ふーむ、進撃の巨人の外伝書きたいなぁ。
でもトロスト区とか壁とか年代とか、もう殆ど覚えてないしなぁ。
北斗は……もう一回外伝書こうかな…。
神戻月
新しい月に突入。と同時に、少々厄介な事になったかもしれない。
タカネがニュースの一面を飾った。アイドルとして大々的に宣伝されるのは珍しくないが、今度のソレは規模が違う。世界中で宣伝されているようだ。
第二の葦原ユノ。黒蛛病の病状を弱める歌を歌う、二人目の歌姫として紹介されたのだ。
もう大騒ぎよ。俺の事が発表された時もかなりの騒ぎになった(そして今も続いている)が、あの時は半信半疑、藁だと思っていても縋るしかない人達からの反応が大きかったらしい。
しかし、タカネと言う実績が現れた。伝授された血の力を使って歌い(元々使えたけど、対外的にそういう話になっている)、効果を実証する人間(実はアラガミだけど)。
懐疑的だった国、様子見を決め込んでいた国も乗り出してきたようだった。
まぁ、それはいいんだ。
とりあえず真っ当な手段で治療法を得ようとしているようだから。阿呆な事を企んだ国もあったようだが、そういう連中は極東リアリティショックで、あっという間に精神崩壊したようだし。……いや俺は何もしてないよ。ただ支部長が意味ありげな事言ってたんで、悪辣な事やったんだろうなぁとは思うけど。
問題は、タカネ以外のアイドル達だった。
血の力習得のヒントになるかもしれないと言う事で、タカネが患者の前で歌う所を見学していた彼女達。確かに、何かしら感じ入るモノはあったようだ。それは歌の技術であったり、そこに籠った力であったり、単純に歌に感動したりと、色々あった訳だが……。
そのシーンを見ると言う事は、患者達が苦しんでいる姿も同時に見ると言う事でね?
…そう見ちまったんだよ。折悪しくも、赤い雨が近づいていたようでね…。だからこそ、症状の緩和が出来るタカネが呼ばれて歌ったんだけど。
苦痛に塗れて呻き声をあげる黒蛛病患者達。助けを求め、治療してくれと懇願する声。
さながら野戦病院のようなその有様は、地獄のような光景に見えただろう。
俺でさえ、やろうと思えばすぐ治せるのに、自分の都合の為に苦しませたままにしている…と思うと胃の辺りに重いモノが圧し掛かってくる。
思春期(一部、思春期にすら入ってない少女や、思春期を終えて〇年は経ってるだろって方もいるが)の少女達にとっては、どれ程衝撃的だったろう。
しかも、彼女達はこれらの治療に関わる立場にあるのだ。何も知らされずオーディションで集められ、血の力という怪し気な力を習得しろと命令され、知らない間に患者達の運命を押し付けられたようなものだ。
『自分達は、あの患者さん達の命に関わっている』。
患者達が苦しむ様子と、タカネの歌がそれを緩和する様子を見て、改めてその実感が沸いてしまったのだろう。
その衝撃と重圧たるや、如何ほどのものか…。
早く血の力を会得しないと、患者が苦しむ。或いは死ぬ。他人の命を、強制的に握らされている重圧。
………潰れなければいいんだが…。
むぅ、メンタルケアって誰に頼めばいいんだ? タケウチ社長か?
それと、もう一人メンタルケアが必要になりそうなのが出てきた。ナナだ。
お察しの通り、ゲームシナリオのように、最近不調が続いている。体の調子をよく見てみると、霊力…血の力が不自然に活性化しているのが分かる。目覚め…と言うより暴走の前兆だ。
さて、どう対処したものか。確かに血の力の暴走は厄介だが、逆に言ってしまえばそれだけだ。
この時期のアラガミ達など、今の俺なら束になってきても無双ゲーのように蹴散らせる。…俺なら、ね。でも、ナナの力の暴走によって影響を受けるアラガミは非常に広範囲に及ぶ。
周辺一帯のアラガミが一度に暴れ出せば、俺一人では確実に対処が間に合わない。鬼疾風で移動したとしても、手の届かない場所が絶対に出る。……極東のゴッドイーター達がそれに対処しきれないとは思わない。何だかんだで粒揃いだもんな。
でも被害は絶対に出る。完全に0に出来るとは思えない。だが、それはいつもの事だ。極東では特に。
問題は、それをナナが自分の責任だと思い込むんじゃないかって事。ある意味間違っていないのがタチが悪い。
精神的な重圧、自分を追い込むような否定の仕方は、異能にも影響が出る。ナナがもし「自分なんか死んでしまえ」なんて本気で思いだしたら、それこそ自分を殺す為のアラガミを呼び寄せようとして大騒動になりかねん。
前回ループだと……やっぱりナナの能力が暴走して、集まって来たアラガミをどうにかした後、レアが母親代わりになったんだっけ。
とりあえず、レアには暫くナナと一緒にいるよう頼んでおこう。いつ能力が暴走するか分からないから、俺、アリサ、シエルの誰か一人は常に近くに居る必要もある。
そうそう、榊博士に頼んで、以前シオが匿われていた部屋を開けてもらう必要があるな。……あの落書きだらけの部屋、今でもそのままなんだろうか。
ゲームだと、シオとの思い出を残そうとするようにそのままだったと思うが……このループだと、地球に残ってソーマをロリコンにしようと画策してるしなぁ。…そういや、無事に押し倒されただろうか。どっちがどっちにとは言わんが。
それはともかく、久々に完全に一人の時間ができたんで、防壁の外を少し見回ってみた。
…随分と様変わりしたなぁ。いや、前回と同じなんだけども、寄植種とかがウロウロしてっからなぁ…。そして散髪(?)しに来たアラガミを捕獲・伐採し、脱兎の勢いで逃げる極東地区逸般人。…相変わらずのいい練度だ。
防壁の外にも、徐々に緑が広がりつつある。殆どがアラガミに喰われてるけど。
ナナの能力暴走が起きた時、襲撃を受けそうな辺りを集中的に見回ってみたが、やはり俺一人で対処は無理だ。対象となる部分が広すぎる。どれくらいゴッドイーターが必要になるかな…。
なんて考えながらウロウロしていたら、見覚えのある顔に遭遇した。
「あ、開祖様」
…確か、GKNGの幹部の……えーと、ミカ?
「それはお姉ちゃんだよー。私はリカ!」
悪い悪い。こんな所で何やってんだ? ドレッドパイクまで抱えて。…見た所、寄植種でもなさそうだが。
さっき向こうで散髪させてる人が居たが、その人と一緒か?
「ううん、一人だよ。虫君達と遊んでたの」
虫と遊ぶってお前…それアラガミじゃねーか。と言うか、虫と遊ぶっつーより虫で遊んでない? 逃げようとしてるみたいだけど。
いやそれよりも、いくら虫が好きでも相手はアラガミだぞ。いつ逆襲されるか分からないって認識はあるのか?
「大丈夫だよー。アラガミとだって仲良くなれるよ。今まで、この子達に襲われた事は一度も無いし」
それは前例があるし、俺もある意味その一人だから頭から否定はせんが、どっちにしろ保護者も無しに危険な遊びしてんじゃねぇよ…。子供にこんなこと言っても、反発されるだけなのは目に見えているけど…。
うーむ、なんだな、危険だから騎馬戦を辞めろとか、公園の遊具は撤去しろとか、こういう気持ちで言うんだろうか? ……違う気がする。
「ところで、開祖様はここで何してるの?」
ん~、散歩かね。アラガミを駆逐しとこうかと思ったんだけど、俺がその気になったら皆逃げるんだよなぁ…。気配を消して近付いて狩る事もできるけど、それは狩りじゃなくて暗殺だし。
…リカはいつも、一人でここに来るのか?
「ここに来る時は一人だよー。みんな、虫が苦手みたいなんだよね」
それ虫じゃなくてアラガミが苦手なんだろ。散髪屋達も、接触は最低限にしてすぐ逃げてるし。
「そうかも…。じゃあ、この子達を本部に連れて帰れば!」
アラガミを防壁内に連れ込むのは、テロと同じだから止めなさい。おねーちゃんにも迷惑がかかるよ」
と言うか、友達とか居ないの?
「はーい…。友達だったら沢山いるよ。ただ、ここに来れるのが私一人ってだけで。皆もご飯を食べる為にお仕事してるし、中々遊べないんだけどね。お姉ちゃんも、アナグラに行っちゃって、中々帰ってこれないし」
ああ、今はちょっと厄介な時期だからな…。だからこそ、一度帰してリフレッシュさせてやりたくもあるんだが。
さ、そろそろ帰ろう。雲行きが怪しくなってきた。普通の雨だと思うが、万が一赤い雨に変わったりしたら厄介な事になる。
「は~い。じゃ、レッ君またね~」
抱え込んでいたドレッドパイクのレッ君を下ろすリカ。心なしか早足に去っていくのは、リカに玩具にされたくないからか、俺に怯えているからか。
…そうだ、リカ。暫く防壁の外には出ないようにしろよ。退屈だったとしてもだ。
「? 何で?」
近い内に、ちょっと厄介な事が起きそうなんだ。下手をすると、レッ君にも襲われるかもしれない。
大丈夫、なんて思っちゃダメだぞ。人間だって、興奮すると何をしでかすか分からないんだ。…想像しにくければ、注射を怖がる犬がついつい引っ掻いちゃったと思えば…。
「レッ君が怖がってるなら、助けてあげないと!」
やだ…この子メッチャいい子…。でも面倒くせぇ…。何て言えば分かってくれるかな…いや別に意地でもレッ君との間を引き裂きたいって事じゃないんだが。
いくら開祖様なんて立場を持って居るとは言え、上から目線で一方的高圧的に命令すれば、反発を覚えるのは当たり前だ。それが趣味や友人を制限するものなら猶更。
しかし、面倒だからなんて理由で放置するのも…。
あの手この手を考えるも、結局納得はさせられなかった。言い聞かせられたのは、少しでもおかしいと思ったら、すぐに防壁内に避難する事だけ。
後は幸運とタイミングの良さを祈るだけか…………アカン、どう考えてもフラグだ。
…そうだ、ミカに頼んで説得してもらおう。お姉ちゃん大好きっ子みたいだし、大抵の事は言う事聞くだろ。
神戻月
若干名がアイドルを辞退した。…やはり、黒蛛病患者の運命がかかると言うプレッシャーに耐えきれなかったか。それとも、俺がやってる血の力のレッスンが胡散臭すぎて、ついていく気を無くしたかな?
逆に、発破をかけられたようにやる気を出した者も多数。後は…うん、何か知らんが、アンチョビを中心として集まって、グループを作っている人達も居た。
どうやら、弱気になったところを一喝され、そのまま傘下(?)に収まってしまったらしい。…やっぱカリスマ性があるなぁ。
血の力習得の進捗としては、俺が発する力を感知できるようになった者が増えてきた。次は、自分の中にある血の力を感じ取り、それを引っ張り出すんだが…ここが一番厄介なんだよなぁ。
現状じゃ、瞑想くらいしか方法が無い。ロミオが一番手古摺った段階でもある。その分、アレコレ試したデータは蓄積されているが…。
今回はシエルと一緒にレッスンをやっているが………言っちゃ悪いが、シエルが居てもあんまり意味ないな…。
血の力を使えはするが、それは俺が目覚めさせたものだし、人の機微に疎いのは相変わらずだから、レッスンのサポートにも向かない。レッスンを見学に来たタケウチ社長と、並んで突っ立っていただけになってしまった。
レアやナナに張り付いてもらってた方がよかったか?
「…ねえ、ちょっといい?」
ん? おおリン、なんか久しぶり…でもないか。レッスンで会ってるし、偶に一緒に飯食ってるし。どったの?
「家の繋がりで知り合った子から聞いたんだけど……簡単に血の力を目覚めさせる方法があるって、本当?」
は? いやそんな方法あったら、さっさと試してるよ。ブラッド隊だって、まだ覚醒してないヤツも居るくらいなんだぞ。
最近、オーディションの演説が切っ掛けで血の力も知られてきたし、よくある噂か、デタラメなキャッチセールスの類じゃないか。
黒蛛病患者達を直に見て焦りが出たのは仕方ないけど、そんな都合のいい話は無いって。
「それはそうなんだけど、その子の友達が言うには、実際にそれで使えるようになった子がいるんだって。具体的な方法は教えてくれなかったけど」
ほれみろ。本当にそんなやり方があるんだったら、そこまで話してるって。
「……失礼します」
ん、シエル? タケウチ社長は……黙ったままこっちを見てるな。
「リンさん…でしたか。あなたのその知り合いのお名前を教えていただけますか」
「……まぁ、名前くらいならいいけど……」
ロミオの彼女じゃねーか!
と言う事は、すぐに使えるようになった友達って…。
「友達……友達……何度口にしてもいい響きです…」
アカン、シエルがトリップしとる。
「その反応…ひょっとしなくても、あの子の友達って…」
いやいや、別人だって。ちゅーか全然関係ないって。そんな都合よく血の力を目覚めさせる方法なんてないってば。
ちょっとー、タケウチ社長、おたくのトコのアイドルに一言言ってやってくださいよー。アイドルはコツコツした事の積み重ねでしょ? 血の力だって同じですって。
「それは…分かりますが。ですが、もしもそのような方法があるのなら……是非とも教えていただきたいと。…黒蛛病患者達の様態は深刻です。それを見た彼女達が、焦るのも無理はないかと。…私としても、あの有様を見ては…」
社長まで…。いや、だから、無いモノは無いって…。
「……ちょっと待ってて。あの子に、血の力を覚えた友達の事を聞いて来る。多分、そっちのシエルって人と特徴が一致すると思うんだけど?」
ぬぐ…どうしよ…。友達関連の事に関してh、シエルが嘘を吐けるとはとても…。機密情報だから秘密にするってんならともかく、シエルの口から『彼女は友人ではありません』なんて否定の言葉を出そうものなら、確実に大ダメージだ。下手すると自殺するか、罪悪感と失意で感情が完全に封印されるレベル。
つーか、完全にその方法があると確信してしまっている。多分、さっきの俺の反応もそれに一役買ってしまっただろう。
「あ、ひょっとしてタカネさんもそれで!」
「いえ。信じるか信じないかはお任せしますが、私は以前からこの力は使えました。この方ほど上手くはありませんが」
「それって…つまり生まれつきの超能力者だったって事?」
「その認識でも構いません。あまり使った事はありません。アイドルとしての活動をするようになってからも、です」
「……何でもできる完璧超人みたいなのは、血の力は関係ない?」
「そのように名乗った事はありませんが、はい。私としては、血の力云々抜きで行為を行いたいと伝えたのですが、残念ながら却下されまして」
「行為? …………つまり、やっぱり血の力を覚えさせる特別な方法があって、その方法も知ってる!?」
ちょっ、タカネ余計なことを!
……あぁ、こっそり聞いてたアイドル達の不審と期待の視線が…。
「もう観念したらどうですか? どっちにしろ、タカネさんは聞かれたら答えると思いますよ。自分一人だけ黙ってれば機密秘密が守られる程、情報管理は甘くありません」
アリサ? なんでここに……と言うか、言えと? 俺の口から?
そもそも、それを言ったらまるで要求してるみたいじゃないか。アリサとしてはそれでいいのか?
「ミッションが終わったから、見物がてら来ただけです。
私の口から言ってもいいですが、結果は同じだと思いますがね。…要求云々については、複雑なものもありますが…黒蛛病治療の為の選択肢の一つではあります。要求しているのではないのだから、嫌ならばノーと言えばいいだけです。個人の意見としては…………ま、なんです。私とママのガードを抜けると思うなら、かかって来いってもんですね」
微妙に目の座っているアリサ。酒でも飲んでるのか…?
つーか、ここまで口にされると本気で誤魔化しようがないな…。ああ、軽蔑の視線は勘弁してほしいのに。
「…で、結局、もっといい方法があるけど黙ってたって事だね?」
いい方法とは言えないから黙ってたんだよ。
…タケウチ社長、ちょっとこっちへ。離れた所で聞き耳立てられると、話が物凄い勢いで拗れそうなんで、最初から話に参加してください。
「はい。…それで、その方法とは? 『いい方法とは言えない』との表現から察するに、もしや命の危機が?」
…そういう話にしておけばよかったか。
分かってますよ、もう誤魔化しませんよ諦めましたよ。
でも繰り返し言っとくけど、これを強要する気は一切ないからな!
「分かりました。……それでその方法とは?」
R-18。
18禁行為。
セックス。
「…は?」
顔を強張らせて威圧せんでいただきたい。いやそうされても仕方ない事を言ってるとは思うんだけど。
再三繰り返すが、これは強要じゃない。枕営業の要請でもない。
今やってる方法でも、時間はかかるが血の力に目覚める見込みは大いにある。むしろ、ちゃんとした使い手になろうと思ったら、そっちの方がいい。
…ほらー、やっぱ視線が絶対零度じゃないですかヤダー。
「ちょっと…シエルさん、あれ、本当?」
「友達…友……え? えぇと…はい。私もそれで使えるようになりました」
「っ…! そんな堂々と…」
「…? 何か問題でも?」
「問題も何も、えーっと…」
リンさんや、シエルはその辺の感覚がちょっズレてるんで、その論点だと話すだけ無駄だぞ。
言いたがらない理由、分かるだろ?
別に、患者を助ける事と自分の純潔を計りにかける訳じゃない。アンタらはアイドルであって医者じゃない。
仮に計りにかけて、後者を取ったとしても責められる筋合いは全く無い。俺だって、短時間に何度も完全治療を繰り返すと自分が黒蛛病になる(という設定だ)から、一日に一定数しか治療してない。
そもそも、血の力を使って歌えば、確かに病状を緩和できるだろうが、完治についてはまた話は別だ。
あんたらアイドルに期待されているのは、血の力じゃなく、患者達の心を強く動かす『感動』。血の力はあくまで副産物にすぎない。
まぁ、アイドル活動にも使える力ではあると思うが…。
「断固として拒否させていただきますが…一応聞いておきます。何故、そのような行為で血の力が体得できると?」
血の力は要するに、生命力とか意思とかを形にしたもんだ。そんな物、体の外側からどうにかできると? 外科手術やってんじゃないんだから。
一番効率よく体得させようと思ったら、体の内側から…そうだな、力の水源を開いてやる必要がある。それを最も簡単にやれる手段が、そーいう事な訳。
物理的に一つになる必要があるんだよ。
粘膜を介して、相手の体の中を引っ掻き回すようなもんだ。極論すると、手を繋ぐとかハグをするだけでも多少は効率よくなるが…。効力としては各段に落ちる。
正直、余程緊急性があって、替えの手段が無い状況でなければ、とても進められるもんじゃない。
血の力を覚える=枕営業したなんてレッテルが貼られかねないし、嫌々やっても効率は落ちる、体得したとしても力に陰が落ちると、ロクな事にはならない。
黒蛛病患者の事は専門家と…後は葦原ユノとタカネにでも任せて、もののついでくらいの気持ちで覚える事だ。
ここまで真剣にレッスンについてきた君達にこんな事を言うのは筋違い、恥知らずもいい所だと思うが…余計な責任を背負いこまないようにな。
アンタらはあくまでアイドル。人を感動させて元気づけるのが仕事で、その結果黒蛛病が治るかもしれないってだけの話だ。
熱気バサラじゃあるまいし、「病気が治らなかった。俺の歌には何かが足りない」みたいな歌キチな考え方するもんじゃない。
…このレッスンに付き合うのが阿呆らしくなって、俺を見放す人も多い…と言うか、そんな人の方がずっと多いだろう。拒否したって文句は無いし、言えない。
付き合い切れないって放り出しても、フェンリルからは何の咎も無い。これは保証する(し、万一何かしようとしたら物理的に黙らせる)。
自分でも段々何について話してんだか分からなくなっていたが、とにかく血の力を楽して覚えるとか、そんな上手い話は無い。
わかったら解散解散! 今後どうするかでも考えとけ!
……あー。すっげー視線が痛い…。心理的ダメージがデカイ。もう何もしたくねー…。
一応、次回のレッスン時間になったら誰が集まるかだけ確認しておいて、後はもうお流れでいいだろ。
ああ、榊博士と支部長がどんな反応するのか考えただけで胃が痛い。俺の余計な言葉で、取引を一つ丸ごとオジャンにしちまったようなもんだからな…。
「ま、自業自得かと」
俺は嘘は言ってないわい! 最初に余計な事言ったのはオメーだろが!
「シエルに手を出して、その悪評が『友達』を介して回って来ただけでしょ。私だって嘘なんて言ってません。と言うか、こんな方法しか知らないって本当にどうかと思いますよ」
それこそ仕方ないだろ。血の力を目覚めさせる方法として覚えたんじゃない。色々持て余している性欲に従って、相手も居ないのにセックスのHowTo本を買って熟読してたら、偶然それが別の事に使えるって分かっただけだ。
技術自体が、血の力前提じゃなくてエロありきなんだから。
「その辺りの議論は、アリサ様やレア様、シエル様と後日行っていただくとして…あなた様は、これから何を? 繰り返しますが、私はそれを受けたいと、常々思っておりますよ?」
「却下です。私とママの鉄壁のガードを、女として抜けるものなら抜いてみなさい。真面目な話、勝てるとでも?」
「あの、その場合私の立ち位置は…」
「貴方は私達のガードを抜いたんじゃなくて、この人が内側から突破して捕食したんで。罪はこの人にあります」
「鉄壁とは名ばかりでございますね」
…いや、相手がシエルでもなければ、そうぞう強引な事は…。マジな話、アリサとレアを激怒させる愚を犯して浮気する相手なんぞ…。
「おや、私はそれに値する相手ではないと?」
「それだけの相手なら、私達のガードも自然と破れるのではないですかね」
…微妙に火花が散っておる。
ま、それはそれとして、俺はこれから…………………ちょっとジュリウスとガチで殺りあってくる。
結局手ぇ出しちゃったからね。仕方ないね。