※この作品はR-18です。

狩りゲー世界転生輪   作:時守 暦

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第343話

 

神呑月

 

 

 ぬわぁぁぁぁぁぁん疲れたもぉぉぉん

 

 

 

 

 

 

 どころじゃない。マジか。またやらかしちまったか。

 ナナだけならまだ分かるが、この子は流石にちょっと…。どう顔合わせりゃいいんだ…。切腹か? 去勢か? どっちにしろ次のループに行けば復活するよ。

 

 ハァ……どうにもこうにも、とりあえずナナの力の暴走は収まったし、見た所既に制御下に置いたようだし。トラウマを完全に乗り越えられたのかは本人にしか分からないが、以前のような快活なナナが戻って来た。

 それは喜ばしいんだが。

 

 

 

 ……とりあえず、最初から書いていこうか。現実逃避も兼ねて、いつの間にか書かれてた形式じゃなく、しっかりとペンを持って。

 

 

 

 まず、フェンリルも企業である以上、月末月初は無駄にクッソ忙しくなる訳だ。今まで何度も経験した事だな、棚卸やら決済やら。

 俺はフェンリル職員じゃないんだが、立ってる物は何でも使えと言わんばかりに巻き込まれた。何だかんだで久しぶりだなぁ…。

 かつてはソーマがミッションに逃げたのを見て、ブツブツ文句言ってたのが懐かしいわ。

 

 ちなみにそのソーマは、シオと協力して順調に業務をこなしていた。なんかムカついたから、押し倒してしまえとシオを嗾けておいた。

 

 

 それはともかく、とにかく忙しいこの時期。最近はナナの世話をしているアリサ達も、事務作業に駆り出される。そうなると、二人以上付き添っていたナナの世話役が、レア一人になっちまうんだよ。ちなみにレア自身は、さっさと月末月初業務を終わらせてしまっていた。流石にこっち方面は優秀だ。

 …で、タイミングの悪い事は重なるもの。幾ら何でも、普通はここまで重ならないぞってレベルでね。

 

 

 

 

 レアがトイレの為に、ナナから少し目を離した時の事だった。

 アラガミの襲来警報が鳴り響いた。ま、言っちゃなんだがよくある事だ。よくある事だが…確かに最近は少なかったなぁ。

 

 レアがナナの傍を離れていた事も悪ければ、ナナが中途半端に気力を取り戻している事も悪かった。

 未だトラウマの癒えないナナは、襲撃が発生したのは自分のせいだと思い込んだらしい。実際、アナグラの奥で匿われるようになってからも、何度か力を暴発させていた。

 本当にナナのせいだったのかはともかく、自分の為にこれ以上人が死ぬのを黙って見て居られない、とばかりにナナは飛び出してしまった。ゲームシナリオと同様に、車で飛び出していた。

 

 …俺達がその連絡を受けたのは、既にナナが外壁の外に出てしまった頃。

 何でそんなに連絡が遅れたのかと言うと……襲って来たアラガミの中に、新種が2種類も居たからだ。しかも、最優先で討伐しなければならないヤツだ。

 

 どんなアラガミだったかと言うと…。

 

 

 

 

 リオ夫妻。

 

 

 

 

 ただし、鬼っぽくもある。ワイバーンそのもののリオレウス・リオレイアに、鳥っぽいヒノマガトリをミックスしたような感じと言うか…。

 

 

 

 こいつらの何がヤバいって、ミズチメモドキとは違った意味で、防壁を無効化する事だよ。とにかく空高く飛びやがる。防壁なんざ一っ飛びよ。

 ソーマが頭抱えてたなぁ。「アラガミが近づいたら自動で反撃する攻勢防壁を考えていたが、あの高さは想定外」だってさ。まま、MH世界じゃ空の王者なんて呼ばれてるくらいだから、多少はね? 実際はヘタレウス呼ばわりの方が多いだろうが。

 

 

 こいつらの戦闘能力は、そこまで高い訳じゃなかった。ただ、継戦能力と耐久力がクソだったよクソ。

 炎のブレスの威力やバリエーションは、ヒノマガトリもミックスされたような状態だからか、本家に比べると脅威度は低かった。前に吐き出すか、空を飛んで眼下に吹き付けるかの二択程度しかなかった。

 が、ヤバいと思ったらすぐ空に逃げる。ダウンさせたら、相方が助けにやってくる。

 

 何より厄介だったのは、こいつが防壁内の上空に侵入してしまった事だった。高度が高すぎてこっちからの射撃が殆ど届かない。しかも、まかり間違って迂闊に撃墜してみろ。下は一般市民の居住区だぞ。

 落下した先で暴れられたら、えらいことになる。

 

 ……いや、極東には逸般人も居るけど、流石に普通の人の方が多いんだよ。逸般人ばかりなら、容赦なく巻き込んで、石を投げさせたりロープで拘束したりできたのに。

 

 

 どうしたものかと手をこまねいていたんだが、こいつらは突然動きを変えた。居住区の上を飛び回っていたのが、どういう訳か2匹とも外に向けて移動し始めた。

 チャンスとばかりにフラッシュグレネードを思いっきり投げてやると、上手いこと2匹揃って落下。

 後はもう、回復する前にメッタ斬りで終わりだった。防衛班も総出で出撃してたし、数の暴力を使えるって最高だね。本物のリオ夫妻や、純粋なヒノマガトリであればもっと手古摺っただろう。リオ夫妻なら純粋なパワーとタフネス。ヒノマガトリであれば、ダメージを本体に通す為に部位破壊し、再生しないように鬼祓するという手間がかかったんだから。

  …思い返すと、最近のアラガミはMH世界・討鬼伝世界の敵達の特徴を取り込もうとしているようだが、上手く行っている例は少ないな。アラガミの進化速度こそ脅威だが、上手く進化できるかってのはまた別の問題なんだろう。

 

 

 話が逸れた。とりあえずリオ夫妻モドキを討伐し、とりあえず大きな被害が出なかった事に一安心。上空から炎のブレスを放ってきた時は、居住区が大火事になるんじゃないかと思ったもんだ。

 幸い、ジュリウスが放った銃撃で弾け飛んだが、あれが地面に着弾していたらと思うと肝が冷える。

 

 で、倒したはいいけど、どうして突然居住区上空から離れようとしたんだ? と首を捻っていたところ、ナナが飛び出して行ったと連絡が入った訳だ。

 

 

「ナナの『誘引』か!」

 

 

 と即座に気付いたジュリウスも流石だが、これはヤバい。

 リオ夫妻モドキがナナに引き寄せられたと言う事は、誘引が発動しているって事だ。本調子ではないナナだと…いや、本調子であっても、無数のアラガミに囲まれて、どこまで耐えられるか。

 とにかく追わなければならない。

 正確な場所はオペレーターに探してもらうしかないが、とりあえずリオ夫妻モドキが行こうとした先にナナが要る可能性が高い。

 

 車を使わなければならないジュリウス達を置き去りに、鬼疾風で俺だけ先行したんだが……更に話がややこしくなった。

 ナナの居場所を特定した、と通信が入ったのだが……それに付随した情報が、コレ。

 

 

「情報によると、ナナさんが居ると思われる場所に、GKNG幹部のリカさんが居るそうです!」

 

 

 

 ………なじぇ?

 

 いや理屈は分かるんだ。あの子はアラガミの居る場所にも平然と入り込み、帰ってくる猛者だ。虫型アラガミの専門家として、GKNGでも頼られている。大方、今日も遊びに…もとい仕事をしに行っていたんだろう。

 そこを、誘引を発動させてアラガミを引き連れたナナが発見。

 

 まぁ、保護しようとするよね、ナナだったら。ナナ自身がアラガミを引き付けているんだから、むしろ危険じゃないのかという考え方もあるが、どっちにしろ気が経ったアラガミが山ほど追いかけてくるのだ。放っておけば巻き込まれて死ぬだけだろう。

 

 そこらへんの分析はともかくとして、とにかくナナは足手纏いを抱えて、無数のアラガミのど真ん中に居る訳だ。時間が無いなんてレベルじゃない。

 ついでに言えば、空に立ち上る黒い煙も見えた。ナナが乗っていた車がクラッシュしたものだ。

 逃亡手段すら無くなった訳だ。

 

 頼むから間に合ってくれと祈りながら、俺は最後の切り札を使った。つまりは、アラガミ化だね。

 この状態で鬼疾風を使うのは初めてだったが、何とか制御できたよ…鬼疾風はね。

 

 

 車の残骸の元に辿り着き、鷹の目でナナとリカの痕跡を探り、追跡。

 予想通り、ナナはリカを庇って逃げ回っていた。二人そろって、よくぞ生きていてくれたものだ。

 誘引もとりあえず治まってたし、これなら今いるアラガミをどうにかすれば、無事に連れ戻せそうだ。

  

 ナナの前に飛び出し、二人を追いかけてくるアラガミを一閃して蹴散らしたら。

 

 

「! 新手で新種のアラガミッ!?」

 

 

 何、何処だ!?

 

 

「…え?」

 

「あれ、開祖様の声?」

 

 

 

 え?

 

 

 

 

 …そりゃそーだね、この時の俺ってアラガミモードだからね! これで一発で俺と分かるヤツなんていねーよ!

 アリサやレアでも、変身シーンを見てなかったら分からなかったろうさ。例外を上げるとすれば、タカネくらいか。………この世界に限定しなけりゃ、フラウとかもワンチャン…?

 

 ともかく、やれ新種のアラガミだ開祖様の声真似だ、実は神機兵に乗ってるんだ、極東マッドが開発した新兵器だ、本当はアラガミでハンターでモノノフで鬼なんだと、色々な意味で混乱しそうになった。

 それに待ったをかけたのは、リカの切羽詰まった声だった。

 

 

「開祖様!」

 

 

 具体的に何を言いたいのか、全く分からない。慌てている、焦っているのは分かるが、何に対してなのか。

 全く分からなかったが……とりあえず、俺の背中が総毛立ち、考える前に飛び出していた。リカを脇に抱えているナナの襟首を引っ掴み、全力で飛ぶ。ナナからグェッと声が漏れたような気がするが、そんな事言ってる場合じゃない。

 

 俺が居た場所に、大きなモノが落下してきた音と衝撃が響いた。舞い上がる粉塵と、転がり落ちる瓦礫を避けて物陰へ。

 いつでも逃げられるように構えながら、そっと様子を伺う。

 

 

「…私達、さっきからアレに追い回されてたの…。他のアラガミは、あいつのおかげで殆ど蹴散らされたんだけど、あいつ自体から逃げられなくて…」

 

「ェホッ、喉に入った……ふぅ…。何処からあんなのが出てきたのか、全然分からないけど、逃げても逃げても追いかけてくるし、あんなのが居たんじゃ誰かに助けも求められないし、もう本気でダメかと思った…」

 

 

 ナナがこうまで弱音を吐くとは…。いや、それだけ精神的にも弱っていたんだが。とは言え、そうなるのも仕方ないだろう、あの相手では…。

 色々と非常識なモノを見てきたつもりだったが、こうも唖然としたのは久しぶりだ。

 

 

 そこに居たのは、一匹のヴァジュラだった。

 ヴァジュラだけなら珍しくない。さっきナナ達を追い回していたアラガミの中にも、黒爺猫やポプテピピック・ヴィジュアル系…本当にこいつの名前覚えられない…も居た。

 リオ夫妻モドキのように、モンスターや鬼のような姿をしている訳でもない。

 

 

 

 それは、ヴァジュラと言うにはあまりにも大きすぎた

 

 大きく 分厚く 重く そして金色だった

 

 それは 正に 

 

 

 

 

 正に………何だったんだろうな。この時何かベルセルクとグラップラーバギを掛け合わせたような感想が浮かんだ覚えがあるんだが、思い出せん。

 言葉(と言うか思考)になる前に、ジャレついてきやがったんだよなぁ、あのキンキラヴァジュラ。…ヴァジュキンキラ…?

 

 

 

 とにかくアレだ、マジでデカいヴァジュラだった。最初、目の錯覚か遠近法が狂ったかと本気で疑ったもの。

 そりゃデカさで言えば、ラヴィエンテの足元にも及ばないけど、あのインパクトは凄かった…。

 

 普通のヴァジュラの3倍近くあったな。あんな奴がどうして今まで発見されてなかったんだろうか…。

 まぁデカいだけならどうとでもなったんだけど、リカを庇って、本調子じゃないナナを逃がして…って条件だと流石に厳しい。

 

 仕方なく、逃げ隠れに徹しようとしたんだが、これは悪手だったなぁ…。どれだけ逃げ隠れしても、ナナの誘引が発動してたらあっという間に場所がバレる。ちょっと考えりゃ分かる事だったわ。俺も混乱してたんだなぁ…。

 

 

 

 

 で、何がアカンかったかってね。

 あいつに追い回されている内に、ナナのトラウマがまた刺激されたのか、こう…誘引の力が、一際強く発動しちゃってね。

 

 

「あぐっ……や、やばいよ…また血の力が、暴発しそう…」

 

 

 この状況で一発二発暴走した程度じゃ、何も変わりやせん! 幸い、近付いてくるアラガミはあのデカブツの動きに巻き込まれて蹴散らされてる。

 妙に我慢してないで、さっさとリバースしてしまえ!

 

 

「り、リバースじゃないもん! 食べた物を吐き出すなんて勿体ないこと、絶対しない………ぁ、ぁ、ぁ、あああああ!」

 

 

 

 

 

 今までの暴発より、随分と力が強い。誘引の力が、急激に膨れ上がった。

 

 

 

 俺のすぐ傍で。アラガミ化している俺の、すぐ傍で。

 

 

 

 

 後から聞かされた事だが、ナナの誘引は「固有の偏食場パルスを発生させて敵を引き寄せる疑似フェロモンと化す」と言う物らしい。

 

 

 

 

 疑似フェロモンと化す。

 

 

 

 俺のすぐそばで。

 

 

 

 …思い返してみれば、ナナの誘引が発動した時、『誘惑されているような感覚がある』って感じてたんだよなぁ…。

 完全に人間の状態の時ならまだしも、この時の俺はアラガミとしての一面が強い体になっていた訳で。

 

 

 

 

 後は分かるな?

 

 

 

 

 

 俺は全く分からないけどな、今でも!

 

 

 

 

 

 いや分からないんだって本当に。ナナの力が急激に膨れ上がり、そのゼロ距離射撃を浴びてしまったところまでは覚えている。

 そこで意識は途切れ、ふと我に返ると、アラガミ化は解除され、キンキラヴァジュラは遥か遠くで極東メンバーにフルボッコにされたと通信が入っており、すぐ傍ではナナとリカが眠っていた。

 ただし、二人とも特に衣服が乱れている様子もなく、寝息も穏やか、白くてネバネバした物が付着した様子もない。一応周囲も調べてみたが、特徴的な血の跡も無い。本人からも血の臭いはしない。

 

 二人は間もなく起きてきたが、特におかしな様子…怯えたり、逆に媚びてきたり、股間にチラチラ目をやるような仕草もない。

 ついでに言えば、時間も大して経過していない。

 

 

 

 

 ……ナニもしてない…よな? いやでも俺だし…。

 エッチぃ事してる時は、体感時間もコントロールできるようになってるし…。

 その割には痕跡らしい痕跡も無いし…。

 

 いや、明らかに違う点もある。ナナがしっかり立ち直っている上、血の力も完全にコントロール下においているのだ。

 ゲームシナリオ同様、トラウマの克服によって血の力の制御を身に着けた…と考えられなくもないが、それならそれで、何がどうなって克服したのか。

 別に問題がある訳じゃないが…。

 

 

 うーん…? 誰かに確認しようにも、アラガミ化を見られないように通信装置の類は放り出してきていたし、本人にダイレクトに聞くのも…。

 遠回しに聞いても、ナナは理解できないしなぁ。それともはぐらかされているんだろうか?

 「あの後? アラガミを追い払って、気が抜けたらつい寝ちゃった」と、ペカーッとした笑顔で言うばかり。…笑顔が怪しく見えてくるなぁ…。

 

 リカもリカで似たようなものだ。

 

 

「開祖様が変な事をしなかったかって? うーん、特に無かったと思うけど…あ、でもあの恰好は気になるかな!」 

 

 

 その件はGKNGにも秘密で頼む。

 うーむ、ナナもリカも性的知識があるのかすら怪しいんだよな…。この証言も何処まで信じていいか…。

 

 

「うん、わかった! 私とナナと開祖様との秘密だね!」

 

 

 他にも知ってるのは何人か居るけどな。

 …ああ、ナナと同類だわこの子。なんか妙に仲良くなってるな、と思ってたら…。天真爛漫って意味なのか、それともナナのオツムがリカ並って事なのか、逆にリカがナナ程度には大人びているのかはノーコメントで。

 

 

「あ…そうだ、開祖様。ごめんなさい」

 

 

 うん?

 

 

「前に、最近のアラガミは危ないから、暫く壁の外に出ないようにって言ってたでしょ。…こういう事だったんだね? 我慢してたんだけど、何にも無さそうだったから、言いつけを破って出てきちゃいました」

 

 

 あー、まぁな。

 ま、思ってたより発生に時間がかかったし、お目付け役も居ない子供がいつまでも約束覚えてられる訳もないわな。

 

 

「むー。私もナナも子供じゃないよー」

 

「こどもじゃないよー」

 

 

 プンスカ起こるリカと、併せているのか本気なのか分かりづらいナナ。

 とりあえず、ナナはレアに、リカはおねーちゃんに思いっきり叱ってもらいなさい。

 

 

「はーい。仕方ないよね。勝手な事しちゃったし…」

 

「そうだね。……でも」

 

 

 

 

 

 

 

 

「「子供じゃないもんねー」」

 

 

 

 

 …………これ、どういう意味で言ってんだろうか…。

 

 

 

 

 

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