※この作品はR-18です。

狩りゲー世界転生輪   作:時守 暦

403 / 611
第403話

 

魔禍月 伍日目

 

 昨日はマット・コーガンこと泥高丸に、根掘り葉掘り聞かれて散々だった。

 例として見せたのは、ハンターの鬼人化。鬼纏ほど極端な効果は無いが、自分の意思で入切が可能、体力が残っていれば幾らでも続行できる、鬼人化とはまた違った鬼人強化状態という強化に繋げる事もできる。

 だが、使い勝手の良さよりも泥高丸が驚いていたのは、鬼の瘴気を使わず、基本は自分の体だけでそれを成すと言う事だ。

 

 見せておいてなんだけど、相当なショックだったろうなぁ…。自分が必死こいて、猛毒を飲み干す思いで開発した術が、そんな事をしなくても同じ事が出来るってんだから。

 それでもめげずに、「いや、それなら鬼の瘴気を使わないと出来ない事を組み込むまでだ」なんて言い出した。宣言した通り、鬼纏から離れるつもりは一切ないらしい。だからこそ、俺も手を貸す気になったんだけど。

 

 里への帰り道で見つけた鬼を相手に、鬼人化を使った戦い方を見せたところ、そこから自力で鬼纏の課題を見つけ出したようだ。

 自分で疑問を持ち、それを解決する方法を探せると言うのは大きな事だ。流石は鬼纏の研究者と言うべきか。

 まぁ、こっちからあれこれ伝える手間が省けるのだからいい事だ。

 

 頼まれた通り、白浜君を鍛えなきゃいかんしな。

 そういう訳で白浜屋によると、なんだか恐縮されてしまった。

 

 

「師匠、わざわざ店に足を運ばなくても、こちらからお伺いしますのに」

 

 

 そうは言っても、手紙や伝令走らせたところで時間の無駄だし。まぁ、流石に予め予定が分かってたり決めてたりするなら、そっちから来るようにさせるけども。

 それはともかく、鍛錬の話だ。どういう方向で育てるのか決めたんで、伝えに来た。

 

 

「はい、よろしくお願いします!」

 

 

 とりあえずは…武器はこれを使え。こっちは練習用な。

 

 

「これは…手甲、ですか? …………あの、こっちの手甲、見るからにとんでもない業物のような…」

 

 

 この里では知られてないが、外では結構使い手が多いんだぞ。俺も何度も使った事がある。

 一番簡素な武器の通称『粉砕手甲』と、それを限界まで強化した『真・爆影』だ。前者はともかく、後者はペーペーに使わせるもんじゃないが、実力が足りないなら道具で補うのも一つの手だ。頼りきりにならなければ、だけど。

 

 率直に言わせてもらうが、君は根本的に不器用だ。器具を扱う才能が、根っこから欠けていると言ってもいい。

 今までの鍛錬や試合でも、武器の持ち方を変えようとして取り落したり、妙な所を掴んでしまった事があるんじゃないか? と言うか、練武戦の時もそうなりかけたし。

 同じような理由で繊細な技術、高等な技術を使うには向かない。

 

 

「うぐ…。じゃ、じゃあ手甲って言うのは高い技術が要らない武器って事ですか?」

 

 

 まさか。確かに、手甲は腕に括り付けて使う物だから、取り落す心配は少ない。使うだけなら、ただ体を動かして殴りつければいいだけなんだから、そういう意味では使うだけなら楽だな。

 だが使いこなす、鬼に対して有効な打撃を与えるとなると、他の武器よりも一つ二つ高い技量が要求される。

 当たり前だろ? 鋭い刃も、長い間合いも無い。補強しているとは言え、言ってみりゃ石を握って鬼に殴り掛かるようなもんだぞ。正しく体を動かして力を伝えてやらないと、文字通り手打ちにしかならない。

 それ以上に、手が届く距離まで鬼に接近する必要があるんだ。攻めるも守るも機を見極めなきゃならんし、そういう意味じゃ非常に難しい武器だ。

 

 

「では、何故この武器を? 僕には才能が無いって言ったばかりじゃ…」

 

 

 消去法ってのもあるが、万が一の時は防御が効くってのが大きいな。刀は繊細だから、下手に受ければ刃が欠ける。槍も、人間の攻撃ならともかく鬼のを受け止めると圧し折れる。

 その点、こいつは基本的に分厚い金属の塊だからな。鬼にブン殴られたって、そうそう壊れやしない。…使い手はともかく。

 

 それに、今からお前さんが真っ当に戦えるくらいのモノノフになろうと思ったら、どうやったって体の作り直しは避けられん。だったらついでに、これの扱い方も仕込んでしまえばいい。

 極めるのこそ難しいが、自分の体にだけ気を使ってりゃいい分、他の武器よりも習得は容易なんだ。

 

 

「そういうものですか…。わかりました。教えを請う以上、疑問は持っても疑ったり反発したりするのは筋が通りませんね。僕はまずどうすればいいですか!?」

 

 

 さっきも言ったが、まずは体の作り直しだ。道場の師範に、どんな事をさせるかは伝えている。

 俺が居ない間は……教えると言っておいて早速で悪いが、今日はお役目だ……師範に教えを請うといい。

 

 とりあえず、今日伝えておく事は以上だ。戻ってきたら成果を確かめに行くから、それまでは師範に鍛えてもらって、後は普通に生活してろ。

 

 

「はい、わかりました! これからもよろしくお願いします!」 

 

 

 白浜君は頭を下げて走って行った。

 言うまでも無いが、師範に渡したのはMH世界のハンター育成マニュアルである。マニュアルと言っても、俺が書き記した奴だけど。ハンター特有の肉体操作術については書いてない。下手に広まると危険だからな。……主に俺が。ギルドナイトが世界を超えてすっ飛んでくる気がする。

 肉体操作術については、機を見て白浜君に直伝するとしよう。

 

 

 ………ちなみに、肉体操作術が無い分、本来のハンターの訓練と比べれば楽ではあるが……目を通した師範が、「え、マジでこれやるの? 白浜殺す気? と言うか良心の呵責で我輩が死にそう」みたいな顔をしていたが、些細な事である。

 

 

 

 

 さて、肝心のお役目である異界調査であるが、沼を渡るいい方法は思い浮かばなかった。

 3人で知恵を持ち寄ったりもしたのだが、夢みたいな方法ばかりである。

 

 気は進まないが、沼は一旦避けて探索を進める事にする。正確に言うと、沼の周辺を調べて、一見では発見できない道がある事に賭けた。

 まぁ、あの小島に本当に何かあるかは分からんしな…。固執するのも微妙な話だ。

 

 

 それはそれとして…明日奈、まだ眠いのか? 昨日は半日近く寝てたって聞いたけど。

 

 

「ここまで眠そうなのも珍しい…。体調管理は普段は万全ですし、そもそも明日奈さんは多少徹夜しても平気じゃないですか」

 

「平気だからって、眠くないとは言ってないわ…。逆に寝過ぎたかしら…。どうも何か夢をみた覚えがあるんだけど…」

 

 

 ……夢、夢か。

 夢自体はともかく、あまり歓迎できる状態じゃないな。

 

 

「? 夢を見る事がですか? 単に眠そうなのが?」

 

 

 それも問題ではあるが………本人を前にして不安を煽るような発言をするが、千日夢って知ってるか? あとミズチメは?

 

 二人は顔を合わせて、前者については首を横に振った。

 戦った事があるなら知ってると思うが、あいつらは呪いを使う。凍らせたり眠らせたり、色々ね。

 中でも特に強い力を持ったミズチメは、夢を介して呪いをかける事ができるんだ。これが千日夢。強力だぞ…別の里では、神垣の巫女が張った結界を超えて、何人もが眠らされた事がある。

 

 呪いの内容は、名前の通り眠ったまま目が覚めなくなり、徐々に衰弱して死んでいく。

 呪いをかけられた者は、夢の中で過去に戻されると言われている。…と言うより、『あの頃に戻りたい』『過ぎ去ってしまった事を変えてしまいたい』と思ってる人が千日夢に付け込まれる、って言った方が正しいか。夢は願望を移す鏡みたいな役目もあるからな。

 

 

「後悔を持っている人間が狙われる、と言う事ですね。しかし、誰だって後悔や回帰願望は持っていると思いますが。私だって、とと様やかか様が生きていた頃に戻れたらと思います」

 

「そうね。何でもかんでも鬼の呪いのせいにしてると、何もされてないのにそう思いこんじゃって、自分で自分に呪いをかけるって事もあるし。……でも、夢を操るってのはありそうな話ね…」

 

 

 まーそうだな。そこであっさり言えるなら、大丈夫そうだな。

 地形的にも、あの辺にミズチメが居るとは考え辛い。とは言え、おかしな力を持った鬼は、何処に出現してもおかしくない。

 昨日今日は寝起きの時間が狂ったって事で納得するけど、体調にしろ何にしろ、異変を感じたらちゃんと言ってくれよ。

 

 

 

 

 なんていい感じに纏めたはいいものの、肝心の探索では何も発見できず。いや、発見できなかった事こそが最大の収穫なのかな?

 あの沼から離れると、鬼達の分布が急に薄くなった。…全体の鬼の配置や縄張りを確認してようやく確信を持てたが、あの沼の中の孤島に何かある。

 ていうか結界石がある。沼全体を囲むように、一部の鬼が巡回してたからな。

 

 さぁって、どうしたものか…。巡回の鬼、つまりは重要物の警備を任されるくらいの鬼達と、真向斬ってやり合うか?

 多分、仲間を呼ぶだろう。下手をすると、縄張り云々を無視して周辺の鬼を呼び寄せ………?

 

 

 

 ああ、そうか。呼び出しよりも縄張りを重視させればいいんだ。自分が離れている隙に、他の鬼に縄張りを取られるかもしれないと思わせる。要は、引っ掻き回して疑心暗鬼状態にするって事だな。

 となると……極力、俺達の姿を見せず、他の鬼がちょっかいを出してきたような痕跡を演出する、か。中々面倒な話だ。

 鬼と鬼が近くに居れば、適当に隠れて小突いて、喧嘩の切っ掛けでも作ってやればいいんだが。

 それをやるとしても、沼を渡る方法を見つけた後だよなぁ…。浅瀬でもあったら、話は早かったのに。

 

 

 

 




討鬼伝世界登場人物表兼コメント

Q.生活の中で、これだけは譲れないという拘りは?

討鬼伝モノノフからの登場人物
・牡丹……里長をやっているミタマの女の子。
    A…祭祀堂の風通し。空気が淀むとよくないからね。

・寒雷…元モノノフ、現在は万事屋の店主。体格のいい、豪快なオッサン。
    A…一番風呂かな。まぁ独り暮らしなんだが。

・雪華…シノノメの里に所属する神垣の巫女。
    A…一日に一度……いえ二度は、風華の甘味を…。

・練…勝気で姉御肌、褐色美女の鍛冶師。
    A…そりゃやっぱり仕事さ。

・風華…祭祀堂の巫女。
    A…華天の毛並みを整える事でしょうか…。

他作品からの登場人物
・明日奈…ソードアートオンラインより。
    A…髪の毛の手入れかな。

・神夜…無限のフロンティアより。
    A…お風呂上りに牛乳です。

・白浜君…既にお察しの通り、史上最強の弟子の白濱兼一君です。
    A…本に折れ目をつけない事です。貸した本につけられると…。

・泥高丸…ジャングルの王者ターちゃんより、マット・コーガン改めでいこうがん。
    A…起床直後の水垢離。これをやらないと頭がすっきりしないんだ。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定
▲ページの一番上に飛ぶ  X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。