※この作品はR-18です。

狩りゲー世界転生輪   作:時守 暦

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前から何かと面倒事ばかり起こる職場だったけど、特大のが爆発したでござる…。
家庭板案件の余波が押し寄せてきたでござる…。
昔、別の仕事してる時に不倫の詫び状みたいな物見つけて反応に困った事はあったけど、実際に近くで発生するとナマナマしさが違うな…。
こんなSS書いておいてなんですが、皆さんもご注意を。

うう、もうすぐ妹の結婚式だと言うのに、結婚のイヤな面を見せ付けられたようだ…。


第356話

神産月

 

 

 ミカが勝った。

 投票結果は公表されたが、ぶっちゃけ欺瞞である。ある程度の差を持って…全体で言えば、2パーセントにも満たない差によって、ミカの勝利。

 …と一般では言われているが、実際は違う。2パーセントどころか、二人の差は数票程度。二人のどっちに投票するのか迷いに迷い、書き直しまくった挙句無効票となってしまった物もあるようだから、もう本当に誤差程度の結果だったんだろう。

 だが、それでも結果は結果。…それに従うのであれば、リンの勝利であった筈なのだ。

 

 …まぁ、その勝敗の誤差を、支部長達のような幹部連中が覆したと……違法な手段ではなく、一観客・一投票者による投票で覆した、と言えなくもないんだが。

 実際、実際の結果と公表される結果の違いに、俺が見咎めるように睨みつけると、何処からともなく取り出した投票用紙に、ミカの名前を書き込んで見せた。同じような投票券が何枚かあったが、それは幹部連中から支部長が預かって来た投票券のようだった。いくら投票券があったからって、時間制限を過ぎてりゃ無効だよバカ野郎。

 

 

 …クソ、そんな事するくらいなら、本当に最初から投票しとけっつーの。どっちを行かせたいのか、もう決まってたんだろ。

 大差がなかった時点で、ミカをライブツアーに行かせるのは決定事項だったんだ。だったら、せめてちょっとでも『大差』が出来るように、ミカに投票しとけよ最初から。お前らだけでも。

 

 

 

 

 

 ……久しぶりに、ムシャクシャして仕方がない気分になった。

 

 

 

 

 

 こういう時、ド変態のミナミが居て本当に助かるね。乱暴にしても、ぞんざいに扱っても悦びまくるから。

 

 

「もう、酷い人…。アリサさん達に嫉妬されそうですね。自分でもちゃんと受け止めるのに、って」

 

 

 ま、それは分かってるし、他人に憤りをぶつけるくらいなら、自分が…って考えも分かるけどね。俺だって、あいつらにいい感情だけを向けていられるとは思ってないし。

 ぶっちゃけ、このイライラをぶつけられて、全然傷つきそうにない人が丁度いい所にいたから、そのままぶつけただけだもんな。

 

 

「私だって、多少は傷つきますよ? …こんな私ですけど、真面目にアイドルだってやってるんです。そのやり口には、多少腹が立ちますね」

 

 

 多少、で済むのか?

 

 

「結果が決められていたのは業腹ですけど、それを踏み越えて進まないと、アイドルなんてやっていられませんよ。理不尽な嫉妬、先輩からの悪意、後輩からの嫌がらせ、同期から足を引っ張られ…。それでも輝くのがアイドルです。一つの道を歩けば、必ず成功と失敗を問われます。どんな理由でも、成功は成功、失敗は失敗なんです。この結果からだけは、逃げられません」

 

 

 ……ミナミにしては、妙に深い事を言うな。

 

 

「そんな事言ってる暇があったら、リンさんの所に行ってあげてください。裏で何かあるのかも、とは伝えていたんでしょう。…今頃は、実力で負けたから仕方ないと思う気持ちと、横槍のせいで負けたという気持ちで葛藤している筈です」

 

 

 ……負けた者に、慰めの言葉をかけろと?

 己惚れるような言い方をするが、惚れた相手をかけた勝負で負けて、その惚れた相手から情けを受けろと?

 

 

「ふふ、ちょっと勘違いしてますね。リンさんはまだ負けていません。確かにライブツアーをかけた戦いには負けましたけど、そのツアーに行こうとしたのは貴方の傍に行く為ですよ。勿論、勝負に負けて悔しいと思っているでしょうけど…まだまだ、彼女は負けてないんです」

 

 

 …………。

 正直、ミナミの論法を信じる訳じゃない。リンの目的が本当に俺だけだったのだとしても、その為のこの勝負に入れ込み、熱を上げていた姿を見ている。

 それが負けて、悔しくない筈がない。慰められて、惨めにならない筈がない。

 ついでに言えば、ミナミは…なんだ、あまり信用しない方がいい。俺に限定しては、だけど。

 俺が他の女を引き摺り込む事を期待してる節があるからなぁ…。エロは自分がするのも好きだが、誰かがされるのを見るのも好きらしい。

 俺を唆して、弱った隙に付け込ませようとしている可能性は十分すぎる程ある。

 

 が、同時にコイツの嗅覚は本物だ。俺がなんか知らんが身に着けてしまったエロレーダーのようなものを、こいつも独自に持って居る。

 自分に都合のいい結果が来るように歪めて表現するかもしれないが、こいつの言う事にも一理はあるんだろう。

 

 

 …いいだろ、行ってくるとしよう。俺が人間関係で動いて、いい結果になった試しはあまりないが…中途半端に関わったってのも、な。

 

 

「ふふ…そういう、私を理解して疑ってくれるところ、好きですよ」

 

 

 お前、外面は異様にいいもんな…。

 んじゃ、お前の思惑通りに行けば、俺は戻らないだろうし…今晩のレア達の玩具にされてくるように。

 

 

 

 ……やっぱり悦びやがった。

 

 

 

 

 

 

 さて、そういう訳で、こっそりリンの実家とやらの様子を伺っていた。

 ふーむ、こうしてみると…大した豪邸…なのか? 豪邸っつーかビニールハウスっつーか。

 この世界でビニールハウスなんざ、そうそう作れたもんじゃないだろうから、そういう意味では金かけてんだろうな。

 

 そのビニールハウスからちょっとだけ離れた所にある、普通の家。…普通と言っても、MH世界の植物に覆われたこの極東基準だから、あんまりアテにならんが。

 ちなみにビニールハウスの中では、色取り取りの花が咲き乱れ、花粉が舞い、つついたら毒が垂れ流される植物が育ち、その真上には衝撃で弾け飛ぶクルミが実っていて…………おい、管理者はちゃんと安全を考えて育ててんのか?

 

 少なくとも、リンはGKNGの幹部…つまりは俺が直接教えた人間ではない。父親と母親も、さっき遠目に確認したが、設立当初のメンバーではないようだ。

 …つーか、俺もMH世界の植物育成について、専門家って訳じゃないんだよな。調合とかのやり方は一通り把握してるけど、それを人工的に育てるのはな…。農場の経営も、ほぼアイルー達に任せてたから、経験が無い。

 つまりは、初期メンバーにすら教えられてないって事だ。このビニールハウスの中は、それを一から分析して彼らなりに安全を考慮して出来上がったものなのか、或いは一山当てた財力にモノを言わせ、事業拡大を狙った結果こうなったものなのか。

 

 …後者臭いなぁ。最初は自力で必死こいてやってたけど、大きくなるに連れて人を雇い、それらの管理と教育が徹底できてないんだろう。企業における、最大の問題点だもんな…。

 近い内に、然るべき筋から監査でも寄越した方がいいだろうか? 実家が人身事故の類を起こしたとなれば、リンの今後にも差しさわりが出るかもしれない。

 

 

 

 …真面目な考察はここまでとして。

 

 

 

「…何でここに居るの?」

 

 

 そういうリンこそ、何で気付いてんですかね。並みのゴッドイーターどころ、ハンター、アサシンでもまず気付けないくらいには気配を消してたつもりだが。

 

 

「何でって言われても…分かったから、としか言いようが。大方、血の力関係なんだろうけどね」

 

 

 確かに、さっきちょっと漏れたような気配はあったが。なんつーか…血の力、と言うよりは…水の力? 色的に。

 

 

「うん、まだちゃんとコントロールはできないけど、何だか紅じゃなくて蒼をイメージすると、すごく体に馴染む感じで。…なんか、このイメージを使った後には、妙な夢をみるんだけど」

 

 

 おう、構わんからどんどん使え。見てて嬉しい衣装が増える予感がする。

 ちなみにブラッドアーツは、使えば使う程強化されていくぞ。血の力も似たような傾向はあるから、ガンガン使って慣れていけ。

 

 

「…で、結局何でここに? 何、慰めにでも来たつもり?」

 

 

 (ちょっと攻撃的だな…。やっぱり割り切れてないか、色んな意味で)

 

 真剣勝負の結果に、慰めなんてもの持ち込む程ヤボじゃないつもりだ。

 …が、お前には裏があるって事を、中途半端に教えちまった。

 

 

 

 ……それ以上に、だな。この本音と言うか愚痴をブチ撒ける相手、仲間が欲しくてよ…。

 

 

「…?」

 

 

 ……ちょっと場所帰るぞ。確か、この近くにカラオケボックスが出来てたよな?

 

 

「うん、防音の奴が。……何であれで防音になるのか、未だに分からないけど」

 

 

 MH世界では、明らかに耳栓じゃないのに耳栓機能が付く防具や装飾品なんて珍しくないからダイジョーブだ。

 では、レッツらごー。

 

 

「…別について行くって言ってないんだけどな…。まぁいいか。思いっきり歌いたい気分だったし」

 

 

 

 

 

 

 

 リンはマイクを握ると離さないタイプだった。

 マイクって言っても、声を増幅するような物じゃなく、単に気分を出す為だけのものだ。カラオケの機材も、どっちかと言うとジュークボックスと言った方がシックリ来る。

 …どっから持ってきたんだろうな、こんな機材。

 

 リンもリンで、よくここまで歌い続けられるなぁ。嫌味じゃないが。…偶には、連れに歌わせてくれてもいいんじゃないかな。

 しかし…リンのアイドルとしての歌は、一切歌ってない。機材に入ってないだけかもしれないが、とにかく古い曲ばかり歌っている。古いを通り越して、旧世界の曲ばかり…。

 しかも、普段のアイドル活動で見せる、洗練された技術は殆ど無い。勢いと肺活量に任せ、とにかく大声で歌っていた。

 

 

 …やっぱ、ふっきれない気持ちがあるんだろうな。憐れむつもりは無いが、思う所も無くはない。

 ついでに言えば……うん、負けた事にされた理由も、多少は理解できた。

 

 

「ふぅ…偶には何も考えずに歌うのもいいね。…あれ、歌わないの?」

 

 

 自分だけガンガン予約入れといて何を言うかね。見た目はクール、中身は熱中すると周囲が見えなくなるタイプなのは知ってるが、随分思いっきり歌ってたなー。

 

 

「ま、歌うのは嫌いじゃないし、思いっきり声出したい気分だったし」

 

 

 ……やっぱり、負けたのが気になってるか。

 

 

「…まぁ、ね。そこまで気にしてるつもりはないけど」

 

 

 少し黙って、目線で続けるよう催促すると、躊躇いながらもリンは語りだした。やはり、吐き出したがっているんだろう。

 

 

「別に、負けたのが初めてな訳じゃないよ。レッスンの一環として、勝負した事も何度かあるし。アイドルとして活動していくなら、どうしたって勝ち負けは出る。…実力以外の理由でも」

 

 

 (実力以外の理由のトコ話したの、やっぱ余計だったかな…)

 

 

「前にも言ったけど、そういうのを踏み越えていかなきゃいけない。だから、負けたのはそういう障害を踏み越えるだけの力が私になかったってだけ」

 

 

 

 

 

「だけ……だし……初めてでもないし。まだまだチャンスはあるって分かってるんだけど」

 

 

 

 

 

「なんでだろ……すっごく、納得できない…」

 

 

 

「今までだって、反省やレベルアップの為に負けた理由を探す事はあっても、言い訳の為に探した事なんかなかったのに」

 

 

「未練がましく、ひっくり返せる理由を探してる」

 

「ミカがすっごく努力してるのは知ってる。でも、自分だって負けてない筈」

「ライブの手応えだってあった。ミカと二人で歌ったステージだから、お互い手応えを感じてたのも分かる」

「どっちが勝ってもおかしくなかったけど。裏の事情も踏み越えてやるって思ってたけど」

 

 

 

 

 

 

 

「なんで私の負けだったんだろう……」

 

 

 

 俯き、か細い声。

 

 

 

 

 

 

 

 

 ……これ、慰めにもなりゃしないし、知った所で意味がないから、本人に言うべきなのか、ずっと迷ってたんだが。

 

 

 実のところ、勝負はリンの勝ちだった。投票数は、数票の差でリンが多かったらしい。…投票期限後に、その数票分がミカに入れられたけど、これは無効だな。

 ある理由により、大きな差がつかない限り、ライブツアーに同行させるのはミカだと予め決められていたんだそうだ。

 

 

「本当に…? ある理由…?」

 

 

 

 ミカが優遇された理由、それは……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 公開プロフィールだ。

 

 

 

「…は?」

 

 

 公開プロフィール。会社がアイドル紹介の一環として、出してるだろ。

 何処まで本当か知らんが、年齢やらスリーサイズやらが乗ってる奴。タケウチ社長の会社は確か、パンフみたいにして配ってたっけか。

 

 

「それは…あるのは知ってるけど。あれが何?」

 

 

 リンもミカもJK…旧世界の学生風、ってイメージでプロデュースしてるから、プロフィールパンフもそれっぽく仕上げてる。

 具体的に、どんな項目があったか覚えてるか?

 

 

「作る時に色々質問されたから、大体は…。ええと、身長、年齢、誕生日、趣味、血液型……学生風って事で、得意な教科と苦手な…………教科……」

 

 

 リンの苦手な教科:英語。

 ミカの苦手な教科:数学。

 

 

 

「………え? まさか、それだけ?」

 

 

 それだけ。英語が苦手な子を諸国に行かせるより、得意じゃないけど苦手でもない子の方がいいだろう、って事になったそうな。

 

 

「いやいやいや、苦手って言ってもどう考えても誤差の範囲でしょ。そもそもこのご時世で、ちゃんとした教育受けてる人なんてどれだけ居るのよ。言っちゃなんだけど、初めてミカと会った時なんて、殆ど字も読めなかったんだからね。採用された直後に猛勉強して、今となっては得意教科:国語になってるけど。ミカの苦手教科が英語じゃないのは、単に日本語だけで手一杯で、英語の勉強した事なかったって意味だからね」

 

 

 そういうリンは、英語の勉強した事あるのか?

 

 

「家が成り上がってから、ちょっとだけ。殆ど使わないから忘れてるけど、ブンポウって言うの? あれも多少は知ってる」

 

 

 SVOCとか懐かしいな。習った当時はOとCの区別がまるでつかなかったもんだ。

 

 

「…ちなみに、ライブツアー先って色々な国だったよね。英語が使われてるのは…」

 

 

 イギリスと北アメリカくらいだな。昔はもっと使ってた国があった筈だが、アラガミの出現で滅茶苦茶になってるからな。

 あと回るのは、中国、スペイン、ロシア、台湾、南アメリカに……。

 

 

「英語使うの一部だけじゃん! つか、英語に限らずその国の言葉が得意だったとしても、現地の人とまともに会話できる自信ないわよ!」

 

 

 

 まぁ、なんだ、結局のところ、そーゆー事だ。 

 

 …言っちゃ悪いが、さっき歌ってた時の発音を考慮しても、英語の発音が出来てるとは、とても言えんしな。

 自分の歌は割とスムーズに発音できてるのに…。

 

 

「そういう発音だって割り切って練習してたから…。歌詞は覚えてるんだけど、発音が文章のどこにどう該当するのかって言われると…」

 

 

 それでどうにかなるもんなのか、アイドルの歌って…。

 

 

「ふ、ふふふ……しかし……そっかぁ…プロフィールの、苦手科目かぁ…。どこで何に躓くか分からない業界だけどさ…。流石に自分の公開情報に足引っ張られるとは…。やっぱり自分が勝ってたんだとか、それなのに不正で負かされたとか、そういうのとは全然違う方向で涙出てきた…」

 

 

 目が死んでおられる…。やりきれない涙を流しながら、机に倒れ込んで動かなくなってしまった。

 …やっぱ、話さなかった方がよかったかなぁ…。

 

 

 

 

 暫く倒れて動かなかったリンだが、無言でムクリと起き上がり、マイクを取った。

 

 

「歌わずにやってられるかー!」

 

 

 …なんだかヤケッパチな歌声が部屋にこだました。

 うん、まぁこれは止められんわ…。あ、ルームサービス頼もう。

 

 

 

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