※この作品はR-18です。

狩りゲー世界転生輪   作:時守 暦

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やってらんねぇ…
自分が悪いとは言え、仕事で失敗続き。
本当に迷惑なのは失敗の余波を被る人達だとは言え、バックレたくなってきた。

そんな事したら、北斗が如くもネットも執筆も出来なくなるので耐えますが。
こーいう時、慰めてくれる彼女とか嫁さんとか羨ましくなるわぁ。


第335話

神逝月

 

 

 アイドル達の霊力修行、本格的に開始。……なんかうさん臭さが半端ないな。AVの企画モノに通じる何かを感じる。

 しかしやってる方は至って真面目である。

 

 今回は、講師のサポートとしてジュリウスが来ている。…イケメンに注目が集まっているが、気にするまい。それだけちゃんと話を聞いてくれるからね。

 

 

 

 とは言え、流石に霊力もとい血の力といきなり言われてもピンとこないようなので、まずは実物に触らせてみる。

 彼女達も、オーディションの後に治療した場面は見ているので、おっかなびっくり具現化した鬼の手に触れていた。中には警戒心がないのかってレベルで突っ込んでいく子も居たが。

 

 その途中、アイドル達からの質問。

 

 

「せんせー、この鬼の手って、具体的にどんな事ができるんですか? 黒蛛病の治療以外に、あの時はアラガミを抑えつけてませんでしたっけ」

 

 

 色々できるよ。アラガミを殴り飛ばしたり握り潰したり、何処かに引っ掛けてそこに移動したり。

 効率が悪いからやった事ないけど、触れた場所の怪我を治したりもできるんじゃないかな。

 

 

「…なんていうか、節操無さすぎない?」

 

 

 仕方ないだろ、できるんだから。

 と言うより、そういうコレ自体が俺の力の集大成みたいなものなんだ。

 

 ブラッドでも使っている血の力だが、種類は色々ある。攻撃、分析、バフ、デバフ、行動制限…。俺はそれを一通り使える訳だけど、それらを一つの形に纏めたのが鬼の手って訳。

 鬼の手が便利すぎると言うよりは、色々機能を混ぜたら鬼の手の形に落ち着いたって事だな。

 

 と言う訳なんで、最初から黒蛛病を完治できる鬼の手を目指しても仕方ない。地味でつまらんと思うが、段階を踏んでトップアイドル…じゃなかった、血の力の使い手になっていってくれ。

 

 

「この手はともかくとして…力を使えるようになるのに、どれくらいかかると思う? 聞いた話だと、専門家部隊のブラッドでも、まだ使えない人が居るみたいだけど」

 

 

 本人の資質とやる気次第、としか言えないな。ブラッドで使えてるのは、3年以上前から訓練しているここのジュリウスと、俺が鍛えたロミオ、それからつい先日使えるようになったギルとシエル。何か月も訓練して使えるようになった例と、心機一転した事が切っ掛けで、一か月もせずに使えるようになった例がある。極端すぎて何とも言えん。

 

 

「深淵の魔導に必ずや至るであろう!」

 

 

 極東弁でおk。うん、頑張ってくれ。

 

 

「…質疑応答はそこまででいいか? では、まずは個々の適正を調査する。これは血の力に目覚めやすいかという意味ではなく、仮に目覚めた場合どのような能力になると考えられるか…を調べるものだ。諸君らの後輩達の助けにもなるデータとなるので、進んで協力してほしい」

 

 

 そう言うと同時に、部屋の片隅に据え付けられていた、なんとなくSFチックな……と言うか、フライアでよく見かけるような、大き目の機材を指さした。メーターが幾つもあるが、どれが何を示しているのかよく分からない。

 …ジュリウス、いつの間にそんな物持ってきたん?

 

 

「先日、ラケル博士からな。シエルの治療をした頃から、簡易的な物だが実験も兼ねて作っていたらしい」

 

 

 …同じ事が出来そうな奴を、前もって見つける為…かな? 下手すると、アイドル達にも牙を剥く可能性があるか…?

 ふむ…。

 

 

 …。よし、タカネ!

 

 

「はい、あなた様。お呼びですか?」

 

 

 まずタカネから検査してくれ。一応言っておくが、依怙贔屓じゃないぞ。

 既に血の力を身に着けたと豪語する実力を見せてくれ。

 

 

「ほう…?」

 

 

 感心したような、信じてないようなジュリウスの声。

 それと同時に、アイドル達にもざわめきが広がった。そりゃそうだよな。実際のレッスンは、まだ一度も受けてないんだ。なのにもう習得しました、なんて言われても、信じられないのは無理はない。

 特にタカネは色々な意味で注目を浴びているから、その分反発や嫉妬も集まりやすい。

 

 しかし当の本人は気負った様子もなく進み出て、小さく深呼吸し…赤い光を体に宿らせる。どよめくアイドル達。ジュリウスも目を見開いた。

 …一見すると血の力そのものだが…どっちかと言うと、霊力? いや、根っこは同じ物だろうから、あえて区別する必要も無いか。

 

 

「では、この状態でこの機械の前に立てばよいのですか?」

 

「いや、そのまま何でもいいから…いや、短めの曲を歌ってくれ」

 

 

 カエルの歌でもいいの?

 

 

「ああ、構わない。歌声に力が宿っているのかを調べなければならない」

 

「伴奏は必要ありませんわね。それでは……か・え・る・の・う・た・が(略)」

 

 

 ふむ…子供向けの歌でも、歌い手次第で随分変わるもんだなぁ。それはともかく確かに力は宿っているようだ。

 流石はノヴァと言うべきか…考えてみれば、月に居る間は俺が霊力を使う所を何度も見てるんだよな。それで自然と覚えたんだろうか。…ひょっとして、俺が生きていけるような環境を整えていたのも、その応用?

 

 

「……いかがでしょうか」

 

「驚いたな…。確かに力が宿っている。とは言え、そのまま黒蛛病の治療に使える訳ではなさそうだ。今までの例が少なすぎて推測でしかないが……」

 

 

 葦原ユノの歌も、この装置で何ぞ計測したのか?

 

 

「ああ。血の力とは違うようが、彼女の歌にも何かしらの力が宿っている。…いや、歌う事によって、何かが生み出されていると言った方が正しいか。何にせよ、これは大きな一歩になる」

 

 

 静かに興奮しながら、何やら記録を取り続けるジュリウス。

 ふむ…ユノの歌に黒蛛病緩和の効果があるのは、特異点としての素質故だと思っていたが……まぁ、彼女にしか素質が無い訳じゃないからな。目の前のジュリウスにだって素質はある。

 こいつら程じゃないが、今いるアイドル達にも、大なり小なり素質はあるだろう。

 

 つまりは……合同ライブか。今度提案してみよう。そもそもからして、今はここに居る彼女達の素質の測定だ。……ああ、ひょっとしてこの測定機って、特異点候補としての素質探知機なのかな。

 

 ともあれ、ジュリウスの指揮により、検査は進む。結果は……まぁ、当然ながらドングリの背比べとしか言いようがない。

 当然だわな。訓練も何もしてない状態なんだから。

 

 俺から見ても、特に目を引く結果は見られなかった。…いや機械のメーターの意味がサッパリ分からないから、本人を見た印象でって事ね。

 

 

「…よし。測定は終わった。このデータは後で纏めて整理・考察する。結果については、気になる者には直接伝えよう。本日の訓練は…」

 

 

 ジュリウスが俺に目を移す。はいはい、俺の担当って事ね。

 んじゃ、まずはこの力の感触を覚えてもらいます。訓練するにしても、この力を感知できなきゃ上手く行ってるかどうかも分からないだろう。

 

 具体的には、背後からプレッシャーをかけ続ける。暫くして慣れてきたら、圧力のオンオフを加えていく。

 そういう訳で、今から始めます。全員、その場で座って目を閉じろ。

 

 

「正座ですか?」

 

 

 正座でも胡坐でも三角座りでもなんでもいいよ。

 長時間じっとしていても負担が無い姿勢がいい。別に、ピクリとも動くなとも言わん。

 余計な事を考えないのが望ましいが、別に昼飯の事を考えてようが、次のライブの事を考えてようが構わん。ただ、背後からくる感覚には注意を払うように。

 

 他に質問は? …無いな? よし始める。

 

 

 

 

 

 

 

 …はい、そういう訳で、アイドル達の後ろに立っています。

 …なんつぅか、変な気分だな…。教室の後ろで、一人だけ授業参観やってるみたいだ。

 いくら美人揃いだって言っても、見えるのが後頭部くらいじゃなぁ…。あ、うなじ……いかんいかん、邪念は後回しだ。

 

 

 霊力を高め、背後からプレッシャーをかける。イメージ的に言えば、タマフリの追駆や連昇の狙いを定めるようなイメージか。

 何人かの背筋がビクリと震えたのが見えた。うむ、感度がいいな。もうちょっとパワーアップ…最前列に居る子達には、より強くプレッシャーを与えるようなイメージで。

 

 

(…器用な事をするものだ)

 

 

 ジュリウス? どうかしたか。

 

 

(いや、俺もお前の力の使い方を覚えようと思ってな。…それはいいんだが、プレッシャーが強すぎないか? 俺は慣れているが、一般人には…)

 

 

 どうだろうな。様子を見ながら強弱を調節してはいるが…この子達はアイドルだろ? 精神的なタフさなら、一般人のはるか上を行くと思うんだが。

 まぁ、一口にプレッシャーって言っても、多くの耳目を集める事によるプレッシャーと、アラガミと対峙するようなプレッシャーは別物だと思うが。

 …このやり方、言ってみりゃ闘気を当てて威圧してるようなもんだしなぁ。

 

 

(むぅ…。今のところ、顔色が少々悪くなっている子がいる程度か…。見た所、恐慌をきたす程ではないが)

 

 

 慣れなきゃ話にならんが…ま、初日だしな。圧力の強さはこのくらいにしておく。

 

 

 現在、何かしらの違和感を感じている者、手を上げてくれ。

 ……よし、全員。では、一旦圧力を無くす。

 

 今度はランダムに圧力をかけていくから、それらしい気配を感じたり、「あ、今何か受けてるな」って思ったら手を上げてくれ。

 

 

 

 

 

    間。

 

 

 

 

 

 はい、今日の訓練は終了。初日にしてはいい方だな。

 

 

「だぁ~……疲れたぁ…」

 

 

 好きな体勢でいいって言ったら、迷わず寝転んだ君は、いつも疲れてそうだけどね。

 

 

「いや…寝転がってられるだけなら大歓迎なんだけど、確かになんかこう…得体の知れないナニカが近くに居るって言うのが分かってさぁ…。あれじゃ寝転がってるんじゃなくて、猛獣の近くで狸寝入りしているようなもんだよ」

 

 

 えらい言われ様だ。しかし力の感触と言うか、気配自体は感じ取れた…か。

 そっちの何となく霊感が強そうな片目少女、君は?

 

 

「えっと…うん、何か向けられてるなって言うのは、よくわかった…。オバケとか見た時と、ちょっと同じ感じ…」

 

 

 幽霊ねぇ…。ま、確かに思念の産物と言う意味では似通ってるか。

 血の力の矛先を向けてた時、君が一際敏感にそれを感じ取ってたみたいだ。

 

 …では熊本弁の君は?

 

 

「我が力、未だ深淵の底より出でる事なし」

 

 

 いやいきなり血の力を覚えようって方が無理だから。頑張ってるのは分かるけど。

 …ちなみに、君は特に何も力を向けてない時も、ちょくちょく手を上げてたぞ。まずは錯覚と実際の圧力の違いを分かるようにならんとな。

 

 

「えぅ」

 

 

 まー頑張りな。イメージが大事だから。君、そーゆーの好きそうだし。

 

 

「我が邪王真眼、必ずや使いこなしてみせようぞ!」

 

 

 

 ……ちょっと心が痛い。一応言っておくと、「絶対出来る!」と意気込むより、「意識しなくても出来て当然」と思ってた方がやりやすい場合が多いみたいだぞ。HBの鉛筆をバキッと圧し折るようにだ。自分に合ったやり方を見つけるのが大前提だが。

 

 

「我がグルよ…!」

 

 

 …なんか導師の称号を貰ってしまったようだった。

 

 後は…そうだな、アンチョビ。お前は逆に理性で考えすぎだ。

 体が察知していても、周囲の反応が気になって手を上げられなかった事があるだろう。

 

 

「う…はい」

 

 

 感覚を覚えさせる為のものなんだから、頭で察知できても意味が無いよ。まずは体の反応を信じる事だ。

 

 

 さて、今日のところはこれくらいにしておきますか。

 目を閉じて座ってるだけで退屈だったかもしれんが、これもレッスンの一つと割り切ってほしい。

 以上、ちゃんと部屋に戻って寝るように!

 

 

 

 

 

 

 

 

「…退屈とはどの口で言うのやら」

 

 

 見てる分には退屈だったろ。

 

 

「そうでもないぞ。…ま、血の力を明確に察知できるから、こんな事を言えるんだろうが。それに、彼女達はかなり消耗しているな」

 

 

 未知の感覚に晒され続けた訳だからな。魂に直接負荷をかけられたようなもの…。魂なんて言っても分かりづらいから、単純に炎天下の太陽や、極寒の吹雪の中に放り込まれていたようなもんかな。

 肉体的には動いてなくても、精神的に疲弊するのも当然だわ。

 

 

「それにしても、思ったよりもスムーズに進むな。ロミオの時は、血の力を感じ取るだけでもかなりの時間がかかったと聞いたが。……俺か? 俺は特に意識する事もなく、いつの間にか自然と感知できるようになっていた。その後、使いこなすのに時間がかかったな」

 

 

 前例やノウハウがあるか、手探りで考察しながら進めていたかの違いじゃね。

 俺もロミオを鍛えた後から、色々と試したからな。

 

 

「…他にも血の力を教えた相手が居ると?」

 

 

 いや、居ないよ(この世には)。

 それはそれとして、次のレッスンどうするかな。全員が力を完治できるようになるまで待ってたら、どれだけ時間がかかるか…。ある程度、進行度合いに分けてレッスンする必要があるか。

 

 

「考えているところ悪いが、次の作業はもう決まっている。タカネ、だったか…。彼女の歌に効果があるかの実践テストだ」

 

 

 ああ、成程。

 

 

「成果が出れば、恐ろしく忙しくなるだろう。彼女だけでなく、お前もな。ミッションに出られる時間を確保できるかすら怪しい」

 

 

 ……俺も? 何で? いや、確かに血の力獲得の為のレッスンが重要になってくるというのは分かるけど。

 

 

「何でもなにも…黒蛛病は世界中で猛威を奮っているんだぞ。最近では赤い雨を観測し、事前に対処できるようになったとはいえ、一度降れば数人以上は感染者が出る。特にゴッドイーターは、雨を凌げる遮蔽物のないミッション中に赤い雨に遭遇する事も多いしな。…そして、ゴッドイーターの有無は、その土地、その国の環境維持に大きく関わる」

 

 

 それは分かるが…。ゴッドイーターが居なくなったら、アラガミにやられっぱなしで、衣食住の確保すら難しくなるだろうな。それが?

 

 

「分からないか? 黒蛛病でリタイアするしかなかったゴッドイーターを、治療できる可能性があるんだぞ。ゴッドイーターだけではない。多くの黒蛛病で苦しむ人達を、貴重な薬も使わず、歌という消耗の無い…ああ、ギャラとかは必要だが…行為で治療できるんだ。…各国が欲しがってもおかしくなどないだろう」

 

 

 各国が………それは…何か? 同じように血の力を習得させる為、あちこちから人が送り込まれてくるって事か?

 

 

「多分そうなる。…気をつけろよ。力を真っ当に習得しようとするならいいが、拉致、人質、ハニートラップ…人の悪意は際限がない。特に、お前は最後のやつに弱そうだしな」

 

 

 逆に寝返らせるから大丈夫だよ。それ以前に、アリサとレアとシエルの防壁を抜けてこられるヤツなんて、そうそういないだろう。

 

 

「………ほう。シエルに、何かしたと?」

 

 

 あ、ヤベ…。

 

 

 

 

 

 

 

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