※この作品はR-18です。

狩りゲー世界転生輪   作:時守 暦

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進撃の巨人2と北斗が如くとEDF5DLCをやってたら、書き溜めが尽きかけていたでござる。


第349話

 

神呑月

 

 

 ライブツアーに出るまでは、今まで通りの生活。まぁ、順風満帆…とまでは言わないが、穏やかな日々だったのは間違いない。最前線では悲鳴や怒号が上がり続けているが、それこそ極東にとっては日常である。

 

 ブラッド隊の戦果も順調だ。

 既に全員が血の力・ブラッドアーツを体得し、心理的な問題もほぼ解決。ゲームシナリオで言うなら、次はロミオが焦り始める時期だが、今のロミオはむしろ彼女とヨリを戻したおかげで絶好調だ。浮かれてミスをやらかす程未熟でもない。

 

 懸念があるとすれば…俺にしてみれば好都合だが…ジュリウスとラケルてんてーの確執くらいだろうか? 表立ってはいないが、ナナの件の頃から、確かな溝が産まれているようだ。

 しかしそうなると、今度はラケルてんてーが何をやらかすか分からないのが怖い。

 あの人の目的は、ジュリウスを黒蛛病に感染させ、特異点として終末捕食を引き起こす事。

 

 つまり、極論してしまえば、ジュリウスの意思も、周囲にどれだけの被害が出るかも関係ない訳だ。ゲームシナリオでは、最期にはジュリウスを裏切って、神機兵の破棄所に放り出していたし、ジュリウスの意思は関係ない……いや、むしろ失意の底に叩き落す必要があるんだろうか?

 周囲の被害については、もう言うまでもないだろう。終末捕食が起これば、遅かれ早かれ全てゴックン。消化されて終わりである。

 

 実際、直接的な手段ではないとは言え、フミカさんを巻き込んでる訳だしな…。

 

 

 

 とりあえず、ラケルてんてーの陰謀については支部長や榊博士にお任せするとしよう。今も裏で丁々発止のやり取りをやってるらしいし、俺はブラッド隊の面倒を見るのに専念するか。

 …おかしな意味で言ってるんじゃないぞ。そりゃシエルやナナとはエロもするけど。

 

 とりあえず一番心配なのは、そのナナかな…。この前、リカと一緒にドレッドパイクに乗って爆走してるの見たぞ。尻の下のドレッドパイクがなんか幸せそうに見えた。

 …いやこの際、乗って爆走するのはいいよ。俺だってランポス相手に似たような事やった事あるし。

 でもなんでリカと一緒に狩場に出てるんだよ。GKNGの大幹部とは言え、リカは一応一般人だぞ…。

 

 最近は感応種の数も増えてきているらしく、ブラッド隊はひっぱりダコ状態。…ブラッド隊の価値があがっていく訳だが…あまりよろしくない傾向だな。必要とされる場面が増えてきて、ブラッド隊が分かれて行動する場面が増えてきている。

 感応種が増えすぎると、前回ループ時の死因のような大技を繰り出してくる可能性だってある。小マメに感応種を狩って数を減らしておいた方がよさそうだ。

 

 と言うか、ナナは本当に大丈夫なんだろうか。夢に巻き込まれたリカもそうだが、エロ的な意味じゃなくて…。なんだ…その…。

 

 

「…? ああ、お母さんが私のせいで…って話?」

 

 

 …ああ。話が妙な方向に迷走しまくって、歪められた夢はもっと歪んで、ナナはそれに適応しちまったけど、そこだけは…。

 

 

「ん~~………うん、まぁね…。私のせいで死んだ、って言うのは今でも思ってるよ。ずっと私を庇って旅を続けて、負担をかけて…最後には、私が呼び寄せたアラガミに…。でも、その、ね? 夢の中での死に様がね……。所謂その……腹下死だったから…」

 

 

 ………えぇ…ってか、腹下死させたのって、もしかしなくても俺…。

 

 

「別にそういう意味では恨んではいないけど。と言うか、お母さんが『今日は結婚記念日だから、本気でやるとどれだけ気持ちよく成れるのか試してみよう』って言いだしたのが原因だし。……夢と現実の過去は違うけどね、もうなんていうか……そっちのイメージが強くなりすぎて…」

 

 

 そりゃ気にする気にもならんわな…。と言うか、こんどおふくろさんの墓参りに行こう。こっち来るなと祟られる気しかしないが、切腹くらいしないと詫びにもならん。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 それはそれとして、今日の予定だが…レアに呼び出された。

 いつものエロの為じゃなくて、何やら研究がしたいのだそうだ。一緒に榊博士も居たので、エロは期待できそうにない。

 

 …で。

 

 

 

 ナニ? アラガミ化の事?

 

 

「ええ。どういう性質のものかは貴方から色々聞いているけど、やっぱり検証したくて」

 

 

 まぁ、確かに俺だって経験則で『こういうもの』と分かっているだけだし、本格的に調べておくに越した事は無いが…。

 3年前だって、最低限しか調べさせなかったからなぁ。マッドが何やらかすか分からなかったから。

 

 

「ははは、ひどい言われ様だね。まぁ確かに、アレしたりコレしたりあの方法を試してみたり、色々やってみたかったのは確かだが」

 

 

 …レア、この人をちゃんと止めてくれよ…。で、何を調べたいんだ?

 

 

「そうね、専門的な事はあなたに言っても理解できないでしょうから………簡単な事から始めましょう。以前に聞いた話だと、貴方はアラガミ化した時、身に着けていた装備や道具を取り込んで変化するのよね」

 

 

 そうだな。剣を持ってりゃブレードが出来るし、ガンランス持ってりゃ手から砲撃ができるようになる。あんまり使った事ないけど、操蟲棍は……どうだろ、生物と融合するかはあんまり試したくないな。

 鎧や服にも影響を受けるね。それが?

 

 

「何もない状態で試した事はある? つまりは、裸で。それが、アラガミとして本来の貴方の姿だと思うのだけど」

 

 

 ……それは…考えた事もなかったな。アラガミ化するの自体、基本的に鉄火場ばっかりだったし。

 しかし、確かにデフォルトの自分の姿と言うのは興味がある。試してみる価値はあるか。

 

 

「うむ、ではここで脱いでくれたまえ」

 

 

 …ここで? 何故?

 

 

「勿論、記録を取る為だよ。変身の瞬間を克明に記録すれば、アラガミ化について新たな研究が進むかもしれない。上手くすれば、腕輪を壊されたゴッドイーターのアラガミ化を防ぐ手立てさえできるかもしれないんだ」

 

「いつも私達にばかりさせているんだから、偶には自分でストリップしてもいいんじゃない?」

 

 

 ちょっとだけよぉ~、ってか。どうせならレアが脱がせてくれればいいのにさぁ…。

 と言うか、変身前の裸も記録するのか。しかも複数の角度から。

 …キスマークも、さっき使ったばかりのナニも記録するのか…。

 

 

 ん? 別に誰ともシてないよ。トイレで使っただけだよ。大きく口を開けて「どうぞ」なんてのが居たかどうかは、想像に任せる。

 ま、実験だと割り切りますかね。

 

 

 と言う訳で、全裸。誰得である。強いて言うならレアが得かもしれないが、見るだけじゃなぁ…。

 しかし、何と言うか開き直ると意外と快適かもしれん。服着てる二人の前で自分だけ全裸とか、なんか蛮族に成り下がった気分だが。

 

 さて、もう変身していいのか?

 

 

「ああ、既に記録は始めている。いつでもいいよ」

 

 

 では……変身!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 こう来たか。

 

 

 

「あ…歩く猥褻物陳列罪…」

 

 

 おいレア、否定できんがその言い方は流石に傷つく。そもそもガン見しながら言えた義理か。

 …そうだよなぁ、そーいえば俺って、ライドウと夢で会った時に、マーラ様のご加護を受けてたんだよなぁ。その影響…だよな? 加護を受ける前から、裸で変身したらこんな風になってたんじゃないよな?

 

 まぁ、何だ。俺もアラガミだって事かね。生物の部位ってのは、使えば使う程進化するもんでね。アラガミの進化速度は驚異的なもんでね。

 キリンは高い所の葉を食べる為に首を伸ばした。ゾウは鼻を伸ばした。シマウマ、虎、豹の模様、鳥の翼、コブラのサイコガン…。

 

 彼等 生物達の『生』に対しての執念ッッ

 それによってもたらされる進化の大きさッッ

 彼等の手にしたものに比較(くら)べたら俺の肉体改造など

 なんと控えめで

 なんとつつましやかなことかッ

 

 

 

 

 

 

 触手プレイが可能になりました。当然、複数本です。自然と自前での二本差しも可能になった訳だ。

 

 

 

 と言うか、アラガミ状態の俺のボディは、まだ俺も把握しきれてない機能があっちこっちにある訳だが…アダルトグッズみたいな機能も盛り沢山だったらしい。

 ……アラガミ状態のままセクロスするのも異種姦みたいだが、やっぱやるなら人間の姿でやりたいな…。部分変化、練習するか…。

 

 

 

 

 ちなみに、二人の博士は俺の形状には何もコメントせず、真面目にアラガミ化の原理について研究していました。なんか気まずい。

 

 

 

 

 そういや、俺がアラガミ化できるのを知ってるのは、今関係を持ってる人の中ではアリサとレアだけなんだな。ナナも知ってはいるけど、どういう事なのか説明もしてなかったし。

 機密事項でもあるとは言え、説明しておいた方がいいかなぁ…。

 

 

 

 

 

神呑月

 

 

 アンチョビが、着実にシンパを増やしているようだ。いやシンパっつーのも本人は不本意だろうが、とにかくレッスンを受けているアイドル達の中で、中心人物とかムードメーカーっぽい立ち位置になりつつあるようだ。

 正直な話、彼女の歌唱力やダンスの実力は、アイドル基準で評価すればお世辞にも高いとは言えない。血の力だって、段々身についてはいるけど、発現まではかなり時間がかかるだろう。

 

 しかし、そんな実力とは関係なしに、彼女を慕う者は非常に多い。ポイントはやはり、あの面倒見の良さだろうか?

 誰かが落ち込んでいる時、くじけそうな時、どういう訳だか高確率で彼女はその傍に居て、兆候に気付く。そしてアレコレと気を回して世話を焼くのだ。…多分、相手にピッタリ合っている形で。

 心理的に負担をかけず、強がる相手ならさりげなく、誰かに甘えたいのなら母親…と言うか、お袋さんのようなやり方で、誰かに頼りたいのであれば凛々しい態度で。

 

 ……今まで気付かなかったが…アンチョビって、フラウの同類じゃないか? 方向性が違うだけで、相手の望む姿を演じられる。

 多分、演じている自覚なんかないだろうし、相手に寄って気遣いのやり方を変えるのは当たり前だと思ってるんだろうけど。

 

 

 なんか自覚無くアンチョビの地位がどんどん上がっていく。本人は実力的に下の方だって自覚があるから、必死こいて頑張ってて、自分がそんな事になってるなんて想像もしてないようだが。

 …こりゃアレだな。天に向かって落ちていくスタイルだな。或いは、熱気球が太陽熱でどんどん温まって、勝手に昇っていくやつ。このまま行くと、実力だけ見れば分不相応なステージでセンターを任され、内心テンパりながら周囲のトップアイドル達の纏め役になってるような気がする。ちなみに胃痛はデフォだ。

 

 

 ……………よし、面白そうだからいけるとこまで行かせてみよう。

 目指せ第二の葦原ユノ。或いは葦原ユノ超え。

 

 

 それはそれとして、また来客があった。フミカさんだ。今度はちゃんと、正面から来た。アポは前回訪れた時に取りつけてあるので、受付からやってきた。

 無き晴らしたと思われる充血した目を見て、まさかの事態を疑い、ついでに『とうとう犯罪に手を染めたか』みたいな目で見られた。後者については、リカという12歳と関係を持ってしまった時点でどう考えても否定できん。日本の法律では、13歳未満との性行為は一律禁止されています。

 

 俺の犯罪歴はともかくとして、万一の事は無かったようで、一安心である。あのお爺さんお婆さん黒蛛病も消えて、ちゃんと帰って来たようだ。

 泣いていたのは、安心して気が緩み、涙が止まらなくなったからだったらしい。喜びの涙であれば、心配する事もなかったな。

 

 ともあれ、今日やって来たのは、治療の礼の為だそうだが………生憎、何の事だかわかりませんな。

 

 

「……ですが、治療ができるのは…」

 

 

 現状、俺以外には居ないけど、そうじゃない。

 『黒蛛病患者なんていなかった』。お爺さんとお婆さんは、単に数日間、他所の家に泊っていただけだ。

 

 オーケイ?

 

 

「………はい…」

 

 

 若干強張った顔のフミカさん。

 俺の言葉から、『そういう事にしておけ』という圧力を感じ、その背景を想像してしまったんだろう。実際、一歩間違えばラケルてんてーによって結構な騒動になっていた可能性は高いので、間違ってはいない。

 

 

「でしたら……訪ねてくるのも…ご迷惑でしたでしょうか…」

 

 

 いや別に。フミカさんは、先日訪れた時に頼んだ事が、実際は勘違いだったから必要なかった…と説明しに来ただけだ。大騒ぎしちゃったからね。

 …ところで、お爺さんお婆さん、それにフミカさんは、その勘違いを人に話したりは?

 

 

「…していません…。お爺さん達も……誰かからの手紙を読んで…それに従う事に…したようです…」

 

 

 いい事だね。恩を仇で返すのは本意じゃあるまい。いや、恩なんて実際には無かった筈だけど、善意の忠告は素直に聞いておくものだ。お互い、身の回りが騒がしくなるのは好ましくないだろう。

 …ちょっと物騒な言い方になったが、威嚇するような会話はここまでとして…。

 

 

「はい…。その、お礼をしないと…と思っていたのですが…」

 

 

 礼を言われるような事は何もやってない…事になってんだけどね。君に妙な事を吹き込んだ女について詳しく聞きたかったが、それは支部長が調べてくれたし。

 礼はともかくとして、これからどうすんの?

 差し当たり、血の力を体得する必要は無くなったろう。

 

 

「そう…ですね…。また、今まで通り…書店で暮らします…」

 

 

 書店? 本屋さんだったのか。確かに本は好きそうだし、古本屋とか図書館の司書とか似合いそう。

 しかし礼、礼ね…。いや迷惑かけたお詫びとでも言えばいいのかな。よくこの時代に本なんぞ残ってたもんだ。

 …珍しい古書……を貰っても、俺には価値が分からんな…。

 

 

「…本の価値は…面白いか、そうでないか…だけです…。それ以外の事なんて…後から付け足されたものです」

 

 

 はは、言うねぇ。話すの苦手そうなフミカさんが言い切るくらいだから、本気でそう思ってんだな。やっぱそーいう人か。

 

 

「…? そういう…?」

 

 

 ん。ま、何だ。

 好きな事や大事な人の為なら、自分の事を顧みずに突っ走れる人種。

 

 

「…そんな………私は…」

 

 

 お爺さんお婆さんの治療の為に、当たり屋の真似事までして俺に会いに来たくらいだぞ。好きでもない男に抱かれるのを覚悟して、身内を助けたいと思って行動した。自分じゃどう思ってるかは知らんし、その認識を否定する気はないけど、芯の強さは一級品だ。

 何人もの相手と現在進行形で関係を持ってる身で言うのもなんだが、それだけ想われたら、すっごい嬉しいだろうなって思う。…いやアリサもレアも、それくらい想ってくれてるけどね。

 

 

「…お礼として…体…と言うのも考えたのですが……私では、嬉しくありませんよね…」

 

 

 いやすっごい嬉しい。嬉しいけど、フミカさんの一番の魅力は、そういう覚悟が決まった時の芯の強さだと思うからさ。

 同じ抱くなら、本気で想ってくれてる時に抱きたい。…好きでもない男に、自分から体を差し出すもんじゃないよ。フミカさん自身が思ってるより、フミカさんは美人だからね。下心満載のヤロー共が群がってくるぞ。

 

 …こんな事言うのは俺のガラじゃないんだけどな。最近ちょっと色々ありすぎたもんで、これ以上やらかすとアリサやレアが怖い…。

 

 

「…そう言えば…恋人が、2人居たのですね…」

 

 

 うん。ま、そういう訳だ。ちゃんとした、誠実な人見つけて、思いっきり想いを向けるこった。

 …それじゃ、機会があれば、またね。

 

 

 

 

 

 

「…そのままガバッと行くかと思ったわ」

 

 

 そう言うなよレア…。これでも悪いとは思ってるんだぞ。

 まぁ、あのまま抱いても今一楽しめそうになかった、ってのも本当だけど。

 

 

「つまり、ああいう対応をした方が、本気になってくれそうだ、と」

 

 

 …それもある。まぁ、縁に恵まれたら…だな。どこぞの書店で働いているようだが、そんなトコに出掛ける機会もないし、まず無いだろう。

 

 

「ピコーンと音が聞こえた気がするわ。それはともかく、これから空いてる? ちょっと付き合ってほしいんだけど」

 

 

 ん、またアラガミ化?

 

 

「いえ、今日は神機兵の研究よ。私も、一線を引いたとは言え、元は神機兵の研究者だったから、クジョウ博士に助けを求められてね」

 

 

 無人…いや有人だったか? まぁどっちもいいか。と言うか、研究続いてたんだな。ここの所、全く音沙汰無しだったから、すっかり忘れてたぜ。

 

 

「極東のアラガミの実態を見て、今までの物では通じないと根本的な所から見直しをかけていたようよ。実際、ここのアラガミは独特だものね。強さという点でも、生態という点でも」

 

 

 ま、確かに。MH世界や討鬼伝世界の敵を模したアラガミまで出る始末だもんなぁ。

 しかし、通じるモノが出来上がったのか?

 

 

「実戦テストはまだだけど、スペックはかなり上昇したものが出来たと言ってたわ。あのクジョウ博士が自信ありげに語るんだから、相当なものでしょうね」

 

 

 幸が薄くて、それ以上に自信なさげな人だもんな…。で、それに俺を突き合わせて、何がしたいんだ? まさか、ゴッドイーター相手に実戦テストとか言わないよな。俺が相手したら、まず間違いなくぶっ壊すぞ。

 

 

「そうじゃなくて、動きを見て助言が欲しいって事。人間を模した形をしているとは言え、やっぱりバランスとか筋力とかに問題があって、人間そのものの動きはできそうにないのよ。有人で使ってみるにせよ無人で動かすにせよ、今のままじゃとても完成とは言えないわ」

 

 

 ふむ、そういう事なら…。

 …しかし、どうしたもんかな。レアにはもう話してるけど、ほら、神機兵ってさ…。

 

 

「ああ…例のシナリオね。暴走する神機兵が強力になるかもしれない、と…。確かにそれは困り物…だけど、このまま放っておくと、貴方から聞いた通りの方向に向かうんじゃない? …黒蛛病患者を…」

 

 

 ……確かに。でも、あれ多分ラケルてんてーは最初からそういう風に設計してたよな…。今の物はどうなんだろう。

 

 

「クジョウ博士が一から設計し直したから、ラケルが作った物とは全く別物になってるわ。そっちが正式採用されれば、黒蛛病患者を犠牲にする事は無くなるかもしれない…希望的観測だけど」

 

 

 そうだな。

 うん、ラケルてんてーの手駒を奪えるかもしれないんなら、やってみる価値はあるか。

 

 

 と言う訳で、お久しぶりですクジョウ博士。相変わらず微妙に挙動不審ですね。

 

 

「ええ、お久しぶりです。本日はよろしくお願いいたします…。極東のアラガミを見て色々と変更をかけたのはいいのですが、どうにも行き詰ってしまって…。期待させていただきます」

 

 

 …と言っても、詳しい所はレアが話してたんだけどね。うーん、こうしているとポンコツ臭が抜け、才女に見えてくるな。

 実際、技術力、分析力的には、レアは優れた博士なんだろう。

 

 …正直言って、クールな才女の仮面を引きはがして無茶苦茶にしたくなるくらいムラムラしたが、我慢我慢。今は真面目な研究の時間だ。

 

 

 

 

 

 

 

 …で、その研究だが…うーん、確かにこれは従来の物よりも遥かにパワーアップしているようだ。一つ一つのスペックその物はね。

 極東に来てから半年も経ってないのに、こうまで改善できるもんなのか? しかも一から設計しなおすなんて。

 

 まぁ、出来てるんだから出来るんだろう。全部を全部一人でやった訳でもないだろうし。一応、ラケルてんてーの知恵を借りてないかは確認済みだ。『畏れ多い』なんて言ってたな。

 …で、肝心の内容だが…さっきも言ったように、一つ一つのスペックは高い。だが、それが噛み合ってないんだよなぁ。

 

 なんてーの、力は強いんだけど、バランスが悪くて十全に発揮できない。スピードはあるんだけど、やっぱりバランスが悪くて転倒しやすい。

 銃撃は正確で威力が高いんだけど、その分エネルギー消耗が激しく、オートで戦わせると不必要な相手に多くのエネルギーを使ってしまう。

 

 言っちゃなんだら、宝の持ち腐れ状態ですな…。

 

 

「手厳しい…。しかし、こうでもしないと極東のアラガミと戦えないのが現実なのです」

 

「最初から極東をターゲットにするのが問題なのでは? ここのアラガミは、世界でも指折りの怪物達ですよ」

 

「むむ…一理ありますが、しかし…」

 

 

 一体に対して、機能を盛り込み過ぎでは? 無理に全て同じスペックにしなくても、制御できる範囲で差をつけた方が、単体の性能はともかくチーム戦力は高くなると思うんですが。

 

 

 

「つまり、強い力を持ち、頑強さに特化した機体を前線に、動くとバランスを崩しやすい機体は銃撃のようなバックアップに…ですか。しかし、そうなると制御する為のAIと連携が…」

 

「それなら……」

 

「おお、成程。ならば、ここをこうして…」

 

 

 そういう理屈なら、別にこれに拘る必要は…。

 

 

「いえ、それにはまた別の役割がありまして…」

 

 

 

 

 

 

 ……色々話し込んだ。

 なんだな、こういうアイデアの出し合いって結構楽しいよね。詳しい話は俺にはできないけど、なんつーかロマン魂が唸りを上げると言いますか。

 暫し話し込んだ結果。

 

 

 

「よっしゃーやるぞぉぉぉぉ!」

 

 

 クジョウ博士が別人のようにイキイキしてしまいました。その手には、殴り書きされたライオン型のロボットや列車・飛行機から変形するロボット、人造人間的なアレコレ、首が取れて地球を真っ二つにするド田舎のロボット、果ては外宇宙で邪神様相手に大暴れしてそうなロボットの絵が…。

 …人間型でバランスが取れないなら、バランスが取れる生物をモデルにすればいいじゃないと言った結果がこのザマだよ。

 そこから旧世界の名作ロボットアニメの話に発展し、意外…と言う訳ではないがソッチ系に造詣が深かった博士と盛り上がり……酒も飲んでないのに徹夜明けのテンションになり、今に至ると。

 

 

 …いいのかな、コレ…。

 

 

「まぁ…いいんじゃない? 実現できるかはクジョウ博士次第だけど、ブレイクスルーには違いないし…」

 

 

 適当な妄言をブレイクスルーとは言わん。むしろ、クジョウ博士がテクノブレイクしそうな気がしてきた。

 ………うーん…まぁ、神機兵が完成しなければ、ラケルてんてーの手駒が減るし、完成したら浪漫だし……。

 

 

「やれやれ…自分達で半ば煽った形になったとは言え、暫く忙しくなりそうね。ライブツアーについていくのは難しいかな…」

 

 

 そうボヤくレアの表情も、ちょっと楽しそうだった。

 

 

 

 

 

 

 珍しく、二人だけ空いた時間が出来たので、アリサとデート中。健全なデートです。エロじゃない楽しみだってあるのだよ。と言うか、エロに使う時間を思いっきり短縮できるからなー。普通の遊びの時間も増えている。

 アリサと街をぶらぶらして、今はそこらのカフェで適当にティータイム中。一人でやると虚しさ半端ないが、恋人と二人だとなんか幸せ。

 

 最近は、フェンリル…と言うか支部長が推し進めているアイドルブームで、何処も活気づいている。スカウトされるのを待っているのか、道端で歌っているミュージシャンっぽいのも居れば、アイドルごっこしてる子供たちも居る。

 ちょっと街を眺めてみれば、あっちこっちにポスターが…。元スラムが、アキバに変わりつつあるようだ。

 

 

「元気なもんですねぇ…。顔見知りのポスターが貼ってあるのを見ると、妙な気分になりますが」

 

 

 確かにね。特にミナミのポスターが、清楚系アイドルなんて書かれてるのを見るとなぁ…。

 ふむ……やっぱアンチョビのポスターは少ないな。

 

 

「何枚か見ましたけど、あれ多分手作りですよね。チームアンツィオが自主的に貼ってるんでしょう。やっぱり、企業や会社のバックアップがありませんからね。ムードメーカーっぽい立ち位置にはなっているようですが」

 

 

 チーム内での立場と、世間一般への露出は別問題なんだなぁ…。

 アリサはああいうの興味ないのか? 彼女がアイドルってのも、こう、付加価値に拘る男の本能が刺激されるんだが。

 いい線いくと思うぞ? 美人だし露出度高いし、歌は…どうだか知らないけど、ダンスも出来るだろ。

 

 

「全く興味が無いとは言いませんが、私は別に…。歌なんて、故郷の子守歌くらいしか覚えてませんし。何より、そんな時間ある筈ないじゃないですか。少なくとも、あなたの言う『シナリオ』が終わるまでは」

 

 

 あー…そうか。無事に戦いが終わるまでは…か。その後もアラガミとの戦いは続くけど…。

 バカな事聞いたな…。

 

 

「いえ…そういう貴方は、事が終わった後にどうするか考えているんですか? その…イヅチカナタ?を倒して、繰り返しが終わった後ですけども」

 

 

 さぁ? と言いたい所だが、最初にやる事は決まってるな。ヤツを倒して繰り返しが終わって…その時、3つの世界の何処にいるのかは分からないが、別の世界への移動手段が無くなるって事だろう。

 そうしたら、もう会えなくなってしまう人が多すぎる。例えあっちが俺を覚えてないのだとしても、ま、もう一度…くらいはな。

 

 

「現彼女の前で、モトカノに会いに行くって宣言されても…まぁ気持ちは分かりますけどね。万一、今回私達がしくじって…次の討鬼伝世界とやらで成功してしまったら、それこそ私達と会う方法がどうなるのか…。他の世界へ渡る方法は、私達も是が非でもほしいです。…特に、MH世界とやらには」

 

 

 あそこの植物を持ち込んだだけで、この変わりようだもんなぁ。GKNGの努力の結果でもあるけど。

 ……ん?

 

 

「どうしました?」

 

 

 いや、顔見知りが居たような……あ、こっち来た。犬を連れてる。

 あれはリンか…。ここの所、そういや話してなかったな。

 

 

「…こんにちは」

 

「リンさんですか。今日はお休みですか? 何故ここに?」

 

「何故もなにも、ここは私の実家の近くだよ。この子、家で飼ってる犬のハナ。久しぶりに実家に帰ったから、一緒に散歩してたんだけど」

 

「ワン!」

 

 

 おうおう、元気そうなワンコだこと。大抵の家畜は、俺を前にすると竦み上がるんだが。

 リンの足元から、アリサの足にジャレつくハナ。…なんか羨ましい。角度的に見えるか見えないかのギリギリの位置だ。まぁ、俺は見上げるよりも、見上げさせる方が好きだけど。媚びてくるメスの視線が特に。

 

 

「…そっちはデート中? お邪魔だったかな」

 

「デート中ではありますが、特に邪魔という程でもないですね。ダラダラして時間を潰してただけですし。…どうですか、訓練の方は。血の力、身に着けられそうですか?」

 

「うん。この前、しっくりくるイメージの仕方を見つけたから、何とかなると思う。ところで、ちょっと聞きたいんだけど……タカネさんと暫くツアーに出るって、本当?」

 

 

 …誰から聞いたのか知らんが、本当だ。その間、レッスンに時間が空く事になるから、あんまり好ましくないんだが。

 

 

「…他の人は? 護衛の人だけじゃなくて、他のアイドルと言うか」

 

「護衛は私…と言いたい所ですが、誰になるかは通達待ちです。こればっかりは人事の問題ですし…。他のアイドルは、第一候補はカエデさんでしょうね。血の力を扱える人材のお披露目も兼ねているらしいので」

 

「つまり、血の力を覚えれば、優先的に候補に入ると」

 

 

 まぁ、そうなる。あくまで候補だけどな。もうカエデが行くのが決まってるかもしれないし、血の力を持ってる奴は貴重だから、そうそう外に出すかも怪しい。

 ……何? ライブツアーに行きたいの?

 

 

「そりゃあ…成功すれば、一気にアイドルとしてレベルアップできるし…ワールドワイドだし…。そうでなくても、外国旅行なんて中々できないし…」

 

「そこで『あなたと一緒に行って親密になりたい』くらい言えればね」

 

「そ、そんなんじゃないって! アンタもそんな顔すんな!」

 

 

 えー、俺いつもの表情よ?

 …ま、実際、安全なツアーになるとは思えないけどな。血の力を持ってる奴は、さっきも言ったが貴重だ。黒蛛病の治療が出来る人なら、猶更な。

 各国からすれば、喉から手が出るほど欲しい人材だよ。…人材扱いされるか、道具扱いされるかはともかく。

 

 今だって、あっちこっちからゴッドイーターとして人が入ってきてる。アイドルとしても来てるな。俺とコネを作れ、血の力体得法のマニュアルを取ってこいって言われてる奴も多い。

 極東、しかもウチの支部長のお膝元だからその程度で済んでるが、外に出たら躍起になって確保しようとしてきてもおかしくない。

 

 

「実際、ちょっと前まで搦め手で何とか引き込もうとしてた国がありましたよね。具体的にはハニトラで」

 

 

 逆に寝返らせて、いいように使ってるからそれは別にいい。搦め手云々を言うなら、ラケルてんてーの方がよっぽど厄介だし。

 

 …ともあれ、そういう事情もあるんで、候補に入っても会社の方がオッケー出すかは分からんぞ。

 

 

「…意外と物騒な話になってた…。と言うか、タカネさんはそれでも行くの?」

 

「あの人はまぁ…色々と事情があって、そんじょそこらのアラガミもゴッドイーターもゴロツキも楽勝なんで…。むしろ、障害として見ているかすら…」

 

 

 …正体が正体だからね。アイツをどうにかしようと思ったら、恩がある社長さんか、俺が相手になるしかないもんな…。後は、シオ辺りならワンチャンあるか。支部長じゃ無理かな…家庭板案件おこして遊んでたし。

 

 

「はは…あ、ところでここら辺が実家って事は、詳しいんですよね? お勧めのデートスポットなんかあります?」

 

「…私の家。極東でも一番大きな花屋。行きたいなら案内するけど」

 

 

 ああ、そりゃそういう話にもなるよな。それで財を成したってくらいだから、相当な規模なんだろうけど。

 

 

「…やめときます。デート中に他の女性の家に、ってのもありますけど、この人相手に花屋がどうのって通じそうにないですもん」

 

 

 ひでぇ言われ様だ。俺だって花を見て「食えるかな」って思う程度の感性はある。

 

 

「感性以前に、明らかに捻じ曲がってるんだけど…」

 

「いえ、この人の場合これで正常です。育った環境が環境なんで…。と言うか、花を見て綺麗とか考えられるメンタルも、ちょっと前の極東ではありえませんでしたね」

 

 

 別にあそこ(MH世界)で育った訳じゃないんだが。まぁ、綺麗云々より先に使い道を考えるか、毒の類が無いかを確認するのが当然ではあったな…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 とりあえず、リンからはハナのお気に入り散歩コースを教えてもらった。

 ワンコ扱いされている気がしなくもないが、まぁいい風吹いているし、日差しも暖かいしで、とりあえずいいデートコースではあった。

 近くの書店で10分くらい立ち読みして、そろそろ引き上げるかーって時になって…。

 

 

 

 …気のせいかな、何か落ち着かない。

 

 

「あなたもですか? 私もです。別に危険とか、誰かに見られてるとか、そういう事じゃないんですが…」

 

 

 ああ…まぁ、アレだな。いつもやってる事をやらずにいると、なんか手持無沙汰になる感じのアレだな。

 

 

「それはそうですし、何でそんな事になってるのかも分かりますし。ただ、素直に肯定しづらいですねぇ…。今更の話ではあるんですけど、ソレしか無いのかと…。私にだって、慎みとか恥じらいってものが」

 

 

 あるけど、それってもう愉しむ為の物に成り果ててるよな…。で?

 

 

「……………行きましょう」

 

 

 ちょい待ち、どうせだからそこで。

 

 

「………はい」

 

 

 

 この後路地裏で、散々青カンした。

 

 

 

 

 

 

 

 …ドジったな。誰かに見られた。いやアリサの顔とか大事な所は見られてないんだけど、俺の顔は見られたな…。

 まぁいいか。どこから見られたかは把握してる。近くの家の小窓からだ。騒ぎそうな相手なら、封じておくだけだ。

 

 

 

 

 

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