アナログな事ですが、やっぱりその場で自分からメモを取らない人はアテにならん…。
その日はお茶で済ませて酒飲まないつもりだったのに、苛立ちに任せてつい1リットル開けてしまいました。
更にその翌日は、聞いてなかったチェックの為に残業発生。
しかもチェックの最中に機械が故障して余計な手間を取られる。
後日、他人に厳しく自分に甘いクソ上司からネチネチと電話。
あれやれこれやれと押し付けてくる店長から「期限を区切ってやれ」とか誰のせいであっぷあっぷになってると。
世界が俺に「飲まずにやっていられるか!」と叫ばせようとしている気がする。
凶星月 八日
副業をどうするかについてはまだ決めていないが、とりあえず任務に行ってきた。
里の外を3人で見回りした後、少しだけ異界の中を探索する。完全に初陣モノノフ向けの内容だったが、まぁ仕方ない。戦うよりも、チーム内の親交を深める為の任務だと言ってもいい。
勿論、そんな悠長なことを言っていられる程、里は安泰ではないので、物資集めも兼ねていたが。
大物と戦えない神夜は不満そうだったが、それでも餓鬼やらササガニやらを蹴散らす姿は楽しそうだった。よっぽど鬱憤が溜まっていたらしい。
…あれ、放置しといていいの?
「あれでも引き際は弁えている…筈だから。あんまり大多数で囲まれるような事でもなければ、大丈夫でしょ。それくらいの力はあるし…。にしても、落ち着いてますね?」
そう言う明日奈こそ。あの子みたいに戦場でハシャぐかと思ってたが…。
「この辺はまだ、今までも見回りに入ってた場所ですから。…ところで、さっきから色々拾ってますけど…何ですか? 宝玉?」
宝玉もちょっと拾えたけど、それ以外にもな。里の物資が足りないなら、集めてくるか、或いは新しく物資にできるモノを探すしかないでしょ。
この辺に生息してる植物は、異界の影響もあって色々変異してるなぁ…。俺も知らない素材が多そうだ。
でも、ウタカタやマホロバ近辺の素材に通じる物もある。上手く利用できればいいんだが。
「へぇ…。やっぱり里の外から来た人は、色々な事を知ってますね。私達、里から出た事が無いんで驚きです」
その分、この辺の事をよく知ってるからいいじゃない。かなり珍しいよ、ここの技術。
外に持っていけたら、決行な騒ぎになるんじゃないかな。
「外…かぁ…。外って言ってもなぁ…。どうにかできると思います?」
…うん、言いたい事はよく分かる。360度全方位、完全に異界に囲まれている状態だものな。
しかもえらく深い異界で、迂闊に入ればあっという間に行動限界が訪れる。ついでに言えば、かなりの上空まで異界の影響が及んでいるので、空を飛べたとしても多分抜けられない。
つっても、どうにかせん事には…。俺の都合もあるし、里だって何れ限界が来て干上がってしまう。
「それはそうですけど……異界をどうにかできる方法なんてあるんですか?」
実践した事はないけど、その為の研究をしてるヤツを知っていて、そいつが作った道具を持ってはいる。
その為の使い方は知らないから、専ら戦いに使ってばかりだしな…。
そう話はしたのだけど、明日奈の反応は「とても信じられない」だった。まーそうだよな。俺自身、本当に異界を浄化した経験はない。実際にやってみないと、とても信じられないだろう。
そもそも、どうしてここの異界はこんなに濃いんだろうな。オオマガトキが起こった現場が近いって事もあるんだろうけど、それを差し引いてもここの異界の濃さは尋常じゃない。
「…それは私も気になってました。以前は、異界ももっと遠かったんです。オオマガトキで里が孤立した頃も、四方八方囲まれてはいましたけど、こんなに里に近くは無かったし、異界の毒も深くはなかった」
ふぅむ…異界は徐々に侵蝕してくる。その速度については状況次第なんで何とも言えないが……濃さの理由が分からんな。俺でも耐えきれない異界の毒なんて、そうそう出来上がるもんじゃないんだけどなぁ…。
…………一度、情報収集してみるかねぇ。そうだな、里に図書館…は無かったか。何かこう、年表とか年鑑みたいなものってないかな?
「それなら、貸本屋の白浜屋に行けばあると思いますよ。貸出料がいくら掛かるかは覚えてませんけど、とりあえずハク持ってます?」
あるよ。前に居た所で稼いだヤツが。……あんまり使わず延々と狩りしてたんで、ちょっとしたお大尽状態になっているのは秘密である。
その後、ちょっと異界を探索して、退屈だとブーたれる神夜の為に適当な大物を釣り出してきた。神夜はご満悦だった。俺は揺れる巨乳と裾からチラチラ見える部分のおかげでご満悦である。
凶星月 九日
貸本屋の白浜屋とやらに行ってきた。話に聞いていた通りモノノフが兼業で経営しているようだ。
ただ、そのモノノフは………うん、その…言っちゃ悪いんだけど貧弱君だ。実際、お荷物扱いされる事も多い落ちこぼれらしい。
むしろ、貸本屋としての評価の方が高いと来た。痛みやすい本を整備して管理し、「こんな本が読みたい」と言われれば需要を満たした本を紹介してくれる。…偶に、「違うそういう意味じゃない」って本を出してくる事もあるらしいが。
本人は、モノノフとして強くなりたいと思っており、実際に努力もしているらしいのだが……「頼むから貸本屋で大人しくしとけ」と言われる有様だ。
新しくやって来た外様のモノノフと聞いても、あまり警戒したりせず、爽やかに自己紹介してくれるいい子だったよ。
貸してもらった本は、この里の記録が記された本。歴史本なんて大したものじゃなく、誰かが書いた日記と思しき物だったり、古い資料だったり、帳簿のようなものだったり。
借りた本を夜なべして読んでいるのだが……。
ふぅん……オオマガトキ前の記録しかないが、この辺には幾つかの結界の要があったようだ。境界石なのか結界石なのか、そのどちらなのか今一つ分からないが、多分イメージ的には結界石だろう。ウタカタの里でも、橘花が結界を起点にしてた奴だ。
…確かあの石、数があればそれだけ強力な結界を張れるが、術者にかかる負担は跳ね上がっていった筈なんだが…。ここの神垣の巫女、酷使されてたんだろうか? 今度牡丹に聞いてみようかな。
ともあれ、どういう訳だかその石は、効果を失ってしまっているらしい。それがあれば、異界もあそこまで迫ってこなかっただろうに。オオマガトキで破壊されたんだろうか。
異界侵蝕を阻んでいた石が無くなったのは分かったが、結局あの異界の濃さの理由が分からない。
異界の瘴気とは、突き詰めれば鬼達が体から発している毒素だ。その量が多ければ、異界の瘴気は濃くなる。…が、同じ場所に溜まるよりも広がっていく事が多い。
例えて言うなら、布団とかを箱に押し込むようなものだ。余程強い力をかけなければ、溢れて外に出てしまうだけ。これが異界の侵蝕が進む原理だ。
その為、異界の濃さと広がる速度は密接なかかわりがある。ある程度の濃さになるまではその場に溜まり続け、一定を超えれば入れ物から溢れた水のように周囲に広がっていく。
分かるだろうか? 異界が広がる速さと、異界の瘴気の濃さは、基本的に反比例するのだ。一定量しか吹き出ない瘴気を、広がる事を留めさせてギュッと内側に留めるか、薄く延ばして範囲だけを広げるか。
…ここの異界の濃さと、明日奈から聞いた侵蝕の速さからして、どうにもバランスが取れていない。
………それだけ大量の瘴気を生み出す『ナニカ』があるのか…? 単純に考えれば、それだけ強力な鬼だが…。
「おう、まだ起きてるな? 入るぞ」
ん? 寒雷さんか。どったの?
「何、寝る前にちょいと里の見回りをな。夜更かしは感心せんなぁ。火を灯す為の油は貴重なんだぞ。外の里では、油くらい幾らでも使えたってのか? ん?」
あー…悪い、もうこんな時間だったか。前居たとこじゃ、夜の明かりも珍しくは無かったんでな。流石に無駄遣いしたら怒られるけど。
「はは、冗談だ。貴重な資源なのは確かだが、自分に割り当てられた分でやってるんなら好きにすりゃいいさ。里での初陣を終えたってんで、ちょいと様子を見に来たんだが……平然としてるな。艶本でも読んでたのか?」
本だけじゃ性欲を持て余すから。基本的に実物の女にしか興味ないし。尚、エロゲや同人誌は別腹。
初陣については……まぁ、神夜が退屈そうだったから適当なの釣っただけだし、むしろ平穏すぎるくらいだったなぁ。
「おう、正にそれが気になってきたのよ。手練れのモノノフだとは思っちゃいたが、想像以上だ。神夜の話に聞いた限りでは、だけどな」
正直、下級ミフチ相手にして強い弱い言われてもなぁ…。
「お前な…。いや、里の外が今どうなっているのかは知らんが、ミフチだって相当な大物なんだぞ。少なくとも、普通のモノノフなら4人揃わない限り絶対に戦うなって言われるくらいに」
……そうだっけか。確かに、言われてみれば昔は散々手古摺った。一対一で必死こいて倒したっけ。前居た所じゃ、ミフチを一人で倒せて当たり前みたいな空気だったから忘れてたぜ。
で、それがどうかしたん? そこそこ使えそうな戦力が入って来たんだし、大した問題はないと思うが?
「問題って程の問題じゃないが、今後の意思確認はしておかんとな。お前さん、これからモノノフとしてどう動くつもりだ?」
どう……と言われても。
「すまん、聞き方が悪かったか。そうだな……今後、異界を積極的に探索するのか、それとも里の防衛力、或いは労働力としての活動に力を入れるか…」
その選択肢なら、探索一択。異界の中を探索し、他所へ通じる抜け道や、異界そのものを浄化する方法を探す。
私はウタカタに行く事を諦めない。
と言うか、行かなきゃ色々な事がオジャンになる。もう一回オオマガトキが起きて、問答無用でデスワープなんて事になりかねない。
「異界の浄化、か…簡単に口にするが…いや、いい。確かに、そうでもするか、お前が言う通り別の里への抜け道でも探さないと、遠からず里まで侵蝕が及ぶのは分かっている」
誰もが知ってはいるが、対策が見つからない為に目を反らしてきた事実だな。
で、それがどうかしたのか?
「神夜が、お前が居ればもっと異界の奥に行ける、強い敵と戦えるって喜んでたんでな。決して悪い子じゃないんだが、血筋の為か戦狂いの気質がある。本人も下手な十鬼長よりも腕が立つもんで、下手なモノノフとも組ませられん。今までは、2人しかいない事を理由にしたり、明日奈が宥めていたんだが…」
俺という新戦力が来たもんで、それらの理由が効かなくなったと。
「そういう事だ。ま、俺だってあの二人を戦わせてやりたいとは思っていたんだ。実力はあるのに、燻らせてたからな。問題はお前の意思で、積極的に戦いたくない、里の守りに専念したい…となったらどうするかと思ってたんだが」
神夜に強引に連れ回されるのを心配してくれたって事ですか。礼を言っておきましょ。
…ちなみに、明日奈の意思はどうなんです?
「神夜程じゃないが、あいつも戦いたいと思ってるのは確かだ。そうでなければ、宥め役とは言え神夜とは組ませられんよ。まぁ、あの二人は幼馴染だと言う事もあるけどな」
ふぅん…。あの二人の実力なら、そうそう酷い事にはならんでしょ。現状、異界の濃さのおかげで活動限界時間が非常に低い。
あまりに戦ってばかりだと、それこそ瘴気でお陀仏しちまう。嫌でも引き去らざるを得ないでしょう。
…そうだ、丁度良かった。この辺に地理とか歴史について、ちょっと聞きたい事があるんですが。
「ん? 構わんが、異界の中は流動が続いているから、どれくらい当てになるかは分からんぞ」
構いません。とにかく情報が欲しいんで。
まずは、以前ここ近辺を守っていた結界の起点ですが…。
討鬼伝世界登場人物表
討鬼伝モノノフからの登場人物
・牡丹……里長をやっているミタマの女の子。元は神垣の巫女らしい。
ミタマなので、見える人と見えない人がいる。
主人公への評価…新しくやってきた里人。仲良くできるといいな!
・寒雷…元モノノフ、現在は万事屋の店主。体格のいい、豪快なオッサン。
主人公への評価…思っていたより使える。外のモノノフも侮れない。」
・雪華…シノノメの里に所属する神垣の巫女。
一見するとクールな雰囲気だが、心優しく割とフレンドリー。
主人公への評価…顔合わせの時以来、特に話してない。
・練…勝気で姉御肌、褐色美女の鍛冶師。
結構なナイスバディだが、「またサラシがきつくなった」という言葉からしてまだまだ成長しているらしい。
主人公への評価…外のモノノフ。珍しい武器とか持ってないかねぇ?
・風華…祭祀堂の巫女。
修行途中に祭祀堂の主となってしまった為、修行不足。
どちらと言うと、マスコット兼甘味作成係と思われているようだ。
天狐と友達。
主人公への評価…なんだかちょっと怖い気がする。
他作品からの登場人物
・明日奈…ソードアートオンラインより。
武器は細剣(レイピア)。
戦いばかりの生活に嫌気がさし、潤いがほしいと思っている。
主人公への評価…年上と言う事で、とりあえず敬語。
・神夜…無限のフロンティアより。
武器は斬冠刀(特注の太刀、と言うより大剣)。
戦狂いの気質がある。
主人公への評価…おかげで鬼と戦えるようになりました。感謝極まりないです!
オリキャラ(並びに、ネタバレ防止の為、バレバレだとしても引用元を黙秘するキャラ)
・白浜屋の店主…落ちこぼれのモノノフ。
主人公への評価…仲良くしたいと思っています。外の世界には、簡単に強くなれる方法ってないかな?