※この作品はR-18です。

狩りゲー世界転生輪   作:時守 暦

404 / 611
GE3、とりあえずクリア。
…ストーリーもアレだけど、短すぎるやろ…。
ミッション数も少ない。
ダウンロード時から、妙に容量が少ないとは思ってたけど。

武器の設計図を手に入れて、次のミッションの敵に有効なのを作ろうとしても、素材になるアラガミがまだ出てきてないから作れないとかザラだったし。
いや、楽しめはしてますよ、楽しめは。

無料アップデートで高難易度任務も来ると思う(思いたい)し、今後何が出るかねぇ…。

さて、今年の年末年始、連続投稿できるかな…。




え? クリスマス? 仕事がクッソ忙しくてすっかり忘れてたよ。
忘れてなくてもシングルヘルだけどね。
何日がクリスマスだったかすら忘れてたよ。
妹の誕生日だった筈だけど、なんか26日がクリスマスだと勘違いさえしていたよ。


第404話

魔禍月 陸日目

 

 

 忘れてた…。討鬼伝世界の伝統を忘れてた。

 ウタカタで何度叫んだ事か。いや、何だかんだで防いではいたか。富獄の兄貴を落とし穴に嵌めたり、色々やったもんなぁ…。

 

 何があったかって?

 

 

 

 明日奈が一人で異界に突撃してったんだよ! 一人で行くなよ一人で!

 

 この世界の連中は本当に、妙な所で突撃精神発揮しやがって!

 何かあったら相談しろって、ちゃんと言っといただろーが! いや仕方ないと言うか、今回は突撃とはちょっと違ったけど!

 

 ゲンコツ喰らって額を赤くしている明日奈が、正座して小さくなっている。ちなみにゲンコツしたのは、俺ではなく神夜だ。ゲンコツっつーか、斬冠刀の柄頭で思いっきりブン殴ってたが…。

 どこからともなく、女の子が笑う声が響いては消え、響いては消えている。…と言うと怪談みたいだが、単に見えにくいミタマが居るだけだ。それに笑い声も、クスクスではなく、中高生の子供が爆笑してるみたいな笑い方だし。

 

 

「まぁまぁ…そう怒らずに。何とか無事に済みましたし、自分の意思ではなく鬼の術にかけられていたのですし。夢の内容も殆ど覚えていなかったので、相談しろというのも難しいでしょう。寝不足だって2日間の事でしたし」

 

「あうぅ……お手数おかけしました…」

 

 

 …まぁ、確かに術中にあったんだし、それに気付かなかった俺達も俺達か。

 悪かった。昔、戦友が同じような状況で散々突っ走ってたもんで、思い出し怒りが…。

 

 

 

 

 さて、何があったのか順を追って書いて行こう。

 事の起こりは昨日の夜。異界探索から帰ってきて、大っぴらに戦えずに欲求不満気味だった神夜と手合わせ。

 眠くて仕方ない明日奈は、先に家に帰った。

 

 で、手合わせも終わって、晩飯の用意をしてたんだけど……突然神夜が駆け込んできたのだ。

 

 

「明日奈さんを見ていませんか!?」

 

 

 …は? 明日奈だったら、家で寝てる筈だろ?

 

 

「居ないから探してるんです! さっき家を覗いたらもぬけの殻で、しかも扉も開けっ放しで!」

 

 

 …異常事態と判断し、とりあえず明日奈の家に駆け付けた。

 鷹の目を通して見るまでもなく、おかしな事は幾つもある。神夜が言っていた通り、扉は開きっぱなし。部屋の真ん中にある布団は、少し前まで明日奈がそこで眠っていたんだろう。畳まれる事もなく、中に居た明日奈が抜け出したままの状態。

 異界探索の時に来ていた服は、律儀に畳まれて部屋の隅に置いてあった。明日洗濯するつもりだったんだろう。…寝巻は無い。靴も無い。着替えずにそのまま外に出て行ったのか。

 普段は入り口近くに置いてある筈の、愛用の細剣は無し……少なくとも素手でどこかに行った訳じゃないか。

 

 鷹の目で見える足跡を追えば、少しばかり乱れた足取りで、里の外に向かって行ったのが分かった。む……一度足を止めた? ……ここで誰かと話したのか…。

 

 

「む? おお、お主達、何をしている?」

 

「あ、師範…。あっ、明日奈さんを見ませんでしたか!?

 

「あやつなら、先程あちらへ歩いて行ったぞ。寝巻姿で何をやってるのかと思ったが…」

 

 

 何か言ってなかったか?

 

 

「いや、特に何も。…今思うと、表情が少々おかしかったような気はするな。寝惚け眼と言うか…夢遊病にでもかかったか?」

 

 

 おかしいと思えよ…。

 

 

「…儂も疲れていてな…。お主に任された、白浜を鍛える為の鍛錬…見ているだけで正気が削れるわい…」

 

 

 そういや、鍛えるの任せてたっけ。様子を見に行こうと思ってたけど、忘れてた…。

 いや今はいい、明日奈はあっちに行ったんだな? 他におかしかった事は?

 

 

「空耳かもしれんが……去り際に、木綿季がどうのと言っておったような…」

 

 

 勇気?

 

 

「ゆうき……ゆうき……きっと木綿季です。明日奈さんの親友で、オオマガトキよりも少し前に流行り病で亡くなった方です。物凄く刀の扱いが上手で、もし生きていれば、きっと私や明日奈さんよりも頭一つ強くなっていた事でしょう」

 

 

 そんな人が…。

 …で、その木綿季さんがどしたんじゃろ。

 

 

「さぁ…。昼に言っていた千日夢と、何か関係があるのでしょうか…」

 

 

 夢を見てるって事か? でも千日夢ならそのまま目覚めない筈…。

 いや、他に似たような力を持っている鬼が居るかもしれん。とにかく今は追うのが先決だ。

 

 すまん師範、ちょっと里を周って、様子のおかしい人が居ないか確認を頼めないか? 最悪、鬼が里にちょっかいを出している可能性がある。

 

 

「うむ、そういう事なら承った。明日奈を追うのだな? 増援は?」

 

 

 必要云々以前に、多分瘴気の濃い所に入って行く。瘴気無効化がなければ、何人来ても結果は同じだ。

 それより里の防衛を頼む。

 

 

 神夜、瘴気無効装備は着けてるな? このまま追うぞ!

 

 

 

 

 

 と言う訳で急いで明日奈を追いかける。

 予想通り、明日奈の足跡は異界に続いていた。しかも行き先は例の沼。

 …不自然な事に、明日奈は見事に鬼を避けて進んでいったようだ。超が付くほど作為的。

 

 まぁ、後になって考えると、それも当然だったなーと思う。

 明日奈に追いつく為、立ちはだかる鬼を強行突破したが…結果的には、避けて進んだ方が早かったと思う。まぁ退路の確保という意味では無駄ではなかったけどさ…。無駄になったのは結果論でしかないし。

 

 フラフラと、沼に向かって夢遊病患者そのものの足取りで進んでいた明日奈。既に膝まで泥に漬かっていた。どう見ても入水自殺寸前です本当にありがとうございました。

 ようやく追いついて声をかけたら、

 

 

「あれ? 二人とも、どうしてここに?」

 

 

 だ。思わず拳を握った俺は悪くない。少なくとも、迷わず峰打ちでド突いた神夜に比べれば。

 それで明日奈も正気に戻ったんだから、結果オーライではある。

 

 寝間着姿、ついでに言えば寝ぐせもついている姿を見られて恥ずかしそうな明日奈はともかくとして…沼には明らかに何かが居た。

 昼に来た時には何も感じなかったんだがな…。GE世界の文明暮らしで鈍ったか?

 

 

 まーいいや。とりあえず明日奈、下がって周囲の警戒しとけ。細剣を持ってるとは言え、鎧も無しに鬼と戦うのは危険すぎる。

 

 

「……いいえ、私もやります」

 

 

 …ん?

 

 

「色々思い出して、状況が理解できてきたわ…。よりにもよって木綿季の声を利用するなんて……絶対に許さないッ!」

 

 

 おおう、顔が阿修羅モードに入っておられる。木綿季とやらとどんな関係だったのか知らないが、よっぽど頭に来たらしい。

 いいから引っ込んでろと言いたいが、この分だと乱入してでも鬼を斬りに行きそうだな。好きにさせといた方がマシか。

 

 さて……沼の中を泳ぎ回る鬼は、折角の食事を邪魔されて掃討にお冠らしく、サメのように背びれを見せながら、激しく動き回っている。

 どうすっかな…。あの瘴気沼に入るのは得策じゃない。かなり騒ぎ立てたから、他の鬼達が追いかけてくるのも時間の問題。

 弓…で狙う事はできるが、沼の中に入るとやっぱり威力が落ちるよな。

 

 …仕方ない。二人とも、これの事は黙っておいてくれよ。

 

 

「これ?」

 

 

 こ↑れ↓。神機っつーんだけど、ちょっと物騒な道具なんであんまり人に見せたくない。

 簡単に言えば銃みたいなもんだ。ていうか実際銃形態。

 

 

「はぁ、銃なら昔見た事がありますが…これであの鬼を撃つんですか? でも沼に阻まれるんじゃ」

 

 

 こいつの弾は実弾じゃないから大丈夫。と言うかオラクルって何なのか、実は未だに理解できない。

 

 

「相変わらず、不思議な物を色々持ってますね…。いっそ死人を生き返らせる薬でも出してくれません?」

 

 

 死にかけなら無いでもないが、完全な死者は心当たりは無いな。

 ま、とにかく……行くぞ。

 

 ロックオン、狙い撃つぜ!

 

 

 

 と言う訳で、スナイプスナイプスナイプ。

 狙撃弾がバカスカ降り注ぐ。泳ぎ回って逃げようとしていた鬼だが、逃げ足が遅いわ。砂漠のド真ん中で、ドスガレオス相手に的当てした時の方が、よっぽど面倒臭かった。

 

 執拗に背ビレを撃ち抜かれ、怒った鬼が飛び出してくる。

 こりゃあ……手足の生えた、デカいナマズかな?

 

 

 

『痛い……痛いよ、明日奈…やめてよ…』

 

 

 

 …おい、何か聞こえたか?

 

 

「木綿季……木綿季はそんな事は言わないわ。あの子なら、鬼に生かされるくらいなら、鬼を道連れにして自決するもの。敵の利になるくらいなら、あの子は笑って自分の首を掻き斬るわ」

 

 

 成程、これが木綿季さんとやらの声か。

 年若くして亡くなったと聞いたが、なんか随分と覚悟ガン決まりした修羅勢みたいだな。

 

 

「ええ。先日、ここに来た時、沼の上に木綿季が居たような気がしました。流石に見間違いだと思ってましたけど、あの時から眠ると木綿季の声が聞こえるようになったんです。こっちにおいで、助けて、会いたいよ、って…」

 

「朝、起きたら忘れちゃってたんですね…」

 

「う…仕方ないじゃない、夢の内容なんて覚えてる方が珍しいわ。今日…昨晩? も、夢の中で木綿季に呼びかけられて、追いかけようと寝惚け眼で歩いて…気が付いたらここに」

 

 

 成程、鬼の術に誘き寄せられたって事か。

 鬼の中には、人を捕らえて化ける為に利用したり、術に使ったりする奴も居る。

 明日奈の記憶から読み取った声を使ってるのか、それともミタマでも捕らえて使ってるのかは知らないが…とりあえず、叩き斬るか。

 

 

「穴だらけにしてあげるわ!」

 

「明日奈さんが普段より怖いですが、木綿季さんは私にとっても友人でしたので…覚悟!」

 

 

 デカナマズ相手に、討伐戦が始まった。

 …何と言うか、心臓に悪い戦いだなぁ。主に明日奈が。防具も付けてないから、攻撃受けると一発お陀仏になりかねない。

 だと言うのに、怒りに燃えた明日奈は、テンションが上がった神夜のような勢いで敵に突っ込んでいく。神夜も負けじと突っ込んでいく。銃撃による牽制に徹して、デカナマズの行動を封じる俺。ついでに、近付いて乱入して来ようとする鬼達の脳天を撃ち抜くのも忘れない。

 

 …まぁ、偶にはこんな役回りもいいか。別に損なポジションって訳じゃないし、身内を利用された怒りは本人が晴らすのが一番だ。

 途中でデカナマズが巨大ウーパールーパーみたいになったのには驚いたけど、文字通り陸に上がった魚。明日奈と神夜によって、見事にナマス切りにされてしまった。

 

 …明日奈が激昂しまくって、ラージャンみたいに覚醒するんじゃないかと思ったよ。

 攻撃される度、デカナマズ兼巨大ウーパールーパーが木綿季の声をで語り掛けて、それを聞いた明日奈がまた逆上する。随分大事な友人だったらしい。

 

 怒りに任せての戦いはあまりよろしくないが、理性の枷を取っ払った明日奈は強かった。完全にバーサーカー状態。

 幸い、防具無し状態だから攻撃を避けるだけの知能は残っていたが、もしもちゃんとした装備を整えて戦っていたら、タマフリ・治癒に任せたゴリ押しで、ダメージに構わず最高効率で殺しにかかっていただろう。

 

 

「私の親友を利用してくれた礼よ…。木綿季の忘れ形見、あなた程度に使うのは勿体ないけど…屠ってあげる! まざーず・ろざりお!」

 

 

 …正直言って、あれには見惚れた。

 俺達との稽古や、練武戦でも見せた事のない、脅威の11連撃。技名の発音がちょっとアレだったけど、まぁ外国語とか浸透してないし、無理もないよね。

 

 神夜、戦狂の血が騒ぐのも分からんではないが、今は止めなさい。

 

 明日奈の奥義によって、巨大ウーパールーパーはその体を真っ二つにされてしまった。

 怒りがまだ治まらぬとばかりに、細剣を握ってその残骸を睨みつける明日奈。…しかし、一拍置いて深呼吸すると、頭が冷えたようだった。

 

 

「ふぅ……ざまぁみろ、とでも言っておくべきかしら」

 

 

 言う前に鬼祓いしろ、鬼祓い。祓円陣で普段やらないから忘れてるのかもしれんが、普通は鬼を倒した後に遺体を祓って素材入手だからな?

 

 

「…そうでした」

 

『明日奈……明日奈…こっちに来なよ…』

 

「! まだ動く!?」

 

 

 いや、違うっぽいぞ。この鬼は確かにお陀仏してる。

 …と言うか、今の声は…沼の中の小島の方からか。あそこに、声真似してる鬼がまだ居るのか?

 

 

『僕……鬼じゃな…よ…。なんだった……日奈の昔の恥ずかしい話を……』

 

「………鬼…よね…?」

 

『違うってば…』

 

 

 あらゆる意味で信じられない、でもひょっとしたら本当に…?という表情の明日奈。

 隣の神夜に目を向けるが判断がつかないと目線で返された。

 

 しかし、来いと言ったってどうやって沼を渡れと。瘴気凄いから突っ切れないぞ、この沼。

 

 

『明日奈が進も…としていた所に、…瀬が…るよ…。鬼が作っ……』

 

 

 明日奈が進もうとしていた道? そういや、追いついた時に膝まで浸かってたが…。

 

 

「あ、本当です。沼の中に道が…。この道で小島まで誘いこんで、退路を断ってから襲うつもりだったんでしょうか」

 

 

 …ついでにいえば、もしもこの声が本当に木綿季さんとやらの声なら、目の前で親友を殺して絶望させようとでも思ったのかもしれんな。

 どちらにせよ、この機を逃す事はできない。次に来た時に、この道が残っているとは限らない。

 

 

「…そうですね。あまり時間は無いですけど、木綿季の声を放っておいて帰るなんて、できません」

 

「一応聞いておきますけど、実は罠で、道を壊された場合はどうやって脱出します?」

 

 

 切り札があるからダイジョーブ。

 …アラガミ化した状態で大ジャンプ・鬼疾風・アクセラレートでも使えば、沼の上を走り切るくらいの事はできるだろ。

 

 さ、行ってみようか。

 

 

 

 

 

 他に鬼が襲撃してくる可能性も考えて、警戒しながら沼を渡る。

 何事もなく渡り切り…明日奈が、濡れた寝巻が気持ち悪いとか言ってたが、仕方ない…声に導かれて小島の中を進むと。

 

 

「……ありました。結界石の石像です」

 

「…木綿季……本当に、ここに居るの…?」

 

『居るよー…隣の異界みた…に、早い所浄……よ』

 

 

 先日の異界浄化の時に見たのと同じ、瘴気に満ちた結界石。その中には、確かにミタマの存在を感知できる。

 中のミタマ…木綿季(仮)もさっさと浄化してほしいようだが、俺はそれどころではなかった。

 

 

 ここの結界石の石像は、玄武の石像だった筈なのに。

 

 

 

 

 

 

 

 シオ。

 

 

 

 GE世界の、シオの姿をしていた。

 それもただのシオではない………いやシオにただも有料もないんだけど、とにかく普通のシオではない。

 

 ええと、何度目のループ…いや何回前のループだったか………とにかくアレだ、俺が個人農場(?)を経営してた時にシオだ。

 …有体に言っちゃうと、俺を逆レされて肉体関係を持っちゃったシオだ。

 服装も他のループの時に来ていた物とは違うし、肉体的にも………まぁその、俺とヤッてる内に、色々女性らしくなったからね。

 

 GE世界は何か知らんけどGE2の時間になっちゃってるが、あの時に会ったシオはもうちょっと成長してたしな…。

 

 

 どうしてあの時のシオがこの像に?

 色々と、各世界が交じり合い始めているような気配は何度も感じたが、これはまた毛色が違う。明らかに俺個人との繋がりだ。

 他のループのシオではなく、俺と関係を持ったシオだもんなぁ…。

 

 ひょっとして、最初の結界石が胎児になっていたのも同じ理屈か?

 理由や切っ掛けはともかくとして、あの胎児が俺の関係者だとしたら………心当たりは山ほど……ありそうだけど、逆に無かったわ。だっていっつもオカルト版真言立川流で100%避妊してたもの。酒とかで意識飛んでる時も。

 勿論、孕ませる目的で抱いた事もあるが、それは少数。MH世界で、妊娠を希望したシキや、猟団ストライカーの数名、セラブレス…そしてフラウ。

 

 もしもあの胎児が俺の関係者だとすれば、それは恐らくフラウの胎の中の子供。…いや、ひょっとしたらセラブレスの子か?

 デスワープ時で妊娠確定してるのが、あの二人だけだったし…。

 

 ………思い返すだけでも腸が煮えくり返るが、あの時、フラウの胎に宿った赤子は、クサレイヅチに奪われた。俺と関係を持ったシオも、同様に食われた。千歳だってそうだ。

 

 

 …………ビークール、ビークール…。

 

 

 仮にクサレイヅチに奪われた彼女達(1名性別不明だが)が石像の姿となっているなら、やはりフラウの子供なのか。

 …クサレイヅチが、近くにいる…のはいつもの事として、でもやっぱりどうして?

 

 

 

「…あの、何を考え込んでいるのかよく分かりませんが、まずは異界の浄化を…」

 

「木綿季も早く出せって騒いでますから」

 

 

 へ? ……あ、あぁ、そうだな。

 

 諸々の疑問は(いつものように)脇に退け、鬼の手を具現化させる。

 中のミタマが飛び出してくる道を作るよう想像して…浄化!

 

 

『やっほーい!』

 

 

 …長らく捕らえられていたとは思えない程陽気で元気な声で、ミタマが飛び出してきた。

 おお、これがミタマか…改めてみると面妖な…。

 と言うか、随分はっきりと見えるミタマだな。…と思ってたら見え辛くなった。不安定だな。

 

 

『やっ、明日奈! 神夜も元気だった!? あと解放してくれてありがとね!』

 

「木綿季…本当にあの木綿季なの…?」

 

『目の前に居るのに、まだ信じられない? やっぱり明日奈の恥ずかしい話、する?』

 

 

 是非。

 

 

「やめて。大体、どうして木綿季のミタマがここに…」

 

『何でって言われても…。流行り病で死んで、気が付いたら鬼に捕まってて、ここに押し込められたんだよ。時々、この石からひっぺがされて魚の鬼に利用されたりもしたっけ。いやー、利用されるのは頭に来るけど、もう死んでるから自殺もできないし、動く事もできなかったから退屈で退屈で…。あ、里はどうなってるの?』

 

「相変わらず極まりないですこの人…」

 

 

 昔っからマイペースだったのね…。

 つーか、さっきの巨大ウーパールーパーは、心を読むとかじゃなくて、死者のミタマを利用するタイプの鬼だったようだ。

 多分、明日奈以外にも被害者が居るんだろう。

 適当なミタマを見つけて捕まえたら、その知人を声真似で釣って捕食し、利用できなくなる程擦り切れたら、次のミタマを捕らえる。…捕らえられたミタマが誰かにもよるけど、泥高丸とかヤバそうだったな。兄や親父さんの声を使われると、あっさり引っ掛かりそうだ。

 

 

 まぁいいや。細かい事は後だ、後。未だにここは敵地、異界のド真ん中なのだ。まずは異界を浄化しないと。

 

 

『異界を浄化…本当にできるんだね。どうやって?』

 

「信じられない事に、出来るのよ…。……あ、でも…」

 

「…先の異界の時は、ミタマの本願寺顕如様が、結界石にかけられた術を逆転させてくださったのですよね。…木綿季さん、かけられてる術って分かります?」

 

『ボク、難しい事わかんない。モノノフの修行も、本格的に始まる前に死んじゃったし。…でも、なんとなくこれかなーってのはあるよ』

 

 

 とりあえずやってみようか。

 最悪でも、今より悪くはならないだろう。

 

 …今度、本願寺顕如=サンに会いに行って、術の逆転のやり方を教えてもらっておかんとな…。

 

 

「あ、そう言えば…本願寺顕如様は結界石に留まって、結界維持と異界浄化を助けてくれましたけど、木綿季は…」

 

「結界石が増えると、雪華様の負担が…」

 

 

 それはそうだが、この子にまだここに留まれと言うのもどうかと。

 

 

『異界が本当に浄化されるんだったら、別にいいよ。里の様子は見に行きたいから、時々自由時間とかは欲しいけどね。何より、ボクがここに留まれば、今まで利用してくれた鬼達への意趣返しになりそうだし」

 

 

 …自由よりも敵を阻む事を選ぶか。やっぱ修羅系だわ。

 ま、それもこれも、まずは浄化してからだ。んじゃ、行くぞー。

 

 

 

 

 

 

 

 成功……かな?

 

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