※この作品はR-18です。

狩りゲー世界転生輪   作:時守 暦

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第369話

 

 

神変月

 

 

 翌日のフランは腰を擦りつつ頭を抱えていた。一応、何がどうなってああなったのか覚えてはいたようなので、文句は言われなかったが。

 

 カエデさんはと言うと……意外と何も変わってないように見えた。相変わらず、酒と駄洒落が大好きで、俺に対する態度もあまり変わりはない。

 …ただ、よくも悪くも「何か」は変わったらしい。彼女の血の力は一層強力なものとなり、歌も……どこがどうとは言わないが、雰囲気が変わった…ような気がする。陽気ながらも、僅かに憂いを帯びていたのが、取り払われてしまった……の、かな?

 別にそれが悪い事とは言わないんだけど、なんちゅーの、その、明るさを引き立てる為の小さな暗さが消えた? 感じ?

 単純に考えれば、とある人への未練を吹っ切ったんだろう。昨晩のR-18でが切っ掛けなのかはよく分からんが。

 初めてでもなかったようだし、案外彼女にとって、そこまで大した事ではなかったのかもしれない。…あんまり深く首を突っ込みたくはないけどな。懸想していた相手が相手だから、下手するとドロドロのオフィスラブか修羅場を垣間見てしまうやもしれん。

 

 「機会があったら、またお願いしますね」なんて言われたけど…どうしたもんだろうか。

 

 

 

 

 さて、話は変わるが、明日はライブ。お休みは今日までだ。タカネ達も今日からは切り替えて、最後の調整や打ち合わせに入っている。

 俺はと言うと……まだ、黒蛛病感染のルートを見つけ出せてない。アメリカで知り合った研究者と何度かメールをやり取りし、不自然な点や疑問点は幾つか見つかっているのだが、これと言った決定打が見つからず。

 正直、数日の調査で何か判明する方がおかしい…と言われるとそれまで何だが、今後の為にももうちょっと実績を残しておきたい。

 

 ライブの打ち合わせに真剣なアイドル達を残し、俺は街を歩き回っている。決して遊び歩いている訳じゃない。

 …確かに、イタリアの味を研究中のペパロニ嬢ちゃんにバッタリ会ってタカられたり、ミカに贈る為のちょっといい首輪とかを物色しているが、メインは調査なのだ。

 

 各地を巡って、水の中に溶け込んでいる血の力を検証しているが、そもそも薄すぎて殆ど分からない。

 これで本当に、時間がかかるとはいえ黒蛛病になるのか疑問なレベルだ。

 

 

 

 …うん、実際問題、本当に疑問だよな…。考えてみれば、この黒蛛病と言うのも妙な病気だ。

 実際には病気と言うより、呪いに分類されると思うが、そこら辺は今は置いておく。

 

 世界各地で猛威を奮う、謎の病。赤い雨という現象から発生し、接触感染する。

 共通点は、感染者の体に蜘蛛のような模様が現れる事と、赤い雨が近づくと苦しさを感じるという事。

 

 更に言うなら、地域によって微妙に特徴が異なる。アメリカでは人だけでなく植物、大地に感染し、イタリアでは薄っすらと水を汚染している。

 本来なら水と一緒に流れて行くだろうに、どういう訳だかイタリアでは人が多い都市部に引き留められている。

 この違い、特色は、何処から来る物なのだろうか?

 

 頭を捻っても、答えはでない。

 

 

 

 

 …気分を変えよう。

 折角イタリアに来たんだし、何か面白い物とかないかな。イタリア女を抱いてみたい…けど、今はペパロニ嬢ちゃんのお守もしてるから、そっち系はパスだ。

 まだ機能してるかは分からんが、確か売春を禁じる法律もあったしな…。

 

 

「開祖様、どうしたんすか? 病気っすか?」

 

 

 何でもないよ、ペパロニ嬢ちゃん。いいから飯食ってろよ。

 

 …病気? 病気…今、何か引っかかるモノがあったような…。イタリアで第一に引っ掛かる病気っつったら………偏見で悪いけど、やっぱアレか。性病関連か。

 性病……あんまり詳しくないなぁ。これも接触感染っちゃ接触感染か。何かのヒントになるかもしれないし、誰かに聞いてみようかな…。

 

 

 

 

 

 

 

 …流石に、昨晩イタしたばっかりの相手に、性病の事を聞くのはデリカシーがなかった。

 待て落ち着け、確かに俺は大勢相手が居るけど、誰もソッチ系の病気にはかかってないから。かかってたとしても、オカルト版真言立川流で消毒できるから。

 別に、フランが感染してるんじゃないかと疑ってる訳でもないから。

 でも真面目な話、サバトゴッコするにしても道具は選べよ。

 

 待て、落ち着け、真面目な話なんだ。最後まで聞け。

 えーっと…そうそう、元は黒蛛病の事なんだ。考えて見れば、意外と性病と似てる部分がある気がして、何か調査の手掛かりになるんじゃないかと。いや本当に。

 

 

 

 

 

 

 …フランがあっさりと、一つの説を考えついてしまった。色々考えていた俺の苦労は一体…いや色々っつっても、たった数日程度なんだから、本職研究者に比べれば…。

 

 

 

 ともあれ、説と言うのは非常に単純だ。「生活排水が汚染されているのではないか」である。

 生活排水と言うか、歯磨きに使った水とか、小便とかね。

 実際、公衆トイレでそういう病気に感染したという話もあった。

 

 …水で流れて行くなら、人の血、尿などに宿って流れてもおかしくない。人が多い場所に黒蛛病のエネルギーが留まっているのは、それ故ではないか?

 無論、この話にだって穴はある。薄っすらと残る程度とは言え、水の都の水を汚染する程のエネルギー量だ。一人二人の生活排水じゃないよなぁ…。

 

 ……まさか…無い…よな? 実は、黒蛛病患者が一か所に集められて、隠蔽されているとか。

 一か所に集められるのは、感染の危険があるから仕方ないが、実はそこがスラム状態とか…。

 

 そういや、性病だって事を隠して多くの相手と関係を持った男が処罰を受けたって話が…。

 

 

 …ない、よな?

 

 

「私も一度疑念を持って調べた事がありますが、少なくとも私はそういう話は見つかりませんでした。そもそも、黒蛛病患者を一か所に集めて隔離するのは、国際法でも仕方ない事と認められています。わざわざ隠す理由がありません」

 

 

 そうか…。

 

 

 

 

 

 

 

 あ。

 

 

 

 

 じゃあ、人以外の黒蛛病は?

 

 

「ですから、アメリカでは植物、イタリアでは水と…」

 

 

 そうじゃなくて、動物。ネズミとかさ。アラガミが出るようになって随分数が減ったようだが、まだ生き残りが居るだろ。

 感染した小動物のコロニーとかがあったら…。

 

 

「…数と、一体における黒蛛病の状態がどれ程のモノか、現状では何とも言えませんが…調査しておかねばならないようです。失礼、この話を上層部に伝えてきます」

 

 

 うん、頼んだ。…可能性でしかないが、無視できる話でもない、か。

 もしもこの想像が当たっていた場合、最悪はMH世界での狂竜病によるモンスターラッシュが再現されかねない。…あれで死んだもんなぁ、俺…。

 

 

 ま、考え得る可能性の一つを提示したって事で、俺の仕事はここまででいいか。

 言っちゃ悪いが、俺は学者でも何でもない。血の力の専門家で、黒蛛病を治せる数少ない人間ではあるが、何もかもを解決できる筈もない。…期待外れって言われるかもしれないが、気にしないもんね。気にしないもんね。

 

 

 

 

神変月

 

 

 とりあえずこの国での調査は一段落したので、後はライブを楽しむだけだ。

 正直な話、成功を確信している。前人気も上々だし、それに望むアイドル達の士気も高い。

 

 …ただ一人、陰りを残す者も居るが。言うまでもなく、アンチョビだ。

 俺が調査に出掛けている間に、何やら色々と嗅ぎまわり、色々と知ってしまったらしい。

 一人二人についてではない。R-18チームの殆どを、だ。むぅ、今まで気付かなかったと言うのに、妙な所で名探偵振りを発揮しおって。

 

 

 さて、どうしたものか…。最悪な事に、R-18チームの決断を待たずして、アンチョビが真実を知ってしまった。

 隠し事はバレた時が怖いと言う。その言葉の通りなら、アンチョビは最大限のダメージを受けてしまった訳で。

 

 …どうしよう。平静を装うアンチョビの態度と、壁が痛い。こりゃ、俺が売春に応じた事か、最低でもR-18チームと付き合いがあった事は知られているな。

 いや本当にもうどうしよう。俺の言葉は、アンチョビにはきっと届かない。何故なら、信頼を裏切っていたから。信じていない相手、しかも犯罪者や裏切者の言葉を、誰が信じるのか。

 

 祈るしかない? バカ言え、祈っても何もしなかったら、どんな事だって悪化以外の変化はしないのだ。ついでに言えば、後悔なんてオプションが漏れなくついて来る。

 だから、毎度毎度、裏目に出てばかりとは思っても、行動するように心がけてるんだが…。

 

 

 

 …今回に限っては、静観という方法を取る。いや、正確に言うなら、仕込だけして、後は待つ。何もしないのではなく、待つという選択を取る。

 無責任な事を言うようだが、俺は確信している。

 

 どうやったって、アンチョビはチームアンツィオから離れる事は無い。絆を信じている、と言うべきだろうか?

 確かに、R-18チームはアンチョビの倫理観から離れた事をしたかもしれない。しかし、その根っこはアンチョビの為だ。

 例え、自分の努力に陰を刺されたような心持になろうと、それで彼女達を切り捨てる事なんかできやしない。

 どうにかして、アンチョビは自分の心と彼女達の行いに、折り合いをつけようとするだろう。

 

 チームアンツィオは、アンチョビにとって体の半分と言ってもいいのだから。

 

 

 

 

 と言う訳で、ペパロニ嬢ちゃん、ちょっと行ってこい。

 

 

「オッス! …といいたいトコですけど、何があったんすか?」

 

 

 アンチョビとチームの一部が、ちょいと仲違いしてるんだよ。

 別に険悪になってる訳じゃないが、今後の方針についてだからなぁ…。

 

 

「そこじゃないっす。いつものドゥーチェなら、反対意見が出たって、それを真向から受け止めるっすよ。喧々囂々する事はあっても、チームアンツィオじゃ仲間割れはしないっす」

 

 

 …大した信頼関係だ。

 

 

「それに! 開祖様の行動だって、怪しいっすよ! 開祖様なら、一々アタシを仲介したりせずに、自分で突っ込んでいくっす。何か仕掛けるなら、別の人を仲介させるし…。つまりこれは…」

 

 

 結構よく見てるな、ペパロニの嬢ちゃん…。ある意味、チームアンツィオで2番目に重要な人物だからな。こいつが居なけりゃ、アンチョビを陰に日向に助けてくれるコネは作れなかったんだし。

 さて、どうしたものか…こういうタイプは、頭で考えてないから口先で丸め込もうにも…。

 

 

「アタシの料理が必要なんすね!? さぁ、注文は何っすか!? このライブツアーでレベルアップした数々の必殺メニューの実験台になるっすよ!」

 

 

 …うん、そうだな。間違っちゃいないな。

 ううむ、評価に困る子だ…。何も考えてないかと思えば意外と勘が鋭いし、かと思えば斜めに間違った回答、しかし仲間の事は全く疑わない。

 

 必ず殺しちゃ駄目だろう、しかも実験台かよという定番の突っ込みは日記に書くだけ書いて置いといて。

 

 そうだな…アンチョビと、あいつらが一番よく食べてた料理…って分かるかな?

 

 

 

 ま、ベタな演出だが……こんなもんでいいだろ。アンチョビって割と少女文学脳みたいだし、ペパロニの料理がチームアンツィオの特効薬であるのは事実だ。

 

 

 

 さて、アンチョビとチームアンツィオの事は、一旦これで置いておくとして、ライブが始まるまでにやっておかないといけない事がもう一つある。

 ミカの事だ。

 毎度毎度、力を使い果たしてぶっ倒れるのは問題だと、自分でも分かっているだろうし、今回もそれで悩んでいるようだった。まぁ、それ以上に突っ走るのを楽しんでいる感じが強いが。

 

 リカが、首輪をはめたミカを想像して、何やら危険な哂いを浮かべていたような気もするが、それはそれだ。そうなったらそうなったで、俺も愉しいから問題ない。

 と言う訳で、ミカがライブ衣装に着替える前に呼び出して、これを手渡したんだが…。

 

 

「え……これ、私に?」

 

 

 戸惑ったように受け取るミカ。そりゃそーだ。仮にも女の子、しかも…まぁその、お互いそういう趣味だと分かってるならともかく、深い仲でもない男から、首輪貰っても困るだろう。ペットがいる訳でもないのに。…本人は、バリバリにオトコを飼いならして貢がせていると豪語するが。ファンの内、どれだけそれを信じているかは言うまい。

 が、ミカはそれこそ初恋を拗らせて29歳くらいまで引きずった子が、正にその相手(歳の差14歳くらい)から指輪を受け取って少女漫画(笑)風味に呆けるくらいに、顔を赤くして戸惑っている。

 

 …その、なんだ。

 自分から渡しておいてなんだが、そんな反応されると、その、なんだ。 照れる。 嬉しい。

 

 

「う、うん…アリガト。もらっとく……。その、つけて、くれる? このく……チョーカー…」

 

 

 チョーカーとは言ってるが、首輪って言いかけたな…。そこまで分かっててこの反応か。

 …ああ、ついでにリードも付けてやる。散歩の時は外すけども。

 

 後ろを向こうとするミカと引き留め、正面から腕を回して、抱きしめるような動きで首輪を回してやる。

 ミカの目がグルグル状態…ではなく、極上の銘酒に酔っているかのように惚けていた。今なら、キスをしようが押し倒そうが、雰囲気に呑まれて何でも許してくれそうだ。

 とは言え、ライブの前にそんな事をする訳にはいかない。足腰立たなくなったら困るし、破瓜の後の痛みで動きが乱れる。

 

 

 だから……ここまでな。

 

 首輪に鎖をかけてリードにし、負担にならない程度に軽く引っ張ってやると。

 

 

 

 

「んっ………っ………!!!」

 

 

 ブルッとミカは、体を震わせた。

 マジか…。何の仕込もされてない、キスすらまだな処女なのに、首輪でつけて引っ張られただけで軽くイキおった。

 ドM名のではないと思う。エロい体してて素質はバッチリだが、これ多分アレだ、アンチョビとは別方向で少女文学脳…いや、お耽美脳?

 ぶっ飛んだシチュエーションでも、絵面が綺麗ならそれで許せるタイプだ。俺の絵面が綺麗かどうかは置いといて。

 

 …ミカの素質が想像以上だったのは嬉しいが、このまま正気に戻られても厄介だな。男の目の前で絶頂したなんて、ミカには刺激が強すぎる。

 荒い息を吐きながらも、まだ興奮に酔っているミカの鎖を外す。

 

 ほら、散歩の時間だ。思いっきり歌ってこい。

 

 

「…うん……見ててね!」

 

 

 背中を叩かれて、ミカは走っていく。…よし、後は本番までに立ち直るだろう。…正直、正気に戻って悶えている所に、気障なセリフを囁いてトドメを刺してみたくもあるな。

 ま、それは今後の楽しみ取っておこう。

 

 

 

 

 

 

 

 さて、ライブが始まるまで出来る事が無くなってしまったな。アンチョビとチームアンツィオの様子を見に行こうかと思ったが、今は多分一番大事な所だしな…。だからこそ確認は必要だが、あまりヤボをするのもどうかと。

 なんて考えていたら、メールが来ている事に気が付いた。

 いつもの、極東からの自画撮りメールではない。…いやそっちも到着してたけど。

 

 今回の自画撮りメールのインパクトは凄かった…。「ご主人様が帰ってきたら、ご挨拶をさせます」だってさ。関係を持った子が、興味はあったけど一線を越えてこなかった子を、調教しているらしき写真だった。

 それ自体は珍しくない。ミナミに代表されるように、底知れぬ淫蕩さで、誰かを引き摺り込もうとする子も何人か居る。

 

 

 問題は、写真に写ってる子の年齢だ。二人とも、どう見てもJでSな方々です。

 その内一人とは、既に関係を持っている。この時点で犯罪だが、今は何も言うな。

 …前にもチラッと書いたんだけど、覚えてるかな? 関係を持ったアイドル達の中に、ミナミ並のポテンシャルを持っていた子がいたって。

 

 正にそれがこの子。名前はアリス。

 

 普段であれば、凛々しく真面目でクール系、少々不愛想な所のあるJでSな女の子なのだが…。これが一皮むけると、激変した。

 性の快楽にあっという間に呑み込まれて味を覚えてしまった彼女は、Jな年齢だと言うのに、SもMもどっちもイケる超スキモノょぅι゛ょになってしまったのだ!

 

 乱暴に犯されたり、冒涜的な行為をさせられるのが大のお気に入りだった彼女は、写真の中で金髪の同年齢の少女を弄っている。この子は確か、モモカだったか。アリスの有人だった筈。

 レオタードと水着を合わせたような衣装で、揃って首輪を付け、絡み合っている。

 主導権がアリスにあるのは一目瞭然で、背後から絡み付いて、明らかに勃起しているモモカの乳首を布越しに扱き上げ、もう一方の手は直前までモモカの股座をまさぐっていたのだろう。愛液が糸になって垂れていた。

 おまけに、万歳状態のモモカの脇をネットリ舐めるというオプション付きだ。

 そこまでされているのに、モモカはウットリとして、現世ではない何処かを眺めているような目でアリスに身を任せている。

 

 

 ……どんだけ調教したんだよ、アリス…。まだJでSな子だと言うのに、末恐ろしい…。

 まぁ、戻ったら有難くご賞味させていただきますが。ここまでされてしまったんだ。拒んだらモモカの方だって可哀そうだろう。

 既にアリスの玩具としてしゃぶり尽くされる事は決定されているようなものだから、だったらそれ以上の悦びを教えてやって、俺の物という事にしておけば、アリスもそう無茶はさせないだろう。

 

 

 

 …話が逸れた。

 もう一通到着していたメール。葦原ユノからだ。メールアドレス教えてたっけ…? 今回は殆ど絡んでなかったからなぁ。

 開けてみると……ちょっとした挨拶から入り、謝罪文があった。

 何でも、俺のメールアドレスを、ラケルてんてーから教えてもらったらしい。

 

 

 ちょっとー、この時点で既に陰謀の匂いがしてきたんですけどー。ユノ本人にはそんなつもりは全くないだろうけど。

 で、メールの内容はと言うと、一度会って話がしたい、という事だった。

 多分、ユノ自身にそこまで深い考えはないと思う。あの子は聡明で、世の汚い部分から目を反らさない強さはあるし、陰謀に巻き込まれたとしてもそれに気付ける程度にはカンがいいが、自分が策を張り巡らせられるタイプではない。

 ついでに言えば、これからユノと、ウチのアイドル達はライブ対決する事になる。本人達は共同ライブくらいの気持ちだろうが、世間一般では対バンにしか見られてないだろう。

 

 そのタイミングで、ウチのアイドル達のトレーナーともいえる俺に接触する…。何やら『裏』の匂いがしますね? 何も無くてもしますね。

 その辺、マネージャーのサツキはどう考えているんだろうか? 仮にこの辺は世界的センテンススプリングにスッパ抜かれたら、大きすぎるダメージを受けるのはユノの方だ。

 清純派な歌姫が、体を使って相手のトレーナーを引き抜こうとした、或いは買収しようとしたってな。

 

 

 それを推してでも、俺と話をしたいという事だろうか? それとも、単なる深読みし過ぎなのかなぁ?

 さて、どう返したものか…。と言うか、会えるとしてもすぐにではなく、次のツアーで移動した後か。次は何処だっけ。ローマだったかミラノだったかピサだったか。

 どこに行ったとしても、優雅な街並みはあまり期待できそうにないけどな。

 

 

 

 

 

 

 葦原ユノのメールについて考えていたら、いつの間にやらライブの時間になっていた。

 今回もまた、熱狂的に盛り上がっている。アンチョビの調子は…悪くは無いが、良くもないってとこか? ドゥーチェコールも、心なしか少しだけ元気がない気がする。

 

 代わりにミカがいい感じ。勢いに任せた感に安定性が加わり最強に見える。

 首輪もチョーカーとしか見られてないようで(やっぱり妄想する人は多そうだが)、ファッションの一部扱いされている。

 

 カエデさんの歌では、ちょっと印象が変わった? とざわめきが広がったが、歌のサビに差し掛かる頃には、これはこれでイイ、とあっさり受け入れられている。

 

 一番反響が大きかったのは、やっぱタカネかなぁ。先日のライブでファンになった人が調べたのか、ニンジャアイドルの異名が広まっている。それに応じて、タカネがミラクルアクションを決めるからもう…。即興で、噴水の水を飛び移りながら歌うとか、俺でも難しいぞ。

 やっぱ、アクション性とかスペックで言えば、タカネが独壇場なんだな。

 

 

 

 ライブについて書くのは、これくらいにしておこう。正直言って、文章じゃ書ききれん。どうしても気になるなら、DVDの発売まで待ってくれ。…この世界でそれだけの余力があるかは分からんが。

 

 

 無事にライブも終了し、拠点に戻る。明日には次の場所へ出発か。ちょっと長めの休みを貰えはしたが、結構なハードスケジュールだ。

 しかも、次の移動は飛行機ではなく陸路。電車なんてこのご時世に残されている筈もなく、バスでの移動である。ほぼ一日、車内で過ごすと思った方がよさそうだ。

 

 それはそれとして、アンチョビは思ったよりも大丈夫そうだった。何がどうなったのか知らないが、R-18チームと泣きながら抱き合い、部屋に入っていくのが見えた。どうやら、何かしらの結論に達したらしい。その後、遅くまで部屋の明かりがついていたので、語りあかしていたんだろう。

 …うん、別に止めるような事じゃないな。エロい気配は感じなかったし、何となくアンチョビは車に弱そうだ。徹夜させておいて、車の中では眠らせてやろう。リバースさせたくはない。

 

 

 

 

 

 さて…俺にはもう一つ、お仕事と言うかやる事が残っている。

 言うまでもないと思うが、オタノシミだ。と言っても、自分から何かしに行くんじゃない。ただ、部屋で鍵を掛けずに待っていればいい。そうすれば…。

 

 

 

「ねぇ…ちょっと、いいかな…」

 

 

 そうすれば、首輪をつけられた猫が、自分からやってくるから。

 

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