※この作品はR-18です。

狩りゲー世界転生輪   作:時守 暦

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書き溜め無し、難産が予想される為、次の投稿が大幅に遅れるかもしれません。
いっそ、暫く筆を置いて世界樹のゲフゲフン、もとい頭を整理するか、エロゲ脳の方に集中してみようかな、と考えています。


第383話

神怒月

 

 

 レヴィはどうやら、正攻法を選んだようだった。こんな事に正攻法もクソもあるかと言われればそれまでだが、お偉いさんへの告げ口とか、醜聞をばら撒くとか、そう言った事はしないようだ。

 恐らく、俺も含めた関係者への、今後のダメージを慮っての事だろう。やるべき事をしなければ…なんて言っておきながら、お人好しな事だ。

 

 ではどうしたかと言うと、『関係者』への直談判だ。俺と肉体関係になっている者、或いは喰われそうになっている者を調査して特定し、『このままだとこのような危険がある、周囲を巻き込んで破滅する』と説得しようとしているようだ。

 邪魔をする、という意味では結構な効果があった。これからオタノシミだ、という所にやってきて、ああだこうだとデメリットを色々語り掛けてくるのだから、気分が削がれる。

 普通であれば、説教くさいお邪魔虫として嫌われてしまいかねない。

 

 

 加えて、リヴィ自身が饒舌なタチではない。色々語られても、何を言いたいのか伝わらなかったり、承知の上のデメリットを延々と繰り返したり。率直に言えば、空回りしている。

 これでロミオ辺りに協力を頼めば、潤滑油ができて多少は効果が期待できたかもしれないが…事がシモの話だけに、男性に協力を頼むのも憚られたらしい。

 

 

 で、その空回りしているレヴィが嫌われているのかと言うと………そうでもなかった。

 むしろ、彼女はいい『カモ』でしかなかった。

 

 何のって?

 

 

 

 猥談とノロケと自慢の。

 

 

 

 リヴィがお邪魔虫になってくるなら、その邪魔を邪魔してしまえ、というだけの話。事前に『関係者』に通達しておいた為、(リヴィにとっては災難な事に)話は非常にスムーズに進んだ。

 リスクを訴える者も居たが、その辺は承知の上での方針だ。

 ちなみに、リスクに対するリターンはと言うと、免疫の無いリヴィに思う存分自分の経験を語れる事。俺の周囲に居る女達は、大なり小なり経験持ってるからなぁ。完全に初心者相手にあれこれ語るのは楽しいんだろう。

 最近じゃ、アブノーマルな性癖に目覚め、それを満たし合う事もやってるからな…。どんどん深みに嵌っていく。

 

 

 ちなみに当のリヴィはと言うと、フラフラな状態で壁に寄りかかっていたり、食堂の隅っこで項垂れてムツミちゃんに心配されている所を目撃されている。

 思っていた以上の爛れように精神的ダメージを喰らったんだろう…と思っていたら。

 

 別の方向にダメージが入ってしまったらしい。いや、幼い女の子から語られる、エゲつない性行為にダメージを受けた事も非常に大きいと思うが。具体的に言うと、アリスのドS女王様っぷりとか。ギグボール付けて四つん這いにさせて、その上に乗ってムチでピシピシとかどっから覚えてきたんだ…。そのドS女王様も、俺の前では可愛い愛奴だけども。

 

 

 …具体的な内容は置いといて、リヴィはアレだ、自分の灰色の人生に嫌気がさしてしまったようだ。

 『こんな子供でさえ彼氏作ってるのに、私ときたら』…って事だ。彼氏と表現するべきか、微妙なところだが。

 

 ま、黄昏たくなる気持ちも分かる。小耳に挟んだだけでも、かなり悲惨な人生だもの。

 幼い頃はラケルてんてーのお気に入りだったけど、その立場をジュリウスに取られて孤立。心を開ける友人はロミオだけ。

 ラケルてんてーに色々体を弄られた挙句、ロミオとは分かれる事になり、そこから先は任務漬け。しかも特異な体の為、使い潰されていたようだ。……何せ、『介錯』任務だもんな…。通常任務よりも危険だし、後味も悪いし、いつか自分を殺すかもしれない相手だと思うと、他のゴッドイーターから距離を置かれるのも無理はない。

 今でこそ、信頼できる隊長(今は一時的にフライア所属になってるが)に引き取られ、部隊内でもそれなりに溶け込めている(本人談)が、それまでは相当にキツい環境にあったらしい。

 しかも、その信頼できる隊長の元でも、唯一の友人であるロミオに連絡する事はできない。

 ようやく再会してみれば、塔のロミオはリア充街道まっしぐら。ゴッドイーターとしての実力もつき、周囲に評価され、友人に囲まれて、お似合いの彼女まで作っている。…色んな意味でお似合いなのだが、それはまだリヴィは知らない。

 

 ロミオだけではない。血の力の訓練でよく会う少女達は、キラッキラのふわっふわで、ついでにおっぱい大きい子も沢山居て、リヴィの中の辛うじて残っている女としての劣等感が、ガンガン刺激される。

 しかも半分以上経験済み。あまつさえ、リヴィとしては理解できない、常識とはかけ離れた『女性としての幸せ』を語る。語りまくる。リヴィがもう勘弁してくれとダイレクトに口にしてもマシンガントーク一択。

 そりゃ色々と精神力とか常識が削れ、鋼の精神も柔らかくなるってものである。

 

 …仕組んでおいてなんだけど、ちょっと悪辣過ぎたか…? それとも、単にリヴィのウィークポイントに直撃してしまっただけか?

 やっぱり、ロミオが彼女作ってたという事が、リヴィの精神に地味にダメージを与えていたんだろうか。落ち込み方からして、ありそうな話だ。

 

 

 

 ちゅーか、まず最初に説得に向かった相手が最悪だったと思う。

 サキュバス系代表者を、どうしてピンポイントで狙うのか。確かに、見た目だけで言えば話を聞いてくれそうではあるけども。

 具体的には、ミナミ、リカ、アリス、フミカ。他にも色々居たけど、エロ語りで言えばヤバイの筆頭はこの連中である。

 むしろ、リヴィのそういう脆さ、弱点を看破してわざとダメージを与えるように語った可能性すらある。勿論、その後、リヴィが俺の手に落ちてくるのを期待しているんだろう。我ながら厄介な連中を解放してしまったと思う。

 

 

 自分の灰色の青春に涙しているリヴィ。…ワンカップ酒が似合いそうだ。

 そして、そんなリヴィに追い打ちをかけに行くナナ。何時の間にそんな容赦のない子になったんだ。…間違いなく俺のせいだけど。

 

 と言っても、ナナがリヴィに言ったのは、惚気ではない。『極東に居る今が、最大のチャンスだよ』だった。

 これを救いと見るか、悪魔の囁きと見るかは微妙な所だと思う。

 

 実際、リヴィが青春するチャンスは今しか無い。ここでの任務が終われば、また元の……特殊任務部隊に戻るだろう。そうなれば、今までと同じように各地を転戦し、ゴッドイーターとの接触を制限され、青春どころか友人を作る事さえ難しい。

 であれば、期間が短くても、この極東に居られる間に思い出を作るしかない。『私達も手伝うから』と言うナナが、こっそり舌なめずりしていた。こいつもいい塩梅に色狂いになったものだ。

 

 

 

 という訳で、極東を案内する事になりました。今の極東って、下手な観光地よりも見所が多いからね。リヴィも、緑に包まれた極東を初めて見た時は唖然としていたし。

 連れて行く場所の候補としては、リンの実家の花屋、銭湯、カラオケ、アイドルブームに影響された素人集団の無許可ライブなど比較的マトモな所から、アラガミの『散髪』を行う一般人、GKNG本部、極東住民のアグレッシブってレベルじゃない行動のアレコレなど、若干イカれている見どころまで色々だ。

 

 大丈夫かな、なんて思っていたが、リヴィは色々逞しかった。誰かと連れ合って街を歩くという経験も無かったらしく、それだけでも新鮮な体験らしい。ナナの積極的なスキンシップに戸惑っていたが、悪い気分ではないようだった。

 …ただ、ロミオを連れてきたのは失敗だったか? しかも彼女さん付き。

 何かとロミオがリヴィの世話を焼いている。別に下心あっての事じゃない。元々、こいつはこういう世話焼き気質だ。

 彼女さんの方も、ロミオに妬いている気配はない。ロミオの性格も分かっているし、自分こそが不動のパートナーだと自負しているようだ。…若さの割に腹括ってるな…。こりゃ、既に外堀埋めにかかってるぞ…。

 

 

 で、あちこち歩き回ってみた訳ですが……何と言うか、俺って意外と顔が知られていたらしい。と言うより、俺を知ってる人があちこちの関係者だったと言うべきか。

 仮にも、極東の一大グループであるGKNGの開祖様だ。そしてGKNGは、極東の全域に関係者が居る。GKNGの構成員は元より、彼らから農作物の恩恵を受けている人とかね。

 更に、アイドル候補生達の関係者も何気に多い。彼女達にもそれぞれ生家があって、そこから話が拡散していったらしい。…スキャンダルの元が拡散してない事を祈る。

 

 

 

 

神怒月

 

 

 リヴィの思い出作り大作戦パート2。と言っても、今日は街を歩くのではなくて、サバイバルミッションだ。流石に毎日毎日遊んでばかり、なんて事はできないからな。

 任務の性質上、誰かと組んで戦う事も無かっただろう…。

 と思っていたが、流石にそれは経験があったようだ。

 

 尤も、彼女が好意的に受け入れられた事は、殆ど無かったようだが。まぁ、介錯任務があって、そこに他のゴッドイーターが居るって事は、介錯の相手は大抵そいつらの顔見知り、或いは関係者だったゴッドイーターだ。それしかないとは言え、処刑人を諸手を上げて歓迎できる人は居ない。

 

 一緒に任務に出た(と言っても、俺は正式なゴッドイーターではないので、非公認でこっそり出撃しただけだが)のだが、流石の腕前。極東でもここまでやれるヤツはそうそう居ないぞ。

 流石に、モンスター型・鬼型アラガミには手古摺ったようだが、一度行動と性質を把握してしまえば、後は早かった。

 

 

 ……一番手古摺ったのが、ミッションフィールドに入って来た一般人の保護だと言うのは如何なものか。自称アラガミの研究者であるこの一般人、アラガミを少しでも近くで観察したい一心で狩場に侵入してきたのだ。……動機としては、まだ軽い方だな。

 保護された後、榊博士が引っ張っていったようだが……洗脳するつもりかな?

 

 

  

 4連戦の後、テントの中でリヴィはコーヒーを啜っていた。…ナナ、おでんパンが美味いのは認めるが、流石にコーヒーには合わないと思うぞ。

 

 同行しているメンバーは、それぞれカードゲームで一喜一憂したり、何やらデータを纏めたり、神機を弄っていたりと好きなように動いている。もうちょっとリヴィに構ってやれと思わなくもないが、当のリヴィが上の空と言うか、何やら物思いに耽っているので、邪魔をしないように気を使った結果のようだ。

 俺は俺で、シエルにこっそりセクハラして(悦ばれるからハラスメントではないけど)遊びながら、何とはなしに空を見上げていた。

 

 別に大した理由があった訳じゃない。月を見て、「俺ってあそこに居たんだなー」「今更だけど、シオのポジションを奪った事に各方面からお叱りをうけないだろうか」なんて事を考えていた。

 

 

 月がとっても綺麗だね………………? 気のせいかな、なんかつきに違和感があるような。元々、今日は月が赤く見える気候だから、それが違和感っちゃ違和感かもしれないが。

 そもそも、月自体の色が変わっちゃってるからな。ノヴァの体によって月が緑化し、地球からも大分緑に見えるようになっていた。実際、初めて目にした時は驚いたもんだっけ…。

 

 うーむ…………考えても分からんな。仮に本当に月で何かが起こってるなら、こんなトコから肉眼で視認できる訳もない。

 月にあるモノと言ったらノヴァの体…タカネの本体だが。

 

 

 

 

 あれ、タカネが『誰か別人の怒りを感じる』って言ってた原因、コレじゃね? 月に残した体に、何か異変が起こってるって事じゃね? 

 でも、そうだとしても一体何が起こっているのか…。

 月には俺とタカネ以外、誰も居なかった。当時の俺はタカネの存在すら認識できてなかったくらいだ。

 誰かがロケットで月まで行った? ノヴァの何処かに植え込まれていたアラガミの卵的な物が孵って、ノヴァの体を乗っ取ろうとした?

 

 …どっちの推論も厳しいな。このご時世に月まで行けるロケット…レアとアリサが所属していた集団が作っていたようだが、あれはまだ未完成だ。仮に完成して飛ばせたとしても、確実にフェンリルに気付かれるだろう。

 後者は…どんなアラガミなのか分からないが、相手はノヴァだぞ? どんなに長く見積もっても、産まれて数か月程度のアラガミが、そう簡単に乗っ取れるようなもんじゃない。仮に、そういう専用の力を持った感応種だとしても、だ。

 

 

 

 …なんか気になるな。レアに通信送って、一度調べてもらおうか。

 

 

 ん? ミッションの続き? はいはい、今行きますよっと。

 

 

 

 

 この後、マラソンしまくるトコヨノキミモドキを延々と追い回した。

 

 

 

 

 

 で、サバイバルミッションは無事終了。トコヨノキミモドキが逃げ惑うからちょいと時間はかかったが、それだけだ。マラソンを止める手段か、遠距離攻撃が出来ればそう面倒な相手ではない。本家とはパワーもスピードも大分落ちてたし。

  帰る途中、気になって何度も月を見上げていたら、リヴィが首を傾げて問いかけてきた。いや、なーんか月に違和感があってさ。

 

 

「月に違和感と言われてもな…。私には、少し赤く見えるだけで、いつもの月に見えるが」

 

 

 だよなぁ。月が赤く見えるのは地震の前触れっていうが、それは照明された事じゃないし、単純に気候の問題の筈…。

 

 

「…思えば、こうして月を見上げるのもどれだけぶりか…。ああ、今夜はこんなにも、月が綺麗だな…」

 

 

 …死んでもいいわと返すべきか、これがものを殺すと言う事だとでも言うべきか。どっちも知らんか。

 というか、リヴィ…下心とか計算抜きで言うけど、お前もう極東支部に来たら?

 

 

「何を突然…。どういうつもりだ」

 

 

 別に大した考えがあって言ってる訳じゃないんだが。別に、介錯任務にこだわりがあるんじゃないだろ。

 誰かがやらなきゃならない任務ではあるが、リヴィはそれをやりやすい体質持ってるってだけで、それしかやっちゃいけない訳じゃないだろう。

 転属願いとか出せば、普通に移ってこれるんじゃないか?

 実際、ラケルてんてーの企ての事を話した時は、割とあっさり受理されたし。

 

 

「それは…そうだが。フェルドマン隊長も、すぐにではないが認めてくれると思う」

 

 

 変にウダウダ考えたり拘ったりせずに、こっち来ればいいじゃないのよ。お前が介錯任務で、色々と精神的に貯めこんでるのは一目瞭然だぞ。

 多分、リヴィが所属してる部隊の連中だって気付いている。結構気に病まれてるんじゃないか? まぁ、リヴィが部隊の中で悪い意味で孤立してりゃ話は別だが。

 

 

「い、いや、それはない…と思う。確かに直接的な接触は少ないが、嫌われてはいない筈…」

 

 

 むしろ信仰の領域で信頼されたりしてな。…冗談はともかく、こっちに本移籍するのが難しくても、一時の休暇ならいいんじゃねーの?

 日頃から心身ともにキツい仕事してんだから、リフレッシュしないと本気で潰れるぞ。

 こう言っちゃなんだが、お前みたいなタイプは特に。最後の最後まで精神力一つで弱音を捻じ伏せてやり遂げかねないが、一つ折れれば…。

 

 

「自覚はしている。私は決して強くはない。ただ、目の前にある道を進む事を辞められないだけだ。……というか、今更お前に隠せる気がしないので素直に言うが、ロミオが伴侶を作っていた事で折れかけた。当時はあまり自覚が無かったが」

 

 

 あー、やっぱりそっち系の慕情だったか…。

 まぁ、ロミオにも会いやすくなる…というのは傷口に塩を塗り込むよーなもんかな。

 

 

「ふっ、気にする程でもないさ。……だが、やはり駄目だな。私はあの部隊を離れる事を望んでいない」

 

 

 なんと。…いいのか?

 

 

「ああ。フェルドマン隊長にも、色々と世話を焼いてもらった。忠誠心なんてものじゃないが、恩を返すまではあそこで続けるよ。今、極東に居るのは例外のようなものだ。……ただ、休暇でこちらに来ると言うのはいいアイデアかもしれないな」

 

 

 ゴッドイーター的に見れば、休暇が極東ってどんだけワーカーホリックなんだって話だけどな。

 というかアレだ、誘っておいてなんだけど、極東に休暇に行くんじゃなくて、友人に会いに行くとかその辺の話にしとけよ。ガチで自殺願望だと思われるから。

 

 

「…ここ数日のアラガミ達を見て居れば、それも納得だな…。下手な介錯よりも厳しかったぞ、精神的にも…。…………まぁ、なんだ、貴様のような色情狂はともかくとして、ロミオやナナ達に会えるのは嬉しいよ。…絶対に更生させるがな!」

 

 

 …それって、一生付き纏うぞって愛の告白でおk?

 

 

 

 

 いや流石にそれはデスワープすっから。首を足蹴にして鎌の刃に押し付けようとするのはヤメロって。

 

 

 

 

神怒月

 

 

 月に異変あり。知っての通り、この世界の月はノヴァの体が表面を覆った事により、緑色を帯びている。地上からでも分かるくらいだし、天体望遠鏡でも使えばはっきりと木々が観測できるくらいだ。

 だが、それがいつの頃からか変わっていた。一部が赤く染まり始めたのだ。

 流石に、空の月を肉眼で見て分かる程ではないようだが……月を見上げた時の違和感は、これによる物だったのだろうか?

 

 調べたレアによると、俺が気付く前に一部の学者がこれを発見しており、原因を探ろうとしていたらしい。

 ……さっさと発表しろよ、原因調査より前に。 …え? 発表したけどスルーされたらしい?

 

 …それはそれでおかしいな。少なくとも、あそこにあるのがノヴァの体だと知ってる面々にとっては、スルー出来るような問題じゃなかろうに。

 

 

 不可解な点は色々あるが、赤く染まる現象の原因は単純だ。ノヴァの体の木々が、紅葉しているのだ。

 その原因は?と言われると首を傾げざるを得ない。

 そもそも、普通に木に見えても、あれらはノヴァの体の一部に等しい。真っ当な植物ではないのだ。

 月という、地球とはまるで違った環境で平然と育ち、雨も降らないのに水分がなくなる事もない、よく出来た模型と言ってもいいくらいだった。

 

 それが赤く染まる…。何故? 何の為に? どういう理屈で?

 少なくとも、月で1年以上暮らしていたが、紅葉した事もなかったし、枯れる木を見た事すらなかった。

 

 …以前と違う事は、何だ? 考えるまでもない。ノヴァの体に、意思が宿っていない。人の形をした入れ物に入り込み、ノヴァの体を捨てて地球にやってきている。

 うーん……それで色が変わるものか? 意思が宿ってない=死んでいる、或いは生体活動を行っていないと言う事であれば、徐々に衰えて朽ちていくのも納得はできる。

 

 しかし、それで紅葉…? もっと隠された原因がある気がする。

 タカネがあの夜に言っていた、「何かの怒りを感じる」という言葉。もしも月の体の異変と関わり合いがあるなら……多分、この現象とも無関係ではない。

 

 

 タカネに月の表面を撮影した画像を見せて、心当たりがあるかと聞いてみたが、首を横に振った。ノヴァの体とそこから育った植物木々達に、このような機能は無いそうだ。

 という事は、やはりノヴァの体が変質したか、或いはもっと別の理由で赤くなったのか…。

 また、例の怒りについても聞いてみたが、流石に写真だけでは推測もできないそうだ。月を見上げても、何も分からない。

 

 

 

 …と、ここまで考察しておいてなんだけど、一番厄介なのは、遠すぎて調べる事すらロクにできないって事だよ。

 流石に月は遠すぎる。俺でも生身で大気圏脱出は無理だ。突入は何とかなったけど。と言うか、下手に脱出しても、正しいルートに乗れなかったらそのまま宇宙の迷子だよな。

 サンプルを取る事すら難しいとは…。

 

 

 何にせよ、次に何かが起こるとすれば、それは月から始まるのだろう。

 距離が離れているのは、幸いなのか不幸なのか。あそこで何かが起きたとして、その影響が地球にやってくるまでに、どれだけ時間があるか。その間に、正体を見抜いて対策を打てればいいんだけどな…。

 

 

 

 

 

 

 話は変わるが、リヴィに元の隊へ復帰しろと要請が来た。

 極東所属はあくまで一時的なもので、ラケルてんてーの陰謀を食い止める為のものだったからな。ラケルてんてーが死んだ(陰謀が潰えたとは言ってない)以上、いつまでも極東に居られる理由はない。

 

 ロミオはひどく残念がっていたし、ナナに至っては何とかして引き留めようとダダを捏ねていたが、リヴィ自身に宥められていた。

 俺も、改めて極東に来ないかと持ち掛けてみたのだが、リヴィの意思は固かった。

 

 介錯任務を好んで行っている筈もないが、それを圧して隊に戻り、やらなければならない事があるのだそうだ。後は……多分、部隊の人達への義理立て、かな。

 

 何にせよ、リヴィは近い内に極東から去る。それでもここの暮らしは、色々と影響を与えたらしい。

 休暇を貰って、また遊びに来ると言っていた。…最初に会った時は、必殺仕事人みたいだったリヴィにそこまで言わせたんだから上出来だろう。

 

 

 出発までの数日は、思い出作りと土産選びに使うつもりらしい。

 極東土産か…。土産話だったら山ほど出来たけどな。イヤな感じの奴が。リヴィがゲンナリするレベルの奴が。極東市民、何で平然と何人も何度も狩場に入ってくるんだよ…。

 病気のお母さんの為にお花を摘みたかったとか、リアルでやられても怒りしか沸かぬ。しかもむくつけきオッサンだったし。尚、仕事にありつけない人でもあった。雇ってもらえないのは、そーゆートコだと思うぞ、そーゆートコ。

 

 

 ともあれ、最近のリヴィは、俺と一緒にいる事が多い。色恋沙汰の問題ではなく、単純にそっちの方が行動しやすいからだろう。

 リヴィの元の隊の事も多少は知っているし、ゴッドイーターとしての実力も格上(自分で言うのもなんだけど)。何よりも、俺の生活態度や女性関係を改善させるなら、俺の近くに居た方がやりやすい。

 …もう説得に行って色ボケノロケに返り討ち、というパターンはコリゴリのようだ。

 

 まぁ、リヴィの目を盗んで遊んでる訳ですが。こーゆーのが上手くなったなぁ、俺も…。リヴィの目の前でシエルに痴漢プレイしても気付かれないんだから。

 それよりも、なんかリヴィの目付きが変わってきているのが気にかかる。

 最初…行動を改めさせる宣言の直後はかなり本気で怒っていた上、絶対に改善させるという気迫が感じられたのだが、今では怒っているだけでなく、明かな好奇心や葛藤があった。

 

 ……ノロケを喰らって興味が沸いたんだろうか? なまじ話を聞いてしまっただけに、否が応でも想像してしまうようになったんだろうか。

 

 

 ふーむ…そういう相手を口説き落としたり、心のスキマに入りこんでネンゴロになるのが俺の鉄板だが…むぅ、出発までに間に合うかな…。

 

 

 

 

 

 

神怒月

 

 リヴィが極東から去っていった。寂しいが、お互い得る物があったのが幸いか。

 ロミオとも旧交を温められたし、ナナを初めとした新しい友人もできた。自分の灰色の人生に気付いてかなり落ち込んでいたが、それも吹っ切れたようだ。

 ロミオへの淡い想いも、思い出にできたようだ。

 

 

 

 

 去り際に、俺の頬にキスしてくれる程度にはね。

 

 

 

 「色々世話になったな。大した事はできないが、これは礼だ」って。

 …確かに、頬にキスくらいなら、今の俺にとっては大した事ではないが、それでも嬉しいものは嬉しい。何より、リヴィにしてみればアラガミの大群に一人で挑む以上の度胸を振り絞った行為だろう。

 それが嬉しくない筈がない、大した事でない筈がない。

 

 …残念ながら、それを告げる前に、照れ隠しをするようにリヴィは走り去ってしまったが。

 うーん、こりゃ本番に持ち込めるまで、あと一歩だったかな。

 というか、女関係や生活態度を改めさせるという話はどうなったんだろう。自分からその一部になりに来ているのですが。

 

 まぁ、こちらとしては拒む理由もありませんし? 「次に会った時を楽しみにしていろ」という去り際の言葉も、今度こそ改善させるという意味にも、続きをヤらせてくれるという意味にも聞こえますし?

 

 どっちにしろ、楽しみが増えたと思って

 

 

 

 

 ん? タカネ? どうした、いつになく慌てて。

 

 

 

 テレビか空を見ろ?

 

 

 

 

 

 

 

     え

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