まだ巨人墓場クリアしてないのに。
というか獣型スケルトンが厄介すぎる。
上手く奇襲が決まれば、一発で倒せるんだけど…。
いやそれよりも、混沌の娘とお話できない…!
めっちゃいい子そうなのに…!
神呑月
作戦、決行。
極東のゴッドイーターの殆どを動員したこの作戦は………色々と、予想外な結果に終わった。
うん、特に俺にとって予想外だった。
だって、ラケルてんてーがあっさりと死んでしもうたんや~。
いやマジでマジで。ジュリウスも救出できた。シナリオでは終末捕食の核になったであろう、変な繭も無い。フライアは見事にぶっ壊れ、お人形さんこと神機兵零號機は、核となっていた改造アバドンを含めて全部殲滅した。ラケルてんてーの端末から色々情報が引っこ抜かれ、彼女の計画も丸裸にされた…いや、もっと隠された何かがあっても驚かないが。あとDドライブには何もなかった。
気負って乗り込んできたのに、実は想い人に全く相手にされておらず、それどころか諸共に罠にかけられてお陀仏しそうになり、最後の最後まで一瞥もされずに色んな意味でハートブレイクしたクジョウ博士が項垂れているが、正直言ってそっちはどうしようもない。惚れた相手が悪すぎたと諦めてくれ。
というか、ジュリウスは黒蛛病に犯されてはいるが、まだ重病患者の2歩手前くらいだ。進行スピードは非常に速いが、それでも少し前であれば、そこらの黒蛛病患者用病棟に何人か居た程度でしかない。
特異点候補なので完治は難しいだろうが、延命という意味では充分可能な筈だ。少なくとも、病状緩和を続けていけば、あと半年以上は問題ないだろう。
…どーもこう、釈然としないなぁ。
ラケルてんてーが死んだ事や、明るみになったアレコレであっちこっちが大騒ぎになっているが、それはいい。
ギル以外のブラッド隊にとって、ラケルてんてーはある種の恩師みたいな人でもあったが、彼女が裏切ってジュリウスを拉致し、黒蛛病に感染させた事は、ジュリウス自身の口から証言されている。
元より、ロミオもその本性や企みには気づいていたし、シエルとナナも俺の味方に引き摺り込んでいる。『分かっていたけどショック』という意識はあっても、動けなくなる程の衝撃ではない。
逆に、延々と泣き続けているのはレアである。
「最後までダメなお姉ちゃんでごめんなさい」と、俺やアリサの言葉も聞かずに泣き続ける。…これは、仕方ないよなぁ。
レアの気質からして、離れる事はできても、切り捨てる事はできない。
その情の深さが、レアの美点なんだろうが…だからこそ、受けた衝撃は大きい。
増して、手に掛けたのは俺自身だ。中身がバケモノだったとしても、妹を、愛した男が殺した。…今、レアの中に荒れ狂っている感情はどれ程のものか…。
泣きわめきながら、叩かれもした、殴られもした、どうして助けてくれなかったと詰られもした。
だけど、俺はずっとレアを抱きしめて、それらを全て受け止めている。全部吐き出すまで、こうしていよう。…背景はどうあれ、身内を殺したんだ。憎悪や殺意の一つ二つ、当たり前の事だろう。…凌辱用の汚ッサンの時は、全然なかったけど。そーいやそんな人も居たね。
ともあれ、これでゴッドイーター2のシナリオは終了したのかと言われると……どうなんだろうなぁ。
GE2のエンディングで現れた、螺旋の樹なんて影も形もない。何せ、終末捕食は起こってさえいないのだから。
しかし、元凶であるラケルてんてーが死んだし…いや、アレの体が死んだからと言って、終わったと考えるのは早急じゃないか?
暗躍はラケルてんてーの十八番だし、死んだ筈のラケルてんてーが闇夜に紛れて歩き回り、出会った人を儚い笑みを浮かべながら取り憑いて殺してしまうとか、ありそうじゃないか? すっごい絵になる。イヤな意味で。
実際、この手で命を絶ったのは確かだ。肉体は確実に死んだ。アレはラケルてんてー本人の体だった。そこは確かだ。
でも、死んだという確信が持てない。生きていると断言もできない。…一番面倒臭い状態になっちまったな。まぁ、あそこで殺さない選択肢も無かったけど。
……気になる事も言ってたしな。
前回もそうだったけど、俺はラケルてんてーの言葉を一切信用してない。本当の事を言っている、嘘を吐いているに関係なく、そもそも聞いてない。
どんな耳障りな指摘も、尤もだと思える理屈も、耳に心地よい称賛も、全ては上っ面だけ。俺達の足を止め、心を乱す為に吐き出される道具に過ぎない。
そう、思ってたんだが…思わず耳を貸してしまう内容が、一つだけあった。
そうだな、状況整理も兼ねて、順番に話していこうか。
まずは突入作戦…と言いたいところだが、その前哨戦からだ。つまり、フライアの足を止める為の攻撃だな。
…いやぁ、何とも酷い光景であったよ。
クジョウ博士作の、カミカゼシリーズがガンガン突貫していくのは。無駄に外見のバリエーションが豊かだったのが腹が立つ。クジョウ博士に言わせれば、有り合わせの部品で同じ外見にする方が難しい、との事だったが。
他にも、 ネオアームストロングサイクロンジェットアームストロング砲じゃねーか、完成度高けーなオイ から発射される様々な砲弾…オラクルバレットから実弾(生ゴミや産廃や粗大ごみ)がバカスカ降り注ぐ。眉を顰めたくなる光景だったが、生ゴミがフライアに着弾するや、大爆発してキャタピラの一部を吹っ飛ばした。何でそんな威力が出せるんだ…ゴッドイーターの攻撃の何倍の威力だよ…。
ちなみに、激突して飛び散った生ゴミに惹かれてやってきたアラガミは、食べるなり腹と口の中で爆発してお陀仏した。…無人神機兵作るより、こっちの方がいいんじゃないか? いやこいつも無人神機兵ではあるんだけど。
最終的には、カミカゼシリーズが全て突貫し、 ネオアームストロングサイクロンジェットアームストロング砲じゃねーか、完成度高けーなオイ が全て砲撃を終えた後、腹いせとばかりに轢きつぶされたんだが…そこで更に大爆発が起こって、とうとうフライアは行動不能に陥った。
アレを見たラケルてんてーと、中のアラガミはどんな事を考えただろうか? …真似して進化したり、不発だったカミカゼが野良アラガミにならない事を祈る。
各種ゴミがぶちまけられた近辺を、微妙な表情で殲滅チームのゴッドイーターが駆け抜け、進入路を確保。
俺達潜入チームその1もフライアに乗り込んだが、近付く途中に生ゴミ踏んづけて車のタイヤがバンクした。まぁ、大爆発でデスワープしなかっただけ、よかったと思っておこう。
さて、フライアの中だが…見事に無人となっていた。代わりに、神機兵無人機がウロついていた。
クジョウ博士が趣味に走って作ったモノと違い、ゲームに出てきたような、人型の神機兵だ。
後から、クジョウ博士が混乱してたって聞いたなぁ。開発を中止…というかコンセプトを変更して手を付けなくなった、人型神機兵がいつの間にやら完成していたんだ。
無人神機兵の第一人者であるクジョウ博士にしてみれば、大事だろう。
大方、ラケルてんてーが勝手に完成させ、勝手に量産してたんだろうなぁ。ゲームシナリオでも、クジョウ博士に先駆けて完成まで持っていったみたいだし。クジョウ博士の無人神機兵が、妙な方向にシフトしたから、陰謀に巻き込めなくなったんだろうか…。
と言っても、俺達ゴッドイーターにしてみれば、変なロボットが向かってくると言うだけだ。叩き潰す以外の選択肢はない。
戦闘力はそこそこだったが、ここに居るのは極東でも折り紙付きの腕利き揃いだ。撃破には大して時間はかからなかった。
むしろ、厄介だったのは構造の複雑さだ。通路のあちこちの隔壁が降りていて、俺達が知っているルートが使えない。これは前回もそうだったが、今回はもっと念入りにやっているようだ。
事前に調べ上げて仕入れた設計図や、ここで生活していたロミオでさえ知らなかった隔壁が幾つもあり、下手に壊す事もできない。
一度壊しはしたんだけど、トラップ仕掛けてあったんだよなぁ。天井が落ちてきて、ド根性カエルみたいになるかと思ったぜ。ご丁寧に、砕くのも難しいような分厚い合金の天井だった。アレの下敷きにされると、俺でもヤバい。
しかも、入り組んだルートの中で、分かりづらい所に神機兵が設置されている。物陰、曲がり角のすぐそこ、扉の中から奇襲、一度スルーしてから挟み撃ちで襲ってくる…。
人間の心理をよーく知り尽くした、実にいやらしいゲリラ戦法だった。やっているのが神機兵で助かったよ。人間ほど柔軟な行動が出来て、小柄であれば、こっちも一人二人戦闘不能になっていたかもしれない。
そうやって進んでいく中、意外な活躍を見せていたのがクジョウ博士だった。アンタ、今日はなんか矢鱈と輝いてるぜ…! その輝きが、燃え尽きる前の一瞬の輝きでない事を願う。願っていた。割と無駄だったが。
当然ながら、クジョウ博士に戦闘力は無い。作った神機兵でも連れて着ていれば話は別だったかもしれないが、現存する神機兵の殆どは、ついさっきフライアの足止めの為に使い切った。
その為、決して前線には出ず、コウタやロミオに護衛され、直接戦闘はアリサに任せていたのだが……役割的に言えば、アレだ、RPGで言えばシーフ?
破壊した神機兵から、他の神機兵の配置や行動パターンの情報を引き出す。(ドロップ宝箱の開錠、及び索敵)
一部の隔壁は、何やら近くの配線を弄って開く。(鍵開け)
フライアの設計図と実際の構造を照らし合わせる事による、道筋の予測。(隠し通路発見)
…うん、正直甘く見てたな。ラケルてんてー救出の為に普段以上の力を発揮しているのか、実にテキパキ動いてくれた。
隔壁のロックを幾つも開き、潜入を楽にしてくれた。
最初に目指すのは管制室。フライアの暴走を止める為だ。フライアを暴走させている誰かがそこに居るなら、その鎮圧も必要だ。
…まぁ、誰も居なかったけど。しかしクジョウ博士は意気揚々とコンソールに向かい合い、何やら順調に操作を進めて。
俺達チーム1は、もう少し先に進んで潜んでいる敵を撃破中の事だった。
アリサからの又聞きになるが、このような会話だったのだそうだ。
「…む? これは…」
「どうかしたんすか、クジョウ博士……背後、敵影無し」
「いえ、パスワードが弾かれまして。おかしい、これまでの隔壁や神機兵のシステムからは、この通りのパスワードで通過できたのに」
「…パスワード? あの、所謂ハッキングで対処していたのでは? 右、足音がするが遠ざかってる」
「その通りです、ロミオ君。隠されたパスワードを探し当て、システムに正面から侵入する事も、充分ハッキングになります…。と、今はそういう話ではありませんな。…は、よもやラケル博士を拘束している悪漢が、フライアを止められないようパスワードを変えたのか! おのれ、小癪な真似を…」
「(…この人、今日はキャラ崩壊しまくってますね)……ちょっと待ってください、クジョウ博士。そのパスワード、何処から調べ上げたんですか?」
「調べたのではありません。つい先日、ラケル博士からこの私のメールアドレスに送られてきたのですよ。何処のパスワードなのか、何故私にこのような物を送って来たのかと思っていましたが…これは、恐らくラケル博士からの救援要請です! 何処かで、フライアを暴走させた悪漢に拘束され、逃げる事もできず隙を見てこれを送るだけで精一杯だったのです! ラケル博士、私が必ずやお助けに上がります!」
((………… や ば い ))
「…どうしたんだ、二人とも。元々、なんか色々ヤバい気配がする作戦だったけど、何か致命的な事でも?」
「証拠はありませんが、ほぼ確定ですコウタ。ここに至るまでのルート、まず間違いなく誘導されています」
「大きなトラップの真ん中に向かって突き進んでるって事です。アリサさん、教官達に伝達を頼みます」
「了解しました。いつ何が起きても不思議ではありません。用心してください」
…このような会話だった訳だが、大筋は分かってもらえると思う。中身はほぼ人間じゃないのに、人間を動かすのが異様に特異なあのアラガミモドキは、クジョウ博士を案内役に使ったのだ。
クジョウ博士はラケルてんてーが元凶だなんて欠片も思っていないし、助けを求められたと思った時点で、舞い上がってしまったんだろう。
せめて相談か報告しろよ。
ともあれ、あの悪辣なラケルてんてーの事だ。クジョウ博士のおかげで順調に進んでいるように見えたが、パスワードで開く扉を指定する事で、俺達の行動ルートを確定させたんだろう。
では、そのルートには妨害が多く待ち構えているとして、その先には何があると思う?
①罠。
②終末捕食の始まり。つまりジュリウス。
③ラスボスことラケルてんてー本人。
…恐らく…全部だな。
「全て一か所に集めていると言う事ですか? 普通、狙いを分断させるのでは…」
普通ならな。ラケルてんてーにとって、全ては終末捕食を引き起こす為の道具だ。
自分自身の命も含めて。
だから、罠の成功率を上げる為、自分を囮にするのに躊躇いが無い。
ジュリウスは別の場所に隠しておくべきだろうけど、下手に目を離すと脱走する恐れがある。薬物投与とかで行動不能にさせ続けようとしても、もうフライアにはラケルてんてーしか居ないようだからな。
…それに、救出対象を別の場所に置いておけば、こっちの戦力も割かれるが、あっちも防衛の為に兵力を割かなきゃならん。
「成程。正解かどうかは行ってみないと分かりませんが、どの道このまま進む、という事ですね。まぁ、元よりどの道を通っても妨害があるとは思っていましたが」
そういう事だ。ここまで来た以上、罠ごと食い尽すしかない。
最低限、ジュリウスを奪い返すまでは突き進むしかないのだ。
そうと決めてしまえば、後は早かった。クジョウ博士が示すルートは使わない。単純に、降りた隔壁にアクセスする為の端末を、先回りして壊してしまえばいいだけの話だ。
多分、どの道を進もうとラケルてんてーに監視されてるだろうし、罠も満載だろうけど、このまま進むよりはマシだろう。
扉を開けなくなった事で、クジョウ博士が苛立っていたが、知らんぷり。「悪漢が先に手を打ったな!」って言ってたな。悪漢でサーセンw
俺とロミオで相談し、目的地…前回、俺が死んだ場所へのルートを予測して進む。
俺、リンドウさん、ソーマ、リヴィで先行していると、リヴィがぽつりと呟いた。
「極東は凄腕揃いと聞いていたが…納得だな。ロミオも、それと肩を並べられるくらいに立派になって…」
「なんだい、いきなり子供の成長を喜ぶオカンみたいな事言い出して」
「そういやリンドウ、お前の子供は…」
「ああ、もうすぐだ。家ではサクヤに尻に敷かれてらぁ」
え、マジで!? サクヤさん、全然会ってなかったけどオメデタ!?
(……時期的に俺のじゃないな…、セーフ! って、そういや前回もそうだったっけ)
何か出産祝いとか送ろうかな。
「ならビールにしてくれ。普通のでいいぞ、普通ので。お前、何かいいモノもってそうだけど」
それアンタへの祝いじゃないか。まぁ、父親になるお祝いだと思えば…。
血縁…と言えば、そういえばリヴィとソーマって何か関係ある?
「? いや、何もないと思うが」
「お前、肌の色だけで考えてないか? 褐色肌なんぞ珍しくもねぇ」
…リヴィ、確か君、孤児だったよな? 隠し子疑惑…。
「おい馬鹿やめろ。あのクソ親父も、お袋一筋だったのだけは確かなんだ。シジョウの一件でも家庭板案件で揉めかけたのに、これ以上話をややこしくすんな」
シジョウ? …ああ、タカネことノヴァの事な。
んじゃ、この話題は辞めるとして…いきなりどうしたんだリヴィ。ロミオが強くなってて嬉しいのか?
「ん……そうだな。それでいて、昔のように優しいままだ。あの優しさがそのままだったのが、何より嬉しい」
「コイツに鍛えられたんだって? よく性格が捻じれなかったもんだ」
(性癖は捻じれましたけどね!)
「実際、こいつに鍛えられたにしては真っ当過ぎると言うか、大人しすぎるきらいはあるけどな…」
「…お前達は、ロミオにどうなってほしいんだ…」
そう言えば、リヴィは結局ロミオと話したのか? こっちに来てから忙しかったし、血の力の訓練も殆ど出来てなかったが…。
「ああ、相変わらずロミオの方からどんどん近付いてきてくれた。変わらないな、あの人懐っこさは」
…ち、ちなみに彼女さんとは……?(震え声)
「……会った。いい子じゃないか。幸せそうで何よりだよ」
…表情が、ちょっと薄くなった。ありゃ、自分の感情を整理できてないな。…アレな性癖については、気付いてないと思う。
おっと、雑談はここまで。そろそろ最深部だ。妨害も、恐らくここが一番熾烈になるだろう。
さぁ、鬼が出るか蛇が出るか神が出るか。決まっているのは、何もかもを狩り尽くすという事だけだ。