※この作品はR-18です。

狩りゲー世界転生輪   作:時守 暦

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ドライバのアップデートを自動でやってくれるというソフトを、仕事関係で試していたのですが、エライ目にあった。
いきなりブルートゥースが利かなくなった。どうやら、アップデートと称して互換性の無いのが入ってしまったらしい。
ウィンドウズのアップデートでは最新なのに、どうしてソフトの方では…と思ってたが、そういうオチか。
デバイスマネージャーからのドライバ変更でどうにかなったけど、あんまりああいうのは使ったらいかんな…。


第365話

 

神産月

 

 とりあえず、今朝はアンチョビが寝惚けている間にさっさと退散した。結局、一晩中頭を撫でてたな。とっくに眠りに落ちているのに、何となく止める気になれなかった。

 つまり、一晩寝顔を眺めていた訳だが、それは勘弁してほしい。

 

 朝食の席には、顔を赤くしながらも出てきていた。態度がぎこちなかったけど。

 それを見てニヤニヤしてる者が複数居るけど、違うからな? 手は出してないからな?

 

 

「分かってますよぉ。ドゥーチェが『経験』しちゃってるなら、あんなリアクションじゃ済みませんって。で? で? ドゥーチェに何をしたんですか? 場合によっては、このフォークが唸りを上げますけど」

 

 

 …流石に経験が多いだけあって、無駄に正確に察してるな。

 単純に、一晩甘えさせただけだ。頭を撫でて寝かしつけた程度だよ。

 

 

「フォークは勘弁してあげますが、このデスソースが光って轟き叫びます!」

 

 

 何で!?

 

 

「何でも何も、そこまでやったらちゃんと口説いてくださいよー。ドゥーチェからしてみれば、生殺しじゃないですか!」

 

 

 何で生殺しよ…。そんな事は自分で考えろ? なんやねん。いや多少は予想できるけど。

 

 何はともあれ、今日でアメリカから出国する予定である。

 何とも忙しない事だ。折角海外旅行なんだから、もうちょっとのんびり観光させてくれてもいいのにな。初日は半日以上かけて渡米して、俺はそのままアラガミ討伐、アイドル達はインタビュー対応。翌日にはライブ+現地調査。その翌日は1日だけ休みで、続いて半日くらいのライブ。次の日は出国。

 …ライブツアーってこういうものか? 予想以上に盛り上がり、ライブが思ったよりも長くなったのは確かだが、ライブツアーってこんな強行軍なの?

 

 

「んー、確かにキツいよね…。でも、のんびりしてると、それだけ黒蛛病で苦しんでる人達が…って事にならない?」

 

 

 ミカの言う事は尤もだと思うが、それを言い出したらキリがないしなぁ…。

 

 

「旧世界ではこういうライブツアーも結構あったらしいけど、その時の資料も殆ど残ってないんだって。とにかくやってみたけど、色々不手際が出たって感じはあるね」

 

 

 限度があるだろ、流石に…。まぁ、今更言っても仕方ないけどさ。

 で、皆出発の用意は出来てるのか?

 

 

「私は大丈夫だよ。…ぶっ倒れてたから、半分以上はリカがやってくれたんだけど」

 

「仕方ないよ、お姉ちゃん。今だって、実は疲れてるのを隠してるんじゃない?」

 

「力を使い果たしたようでしたものね。よく2度目のライブで倒れなかったものです。ああ、私の用意は着替え程度なので、問題はありません。やろうと思えば取りに帰る事もできますし」

 

 

 …次のライブ場所、何処だったっけな。タカネはどんだけ走って忘れ物を取りに来るつもりだろうか。

 カエデさんは?

 

 

「………助けてください、お母さ~~ん」

 

「誰がお母さんか!? と言うか毎度毎度そういう準備は自分でしろと…! ああもう、チームの皆も不安だから、一度総点検しないと…」

 

 

 …大変だなぁ、アンチョビは。今はこのまま世話をさせとくか。

 …しかし何だな、アンチョビは置いといて、この25歳児とはあんまり絡んでないな。別に、積極的に何かしようと思っている訳でもないんだけど…。

 

 

 

 

 

 まー色々と細かい事はあるが、とりあえず出国。

 ファン達の見送りが凄かったなぁ…。たった2~3日でよく用意できたなと思うような、横断幕やらメガホンやら…サイリウムっぽいけど、資材が無かったのか技術的に難しかったのか、なんか色のついた棒とか、サイズ的にどうよと思うようなシャツとか。

 …でもさ、幾ら何でも飛行機をぶっ壊してでも足止めしようとするのはアカンやろ。一般警備員にすぐ取り押さえられたけど。

 

 あっ、リカと話してたスイカ男も見送りに来てる。…早速シンパを増やしたらしい。

 いや単なる友人が一緒に来てただけかもしれないけど、とにかくGKNG海外支部は順調に規模を広げようとしているようだった。 

 

 

 まぁ、何だ。短い間だったけど、結構楽しかったぞ、アメリカ。今度はもっと時間を確保して来るからな!

 ………出国直前に、大〇領からの感謝のメッセージを読み上げられたような気がしたが、周囲の騒音がうるさくて聞こえないなー!

 

 

 

 さて、次に向かう国は……イタリアか。イタリア……教会が乱立してるイメージがあるな。

 ライブを行う場所は4か所。ローマ、ミラノ、ピサ、ヴェネツィア…。…うむ、さっぱり地理が分からん。

 と言うか、4か所でやるのか…。国の広さで言えばアメリカの方が大きいだろうに、何でイタリアで4回、アメリカで2回?

 

 …何にせよ、平和な観光は出来そうにない。物騒な考えを持つ連中がどうの、パパラッチがどうのではなくて…あっちも、アラガミによってかなりの被害が出てるからな。

 

 

 

 

 

 追記

 

 アンチョビの様子がおかしい。俺との距離感に戸惑っているのもあると思うけど、もうちょっと別の事でおかしい。

 俺との事だけなら、こんなに長引かないだろうし、何より自分の庇護下にあるチームアンツィオの子達を、疑うような視線で見る事は無いと思う。

 あんな視線を向けるなんて、何があったんだ…?

 

 

神産月

 

 

 飛行機の移動も、2度目となれば飽きるもの。眼下に広がるのが、綺麗だけど代わり映えのない雲と海だけじゃ、猶更な。

 最初は大騒ぎしていた子供達(主に精神年齢が)も、暇だ暇だとブーたれるようになっていた。まー実際、やる事も出来る事も何もないからな。ペパロニの嬢ちゃんは料理がしたいと騒いでいる。

 

 座席の画面で放映されている映画も、ぶっちゃけ面白くない。観光特集でも流した方が、まだマシだろうに…。

 途中で皆して熟睡し、寝惚け眼でイタリアの空港に降り立つ事になった。そんな状況でも、髪型やらメイクやらをしっかり整えている女性達は流石である。プロ根性を感じるね。

 

 アメリカのステージで、興業的にも黒蛛病治療的にも大成功を収めた為、注目度はアメリカに到着した時よりも更に上がっている。飛行機の扉が開くと同時に、フラッシュフラッシュフラッシュ…ピカチュウか。

 

 あっちの対応は言語に不自由しないタカネに主に任せ、リカやアンツィオの面々はアンチョビに任せるとして(正直、両方とも不安はある)、俺は案内役・護衛役のゴッドイーターと合流しなければならない。アメリカの時もそうだったが、不穏な動きが無いとは限らないのだ。

 さて、今のところ危険そうな気配はないが、案内役は………あれ?

 

 

 …なんか、見覚えのある顔が居るんですけど。

 

 

 

「…呆けていないで、早く来てください。こちらです。…歓迎しますよ。ようこそ、イタリア、ヴェネツィアへ」

 

 

 お、おう…。ていうか、お前フランだよな。

 フライアの事務員で、能力的にも外見的にも16歳に見えない事に定評のあるフラフラフランだよな?

 

 

「少なくとも、その名で呼ぶ事を許した事はありません。私は正真正銘、フラン=フランソワ=フランチェスカ・ド・ブルゴーニュです。あと16歳に見えないとはどういう意味ですか。私は正真正銘16歳です」

 

 

 飲酒。しかも超常習犯。

 

 

「……さて、あまり時間はありません。手早く話を勧めます。今後の予定ですが、まずはホテルに移動します。少々距離がありますので、夕刻を過ぎてからの到着となるでしょう。夕食は幾つかメニューを用意していますので、お好きな物をお選びください」

 

 

 立て板に水の言葉通り、フランはすらすらと今後の予定を述べていく。休息や観光、エステなんかの予定まで組んでるんだから、至れり尽くせりですな。

 そこまでやれる余裕が、国にあるのか…。

 

 

「アメリカと比べると被害が少なかったのもありますが、どちらかと言うと国柄ですね。レディファーストが骨の髄まで染み込んでいますので。…ところで、護衛の事ですが」

 

 

 うん?

 

 

「率直に言えば、あなたには必要ありませんので、ディバイダ―を手配しています」

 

 

 おいおい…。

 

 

「事実です。ブラッド隊だけでなく、腕利き揃いと評判の極東ゴッドイーターですら、あなたの戦力の足元にも及びません。貴方に護衛を手配するくらいなら、あちらで脚光を浴びている彼女達に付けます」

 

 

 褒められているのか蔑ろにされているのか…。しかし、確かにイタリアのゴッドイーター…知ってる奴は居ないな。フェデナントカ君が居たような気がするが、少なくとも面識はない。ゲームでも目立たなかったと思う。

 まーそれはこの際いいとして、ディバイダ―ってのは何ぞ?

 

 

「簡単に言えば、サポート役です。ゴッドイーターの強化、及び戦術的支援を目的とした、最近注目されている人員です。…そう言えば極東では広まっていませんでしたね。戦闘力としては準一級ですが、彼らのサポートがあれば、前線のゴッドイーターは非常に戦いやすくなります」

 

 

 あー、リッカさんが作ってる、リンクサポートデバイスと同じようなもんか。アレは今一つ上手くいってないようだが。

 しかし、サポートが付くのは有難い。……極東語、できる人?

 

 

「勿論です。…あちらです」

 

 

 ……あの人? あの、ある意味すっごい目立つけど、全然目立たない人。ロマンスグレーの代名詞みたいな人? 名前はセバスチャン? それともミュンヒハウゼン?

 

 

「ハミルトンです。見ての通り……その、執事です」

 

 

 ああ執事だな。見間違えようもなく執事だな。

 執事服に、丸眼鏡に、白い手袋。そんだけ特徴的な恰好の割に、背景に溶け込む…と言うよりは、自己主張せずに背景として立っている姿。

 絵に描いたような執事である。執事喫茶にでも行けば、大受けするか、なんちゃって執事が我慢できずにガチ指導するかのどっちかだろう。

 

 

 …後は、主人が近くに居れば完璧だな。と言うか、執事ってこんな場所に一人で来るものなの? それこそ、主に恥をかかせないように、TPOを弁えるんじゃないの? いや執事服でもスーツと言われればそれ程違和感はないけど。

 

 

「私に言われても知りません。私だって、直接会ったのは昨日が初めてなんです。紅茶は美味しかったけど…。そもそも執事云々を言うなら、家事や事務を引き受け監督する執事が、どうしてゴッドイーターとして戦場に出てくるんですか。旧世界の創作ではあるまいし、普通の執事に戦闘能力はありませんよ。そもそも、戦場に出てくる時点で職務放棄でしょう」

 

 

 あー…そりゃそうだな…。私的な秘書の立ち位置でもあったそうだから、護衛能力の高い執事は居たと思うけど。

 まぁ、こうしてても仕方ないな。とりあえず話しかけようか。

 

 

「そうですね。…お待たせしました」

 

「刻限通り。流石ですな、フラン様。…そして、貴方様が…。申し遅れました。わたくし、ハミルトンと申します。見ての通りの執事でございます」

 

 

 よ、よろしくお願いします。…ガチ執事なのかコスプレガチ勢なのか、判断に困るな。

 少なくとも礼節はしっかりしている。動作の端々から、格調高い教養と教育が見え隠れする。極東語の発音も、下手な極東人よりスマートなくらいだ。

 

 

「では、先に行って車の準備をしておきましょう。本日は時間が取れませんが、機会があれば茶会に招待したく存じます」

 

 

 アッハイ。

 ハミルトンさんの誘導に従い、人目を避けて送迎用の車に向かう。車に乗り込む時、扉を開ける動きに年季を感じた。

 

 記者会見も程々に…まぁ、写真撮られまくってるのはいいとして…やってくるアイドル達。記者の群れに混じって、一人のゴッドイーターが目についた。

 

 

「気付かれましたか。アイドル方の警備を担当する、セリカ・ジタ・サルヴァトーレでございます。イタリア支部でも有数の使い手でございます」

 

 

 へぇ…。確かに強そうだな。動きの癖からして、ハンマー使いか。しかし、年齢は…いやゴッドイーターに年齢なんて言っても仕方ないか。あんまり絡んだ事は無いが、エリナの年齢もアレだしね。

 …視線の配り方は、人間や、人間サイズ相手じゃない。デカブツを主に相手していると見た。この辺のアラガミについての資料はざっと確認した程度だが、デカブツ=高難易度の認識でいいか?

 

 

「ええ、基本はそれで結構です。ヴァジュラだのクァドリガだの、ああいったアラガミが日常的に発見されるのは、極東くらいですよ…。今でこそこんな言い方が出来ますが、ここではコンゴウのようなアラガミが出ただけで、大騒ぎになりますからね」

 

 

 コンゴウでかよ…。ハガンならまだしも…。

 つぅ事は、あの子はその大騒ぎになる大物狩り…言い換えれば、危険な高難易度任務を進んで受ける傾向がある訳だ。危険を楽しむ人間特有の気配もないし、何ぞ意地でも張ってんのかね。

 

 仕立てのいい服を着ているが、服に着られているような事は無い。あのくらいの服を普通に着れる、上流階級かな。名前もあからさまにソレっぽいし。それにしてはアクセサリ類は、ごくごく一般的な物…。上流階級出身だけど、そこを飛び出したか、その力を使う事を嫌っている?

 

 

「相変わらず異様な洞察力…。女性を一目見ただけでそこまで予想できるとは、アリサさんがドン引きする気持ちがよく分かります」

 

 

 視覚から得られる情報は重要だぞ。動き、手札、性格、負傷状態、色々分かる。…ていうか、あの子ちょっと怪我…じゃないな。何日か前に、デカいダメージ喰らったみたいだな。体の動きがぎこちない。

 ああ、それでこの任務って訳か。慣れない人間相手でも、体を休める事はできるだろうって。

 んー、指示したヤツは、気遣いが出来る上官だけど、少々楽観的な傾向ありと。簡単そうでも、慣れない任務を充てて休息扱いするのであれば、現場慣れしてない上司と見た。

 

 

「…なんとも恐ろしい…。これが、フラン様が極東でも随一と称したゴッドイーターの実力ですか」

 

 

 妄想が逞しいだけですな。と言うか、フラン、そんなに俺を褒めてた訳?

 

 

「事実を述べたまでです。一部からは伝説扱いされているリンドウさんでさえ、殲滅や駆除、強力なアラガミを狩る事にかけてはレベルが違うと称していましたから」

 

 

 まーあの人の真価は、チームを含めた生存能力だし。

 …お、来たか。

 

 

「やーやーお待たせ。こんな高級そうな車に乗っていいのかな(震え声)」

 

「その為の車なのですから、ご遠慮なく。元より防弾性能にも優れた、要人警護用の車でもありますので」

 

「あれ、貴方は確か……フェンリル本部に居た…」

 

「フラン=フランソワ=フランチェスカ・ド・ブルゴーニュです。フランとお呼びください。その節はどうも」

 

「は、ははは…ご迷惑をおかけしました…おかげで妹も無事でした」

 

 

 いつぞや、リカを助けてくれと乱入した話か。あの時フランも居たんだな。バツが悪そうだが、とりあえず入れ入れ。

 全員が乗り込んだので、フラッシュを振り切るように走り出す車。うーむ、なんと静かな発進か。

 

 

「えーと、どうしてフランさんがここに? 確か、ブラッド隊? の所属でしたよね」

 

「私はブラッドの関係者ではありますが、隊員ではありません。あくまで所属はフライアです。…ですが、そのフライアも今しばらく極東に滞在し、運航の予定もありません。極東の事務作業やサポート業務も、非常に高いレベルで運営されていますし、学べる事は多くあれど…」

 

「つまり、どうしても自分でなければいけない仕事が無くなったと」

 

「……ええ、そうです」

 

 

 タカネの歯に衣着せぬ物言いに、憮然とするフラン。まぁ、そんな仕事なんてそう多くないよね。責任者クラスならともかく、フランは一介のオペレーターな訳だし。

 でも、左遷された訳でもなさそうだが?

 

 

「無論です。極東の知識や情報を欲しがった本国に、一時的に呼び出されているだけの事。…確かにラケル博士からは『ついでに有休を消化してきなさい』と言われましたが」

 

 

 …有給? あのラケルてんてーが?

 と言うか、里帰りか? フランってイタリア出身だったの?

 

 

「ブルゴーニュの名の通り、私はフランス人です。厳密にいうと、色々違うのですが…とりあえずその認識で結構です。我が家の家系図は色々ややこしいので」

 

「ふぅん。よく分からないけど、大変そうだね…。で、今日も有給?」

 

「こうして貴方達の送り迎えを担当していますので、今は仕事中ですね。…正直、有休を消化できるか怪しい状況ですが。フライアでの守秘義務があると言うのに、それを無視して血の力の情報や訓練法を聞き出そうとする者も多いし、それ以上に極東が緑に覆われている状況の証拠を提示すると、同盟だ商売だ、更にはGKNGへの伝手を作れだの…」

 

「あー…」

 

 

 まぁ、そうなるよな…。

 手荒な真似はされてないだろうな? 何かヤバそうな案件があるなら、俺も手を貸すぞ。闇の黒幕を誰にも知られず闇に葬るのから、もっとライトに証拠をつかんで社会的に攻撃するのまで。

 

 

「貴方に頼むと大惨事が引きこされる未来が見えるので、当面は結構です。私も、やられっぱなしでいた訳ではありませんし、協力者も居ますので」

 

 

 …意味深に、フランは少し笑った。むぅ、影がかかってアレな表情に見えるね。ダークサイドに落ちたか?

 

 

 

「ところで話は変わりますが、アメリカのニュースを見ましたか?」

 

「ニュースって言われても…ホテルにテレビはあったけど、英語分からないし」

 

「いえ、ホテルに居た頃は、恐らくニュースは流れていなかったでしょう。……油田が発見されたそうです」

 

 

 油田? 石油の?

 

 

「ええ。明らかに、天然のモノとは思えないそうですが」

 

 

 天然でない油田って何さ?

 

 

「通常、油田の石油は浅くても100メートル以上の地下にあります。石油が出来上がる仕組みについては幾つか仮説がありますが、そう簡単に掘り出せるような場所にある物ではありません。ですが、今回発見された油田は、地下数十メートルの場所にあったのです」

 

 

 えらい浅いな…。地下水脈とかに紛れ込んでそうだ。

 

 

「……正に、それです。記録によれば、水脈があった場所に、石油がありました。埋蔵量については、現在調査中です」

 

 

 

 

 

 

 

 は?

 

 

 

「もう少し情報を付け加えると、そこは黒蛛病に汚染されていた畑です」

 

 

 

 

 

 

 は?

 

 

 

 ええと、何? つまり?

 

 

「現在調査中で、目に見える情報だけを繋ぎ合わせたら、という事ですが…黒蛛病を血の力、或いは歌によって浄化した事により、地下で石油が出来上がったと」

 

「えぇ……」

 

 

 ミカがナニソレシラナイ、とばかりに呻いている。石油の使い道、金儲けと言われてもピンとこないが、自分の歌で貴重な資源が出来上がった…と言われても、そりゃ信じられないだろう。

 

 

「…有り得る事ですか?」

 

 

 正直、なんとも…。無理に理屈をつけるとすれば、浄化された黒蛛病の…なんだ、エネルギーと言うか発生源が、地上の物は風に吹かれて散っていったけど、地下にあったエネルギーが結晶化するなりその場にあった物体に作用するなりして、何らかの変化を起こしたとか…。

 全く有り得ない、とは言えないのがこの業界なんだよなぁ…。

 

 つーか、何か? もしもこれが本当だとしたら、黒蛛病で土地が汚染されて、それを回復させる事で石油精製が可能になると?

 

 

「確実性のある話かはともかくとして、そうなりますね。とは言え、これを即座に活かす方法はないでしょう。石油採掘ともなると、相応の設備とルートが必要になってきます。それ以前に、今のアメリカからすれば、金の成る木よりも果物の成る木の方が欲しいでしょう」

 

 

 金は人間社会じゃ万能の交渉手段だけど、モノが無けりゃ金の使いどころも無いんだなぁ…。ぶっちゃけ、金は喰えん。アラガミじゃあるまいし。

 しかし、確定ではないとは言え、アイドルや血の力に余計な付加価値がついたな。妙な事を考えるバカが出なければいいが。

 

 

「大丈夫じゃない? 守ってくれるでしょ」

 

 

 力の限りね。

 

 

「それに、石油なんかより私達のステージの方が、ずっと価値があるって思わせればいいのよ。燃える水なんかに負けやしないわ」

 

 

 言い切るねぇ…。石油よりも価値のあるステージか。一発当てれば大富豪と言われる油田以上とは豪語するもんだ。

 価値を知らぬが故とも言えるが、そういう姿勢は嫌いじゃない。

 

 ミカの発言に、心なしか頬を緩めた…ように見えなくもないフラン。しかしすぐに元の表情に戻ってしまった。

 

 

「何れにせよ、このライブツアーはあらゆる意味で注目の的となりました。その分、敵…所謂『アンチ』という奴も増えてくるでしょう。言われない悪評や、つけ入る隙を与えないよう、今まで以上に言動に気をつけてください」

 

 

 気をつけろって言われてもなぁ…。やれやれ、面倒な事になりそうだ。

 見えてきたホテルを眺めながら、他人事のようにそう思った。

 

 

 

 

 

 

 到着したのは、ホテルと言うよりは貸家のような家だった。悪い意味で言っているのではない。手入れは行き届いているし、ベッド、トイレ、その他諸々も綺麗で新しく見える。

 文字通り、一軒家を何件か、丸ごと貸し出されたような状態だった。

 

 

「ちょっと予想外だよね。てっきり、アメリカの時みたいに高い建物があって、そこに泊まるのかと思ってた」

 

 

 アメリカの方が例外なんだよ、あれは。俺も気付かなかったが、このアラガミが闊歩するご時世に、あんな高層ビルなんて建ててみろ。餌がここにあるぞって言ってるようなもんじゃないか。

 事実、デカイ建築物の殆どは食い尽されてる。残っているとしたら、アラガミが見向きもしないゲテモノ素材で作られてる何かか、そこまでアラガミの侵入を許さなかった結果、偶然残っている所だけだろうよ。

 

 

「そっかぁ…。じゃあ、またあんな高い(値段的にも物理的にも)所に泊まれる機会はなさそうかぁ…」

 

 

 それこそ、今後の行き先次第だと思うけどな。まーこういう家もいいんじゃないか? ノスタルジックと言うか、古き良き家みたいな感じで。

 

 

「別に不満があるんじゃないよ。…まぁ、昔だったら、もっと景色が良かったんだろうな、と思うけど」

 

 

 ミカの視線が外に向く。そこには、花畑が広がっている…のだが、どうにもその更に向こうに見える、荒れ果てた土地の印象が強い。

 ついでに言うなら、花畑も咲き誇っている訳ではなく、何処からか持ってきた物を植えて何とか形にした、という印象だ。それに気付けるのは、天然(?)の植物と触れ合う機会が多い、極東育ちだからだろう。…普通に考えれば、貴重な花をわざわざ持ってきて植え替えるような真似は、どれだけ金を積めば出来るか分からないくらいの贅沢なのだ。

 

 

「あ、やっぱりそうなんだ? リカが難しい顔して花畑を眺めてたから、何かあると思ってたけど」

 

 

 あー、道理でさっきから、外で地面弄ったり、花の種類を調べたりしてる訳だ。…GKNG海外支部、今度は花で始める気かな。

 

 

「そっちはリカの好きにさせてあげてよ。勿論、何かあったら私も手伝うけど。…私達はこれから、ライブの打ち合わせがあるけど…どうする?」

 

 

 俺はこの辺の地形確認とか、不届き者が居ないかとかの確認をしておくよ。もう日も暮れるし、リカを一人にしておく訳にもいかんだろ。

 

 

「ん、お願いね」

 

 

 

 

 

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