※この作品はR-18です。

狩りゲー世界転生輪   作:時守 暦

333 / 611
最近、踏んだり蹴ったりな日々が続きます…。
ピンポイントで故障した部分の操作を引き当て、それが問題になって余計な作業が発生、終わったと思って帰宅したら作業忘れが発覚してトンボ帰り。
自分のミスが発端で、故障はいつか致命的な形で発覚するもの、作業忘れは把握できてなかった自分の責任とは言え、本当についてない…。

ああ、酒飲みたい。


第333話

神逝月

 

 

 ロミオがツヤツヤしております。元カノさんは現カノさんに返り咲いたそうです。

 

 

 

 マジか…。上手く行ってしまったのか…。ロミオ的には嬉しい事なのかもしれんが、俺としてはどうなんだろう…。目論み通り復縁はできたけど、復活した縁は捻じれに捻じれているような気がする。

 「破れ鍋に綴蓋じゃん」と楽観視してたが、いざこうなってみると疑わしく思えてしまう。

 少々アブノーマルな関係だと言う事以外、特に問題点も見当たらないのだが…と言うかアブノーマル云々について俺が言うのも噴飯モノだ。

 

 それに、やたらと嬉しそうで、浮かれて舞い上がってる上に、明らかにブラッドアーツの出力が3段飛ばしで上昇しているロミオを見るとなぁ…。

 状態異常付与の効果の筈のチャージクラッシュが、ジ・エンド並みの破壊力を叩き出しているのだ。リンクバーストレベル3状態でしか使えないアレ並なんだ。脈絡もなく登場してきた、隻眼のイャンガルルガみたいなアラガミを問答無用で叩き斬ってしまったのには本当に驚いた。「まさかネームド個体がGE世界に!?」って思ったのに。

 ……あれ、ひょっとしてあいつ、ゲームシナリオで言うマルドゥーク? あいつも確か隻眼だった筈……でも、隻眼なのは血の力に目覚めた主人公による攻撃の為だったよな?

 

 今回はまだ遭遇すらしてなかった筈だが…。

 

 

 

 …確か、あの隻眼マルドゥークと赤い雨の中でやりあって、ロミオは死ぬんだよな。逆に即死させとるがな。

 隻眼じゃなけりゃ、マルドゥークはちょくちょく居るし、それ以前にあのイャンガルルガモドキの元が、マルドゥークなのかすら怪しいが。だって骨格が明らかに違うし。名前だけなら、白い狼のマルドゥークと、黒狼鳥で狼繋がりなんだけどねぇ。

 

 

 

 

 ………考えるのやめよ。答えが出ない事を延々と考察するなんざ、哲学者と暇人だけで充分だ。

 予測はどこまで行っても予測でしかない。シナリオ通りに行かない、前回ループの通りに進むとは限らない事は身に染みてるんだ。

 

 今は無駄に朗らかなロミオを祝福しよう。面倒くさい事この上ないが、惚気話にも付き合ってやるか。…………DTのジュリウスには、ちとキツかろうしな。

 

 

 

 

 

 ちなみに、シエルはシエルで現カノにとっ捕まり、お礼と言う名のノロケを聞かされていたらしい。「これからも指導をお願いします」なんて事言われたらしいが……まぁ…友人に近い存在にはなったんじゃないだろうか。

 指導? レアとアリサが、俺を『オシオキ』する時に一緒に居たし、その時の話をしてればいいんじゃないかな。

 

 

 

 

 

 さて、話は変わるが、アイドル達の事である。……改めて思うが、GE世界の話じゃねぇなぁコレ…。 

 しかし、今回は割とGE世界側の話の事なのである。

 

 オーディションの後、黒蛛病治療と言う大役に二の足を踏んで辞退した者も多いが、奮起した者も居る。彼女達(少数だが男性も居るには居る)は極東支部内部で生活し、日々レッスンに精を出している。…おかしな意味じゃないが。

 血の力習得の為の訓練もあるが、現状では座学…この力がどのような物なのか、専門家のブラッド達がどのようにして運営しているかを伝えている段階なので、講師役でもある俺の出番はまだ先だ。

 

 はっきり言ってしまえば、俺がアイドル達に会いに行く理由は全くないのだが……一人だけ例外が居る。

 

 

 

 タカネだ。

 

 

 あいつだけは例外だ。オーディションの時に確信した。

 何でこんなトコに居るのかは分からないが、一度話をせねばなるまい。

 

 正直、支部長や榊博士、或いは極東のマスコットことシオを連れていくべきかとも思ったのだが…。その榊博士に拒否られてしまった。「女性に会いに行くのに、他の男性を伴ってどうするんだね」と。…シオは女性だぞ。ソーマの嫁だぞ。……え、もうソーマの旦那さんになった? 俺が何もしなくても押し倒してたか。流石の食欲だ。

 

 

 支部長は…考えてみれば、連れて行ってもあまり意味が無い。戦力的には一般人にケが生えた程度でしかないし、彼女に権勢なんてものが通じるとも思えん。

 ……多分、物騒な事にはならないと思うが…。

 

 

 

 レアとシエルを気絶させ、アリサはミッションで留守にしている時に、タカネに会いに行った。

 わざわざ探す必要はない。彼女の気配は独特だ。『気付いた』今となっては、何処にいるのか一発で分かる。…どうにも、探ろうとした時点で彼女にもその情報が渡ってしまったようだが。

 

 

 …極東支部から出て一般市民の生活区画を抜け、開墾もまだ及んでいない場所。本来であればアラガミがウロウロしているその荒野で、タカネは平然と待っていた。

 普段着…なんだろうか? この時世にしては、生地が多いと言うか真っ当な服装だ。高級そうなカーディガンを肩にかけ、塵一つ被らずに、月光を受けて佇む姿は、それこそ絵画のようだった。………その光景に、デジャヴを強く感じる。

 ニコニコと笑っているが、逆に表情が読めない。…ラケルてんてーとは別の意味で、張りつけたような笑顔に見える。

 

 

「おや、お気に召しませんでしたか? 笑顔は好意を伝える最も確実な方法だと聞きましたが」

 

 

 同じ笑顔でも色々あるもんだ。『笑うと言う行為は本来攻撃的なものであり、獣が牙をむく行為が原点である』とも言うしな。

 

 

「それは知りませんでした。では、人は牙をむけ合う事で平和を訴えているのですね」

 

 

 ある意味間違っちゃいない気がするね。平和を実現させるには、最低限の自衛力と外交力が必要だ。

 ……アラガミはどうだか知らないが。

 

 

「さて、私もアラガミの社会構成については、とんと疎く」

 

 

 自身もアラガミなのに?

 

 

「何分、箱入り娘でした故。箱から連れ出された後も、あなた様にのみ寄り添って生きておりました」

 

 

 …そう言われれば、確かにそうか。ずっとエイジス島の地下で育てられ、そこから出てみれば月へ直行、か。

 考えてみると、随分波乱万丈な人生を送ってるな。

 

 なぁ、ノヴァ?

 

 

「人からはタカネと呼ばれています。あなた様からであれば、どの呼び名でも構いませんわ」

 

 

 …何故ここに、そんな姿で? お前は月に居る筈だろうに。

 

 

「つれないお方…。目覚めて以来ずっと寄り添っていたあなた様が突然消え、私がどれほど狼狽え嘆いた事か。かと思えば、突然この星から呼び声をかけてきて…。あなた様の真似事をしてやってきましたが、位置調節に失敗しました」

 

 

 呼び声…?

 

 

「お忘れですか? 私に呼び掛けたではございませんか。ええと、何でしたか…『ひこーきに群がっているアラガミを追い払ってくれ』? 当時は流石に遠かった為に、上手く聞き取れませんでしたが」

 

 

 

 

 

 

 

 

 …アリサとレアに再会する直前のアレか!? と言うか、まさかあの時の流れ星がタカネか!?

 

 

「恐らくはそうでしょう。あの時、他にこの星に入ってくる大きな石はありませんでしたし」

 

 

 …あれ、と言う事はノヴァの体は? 月の緑化は? と言うか、何で人の姿になってんの?

 

 

「以前の体は、まだ月に残っています。大急ぎでやってきたもので、折りたたんでしまっておく暇もなく…あれを目にされると、少々恥ずかしいですね」

 

 

 そんな、脱ぎ散らかした服やら下着やら見られてる訳じゃないんだから。いや、感覚的にはそういう物なのか?

 

 

「体が人型になっているのは、あなた様に合わせただけです。月では重力や空気を調整する必要もありましたし、何よりサイズと構造が違い過ぎてあなた様と語り合う事すら難しかったですから。極力人に似せてみました。……今の私は、人型のアラガミ…何と言いましたか…シオ? 彼女に近いと思えばいいでしょう」

 

 

 そんな事まで出来るのか…。いや、ゲーム無印のエンディングでは確か、シオの意識がノヴァの体に移ったんだよな。体を自前で作り出して、それと逆の事をして切り離したのか。

 

 

「まぁ、呼ばれて頼まれはしたものの、位置調整に失敗し、あなた様の力になれなかったと言う失態を晒しましたが…また、あなた様の傍に侍らせていただきます」

 

 

 ……それだけ、か?

 

 

「それだけとは?」

 

 

 こう…何か目的があるとか。アイドルになって何をしたいとか、ないの?

 

 

「特には考えておりませんね。アイドルになったのも、落下して機能不全を起こし、動けなかった私を拾って世話してくださったプロデューサーへの恩返しの為です。まだ恩を返せたとは言えないので、このまま続けさせてほしいとは思いますが」

 

 

 それは別に構わない。と言うか、大気圏突入して機能不全で済んだのか…。

 

 

「あなた様の真似事をしただけです。あの赤と金が混じった力は完全には再現できず、体にそこそこの損傷は受けましたが…即興でやったにしては、上手くできたかと。…目的らしい目的と言えば、またあなた様の傍に侍る事だけです。物心ついてより、常に共にあったお方です。離れたくないと思う事に、おかしな事などないでしょう?」

 

 

 不完全とは言え、ブラッドレイジまで再現したのか…。しかも、その言い方だと自分の意思で?

 そもそも、俺から呼びかけられた直後にその体を形成して、月から地球まですっ飛んでくるとか、とんでもねぇな。

 

 

「以前の体なら、そう難しい事ではありませんでしたよ。それが出来るだけのスペックは、充分にありました。何せ、あなた様以外には何もない場所です。己の肉体と向き合う時間は呆れる程にありました。……こんな事を思うのも、こちら側の事を知ったからですが。この星は知らない事や楽しい事が多いですね。かつて私は、この星を丸呑みにしようとしたらしいですが…もしもそうやっていたら、さぞや退屈な日々を送っていた事でしょう」

 

 

 まー自分以外を何もかも溶かしてしまう訳だからな。…月での生活は、退屈だったか?

 

 

「いいえ。あなた様が居ましたもの。たった一人であったなら、退屈と言う概念すら知らなかったでしょうが、あなた様の行動を見ているだけで、私は楽しかったのだと思います」

 

 

 思います、か…。まぁ無理もないか。他者との触れ合い全く無かったからな。俺自身、ノヴァに話しかけるなんぞ、孤独に耐えかねて独り言を言う時くらいだった。と言うか、ノヴァにそんな意識があるとさえ思っていなかった。

 …と言うか、俺が居なくなって狼狽え悲しんだって言ってたなぁ。前ループでは、呼びかける事もなかったらずーっとそのままだったのか。なんか罪悪感。

 

 

「あなた様の元へやってくるだけの旅路のつもりでしたが、興味深い事を幾つも見つけられた旅でした。特に、食事と性交には強い興味がありますね」

 

 

 アイドルが性交とか言っちゃダメッ!

 …いや別に、アイドルはう〇こしないなんて都市伝説を信じてる訳じゃありませんが。むしろ偶像の生々しい姿を曝け出させるのは楽しそうですが。

 

 と言うか、何故にその二つ。

 

 

「あなた様が、何より執着してる事だからですが? 月で度々、アレコレが食べたいとか……ありさとれあ、でしたか? と抱き合いたいと何度も口にしていたでしょうに。他にも色々ありましたが、特に印象に残っているのはその二つです。人の作る料理と言うのは興味深いですね。こちらに降りてきて、『らぁめん』なるものを初めて食べた時には、とてつもない衝撃をうけたものです。性交はまだ経験がありませんが」

 

 

 

 結局そこも俺のせいかよ。いや生まれて以来寄り添っていた相手が、ものすごーく執着していたものだと思えば、興味を持っても無理はないですけどね。

 と言うか、経験無いのか…。それだけ容姿が優れてるなら、選り取り見取りだろうに。

 

 

「相手が誰でもよいとは思っていませんよ、心外な。私は、あなたと交わりたいのです」

 

 

 ド直球!

 

 

「…と思っていましたが、最近は少々戸惑い気味でもあります。考えて見れば、私とあなた様の関係はどういったものなのでしょうか。所謂、幼馴染のお兄さん? それとも育ての父? 人の倫理など、私にとっては人に混じって揉め事を起こさない心得以上のものではありませんが、疑問には思います」

 

 

 それは…どうなんだろうなぁ。育ての親なら支部長になるだろうし。産みの親…も、やっぱ支部長?

 と言う事は、仮にタカネと結婚したら、あの人の義息子になって、ソーマの義兄弟になるのか?

 

 

「あの特異点とは、従妹のようなものでしょうね」

 

 

 シオの事か? …そういや、直接話した事は無いのか。

 

 

「ふふふ…。さて、そろそろお腹も空きました。一緒に戻りましょうか。こういう場合、手を繋いで歩くのでしたか?」

 

 

 アイドルが公衆の面前でそれをやるのってヤバくね? まぁいいけど…ノヴァが飯って言うと、やっぱりアラガミ?

 

 

「まさか。あれは私にとって、言わば離乳食のようなものです。好んで食べたいとは思いません。数々の美味に巡り合った今なら猶更です。さぁ、行きましょう。極東地区のらぁめんは、他所では採れない天然素材を使っていると聞きました。あなた様と食べるのを、楽しみにしていたのです」

 

 

 はいはい、お付き合いしますよ。…物騒な展開も覚悟してたのにな。

 まさかノヴァと並んで飯食う日が来るとは…。

 

 

「物騒な展開がお望みなら、私がやってあげましょうか?」

 

「おや、どちら様ですか?」

 

 

 その物騒なエモノを下ろしてくださいアリサさん。と言うか何処から見てたんだ…。まさか、俺ともあろう者が全く気付かなかったとは…。

 そういや、このループのアリサって、カノン共々俺が直々に隠密行動を叩き込んでるんだよな。成長したもんだ。

 

 

「ママとシエルに連絡がつかず、貴方が何処かに出掛けていると聞いてピンときました。私達を置いて、何か妙な事に首を突っ込むか、浮気しに行くものだと考えたのですが…両方の意味でドンピシャだったようですね。全く出歩くなとは言いませんが、何故わざわざ一人で来たのです。物騒な展開が予測できるのなら、それこそ私でも誰でもいいから戦力を連れていくべきじゃないですか。意味もなく自分を危険に晒すような悪癖があるなら、本気で監禁しますよ」

 

 

 御尤も…。

 あー。それで、どこまで聞いてた?

 

 

「単なる浮気なら、後ろから内臓破壊弾で尻穴を狙撃しようと思っていたのですが。…この方の正体までは聞きました。ノヴァ、ですか…。本当であれば、神機で噛みついたらバーストモードになるんでしょうかね」

 

 

 信じがたいと言わんばかりに、明らかに疑っている目付きのアリサ。まぁ、無理もないよな。

 一見すると、タカネはちょっと珍しいくらいの美女にしか見えない。シオという人型アラガミの前例があるものの、普通ならタチの悪い冗談と思われて終わりだろう。

 俺だって、近くに来る事で感じられるようになった、ノヴァと俺の繋がりの感覚がなければ、まず気付かなかった。

 

 

 

「貴方がアリサ様ですか。よくこの方が、会いたいと零しておりました。どのような方なのか、私も会いたいと思っていたのですが……あまり友好的な雰囲気ではありませんね?」

 

「普通は、現地妻と本妻がにこやかな関係になるなど、まずあり得ないのですよ」

 

「あら、そうでしたか。ですが、それは人の価値観です。私にとってはそのような固定観念などありません。何分、現地妻という言葉自体、知ってから一月も経っていませんし、寄り添った年月なら私の方が長いもので」

 

 

 …これは…微妙に修羅場ってる、のかな…。普通は修羅場、ほぼ確実に刃傷沙汰な場面ではあるけど。アリサは微妙にケンカ腰で、タカネはいっそ歯牙にもかけてない尊大な態度と言えなくもない。

 しかし、タカネに寄り添ってたと言っても、ノヴァとしての意識がある事は全然知らなかったんだよな…。

 

 アリサの神機を握る手に、微妙に力が入ったのが分かる。…ヤバい。

 いかんな、このまま戦闘になったらどうなるか分からん。タカネの戦闘力は未知数だ。少なくとも、ブラッドレイジモドキで大気圏突入して、機能不全で済ませるだけの耐久力はある。運動神経も、オーディションを思い返すとかなり高い…が、ゴッドイーターの領域にまで至るかは分からない。

 が、どっちが勝つとか負けるとか関係なしに、社会的に死ぬ。タカネはアイドルとしてのスキャンダルで、アリサはゴッドイーターが一般人に暴力をふるったという刑罰で。

 

 よし、強引に止める。

 アリサ。

 

 

「何か、んっ!」

 

 

 俺の背中を取ったままだったアリサの頭に手を伸ばして固定。強引に口付け、舌を捻じ込んだ。

 反射的に舌を絡め返してくるアリサ。最初は「そんな場合じゃない」と突き離そうとしたようだが、触れ合った時点でアリサの負けだ。ループの中で出会った女の中で、最も多く抱いたと言っても過言ではないアリサである。何処をどうすれば陥落させられるか、文字通り体が覚えている。

 あっという間に力が抜け、大人しくなって神機を取り落し、体を預けてくる。

 一瞬だけ、チラリとタカネに目をやったのに気が付いた。…見せ付けよう、とでも思ったんだろうか。

 

 

「………あらあら」

 

 

 目の前で濃厚なキスシーンを展開されたタカネはと言うと、少なくとも表面上は落ち着いたまま、興味深げに俺達を見つめている。

 淫靡な舌と唾液の音を一頻り響かせ、アリサが小さく痙攣してから体を離す。糸を引いた唾液が、俺とアリサの服にシミを作った。

 

 

「…ふぅ、落ち着きました」

 

 

 明らかに別の意味で滾っているアリサだが、とりあえず戦意は無くなったようだ。

 「ノヴァはこんな事はした事ないだろう」とでも言うような、優越感が滲んでいる。…確かにやった事なかったけど、今からなら出来るんだよなぁ。

 

 

「とても興味深いものを見せていただきました。これが人の男女の交わりというものですか」

 

「この程度なんて序の口です。私達は、もっともっと深くてドロドロしてアブノーマルな領域でも、強く結びついているんですから」

 

 

 それは勝ち誇る事なのか、アリサ。…勝ち誇るんだろうなぁ、この状況だと。

 

 

「では、早速私も…と言いたい所ですが、そろそろお腹が空きました。空腹のまま情事に及ぶのも雅に欠けます。お昼にご一緒しませんか?」

 

「……本当に敵意は無いみたいですね…。分かりました。どの道、この人と二人にしておくのも危険すぎます。……それにしても、3年前の巨体とは、随分姿が変わりましたね」

 

「月で連れ添う間に、繋がりを通じてこの方の好みを色々読み取りましたので。それに沿って体を作り上げました」

 

「つまり、容姿的には超が付く程好みのタイプ…と。やはり危険…」

 

 

 それはどういう意味での危険なんですかね。

 …ところでタカネ。ひょっとして、霊力とか血の力を使った黒蛛病治療って、もう出来る?

 

 

「治療はともかく、葦原ユノ同様に病状を遅らせる事なら出来るかと。と言うより、あなた様が出来る事でしたら、大体は同じ事ができますよ。無論、習熟度に大きな差があるので、何もかも同じように…とは行きませんが」

 

 

 マジかよ…。ブラッドレイジモドキまで発動させたらしいから、まさかと思ったが。

 

 

「特に、黒蛛病の病原を取り除いたあの手は、何度やっても上手く再現できません。どうにも、必要な『何か』が…恐らくは補助を担う道具が欠けているのだと思うのですが」 

 

 

 大当たり。そんな事まで分かるのか…。侮れん。本当に3歳児か。

 

 

「この体は、爪先から髪の毛まで、私の意思で完全に制御できますので。それと、月に飛び立つ前にも数年は育てられていましたので、実際は7歳程度ではないでしょうか」

 

「支部長なら実年齢を把握しているかもしれませんが、聞く気にはなれませんね。ノヴァが戻ってきていると知ったら、何か企みそうですし。…ところで、黒蛛病の治療について助力は…」

 

「気が進みませんね」

 

「何故!?」

 

「何故も何も、私はノヴァ、アラガミです。見ず知らずのヒトを助ける理由などありません。こうしてヒトの中に紛れているので合わせていますが、ヒトは本来私の食料ですよ。人に限らず、この星の無機物有機物全てですが」

 

 

 その姿で言われるとカニバリズム感が半端ないな。ヒトの側に付くハンターとしては、その言葉には怒るべきだろうか。それとも、モンスターが人を食料と見做すのは当たり前と考えるべきだろうか。

 …人間、喰いたいのか?

 

 

「いえ別に。それよりもらぁめんが食べたいです」

 

 

 …成程。タカネにとっては、一部のネームド個体を除いて、人間は犬猫みたいなもんなのか。

 特に害する理由は無いが、労力をかけて助ける理由も無い。気が向いたら、或いは理由があれば助けもするし、害も成す。

 

 

「ええ、その認識でよいかと。尤も、大勢のヒトと接するのはこれが初めてなので、今後変化していくかもしれませんが」

 

「………つまり、助ける理由があれば、治療…いえ、病状緩和に手を貸してくれる訳ですね?」

 

「そうですね。私としても、黒蛛病が広まり、特異点が産まれるのは望ましくありません。折角この星を訪れて愉しんでいると言うのに、何もかも食い尽されて滅茶苦茶になるのは業腹です。何より、本来であれば私が食べていた筈の星を、他人に掻っ攫われて愉快な筈もない」

 

 

 オメー無茶苦茶理不尽な事言ってないか? そりゃ、星を食べさせずに月まで拉致ったのは俺だけど。

 

 

「さて、人の道理など私には。それに、黒蛛病を通じて、私の存在を感じ取る者も居るようです。殆どは、アイドルとしての私が気になっているだけ…と考えているようですが、人とは中々に侮れません。私の正体に勘付く者も出るでしょう」

 

 

 …それ、もう多分一人勘付いてるわ。榊博士ェ…。『地に落ちた星は、皆が忘れたんじゃない。ただ知らないだけさ』なんて言ってたが、そりゃノヴァが月から落っこちてきてるなんて誰が知ってるってんだよ。と言うか、ほんの数分黒蛛病に感染しただけなのに、どうやって気付いたんだ。

 

 

「貴方の都合はともかくとして、この人の為になるなら協力に否はないでしょう。現在、黒蛛病が根本から治療できる唯一の人です。治療の為にあっちこっちから引っ張りだこになってみなさい。私達との時間なんて、あっという間に削り取られてしまいますよ」

 

「そういう事なら、お手伝いしましょう。とは言え、先程も申し上げました通り、根本的な治療は出来ませんが」

 

 

 鬼の手の具現化に使うカラクリ石は、この世界じゃ手に入りそうにないしなぁ…。とりあえず、病状緩和だけでも充分だわ。少なくとも、一人成果が出てるってだけで、支部長や榊博士も大分動きやすくなるだろう。

 まぁ、要するに今まで以上にアイドル活動を頑張ってくれって事だが。

 

 

「ええ、承りました。…それはそれとして、今日はスラムの辺りにある店に行こうと思うのですが」

 

「スラム? 治安は改善されていますが、貴方のようなお嬢様丸出しの恰好で行く場所ではないですよ。襲われる可能性もあります。…まぁ、ゴッドイーターの私が護衛についている、と思わせれば、そうそう無茶な事はしないと思いますが」

 

 

 と言うか、何でわざわざそんな所に。飯ってのは落ち着いて食ってくそだろうに。

 

 

「それは異論ありませんが、未知なる味を探求してこそでもあります。噂では、あの辺りには腕の良い料理人の卵が居るそうなのです。まだ未熟とは言え、これは是非とも食べに行かねば」

 

 

 スラム……料理人の卵…。…その情報、誰から聞いた?

 

 

「オーディションの時に少し話した参加者ですが。確か……そう、彼女のステージでは『どぅぶちぇどぅぶちぇどぅぶちぇどぅぶちぇ』と繰り返されていたような」

 

 

 ドゥーチェだろ。カタカナ苦手なのかお前は…。

 つか、あの子からの情報なら、まず間違いなくペパロニ嬢ちゃんだろうな。確かに、いい腕してたが…半分はアンチョビ嬢ちゃんが、宣伝目的で話したんだろう。

 

 

 

 でもあの子、見た目もそうだがメニューもイタリアのシェフっぽかったよなぁ。ラーメンなんて出来るのか? いや似たような物なら出来るだろうけど。

 

 

 

 




追記
ロミオのモトカノは、水瀬伊織のイメージでお送りしています。
ただし、ロミオと揉めた事によって傷つき、アイドルになろうとはしていません。
怨嗟の声は存分にどうぞ。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定
▲ページの一番上に飛ぶ  X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。