※この作品はR-18です。

狩りゲー世界転生輪   作:時守 暦

339 / 611
第339話

 

 

神戻月

 

 昨日の事を少し書いておく。怒りのあまりに、日記を書くのも忘れていたからな。

 

 事の次第は、アリサからの相談だった。ナナの見舞いとレアの様子見(兼、娘ポジションの偵察)に来たアリサ。

 丁度その時、ナナは眠っていた。まぁ、起きてたって寝てるのと大差ない状態なんだけども。何せ、何言っても反応無いんだし。

 

 レアと少し話をし、席を外したレアの代わりにナナを見守る。やる事もないので、レアが帰ってきたら戻ろうか…と考えた時だ。静かに眠っていたナナが、急に魘され始めた。

 少し迷ったが、起こそうとするアリサ。その時、腕輪と腕輪が触れ合って……感応現象が起きた。

 それだけであれば、珍しい現象でしかない。アリサも新型、ナナも新型、両者共に適正は高い。確かに条件は揃っている。

 そして、感応現象の中で、夢を覗いてしまうのも……多分、あると言えばあるんだろう。腕輪同志の感応現象ではないとは言え、俺もアリサと似たような事をしたし。

 

 だが、問題だったのはその夢の内容だ。

 

 勝手に夢の中を覗き込んでしまう気まずさを感じながらも、目を閉じる事も逸らす事もできないアリサは、色々な意味で苦い思いをしながら夢の内容を眺めていたが…違和感を持った。

 一度の夢の中で、何度も何度も同じシーンが繰り返される。

 それだけならまだ分かる。それだけ、そのシーンが心に残っているのだ。否応なく。

 

 だが、その繰り返しの中で、徐々に徐々に内容が変わっていく。一つずつ、一つずつ………ナナの心を傷つけるような内容に。

 

 

 

 最初にアリサが違和感を持ったのは、母親についてだ。ナナをそのまま大人にして母性を付け加えたような(俺が見たら、記憶だと分かっていても放っておかないと断言された)女性だった。

 だが、彼女の表情は醜く歪んでいたそうだ。怒り、憎悪、焦り………そう言った表情が、あからさまに見て取れる表情。

 その表情で固定されたまま、彼女はナナを見る。ナナを置いて出掛ける時も、その表情は変わらない。なのに、声色だけは妙に優しい。

 

 

「ええ。何と言うか…合成動画を見ている気分になりましたね。ナナさんのお母さんの声は、聴いただけでもナナさんを愛して、大事にしているのがよく分かりました。なのに、仮面をかぶったかのように、その表情だけが一致しませんでした」

 

「その後ですか? …正直、あまり思い出したくありません。彼女の夢は、お母さんに連れられてあちこちを逃げ回っていた頃から始まり、最後は…お母さんと、近くに居たゴッドイーターが全滅し、ラケル博士の立ち合いでマグノリア・コンパスに引き取られる所で終わります。そして、また最初から夢が流れ始めるんです」

 

 

 そこれそ、動画のリピート再生みたいに…か。

 

 

「はい。ですが、前回とは変わっている部分もあります。2度目には優しかった声が無くなり、3度目には刺々しい言葉と荒っぽい言動が目につき、4度目はゴッドイーター達が全滅した時に呪いの言葉が付いて…5度目には、全てが終わった後にラケル先生や、お母さんの死体が『お前のせいだ』と延々と恨み辛み批判を投げつける。……あんなに胸糞悪くなったのは久しぶりです」

 

 

 そりゃ確かに胸糞悪い…。ナナが廃人同然になるのも無理はない。

 罪の意識が見せる幻影か…。いや、しかしそれにしては急すぎる。

 

 

「はい、私もそう思いました。…私も、かつては同じような境遇でしたから。そう言えば、貴方も私の夢を弄りましたね。まぁ、あれは結果的にでしたし、おかげで立ち直る事もできましたが」

 

 

 ああ…そう言えば、汚ッサンにトラウマを利用されてマインドコントロールされてたもんな。

 …つーか、その言い方だと…?

 

 

「ええ。ナナさんの夢から、当時見ていた悪夢と同じ印象を受けました。最初は話に聞いた黒幕、ラケル博士かと思ったのですが…」

 

 

 んー……出来るかなぁ、あの人…。人知を逸脱した道理に従って行動してる奴だけど、そこまで人間離れしてるか…。いや、人間離れは俺も人の事言えないけど、あの人はちょいと方向性が違うと言うか。

 

 

「私もラケル博士ではないと思います。ちゃんとした理屈で看破した訳ではないのですが、あの悪夢の原因は……ナナさんの母親の方です。いえ、そう見える……んー、これも違う……そう、ナナさんのお母さんのフリをしているヤツです」

 

 

 ……何?

 

 

「貴方と言う前例がありますし、夢に干渉する、或いは幻影を見せるアラガミだって居てもおかしくありません。…気付いたのは、その、思いっきりブン殴った後なんですが」

 

 

 は? ……殴った? 誰を?

 

 

「ナナさんに向けて言いたい放題していた、ナナさんの母親と、ラケル博士と、その他諸々のゴッドイーター……ですね、夢の中の。怒りの余りに、手から何か迸っていましたよ。…現実でも出来るようになっちゃいました」

 

 

 つまりブラッドアーツ覚醒か。セックスでは楽しみ優先で、目覚めさせようとはしてなかったが……まぁ、覚醒の下地は出来ていたか。

 

 

「あくまで感覚ですが、もうちょっと怒り狂っていたら、血の力にも目覚めていたような気がします。なんだか妙な感覚がありましたし…。それはともかく、こう、怒りの余りにですね、私を操っていたアレの顔面に全力全壊パンチを叩き込むような気持ちで殴り飛ばしたところ…ラケル博士ではなく、ナナさんの母親の方に手応えがあったんですよ。夢の中で手応えと言うのも当てになりませんが、とにかく『何か』を殴り飛ばした感覚が」

 

 

 ………そいつが本命で、他はそいつが見せた…或いは、そいういう風に想起するように誘導した結果、ナナが生み出した幻覚だと?

 

 

「はい。実際、他のを殴っても水に手を叩きつけるような感触しかなかったのに、ナナの母親を殴った時には実体を感じ、また、その顔も歪んで…人間…なのかな、あれ…。こう、えーと…極東で言う、オニみたいな顔が…」

 

 

 ………ちょっと待て。

 その鬼って……………こう、こんな感じか?

 

 

「………タ、タコの煮物にしか見えない…」

 

 

 そこのPCにダイブするからちょっと待ってろ。

 ……電脳空間に入って、俺の記憶というかイメージを投射して……これ。

 

 

「…誰ですかコレ。こっちの方がよっぽどオニっぽいですけど」

 

 

 オーガじゃなかったか…一安心。ま、アレが夢を操るなんて小細工する筈もないか。んじゃ、こっちか? 

 

 

「あ、こんな顔でした」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ほう、つまりは百日夢か。

 アリサに見せたのは、討鬼伝世界のミズチメの顔。ダイレクトに言って鬼女だ。

 

 そーかそーか、MH世界のモンスターに似たアラガミが出てきてるんだから、討鬼伝世界の鬼みたいなのも出るんじゃないかと思ってはいたが、大当たりか。

 

 エッグい真似してくれんじゃねぇか…。討鬼伝世界のミズチメの百日夢は、夢の中に閉じ込めて「そこに居たい、目覚めたくない」と思わせる物だったが、もっとダイレクトに心を傷つけに来やがった。

 トラウマを引き出し、思い出を書き換え、心ごとヘシ折るやり方に。

 

 

 

 

 ブチ殺す。

 

 

 

 

 

 

 

 

 と意気込んだ所で、相手の居場所が分からなきゃどうしようもない。

 ナナの夢に入り込んで撃退しようにも、アリサにワンパン喰らって警戒したのか、ちょっかいを出さなくなってしまったようだ。眠るナナの夢に侵入しようと試したものの、夢自体見ていなかった。

 うなされてもいないから、恐らく本当に熟睡しているのだろう。

 

 さて、今から処刑と拷問の方法を考えておくとして、どうしたものか。

 討鬼伝世界のミズチメは水脈付近に居る事が多かったが、ここはどうか…。一人では考えあぐねたので、頭の良さそうなメンバーを集めてみた。

 

 榊博士、支部長、ジュリウス、ロミオ、レア。

 確たる証拠もなく、『恐らくこういう奴が居る』というレベルの話でしかなかったが…俺の発言を信じ、真剣に考えてくれるのは素直に嬉しかった。

 

 …ただ、ちょっと予想とは違う方向だったけど。

 

 

「…成程。単なる血の力の暴走かと思っていたが、想像以上に厄介な案件だったようだな」

 

「……夢を操る、か。……ふざけた真似を…」

 

「ジュリウス落ち着け。怒りは直接ぶつけようぜ」

 

 

 ジュリウスの背中から、猛烈な怒気が立ち上っている。それはもう、忍空みたいに勝身煙があがるレベルで。

 それを宥めるロミオも、奥歯を猛烈に食いしばっていた。

 

 

「ふむ…ナナ君を傷つけられた怒りは、君達に託そう。しかし、このアラガミ…実在するとしたら、凄まじい脅威度だね」

 

「ええ。すぐにでも全滅させなければ…。このアラガミの存在を公表するべきかしら…」

 

「難しいところだな。秘匿するにせよ、公表するにせよ、リスクが大きすぎる」

 

 

 …? あのー、確かに厄介な能力だとは思いますが、そこまでの話っすかね?

 トラウマを抉られて心理的なダメージを受けるにしても、対象は左程多くは無い筈ですが。

 

 

「君はこのアラガミの戦闘力を基準にして評価しているだろう。だから、このアラガミの本当に危険な点に気付かない」

 

 

 危険な点…。歴戦のゴッドイーターでも、戦わずして負ける危険がある事? このご時世だし、心に傷を負ってない人を探す方が難しい。

 再生能力? やったらしぶといんだよな…。

 後は…。

 

 

「妙な所で抜けているな。…いいか、このアラガミは…恐らく感応種だが…、ナナの夢に干渉してきたんだぞ。ナナは今どこにいる?」

 

 

 何処って……………!!!

 

 防壁を擦り抜けて、ナナに干渉した! 物理的な壁が意味を為さない!

 

 

「そうだ。しかも、現状では血の力の第一人者である、お前にすら気付かれなかった。このような、間接的な能力を持ったアラガミが、これからどんどん増える可能性すらある」

 

「考えたくもない可能性だが…心を傷つけるだけではない。苛立たせて人と人の不和を招くアラガミが出れば、極東は一気に地獄と化すだろう。下手をすると、ゴッドイーター同志の争いや、一般人の集団武装蜂起すら誘発されかねん」

 

 

 全滅待った無しだな…。物理的被害が出た時点で、大事になる。

 その場を乗り切ったとしても、責任問題程度じゃ終わらない…。

 

 

「件のアラガミは、水脈近くに居る可能性が高いんだね?」

 

 

 俺の知ってる奴と同じなら。

 

 

「なら、まずはその辺りを探そうか。無論、そこ以外の捜索もするけども。このアラガミの危険度は、他のアラガミとは一線を画する。どうやってこの能力を得たのかは分からないけど、徹底的に『消毒』しなければならない」

 

「万が一、これと同じ能力を持ったアラガミが産まれ、密かに増殖したら、人類は内紛の危機に晒される。このアラガミの痕跡は全て駆除し、殲滅しろ。万が一にも、他のアラガミにこの能力を伝えるような危険を残すな」

 

 

 

 了解。

 

 

「了解しました。元より、ナナに妙なちょっかいを出したアラガミを許す気はありません」

 

「それじゃ、俺は水脈が通ってる場所をピックアップしてきます。他に手掛かりになりそうなことはありますか、教官?」

 

 

 俺の知ってるアラガミと同じかまでは断言できないが、大体の特徴を伝えておく。まぁ、両足が蛇になってる鬼女って、見つけたら一発で分かると思うけど。

 もしも体の一部を自分からパージするような事があったら、最優先でぶっ壊すか距離を取れ。とんでもない威力と効果範囲を持った時限爆弾だ。

 

 居場所については………正直、これ以上の事は分からん。痕跡を見つければそれを辿れるが、感応種の能力だもんな…。

 

 

「それについては、我々で手を打とう。感応種の存在は、血の力を持たないゴッドイーターにとては脅威だからな。以前から、広範囲における感応種のレーダーを作る為に研究していたのだ。試作品ではあるが、効果は保証しよう」

 

 

 そんな都合のいい物が…。脅威だから備えようって理屈はよくわかりますが。

 個人の才能や体質に依存する血の力よりも、そっちの方が効果的ではありますし。

 

 

「それでも、撃退まではいかないのが辛いところだ。では、すぐに作戦を開始する。ああ、アリサ君はナナ君の世話の為に不参加となるから」

 

 

 マジか。まぁいいけど……アリサの分まで、ミズチメ(多分)を殴っておきますかね。

 

 

 

 

 

 

 

 

神戻月

 

 

 探すべき範囲は、意外と広い。この自然らしい自然がロクに残ってない時代、水脈だって数える程だろう…と思っていたんだが、極東地区に限ってはそうでもなかった。

 ここだけ自然が局地的に蘇ってるからなぁ…。しかも密度がおかしいレベルで。

 当然、水脈だってそれに釣られて、やたらと数を増やしている訳だ。……水脈って、そういう順序で出来るもんだったか? 確かに木の根がダムの役割を果たすとか、そういう話を聞いた事があるが…。

 

 ま、どうでもいいか。

 水脈を辿ってミズチメアラガミを探す俺達だったが、調査は難航した。雑魚のアラガミが襲ってくるのはどうでもいいんだが、水の流れを辿るの自体が面倒だった。

 いくら地図を作ってあるとは言え、地上からは分からないし、何処に潜んでいるのか分からないから、建物やら何やらの影まで確認しながら進んでたし。

 榊博士から渡された感応種レーダーにもちょくちょく反応はあるんだが、これは全く関係のない感応種だった。さっさと狩った。

 

 

 

 その間に、またもナナが魘され初める。アリサが再度、感応現象が起こるのを期待して触れても、何もおきない。…腕輪が触れ合う事で、絶対に発生する訳じゃないんだな。

 結局、その時はナナを叩き起こす事で精神的ダメージを抑え込んだが…ヤバイな。ミズチメアラガミを潰すまで、ナナが保つか…。保ったとしても、心は傷つけられたままだ。

 

 俺も本格的に焦りを感じ始めた頃、ジュリウスが一つの仮説を立てた。

 

 

 

 水脈の交差地点を重点的に調べる?

 

 

「ああ。それも、赤い雨が降った形跡がある付近のだ」

 

 

 ふむ…理由は?

 

 

「あくまで推測だが…この感応種の能力は、射程範囲という一点だけを見ても、他の感応種とはレベルが違う。それ故に、非常に強力なエネルギーを必要とすると思われる。そんなアラガミが、一足飛びに進化して自然に発生するとは考えにくい」

 

 

 確かに。アラガミの進化速度は侮れんが、それにしたって学習・適応・応用ってステップは踏んでるみたいだものな。特にエネルギー源を増やすってのは大きな進化、変化だ。

 

 

「ああ。そこで考えたんだが…外部からエネルギーが流れ込んだ、とは考えられないだろうか? 赤い雨という形で。お前の持論では、赤い雨と血の力の要素は同じ物なんだろう」

 

 

 俺にしてみれば、どっちも霊力だからな。自前の霊力か、外から毒になる霊力が入り込むかの違いでしかない。

 成程…つまり、元はそう強力でなかった感応種が居て。赤い雨が降って、それが水脈に入り込んで流され。結果として、感応種が強いエネルギーを得てしまったと。

 

 

「加えて言えば、その味を占めた感応種は、赤い雨が降りそうな場所を求め、また降った時に多量のエネルギーを回収できる場所を求めるだろう。それが、水脈と水脈が交差する場所と言う訳だ」

 

 

 …有り得るな。そうだ、ナナに目を付けたって事は、一度はナナがその場所を訪れてる可能性が高い。

 そっちからも絞れそうだ。

 

 

 

 …どんどんアイデアと言うか絞り込みの方法が沸いて来るが…これ、出撃前に考えるべき事だよなぁ。

 俺もジュリウスも焦り過ぎだったか。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 さて、以上のような条件を考え、場所にピックアップは優秀なオペレーターさんい丸投げする。まさか5分も経たずに絞り込みを済ませてくれるとは、やはりヒバリさんは格が違った。

 絞り出された場所で、近場の物を調べてみたが……。

 

 

「クッ……ハズレか。しかし、他の場所ならば…」

 

 

 いや、そうでもない。それらしいのがここに居た痕跡がある。見ろよ、ここの土。色と感触が違うだろ? …掘り返された後だ。

 多分、水脈に浸る為に地下に居たんだ。それが、充分に力を得られないと判断したのか、それとも近い内に赤い雨が降ると思ったのか…或いは、ナナの夢に干渉するのにもっと都合のいい場所に行くつもりだったのか、とにかく這い出して移動した。

 

 

「…もしも2つ目だった場合、近い内に赤い雨が降ると言う事か。しかし、穴を埋めたのか? もしそうだとしたら、自分の痕跡を消そうとする知能があるか…」

 

 

 人の夢に侵入するだけならまだしも、心の傷を掘り返そうとする相手だ。良くも悪くも、悪知恵は働くだろうさ。

 しかし、痕跡からすると、思ったより小さいな。ヴァジュラを一回り小さくした程度か。デカい方が追いやすいんだが…言っても仕方ない。

 

 痕跡からして、移動して多分、一週間は経ってない。

 大分薄くなってはいるが、這いずったような跡、移動の時に壊していったアレコレ、捕食跡、後は…運が良ければ、剥がれた鱗くらいは見つかるかも。

 …これは俺も人の事は言えんが……あまり殺気立つなよ。気付かれたら、奇襲を受けるのは確実にこっちだ。対処法は、眠らない事くらいしかない。

 

 

「元より、ミッション中に『傷が治るから』と言って熟睡するのはお前くらいだ。しかも本当に治るし…」

 

 

 

 ハンターですから。まま、ええわ。これなら今日中、遅くても明日の昼までにはカタがつくだろ。

 今の内に、アップをこなしておく事だ。

 …神機の刃は敢えて鈍らせて、苦しめて狩るってやり方もあるがな。

 

 

「ノコ引きの刑ではあるまいし…。私怨はこれでもかと言う程あるが、ミッションに私情は持ち込まん。甚振る暇があれば、確実に仕留める。…苦しめれば、ナナにまた妙なちょっかいを出すかもしれん。人質にして、な」

 

 

 そりゃそうか。

 ハンターは私怨では狩りはしない…なんて言っといて、俺も阿呆だな…。

 オーケイ、意識を切り替えていこう。これでナナの慰めになるとは思わんが、少なくともこれ以上傷つくのは防げる筈だ。それが最優先事項だな。

 

 

 

 

 

 

 

 

 さて、そのような塩梅で、痕跡を追い、ミズチメモドキが潜んでいる場所を突き止めた。ジュリウスの推理は的中していたらしく、水脈の交差する場所に辿り着く。

 それはいいんだが………こいつ、地下に居るな。ここにも地面を掘り返した跡がある。

 

 

「厄介だな…。居場所を突き止めたはいいが、どうやっておびき出す? 地面を爆破しようにも、地下のアラガミには衝撃は届きそうにないぞ」

 

 

 一番頑丈な盾を使いやがるとは…。穴を掘る……いや、MH世界の落とし穴装置を使って、地面に穴を空けて、そこを中心としてぶっ飛ばすか…

 

 

「…ジュリウス、教官。俺がやっていいか?」

 

「ロミオ? いい案でもあるのか」

 

「案と言うか、強制的に出てこさせるやり方があるってだけだ。…ま、いい機会だし、お披露目しとこうかなって」

 

 

 ……ああ、成程。と言うかいいのか?

 

 

「いつまでも黙ってる訳にはいかないし、最初期からブラッドに居たのに、最期まで血の力に目覚めなかった隊員ってレッテルはちょっと…」

 

「ロミオ? ……まさか」

 

「ああ、使えるよ、俺。ブラッドアーツだけじゃなくて、血の力…。じゃあ、初のお目見えだ! 行くぞ、『対話』を始める!」

 

 

 ロミオの力が膨れ上がる。…俺も、大規模な使用を見るのは初めてだが……これがロミオの力か。

 相手に呼びかけ、強制的に反応させる、否応なしに『返事』を返してしまう力。

 

 ……つっても、見た目じゃ何してるのか分からんのだよな。

 なんつぅかこう、ドラゴンボールっぽく赤い光を全身から放出しているんだが、やってる事は神機を片手に地面に掌を向けているだけだ。一種のポージングと言えなくも無いが、どうせなら空に手を翳した方が絵になると思う。

 

 なんていうか………間が保たない。

 一緒に居るギルも、ロミオが血の力を使えたという事実に驚きつつも、何だか気まずそうだ。

 

 とは言え、見た目はどうあれ、手応えがあったのは確かだった。

 

 

「! 反応あり、出てくるぞ!」

 

「全員構えろ! 出現と同時に集中砲火を浴びせるぞ!」

 

 

 あいあい。ここに来るまでアラガミを辻斬りしてオラクルパワーも溜まっているし、ドカンと一発行きましょう。

 一撃で終わるようじゃ、消化不良になっちまいそうだが…ジュリウスが言ったように、余計な暇を与えるべきではない。

 

 …小さな地鳴り。出てくる前兆か。本家のミズチメよりは小さいが、ここに来るまでに想定したのと同じくらいのサイズ…。

 柔らかい弱点は他の面子に任せ、俺は甲殻(あれば、だけど)を真っ先に破壊するとしますかね。

 

 

 さて…どんなもんかな…?

 

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定
▲ページの一番上に飛ぶ  X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。