神怒月
タカネに『躾け』を施し、お互いしっかり楽しんだあの日から、少しばかり日が経った。今のところ、どこにも危険そうな兆候は表れていない。
それどころか、ジュリウスの黒蛛病が若干ながらも回復したという朗報があった。
ジュリウスの彼女が治したのであれば、愛の軌跡とでも言えたんだろうが…残念ながら、理由は今のところ不明である。
それこそ、何か異変が起こっている証拠なのかもしれないが…。
そもそも黒蛛病は、新たな特異点候補を探し出そうとする地球の意思の仕業と言われている…正式に認められている説ではないが、少なくともシナリオではそうなっている。
感染した後、地球の意思とやらにどう干渉を受けるのかは定かではないが…これってどうなんだろうなぁ。
黒蛛病が、理由もなく軽減されるとは思えん。特にジュリウスの奴は。
ジュリウス以上の素質を持った特異点候補が見つかったか? と思ったが、少なくともユノは違うようだ。このループでは、黒蛛病になんぞ全く感染していない。
となると………?
「ふむ……正直、私にも見当がつかないな」
極東きってのマッドチート、榊博士でさえも…ですか。
「人を何でもお見通しの黒幕や、説明しかしないデウスエクスマキナのように思ってないかい? とは言え、幾つか仮説は立てられるよ。どれも矛盾を含んでいて、そして検証が不可能だけどね」
やっぱこの人のオツムはチートやな。
「ところで、君の力でも、ジュリウス君の黒蛛病は治せないのだったね。………ひょっとしたら、治療法を見つけたかもしれないよ。まぁ、絶対やらないだろうけど」
マジですか。その治療法の効果が確かなら、シナリオとか色々前提がひっくり返るんですが!?
…でも、できないじゃなくて、やらない…ですか。それだけリスクが高いって事ですかね。しかも、ジュリウス自身じゃなくて周囲への。
「そうだね。理屈はそう大したものじゃないよ。地球の意思が黒蛛病を作り出したのは、終末捕食を行う為の特異点を探し、作り出す為。逆に言えば、終末捕食が起こってしまえば、赤い雨も黒蛛病も何れ消えていくだろう」
……いや、人間に一人の病気を治す為に、星を滅ぼすのはちょっと………って、ああ、成程。
疑似的に終末捕食を発生させた状態にすりゃいい訳ですな。ゲームシナリオのエンディングでも、ジュリウスが螺旋の樹の中に入って、終末捕食を圧し留める事で……えーっと、なんだっけ…。
「終末捕食が発生しながらも、地球の文明は滅んでない。かつ、次の終末捕食を発生させる為の特異点も必要ない、という状況だったんだね。要するに、地球の意思を騙してしまった訳さ」
なにその詐欺師みたいな言い方…。まぁ、概要は分かりますけど。でも、実際どうやるんですか?
ゲームシナリオと同じ手段を使おうと思ったら、結局終末捕食を発生させなきゃならん上、誰かがそこに留まらなきゃならんのですが。
「そこら辺はあまり考えてないなぁ。思い付きを口に出しただけだもの。ただ、ジュリウス君の治療の方向性としては大いに有効だと思うよ」
疑似的にせよ終末捕食を起こすなんて、おっそろしい事ジュリウスが承諾する筈ないよ…。それやるくらいなら自分で死ぬよ、多分。(童貞を捨てたいだけの一生だった、とか思いながら)
つっても、アイツ自分が特異点候補だって事知ってんのかね?
「ラケル博士が何をどこまで説明したかによるなぁ。終末捕食関係の資料は機密事項が多いし、それ以上にヨタ話も多い。何より多いのは、不明点だけど」
そんなもんをよく利用しようとしたもんですな、ラケルてんてーも支部長も。
「ヨハンは利用しようとしたんじゃなくて、不可避の災害だから対策しようとしただけだよ。ともあれ、ジュリウス君の病状が良くなったのはいい事だ。とりあえず、今はそれだけ考えておこうじゃないか」
……そうかな。
「そうだよ。……まぁ、君が言うシナリオのように、二度と終末捕食が起こらないように食い止める事ができたとして、将来どうなるのか分からない。火山の口を塞いだようなものさ。圧し留めた終末捕食が、別の形で噴き出す可能性は否定できないからね」
ふーむ…確かに、終末捕食自体は、過去に何度も繰り返された生命のリサイクルシステムみたいなものらしいからな…。ある意味では、浄化システムをぶっ壊してしまったようなものか。
どんな影響が出るのか分からんな。だからと言って、大人しくリサイクルされる訳にもいかんから、結局やる事は変わらないんだけど。
さて、色々と妙な理屈を捏ね回しているが、それもいい加減飽きた。
と言うより、俺にはやるべき事があった。女遊びしてる暇があったら、ちょっとでもいいから将来に備えろ、という話である。……いや女遊びは辞めないけども。
どんな形であれ、直近にとてつもなく危険な何かが起こると予感しているのだ。備えないのは無能か怠惰である。
では、一体どのような事から備えていくべきか。
とりあえず、戦闘に必要になりそうな物は片っ端から備え、 ふくろ の中に放り込んだ。
回復錠は勿論のこと、保存のききそうな食料、ホールドトラップやパワーアップ系アイテム、スキルインストール用のスキル因子各種。
神機は既に、強化できるところまでは強化している。他の世界の素材を使って更なる強化も考えているのだが、残念ながらその時間が無い。
バレットエディットでは何種類もの弾を作り上げたが、状況にマッチしてくれるかは博打である。
他にも色々と……あまり考えたい事ではないが、死んでしまった場合の準備も密かに整えた。
次回ループは討鬼伝世界に持ち越せるアイテムだけでなく、後に残された女達が路頭に迷わないよう、そして欲求不満を解消できるよう、色々教え込んだり。…遺書を書く時は、おかしな気分だったなぁ…。
もしもこの事を知られたら、「遺書書いてる暇があったら、生き残る為に少しでもできる事をやれ」ってアリサに蹴っ飛ばされただろう。
という訳で、最後の準備にかかります。
何をするかって? そりゃアレですよ、ヤリ貯めですよ。
別に、心残りを無くそうとか、討鬼伝世界に行ったら暫くヤれそうにないからとか、まだまだ喰えそうなアイドルが居るから手を出そうとか、そーいう事を考えているのではない。
オカルト版真言立川流の本来の使い方をしているだけだ。
互いの快楽とエネルギーを循環させ、増幅させ、生命エネルギーとして取り込む。それがオカルト版真言立川流の本質である。
これによって、個人では得られないくらいの強いエネルギーを体に宿すことができる。一種のドーピングである。
俺くらいに熟練すれば(と言っても、比較対象が居ないので、術としての練度がイマイチ分からないが)、延々とエネルギーを蓄え続ける事だってできる。外付け電池を作るようなもんだ。
耐え切れないダメージを回復させたい時、オラクルを急速に回復させたい時、或いは一時的にスペックを水増ししたい時、この外付け電池を消費してそれらを叶える事ができる。
最近じゃ、極東のアラガミを相手しても、ウォーミングアップにもならなくなってきたからなー。
スキルアップの方法が、これくらいしかないんだ。MH世界のフロンティア並の相手でも出てきてくれれば、そっちと戦ってカンを取り戻せるんだが。
という訳で、俺が酒池肉林やってるのは、今後のトラブルに備える為であって、私利私欲ではないのです。
オタノシミが始まるまでのウォーミングアップとして、レアとミカのWフェラしてたところにレヴィが入って来たのも、不可抗力なのです。
「そんな理屈が通ると思うかァッ!」
「ですよねー。でも本気で言ってるんだからタチが悪い」
「私はイマイチ実感してないけど、パワーアップするのは事実らしいよ」
うんうんと頷くアリサとミカの横で、いつになく声を荒げているのはレヴィである。褐色の顔を一目見て分かるくらいに赤く染め、神機まで持ち出してくるくらいに怒っている。
まぁ、無茶苦茶な理屈言ってる自覚はあるし、無理もないんだが。
「いいか、お前達だけが…その、恋人の振る舞いをする事には何も言わん! レア博士と二股をかけているのも、本人が納得しているのだから何も言わない! が、他の子達はどういう事だ!」
「他の子って言うと……シエルとかナナとか?」
「そっちまでか!? 私が言ってるのは……その、私と一緒に血の力の訓練をしている彼女達だ! スキャンダルにでもなったら、どれだけ大騒ぎになると思ってる! 君もだ! 自分の扱いに、文句の一つもないのか!」
「アタシは別に。承知の上でこうなったんだしー、そもそも一人じゃ体保たないしー。…リンに先を越されてたのは、ちょっとショックだったけど」
アイドル、と言わなかったのは、誰かに聞きつけられる危険を考慮してだろうか?
というか、シエルとナナについては気づいてなかったのか。
「そもそも、アリサとレア博士については納得しておいて、何で私達はダメなの?」
「限度の問題だ…。何なんだ、候補生の半分以上と肉体関係があるって…。何がどうなったらそうなるんだ…」
「男女のはざまには、人々の哲学では思いもよらない事があるものです」
「…………」
悪びれもしない俺とアリサに、とうとうレヴィは頭を抱えてしまった。
実際、どうしろと言うのだ? 別れ話云々になれば、それこそスキャンダルどころか刃傷沙汰が起きてもおかしくないぞ。俺は刺されてもまず死なないけど、他の面々がなぁ…。
「じゃあ、いっその事皆の気が済むまで刺されますか? 私とママは監禁しますけど」
「それ、アタシも乗った! あ、でも刺すよりアレを刺された方が…」
「駄目だ…完全に色ボケている…」
レヴィは膝から崩れ落ちた。何やらブツブツ言っている。元ブラッド隊の状況に、相当お嘆きらしい。
まー、ジュリウスでさえ「童貞のまま死ねるか」なんて言って、卒業の為に頑張ってる状態だしな。元ブラッド隊でマトモなのは、ギルくらいである。そのギルも、ハルさんことムーブメント師匠に付き合わされて、段々染まってきているとか。…まぁ、本当に付き合わされてるだけなのか、本気で何かに染まりつつあるのかは微妙なところだけど。
ロミオに至っては……もう何も言うまい。何がとは言わないが、熟練の領域に近付きつつあるらしい、とだけ。
「…い、いかん…このままではいかん! 近い内に、不祥事どころじゃないナニカが発覚するのが目に見えている! 今からでも、貴様らの生活態度を矯正するぞ!」
「嬌声だなんて…ナニをする気なんですか?」
「そっちじゃない!」
「矯正って言われても…何する気? 言っとくけど、下手な事するとあっちこっちから総スカン喰らうよ。陰湿な事に参加するつもりはないけど、女の集団を敵に回すと、面倒くさいってレベルじゃない」
「面倒だから、報復が恐ろしいから、無駄になりそうだから、やるべき事をやらない…というのは通らない。言い訳どころか、戯言ですらない。やらなければならないのなら、死力を尽くすのが義務というものだ」
おお、カタブツ……と言うより、これはだらしない弟や妹を叱りつけるお姉ちゃんパワーだろうか?
何か、変なモノ目覚めさせてしまった気がするな。
で、具体的にはどうするつもりだ?
「秘密だ。先に教えたら、絶対に裏を掻こうとするか、出し抜こうとするのが目に見えている。その戯けた生活態度、絶対に改めさせるからな!」
…それだけ言い捨てて、レヴィは部屋の外へ出て行った。
うーむ、本気で怒らせてしまったか?
「怒ってるだけとも違う気がするけど……どうする? 何をする気なのかは分からないけど、絶対本気だよ、アレ」
「これまでの言動からして、フェンリルやアイドルの方々に直接的な被害が出るような事は行わないと思いますが…そもそも、何処で気付かれたんでしょうか」
いつ何処で気付かれてもおかしくないけどな。暇さえあれば、レッスン中だって一目を盗んでエロエロしてたし。
まーレヴィが怒るのも無理はないわな。今までやってきた事の一端でも漏れれば、ラケルてんてーの悪事発覚以来の大醜聞になりかねんし。
とは言え、改める気は全くないけど。
「ホント、それですね」
「今更改められても、アタシ達も困るって。『スッキリ』しないと、ちゃんと眠れない体にされちゃったしねぇ」
レヴィが部屋から去ったのをいい事に、早速股間へ手を伸ばしてくる二人。サワサワと愛撫されて、すぐに元気になってきた。
俺だって、中途半端なところで止められて、性欲を持て余してるんだよ。…いつもの事か。
そんじゃ、何か面倒な事を起こされるのもなんだし、レヴィもコッチに引き摺り込んでしまうとしましょーか。
具体的な悪企みは……。
「ふんふん…ああ、そういうやり方…」
「大勢で一人を貶める事になりますね。どう見ても陰湿なイジメですが……どうしよう、仲間を増やす為だと思うと愉しくなってきました。MH世界で、ミーシャさんて人がハマッてたのが分かる気がします」
悪役令嬢をホーフツとさせる笑みの二人。という事は、俺は黒幕だな。
うむ……実にゲスい感想だが、イジメが無くならない理由がよく分かる。多人数で一人を狙う。足を引っ張る。貶める。それを企む。 ……楽しいと思ってしまう。
所詮は…という程、普段の外面は取り繕えていないか。
結局、俺は下種である。
それはそれとして、今後に備えてのパワーアップの為、乱交を始めた。