※この作品はR-18です。

狩りゲー世界転生輪   作:時守 暦

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討鬼伝モノノフは、既にサービス終了しています。
HPに行けば、何人かのキャラの画像くらいは残っていますので、良ければ見てみてください。

…なーんで終わっちゃったのかなぁ。
大したストーリーは無かったけど、システム的にはかなり面白かったと思うんですが。
そりゃ強化はクッソ面倒くさかったけどそれはネトゲの常ですし、放置プレイが推奨される昨今の風潮の真逆を行ってた感じはしましたが。

お手軽アクションという意味では、かなり楽しかったのになぁ…。
討鬼伝2極を出すなら、シノノメの里も出してほしいと思う今日この頃です。


第386話

 

凶星月 里で聞いたら六日だった日

 

 さて、警戒はされているものの、シノノメの里の一員として暮らす事になった俺。異界を彷徨い歩いてきたのだから今日明日くらい休めと言われ、一軒家を貸し与えられた。

 よくもまぁ、この状況で一軒家が空いてたな…とは思ったが、どうも故人が使っていた家のようだった。モノノフとして殉職したのか、或いは病にでもかかったのか…。

 放置されていたらしく、あちこち直さなければならないだろう。ま、得体の知れない流れ者に対する扱いとしては上等な方だ。マホロバの里みたいに、結界の外で暮らしている訳でもないんだから。

 

 それにしても、色々と風変わりな里だ。長く外から断絶していた為、独自のコミュニティが発展したんだろうが…。

 

 

 

 まさか、里のお頭がミタマだとは…。

 

 別に悪い事だと思っている訳じゃない。ミタマだって元は人間、意思疎通ができて相応の器量があれば、お頭を務める事に何ら問題はない。

 ……姿が見えない、モノノフでない一般人にとってどう見えるかは知らないが。

 

 と言うか、よくよく考えれば俺ってマトモなミタマを見たのって初めてじゃないだろうか? のっぺら連中については、当時は分からなかったが『宿った』と言うよりは『自分の一部を認識できた』と言った方が正しい。何せ、元々俺を構成しているのはのっぺらミタマなんだから。

 今まで延々と鬼を狩り続けていたが、腹の中から解放されたミタマなんか見た事ない。強いて言うなら、富獄の兄貴が追いかけているダイマエンを倒した時、解放された魂達が天に還った時くらいか。

 むぅ…神木の主も見えない感じられない俺だから、最悪ミタマが見えない可能性すら考えていたんだが。

 …と言う事は、この里のお頭が特別な何かを持ったミタマなのか、単純にガチャ運が悪すぎて全く出会わなかったか、だな…。

 

 

 ともあれ、その里のお頭のミタマだが、牡丹という女の子。本人曰く、200年前に鬼との闘いで命を落とした神垣の巫女なのだそうだ。

 赤い和服に茶色が入った髪の毛のショートカット。よく笑う子で、性格は気さくで大らか、前向き。うん、リーダー向きだな。

 

 本来は別の人がお頭を務めていたのだが、少し前の鬼との闘いで行方不明となってしまい、他に努められる人が居なかった為に臨時で里長に就任したそうな。

 ちなみに、意外と武闘派らしい。ミタマである為に直接的な戦闘力は持たないか、作戦立案能力がかなり高いとか。

 前線に出る事にも躊躇いが無く、彼女を宿せるモノノフが居れば、宿って異界を探索しているのは間違いない…とは明日奈の言だ。ちなみに現在は、彼女を宿せるモノノフが居ない為、危険すぎて異界には行けない。里の中心にある祭祀堂で祀られている。

 

 神垣の巫女が、ミタマねぇ…そりゃ英霊として頼られているミタマ達だって、元は人間だ。神垣の巫女やモノノフがミタマとなって後世に力を貸すなんて事があってもおかしくはない。

 特に強い力を持っていた神垣の巫女なら、ミタマとして現世に留まる事もできそうだ。本人は自分の意思で留まったのではなく、鬼に喰われて腹の中で長い時を過ごし、そしてここの前里長に助けられたのだと言っていた。その時には、幸か不幸かミタマとして安定してしまった訳だな。

 

 

 モノノフ達にとってミタマは、信頼すべき隣人であり、頼れる相棒であるが、良くも悪くも彼らは過去の偉人である。過去の人間に、今を生きている人間の方針を決定されてはたまらない。

 具体的に言えば、戦国時代の考えのまま、現代社会の会社運営何ぞ任せられるかって話だ。

 

 まぁ、状況がガッチリ嵌ったって事かな…。

 昔の人間って事は、今……この状況よりももっと貧しかったり、不便だったりする状況で生きてた可能性が高い。その時の、所謂『おばあちゃんのちえぶくろ』が大きな貢献をしたんじゃなかろうか。

 その知恵袋には多分、籠城戦の心得とか、援軍が期待できない状況でのゲリラ戦とか、そーいうエグい知識が多分に含まれてんだろうけど。

 

 そうでもないと、ミタマが里長なんて状況はまずあり得ない。

 幽霊が里長など…なんて理由以前に、そもそもミタマをハッキリと認識して会話できる人間など、モノノフの中でも一握りなのだ。

 意思疎通すら難しい里長なんぞ、論外である。

 

 

 しかし、神垣の巫女が鬼に喰われた、か…。相当酷い、追い詰められた戦いだったんだろう。神垣の巫女は里の守りの要だ。あらゆる手段で危険から遠ざけられる。…それこそ、監禁に近い扱いとなっても。 

 

 

 

 

 次に紹介されたのは、里の重鎮である寒雷さん。

 ガッシリとした壮年大男で、古傷が幾つか見えた。オールバックの黒髪黒目、ベテランの風格が漂っており、実際に里でも頼りにされている重鎮らしい。

 相当な実力者だった事が見てとれたが、数年前に膝に鬼の投石を受けてしまい、再起不能になったのだそうだ。

 それを切っ掛けに引退し、今では里の物流を一手に引き受ける万事屋の大旦那様、と言う訳だ。

 

 

「そんな大したもんじゃねえよ。少ない物資を、ちょっとでもうまく遣り繰りしようとしてるだけさ」

 

 

 いや普通に超重要な仕事じゃないの。閉鎖された里で物流を握り、物資食料を差配して大した不満も出させないなんてどんな神業ですか。

 皆が状況を理解して、一人一人が努力している事を知っているだけさ…なんて言ってたが、多分この人じゃなければ酷い事になってるよなぁ…。商売人としての才覚に加え、現役モノノフ達の先達としての立場も持っているこの人らからこそなんだろう。

 

 

 

 次に紹介されたのは、現代の神垣の巫女の雪華。青みがかった白い髪と、物静かな雰囲気。同じく青白の巫女服も相まって、なんともミステリアスな美少女に見える。

 真面目な顔をしていると、凛として冷たい印象さえ与える顔付だが、お頭…牡丹にからかわれたり、甘い善哉を持ってホッコリしている姿がよく目撃される…らしい。

 神垣の巫女にしては割と自由に出歩いているが、これは牡丹の方針だ。元は彼女も神垣の巫女だった為か、屋敷に押し込められて生きる退屈さや鬱屈をよく分かっているのだろう。

 とは言え、流石に初対面の俺相手にいきなり打ち解ける訳もなく、ただ流れのモノノフに対して里の掟を破らないよう、そして戦力として期待しているとだけ伝えられた。ま、一介の流れ者が里の重要人物3人にいきなり面会できたんだから、破格の扱いではあるね。

 

 

 

 

 他にも色々と、里の掟や面通しした人物、施設があったんだが…今日のところはここまでにしておこう。宛がわれた一軒家を補修して、掃除して、それから飯だ。

 幸い、異界から帰る途中に摘んできた野草があるから、煮込んで鍋にでもするとしよう。

 

 

 

 

 

 

 

凶星月 七日

 

 

 分かっちゃいたけど、変わった里だな、本当に。

 何といえばいいか……他の里ではモノノフってのは、基本的に専門職だ。兼業しているヤツなんてまず居ない。

 鬼と戦う為にアレコレ準備し、鍛錬し、そして戦いが終わった後には少しだけ体を休め、次の戦に備える。それがモノノフの基本的なルーチンだ。お偉いさんになると書類仕事なんかが待っているが、それも結局はモノノフとしての仕事である。

 

 だが、この里のモノノフは兼業がデフォルトだった。一番多いのは、土を弄る農家(っぽい)の仕事。大工、薬師、鍛冶屋、酒屋(作る方)などの生産系が多い。その他には、貸本屋、散髪屋など生活系。

 小さく物資の少ない里を何とか回す為に出来上がったやり方なんだろう。モノノフを専業としているのは、相当な腕前を持ってる人か、上位幹部クラスの人間のみだ。

 

 詳しい仕組みはよく分からないが、これによって得た利益の殆どは個人の物になるのではなく、里全体の物とされるらしい。

 分かりやすい例で言えば、里の何処で得た作物であっても、万事屋…寒雷さんの所へ持っていき、それが里に分配される。

 ……よく知らないが、共産主義ってヤツか? その内、怠け者のせいで内部崩壊したりしないだろうな…。

 

 

 

 さて、俺もそういう職業を見つけなきゃならん訳だが…さて、何すっかね。

 力仕事はできるが、農業の人手は足りている。針仕事なんかの細かい作業も得意ではない。

 多少の土いじりの心得はあるけど、MH世界のものだからなぁ。主な作業はアイルー達に任せてたし。

 この里でGE世界みたいに緑の革命やってみるのも面白そうだけど、それが切っ掛けで滅ぶような気がしてならない。

 

 

 

 やろうと思えば専業も許されるだけの腕前はあるつもりだけど、それを証明する手段が無い。

 そこらの鬼を適当に狩っても、強いだけじゃ納得しないだろうしな。余所者だから特に。

 

 当然、俺はモノノフの下っ端兵士扱いになる訳だ。

 とは言え、流石に一人で戦えなんて無茶なことは言わない。この里でも、基本は4人体勢である。…人数の問題で、あぶれない限りは。

 …い、今俺が一人なのは、まだ正式な部隊編成に組み込まれてないからだ! ボッチじゃないし、怪しいからって避けられてる訳でもないからな! …誰に言ってるんだろ。

 

 

 真面目な話、数少ないモノノフをどう運用していくかは、この里の生き死にに直結するからな。真剣に検討し、明日には答えを出すそうだ。任務はそれからだね。

 

 

 

 

 

 そして今日はと言うと、寒雷の旦那に、里を案内してもらいました。

 このオッサン、やはり元はかなり手練のモノノフらしく、鬼との戦いに理解もあるようだ。見回り中のモノノフ達に、何度か敬礼されているのを見かけた。

 

 さて、里の中だが、気になる物が幾つかあった。

 まず一つ目。超界石だ。里の奥の方に祀られている石なんだが……これはどういう物なんだ? 結界石とは違う。異界の中にちょくちょく見られる、瘴気を退ける石とも違う。

 何でも、昔から里に伝わっている石で、『世界を超える力がある』と伝えられているのだとか。…と言っても、具体的に何か明確な力があるのではない。ただ、そうであると伝えられ、里人にとっては……まぁ、ある種の御神木とか、神社代わりみたいな物になってるらしい。

 一見すると、花に囲まれた御影石で、後は精々天狐の遊び場になってるようにしか見えないんだけどなぁ。

 大体、本当に世界を超える力があるなら、GE世界で俺がやったように、MH世界の植物とか呼び寄せて、食料難を救ってみせろっつーの。

 

 

 ……ただ、一応祈っておいた時、得体の知れない気配と言うか力と言うか怨嗟を感じたような気がしないでもない。よく聞こえなかったが、『課金は悪い文明』とか言ってたような…。

 …忘れよう。ま、時には神頼みしたい時だってあるだろう。手を合わせた程度じゃ、損にはならんしな。………あ、また何か聞こえたような…『課金して爆死した程度で損とは片腹痛い?』……………よく分からんが、この声の主は相当にアカン人っぽい。忘れよう。

 

 

 

 二つ目に気になる場所は、鍛冶屋だ。

 そこのおねーさん…練がまた姉御肌の美人さんなんだ。肌が褐色なのもポイント。色素とかじゃなくて、鍛冶の火の影響でそうなったらしいけど。

 一見寒そうな、露出の多いサービス過剰に見える恰好だが…成程ね、鍛冶場を見せてもらったが、ありゃクッソ熱いわ。むしろ、火傷を防ぐ為に服を着ろと言いたくなるレベル。

 …単純に、女性の鍛冶師が珍しいってのもあるけどね。

 

 ん? 女鍛冶屋とか珍しくないか? 我々の業界ではそうかもしれんし、小柄で綺麗な女の子に無骨なハンマーとか萌え要素でしかないが、モノノフの業界だとなぁ。

 鍛冶の神が嫉妬するので、女性は鍛冶場に入ってはならない…ってのが罷り通る業界だもの。神仏に力を借りるモノノフだし、割と真面目な話なんだわ。

 

 ……どうにも、紹介された時の会話も気になるしね。

 寒雷さんに連れられ、里の案内をしてもらっている時だった。鍛冶場はモノノフとしての武器を鍛えるだけでなく、包丁やら農機具やらも作る所だ。日常生活でもお世話になるので、当然案内される。

 が、営業時間であるにも関わらず、店の前からの呼びかけには誰も答えなかった。

 

 

「練! おい練! ……おかしいな。厠に行ってるにしても、いつも声は返してくるのに」

 

 

 火事場の火はついたままのようだし、工具はそこに放り出されたまま…。ついさっきまでここに居たようですな。

 …奥の扉が開かれてますが、中で倒れてるって事は?

 

 

「無いと思うが……まさか…入るぞ練! 聞こえていたら返事をしろ!」

 

 

 焦った様子で屋敷の奥に入る寒雷さん。放っておく訳にもいかず、俺も続いた。

 …あ、左奥の部屋に気配がある。

 

 

「練! ………っ!」

 

 

 寒雷さんが息を呑んだ。よもや殺人事件? 密室でもなんでもないけど、脱出不能の里の中でまさかの殺人、疑心暗鬼による全滅ルートか!? と割とマジで考えたのだが、そこに居たのはお茶を飲んでいた練ねーさんだった。

 ちょっと気だるそうだったんだが……二日酔か?

 

 

「……ああ…聞こえてるよ…」

 

「………すまん」

 

「いや…こっちこそ…」

 

 

 手に持って居た紙袋を捨て、頭を振って意識をはっきりさせようとしているようだ。

 それを見た寒雷さんが、妙にきまり悪そうだった。…何だろ? 勝手に家に入り込んだにしても、仕事場にも居ない、返事もしない練ねーさんを心配したからだろうに。

 

 と言うか、あの紙袋はそもそも何ぞ。サーッ!と擬音付きで、粉薬をアイスティーに 入れるのに使いそうな紙だったんだが。要は薬を包んでたっぽいって事ね。

 何か持病でも患ってんのかな…。

 

 気にはなったが、立ち上がって鍛冶場に戻った練ねーさんに俺を紹介する流れとなったので、それ以上の詮索はできなかった。

 …よく分からんけど、何かあるよなぁ…。

 

 

 

 後は、祭祀堂の主が、風華っていう嬢ちゃんだった事くらいかな。

 これに関しては、純粋に幼すぎて驚いた。何でも、修行途中で祭祀堂を継ぐ羽目になってしまったらしい。…先代や師が居なかったのか…とは聞くまい。楽しい話題でもないだろうからな。

 能力的には、その…幼い割には頑張っている、としか言いようがない。実際、歳の割には優秀だ。

 …ただ、正直な事を言うと、祭祀堂やるより甘味処の方が適正があるとしか思えないんだよね…。

 

 ま、考えても仕方ない。甘味処やるにしても、この里の状況をどうにかしないと、そんな余裕はないの一言で終わりだろ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 で、一通り巡って。

 なんつーか、本当に変わった里だなぁ。異界に囲まれて、何年も孤立してりゃ無理ねぇが。

 

 

「なんだ、そんなに珍しいのか、この里は?」

 

 

 寒雷さん…まぁ、かなりね。つっても、俺もちょっと前まで居た里と、霊山くらいしか知らないから。

 その前は外様で、異界の中を彷徨って…気が付けば里に保護されてたんだしね。

 

 

「ほぉ、お前さんも中々に山あり谷ありの人生を送ってるようだな。ってか、お前さん外様だったのか…」

 

 

 あれ、外様って意味分かるの?

 

 

「そりゃ分かるさ。外様……つまりは鬼の存在を知らない社会で生きてたお前達にとっては、俺達の存在は寝耳に水かもしれないが、俺達にとっちゃ逆に、ずっとお前さん達から隠れて鬼と戦ってたんだぞ。…妙な意味で言ってんじゃねーからな」

 

 

 へいへい。そっかー、外様って、モノノフからしてみれば、一般人の事を指すんだな。マホロバの里で妙なイメージがついてたかな…。

 と言うか、モノノフの常識からしても、そうそうないでしょ。里長がミタマだなんて。

 

 

「まぁな。とは言え、牡丹が認められるまで、結構色々あったんだぜ。最終的には、『御霊は元は生きていた人間。体を失いはしたが、人間である事に変わりはない』で決着したが」

 

 

 それ、幽霊は元は生きていた人間だから、怖くないって言ってるのと同じ理屈じゃないか。その成否賛否はともかくとして。

 

 

「珍しいと言えば、お前さんも充分珍しいぞ。かなり腕の立つモノノフのようだが、牡丹の事は相当気合入れなきゃ見えねぇんだからな」

 

 

 うっせい。俺はフィジカル極振りなんだよ。モノノフでゴッドイーターでも、根っこがハンターなんだよ。ハンターが物理しか扱えないのかって言われると、言葉に詰まるが。

 はー、しかし、こんだけ強くなったのに、モノノフとしちゃまだまだ半人前とはなぁ。

 

 

「仕方ないと言えば仕方ないけどな。誰だって訓練次第で見る聞く触れるはできるが、体質的に苦手か得意かまでは変えられん」

 

 

 まーね。

 

 

「さて、とにもかくにもだ。昨日も言っていた通り、お前さんも戦力として扱わせてもらう。最近、鬼達の活動が激しくてな。少しでも手が必要なんだ」

 

 

 鬼の動きが? …ま、それは後で聞くとして、俺と組むのは…。

 

 

「人数的に、今は2人炙れているから、その二人と組んでもらう。本来なら、4人で祓円陣を組むんだが、人数の問題ばかりはな…。だが、仲間の二人はいい腕だぞ。若い女だが、腕前は里でも上位に入る」

 

 

 若い女二人…炙れてる…って、ひょっとして明日奈と神夜?

 

 

「ああ。…そう言えば、あの二人がお前を連れてきたんだったな。一度は共に戦ったんだったか。何か問題はあるか?」

 

 

 俺には無いな。あの二人の腕なら、充分信用できる。(貞操の危機についてはノーコメントだけど)

 ちなみに、あの二人は俺と組むのを良しとしたのか?

 

 

「特に反論は出なかったぞ。あの二人だけだと、祓円陣の効果が充分に出せず、前線に出そうにも出せずに持て余していたからな。本人達も自覚はあったし、戦えるようになるなら万々歳だそうだ」

 

 

 意外と戦狂いだな。強制的に無駄飯喰らいの立場を押し付けられてたら、そりゃ何でもいいから働きたくなるのは無理ないか。

 …ところで、祓円陣っつーのは、何のことだ?

 

 

「うん? お前はモノノフだろう? 知らな……ああ、そう言えばあの戦い方は、この里が閉じ込められてから、必死で開発したんだったか…。一言で言えば、4人で戦う陣形なんだが、これを使うと鬼祓の必要が無くなるんだ」

 

 

 ほう…。ミフチと戦った時から気になってたが…ミタマ壊の断祓みたいなもんかと思ってた。

 

 

「ミタマ壊? …ミタマの使い方の事か? ミタマの使い方は、攻・防・癒・魂・隠の5つだろう? 他の里では違うのか」

 

 

 攻・防・迅・癒・魂・隠・空・賭・献・壊・繰と、俺が知ってるだけでもこれだけあるな。

 里によって固有の使い方なんかもあるから、探せばもっと増えるんじゃないかな。

 

 それはともかく、祓円陣の具体的なやり方は? 3人でも出来るのか?

 

 

「出来なくはないが、やはり効力は各段に落ちる。祓円陣の基本は、4人で鬼を囲むところから始まる。一人一人が結界としての役割を持ち、鬼の逃走を防ぎ、その行動を阻むんだ。勿論、幾らモノノフと言えど、体を張っただけで鬼の巨体を受け止められる筈がない。都合よく、鬼が単独で行動しているとも限らん。だから、祓円陣の最も重要な点は、事前の仕込だな」

 

 

 標的を孤立させ、鬼の行動を阻害する為の防壁結界を仕込み、隙を晒したところで一気呵成に責め立てる。鬼祓の必要が無いから、攻撃の手を止める必要もない…。

 陣形っつーより、実際は罠に近い訳ね。

 

 

「ほう、飲み込みがいいな。お前が言う通り、この祓円陣の神髄は速攻にある。俺の知る限りでは、大体の鬼は茶が冷める程度の時間で沈むな。逆に言えば、それだけの時間をかけても仕留められなかった場合、他の鬼の乱入の可能性が一気に増える。仕込んだ結界もそう長く保つものではないし、時間がかかるようなら討伐失敗と判断してすぐに離れるのが、この里のやり方だ」

 

 

 勝つも負けるも一発勝負って訳ね。この里の周囲の瘴気は、かなり濃いみたいだし…そうなるのも自然な話か。

 で、肝心の鬼祓が不要だってとこの原理は?

 

 

「ああ、そりゃ簡単だ。最初に結界を仕込むだろ? その結界に、鬼祓と同じ力を宿してるんだ」

 

 

 常時鬼祓が発動状態、しかも4人がかり…か。そりゃ効果も高いわな。しかし、そんな事をどうやって。

 

 

「そうだな………ちょっと待ってろ」

 

 

 俺に少し待つように言うと、寒雷さんは近くの地面の雪を乱雑に掻き分けた。雪の下から現れた地面は、いかにも凍土の土と言った印象だ。それでも草木は生えて成長するんだなぁ、と思っていると、出てきた石ころを持って差し出してきた。

 …何これ?

 

 …ちょっと黄色っぽくて、妙な力を感じる…?

 

 

「はは、初めて見たか? そいつこそが、この里をここまで存続させてきた秘訣ってヤツだ。みんなは宝玉と呼んでいる」

 

 

 宝玉? 確かに磨けば光りそうだけど、石ころにしか見えないぞ。

 

 

「そいつは小さな石だが、もうちょっとデカい石もそこら中に転がってるぞ。大きければ、宿る力もそれだけ大きい。そして、驚くべきはその汎用性だ。あらゆる用途に、簡単に使う事ができる。暖を取るにも使えるし、戦いに使えば結界に、人のそばに置いておけば活力を癒す力にもなる」

 

 

 ……何でそんなモンが、そこらに簡単に転がってんの?

 

 

「分からん。里が瘴気に囲まれて、暫くしてから発見されたんだ。ひょっとしたら、周囲全てが瘴気という特殊な状況で生まれる、珍しい鉱石なのかもしれん。…正体は全く分からんが、とりあえず使えるから使っているというだけだ。怪しいからって使わなかったら、とっくにこの里は干上がってただろうしな!」

 

「寒雷さん、何を物騒な事を言ってるんですか…」

 

「おお、明日奈と神夜、来たか。何、こいつに里の事を教えていただけだ」

 

「ああ、宝玉の事ですか。私達はずっと前からあって当然だと思っていましたが、考えてみると不思議極まりないです」

 

 

 おーう、元気そうだな。これからよろしく頼むわ。

 つーか、今までずっと二人だったのか? 配置換えとか無し?

 

 

「い、いきなり答えにくい事を…。配置換えについては、来月あたりの練武戦で決まるんじゃない? 昇格試験も兼ねてるんだし」

 

「練武戦については、また今度教えてやるよ。ともあれ、コイツはお前さん達の部隊に配属される事になりそうだ」

 

「真ですか!? ようやく戦働きができるのですね! 歓喜極まりないです! 今後、末永くお願いいたします!」

 

「結婚するんじゃないんだから…」

 

 

 …この子、物騒な喜び方するなぁ。実戦の経験がないのでもないし、死の危険を軽く見ている訳でもない。一種の戦闘狂の気配がする。

 一緒に戦うのはいいんだけど、具体的にどこを見回りするとかは決まってるのか?

 

 

「ああ、そこは受付所で毎日指示を出されるから、それに従ってくれ。言ってはなんだが、お前達はまだ実績が全くないからな」

 

「下回り…もとい、見回りから初めろって事よ。私も神夜も戦うつもりではあったんだけど、部隊員が揃わなかったんで、全然動けてないのよ。精々、この前みたいに湧いて出たミフチを倒す程度で」

 

「2人でそれをやってたんだから、実力は認めてるんだけどな…」

 

 

 その実力のある二人に、部外者の俺が加わる訳だしな。どっちにしろ1から初めろって事には変わりないか。

 ま、焦らず行くとしましょうか。俺もそれなり以上には腕に自信はあるし、上手く足並み揃えてれば、結構いいトコまで行けると思うからさ。

 




討鬼伝世界登場人物表

討鬼伝モノノフからの登場人物
・牡丹……里長をやっているミタマの女の子。元は神垣の巫女らしい。
    ミタマなので、見える人と見えない人がいる。

・寒雷…元モノノフ、現在は万事屋の店主。体格のいい、豪快なオッサン。

・雪華…シノノメの里に所属する神垣の巫女。
    一見するとクールな雰囲気だが、心優しく割とフレンドリー。

・練…勝気で姉御肌、褐色美女の鍛冶師。
   結構なナイスバディだが、「またサラシがきつくなった」という言葉からしてまだまだ成長しているらしい。

・風華…祭祀堂の巫女。
   修行途中に祭祀堂の主となってしまった為、修行不足。
   どちらと言うと、マスコット兼甘味作成係と思われているようだ。
   天狐と友達。


他作品からの登場人物
・明日奈…ソードアートオンラインより。
     武器は細剣(レイピア)。
     戦いばかりの生活に嫌気がさし、潤いがほしいと思っている。

・神夜…無限のフロンティアより。
    武器は斬冠刀(特注の太刀、と言うより大剣)。
    戦狂いの気質がある。
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