神戻月
「ミナミってさ、最近何か雰囲気変わってない?」
「そうそう、以前よりこう…色々深みが出てきたっていうか…」
「そうかな? 私は特に変わってないつもりだけど」
「そ、そう…? なんだか、退廃的な雰囲気が、ちょくちょく感じられる……ような…気がする…」
「退廃的って…ひどいなぁ。本当に、私は何も変わってないって」
…血の力体得の為のレッスンの後、聞こえた会話です。
いやー、女はみんな女優だって言うけど、アイドルは特にそうなんだね。ついでに、女優であると同時に探偵でもあるのかもしれない。
あれだけ乱れ、自分自身を望んで貶めたミナミだが、普段の生活は見事に平常運転を装っている。
まぁ、装っているだけで、中身はお察しだが。さっき擦れ違い様に尻を撫でたら、昨晩も見た淫魔の表情が一瞬だが顔を出した。他人に見られてないと思って、下品に舌なめずりまでしていたものだ。
ついでに言うと、レッスンの休憩中に同僚と話しているミナミを内面観察術で見てみると。
(オナニーしたい弄り回したいセックスしたい今すぐこの場であの人に押し倒されてレイプされて皆の前で奴隷宣言しちゃいたい恋人と優しくキスしている下で御座なりに犯されて種付けされたい)
なんて、頭の中が文字通りセックスの事で一杯である。思っていたより、この子の破滅願望は強かったのかもしれない。
ま、それで逃げるようじゃ話にならない。性欲も破滅願望も、まとめて飲み干して、飴玉みたいにしゃぶり尽くしてくれるわ。
「なんですかねー…たった一晩の我慢もできないんですか、貴方は。誤魔化しても無駄ですよ。見れば一目瞭然です」
できましぇん! できたとしても、目の前に転がってる、食べられたがっているご馳走放っておくなんてできません。
…あっ、レア、ハイヒールの踏み付けはシャレにならない。地味に痛い地味に痛い、俺じゃなかったらゴッドイーターだって大ダメージだって。
あと、普段通りのシエルの半眼がジト目に見える。視線が痛い。…ヤキモチという感情を覚えてきたかな。成長の証と思っておくか。
「…私がジト目になっているのか、成長しているのかはともかくとして…今日もナナさんの治療ですね。夢の中に入れるようになったそうですが、手応えはどうでしょうか?」
「そうね…。明らかに、先日までに比べて良くなってはいるわ。元より、醜く歪められた思い出が本当だった、なんて思いたい人は居ないでしょう。優しいお母さんの記憶こそが本当だったと思えるようになってきているみたい」
効果はあるのか…よかった…。
となると、問題は最後の難関、暴走による母親の死因となった罪悪感か。こればっかりは本来のものだしな…。
「それこそ記憶を歪めるという手もありますが、あまりとりたい方法ではありませんね。さ、とにもかくにも、今日もお昼寝の時間ですよ」
エロい意味ではない。ナナの夢に入る為、彼女の睡眠時間に合わせて俺も眠っているのだ。
大分回復してきたナナだが、精神的に弱っているからか、それとも単にあまり動かない為か、日中でもよく眠る。それだけ夢に入り込むチャンスが多いから、いい事…なのかな?
入り込んだ夢の中は、昨日までとほぼ同じ。ただ、感じの悪い母親のイメージはどんどん薄れ、輪郭も朧になっていっている。それだけ上手く行っているんだろう。
…ただ、最期のシーン…母親や、守りに来たゴッドイーターが全滅するシーンだけは、依然として全く変化がない。やはり最大の難関はここか。
こればっかりは、ゲームのシナリオ通りの方法で行くしかないんだろうか? 確実性もないし、あまりとりたい手段ではない。
夢が終わり、世界が薄れていく。消えていく世界の向こうで、泣いている子供のナナと、それを抱きしめようとする母親の姿が見えた気がした。
そして目が覚めたら、特性の手錠やら何やらで束縛されていた。
「言うまでもありませんが……たった一晩も我慢できずに、教え子に手を出したオシオキの時間です。まさかお咎めなしだなんて思っていませんよね?」
アッハイ。
本日のオシオキ内容は、踏み踏みプレイでございました。棒は勿論、タマタマやら顔やら乳首やらを、スベスベの足で踏まれ撫でられ摘ままれ、突き出された足の指に舌を這わせ…。
中々に屈辱的かつ興奮するプレイだったけど、一番きつかったのはアレだ。
射精無し。
最後は3人の足でモミクチャにされたんだが、出そうになった瞬間にストップされた。
繰り返しの寸止めじゃない、「今日はもうおしまい」だ。
…これは…色んな意味で急所にクリティカルヒットですわ…。寸止めと言う程でもなく、出してスッキリできる訳でもなく、逆襲しようにもそこまでテンションが上がってない状態。俺じゃなくて、レア達のテンションがね? 性欲の向ける先を、突然取り上げられたような気分だった。
直接的な触れ合いが少ないプレイだったから、アリサ達の方の昂ぶりはそこまで強くなかったんだろうなぁ…。他の行為であれば、俺を責めると言うのは媚毒に自ら触れに来るようなものなので、自分にもダメージが入る。それを防ぐ為の方策だったんだろうか。
とりあえず、ヤられっぱなしなのは悔しいし、ムラムラを発散しないとそれこそ手頃な女の子を襲いそうなので、しっかりやる事やっておいたが。
3人がバラバラに行動し始めた後、各個撃破を狙って一人一人強襲しました。
…と言っても、皆それを予測していたのか、襲われやすい位置に居たけどね。近くに暗がりや使われてない部屋がある場所とかを通ってた。
俺に襲われるのを想像して興奮したのか、それともさっきの踏み踏みプレイでやっぱり興奮していたのか、即突っ込めるくらいにヌレヌレでございました。
特にシエルは凄かったなぁ…。何が凄かったって、恰好がね。下着がね。
服はいつも通りのゴスロリっぽい恰好だったんだけど、下着がまぁアダルティでねぇ…。童顔巨乳無垢少女が、むしろレアが着ていそうな黒下着…。もう映える映える。
脱がすのが勿体なくって、人気のない通路でじっくり鑑賞会しちゃったよ。恥じらいを覚えたシエルが実に愛しい。涙目にするのが超楽しい。涙目になっても、見せてと頼めばどんなポーズでも取ってくれるのがすっごいグッと来る。
と言う訳で、シエルには一際念入りにお返ししておきました。
さて、そのような不謹慎な遊びに精を出しまくっている訳ですが、極東は本日も色々な意味で地獄であります。
狩っても狩っても湧いてくるアラガミ、脈絡もなく現れる新種、ゴッドイーター以上に動ける逸般人、極東を陰で牛耳っていると噂されるマッド、表立って支配している支部長、そして見事に嫁(男だが)を押し倒して食っちゃった特異点。
更には、人知れず潜伏しているノヴァ。
…本格的に阿鼻叫喚の様相を呈してきたな。
その地獄に、新たな仲間が加わりました。
アメリカからやってきたゴッドイーター、ケイさんです!
「ハーイ! みんなヨロシク!」
えーと、いつぞやムーブメント師匠と一緒に居た方ですな。ロミオにハグしてたの覚えてますが。
また極東に戻って来たんですか。
「ええ。本国から、アナタに接触しろって命令が来ててね」
俺? …ああ、血の力とか、黒蛛病の治療方法を覚えて来いって事ね。
「そういうコト。噂で聞いたけど、あるんでしょ? 手っ取り早く覚える方法」
…どこまで拡散してんだ、噂…。ロミオの彼女に口留め…してももう無駄か。
つーか、その噂を知ってるって事は、どういう方法なのかも分かってるのか?
「オフコース! 誰とでも、なんて安い事は言わないけど、私だってキライじゃないわ。その気があったら誘ってね?」
…あっけらかんとしてるなぁ。このご時世だし、本能に忠実になるのも無理はないが。
と言うより、その気があったら誘え、って…積極的なのか消極的なのか。
「ま、実際のトコ、私はアイドル候補生の護衛なんだけどね。そっちが真っ当な方法で黒蛛病の治療法を覚えてくれれば万々歳、私はあくまで保険って事よ」
ついに海外からアイドルが送り込まれてくるようになったか。このご時世に、アイドル業界は戦国時代に突入するようですな。
しかし、随分とあっけらかんと上の思惑をバラすね。
「アメリカだからね! 色々あるのは否定しないわ。でも、アメリカは陰謀の国じゃないの。神と、夢の国なのよ。アラガミって意味じゃなくて」
宗教的な意味ではないのも分かるよ。
アメリカンドリーム、か…。このご時世であっても、強く輝く言葉のようだ。
とりあえず、ミナミに手ぇ出したばっかりだし、流石にすぐにだと皆怒りそうだ。もうちょっと様子見しとこ…。
神戻月
ナナの調子が段々良くなっている事もあり、ブラッド隊の雰囲気は明るい。今日なんかは、珍しく自分から外に出たいと言い出した。今まではずっと、ベッドの上で脱力して死んだ目をしてるだけだったもんな。流石にトイレは行ってたけど。
非番だったギルと俺が一緒に付き添ってアナグラの外に出ると、久々の外の空気と日の光を浴びて、ナナのネコミミ髪がピクピク動く。マジで耳みたいだな。
ちょっとは元気が出るかと思って、ペパロニ嬢ちゃんの飯を食いに行った。
…流石はナナ。精神状態最悪でも、食い意地は張っているらしい。
「何だか暗いっすねー。何があったか知らないっすけど、とにかく満腹にしてから考えるっすよ!」
「よくわかんないけど、アレっすよアレ! 吐くなら飲むな……じゃない、はくーなまたーた、ってヤツっすよ!」
パスタを乗せた皿を突き出しながら、ぺかーっと笑うペパロニ嬢ちゃん。いっそ後光すらさして見える。実際、このご時世でやってる事を考えると、聖人並みの所業だし。
しかし、はく…何?
「ハクナ・マタタ、じゃないか? どこの言葉だったか忘れたが、『どうにかなるさ、くよくよするな』って意味だったと思う」
妙な事を知ってるな、ギル。
「昔、世界がこんなになっちまう前の古典映画を見た事があって、そこで出てきた。子供のライオンとスカンクとイノシシが歌ってたシーンが、妙に記憶に残っててな」
……あれ、それってひょっとしなくても、サバンナのライオンが王様のアレ…?
境遇的にもかなりピッタリだぞ。自分のせいで親が…ってとこは。これ以上は怖いから何も言わないが。
ハクナ・マタタの一言で気が楽になった訳じゃないだろうが、腹が満ちて、ペパロニ嬢ちゃんの笑顔に元気をもらったのか、またナナは少しだけ立ち直ったようだった。
そう言えば、何だかんだでアンチョビに目をかけるって約束しちゃったけど、具体的な事はあまりやってないな。レッスン時、ちょっと多めに指導をするようにはしてるけど。
一度、ちゃんと話をしてみるかな。レッスン以外に何かほしい物はないか、とか…。開祖からそう聞かれても、委縮するだけか。
ナナの気晴らしの散歩を終えてアナグラに戻ると、タカネが待っていた。
なんだ、もう今日のレッスンは終わりなのか? 相変わらず汗一つ掻いてないが。
「ええ。どうにも、やはり人の体に合わせた運動では、そうそう疲れる事もできないようです。心地よい疲れ、というものにも興味があるのですけども…。それはともかく、ミナミさんのお味は如何でした?」
隠し味が利いてたと言うか、隠し味を引っ張り出すのが何より楽しかったと言うか…。
と言うか、噂になってんの? 本人は……意外と口外しそうではあるけど。
「いえ、日記を読んだだけです」
ふーん……え? ミナミ日記つけてんの? と言うか勝手に読んだの?
「まさか。あなた様から借り受けた日記です。分からない言葉が多くありましたが、誰と何をしたのかくらいは雰囲気で読み取れます」
………ん? いやいや、俺そこ日記書いてないよ。ミナミに手を出したのは、タカネに日記を渡した後だよ。
どこで日記書いてたってのさ。
ちなみにここ数日、日記自体書いてないんだが。
「やはり…気付いておられなかったのですね。では、これをどうぞ」
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………タカネから日記を返してもらったんだが…最後のページを見て、超混乱した。
え、ナニコレ。何で日記が俺の手元から離れてる間に、こんな事書かれてんの?
タカネが書いた…訳じゃなさそうだ。仮に俺の筆跡を完全にコピーしたのだとしても、こうまで俺の言動と考えを見通せるとは思えない。書いた覚えのない日記を読み返して、「ああ、あの時正にこんな事考えてたな」と思うくらいには、俺の内心を正確に書き記している。
そもそも、タカネはモンハン世界の文字を理解できてない。暫く読んで(眺めて)いたようだが、それだけで理解できる筈もなかろうに。
「自分の事は分からないもの、と言ったでしょう? つまりその日記こそが『あなた様の事』なのですわ」
言ってる意味がよく分からんぞ。この日記が、俺の事?
いや……事、じゃなくて、俺? つまり…この日記イコール…?
「あなた様の、言わば『本体』ですわね。分かる部分だけでも読んできましたが、今まで不自然だと思われなかったのですか? 日記であるならば、その記述は全て…とは言わないまでも、大部分が過去形である筈。何せ、日記とはその日に起きた事を書き記す物なのですから。ですが、あなた様の書かれた日記は、これこの通り、まるで『その場で現在進行形で起きた事を書いている』かのようではありませんか」
い、言われてみれば…。
いや待て、思い返せば、ペンを持って日記を書いたのは、いつ以来だ? 『日記を書いている』という感覚があったから特に疑問に思わなかったが、俺は毎日どのタイミングで書き記していたんだ?
狩りの時もセックスの時も、時間が惜しい状態が続いた時でも、平然と日記は書かれていた。全部が全部じゃないが、「日記に向かってる暇なんかないだろ、どう考えても」って時でも、何時の間にやら書かれていた。と言うか書いていた。
ちょっと見返しただけでも、現在進行形で書かれている部分が多すぎる。
そもそもの始まりからして、俺はこの日記を何処で手に入れた? 変える事もページが埋まり切る事もなく、どれだけ使い続けている?
日記…日記…書き始めたのは、MH世界。ふくろ を使えば、別の世界にアイテムを持っていける事を発見したのを切っ掛けに書き始めたんだ。この時はまだ、自分の手で書いていた覚えがあるが…何処で日記を買ったのかは書いてないし、覚えてもいない。
題名も何もない、単なる冊子だから、どの世界で手に入れたものかも分からない。
つまりこれは、何か? いつからかはともかく、俺からこの日記へ、テレパシーみたいなカンジで文章を送り付けていたって事なのか?
「少し違うかと。どちらかと言うと逆では? 情報を得ているのはあなた様の体側。思考しているのが、この日記なのだと思われます。人間で言えば、脳だけが別の場所にあるようなものでしょうか」
脳が違う場所にあっても、目や体からは正常に信号が送られてきているから、全く違和感を感じず、体の場所に居るように感じるって事か?
「おそらく。…ふふっ、あなた様自身も知らない、誰にも知られてない、誰にも見られた事のない秘密の部分…堪能し、愛でさせていただきましたわ」
ぬぅ…なんかこう、言いようのない羞恥心が…知らない間に、知らない人にケツの穴をじっくり見られていたような感じが…。いや、この場合ケツの穴っつーより、内臓に近いのか? 「うわーっ、心臓の色見られちゃった! ハズカチー!」なんて感じる感性は持ってないが。
しかし何だな、この日記が俺の本体って事は……この日記を壊されたりしたら、俺は死ぬ?
「…これは、あくまで推測でしかありませんが…違うかと思われます。一頻り愛でて分かりましたが、この日記は…そう、水面に映った月のようなものです。あなた様の本質、或いは本体…いわば『魂』と言う目に見えない、触れる事もできない物があり、その影が現実という水面に映し出されている。月に直接触れる事は出来ませんが……我々は例外として……水面に波紋を立てたり、別の影を重ねたりして形を変える事はできます」
俺がこの日記に字を書きこむのは、水面に映る月を飾り立てているようなものだと?
うーむ……相変わらず、俺という生物は訳が分からんな。どんどん後付け設定が追加されて、もう情報の整理もできんくらいだ。
「ふむ、興味深い話だね」
む、榊博士? ………さっきから近付いてきていたのは感じてたけど、声が聞こえるような距離じゃなかった筈だが?
「はははは、この極東で私の拾えない情報は無いよ」
………このマッド…遠回しに盗み聞きしたって言ってやがる…。
「さて、私の情報源はともかくとして……君は情報生命体であると自認しているのだったね。そもそも、0と1の集合体とも呼べる情報生命体が、何故物質として存在できるのか、気にならなかったのかね?」
考えるだけ無駄だと思ってました。俺がどんな生物であれ、俺の意思に従って行動するのには変わりない訳ですし。
「うむ、シンプルで実に結構。だが、気にはなっているようだね。この際だから、私が立てた仮説を話してあげよう。……興味ない? いいから聞きたまえよ。折角考えた仮説なんだし、一度くらいは語らせてくれてもいいじゃないか」
意外と…でもないけど、話したがりですよね博士って。いや、榊博士に限らず、科学者の類はみんなこんなもんかな?
タカネが蚊帳の外になってるようだが、榊博士の仮説とやらに黙って耳を傾けていた。…俺の事だから興味がある……のか? それとも取り敢えず聞いてるだけか。
まぁ、俺としても気にならないではないし…。
「では、なるべく簡潔に述べよう。実は仕事途中だしね。面白そうな会話をしていたから、抜けてきたんだ。…おっと、早速話が逸れたね。君は情報生命体である。これは確かな事だろう。何処かの世界の情報通信網の中で残骸となったデータが蓄積され、それが何らかの切っ掛けでまるで人間のような意思を持って動き出した。君が3つの世界を転々としている理由や、物質としての性質を持って活動出来ている理由は分からないけどね」
肝心のトコが抜けてるなぁ…。で?
「新しく分かった事は、君の元になったデータの詳細さ。タカネ君、君はその日記が、何かの影が具体化したものだと言ったね。その影の元になったデータ、残骸となった切れ端を纏めるプログラム。それは……」
「おそらくメモ帳だね」
…は? メモ帳?
って、文字通りの手帳じゃなくて、どのパソコンにもほぼ例外なく入ってる、アプリケーションのメモ帳?
根拠や成否はともかくとして…なんつぅか、地味だな。別に、OVERSシステムみたいな意味不明でデウス・マキナ的プログラムがいいって訳じゃないけど。
「とても大事で、汎用性の高い機能だよ。文字通りのメモに仕える。文字を組み合わせて絵を描く事もできる。画像データだって極端な話、メモ帳として開けない事もない。プログラムのソースを書くのだって、この機能が必須だ。シンプルな機能であるが故に、多くの情報を書き込み保存できる。ついでに言うと、君、パソコンがパソコンである為の3つの要素って知ってるかい?」
あー…アレか、記憶装置、演算装置、入出力機能ってアレの事か?
「そう。記憶装置が日記。演算装置が君の『魂』。入出力機能が体と考えると、君が情報生命体だって事がよく分かるんだね。元になったデータも、結局は世界中のパソコンのデータの残骸だからね」
う、うーん…? それは流石にコジツケが過ぎるような…。いや別にそれはそれで構わないんだけれども。
と言うか、俺ってメモ帳だったのか…。
「ついでに言うと、君の言う ふくろ は、メモ帳にカット&ペーストしてるようなものじゃないかな。物質を情報に変換して保存し、必要な時にそこから取り出している」
…この理屈で行くと、取り込んだ物質はいくらでもコピーできる筈では?
「切り取りは出来ても、コピーができないんじゃないかな。回復錠を10個 ふくろ に居れれば、『回復錠』というデータが10個貼り付けられる。取り出す時は、そのデータを必要な分だけ切り取りする、って感じかな。…ま、現状で考えられるのはこの程度だね。これを検証したり、応用した技術については、また今度にしようか」
あ、ちょっと博士!
「語るだけ語って、去ってしまわれましたわね。科学者と言うのは、そういう物と聞きますが」
あの人は特別だよ………いやマッド連中の中ではそうでもないか? 話が通じるようで通じない…。
しかし、メモ帳ねぇ…。エクセルの方がよかったとは言わないが。
「メモ帳でも電卓でも、私は一向に構いません。あなた様自信もそうでしょう」
いや、それはいいんだけどさ…。さっき榊博士も言ってたじゃないか。「プログラムだって書ける」って。
もしかしたら、自分で自分の体を改造してナニを2本にしたり触手にしたり、取り込んだアイテムを改造したりできるんじゃないかなーと思ってな。
ま、やるとしたら慎重に慎重を期さないとな…。回復錠が毒薬に代わるくらいならまだしも、何らかの間違いで放射能を放ち始めたり、空気に触れた瞬間に核融合してドカン何て事になりかねん。