魔禍月 十仇日目
寒波到来の予感と言う事で、里人達は各々動き回っている。
特に急いでいるのは、ミタマの寝床となる新たな祭祀堂だ。大雪大嵐となっても、大抵の鬼達はお構いなしに活動できる。もしも結界石の護衛が居ない間に鬼達が迫ってきたら、直接戦闘能力の無いミタマでは抵抗できない。その為、臨時の避難場所として新たな祭祀堂を作っている訳だ
俺も依頼されて、幾つか素材を取りに行った。どっちかと言うと、神夜が作ろうとしているベッド素材のついでだったけども。
尚、本日は明日奈はお休みだ。兼業の、居酒屋の給仕をやっている。…異界浄化班としてモノノフ専業にしてもいいのだが、人手不足で泣いて頼まれたらしい。
ふぅむ……異界の中も段々と吹雪いてきてる。吹雪が去るまで、探索は控えた方がいいかもしれない。
「むぅ…吹雪では仕方ないですね。残念極まりないです…」
山の天気は怖いからな。異界のであれば猶更。楽観してフラフラしてると、それこそ遭難してしまうのがオチだ。
俺達ハンターだって、雪山を甘く見て凍死する奴が毎年何人か出るんだから。
一応、遭難した人を見つけ出す為の訓練とかも詰んでるけど、やりたくないのには変わらないな。実践した事がないから、どれだけアテになるのかもわからん。
最悪、遭難しても一晩だけ、俺だけだったら生き残れる目はある。アラガミ化という最後の手段があるからな。あまりエネルギーを使わず、じっとしていれば長時間の変身もそこまで苦にはならない。
アラガミ化状態の火力でキャンプファイアーでもすれば、暖は取れるだろう。多分。後がどうなるか分からないが。
それにしても、今度の異界はまた一段と広くて瘴気が濃いな。木々が生い茂る密林地帯なんだが、これがまぁ昼間から薄暗いのなんの。吹雪いてきているから猶更だ。
気のせいか、あまりよろしくない気配が漂っている気がする。何というか……ハロウィン的な森を、もっと禍々しくしたような。
「モノノフ的な視覚で言えば、単に見た目が悪い森なのですが…確かに、如何にも何か『出そう』な雰囲気ですね。出るとしても、幽霊ではなく鬼ですが」
幽霊だったとしても、ミタマだろうしね。
実際、鬼達も組織立って警戒している気配があるし、警戒するに越した事はないんだが……しかし、何だかこの異界はオニビが多いな。
「ええ。木々の間から、光が飛び回っているのがよく見えます。オニビでなければ幻想的な風景だったでしょうに。…この近辺では、小鬼は珍しいです。居ても大抵ノヅチくらいなので」
この木々のみっしり具合じゃ、ノヅチも大型鬼も動きにくかろうなぁ…。そういう意味じゃ、足場に捕らわれず、小さな隙間を移動できるオニビが多いのも納得だ。それにしたって、ちと多すぎる気がするが…。
オニビと言えば、確かミタマを飲み込んで変色する奴が居たっけな。いやオニビ以外も同じだっけ?
「ああ、不浄と名の付く小鬼ですね。私は見た事はありませんが」
ミタマを呑んでる小鬼なんぞ、大型鬼の方が捕食するだろうしなぁ…。
…お、素材見つけた。これで予定していた分は全部だっけ?
「はい、これでべっどが作れます! 感謝感激極まりないです。 今日の夜には出来上がると思いますので、是非とも試して感想を聞かせてくださいね」
………うん? ちょい待ち、試すのはこの際構わんけど、これってベッド一つ分の材料…だよね?
「そうですけど? 勿論、加工が上手く行かなかったときの為、幾らか予備は見繕っていますが」
確か、まずは自分用のベッドを作るって言ってなかったっけ?
「ええ。他の方に勧めるにしても、使い心地を試して、不備が無いかを確かめないと。まずは自分で試しますが、お話でしかべっどを知らない私では気付かない欠点があるかもしれません」
それは分かるけども。
…あのさ、神夜。職人としての視点で言ってるから気付かないのかもしれないけど、ベッドって要するに床だぞ。閨だぞ。
自分で使う為にまず作って、使い心地を試してもらう為にそこに男を招くって…。
「………………………………そ、それはー…そのー…」
指と指を顔の前で突き合わせて赤面する、視線を左右に彷徨わせる……あれ?
リアクションがちょっと予想と違う。もっとこう、意表を突かれて「ひゃわわわわ!?」みたいに慌てるかと思ったんだが。
これは、予想外の事を言われた反応ではなく……考えていて目を反らしたり、口にしてなかった事を、改めて指摘された反応だ。
きょぬーの前で指をツンツンと突き合わせ、スネたような、しかし真っ赤な顔で俺を上目遣いに見て、口を尖らせている。いけずです、とでも言いだしそうだな。
何にせよ、どういう心境によるものかはさておき……神夜も『その気』が少なからずある、と言う事か。ベッド自体、俺を招く為の口実だった…と言うのは己惚れすぎだろうか?
特に注意して思い返さなくても、俺とスキンシップを図ろうとする明日奈にご機嫌斜めになったり、物欲しげな視線を向けられた事は何度もある。スキンシップの代わりとでも言うように、模擬戦を挑まれた事も。
更に言うなら、俺が明日奈を初めて抱いた日なんぞ、そのシーンを想像して自慰まで行っていたようだった。…そういや、セクハラしながら明日奈を連れ回すところを目撃されていたっけ。
うむ…据え膳どころの話じゃないな。まな板の上で、生け作りの鯉がヘイ!カモン!とばかりに手招きしているよーだ。何で今まで手を出さなかったんだろうね、俺。
なんなら今からでも抱いてしまいたくなる程いじらしい姿だったが、グッと堪える。
まずは、ベッドを作ってからだな。素材集め以外に手伝う事あるか? ちょっとでも早く作らねば。
「いえ、土台等は簡単ですし、布団も在庫を使えばいいですし……問題があるとすれば、飾りつけと……その、明日奈さんの事が…」
明日奈? …ああ、そりゃそうか。神夜は、友人とその恋人の中に割って入ろうとしてるんだものな。ある意味、俺を寝取ろうとしているともいえる。
そこで明日奈との関係を気にして二の足を踏む辺り、覚悟が決まり切ってないなぁ…。
大丈夫。明日奈はちゃんと説得する。明日奈が傷つくような事にはならないし、捨てるような事はしないから。
「…真ですか? 私は…私は、あなたに懸想しても、明日奈さんは泣きませんか?」
泣かない泣かない。
だってもう、他の女もOKだって躾けてるからネ!
性質がワンコなだけあって、群れを作るのにあまり躊躇いは無かった。ただし、自分を充分に愛してくれるなら…だが。
明日奈は自分が独占欲が強いタイプだと思い込んでいたので、そこは最優先で突き崩しておいた。他の女の話をする度にスネられると流石に面倒だったし、今回も色々とお突き合いが増えるのは予想できたし。
明日奈の独占欲は、自分の伴侶を他の誰かに触らせたくない…と言う物ではなく、『愛されていたい』という欲求によるものだ。伴侶の目が他人に向けば、自分に向けられる愛情が少なくなったと感じて飢えてしまう。ならば単純に、俺が誰に目を向けて誰を抱いていようと、自分は充分に愛されている…と思わせれば、途端に鷹揚になる。
とは言え、神夜もそう言われてもすぐには信じられないよなぁ…。
よし、明日奈にちょっと仕掛けるか。他の女に手を出してもいい、と思わせてるけど、それが自分の親友だと言うのは…いや多分気付いてるか。以前からの神夜の兆候を見逃してるとは思えない。
と言うより、神夜が本気で動き出す前に抜け駆けしたって意識もあるんだろう。堂々と正面からアタックした明日奈と、理由はどうあれ消極的だった神夜の行動の結果だから恥じ入る所はないだろうが、それでも後ろめたさはあると見た。
その辺を上手く突いてやれば、明日奈から神夜に『抱かれてみない?』とか言わせるのも簡単だ。
うん、いい機会だから今夜はソッチ方面で責めるか。本気でヒィヒィ善がらせて、自分一人じゃ体が保たないって意識の仕上げをするとしよう。
何、心配するな。ベッドが出来上がるまでの間に、明日奈から許可が出るから。
「……? ……? ちょっと言ってる意味がよく分かりませんけど、安心…していいのかなぁ…」
首を傾げながらも、いそいそと予備の素材を集める神夜だった。
ああ、そうそう。忘れてたけど、ベッドは大きめ…2~3人が載っても余裕があるように作っておくように。上でナニかするのにも間取りが必要だし、そうでなくても寝返りで落っこちる奴がよく居るからな。
魔禍月 弐拾日目
明日奈の説得は無事完了した。代わりに夕方くらいまで起きてこれなかったけど、それはまぁいい。
本人も若干スネながらも、看病されるのを嬉しく思っていたようだし。…気だるげな雰囲気で動けない明日奈に、ついついセクハラしそうになったけども、それは置いといて。
明日奈は動けない、神夜はベッドの作成で手が離せない。白浜君は今日は何もせずにお休み…と言うか燃え尽きてるから鍛錬させずにただ只管眠らせる。
泥高丸は何やら家族サービス中。寒雷の旦那は何やら仕事が忙しいようだ。
本格的にやる事・できる事が無い。どうやって暇をつぶそうかと思っていたら、雪華に捕まった。
何かと思えば、墓地に行きたいとか。
…墓地って、アレか、泥高丸の家族の墓がある、あの墓地か?
「ええ、そこです。最初は泥高丸さんに護衛を頼もうかと思ったのですが、今日はお墓参りには行かないそうで」
ああ、嫁さんと何かするって言ってたな。行くのはいいけど、何か用事かね?
「…氷華姉さまのお墓参りです。何処かで生きてるんじゃないかと、思ってはいるんですけどね」
ああ…。前お頭は、生きてるっぽい形跡があったもんな。ひょっとしたらと思っても無理はないか。
と言うか、前お頭の墓は?
「里の皆が全員一致で死ぬはずがないと断言したので、まだ作られてないんですよねぇ…。それもどうかと思っていましたが、実際に生きてそうですし…」
ある意味酷い話である。
……仮に…本当に仮にだが、前お頭が戻ってこないのは、先日仮説を立てたように、謎の塔の中で過ごし、消えている時間帯を認識できていなかったから…だとして……その塔の中に氷華が居る可能性は?
…ゼロではないが、考え辛い。少なくとも、前お頭の痕跡近辺には、もう一人誰か居たような痕跡は無かった。
或いは……塔の最上階に、お宝扱いで監禁されているとか? 考えるだけならいくらでも出来るか。
護衛として墓に向かう途中、氷華姉さまとやらの思い出話を色々聞かされた。
思い出話と言っても、あまり多い物ではない。本当に幼い頃は一緒に過ごしていたが、神垣の巫女として二人が見出され、氷華は修行の為に霊山に行き、雪華が霊山に行くのと擦れ違いで里に戻り、そしてそのままオオマガトキの戦いで行方知れずになった。
慕っていたのは確かだが、文による遣り取りなどもなかった。
「ええ…ですので、里に戻れると聞いた時は、また氷華姉さまに会えると喜んだものです。…その直後に、行方知れずの報せが届きましたが」
そりゃ辛かったろうに…。生き別れの姉の事もそうだが、そんな激戦区に行かなきゃいけないって事も。
「………ふふ、そう言えば以前にも、自分の役割を嘆いていたと零してしまいましたね。そうです。姉さまに会えると思い、嬉しかったのは事実です。ですが、それ以上に私は怖かった。恐ろしかった。鬼達との闘いの場に赴かねばならない事に、心底嘆きました。…神垣の巫女としての立場を捨て去り、逃げ出せないかと思った事も、一度や二度ではありません。里が異界に囲まれて逃げる事も出来なくなったと知って、ようやく覚悟が決まった程です。…散々泣きましたが」
泣いて弱音を零せるのは、神垣の巫女としちゃいい素質だと思うよ。揃いも揃って、恨み辛みを飲み込んでいく奴ばっかりだからな。
特に、ここの神垣の巫女は早逝が多かったらしいし…。
仕方ないとは言え、使い潰していると言われても反論はできない。…そういう感情、鬼に利用されやすいんだがな…。
「…利用された事は、何度かあります。神垣の巫女に限りませんが」
…やっぱり?
「私が里に来てからも、一度だけありました。…酷い事になりましたよ。危く里が崩壊するところでした…。今思うと、あれも話に聞く指揮官級の鬼の仕業だったのかもしれません」
同じ事をされる可能性は、あると思うか?
指揮官級がやったのだとしたら、その効果の程は悟られている筈だ。人間に対して、これ程有効な戦術は無い。
それを仕掛けてこない理由は…。
「分かりません。結界を貫いて術をかけるのは難しい筈ですが、前例は幾つもあります。…先日の明日奈さんも、術で誘い出されたと聞いています」
ふむ…。人間を全滅させないように手加減している…と言うのが分かりやすい結論か。人間は奴らにとっては餌に近いだろう。
尤も、俺が鬼なら自分を狩りかねないようなエサはさっさと全滅させるけども。
…お、到着。
墓石はどれだ? 俺もついでに祈っておくか。
「ありがとうございます。真ん中にある、大きなお墓です。…氷華姉さまだけでなく、歴代の神垣の巫女や、行方知れずとなった里人の共同墓地なんです」
ふーん。ナンマンダブナンマンダブアーメン迷わず成仏…成仏しないならしないで、できればミタマとして力を貸してほしいです。
かなり適当に念仏を唱えるだけの俺を放置して、雪華は持ってきた布巾で墓石を磨き始めた。共同墓地だけでなく、他の墓石もだ。
と言っても、数年間異界の中に沈んでいた石だけあって、そう簡単には綺麗にできない。アッと今に布巾も汚れだらけになる。
「…姉さまは…」
うん?
「いえ、過去の神垣の巫女の皆さまは、恐ろしくなかったのでしょうか…。里に迫る鬼達、結界の負担によって徐々に壊れていく体、圧し掛かる重圧と責任…。今でも、私は逃げ出したくて堪らないのです。もしも周囲が異界に閉ざされていなかったら、きっとこの数年の間で、私は何もかも捨てて逃げ出していました」
…死ぬのが怖くない奴は狂人か、生きる事に疲れ切って今の自分を終わらせたいと思ってる奴だけだ。
責任が怖くないのは、それが大したことじゃないと思ってる奴だ。
逃げられるものなら逃げたかったのが殆どだろうな。それでも留まっていたのは、今と同じように逃げ場が無かっただけか、逃げた後が恐ろしかったからか。…本気で命を磨り潰してでも里に尽くそうと思える奴はそう居ないよ。
「逃げ場が無かった…今のように、里が異界に囲まれていなくても?」
逃げてどうする。何処に行く? 里を捨てて落ち延びる事が出来たとして、その後の生活は? 庇ってくれる伝手でもあるか?
まず無いな。神垣の巫女を過保護なまでに隔離するのは、そういう逃げ場を作らせない為の意図もある。
それでも逃げたいと思う巫女は沢山いただろうけど…幼い頃から刷り込まれれば、逃げたり反抗したりする発想すら無くなるからな。
こんな事言われても気が滅入るだけだろうが……ま、それだけではなかったのも確かだろうな。
泥高丸も言ってたが、恨み辛みだけしか残ってなかったのなら、こんなお人好しだらけの里は出来上がらないよ。抱えきれなくなっての暴発、恨み辛みを残した遺言や傷跡…もっと里に陰を残す。
案外、皆も雪華と同じような事を考えてたのかもしれないぞ。
雪華だって、何だかんだ言って結界を張る事に疑問や嫌悪は持ってないだろう。多少なりとも体に負担がかかるのに。
「それは……そうですが。だって、里が壊滅したら私も死ぬしかありませんし、里の皆さんが…死んだりするなんて、考えたくもありませんし。でもそれは当然の事で、なのに私はそれよりも自分を優先しようと」
皆そんなもんだよ、本当にさ。痛いのや損をするの、怖い思いをしたい奴なんて殆ど居ない。でももっと嫌な事があるから、それをさせないように必死こいて瀬戸際で、やせ我慢しながら放り出したいのを踏ん張ってるだけなんだ。
ま、だからって何が救いになる訳でもないけどな。死ぬのが嫌なのも寿命が縮むのも変わらないし、むしろ自分が特に辛いんじゃないから環境のせいにする理由も消える。
何だ、余計な事しか言ってないが…雪華の悩みは皆通って来た道で、雪華一人が卑しい考えを持ってる訳じゃないと思うぞ。そういう考えを嫌悪するのは勝手だが、劣等感を感じる事はない。
もしも歴代の巫女…或いは他の里の巫女に会えたら、愚痴でも零してみればいいじゃないかな。意気投合できるかもしれないぞ。
「………劣等感、ですか…。…そうかもしれませんね。突拍子もない発想ですが、先代の方々と語り合うのは楽しそうです。いいお話を聞かせてくれそうですね。ふふっ、考え方に幅ができたと思っておきます。さ、今日は帰りましょう。吹雪きも近そうなのですから、色々と準備しないと」
軽やかに笑う雪華。根本的に救いになった訳ではないが、多少の気休めにはなったらしい。
さて、それはそれとして、重要な事があったのを書き忘れてはいけない。また謎が増えたのだが…うん、これは割とどうでもいい謎のような気がしなくもないな。
雪華と一緒に、超界石の近くを通りかかった時の事だ。ちょくちょく目にはしていた石で超界石。里人にとっては、何やら里の象徴のような物らしいので、ちょくちょく参拝に来る人や、汚れを磨いている人等が見かけられていた。
俺はと言うと、下手に近付くとなんかヤバそうな底なし沼に引きずりこまれそーな気がしたんで、なるべく近付かないようにしていたのだが…雪華がついでにお参りをしていくと言うので、渋々ながら近付いた。
雪華のお参りも、特に何事も無かったんだが……終わって立ち上がろうとした時、足元を天狐が横切った。…あれは風華のところの華天じゃないな、野良天狐か。
石にじゃれついていた天狐。雪華の足を避けた天狐は、石のコントロールを誤ったのか、大きく石を…宝玉をすっ飛ばした。
その宝玉が超界石に向かって。
なんか光を発しながら吸い込まれて。
超界石の下に、何かがあった。
…………。
思わず沈黙する俺と雪華。
「……あの、今…」
言うな。なんか深入りしたら逃げられない気がする。
「いやでもしかし、超界石にこのような現象が起きるなど…いえ、確かに世界を超える力を持っていると言われていましたが」
だから言うなって。よく分からんけど、とんでもない事になりそうな気がしてならん。
「でしたら猶更確認せねばなりません。超界石は、里にとって心のよりどころです。異常が起きているのであれば調べる必要がありますし、そうでなくても宝玉を近付けただけでこのような事が起きるのであれば、いつ誰が気付いてもおかしくありません。むしろ今まで起こらなかった事が不思議なくらいです。最低限、今出てきた物が何なのか、確認しないと」
うぐぅ…ここぞとばかりに勢いよく正論を吐きやがる。いや言ってる事は間違いではないし、そこに出てきたのが何なのかは俺も気になる。
気になるんだが、こいつは俺を果てしなくヤバい道へ引き摺り込もうとする罠だと、俺のカンが叫んでいるんだ。
いいとか悪いとか以前に、俺はコレから絶対に逃げられないと。むしろ自分から進んで入り込んでいくと。
俺の葛藤・戦々恐々とした内心を他所に、雪華はその辺で拾った木の枝を使い、出てきたモノをツンツンと突いている。そんな、ア〇レちゃんがピンクの渦巻きをつっつくような事せんでも…。
「…動きません。生き物ではないようですね…。これは……何やら透明な包みに入っているようです。…繋ぎ目がありませんね。どうやって入れたんでしょう? 中に入っているのは……………これは……衣服…でしょうか?」
何ですと? 関わってはいけないと本能が叫ぶのに、ついつい耳がピクピク動く。
透明で繋目の無い包み…多分ビニールだよな。つまり、そういう時代の…或いはGE世界の服?
ど、どんな服ですか?
「見た目は…とりあえず黒と白ですね。構造からして、日ノ本の物ではなく、恐らく伴天連の物だと思いますが…畳まれているので、これ以上の事はちょっと…」
開けてみたい開けてみたい開けてみたいいや開けなくても一目見れば多分分かるけど関わっちゃダメだ関わっちゃダメだ関わっちゃダメだ関わっちゃダメだ関わっちゃダメだ関わっちゃダメだ関わっちゃダメだ関わっちゃダメだ関わっちゃダメだ関わっちゃダメだ関わっちゃダメだ関わっちゃダメだ関わっちゃダメだ関わっちゃダメだ関わっちゃダメだ関わっちゃダメだ関わっちゃダメだ関わっちゃダメだ関わっちゃダメだ関わっちゃダメだ関わっちゃダメだ関わっちゃダメだ関わっちゃダメだ関わっちゃダメだ関わっちゃダメだ関わっちゃダメだ関わっちゃダメだ関わっちゃダメだ関わっちゃダメだ関わっちゃダメだ関わっちゃダメだ関わっちゃダメだ関わっちゃダメだ関わっちゃダメだ関わっちゃダメだ関わっちゃダメだ関わっちゃダメだ関わっちゃダメだ関わっちゃダメだ関わっちゃダメだ関わっちゃダメだ関わっちゃダメだ関わっちゃダメだ関わっちゃダメだ関わっちゃダメだ関わっちゃダメだ関わっちゃダメだ関わっちゃダメだ関わっちゃダメだ関わっちゃダメだ関わっちゃダメだ。
ミニスカメイド服でした。しかもサイズからして明日奈にピッタリだと思われます。
ああ……あぁ、これはアカン。逃げられん。
ついつい、手元にあった宝玉の半分くらいを突っ込んでしまった。
出てきた物は、ガラクタ多数にチャイナ服、ボンテージ、学生服、ブルマ、スク水、チアコス、各種洋風ランジェリー、その他諸々…明かに本職用の衣装もあれば、明かにプレイ用なド〇キ辺りで売ってそうなテッカテカな衣装もある。
どう考えても狙って出してるラインナップ。或いは俺が引き寄せたのか。
「あの…出てきた物の意味はともかくとして、大丈夫なのですか? 明らかに、今使った宝玉の量は配給される物の殆どだと思うのですけど…」
宝玉は里の暮らしに欠かせない、各種エネルギー源だからな…。吹雪で寒くなるであろうこれからは特に、暖を取る為の道具として超重要だ。
無ければ、冗談抜きで凍死する可能性が高くなる。
…最悪、明日奈の家に転がり込めば…。
「それは世に言う、集りというものでは?」
ヒモとも言う。特に俺、モノノフ専業で仕事らしい仕事してないから、特に。
うん、明日奈の家に入り込むかはともかくとして…多分熱烈歓迎してくれると思うが…流石にこれ以上宝玉を突っ込むのは辞めておこう。これ、冗談抜きで底なし沼だ。
里の人達にも、黙っておいた方がよさそうだな。
「うーん…宝玉を幾つかと引き換えに、よく分からない服やら何かの欠片やら…。まぁ、知ったとしても使う人は居ないと思いますが。こう言ってはなんですが、出てきた物よりも宝玉の方が価値は高いですよ」
まぁ…知らない人にとっては、本当に訳の分からない品でしかないか。
あ、でもこれは多分女性モノノフには喜ばれると思うぞ。神夜みたいなのには特に。
「? 出てきたものの一つですよね。それは?」
ブラジャー。女性用のサラシや胸当てみたいな物って言ったら分かるかな。
あんまり派手に動かない雪華には分かりにくいかもしれないけど、まーなんだ、神夜みたいな豊満なのを持ったまま暴れるって、結構きついんだぞ。神経が集まってる急所が二つ、余分についてるようなものだから。
それをしっかり抑え込んで、運動性と見た目とエロさとモノによっては防御力と見た目とエロさを上げてくれる優れものだ。
「はぁ…」
む、分かってないな。見た目とエロさは重要だから2回言ったぞ。
ただ、しっかり合った物を使わないと逆に痛くなるから、そこは悩みどころだな。大きい物を特注しようとすると金がかかるし、うっかりそんな悩みを漏らしても72の人から「イヤミか貴様ッ!」て鬼より鬼らしいオーガのように怒鳴られるだけだ。
ともあれ、これ以上は使ってみないと分かるまい。
えーと、雪華のサイズは目算で………これくらいかな。うん、丁度良くサイズがあって助かった。
これをつけて生活してみろ。少なくとも肩こりは大分違ってくるぞ。
「使えと言われても、使い方も付け方も見当もつかないのですが」
む、そりゃそうか。俺…が教えると流石にちとまずいか。そーだな、明日奈を通じて雪華に…神夜にも教えよう。
そこから上手い事、女性モノノフに広まってくれるといいんだが。ああでもまずは物の作り方が大事か。宝玉使って呼び出してたんじゃ、本気で幾ら必要になるか分からない。
下着作るのって、誰が担当してたっけなぁ…。
熱く語る俺に雪華が戸惑ってるうちに、各種コスチュームはこっそり回収して私物化しました。