※この作品はR-18です。

狩りゲー世界転生輪   作:時守 暦

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第406話

魔禍月 仇日目

 

 

 昨日は散々だったなぁ…。やらかした事を思えば無理もないと分かってるけども。明け方まで説教されるとは…。

 それでも実質的な罰が無かったのは、許されたからではなく、俺を戦線から外す事ができないからにすぎない。結界石の術を利用して異界浄化させるには、今のところ鬼の手が必要不可欠だからだ。…本願寺顕如=サンも、『そうでなければあなた以外にやらせます』と言い切った。当たり前だけど信用が無い。ついでに言うと、明日奈に覚えさせるのも難しくなってしまった。

 

 ついでに言うと、他の里や霊山に伝える事が出来たとして、あっちで再現できるのか…。

 本願寺顕如=サンの研究・講義によると、異界の浄化はこの土地の特殊な条件を満たしていたからこそ出来たらしい。

 

 その条件とは…宝玉だ。里に来たばかりの時、寒雷の旦那に教えてもらった宝玉。…まぁ、実際にはその辺に転がってる石ころでしかないんだが。

 里の生活を支える要であり、様々な事に使える万能エネルギー源。今まで日記には書いてなかったけど、俺も日常的に色々使っていた。専ら、酒を温めるとか、寝床を温める湯たんぽに。

 これが術に反応・共鳴し、その効果範囲と強さを跳ね上げていたらしい。一つ一つの効果は微細でも異界中に転がっていた宝玉が連鎖的に反応した結果、ダイソンより強烈な吸引効果を生み出して結界石に瘴気が収束。そしてそれを、鬼の手と本願寺顕如=サンの力で纏めて握り潰した訳だ。

 

 そして、一番重要なのは結界石の質…と言うか、中身? だ。

 本願寺顕如=サンや木綿季が宿っている結界石は、一見すると普通の結界石だ。……普通は結界石を彫刻にはしないと思うし、俺の知り合いや(多分)子供の形に変形もしないが、それは置いといて。

 

 結界石の中身は、なんと宝玉と同じ素材になっているらしい。結界石に宿っている本願寺顕如=サンが、直接中身を見て確認したので間違いない。

 本来の結界石と宝玉が混在した石像。これを利用した事により、凄まじい浄化効果が産まれた…と言うのが、本願寺顕如=サンの見解である。

 

 

 逆を言えば、結界石と宝玉を混在させた触媒、そして広範囲にばらまかれた宝玉が無ければ出来ない大技。

 そもそも宝玉が出来上がる条件が、今一つ分からない。霊山とかでも見た事ないし、資料にも無かった。この里特有の物だと思うんだが…。

 珍しい物ではあるが、貴重な物ではない。この里近辺であれば、普通にその辺に転がってるんだもの。自然に出来上がった物である事は間違いない。多分、道端の石ころが何らかの条件を満たした時に変化するんだろうけども…。

 

 

 

 

 …まぁ、そういう細かい考察は研究職に任せよう。異界の浄化が先に実現されたと聞いたら、マホロバの里の博士がすっ飛んでくるかもしれん。そっちで考えてもらおうか。

 幸い、次の異界にも宝玉は転がっている。里近辺を浄化するだけなら、現状では大した問題はない。

 …しかし、里近辺でしか宝玉が取れないとすると、離れれば離れる程異界の浄化は難しくなるって事で…。うーむ、通行路を確保できるくらいに浄化ができればいいんだけど。

 

 

 

 ま、そこらへんは考えても仕方ないか。

 例の黒い穴に関しては、暫く監視と言う事になった。幸い、向こうから漏れ出てくる瘴気の量や鬼は極めて少ない。早めの対処が必要であるが、緊急ではない。

 

 

 …と言う訳で、今日も探索なんだが………明日奈、なんでまた眠そうなんだ? まさかまた、妙な夢でも見たのか? おにの術の効果が、まだ続いているのか?

 

 

「あ、いえそういう訳では…文字通り、ちょっと寝てないだけですんで…」

 

「ええ、徹夜で書物を読み耽っていただけですので、心配ありません。家主の私にも構わずに」

 

 

 ? よく分からんが、昨日は木綿季に会いに行った後、神夜の家で本を読んでたって事か?

 徹夜する程熱中するとは、そんなに面白い本だったのか。

 

 

「え、えぇまぁその…。未知の世界を垣間見たと言いますか…。ちょっとどころじゃなく我を忘れたと言いますか…」

 

「申し訳ない事極まりないのですが、興味があっても見せる事はできかねます。何分、門外不出の家伝ですので…。明日奈さんにこれでもかと言う程頼み込まれて、序盤を一晩だけ見せましたけど、不本意な事には変わりありません」

 

「わ、分かってるって…。無理を聞いてもらって感謝してるわ。当分ご飯奢るし、他にも色々するから…」

 

 

 それで神夜はちょっと立腹してるのか。しかし、門外不出のねぇ…。興味はあるが、無理にとは言えないな。

 …でも、苛立たしそうだったのは、木綿季と明日奈の3人で話した後もだったな…不機嫌になる事が続いているのか? 何か気晴らしでもしてやった方がいいかもしれない。

 それにしても、神夜のこういう怒り方は珍しいかもしれない。怒るにしても、静かに笑顔で怒るタイプだと思ってたが。

 

 

 さて、探索の時間だ。気持ちを切り替えようか。

 これから、俺達は三つ目の異界に突入する。牡丹の見解によると、ここからは強力な鬼が一気に増えて、前回のような縄張り争いでの疲弊もあまり期待できない。

 むしろ、奴らは手薬煉ひいて俺達を待ち受けていると思った方がいい。

 

 

「と言う事は…これまで以上に慎重に進むと?」

 

 

 いや、むしろ積極的に狩りに行く。敵に見つからない事よりも、戦力を削る事を優先するつもりだ。

 

 

「私としては、歓喜極まりない事ですが…よいのですか? 今までとは方針が真逆になっているように思えますが」

 

 

 いつかはこうなると分かっていたし、構いはせん。そもそも、潜入だの同士討ちだのの搦め手は、正攻法があるからこそ有効なんだ。あっちも警戒を強める頃だ。方針転換は、鬼の意表を突く為でもある。

 …というのが、牡丹の言葉。俺としても否は無い。彼女の戦術眼は信頼できる。

 

 不謹慎な事を言うが、強力な鬼が出てくるなら個人的には歓迎だしな。こう言っちゃなんだが、ここのところ全力を出せる機会が無くて、段々鈍っていく感じがしてなぁ…。

 

 

「…私達は、多少余裕があっても死力を尽くして戦ってたつもりなんですが……随分余裕ですね」

 

 

 悪いけどな。あんまり見せたくない奥の手も幾つかあるし、本気で戦ってはいるけど、死力を尽くしているとは言い難い。侮辱に聞こえるかもしれんけど、単純に地力に差があり過ぎる。

 

 

「いえ、実力の差は身に染みてますから。…まだ上があるとは思ってました」

 

「いつか追いついて魅せますので、その時には思う存分斬り合いましょう♪」

 

 

 …期待はしておく。さ、行こうか。

 今日は待ち構えているであろう鬼達を、思いっきり殴りつけにいくぞ。

 

 首よこせ、ってなぁ!

 

 

 

 

 

 と言う訳で、積極的に鬼達を誘き寄せるようにして暴れてきました。3つ目の異界ともなると、牡丹の言うとおりに鬼の強さも警戒心も段違いだったようだ。

 異界に入るなり、『見つけたぞコノヤロウ!』とでも言うように寄ってくる事寄ってくる事。

 数が多いばかりの雑魚ではない。そこそこの強さを持った鬼達が、どんどん襲い掛かって来た。

 

 明日奈も神夜も、そいつらに決して負けてはいなかった。この一か月程で急激に練度を上げ、実力以上の鬼と何度も戦って乗り切って来たのは伊達ではない。

 だが、残念な事に…二人は劣勢と言わざるを得ない。非常に不利な戦いを強いられていた。

 

 理由は簡単、敵がどんどん押し寄せてくるから、シノノメの里特有の戦術・祓円陣を使えないのだ。

 祓円陣は、本来4人がかりで敵を囲み、結界を仕込んで鬼祓いの手間を省き、超短期戦でカタをつける戦い方。その為、2体同時に相手にするような場面では、極端にその効果が落ちる。3体相手なら? 4体相手なら言わずもがな。

 4体同時に相手とか普通に悪夢のような状況だが、それ以上に二人は不慣れな戦い方を強いられた。

 分断された事により、効果の落ちた祓円陣の効果を補うべく、破壊した部位に鬼祓いをかけ、長時間の連続戦闘に耐え、逆に複数の鬼に囲まれる。

 

 …他の里ならなぁ。一人前のモノノフになれるかどうかの登龍門だよな。複数の大型鬼にどう対峙するか、ってのは。

 大抵の場合、移動して敵を引き剥がす、同じ区域に居るにしても近寄らせないようにしてヘイト管理して戦う、そもそも相手にしない等、何通りかの対策はできていると思う。大型鬼複数じゃなくても、大型+小型ってパターンも多いしね。

 

 しかし、二人はそう言った状況をまるで想定していなかったらしい。経験不足がモロに露呈したなぁ…。

 必死で戦って敵を斬り払ってはいるものの、雑魚に邪魔され、大型鬼の波状攻撃に悩まされ…。うーん、懐かしい。俺もあんな頃があったっけ…。

 今となっては当然のように対処できるようになってしまったが。と言うか、対処できるようになってなければ、フロンティアでは即死確定である。クック先生8連発ならゲームであったけどさぁ、倍の16連発って何よ…。中には強化個体とかも混じってたしさ…結果的にソロでクリアしちまったけど。

 

 

 

 え、見物してたのかって? 助けながら見物してたよ。これ以上はアカンってくらいの鬼は片っ端から狙撃して叩き落し、接近を阻止した。接近させる頃には、消耗した二人でも何とか倒せるくらいに削ってた。

 ここからこういう戦いが多くなる。ここに限らず、外の世界との交流が復活すれば、祓円陣だけで戦っていける訳じゃない。

 あんまり好きな言い方じゃないが、これも試練という奴だ。

 

 言い方、表現はともかくとして、高難易度任務ってのはこういう状況の繰り返しで出来てるからな。早い内に慣れておいた方がいい。尚、人生も同じような状況の繰り返しである。

 …………本当にね。

 

 

 

 

 とりあえず、今日は戦うだけ戦って、二人を抱えて戻って来た。

 ………神夜の表情が、なんかエロいくらいに上気していたのが気になった。

 

 

 

 

 

魔禍月 十日目

 

 

 神夜と明日奈から相談を受けた。昨日の戦いで、思う事があったらしい。と言うより、そう感じて当たり前になるくらいまで放置してた結果だけども。

 今まで自分達が使ってきた戦闘スタイルが通じなくなったら、自分達がどれだけ脆くなるのか身に染みて理解したようだ。

 まー無理もないよな。俺だって、今でこそ3つの世界の大抵の相手には自分のスタイルでやれるけど、一旦崩れればランポスにだって手古摺るだろう。何だかんだ言って生物としてのスペックは、ハンターよりもモンスターの方が高いのだ。…………見てて疑問に思えてくる事も多いが。

 

 何にせよ、今までとは違う状況でも戦えるようになりたいのだそうだ。

 

 

 …と、言われてもなぁ…。正直、二人の戦い方と言うか技術自体は文句の付けようがないレベルなのだ。そりゃ研鑽なんてものは上を見れば果てが無いし、G級ハンターには遠いのは否定できんが、欠点らしい欠点は無い。

 後は自分達でどれだけ研ぎ澄ませていくか、そういうレベルなのだ。その研ぎ澄ます機会が少なかったんだな。つい一月前まで前線からは引き離されていた上に、戦えるようになってからも速攻で敵を潰してきたから、長時間の戦闘は不慣れなのだ。

 

 つー訳で、後は延々戦って自分で磨き上げろとしか言いようがない。

 

 

「そう言わずに、何かありません? 戦いに携わる以上、自分達の欠点を放置しておく事は文字通り命取りですので」

 

「普段でしたら自分達で稽古を…と言う所ですが、勝手が違い過ぎること極まりないです」

 

 

 むぅ…。

 確かに、自覚している欠点を放置するのは愚者のやる事か。

 

 ……うん、単純に考えようか。今の二人に足りてないのは、単純に場数だ。それも、今までとは違う環境での戦い。

 なら戦って来ればいいだけの話。鬼達が一斉に寄ってくる異界の中じゃなくて、鬼の数もまばらになった浄化された一帯で、一人一人で戦ってみればいい。

 

 

「相手が少し弱くなりますが……仕方ないですね。最初から一番難しいものに挑むのは、得策ではありませんし」

 

「…神夜も、そういう判断ちゃんとできるのに、いざ戦いとなったらなぁ…」

 

 

 うん、物足りないとか言い出しそう。

 後は、もっと単純に人手を増やすかだけど…あの瘴気に通じる程の装備が無いしなぁ。

 

 

「…この3人が、一番いい部隊だと思いますよ」

 

 

 思惑はともかく、そうかもしれん。でもいつまでもこの3人で固まってるとは限らんよ。…俺は、まだウタカタに行く事を諦めてないしな。

 

 

「それは以前にも聞きましたけど…ウタカタにどうしても行かなきゃいけない理由があるんですか? いいじゃないですか、この里に居ても。本当に霊山とか他の里との交流を復活させたら、英雄扱いですよ。今だって似たような扱いですけど」

 

 

 似たような扱いかぁ…? いやまぁ英雄なんてチヤホヤされるか、敬意を持たれながらも遠巻きにされるかのどっちかだろうけど。

 それはともかく、言わなかったっけ? いやあれは寒雷の旦那にだったかな? それともそもそも言わなかったっけ…。まぁいいや。

 ウタカタで近い内に、でかい戦がありそうなんだ。…ああ、鬼との、だぞ。

 そんで、俺が追いかけてる鬼がその近くに現れそうなんだ。今のところ、あの鬼に落とし前つける事が最終目的なんでね。

 

 

「鬼を追う…ですか。何か因縁があるんですね。…目が座ってて怖いです…」

 

 

 座る程度なら軽いもんだ。実物を前にしたら理性が焼却されて、文字通り鬼を狩る鬼(アラガミだけど)と化して大暴れするぞ。

 まぁ、下手に理性を失って、千歳ごとぶった切っちゃったら不味いから、必死で耐えると思うけど。

 

 そういや、寒雷の旦那から、お前ら二人を連れて行ったらどうだって言われてたなぁ。

 

 

「「……ふぇっ!?」」

 

 

 いや大した意味はないと思うんだよ。俺が抜けると、また二人だけの隊に戻って、戦力的に中途半端になって浮くだろうしさ。

 それだったら、他の里との交流員として一緒に行った方がいいんじゃないか? って程度の話で。

 

 

「理由はともかく、持て余されていた事については自覚がありますから、繕わなくてもいいですよ。寒雷さんにも悪気はない…むしろ好意からの提案でしょうし」

 

「里から離れる、ですかぁ…。考えた事もありませんでしたね。他の里とは幼い頃から連絡がつかず、異界に閉ざされる前もこの里こそが世界の全てでした」

 

 

 子供にとっては、自分が遊べる区域=世界だろうね。

 で、どうする? 別に今すぐ決めろって事じゃないし、決めたところで異界を抜けなきゃ絵に描いた餅のままだが……一緒に来るか?

 

 

「それは…」

 

「………」

 

 

 決められないと言うより、実感が沸かないって顔だな。

 幼い頃からシノノメの里しか知らず、インターネットみたいな情報網も無いんじゃ、外の世界と言われても想像もつかないだろう。

 …実際は、何処も鬼との戦いで追い詰められており、シノノメの里と大差ないのだが。例外は霊山くらいだが、あそこもなぁ…。

 

 ふむ……珍しい物が沢山あるし、敵も味方も強い奴が多いぞ。

 

 

「む…」

 

「行きます!」

 

「ちょっ、神夜!? もうちょっと考えなさい!」

 

 

 おおう、目が金ならぬ闘になっとる。

 しかし見事に釣れたのぅ。流石にこの一回で決めさせるつもりはないが、神夜は前向き、明日奈は興味はあるけど消極的か。

 でも神夜が里を離れるとなると、残された明日奈はどうなるのか…。別の隊に組み込まれる? 二人だと多すぎるけど、一人なら逆に扱いやすいかもしれない。

 …だといいけどな。家名の関係で、距離を測り損ねてる奴らが多いから…一人きりになるという展開は避けたいなぁ…。

 

 

 とりあえず、冷静になってから一度考えてみてくれ。異界はまだまだ広いんだし、本当に他の場所に行けるとしても、暫く先だろうからな。

 今日のところはその辺の鬼を相手に、一対一での戦闘訓練だな。

 

 

 

 

 

 

 

 戦闘訓練自体は問題なし。最初は戸惑っていた一対一、祓円陣無しでの戦いも、2度3度と繰り返すうちにやり方が分かって来たのか、カゼキリやツチカヅキを余裕で沈めるようになってきた。

 とは言え、この辺に居る鬼は住処である異界を剥ぎ取られたために随分弱体化しているし、そのままのやり方が次の異界の鬼に通じるとは限らないが…経験は糧になる。少なくとも、以前よりは上手くやれるだろう。

 

 

 帰り際、解散する時に明日奈が「絶対引き留めます」って呟いたんだけど………ひょっとしなくても俺の事だよな。

 えらい硬く決心しているようだが……。

 




討鬼伝世界登場人物表兼コメント

Q.今、一番欲しい物は?

討鬼伝モノノフからの登場人物
・牡丹……里長をやっているミタマの女の子。
    A…ご飯が食べられる体。

・寒雷…元モノノフ、現在は万事屋の店主。体格のいい、豪快なオッサン。
    A…里を養えるくらいの資源

・雪華…シノノメの里に所属する神垣の巫女。
    A…他の神垣の巫女との交流。

・練…勝気で姉御肌、褐色美女の鍛冶師。
    A…鍛冶の達人からの指導。

・風華…祭祀堂の巫女。
    A…いつでも雪華姉さまの笑顔がほしいと願っています。

他作品からの登場人物
・明日奈…ソードアートオンラインより。
    A…意中の人の心を確実に射止める方法。

・神夜…無限のフロンティアより。
    A…思いっきり戦える機会。

・白浜君…史上最強の弟子より。
    A…皆を守れる強さです。

・泥高丸…ジャングルの王者ターちゃんより。
    A…家族の墓を作り直したいから、立派な墓石が欲しいかな。
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