ペパロニの嬢ちゃんがドゥーチェに怒られるまでがワンセット」

 

 

 近くに居た、見るからに土方の兄ちゃんが教えてくれる。頬にケチャップらしき後がついているが、ヤローがそんなのしても可愛くはない。

 しかし、いつもの…? アリサ、レア、知ってる?

 

 

「噂だけなら聞いた事がありますが…。極東地域はともかく、ゴッドイーターは下手に出歩くと一般人に絡まれる事も多いので

 

「ドゥーチェ? ドイツ語で『総統』だったわね。愛称かしら」

 

「へぇ、本名じゃないのは知ってたけど、そんな意味だったのか。ま、なんだ。あんまり差別意識を持ってるつもりはないが、喰うなら一杯だけにしとけよ。俺達と違って、稼ぎがいいんだろ」

 

 

 稼ぎ……稼ぎ…。そういや、今の俺の収入って…。

 

 

「…正式にブラッド隊に所属している訳ではないし、教練を取ってはいるが…そう言えば、給与の話はした事がなかったな…」

 

「あれ、教官って極東支部所属のゴッドイーターなんじゃないの?」

 

「いや、俺達が保護した一件で、一般人を殴り倒しちゃってるし…機密扱いで一般のゴッドイーター扱いはされてない筈だし…。下手すると、フェンリルに所属しているって事さえ認められないかも」

 

 

 つまり、俺無職!? 俺がニート!?

 そりゃ、狩り以外ではあんまり取り柄がないけど! …あ、でも不治の病を治療できるって特技が…。

 

 

「不治なのに治るのか」

 

「そこはノーコメントで頼む。一応、機密事項なんでな」

 

「…相変わらずフェンリルは胡散臭いな。まぁとにかくだ。ペパロニの嬢ちゃんのコレは、一種の名物でな。その場のノリで、手元にあった食料を全部料理しちまうんだよ。で、捨てるのも持った無いからって事で、近くにいる連中にどんどんやっちまうんだ」

 

「…あの、それってお店として…」

 

「成立してないな」

 

「何でそれで続けられるのかしら…」

 

「色々あるんだよ。あんたらみたいなのには、分からないかもしれないけどな。まーともかく、一杯だけ食ってけ食ってけ。ペパロニの嬢ちゃんの飯は美味いぞ。そんで、次に来た時にはちゃんと金払えよ」

 

「いや、だから今回もちゃんと支払って…」

 

 

 ジュリウス、そこまでにしとけ。

 無償で奢られるのは性に合わないかもしれないが、好意を固辞するのも失礼だぞ。

 

 ロハが嫌だってんなら、別の形で返すといい。ゴッドイーターにはゴッドイーターの恩の返し方があるだろ。分かりにくいやり方でもな。

 

 

「…そうだな。では、いただこう。………ほう…これは確かに…」

 

 

 いい腕してるね。ナナが大歓喜しとるわ。

 

 

 

 

 

 …ところで、さっき言ってた「ドゥーチェ」らしき女の子が、物凄い勢いと剣幕でこっちに向かってきてるんだけど、何事だろう。

 

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