凶星月十九日
昨日は結構な騒ぎになったなぁ。何だかんだでヒーロー扱いされて、チヤホヤされるのは気分がいいものだ。
まぁ、猜疑の視線を向けられなかった訳じゃないけども。里一番の使い手と言われている泥高丸みたいに相応の実績があったならともかく、突然やってきた外様が、突然異界を浄化しました…と言われても実感はわかないだろう。
それでも好意的に受け入れられたのは、「何でもいいから希望が見えた」と言う、例え嘘やデマカセであっても構わないという心理の結果だろう。
仮に嘘八百だったら、遠からず化けの皮が剥がれるってのもあるだろうな。異界の浄化が出来ると宣言した以上、今後も同様の役割を期待されるのは当然だ。
そこでダメでした、なんて事になったら評価は反動で地の底まで落ちるだろう。
…実際、もう一度同じ事が出来るかは、検証しなけりゃ何も言えんけどな。次の結界石が壊されてなくて、かつ同様に強力なミタマが宿っている事が最低条件だろう。ま、これは探してみない事にはどうにもなるまい。
里の希望の星って事で、結構な注目を集めた俺達三人だが、やはり面白くないと感じる人はいる。主に、泥高丸……自身ではなく、その取り巻きの方だ。
別に表立って何かやってきた訳じゃないが、『やり方さえ分かれば、自分達でもやれる』みたいな対抗意識を持ってる感じがする。
実際、出来ない訳じゃないと思う。異界を祓ったのは俺自身ではなく、鬼が仕掛けた術を利用したミタマだ。捕らえられているミタマを開放する事さえできれば、多分彼らでも異界を祓う事はできていただろう。
…そこに行くまでの瘴気無効化装備と、一時的にでも結界石の瘴気を祓う方法が無いんだけどね。
ちなみに、泥高丸自身の反応はと言うと……何だか知らんが、取り巻きも連れずに朝一番に飛び出していったらしい。
大丈夫かと思ったが、行き先は見当がついているらしく、取り巻き達が慌てて追いかけて行った。まぁ…大丈夫か。あまり異界の奥に突っ込んでいくような事でもなければ、そうそう強い相手には会わないだろう。
…うーん、泥高丸の場合、注目を集めるとかチヤホヤされる以前に、明確な目的があるっぽいな。それを果たせそうだから、俺に絡んでる暇なんかない、と…。
別に問題はないな。
ああ、そうそう快挙を成し遂げたので褒めてくれ。いや異界浄化の事じゃない。
昨晩の宴会で、アヤマチがなかったんだよ! 酒に酔って肉体関係作ったりしなかったんだ!
…いや、俺の力じゃないんだけどね。
一応、英雄扱いって事でどこに行っても里人の視線があったからはっちゃけられなかったし、そもそも限られた資源しかないこの里で、俺が本格的に酔っぱらえるくらいの酒量は致命的だ。
大体からして、里の女性の9割以上はすでにお相手がいるのだ。家の関係で親に決められた話がほとんどのようだったが、幸か不幸か大体の人達は仲良くやっている。既婚者なのか婚約なのかは人それぞれだが…明日奈が出会いが欲しいって言ってたのがよくわかったよ。下手な相手と恋愛関係になったら不倫か破談まっしぐらだ。NTRの趣味はない。
さて、寒雷の旦那から聞いた、今後の話になるが…俺、明日奈、神夜の三人は、これまで同様に濃い異界の中を調査する事になる。当然と言えば当然だ。現状、濃い異界に潜れるのも、見つけた結界石を浄化する事が出来るのも俺達だけだ。前者は装備を貸せば何とかなるが、後者は鬼の手が無いと出来ないからな。
対瘴気装備を譲れ、って話もちらほら出てはいるんだが、寒雷の旦那がそれを抑え込んでいる。元々、譲るのも貸し出すのも無しと契約しているし、「異界浄化の功績に対して報酬も出せていないのに、逆に私物を没収するとは何事だ」って公言している。つくづく、旦那には世話になってるなぁ。
俺達以外のモノノフは、暫くは里周辺の警備と調査にあたるらしい。
異界を浄化できたと言っても、全ての瘴気が消え去った訳ではない。元々瘴気が溜まりやすくて特に濃かった場所、浄化の術式が及びにくかった場所、そして……鬼達が集まり、再び瘴気を撒き散らす場所。
放っておけば、また徐々に異界が広がりかねない。
それを防いでくれる、結界石に宿ったミタマの警護だって必要だ。
ついでに言うと、異界が祓われたからって、そこに植生していた植物はそのままだ。瘴気を貯めこんでは吐き出す植物、何故か火薬の代わりになるような植物、異常に頑丈な虫など、今までの常識が通用しない物が多い。
この辺は、浄化前に明日奈が色々拾って万事屋に見せていたものだから、ある程度は利用法等が分かっているのだが…。
まぁとにかく、今の里周辺は、色々と調査が必要だって事だ。異界を奪われた鬼達が、自棄になって里を襲わないとも限らないしな。
では、期待の声を背に受けながら、いつもの三人で異界調査……の前に。
寒雷の旦那に、他の結界石の資料を見せてもらった。どれくらいアテになる資料かは微妙な所だが、異界のどのあたりを探せばいいかの基準くらいにはなるだろう。
「この土偶の結界石が、今回浄化された所…。次に近いのは、剣か玄武の結界石ですね」
「うーん……順番からいくと、玄武の結界石かしら?」
「確かにそっちの方が近いが、剣の結界石近辺には水源がある。出来れば確保しておきたいな」
「ですが、そちらを優先すると、分断された異界が残って飛び地になりますよ?」
飛び地…敵領域が孤立するという考え方もできるが、両方から攻め込まれる恐れがあるな。後顧の憂いは断っておくのが常道だが…。
「鬼の強さはどうなのですか? 弱点から攻めて、戦力を削るのが良い策かと」
「…神夜からそんな発言が出るなんて…でも、強い方に行きたいって目が語ってるわよ」
「……失敬極まりないです…」
「明日は吹雪か鬼の襲撃に備えておくとして、鬼の強さは正直似たり寄ったりだ。ただ、これはあくまで今までの…瘴気の薄い部分を探索した結果に過ぎない。土偶の結界石があった付近にも、この辺りには居ない強力な鬼が出現していたんだろう?」
どっちに行っても、大物が出る可能性はあるか…。
………例えばだが、また異界を浄化する事が出来たとして、そこにいる鬼達はどうすると思う? 今、この里が直面している問題でもあるが。
「そりゃあ…手近な異界に逃げ込むか、襲撃してくるか………あぁそうか、下手に鬼達の居場所を削ると、後が厄介な事になるかもしれないのか。どんどん鬼が異界の中に集まって、より強い瘴気を放つ、強い鬼が産まれるかもしれん」
「ですが、そんなに先の事を心配しても仕方ないのでは? こう言っては何ですが、二つ目の結界石の浄化すらできるかどうか分からないのですし」
「それもそうなんだけど、仮に…仮にだけど、途中まで上手く行って、最後に手詰まりになるのが一番危険よ。何より危険なのは、強い敵がもっと強い力をつける事。もし、さっきの懸念が現実になるくらいに異界を削れていたとしたら、その時には多分、シノノメの里は満身創痍よ」
む…確かに。人の領域をいくらか取り戻せると言っても、それで資源や収穫が即確保できる訳じゃない。広くなった領域を巡回し警護するには、それだけの労力も必要になる。
結界石が幾つあるのかは知らないが、それを全部浄化するのにどれだけの時間と戦力が必要になるか…。
「では、どのようにするべきだと?」
「…ふわっとした言い方しかできないけど…敵を強化しすぎない、つまりあまり集めないようにする必要がある……。とはいっても、鬼が私達の思う通りに動く筈がないし…」
「ふむ、明日奈の言いたい事は分かった。先を見据えた大戦略は、確かに重要なものだ。特に、手詰まりのこの状況ではな。だが、今何よりも重要な事は、異界の浄化は奇跡でも何でもない、しっかりと再現できる事だと示す事だ。故に、今は確実性を取る」
「と言うと?」
「異界を端っこから削っていく。今回は玄武の結界石だ。水源は喉から手が出る程ほしいが、逆に言えば鬼達に見透かされているかもしれん。俺なら、ここで伏兵を仕込む」
…そこは同感だな。ただ、伏兵は仕込むんじゃなくて、水辺を好む鬼達が自然と生息しているんだと思うが。
水源を確保したとしても、毒の類が無いかを調べてから使わなきゃならんな。
「……ふむ、どっちにしろすぐに手に入る訳じゃないか…。幸い、里の人間だけを養っていく分なら、現在の水量で足りている。無理に確保する必要はない。…よし、決まりだな。次はこの玄武の結界石を調査してくれ」
そういう事になった。
場所は地図を見せてもらったので大体分かるが、問題はその結界石がどういう形で残っているかである。
かつて稼働していた結界石の中には、罅が入って割れていた物もあったそうだが、玄武の結界石は違う。逆に、剣の結界石は欠損が認められていたらしい。そこらへんも、玄武の結界石を優先した理由だな。
さて、一体どうなる事やら。土偶の結界石は、何故か胎児になっていた。玄武の結界石は?
どんな鬼達が出てくるだろうか。植物もMH世界の物に似ていたんだし、異常進化した鬼が出ても驚かない。尤も、どれだけ進化したとしても、もっと頑丈にならなきゃ話にもならんが。
ん? 神夜、どした?
何、話し合いばかりで退屈だったから暴れたい? ……やれやれ、適当にその辺の鬼の所に連れてってやるかね。
凶星月二十日
もう月が2/3も過ぎたかぁ、早いもんだな。ちなみに言っとくと、モノノフ達の月日は西暦じゃないからな。一か月が三十一日以上続いても別におかしくはない、そもそも異界の狂いまくる時間にも対処しているのでモノノフ独自の基準になっている、イイネ?
それはともかく、玄武の結界石を目指して調査中。
まーそれぞれ満足そうで何よりよ。神夜は今までよりもちょっと強い敵と戦えて満足。明日奈も戦力的に貢献できているという実感に加え、色々手に入る珍しいアイテムにご満悦。
俺? 俺は二人が戦ってる時に、チラチラ見えるアレやコレやで悦んでおります。見えるだけってのもオツだよね!
真面目な話、未踏の地の地図を埋めるのは男のロマンだ。ここにアレがあってそっちに何があって、空白の地図を埋める快感は滅多に味わえない。それこそ、MH世界でだってやった事の無い事だ。何だかんだで、あそこの殆どは踏破された土地だからな。
何と言うかこう、処女の膜を奪ってやったよーな興奮を感じる。別に地図を使って性的絶頂に至るマッパーになったつもりはないが。
まぁ、それはいいんだが……なんだ、知らない鬼の痕跡がある。
いや、知らない鬼自体は珍しくないんだ。討鬼伝世界の鬼は、MH世界・GE世界に比べて変異が激しい。
MH世界のモンスターは、同じ種族でも個体差の強弱が激しい。だが、基本的な構造というか造形はほぼ同じだった。
GE世界のアラガミは、とにかく進化早かった為、一体一体の総合戦力は変わらなくても、姿形が全く違う事が多かった。
そして討鬼伝世界は……どっちかと言うとMH世界寄りか? 異常化と言うか…そうだな、同じ種族だと一見して分かるのに、全く違う個体だとすぐに分かる。例えば手が異常に大きかったり、トゲトゲしていたり、色が違ったり。
うーん………イメージ的には……そうだな、あまり気分がいい例えじゃないが、放射能とか環境汚染に適応してしまった感じか? 明らかに異常、明かに異形。なのにそれが個体として成立してしまっている。
今まで戦ってきた……例えばゴウエンマ辺りだって、一体一体が確かに違った姿をしていたのだ。誤差と断じて描写してなかったが。
そういう意味では、鬼達は所謂『亜種』が非常に多い種族と言えるだろう。
しかし、この鬼は違う。もっと安定した形を保った種族だ。
MH世界のモンスターと同じ気配がする。痕跡からそれが分かる。
ぬぅ……もうソッチ系に進化した鬼が出てきたのか。思ったより早かったな。さて、どんなのが出てくる事やら…。
一応、足跡とか何か吐き出された液体とか、集めて持っていくか。
さて、二つ目の結界石の在処だが、異界のかなり深い場所にあるようだった。そこに行くまでの地形はかなり入り組んでいる。野を超え川を越え谷を越え鬼の巣を超えて。
それ程に入り組んでいる地形なので、俺達も鬼も隠れる場所が多くある。あまりホイホイ先に進んでいく事はできない。
何処か、安全にショートカット出来る場所を見つける必要があるな。
「以前の結界石のように、鬼の配置で場所を特定する事はできないんですか?」
明らかに警護したり巡回してる鬼が居るならともかく、そこらの野良だけじゃなぁ…。
そもそも、資料で貰った場所に本当に結界石があるのかも分からんのだよな。
「異界の流動で動いてるかもしれないって事ですか。でも、結界石が異界を生み出すのに利用されているなら、やっぱりこの濃い異界の何処かにはあるんでしょうね」
「…確かにそうですね。それにしても、一体どのような鬼なのでしょう…。結界石を穢し、ミタマを利用する鬼。知性だけで考えても、他の鬼とは一線を画していること極まりないです」
そういやそうだな。結界石を利用した鬼も、見つからないままだし…。
そもそもからして、里を守っていた結界石はどうやって穢されていったのやら。最初の一つには罅が入ってたそうだが…鬼の仕業、かな…。
「結界石は、そうそう風化するような代物ではありません。かと言って、人間の仕業とは考えたくありません」
裏切者や敗北主義者は何処にでも湧くけど、確かに人の仕業ではなさそうだ。
ひょっとしたら、鬼に唆された誰かがやらかしたのかもしれんけど。と言うより、その可能性が一番高いかな…。人の心に忍び込んだり、闇から手招きするのは鬼達の得意技だ。
「「………………」」
? どうかしたか?
「いえ、何でもありません。このまま結界石を一つ一つ戻していけば、いつかはその鬼にも会うのでしょうか」
「多分ね。むしろ、浄化した結界石をまた汚そうとしてくるんじゃない?」
ありそうだなぁ…。
「…望むところです。斬冠刀で、膾切りにしてあげます」
お、おう…なんか張り切ってるな。さっきの沈黙といい、まだ何か知らない事情があるっぽい。
凶星月二十一日
今日も異界を探索中。
結界石の発見には至らないが、鬼同志が揉めているのを何度か見かけた。恐らくは縄張り争いだろう。
カゼキリが二匹か…。
「鬼と鬼が戦ってるところ、初めて見ました…」
「私も…。でも、どうして争ってるんだろ? 鬼が複数居ても、狙われるのはいつもモノノフだけなのに」
モノノフが共通の敵って事もあるんだろうけど、多分鬼達にとっても厄介な状態になってるんだろうな。
例えばその辺の犬が二匹いるとして、目が合ったら問答無用で争うと思うか?
「…争わないのですか?」
…まぁ、確かに大抵の場合は飛び掛かるが…。
見知った犬同士だったら、あまりに接近されない限りは争ったりしないよ。野良犬同士だって、相手の強さとか自分の体力とかを見て争うかどうか決めるくらいは考える。野生で生きてりゃ、体力消耗や怪我は死に直結するからな。
その理屈で行くと、普段鬼と鬼が争わないのは、お互いが見知った相手だからじゃないかな。近付き過ぎない、自分の領域に入ってこない相手だから、自分からちょっかいを出す必要が無い。
「…うーん……鬼達が意外と頭いいって言うのは分かりましたけど、そこまで考えるのかなぁ…」
「では、あそこの争いは?」
逆なんだろ。知らない相手だから警戒してる。近付き過ぎたから撃退する。
…この前、明日奈が考えてた事が現実味を帯びてきたな…。
「私が? ……あっ、居場所を失った鬼達が、まだ残っている異界の中に押し寄せる…!」
「成程、つまりあそこにいる鬼の片方は、逃げ込んできて縄張りを確保しようとしている鬼なのですね」
或いは両方が、かな。互いの傷からして、連戦してるっぽい。
周囲をよく見てみると、鬼の死骸が幾つか転がっている。
…多分これ、異界の中は暫く地獄みたいな状況になるぞ。
「鬼だけに?」
地獄の極卒じゃねーだろあいつら。押し寄せた鬼達が自分の居場所を確保しようとして、あっちこっちで縄張り争いだ。
下手に突っ込むと、鬼達の大乱闘に巻き込まれるぞ。
「…………大乱闘…」
やめんか戦狂い。
どうしたものかな…。弱い奴が淘汰されて強い奴、厄介な奴が残っていくのは確かだが、逆を言えば弱い奴は放っておいても減っていくんだよな。敵が勝手に減ってくれるなら万々歳だ。特にシノノメの里は寡兵だから、猶更。
だが強い敵が残る…。強いと言っても、どこまで強くなるかは分からんな。
「とりあえず、どうします?」
…寒雷の旦那に報告しよう。今日の調査は、何処で何が戦ったのかを調べて切り上げる。
適当な所で調査を切り上げ、鬼達の戦いには介入せずに帰ったが…なんともまぁ、予想通りにあっちこっちで大暴れしている事よ。
死屍累々もいいトコロだ。言っちゃなんだが、オオマガトキで倒れて行ったモノノフ達もこんな感じだったんじゃないかな。
里に帰還し、微妙に注目を集めつつ寒雷の旦那の所に相談に行った。
…ら、何故か祭祀堂に連れてこられてしまった。
「いや何故も何も、今後の里の方針を決める重要な情報ですよ。里長が居る所で話すのは当然じゃないですか」
そう言われればそうかも。牡丹が見えにくいんで、すっかり忘れてた。
「『誰の影が薄いって!?』って怒ってるぞ。それはそれとして、報告を聞こうか」
薄いどころか物理的に見えねぇんだよなぁ…。こんな事言うと、もっと怒り出しそうだけど。
そんじゃ、異界の様子だけど…。
「ふむ…縄張り争いか。言われてみれば当然の結果かもしれんが、鬼と鬼の戦いは珍しいな。それで、今後どうしていくかだが…」
寒雷の旦那は、腕を組んで考え込んだ。が、すぐに祭祀堂……牡丹に目を向けた。見えにくいが、何かを語っているらしい。
ふむふむと頷く寒雷の旦那は、『そりゃそうだ』と言いたげに頭に手をやった。
「暫くは様子見だ。無理して鬼達の縄張り争いに参加する必要はない」
「その心は? 追われた鬼達が、里に押し寄せるかもしれないのですよ?」
「確かにその危険もあるが、異界の奥に居る鬼…つまり強い鬼が、より強い鬼に追われて出てくるんじゃない。浅い部分に居た弱い鬼が、縄張りを確保する為により強い鬼へ挑むんだ。死に物狂いでな」
…矛先が、里ではなく異界に向かう? そして殆どの鬼は返り討ちに合う。
「そういう事だ。鬼にとっても、結界が張られた里の近くか、異界の中かで言えば後者の方が住みやすい。こっちからしてみれば、鬼同志がぶつかりあって減ってくれるんだから、全く問題は無い。完全に隔絶した強さを持つ鬼が相手ならともかく、比較的近い強さの鬼だ。襲われた側も無傷ではいられんだろうし、ここは縄張り争いで疲弊したところを突くのが得策だ。尤も、今後も同じ事が繰り返されるかは話が別だ。鬼達だって学習するだろうから、むしろ罠を張ってくるかもしれんしな」
…成程ね。楽観的ではあるが、充分にアタリの目はありそうだ。
で、これを考えたのって…。
「おう、見ての通り…って見えにくいんだが、牡丹だぞ。初めて会った時も言ったろう。こいつの作戦立案能力には、結構なものがあるってな」
確かに…。情報を得てから一刻も経たずに、これだけの案を組み立てるとは。
正直、見縊ってたわ…。申し訳ない。
「見直したかってふんぞり返ってますよ…。まぁ、伊達に私達の里長と認めらてないって事です。里が孤立して以来、何度か鬼が里に接近した事もありましたけど、真っ先に気付いて指示を出すの、いつも牡丹様ですし。接近を予感して、逆に待ち伏せするのもよくありました」
「神垣の巫女なのに、武闘派極まりないです…。生きていた頃は、ゴウエンマを斬り捨てた事すらあるそうですよ。『弧月』と呼ばれる結界術を使いこなしていたとか。失伝しているのが悔やまれます」
「感覚で使ってたらしいから、やり方を教えられないんだよね…」
「手合わせできないのも悔やまれます」
「手合わせで終わらないでしょうが。……平然と受けようとする牡丹様も牡丹様ですけど…」
パネェ。なんでモノノフじゃないんだ…。いや神垣の巫女が戦えない理由もないけどさ。単独で強力な結界を張れるんだし。
ともあれ、暫くは様子見、もしも引っ掻き回してやれそうなら、それを狙う。結界石の探索は後回し…でいいのかな。流石に縄張り争いの真っただ中を探索するのは、危険が過ぎる。
「そうだな。どの道、瘴気が無くなった周辺の警護も必要だったが…そこで見つけた鬼も、異界の方に追い立ててしまえ。無論、無理をする必要はないが」
「となると、私達の行動の基本は…軽い巡回をしながら異界へ向かい、偵察して戻る。途中で鬼を発見したら交戦、里の側に逃げない限りは深追い無用…ですか」
ふむ…。となると、ちと退屈な日々が始まるな。
…そういや、兼業どうしようかねぇ…。専業モノノフするには充分な成果は上げたと思うけど、成果が出ない日々が続く可能性を考えるとなぁ…。
討鬼伝世界登場人物表
討鬼伝モノノフからの登場人物
・牡丹……里長をやっているミタマの女の子。元は神垣の巫女らしい。
ミタマなので、見える人と見えない人がいる。
他の里に行ったらやってみたい事…祭祀堂巡り。
・寒雷…元モノノフ、現在は万事屋の店主。体格のいい、豪快なオッサン。
他の里に行ったらやってみたい事…商売、商売!
・雪華…シノノメの里に所属する神垣の巫女。
一見するとクールな雰囲気だが、心優しく割とフレンドリー。
他の里に行ったらやってみたい事…他の里の神垣の巫女と話してみたい。
・練…勝気で姉御肌、褐色美女の鍛冶師。
結構なナイスバディだが、「またサラシがきつくなった」という言葉からしてまだまだ成長しているらしい。
他の里に行ったらやってみたい事…安全な鉱山があれば、材料集めから自分でやってみたい。
・風華…祭祀堂の巫女。
修行途中に祭祀堂の主となってしまった為、修行不足。
どちらと言うと、マスコット兼甘味作成係と思われているようだ。
天狐と友達。名前は華天。
他の里に行ったらやってみたい事…雪華姉さまと逢引。
他作品からの登場人物
・明日奈…ソードアートオンラインより。
武器は細剣(レイピア)。
戦いばかりの生活に嫌気がさし、潤いがほしいと思っている。
他の里に行ったらやってみたい事…昔の知人に会いに行きたい。
・神夜…無限のフロンティアより。
武器は斬冠刀(特注の太刀、と言うより大剣)。
戦狂いの気質がある。
他の里に行ったらやってみたい事…道場破り。
オリキャラ(と言うよりネタバレ防止の為、バレバレだとしても引用元を黙秘するキャラ)
・白浜屋の店主…落ちこぼれのモノノフ。
他の里に行ったらやってみたい事…新しい本を仕入れたい。
・泥高丸…でいこうがん。
里で一番腕が立つと評判のモノノフ。
明日奈とソリが合わないようだ。
新戦術『鬼纏』を開発した人物らしい。
他の里に行ったらやってみたい事…腕試し。