今後もよろしくお願いいたします。
具体的には来年の半ばくらいまで。
流石にそれだけあれば完結すると思いたい。
1月4日まで連続投稿する予定ですが、その間は前書き・感想返し・後書きのキャラへの質問は書けそうにありません。
新年早々職場で厄介事+お説教確定しているので、気力が…。
リアル大事にとは言いますが、むしろ大事にしたくない…逃避していたい…。
っと、新年早々暗い話題になってしまいました。
お詫びとして……次回は濡れ場です。
魔禍月 十壱日目
白浜君が順調に悲鳴を上げ続けるここ数日。一緒にやり始めた師範も脱落せず、根性を見せ付ける形になっている。
尤も、モノノフ達にしてみれば白浜君に根性があるのは周知の事実だったので、単純に公開処刑にしか見えてないいっぽいが。
時々、幾ら何でもやり過ぎだと俺に突っかかってくる奴も居る。うん、全く持ってその通り。しかし本人が望んだ事だし、少なくとも俺は同じ事をやってヒィヒィ言いながら乗り越えてきた。同じように乗り越えた奴も何人も居る。やってやれない事はない。死ぬ気でやってみろ。死なないから。
「いやあれは死ぬだろ」
………大丈夫だって。辛うじて。指先一本で崖にぶら下がってる程度には。
さて、それは置いといて。異界の探索は、戦闘多めになったが順調に進んでいる。
前2回のように、敵に気付かれずに一気に奥まで進む事はできない。なので、襲い来る敵を倒してジリジリと前に進んでいるのだが……ここの異界、なんだか知らないが敵のリポップ…というか復活が遅い。
他の異界だと、一度鬼を退治しても翌日に来たらもう他の鬼が居座っている、なんて事がよくあった。ていうかそれがデフォルトだった。だから同じ場所の同じ鬼を相手にした任務を、一日に何度も受けられるんだが。
しかし、ここの連中は違うらしい。一度倒してしまえば、少なくとも2日間は復活しないようだ。
最初に調査したのが2日前で、その時に倒した鬼達の縄張りに、まだ他の鬼が居座っていない。
…鬼の数が少ない…のかな? 縄張りに充分な広さがあるなら、鬼達は積極的に縄張りを広げようとはしない。一匹一匹が思い思いの広さの縄張りを主張しても、それが被らないって事だ。
必然的に、近くの縄張りが失われても、そこを手に入れようと躍起になる必要は無くなる。
その分、強力な鬼達が揃っているようではあるが…。
いや、逆かな? 鬼達が復活しにくい、或いは数を増やし辛い環境において、それでも尚生き延びた強靭な個体のみが異界に残っているんだろう。
まぁ、何にせよ、一度倒せば暫く安全を確保できると言うのは大きい。その暫くが、どれくらい安定した期間なのかは別として。
異界を歩いていると集団・連続・乱入で襲ってくる鬼達も、二人が対処に慣れてきたおかげで手早く片付けられるようになった。
…気になるのは、牡丹が危惧していた指揮官級の鬼が姿を見せない事。今でも姿を消して俺達を見ているのか? …それにしては、明確な視線は感じないが…。
指揮官級がこの異界に居る、と言うのは俺も賛同するところだ。最初に大挙して襲われたのもあるし、ここの鬼達の縄張り分布からも分かる。先程は『一匹一匹が充分な広さの縄張りを持っているから、縄張り争いが発生しない』と考えたが、それは理由の一部。「ここに住め」或いは「ここを守れ」と命じられた結果の配置だろう。鬼達が好き勝手に陣取ったにしては、配置が明らかに人為的すぎる。…人為つーか鬼為だけど。
しかし、鬼の指揮官って……何が居たっけ?
まず真っ先に思い浮かぶのはゴウエンマ。指揮官と言う訳じゃないが、小型鬼を呼び出すくらいなら、大抵の鬼は出来る。ミフチなんかは、呼ぶんじゃなくて産むんだけど。
前ループの時に、横浜でやりあった白い巨鬼………後で知ったけど、シンラゴウ、だったか。あれも鬼を率いて暴れていたけど、どっちかと言うとあれは指揮官じゃなくて隊長格…全体の統括ではなく、現場のチームを纏めるレベルに見えた。あと、ぶっちゃけ指揮官出来る程頭はよくないと思うし。
他に何が居たっけな…状況や土地で変わりもするだろうが、鬼達はそれなり以上の力を持ってないと、指揮官だと認めないだろうし…。
…一回、寒雷の旦那に聞いてみるか。過去の戦いで指揮官っぽい鬼が居たか確認しよう。
それはそれとして、異界の探索と言うか戦いを終えた後、泥高丸に手合わせを願われた。
「疲れているところにすまんな」と、軽くだが頭を下げる礼儀正しさ。初めて会った時の目上目線はどこに行った。いや別にいいんだけど。
そして、大して疲れてないから、手合わせするのも別にいいんだけど……あの、そっちの女性は?
「私か? 私は泥高丸の妻、麗亜だ。旦那が世話になっている。神夜、明日奈、元気そうだな」
はー…へ? お、お前結婚してたの!?
「あ? あぁ、そりゃしてるが。お前みたいに各地を転戦している訳でもないし、年齢的に考えれば当然だろう。これがまた、気の強い嫁でなぁ」
「何か文句でも?」
「いや別に」
「ああ、そうそう練武戦で泥高丸の鼻を折ってくれた事には感謝している。私が何度言っても聞かなくてな」
「逆らえた試しもないけどな…」
「何か文句でも?」
「いや別に」
お、おう…そりゃまぁ、泥高丸はモノノフの適齢期を既に過ぎてるけどさ…。
尻に敷かれているよーだ。まぁ、泥高丸には丁度いい嫁さんなんじゃないかな。
で、手合わせだっけ。どうした、鬼纏の新しい使い方でも開発したか。
「それもあるが、基本から練り直している最中だ。幾つか試してみたい事もあるんで、ちょいと付き合ってもらいたい。…なんなら、そっちの二人もどうだ?」
「私もよいのでしたら、是非とも」
「私は……うーん、麗亜さん、ちょっと別件で相談に乗ってくれます?」
「ああ、構わない。して、何用だ?」
「ここではちょっと…」
「…いいだろう。泥高丸、すまんが先に戻る。程々で切り上げろよ」
そう言って、明日奈と麗亜さんはどこかへ行ってしまった。…うーむ、女傑だな。
「モノノフでないのが勿体ないくらいの剣の腕もあるぞ。さて……俺達も道場に行こうか」
魔禍月 十弐日目
なんか、里の様子がおかしい。いや別に問題のあるおかしさじゃない。殺気立っている訳じゃないし、日常業務にも差しさわりは無い。任務も順調だし、資材も潤ってきてる。
別に何かの知らせがあった訳でもないのに、なんかこう……里人達が浮足立っている。
なんだろな……こう、俺も覚えがある浮足の立ち方と言うか…見ていると爆破したくなるような、まだるっこしいさっさと行けと怒鳴りつけたくなると言うか、お前が言うなという声が聞こえると言うか。
ついでに言うと、何やら個人に分配される資源…宝玉を初めとした食料その他諸々、特に燃料系統の配給量が、最近妙に多い。
…異界の浄化で、収穫できる量が増えたのか? いやでも流石に数日もせずに収穫源を確保できる筈がないし。
様子がおかしいと言えば、明日奈もそうだ。前から何だか距離が近かったが、最近はそれに輪をかけて近い。
と言うか、明かにモーションをかけられている。異界探索に行く時、手作り弁当持ってきてくれるし、隣を歩きたがるし、触れ合いも多い。昨日なんて、俺の家で晩飯作ってくれた。流石に神夜も一緒だったけど。
気がある、脈がある、言い方は色々あるが…。
正直、猟犬が狙いを定めて走り出したという表現が似合う…いや本当に失礼だとは思うけど、普通にそれが似合うんだ。
普段はともかく、時々妙に鋭い眼光が見えるし。
俺としては、別段問題は何もないのだが…。肉食系女子の相手も慣れてるし。
でも俺は遠からず、シノノメの里を去る(予定の)人間だ。先日の一緒に来ないかという提案をした時の反応を見ると、明日奈はこの里から離れる事に抵抗があるようだし、置いていくの前提で手を出すのも憚られる。
明日奈が腹括って、一緒に来てくれるならなぁ…。
対して、神夜も最近、ちょっと距離感がおかしい。
グイグイ迫ってくる明日奈とは反対に、遠慮気味と言うか、一歩引いて俺と明日奈が並んでいる所を、物言いたげに見ている事が多い。
妙に物怖じしてるようだが…明日奈のモーションを邪魔しないようにしてるんだろうか? 或いは疎外感でも感じているのか。
気づいた時には、遠慮せず来いと声を掛けてはいるんだが…。
話は変わるが、今日の異界探索時に雪が降った。
いや年中雪に埋もれている異界もあるから珍しくはないんだけど、異界の中の天気が変わるってのは珍しい。土地にもよるが曇りなら年中曇り、吹雪なら吹雪、晴れなら晴れと決まってるからね。
で、異界の外に出てみたら、里にも雪が降っていた。……今って冬だったっけ? デスワープと異界のおかげで、季節感が狂いまくっててよく分からん。
一緒に居た明日奈と神夜が妙に深刻そうだったが、理由を聞いてそれも理解した。
ただでさえ寒いシノノメの里。毎年雪は降っているのだが、数年前に非常に強い吹雪に襲われた事があった。その時も、珍しく異界の中と外の天気が雪になっていた。
雪は積もりに積もり、積雪で家が壊れかけ、吹雪でロクに動けず視界も効かないないところに鬼が襲撃してきて、戦死者凍死者まで出た。
その時は、研究中だった鬼纏を完成させて超ハイテンションになった泥高丸が、まるでニチアサヒーローのように登場して大活躍し、何とか凌いだそうだが……成程、深刻になる訳だ。
ライフラインが滞り、外敵に対する戦力も低下、下手をすると雨風を防ぐ住居すら破損する。しかもその原因は天候…抗いようがない。
…ふぅむ…天候を見る限り、今の雪は一過性、短時間のものだと思うが…楽観は禁物か。
「ですね。今のところは、以前にあった凶事と同じ前兆があった、というだけですし。警戒するには充分な理由ですけど」
「よりにもよって、と言うべきか、それともこの日だからこそと言うべきか…」
? 神夜、何の話だ?
「いえ、こちらの事です。まぁ…近い内に分かると思いますので。とりあえず、明日は資源集めに徹しましょう。酷い吹雪が来るとなれば、暖を取る為の燃料はいくらあっても足りません。戦いたいのは山々ですが、寒いのは嫌です」
…神夜がここまで言うとは、本気で寒いんだな。凍死者まで出たって話だもんなぁ…。
そういや、結界石の警護はどうするんだろうか。結界石に宿るミタマ達…本願寺顕如=サンと木綿季は、結界を張る事こそできるが、鬼との直接戦闘力は無い。
もしも吹雪で警護が出せないなんて事になったら、侵入してきた鬼に襲われ食われ、結界石も汚されて元の木阿弥…なんて事になるかもしれない。
…これは相談が必要だな。
魔禍月 十参日目
今日の天気は快晴。これから吹雪が来るかもしれない、とはとても信じられないくらいだ。実際、来ないかもしれないけど。
里の人達は…うん、備えをしてはいるようだ。…浮足立ってるのは相変わらずだけど。
吹雪になったら結界石の警護をどうするか…と言う話だが、寒雷の旦那も頭を抱えていた。すっかり忘れていたんですね、無理もない。
しかし、これも取り敢えずは解決。
もしも吹雪になりそうであれば、結界石から里の祭祀堂に一時的に移ってもらう事にする。牡丹も一人じゃ暇だから、話し相手が出来て嬉しいだろう。そして肝心の結界は、神垣の巫女である雪華が一人で維持する事となった。
尚、本人からの提案である。
本当にいいのか、と問いはしたものの、
「むしろ、それが本来の神垣の巫女です。負担が強くなるのは確かですが、負担を肩代わりしていただいた分をお返しすると思えば…。吹雪の季節さえ去れば、また結界を張るのに協力していただけるのですし」
と言い切られた。ま、確かに一時の苦労を厭うて、以降の助力を失うのは愚策だな。
で、そのついでに聞かれたのだが……次の結界石に宿っているミタマは誰なのだろうか?
…いや、誰って言われてもなぁ…。鬼が適当に連れてきたミタマを使ってる可能性が高い。本願寺顕如=サンはよく分からんが、木綿季が宿ってたのも、この里で亡くなった後、魂が鬼に捕まったからだろうし。
「つまり、この近辺の死者のミタマが捕らえられている可能性が高いと?」
「高いかどうかは微妙だが……まぁ、確かに遠方の縁も所縁も無いミタマが居ると言われるよりは納得できるな」
「そしてこの近辺のミタマが宿っているとすれば………そう、ミタマになれる程の力を持った人は、そうそう多くはない筈です」
…まぁ、確かに。木綿季は子供の時に亡くなって、閉じ込められている間にとは言えミタマになってたんだから、凄い素質を持ってたんだろうなぁ。
何だ、誰か心当たりでもあるのか?
「はい……氷華姉さまです」
「……氷華…か」
誰? 姉? 氷華姉さま、雪華、風華で3姉妹だったの?
「はい。正確に言うと、風華は従妹なのですけど。氷華姉さまは先代の神垣の巫女で……オオマガトキの戦で、亡くなられました。亡くなったと言っても、亡骸も見つかっていません」
…そうか。ご愁傷様です。
「いえ…。ひょっとしたら、氷華姉さまが結界石に宿っているのかも…。もしそうだとしたら、生身ではありませんが、もう一度会えるかも…と思って」
「流石に希望的観測ってやつだが、確かに可能性はあるかもな」
その場合、何年も結界石の術の中でゆっくりと衰弱させられていたって事になるが…言わぬが華か。再会できたとすれば、それは素直に嬉しかろう。
ま、次の結界石を見つけない事には、絵に描いた餅だけどな。次の奴が違ったとしても、その次、その次…とあるだろうし。
と言うか、ここの結界石って幾つあったっけ…。
「あとでまた地図を見せてやる。割れたり砕かれたりしている石もあるし、そもそも形からして変わっているからあまり信用はできんが。それにしても、思えば雪華は氷華そっくりに育ったもんだ。髪型を変えれば、見分けが付かんかもしれんな。…性格は似ても似つかないが」
「そう…ですか? 私は氷華姉さまが無くなるまで、数年間霊山で修行していたので、自覚がありません。今度、髪型も変えてみましょうか……術に影響が出ない範囲で。あ、でも氷華姉さまも同じ髪形をしていたと聞いたことが」
そんなによく似てるのか…。性格は似てないって?
「ああ、氷華は…当時の鬼との闘いの為もあるだろうが、こう、気難しい所がある奴だった。他人に厳しく自分にも厳しい奴でなぁ…」
女王様タイプ…いや、鬼の風紀委員長タイプかね? 雪華も、それっぽい態度を取ってれば怜悧な印象がよく似合うんだけどなぁ。
多分、この姿で女王様みたいに冷たい視線を送られたら、目覚める奴が何人か居るぞ。
……今度調査してみるか? 同年代のモノノフも、何人か居るだろうし。
まあ、とにかく次の結界石を早めに探すとしましょうか。