主な思い出は、学園祭の実行委員をやってた事なんです。
自力でシューティングゲームも作ったもんです。
特に評価された訳じゃありませんが、画面のウィンドウからアイコンまで自力で作ったっけなぁ…協力頼める人、居なかったしなぁ…。
…よくよく思い出すと、フロムソフトに就職活動してたんだよなぁ…。
思い返すと落ちて当然って内容の受け答えだったけど。
もしあの時、フロムのドS(なんてレベルじゃない、ファンの声に殺意で答える考え)を考慮して話してたら、俺はあそこで働いてたんだろうか…。
せめてダクソをやってから面接すればよかったと思います。
ACFAはプレイ済みでしたが。
追記:ゲームにかまけて書き溜めが不十分な為、GWの連続投稿は難しいです。
申し訳ありません。
神呑月
「何かの本で読んだ、珍走団の脱退リンチを受けた気分です」とはフミカの談。
脱退リンチじゃなくて入団乱交か。レディースか、レズッ毛のある女騎士団の伝統として伝わってそうだな。
まー切っ掛けはともかく、とりあえずフミカは超重要人物へと一気に変貌してしまった。俺にとっては個人的に重要人物になったが、そういう意味じゃなくて、研究的な意味でね。
フミカの血の力を知って、榊博士がキャラが崩れるくらいに狂喜乱舞した。まぁ、フミカの力を使えば、余計な機材も環境も準備もロクに無しに、ほぼノーリスク、ノーマネーで実験が出来る訳だからな。とんでもないわ。
まぁ、その実験結果も完全に信用できる訳ではない。『こうなる筈』というイメージに影響されたり、実験内容を正確に把握できてなかった場合、正しい結果になるとは限らないようなのだ。
それでも、簡単にシミュレートが行えるという利点は非常に大きい。すぐにフェンリル関係者として登録され、施設の入場許可証が発行された。
正規の職員、或いはアルバイトとして雇う事も考えたのだが、それだと血の力の持ち主だとバレてしまう可能性が高い。
「まぁ、その辺については私達が情報操作しますが…どの道を選んでも、リスクはありますからね。しかし、本当にいいんですか? アナグラ内に住まなくて。外の生活は大分変化したとはいえ、快適さで言えばアナグラとは段違いですよ」
「はい…。お気持ちは…ありがたいのですけど。やっぱり、私の家は…あそこです」
「私や榊博士の関係者だと教えておけば、ちょっかいを出す人はまずいないわ。…アナグラ内に居れば、いつでもこの人に会いに来れますし、オタノシミの機会も増えるわよ?」
「………………………………そ、それでも暫くは……えぇと、その……お手伝いが遅くなった時のお泊り部屋などは…」
「そっちは準備しなくてもいいんじゃない? この部屋に押しかけてくればいいんだしさぁ。勿論私達の部屋でもいいけど、居ない事も多いしね。…大抵ここに居るから」
…フミカはアナグラ内で暮らすのではなく、実家(?)の書店で暮らす事を選んだ。勿論、研究助手のアルバイトはするし、ちょくちょく俺に会いに来る…或いは俺から会いに行くが。
色々と理由はあるが、その最たる物は、やはりお爺さんとお婆さんだろう。黒蛛病こそ完治したものの、単純に心配なのである。
人が良過ぎる上に、人生的な意味でも達観しまくっている人達なので、いつコロッと逝っちゃうか分からないのだそうな。…流石にこの表現は失礼だったかもしれないが、まぁとにかくそんな感じ。老後の世話をする為に戻る訳だね。
ま、なんだ。俺もそっちに会いに行くようにするからさ。その時には、おススメの本とか教えてくれ。
「……えっちな本がいいですか?」
「言うようになったわ…」
うーん、単にエロなだけだと、オカルト版真言立川流マニュアルと比べると、どうしてもなぁ…。
どうせだったら、色々シチュエーションを想像できる本にしてくれ。
「バカエロってヤツですね…。まぁ、気軽に色んな気分を味わえるという利点は否定しませんが」
「それなら…幾つか心当たりが…」
「つまり、読んで自分がそうなる事を妄想していたと?」
「 」
「フミカったらムッツリさんねぇ」
「あー、きっと顔を赤くしながら、本を顔に近付けて読み込んでたんでしょうねぇ」
「ムッツリ~♪」
「…む、むっつり?」
「~~~~!!!!」
パタパタ暴れ始めた。カワイイ。
さて、フミカにはまた会いに行くとして、神機兵の話である。レアから相談があった。
…ん? フミカのエロ語りは無いのかって? 時間かかり過ぎるから、また今度な。まぁ何だ、朗読プレイと言うのも中々に乙な物だったと言っておこう。
ついでに断言しておくが、フミカは下半身エロだ。おっぱいも大きいが、むっちりした肉付きのいい足を包むストッキングがだな………いかん、また今度だっつーに。
話を戻すが、神機兵の話だ。ついこの間、クジョウ博士と浪漫談義した結果、明後日の方向に走り始めてしまった神機兵。
その後、暫くして流石にクールダウンしたようだが、アイデア自体は幾つか採用されたようだ。つまりは、人型以外の神機兵。
元々、二足歩行と言うのは不安定極まりない体勢である。安定した姿勢制御を、と思ったら、四足歩行の方が余程やりやすいだろう。
それでも人型兵器に拘っていたのは……まぁ、人間の行動を摸倣しやすいのと、後はクジョウ博士の中で燻っていた浪漫と言うかね。
とは言え、ここまで開発を進めてきた物を、クジョウ博士一人の独断で、一気に仕様変更する事はできない。やるならやるで、何かしら目途を立てるなり、参考資料が必要なりなる筈だが…。
企画が通った? …昨日の今日で?
「ええ。既にある程度形になっているそうよ。…物理的に有り得ないわ。例え徹夜で設計図を描き直したとしても、検証する時間がどうやったって取れない」
なのに通った。…その設計図の検証も、ある程度は終わっていると。
「そうね。一通り資料を調べたけど、矛盾がある部分は何もなかった……いえ、強いておかしな点を挙げるなら…検証の資料がちぐはぐな印象があったかしら? まるで、本当に重要な部分だけを後から付け足したように…」
…つまり……元々その資料…人型以外の神機兵の設計図及び資料は書きあがっていて、それをクジョウ博士が手に入れた。そして、その『重要な部分』だけを検証して付け足した?
「おそらくね。でも、何処からそんな資料を持ちだしてきたのか…それに、重要な部分の検証が抜け落ちていた理由は…?」
………レア。
「…分かってるわよ。第一人者のクジョウ博士でさえ、ああまで完成された設計図は書けないわ。例外は一人だけ。あの子には、神機兵…とは少し違うけど、人造アラガミを作った実績がある。設計したのは私だけど…。検証資料の一部が抜け落ちていたのは、そもそもそこの検証を不要としたから」
だろうなぁ…。何でもかんでも、『これも全部ラケルてんてーの仕業なんだ』って考える訳じゃないが、まず間違いなく関連はあるよな。
ちなみに、クジョウ博士はそこらへんについて何て言ってんの? まさか、自分ひとりで全部設計した、とでも?
「超どもりながら、そう主張してたわよ。誰が見ても一発で嘘だって分かるわね。他人の功績を横取りしようなんて、考える事も実行する事もできるような人じゃないから、ラケルから打診があって、黙っておくように誘導されたんでしょうけど」
だろうね。しかし、そうなると……何が目的だ?
ゲームシナリオ通り、神機兵をどっかで暴走させたり停止させたりするのか?
「ラケルしか分からないバックドアが仕込んであるのはほぼ確定として…それをどのタイミングで、どの目的で使うかね。最終的に、神機兵を乗っ取って……いえ、必要が無くなったら放置して野良アラガミ化させるんでしょう。一番わかりやすい選択としては…無人になったフライアの警備?」
それが分かりやすいが、現状ではフライアにはまだ人は居るぞ。この前、フランと会って少し話をしたが、今のところ不穏な気配は無いそうだ。むしろ、ずっと極東に留まっているから、その分仕事が少ないとか言ってたな。
人事異動なんかの話も、全然出てないそうだ。…ラケルてんてーが、ジュリウス育成の為の環境作りをしようとするなら、フライアは遠からず無人になるだろうな。
「そっちの方は監視を手配してるわ。直接見張るんじゃなくて、人の異動の流れをね。…考えたくもないけど、フライアの中でB級ホラー映画みたいな、秘密の部屋に引き摺り込まれて一人一人消えていく…なんてのでなければ、まず気付ける筈よ」
…ありそうだから怖い。その設定の場合、実はラケルてんてーは立って歩く事もできて、大の男のゴッドイーターと同じくらいに腕力も強いのだ。
夜な夜な隔壁を下ろしたり物音を立てたりして、警備職員を秘密の部屋まで誘導し、ノコノコやってきた職員を、か弱い所長の素振りで誘惑。或いは、車椅子から落ちたフリをして、近寄って来たところをガッシと掴み、そのまま奥の暗がりへズルズルと…。
「殺人鬼の役が似合い過ぎるわ、我が妹ながら…。きっと表情は一切変わってないわね。奥の暗がりからは、肉を叩くような音がしたり、ビチャビチャと水音がしているのよ」
或いは、体を全く動かないようにされ、蝋人形のようにされてしまうのだ。フライアの奥の一室では、犠牲になった人達の蝋人形が、それこそ人形展のように展示されているのだな。
と言うか真面目な話、殺すなんて『勿体ない』事せずに、無人神機兵作成の為の生贄にするって方法もあるしな。…いや、黒蛛病患者じゃないと使えないんだっけ? だったら接触感染させてしまえばいいだけの話だが。
…現状、こっち方面では動いていないって事でFA。
「…………人形……人形?」
ん? どうした、レア?
「……………ラケルの『お人形さん』……今は、何をさせてるのかしら」
お人形さん…? お人形さんって……ああ、アイツか。零號神機兵。
そういや、レアをラケルから引き離す時に襲ってきて、それ以来見てないな。当時でも一対一なら仕留められない事もなかったが、今なら余裕だぞ。
「それ、当時の『お人形さん』なら、の話よね? 強化されている可能性は…あると思う?」
…………お人形さんの着せ替えゴッコは、女の子の嗜みってか?
しかし、確かに…。他所はどうだかイマイチ分からんが、極東のアラガミはこの3年で劇的に進化した。…花粉症を巻き起こすくらいにな!
そいつらを零號神機兵に食わせて、進化変化を促進させていたのだとすると…俺達が知っている零號神機兵とは、全く別物になっている可能性すらある訳か。
「それも心配だけど、もっと怖いのはどんな機能を持たせるか、よ。設計した自分で言うのもなんだけど、あれには改良の余地、改造の余地が山ほどあるわ。今の神機兵と比べて旧式だからこそ、一部を置き換える事で新しい機能の追加も容易。…それこそ………例えば、他の神機兵を暴走させるウィルスや、指揮系統を乗っ取るような機能を持たせられてもおかしくないわ」
そっちか…。確かに厄介だな。戦闘能力じゃなくて、何を仕掛けてくるのか分からないのが。
あれだけデカい図体してんだから、すぐ見つかりそうなもんだが…奴が何処にいるのか、何か分からないか?
「最初はフライアの中に大きなスペースがあったから、そこに隠しているんだと思ってたけど…あの子の所にいる間、影も形も無かったわ。多分、ゲームシナリオで言う神機兵の廃棄処分スペースだけど」
そこじゃないのか…改造するにしても人目に付かないようにするにせよ、そこ以上の隠し場所は無いと思うが…。
フライアで移動しているんだから、何か指示を出して動かすにしても、一緒に行動させた方が都合がいい筈。
「…今思えば…あれは本当に神機兵だったのかしら…」
? どういう事だ? 確かに、他の神機兵とは色々な意味で全く違った個体だが。
「いえ…あれを作った時の実績やノウハウが今の神機兵に活かされているのは間違いないし、私は神機兵として設計したけど、その通りに作ったのかしら? そもそも、私が作った設計書だって、机上の空論にすぎない…実際に作ったら、山ほど欠点や修正点、技術的問題が出てくる事は分かり切っていたもの。なのに、あの子は作り始めて、すぐに完成形までもっていった」
完成形っつっても、アンバランスもいいトコだぞ。左右のバランスは辛うじて取れてるだけだし、武装だって未完成。
…いや、問題はそこじゃないか、噴出する筈の問題点を一気に磨り潰して完成形まで持っていったって事は…見た目はレアの設計に似せてるけど、中身はもっと別物である可能性さえあるって事か?
「多分…。あくまで、この場でひねり出した疑問に、コジツケしただけだけども…」
ま、確かにな。それでも、あんなデカブツが何年も見つかってないのには、何か理由がある筈だ。そこがキモだな…。
もしも発見したら、最優先で駆逐する。
「そうね…………? ……あ」
お? 何か思いついた?
「ちょっとね。と言うより、こういう時の為に雇ったのにね。でも、設計図だけでそこまで分析できるかしら。せめて写真か映像でもあれば、大分違うと思うけど…」
…つまり?
「フミカの能力で、解析できないかって事よ。あの子の力はシミュレーションだけど、こういう使い方も出来るかも」
設計図から動作テストを再現して、更にその状態から隠れる方法を模索するって事か? 興味深い試みではあるが、さっきレアが言ってたように中身が完全に別物だったら…。
「その可能性はあるけど、試してみて損は無いわ。…今日はもう、あの子は帰っちゃってるし、設計図を書き起こしておかないといけないし、明日の事ね」
そういう訳で、レアは零號神機兵の設計図を再現する為、自室に籠ってしまった。頭の中に設計図は全て残っているらしいが、大丈夫かな…。頭はいいし、記憶力も高いレアだけど、おっちょこちょいだからなぁ。
さて、俺はどうしようかな。誰かと一緒に遊びに行きたいけど、生憎と今日は何かしらミッションが入っていて、皆出払っている。
……そういや、「この人を一人にするとまた誰か毒牙にかかるから、レア博士がしっかり見張っておいてください」なんて言われてたんだよな。そのレアは設計図に夢中になっちゃってるけど。
後でレアが折檻されそうだな。とりあえず、今夜の趣向はレア総受けだ。ご褒美にしかならない気がする。レアってすっかり、俺好みのMっ子ちゃんになっちゃってるし。
それはともかく、何かレアに差し入れでも持って行ってやろうと思い、食堂にやってきた。ムツミちゃんオッスオッス。
…へ? 相談? ムツミちゃんが俺に?
「はい…。えっと、あそこを見てください」
あそこって…………あ。食堂の隅っこ、人目に付かないスペースで、見覚えのある人が黄昏ている。…アンチョビ?
「はい、アンチョビさんです。ここの所、ああやって誰にも見られないように落ち込んでいる事が多くて…」
あの子がねぇ…。面倒見が良過ぎて、人に自分の弱い所を見せようとしないタイプだと思ってたが…。心なしか、ツインテールも萎れているようにみえる。
しかし、俺にどうしろと? いやどうでもいいとか言ってるんじゃなくて、何で俺? こう言っちゃなんだが、相談させるならチームメイトと言うか、同じアイドル候補生の方がいいんじゃない?
「最初は私もそうしようかと思ったんですけど、近くにアイドルの人が居ると、急に普段通りになっちゃうんです。…それに、同じ釜のご飯を食べている仲とは言え、ライバルである事には変わりないでしょうし…」
後者に関しては気の回し過ぎだと思うが、まぁ大体わかった。
悩みの根本が何かまでは聞き出してみないと分からんが、大方周りの望む『アンチョビ』の偶像を外せなくなってんだろうな。自分が周りの望む態度を演じているって自覚もないから、オンオフも何もない。
厄介だな…。フラウは自覚があって、それが通じない俺を見るなり飛びついてきたから、あっさり仲良くなれたけど。
「悩みの根幹…やっぱり、アイドルの事でしょうか? アンチョビさん、応援してるから気になります」
応援、か…………(あっ)。
その辺にも理由はありそうな気はするが、とりあえず話してみるわ。
「え、今からですか!?」
じゃあ何時行けばいいのよ?
「それはそうですけど、もっとこう、情報収集というか、様子を伺うとか、周囲の人との関係を探るとか…」
言いたい事はよく分かるけど、今回に件に関しては本人に聞く以上の情報収集はない。デリケートなトコに踏み込むから、注意が必要なのは確かだけどな。
と言う訳で、イッテキマース。
ようアンチョビ、飯一緒にいいか?
「え…あっはい開祖様!」
アナグラ内で開祖様呼びは勘弁。おお、慌てとる慌てとる。
唐突ながら解説しよう! 何気なく話しかけたように見えるが、ここにはとある高等テクニック(笑)が使用されているッ!
アンチョビは無意識ながら相手の望む態度を取ってしまう、コントロールが出来てないフラウのような性格だ。自分がそのようにしている事に、自覚すらないだろう。或いは『それは常識的な気遣いの範疇』と思っているか。
その為、素の言葉や態度を引き出そうと思うと、アンチョビに『俺が望んでいる姿』の情報を与えてはいけない。ある種のポーカーフェイスである。
単なるポーカーフェイスならそう珍しくは無いが、相手はアンチョビ、フラウの同類。無意識ながらも内面観察術のような物を使っている、一種の天才だ。それもシャットアウトしてしまうような、閉心術(ハリポタ感)のような態度………は、実はよろしくない。
何故って、こっちが気を許してないのが見え見えだから。
なので、アンチョビが無意識に使う内面観察術だけスルーするような…そう、言わば自然体、全く体を動かしていないのにガドリングガンの銃撃を何故か全回避してしまうよーな対処が必要なのだ!
まぁ、アンチョビにしてみりゃ、幽霊見たような気分になってるかもしれないけどね。そこに居る筈なのに、何も読み取れない、触れる事もできないって。
後は、その態度を維持しつつ、アンチョビの平常心を取り戻さないよう、適度に驚かせ続ければいいだけだ。相手から何も読み取れないのは、自分が混乱している為だ…と勝手に納得してくれるからね。
さて、そのよーな高等テクニック(失笑)の講義はともかく、とりあえず話を聞き出せる程には上手く行った。上手く行ったんだが…。
…自分の立ち位置に疑問が出てきた?
「はい…。あ、不満があるとか、そういうんじゃないんです。アイドルやってるのも、言い方はアレですけどのし上がる為の1ステップですし…いやだからってアイドル業を手抜きしてもいいとか、のし上がったら止めるとかじゃないんですが」
ああ、そこは分かる。前にチームアンツィオにお邪魔した時にも、もっと出来る事を増やして、チームの皆に楽をさせる為にのし上がりたい、みたいな事言ってたしな。
アンチョビは根が真面目過ぎる程真面目なヤツだし、都合が悪くなったからって無責任にポイ捨てできる人じゃない。むしろ、ポイ捨てしようとして、捨てたつもりで後からアレコレ世話を焼こうとするタイプだ。
「それって、タチの悪いOGになりそうな…いやそれはともかく。なんかこう……自分が分不相応なくらいに評価されているような気がして…」
ふむ? …(まぁ、やっぱりか…としか言えん…)
「自分でも、アイドルとしての実力が下から数えた方が早いって自覚はあるんです。仕方ない…とは言いたくないですけど、下積みの厚みが違うって事で…その厚みの差を埋めるのは、並大抵の事じゃない。軽々と追いつけると考える事自体が、侮辱だと感じる程度には。今の私じゃ、まだまだ積み重ねが足りません。…卑下するつもりはないですけど、アイドルとしての私は、下から数えた方が早い筈です。血の力の方は……まぁ、開祖様基準は分かりませんが、良くもないけど悪くも無いってトコじゃないでしょうか。なのに…」
何だか妙に持ち上げられている気がする、と。
「そうなんですよ! カエデさんを始めとして、本物のプロアイドルが何人も! いや候補生だけでもかなり居ますけど! どういう訳だか、妙に頼りにされてて…『アンチョビさんはどう思います?』『アンチョビの意見を聞かせてください』『アンチョビさんと一緒で』『お供しますアンチョビさん』……この前だって、練習で一曲歌った時に何故かドゥーチェコールが巻き起こったし!」
慕われてるのはいい事じゃないか。…つーか、問題にしてるのは、慕われてる、好かれている事自体じゃないと?
「はい。……言っちゃなんですけど、何で大御所が私に意見を聞くのかなって…。そりゃ聞かれれば考えて答えはしますけど、例えて言えば大企業…フェンリルの社長が、入ったばかりの下っ端アルバイトに話を聞いて、経営方針を決めるようなものでしょ? 私の不用意な一言が、とんでもない事態を巻き起こすんじゃないかと不安になって…。と言うか、本当に何で私に聞くんだ私に何を求めてるんだ」
ああ、ブツブツと自分の世界に入ってしまった。相当にストレスが溜まっていたと言うか、プレッシャーを受けていたようだな。
暫くこのまま喋らせるか。
…詰まる所、まぁ、何だ。以前にも危惧(?)したように、アンチョビの人徳が暴走気味で、自分の意思や実力とは無関係に、どんどん高レベルな場所に連れていかれてしまっているんだな。
うーん、どうしたもんだろ。悪いことではない、と思う。しかし自分の影響力を自覚してない者が大きな力を持った場合、ロクな事にならないのも事実。アンチョビだって、高いステージに触れられるのはいい経験になると思うが………いや、そういう問題じゃないか。植物には水をやらなきゃならんが、適量って物があるしな。
暫し考えたが、妙案と言う程の物は思い浮かばない。
「はぁ…何でこんな事になっちゃってるんだろ…」
…一回、自分の言動を…いや、違うな。アンチョビ、周囲の人の事、思いつく限り喋ってみろ。あの子は気弱に見えるが負けず嫌いとか、飯食う時にこんな癖があるとか、最近はどんな事に嵌っているらしいとか。
「え、急に言われても。…ん~、そうですね…。やっぱり気になるのはカエデさんでしょうか。血の力を二番目に習得して、アイドル達の中でも頭一つ飛び抜けた実力者って気がします。ただ、私生活についてはちょっと……あんまり言いふらすのも何ですが、放っておくと色々気になるんで、押しかけて掃除とかしてます」
…ちょっとしか会ってないけど、即25歳児だってわかったもんな…。と言うかアンチョビがお袋さんポジになっているようだ。
言いふらすのも…と言いつつ、アンチョビは淀みなくカエデさんの情報を口にする。
やれ、朝が弱いだの起きたくないとダダを捏ねるだの、頻繁に深酒するから二日酔対策の為にシジミの味噌汁を何度も作りに行っているだの、朝のレッスンの時も外見はキリッとしてるが半分寝ているだの…。
本当によく見てるな…そして見ている分だけフォローに回ってるんだろうな。
「他に最近、特に注目している人? …リンさんとミカさん、ですかね。何だか知らないけど、アイドル稼業も血の力の訓練も、気合いの入り方が違うと言うか…目標…ちょっと違うな…。やりたい事があって、それに到達する為の手段としてレッスンしている…? うーん、でもアイドルとしてのステージも頑張ってるし…」
…そういや、あの子達に限らず、レッスンを受けているのってガチアイドルとアイドル候補なんだよな。この状況でもライブはあるのか。一度、行ってみるのもいいかもしれない。
「それなら、確かリンさんミカさんが組んだライブが直近に…。……これは多分ですけど、二人ともライブツアー狙ってるっぽいんですよ」
ライブツアー? …って、タカネとカエデさんと、ついでに俺も行くアレか? 割と物騒なツアーになりかねないって、リンには言っといたと思うんだけどな。
つーか、今から血の力を覚えたとして、ライブツアーに行けるかどうかは…。
「別物ですけど、覚えてた方が行ける確率は高い。先日、ライブツアーに関する話が正式に来たんですよ。タカネさんとカエデさんの前座扱いになりますけど、もう一人枠が開いているそうです。ついでに言えば、福利厚生の一環として、家族も呼べるとか…」
実質、海外旅行プレゼントってか? で、その一枠を皆が…特にリンとミカが狙っていると。
思いつめ過ぎて、体を壊さなきゃいいんだが。
「私も心配して、色々差し入れとかしてますけど…ちょっとあの気迫じゃ止められないですね。今度のライブも、ツアー参加の為の一環として、絶対成功させるって息巻いてましたし。…ああ、二人の間で険悪になってるって感じはありませんよ。ライバルって雰囲気ですけど」
そうか…。きっとその辺も、アンチョビが何かしらフォローしてくれたんだろうな。
ありがたいけど、アンチョビの実力が他のアイドルに追いつかないのって、単にフォローに時間を取られているだけなんじゃないかと思えてきたぞ。その時間を自主練に使えば…いや多分自主練自体はやってるだろうけど…、少なくとも平均以上の実力は持てている気がする。それならそれで、自分の責任としか言いようがないが。
しかし、これは根っからの世話焼きだな…。止めろと言っても止められるとは思えない。
物理的に引き離すくらいしか方法が………あ。
そうだ、アンチョビ。お前もライブツアーに来ないか?
「は? ………はぁぁぁ!? ちょっ、何言ってるんですか開祖様まで! 私はまだ、そこで通用するような力は…」
うん、客観的に見て持ってないのは分かる。だから、来いとはいっても参加しろとは言ってない。
「…どういう事ですか?」
率直に言えば、見習い、付き人、世話係。これなら、俺の権限で押し込めるから。
何が目的かと言うと、君をここのアイドル候補生達から暫く引き離しておく事かな。自分が身の丈に合わない重要な地位についていると思っているようだが、はっきり言えばそれは周囲の意思によるものだ。
アンチョビが何かと人をフォローして、その恩返し、恩返し恩返し恩返し…恩返しと言うとちょっと大げさに聞こえるかもしれないが、要は世話になったから、ちょっとお返ししたり手を貸したりしようって事だな。その連鎖反応で、アンチョビは自分の実力以上に評価されている。それだけ好かれているって事だが、それが負担になるなら相応の対処はせにゃならん。
お前の影響力が強くなりすぎるのも問題だしな。
「う……好意は嬉しいけど、確かに…悩んでた理由も、正にそれだし…」
そういう訳で、君と暫く距離を取らせる。心苦しいが、君のフォローがあって当たり前の状況に慣れるのも望ましくない。いや、フォローするのが悪いと言ってるんじゃないぞ?
「そこは分かります。……カエデさんとか、放っておくと私無しだと私生活が送れるかすら不安になってきてますし…」
そこまでかい。…だったら、ツアーに連れていくのは危険かな? 隠して連れて行けばいいけど。
「うーん…でも…そうしていると、他の人達ともっと差が…いやしかし、それを言い出したら今だって…フォローに使ってる時間が無くなるとなればプラスマイナスゼロ…でも、他の人達大丈夫かな…」
かなり悩んでいる。そんなにここの子達が心配なのか。いい大人(とは限らないが)なんだし、アンチョビ無しでもそこそこやっていけると思うがな…。心理的な繋がりの面がどうなるかは分からないが。
俺がツアーに行っている間は、ジュリウスがレッスンを担当する事になるだろう。一通りのノウハウは伝えてあるから、短時間の代理くらいなら務まる筈だ。アイツも曲がりなりにも『統率』なんて力を持ってるんだし、集団の管理のノウハウもある。
アンチョビは暫く唸っていたが、ふと顔を上げた。
「…あの、ツアーには家族の人達も招待できるって話ですけど、人数制限とか、血縁者でないといけないとか、そういう決まりはあるんでしょうか? いやそもそも、私にもそれは出来るんでしょうか?」
俺もそれは把握してないな。担当者に直接聞かないと。
何だ、誰か団体さんでも呼ぶ気………ああ、チームアンツィオ。
「です。あいつら、こうでもしないと海外旅行なんて行けないでしょうし…」
…むしろ、連れてって大丈夫か? あちこち回るけど、外国語が出来る子っている?
俺は英語とロシア語なら、辛うじて会話が出来る程度だが。まぁ、ロシア語はアリサの言葉を真似てる部分も多いんで、多分に女っぽい発音らしいし、英語に至っちゃ文法も発音もメチャクチャだけど。
「ウチのチームの一人に、そういうのが得意な奴が居るから大丈夫だと思います。なんて言ったっけ……暫く話すのを聞いてると、自然と会話が出来るようになるって言う…」
……ひょっとして、砂の耳?
「それ。元は捨て子で、ウチが拾うまで彷徨ってる間に、自然と極東の言葉も覚えたらしいです。何処をどう彷徨って来たのか、フランス語とイタリア語と……なんか、よく分からない……ラテン語っぽいのも…」
何故そこでラテン語…。にしても、貴重なスキル持ってる人材がいるな。
アンチョビの豪運(自覚無し)を考えると、隠れたスキル持ちがチームアンツィオ内にまだまだいる気がしてきた。
まぁ、そこら辺を対処できるなら、こっちとしては問題ない。まぁ、ツアーでライブする訳でもないアンチョビが、チームアンツィオを纏めて呼べるかは厳しいものがあると思うが、それこそ確認してみにゃ分からんだろ。
物は試しだ、行ってみようぜ。こっちも口添えするから。
「はい!」
…そういう事になった。とりあえず、解決できたとは言わないが、対策を考えてみた事で、アンチョビの表情も幾らか明るくなっている。
擦れ違いざまに、ムツミちゃんに頭を下げられた。
結論から言えば、チームアンツィオの招待は…OKである。
結構な人数が居るので多少の確認作業は必要になったが、社内規定に人数制限が書かれてなかったのが運のツキ。恐らく、今後は血縁者に限られるなり、人数を制限するなりの対策が取られる事だろう。
それにしたってよく通ったものだが、これにも一応理由はある。
担当部署のエライ人が、「君のところの、ペパロニのご飯には助けられたからな。海外に行ってきて、新しいメニューが増えるのを期待している」なんて言われていた。つくづくチームアンツィオは人徳とコネ無双である。
ただし、どの国のどのタイミングでもいいから、アンチョビも一曲歌う事を義務付けられた。こうする事によって、チームアンツィオを正式な応援団みたいな扱いにした。応援団っつーか、公式ファンクラブみたいなもんかな。他の世界でのアイドルはどうなのか知らないが、これで多少は旅費が安くなるとかナントカ。「現地でサクラを仕込むより、こっちの方が安上がり」とか聞いた気がするが、その基準もどうなのか。と言うかサクラ仕込むのか。
…で、ここまで話を進めておいてなんだが…一つ問題に気が付いた。
アンチョビがツアーに付いて行くって話が出て、荒れないだろうか…。特別扱いで連れていく事になるし、それ以上に「行かないで~」って声が多発しそうなんだが。
…もう考えるだけ無駄か。逆に、「アンチョビさん世界に羽ばたいてきてください! 我々はいつでもどこでも応援しています!」となってくれるのを期待するしかない。と言うか、放っておいてもそうなるような気がする。