Queenにあまり詳しい訳じゃないけど、やっぱWe Will Rock Youのあのズンズンチャには心を震わす何かがあるよなぁ…。
メロディよりも原始的な音楽と言うか。
…え、まだ公開されてない? そうですかそうですか…。
それはそれとして、Night Talker閉鎖かぁ…。
なんか一つの時代が終わったって感じがする。幻想砕きの剣はあそこで投稿してたから猶更です。
随分前から更新も投稿も無くなっちゃってたし、仕方ないか…。
ログの方は保存したけど、あと何があったっけ…。
拙作・幻想砕きの剣に幻想発展録、GS in Persona、リビダルヨコシマ、魔装生徒! ユキま!、GSの方も光と影のカプリス、がんばれ、横島君!!、他呼んでたけどエタっちゃった短編諸々…。
保存しとこ。
凶星月 十二日
本日の探索はお休みとなった。神夜がブーたれるかと思ったが、むしろ明日奈の方が不満気だった。
よい戦いにはよく休む事も肝要、とは神夜の言。今日も色々集めに行こうと思っていた、と言うのは明日奈の言だ。
まー実際のトコ、ちゃんと休む必要はあったけどな。俺も体力的にはまだ余裕だけど、余裕と万全は別物だ。
そもそもからして、副業を決めてない俺は、この里から見れば半ニートと変わらんからな!
ニートはあかん、ニートは。この前のGE世界でレアとアリサの策謀のおかげで一時期そんな事になってたが、収入が無いってマジヤバイ。なんかこう……色々とプライドが削れる。
支出無しで暮らしていけるならまだしも、使う分だけでも稼がなければ。……この里の経済状態と言うか社会形態で、稼ぐという表現が正しいのかは知らんが。共産主義っぽいものな。
新たな資材の使い方を示した事で注目を集めてはいるが、それが認められるまで時間がかかるし、何より里の連中からしてみれば「外の里で持ってた知識だろ? あいつが何かした訳じゃない」と思われても仕方ない。
さて、この里で俺に何が出来るかな。まだ周囲の目が痛くない内に、ちと歩き回ってみるか。
まずは貸本屋の白浜屋。この前借りた本、返すよ。参考になった。
「あ、どうも。こちらこそ、丁寧に扱っていただいたようで」
専門的な技術はともかく、紙の本ならまだ扱いやすいくらいだよ。場所によっちゃ粘度板だの毛皮だの骨だのに書き込んでたからな。
ところで疲れてるみたいだけど、何やってたんだい?
「ちょっと鍛錬を…。と言っても、師範代とかにも「お前は大人しく貸本屋に専念しろ」って言われて、殆ど教えてくれなくなってるから自己流ですけど…」
ふーん。…酷い事言われているようだが、恨み辛みの念は見られない。お人好しと言うのもあるが、その師範代とやらに相当『世話』になったんだろう。…どうしようもなさすぎて匙を投げられ、それを自覚しているのか。
具体的に何やってんだ? これまで修めた習練は?
「モノノフの一般的な訓練です。こう、武器の扱いと、ミタマの使い方と…後は体の鍛え方。ははは…情けない事に、全然うまく動けなくて」
…その自嘲はあまり好きではないな。
今は自己流で訓練してるみたいだけど、それまではちゃんとした師匠の元で延々とやってたんだろ。今この時だって、理に適った鍛え方ではないようだけど、訓練しようとしている。
成果は出なかったかもしれんが、見放されても努力を続けるのは大したもんさ。
「…ありがとうございます。でも、戦えないと…意味がありません。僕は僕が満足する為に戦いたいんじゃない。この里が生きる一助になりたいんです」
そっか。…だったら、せめて体の鍛え方は自己流は止めとけ。鍛え方だけでも教えてくれって、師匠さんに頼んでみなよ。…最悪、俺も一家言持ってるから、助言くらいはできる。
「いや、別に自己流じゃないですよ! 正しい鍛え方をしないとちゃんと体が作られないのは、散々見てきましたから。これを教本にしているんです! 他にも色々な本があって、我が家の家宝なんですよ!」
うん? ………マニュアル本だ、コレ。…うん、まぁ…素人が自分一人でやれる訓練の教本っつったら、これに勝る物はないと思うけどさ…。
無理に高度な訓練はせず、地道でしっかり効果が出る(出てないけど)訓練ではある。
でしょう!? 分かってくれますか、とはしゃぐ店主に、物申すべきか物凄く悩んだ。
それは筋トレよりもダイエットに重点を置いた教本だ、と。
暫し悩んだが、黙って貸本屋を去った。継続こそ力なり、だ。ダイエットの為の筋トレだろうと、筋肥大させる為の筋トレだろうと、ただ走るだけだろうと重要なのは続ける事だ。質と内容は、進捗に合わせて変えていけばいい。
マニュアル本を褒めたのが随分嬉しかったらしく、一緒に貸本屋をしないかと誘われたり、鍛えるのにアドバイスをすると言ったのを真に受けて(嘘ではないが)道場でも作ったらどうか、と言われたな。
貸本屋も道場も、なぁ。
貸本屋で何ができるかって言われると分からんし、道場は…流れのモノノフが実力も示さずそんな事しても、来るのは冷やかしと「ナマイキだ」ってカチコミくらいだろ。軽く返り討ちにできると思うが、余計な波風立てるべきではない。
とりあえず次行くか。
ぶらぶら歩いて、やってきたのは祭祀堂。相変わらずオドオドした雰囲気の風華が、バサバサと大麻(ヤバい植物ではない)を振り回して儀式を行っている。
どうやら里長ミタマの牡丹と会話しているようだが、詳しい事は聞こえない。
…と、突然風華が振り返って俺を見てきた。
ど、どした? 何か邪魔しちゃったか?
「ぃ……いえ…そうじゃない、ですけど…」
…あからさまに何か言いたそうだなぁ…。子供相手でもオカルト版真言立川流で接近できない事もない…………いやちょっと待て、いきなりヤるって言ってるんじゃない、相手を観察して心理状態を把握したり、会話の流れで打ち解けたりする方だ! その先までは考えてない!
……ふぅ、何だか物凄い勢いで「いきなり少女相手にヤる気か」なんて声が聞こえた気がするが、きっと気のせいだ。
……なんかさっきよりも怯えられている気がしないでもないが、とりあえず刺激しないでおこう。真言立川流じゃなくて、野生の獣を刺激しないよう緊張感を保ったままジリジリ下がるスタンスで。
で、真面目にどしたの(ジリジリ)
「ぼ、牡丹様………が……その、うるさいって……」
牡丹様…里長が?
別に俺は騒いでは
あ
ちょっと失礼…。
鬼杭千切…が自爆には最適なんだけど、あれはちと騒ぎになり過ぎる。轟音一つで建物の一つ二つ壊れかねん。最悪は雪崩。
となると…………やはりコレか。
さぁ、思い出せ想い出せ……思い出したくもないのに記憶してしまったアレコレを。
エドワードさんの翻った赤フンを。
キースさんの使い古したフンドシで感じる目の痛みを。
タイゾーさんが火山でスクワットしまくって飛び散った男汁を。
ギネルさんが野糞してる時に風下で直撃してしまった臭いを。
コーヅィのアルコールと胃液と加齢臭が混じった服の臭いを。
カイヅが自家発電している時にバッタリ遭遇してしまった時のやるせなさを。
泥酔したヨシミ達が海辺で集団で踊っていた前シッポダンスを。
極東商店でバッタリ会ったソーマが履いていたブーメランパンツ(もっこり付き)を。
とある事情で知ってしまった、シックザール支部長が履いているオサレなブリーフを。
榊博士が冗談めかして一度だけ口にした、R-18G確定な性癖と、デンジャラス極まりない笑みを。
富極の兄貴のキレッキレのポージングを。
伊吹のちょっと頬を染めた「見てくれ、俺の大身槍…」という一発芸を。
速鳥のクッソ下手糞な天狐語で出来上がってしまった、「(美少女が言えばあざと可愛い媚び媚びセリフだけど、男が言えば今までの人生が全て無駄だった気がしてくるので自主規制)」を。
いつぞやの討鬼伝世界終盤で聞いた、大和のお頭の「待ってくれよー初穂姉!」というオッサンヴォイスショタセリフを。
そして何より、狂竜病に感染して理性を失ったA-Beeさんと、酔っぱらって誘い受けしようとしてくるJUN=NYANに同時に襲われる恐怖を思い出せ…! 全て同時に思い出せ…! 12の分割思考全てで上記の記憶を展開するのだ…ついでにコラもやってしまえ。
微に入り細に入り想いだし、我が身を満たせ……この精神攻撃、ブラクラを喰らえのっぺらミタマども……!
これ以上騒ぐようなら、太陽虫イベントとか「サラマンダーよりはやーい」とか「ツモ! 天和!」とか猫がリセットボタン押すとか冒険の書が消えた音楽とかトラウマシーンを連続で再生するからな…!
オェップ
こ、これで静かになったかな…?
「……阿鼻叫喚、って言ってます」
お、おうそうか…すまなんだな。ちと離れるわ…。
ふぅ…。何とか回復した。なんか体中に嫌な虫が這いずるような嫌悪感が残っているが、のっぺらミタマ共に掣肘を加えたと思えば安い物だ。
しかし、こりゃ祭祀堂の近くで仕事はできんな。牡丹の安眠妨害を妨げるような事はよろしくない。死者のミタマが眠るって、ガチで永眠っぽい言い方だけど。
むぅ…祭祀堂の近く、祭祀堂の近くで仕事か。何かあるかな…。
助手というか神主…俺は戦闘系ばっかりで、ソッチ系の術は全然使えない。却下だ。
そういえば風華って、お汁粉とか作るの上手いんだよな。
ふむ…和食…で勝てる気はしないな。洋食関係か。
多少ならレシピも覚えてるし、他2つの世界のメニューもある。アイルー達みたいにスキルの効果は発揮できないが、食えるものだけなら作れなくもない。
材料が足りなくても、 ふくろ の中に貯めこんでる物資の中に調味料とかはあるし、そこそこ作れはするだろう。
問題は、作れたとしてそれが受け入れられるかどうかだな
珍味扱いにはなるだろうが、好き嫌いや舌の慣れってのは大きい。一発屋で終わるか、そこそこの需要はできるか……。
……前者だな。いくら珍しいからって、俺の料理の腕に常連客がつくと思う程己惚れてはいない。
でもまぁ、洋食屋ってのはいいアイデアかもしれん。候補としてとっておこう。
よし次。今度は田畑だな。里のモノノフで一番兼業が多いだけあって、決行賑わっている。
が、逆を言うと充分に人手は足りていた。元より、そう大した規模を農園としている訳ではないのだ。この人数の少ない里を、何とかかんとか養っていける程度の規模。
その世話をするのは決して楽な事ではないが、あまり人数が多くてもいけない。複数人の多数の思惑で弄り回される土地よりも、精通した一人の老人の土地の方が収穫は大きい。船頭多くして船山に上る、と言う奴だ。
…むぅ、ここで役に立とうと思ったら、それこそGE世界みたいにMH世界から植物を持ち込まなきゃならんな。前も思ったが、それが切っ掛けで大騒動になりそうな気がしてならない。
最後の手段だな、保留。
次。……道場? そういや白浜屋のにーちゃんが、道場を作ったらどうか、みたいな事言ってたけど。
ちょっと大きめの塀に囲まれ、中から気合の入った声が響いて来る。うーん、若人のいい声だ。未熟だが意気軒高。
外からよく見てみると、入り口の近くに何やら大きめの看板が掛けられている。…むぅ、読みにくい。討鬼伝世界の文字は古風和風で崩しまで入るからな…。久々だとちょっと戸惑う。
えーと?
練武戦成績?
練武戦…? そういや、寒雷の旦那や明日奈達からもちょくちょく聞いてたが、何事だ?
文字通りなら、試合の類なんだろうけども。
? 後ろから…この気配。なんだ男か。
「なんだ、もう鬼との闘いで限界が見えてきたか? 鍛えるにしろ引退するにしろ、早い方がいいぞ」
泥高丸か…。
別にそーゆー話じゃねーよ。副業どうするかって考えてるだけさ。
「ふん、凡人共は大変だな。戦いは俺のような超人に任せて、里で引っ込んでいればいいものを。貸本屋の方が、分を弁えているだけまだ救いがある」
小言はともかくとして、この練武戦ってな何ぞ? 何だかんだで聞き忘れてたんだが。
察するに武力比べだろうけど、こんなのやってる余裕があるのか、この里。
「…まぁ、正直言って余裕がある訳じゃない。だが、気晴らしは必要だろう。里の住民も多い訳ではないが、モノノフはその半数にも満たない。俺達の力を再認識する事で安心するのだと思えば、そう無駄な催しという訳でもない」
あー…成程ね。裏なのか表立ってるのか知らんが、博打もあるなこれは。
こんだけ閉塞した環境にある里だものな。それがオオマガトキからずっと…。よく潰れなかったと心底思う。
で、具体的な内容は? あとここって、単に手合わせとか鍛錬とかしてるだけ?
「知りたければ勝手に入って勝手に調べるんだな。…とは言え、里に来て間もないお前には厳しい話か? ここは見ての通りの道場で、それぞれ勝手に鍛錬しているだけだ。新米を鍛える師範も居るんだが、最近はあまり仕事が無いらしいな」
だったら白浜屋を鍛えてやれよ…。
「あんな落ちこぼれは、弱い方がかえって生き残るだろうさ。戦いは俺達、強者の生業だ。で、練武戦と言うのはな、お前が言う通りに腕比べさ。細かい規則は省くが、モノノフ同志の一対一の決闘だ。武器の種類は問わず、年齢も性別も問わず。ただ強い者だけが上に行く」
要するにトーナメント制か。成績優秀だったら何かあるのか?
「それに相応しい地位に就く事が許される。簡単に言えば、千鬼長、百鬼長、十鬼長、精鋭扱い…といった区分だな。腕っぷしばかり強くて人の上に立つ事ができない奴も居るから、成績優秀なら無条件に出世するという訳じゃないが」
ふむ…。そういや、あんたはこの練武戦の連続優勝者だったか。と言う事は、千鬼長ってやつか。
「そういう事だ。ま、細かい事は面倒なんで、副長に任せてるのも確かだがな。俺はこの手で鬼を倒すのが本領よ。それこそが俺に出来る最高の事だ。…お前は練武戦に参加するのか?」
興味はあるが、そもそもいつあるんだよ?
「む…それを言ってなかったか。お前が来る前日に終わったから次の開催は来月だな。模擬戦ならこの道場でいつもやっているし、小規模な練武なら頻繁に行われている。興味があるなら参加してみる事だ。鬼纏を覚えてからな」
何で? 別に必須資格って訳でもなかろうに。
「参加には確かに必要ないが、戦おうと思えば必須なんだよ。それだけの効果があって、里のモノノフはほぼ全員がこの術を習得している。…鬼の居ない場所で使おうと思ったら、予め力を貯めこんでおいて放出するしかないから、一度しか使えないのが難点ではあるが」
ふむ…連戦の中でどこで使うか、使わずに負ける嵌めになるか、その辺の判断力も重要な訳だな。
抱え堕ちほど無駄な物はないと言うが、迂闊に使えば次の敵が使った時に対抗手段がなくなる、と。
どこの対戦ゲームだよ。
まぁいいさ。ここに顔出すのは、気が向いた時にしておくよ。今はやる事があるし。
「そう言えば、副業を探してるんだったな。里の外の知識を活かして、学者にでもなったらどうだ? 斬り合いからは引退してな」
小馬鹿にしたような笑みを浮かべ、泥高丸は道場に入っていった。どよめきが聞こえて、暫く後にはまた元通りの声が聞こえ始める。
参加するのではなく、鍛錬の観戦に回ったようだ。
……なんつーか、下手なツンデレだなぁ…。色々言ってはいたが、疑問とかにはちゃんと答えてくれたし、弱いだの超人だの云々も「俺は大丈夫だから、戦いは俺に任せとけ」と言ってるようなもんだし。
明日奈が言ってた通り、超人思想というか選民思想っぽいのが目につくが、悪い奴ではないのだろう。
もうちょっと年月が流れるなり、外の里と触れるようになったら、過去を思い返して頭を抱えて悶絶しているかもしれない。見物である。
とは言え、確かに強い事は強いが、ちょいと思い上がりが過ぎるのもあるな。俺もある種の同類ではあるが。
……ま、その内な。
さて、副業だが…ここで出来そうな事ってあるかね?
やる事自体、鍛錬・試合・稽古…。影ながら博打の胴元になるという手もあるが、流石に部外者じゃマズいだろ。
師匠役も、白浜屋の時と同じ理由で却下。
となると……医師? ミタマの力でそこそこ程度の怪我なら治せる。応急処置ならそこらの医者より詳しい自信はあるが、どうも専門の人もいるっぽい。つまり特に必要とされていない。
うーん……。
あ。鍛錬ばっかりって事は、その後の事は何もしてないんじゃないか? 運動の跡はリラックス。モノノフたるもの、瞑想的な意味でのリラクゼーションも当然のように心得ているが、他者の手によるものはまた別だろう。
つまりはアレだ、マッサージだ。体のメンテナンスは大事だ。
汗だくの野郎を揉むのか…。
こうして考えてみると、マッサージする人達って大変だよな。知りもしない人間の体をグイグイ触らなきゃならんのだから。
いやむしろ、年頃の女性を揉む方が大変なのか? 煩悩が湧く、煩悩が。特に俺の場合、オカルト版真言立川流を使えば狼藉し放題なのだ。
ベテランの医師みたいに、裸を見ても職業的な意識オンリーで対処できるくらいにならないと、俺には無理だ。……手術中の裸に限って言えば、血がドバドバ出て内臓くぱぁな体に欲情しろって方が難しいと思うが。
真っ当な職業ではあるが、やれるかどうか…。
む、待てよ? 訓練場で必要な物と言えば、マッサージ以上にアレがあったじゃないか。
風呂だ、風呂。訓練の後は汗を流してサッパリ。
暖かい風呂が理想だが、この際凍えるような冷たい水風呂でも構わん。考えてみれば、この里には禊場が無い。
このクッソ寒い北の地で、冷水に身を浸す禊なんぞやってられるか、逆に心臓麻痺起こすわ、という意見もよく分かるが、モノノフの技と禊は切っても切れない関係だ。
うむ…これは割といい候補なんじゃないか?
細かい設計はこれから考えなければいけないが、風呂の湯を沸かすのだってそれぞれの家でやらず、一か所で纏めてやってしまった方が節約にもなりそうだ。
収益やら支出やらの相談は、寒雷の旦那にしてみるとして…。とりあえず、土地を見繕ってみるかな。水路を引けて、適当な大きさがあって、後は何だ?
いやいや待て待て、まだ決めた訳じゃないし、実現可能と決まったのでもない。もうちょっとフラついてみよう。
次にやってきたのは鍛冶屋。モノノフにとっては自分の相棒とも言える武具を預ける重要な相手だが、俺はあんまり訪れてなかったな。
俺のメインウェポンは神機に各世界の武器を取り付けた物だ。下手に人に触れさせる訳にはいかない。
純正の討鬼伝世界の武器もあるけど、それこそ見せられない。この里ではとても作れないような代物の武器が幾つもある。仮にも、討鬼伝世界終盤の敵…触鬼の素材を使った武器だもんな。カルチャーショックになりかねない。
まぁ、あまり寄らなかった理由はそれだけではないが。
ここを切り盛りしているのは、練の姉御。…つっても、俺より年下だと思うけど。
里を案内してもらった時の日記にも書いたが、褐色肌の切符のいい女だ。髪型は、無造作に頭の上で結い上げられた、荒っぽいポニーテール。
鍛冶に使う重い金槌を自在に、何度も振り下ろす事からも分かるように、その腕力と体力は相当なもの。それに相応しい、女性にしてはガッシリした体格を持っている。
その腕前は………言っては悪いが、良く評価して中の中…と言った所か。比べる相手が、MH世界の本職連中や、科学技術の粋を尽くすリッカ達や、清麻・タタラの爺様だとどうしてもな…。
元より、本職に弟子入りしてしっかりと覚えたのでもないのだろう。そもそも、日本の鍛冶場は基本的に女人禁制だった筈。触りを教えてもらえただけでも珍しい。
明日奈や神夜も言っていたが、少ない資材を何とかやりくりし、必死で記録から再現した結果なのだろう。
ちなみに、女を捨てているのかと思えば、そうでもなさそうだ。特注品である耳飾りを大事にしていて、これを褒められると気分が良くなる。
…尤も、何やら妙な陰りと言うか忌避感を感じるので、そう単純な話でもなさそうだが…。
と言う訳で、ちょいと御免なすって。やってる?
「ん? ああ、アンタか。先日はろくな持て成しもできずにすまなかったね。ちょいと待ってくれ、すぐ完成するから」
槌を振り下ろすのではなく、刃を研ぐ音が響く。どうやら、モノノフの武器の研ぎ直しをやっているらしい。
暫し刃の研ぎを続け、仕上げを行い、全体を真剣な目で眺めまわす。
フゥ、と小さく息を吐き出して鞘にしまった。満足いく出来だったのか、それとも全力を尽くしたが到底満足はいかなかったのか。
と言うか、あれ神夜の斬冠刀じゃね? 戦いが休みだから、メンテに出してたのか。
「待たせたね。もう里には慣れたかい?」
おかげ様でね。と言っても、色々他とは違う風習が多くて、戸惑う事も多い。今は副業を探してうろうろしてるところさ。
…ここでは、手伝いとかの需要はないのか?
「あー…悪いけど無いね。良くも悪くも、アタシ一人で回る規模でしかない」
一人じゃ手が出せない、やってみたい事とか無いの?
「うーん…触った事の無い武器を弄ってみたいとは思うけど、今のアタシの力量じゃね…。っと、ああそうだ。あんた、新しい鉱石の使い方を教えてくれたんだって?」
ん? ああ、もう聞いてるのか。寒雷の旦那しか知らないと思ってたけど。
「流石に旦那も、一人で全部を調べられる筈もないからね。専門家に分析は投げてるのさ。医者には薬、アタシには鉱石と金属ってね。そっちの分析もしないといけないから、武器弄りも無理だね」
…それこそ助手が要るんじゃないの? 分析って、そうそう一人でできるものじゃないだろうに。
「そうかもしれないけど…その、あれだ、その場合、どっちにしろあんたには資材を集めてくれって頼むからさ。ここでの助手にはならないよ」
理由になっているようないないような……まぁ、確かにそれが俺に出来る一番の手伝いだろうけども。
あ、もう一つ疑問があったな。最初に会った時の様子を見るに、彼女は何やら薬を常用しているようだ。あの時の寒雷の旦那の様子と合わせて見るに、服用しそこねたら動けなくなるような、割と洒落にならん病気を抑え込むようなのを。
それを防ぐためにも、助手とは言わなくても小間使いや同居人の一人くらい居た方がいいんじゃないかと思うが………。
…でもコレ、下手に口にしない方がよさそうだ。こんな事は、練の姉御も寒雷の旦那も、とっくに承知の上だろう。それでも一人で切り盛りして暮らしているのだ。何か理由があるのは明白だ。
あの時の寒雷の旦那の態度も、それに対する練の反応もそれを如実に現している。声をかけても応えがなく、心配して踏み込んだ寒雷の旦那が謝罪し、仕事の時間なのになぜか奥座敷で茶を…薬を飲んでいた練の姉御が「気にするな」という遣り取り。寒雷の旦那が負い目を持っている、と判断するには充分すぎた。
今この時、俺がここで副業をするという提案を頑なに拒むのも、それに連なる理由があるんだろう。
冷徹な視点で考えれば、里のモノノフの装備を預かるたった一人の鍛冶師が、いつ倒れて動けなくなるか分からない状況で放置される…と言うのは有り得ない。例え負い目があったとしても、強制的に何らかの対処をする筈。
それをしないと言う事は……いや、『できない』のか。練の姉御自身に、何か事情、そうしなければならない何か。
…これもまた、里の中の微妙な均衡を作り上げている一端か。下手に踏み込めば全てが壊れる。
しかし放置していてもやはり壊れる。俺が初めて会った時だって、薬を服用するのはギリギリだったんだろう。何か一つ狂っていれば、里の唯一の鍛冶師が倒れていてもおかしくはなかった。
どっちにしろ壊れるのなら、踏み込んで壊してしまえ…とは言えないな。ドン詰まりになった状況ならともかく、俺はまだこの里で絶望してはいない。
異界を抜け、或いは晴らし、外の世界に行く事を諦めてはいないからだ。それが無理だと断じられるまで、一か八かの博打は行うべきではない。
少しばかり話をして、ここでの副業は無しと結論を出して切り上げた。
最後に訪れたのは万事屋。寒雷の旦那が切り盛りする店だ。と言っても、実際は物資配給所に近いようだが。
ここで働いているのは、何というか里の重鎮…なんだろうか? 寒雷さんは間違いなく重鎮だが。
さっきも書いたが、ここは物資配給所。何処に何をどれだけ配るのか決める所でもあるのだ。
今は上手く物資が流れているからいいが、何かあったら真っ先に不満を向けられる場所でもあるのだ。そんな所に、俺みたいな余所者が居たら? 火を見るよりも明らかだ。
「…いや、そこまでは言わないが…否定もできんか。それに、ここで働こうとするなら、里の事を隅々まで知っている必要があるからな。何を幾らで売る、幾らで仕入れる、何が必要と言うのも、里の事を熟知した店員達が情報網を駆使して集めてくれている。店の遣り繰り自体は俺がやっているし、受付に立つにも人は足りているし…」
要は需要が無い訳ですな。
それに、今の俺にはここに入れるだけの信用もない、と。
「…有体に言えばそういう事だ。すまんな」
別に謝る事でもないさね。雇用者が人を選ぶのも、実績を元にそれを判断するのも当然の事だ。
とは言え、そうなると益々もって副業をどうしたものか…。
やはり風呂屋か飯屋かなぁ。
「風呂屋か…。面白い発想ではあるな。確かに今までの里には無かった施設だ。しかし難しいぞ。それだけの施設を作るのに、どれだけの労力と資材が必要だと思う?」
確かに。男女の利用時間を分けて、湯船を一つに絞るとしても、覗かれない壁に、湯を温める施設、汚れを濾過する機能、そして周辺…体を洗う所の掃除。
公衆衛生法なんて無いご時世だから、ある程度手間は省けるだろうが…その分、衛生的な危険は隣り合わせか。
「こーしゅーなんたらはよく分からんが、清潔にして正しい扱いをしないといかんのは、飯屋も同じだな。食中毒は怖い…」
そりゃそうだが…。むう、一芸無いと仕事を任せられんと言う事か。
「正確には、一人での仕事はしっかりとした土台が無いと任せられん、だな。とは言え、確かに現状だと各所の人手は足りてるんだよなぁ…。うむ…風呂場は俺としても是非作ってほしい所だが」
そういや、明日奈と神夜の副業は?
「明日奈は飯屋の給仕、神夜は壊れた家具…主に寝具の手直しだな。神夜は最近まで忙しかったが、暖かくなってきたからな…一段落したところだろう」
充分寒いけどね、南の人間の感覚で言えば。
しかし明日奈が給仕…ウェイトレスねぇ。いや、和風メイドあたりかな? 一度見に行ってみようか。
神夜の寝具直しも興味はあるが、地味そうだな。仕事ってそーゆーもんだけど。
「まぁ、取り敢えずは何でもいいから誰かの仕事を手伝って、恩と顔を売っておけばいいんじゃないか。そうすれば、その功績を理由にして、風呂屋作りの為の資材だって集められる」
つーか、流通を管理してるのは寒雷の旦那なんだから、そこから出して……くれる訳ないよなぁ。借金するようなもんだし。
むしろ理由をかこつけて資材を投資してくれるって言ってるようなもんだから、むしろ好意的な方か。
一日色々考えて歩き回ったが、下っ端扱いでもすぐにできそうな物は無い、か…。
仕方ない。暫くは穀潰しを見る目を我慢しますか。或いは、ゲームで言うミッションとは違う、サブクエストを積極的に進めるかだな。
そしてモノノフとしてデカい功績を上げて、専業でいいと認められるようになればいいんだ。
討鬼伝世界登場人物表
討鬼伝モノノフからの登場人物
・牡丹……里長をやっているミタマの女の子。元は神垣の巫女らしい。
ミタマなので、見える人と見えない人がいる。
主人公に対する評価…なんか五月蠅いのが沢山いる。
・寒雷…元モノノフ、現在は万事屋の店主。体格のいい、豪快なオッサン。
主人公に対する評価…各方面への影響がでかい。ある意味劇薬。
・雪華…シノノメの里に所属する神垣の巫女。
一見するとクールな雰囲気だが、心優しく割とフレンドリー。
主人公への評価…初対面以来あまり話してない。
・練…勝気で姉御肌、褐色美女の鍛冶師。
結構なナイスバディだが、「またサラシがきつくなった」という言葉からしてまだまだ成長しているらしい。
主人公への評価…武器の手入れくらい頼みに来なよ。
・風華…祭祀堂の巫女。
修行途中に祭祀堂の主となってしまった為、修行不足。
どちらと言うと、マスコット兼甘味作成係と思われているようだ。
天狐と友達。
主人公への評価…なんだかよく分からないモノが沢山いる。
他作品からの登場人物
・明日奈…ソードアートオンラインより。
武器は細剣(レイピア)。
戦いばかりの生活に嫌気がさし、潤いがほしいと思っている。
主人公への評価…色々な事を知っている人。先達。
・神夜…無限のフロンティアより。
武器は斬冠刀(特注の太刀、と言うより大剣)。
戦狂いの気質がある。
主人公への評価…自分の戦好きにも気軽に付き合ってくれる貴重な人。
オリキャラ(と言うよりネタバレ防止の為、バレバレだとしても引用元を黙秘するキャラ)
・白浜屋の店主…落ちこぼれのモノノフ。
主人公への評価…話が分かる人。親身に助言をくれた。
・泥高丸…でいこうがん。
里で一番腕が立つと評判のモノノフ。
明日奈とソリが合わないようだ。
新戦術『鬼纏』を開発した人物らしい。
主人公への評価…そこそこやる凡人。