次の投稿は9日の予定です。
魔禍月 弐拾壱日目
神夜からベッドが出来たと、こっそり伝えられた。ちなみに明日奈の目の前だが、特に問題はない。
二股を了承する話は既に通っているからな。「競争相手はたっっっっくさんいるみたいだから、今更神夜一人増えても変わりありません」ってイヤミも言われたけどね。
説得は簡単だったよ。むしろ、やりすぎないようにするのが大変だった。
だって明日奈にミニスカメイド+アダルト下着だぜ? そりゃ大張り切りするよ。
メイド服に戸惑っていた明日奈だったが、珍しい服で着飾って悪い気はしないようだった。服のバリエーションも少ないからね、この里。
ご主人様なんて呼び方は流石に躊躇ったけど、一度初めてしまえばノリノリで、いつも以上に嬉々として命令に従ってくれた。
尚、ブラジャー・パンティも含め、俺が直々に着けさせました。だって付け方を知らないんだもの、仕方ないじゃない。目の前でストリップどころか生着替えに理性が吹っ飛びそうになったのは確かだが、後の睦言をより良い物にする為なら我慢もできます。
うん、やっぱり女の肌を彩る下着は、洋風に限るなぁ。襦袢とかのエロさも捨てがたいが、こう肌と下着とのコントラストに、綺麗な模様の組み合わせがね。
明日奈も基本的にサラシを使っていたので、こういう彩は非常に嬉しい。
こう、他人に見せない所にエロい下着をつけてて、それを自分だけが拝めるんだって思うとグッとくる。ミニスカメイドなので、チラチラ見えるフトモモとパンティに目が引き寄せられる感覚、男だったら分かってくれると思う。
ちなみに、実用品的な意味でも非常に喜ばれました。やっぱり胸を保護する、動きを阻害しないのは非常に有難いそうだ。もうコレ無しではいられなくなりそう、とは明日奈の談。…俺のナニ以外にそんな事言われるのはなんだかイヤだったので、別の意味でも同じ事を言わせてみました。着飾ると俺がハッスルするので、夜の営みに欠かせないという意味でもヤミツキです。
これは是非とも里に広めるべき、と息巻いています。
まぁ、手軽な戦力アップにはなるだろうから、広めるに越した事はないよな。問題は需要に対して供給が追い付くかと、特注が必要な人と逆にブラが不要な人の間で軋轢が起きないかだ。
下着類の作成担当である日枝さんは、割と慎ましやかな方らしいので、あまりデカイ物を作らせると衝撃を受けてしまうかもしれんな…。
さて、昨晩の明日奈とのコスプレックスの事はともかくとして。
異界探索任務は、今日で一旦区切りとなる予定だ。本格的に吹雪が観測されたので、それに備えなければならない。
幸い、備蓄や積雪に対する備えはこれまでの動きで大体準備できているので、後は里周辺の鬼を徹底して掃討しておくのと、結界石に宿っているミタマ…本願寺顕如=サンと木綿季の避難だ。避難先の祭祀堂も既に完成しており、後は迎えに行くだけ。…その前に、雪華が結界を引き継ぐ必要があるけどね。多分、明日移る事になるだろう。
ちなみに、木綿季は明日奈が迎えに行く予定である。
…この、寒さや積雪に備えて家の中に籠りきりになる冬籠り。明日奈が俺を誘う口実…と言うか好機として使ったイベントな訳だが………はっきり言えば、非常に不安である。
それも当然だろう。冬籠り中は、この里は強制的に動きを完全に止められてしまうのだ。
幾ら周辺を念入りに『消毒』するのだとしても、その更に周辺は鬼達の住処の異界。モノノフが動けない間に、吹雪を掻い潜って鬼が接近してきたら…。万一、雪華の結界が破られてしまったら。
有り得ないとは言い切れない。事実、結界を貫いて鬼は明日奈に術をかけて誘き出した。術をかけられたのが異界の中で、発動したのが結界の中であったとしても同じ事。いつどこで、誰が鬼に目をつけられているか分からない。
…それに…なーんか嫌な感じするんだよな。こんな時に限って何かが起こるという定番。こんな時だからこそ、鬼達は責め時だと心得ているという考え。
何より…あの吹雪。違和感がある。気候的に考えれば発生してもおかしくない吹雪ではあるんだけど、なんかこう…人為的な感じがすると言うか…いや人じゃないけど、アレだ、クシャルダオラとかが起こす吹雪と同じ匂いがする。具体的にどこがどうとは言えないが、それよりももっと粘着質な印象を受ける。
とは言え、根拠らしい根拠はないんだよなぁ…。天候を操る鬼…例が無い訳じゃないが、そこまで強力な鬼が居るなら、里はもっと追い詰められてると思うのだが。
暫し悩んだものの、寒雷の旦那や牡丹に相談。一応、泥高丸にも。
「…懸念は分かるが…しかし何が出来る? 今からその元凶となる鬼を探し出すか?」
「仮に見つけて倒せたとしても、恐らく吹雪自体は消えんだろうな。鬼の術で、吹雪が長引く可能性があるから、是が非でも倒しておきたいところではあるが…」
「………ふむ。牡丹曰く、鬼でもそこまで強い術を使えば、ひどく消耗する。里の結界を破られさえしなければ鬼に襲われる心配はないから、ここは守りの一手を固めて、敵の消耗を狙いたい…だそうだ」
…里の結界を破られさえしなければ…か。やっぱそこだな…。
雪華が結界を引き継ぐ時、里は一瞬無防備になるよな? その瞬間を狙って術をかけられる、と言う事は?
「雪華が結界を張って、その後に結界石に宿る二人を非難させるから、無防備になる瞬間は無いな。雪華にも、鬼の標的にされるから、暫く前から里の外に出歩かないようにとは言ってあるし、万一おかしな事があったら、すぐに知らせるように言ってある」
吹雪の間は?
「結界を張る為の社で、祈祷を続ける事になっている。勿論、護衛も付くぞ。…同性だけだが」
おいおい、そこで何で女だけにするんだよ。充分な実力があるなら構わないけど、性別を基準にして選ぶ理由は無いだろう。それこそ、何なら俺でも泥高丸でも…。
「いや、ある」
…泥高丸?
「あるんだよ…。……言いたかないが、この里にはな。……恥…の話ではある。誰が悪いって言えば、そりゃ鬼だろうよ。…それでも負い目があるんだ。…悪い、これについてはあまり突っ込まないでくれ。とにかく、こういう状況で、男を護衛として入れる事に、この里の女性は大きな抵抗があると言う事だ」
…? なんか知らんが、面倒くさくて暗そうな話だな。
ついでに言えば、軽く話をする程度で、それの関係者も大体特定できてしまうっぽい。とりあえず、今突っ込む話ではないか…。
よく分からんが、雪華の護衛に男を入れると里の人間関係に深刻な影響が考えられるって事は理解した。そういう事なら納得しよう。充分な技量があると言うなら、何も問題はない。
フラグってゆーな。言われなくても俺も思ってるから…。
話し合いは発展らしい発展も見せずに終わった。まぁ、議題と言うか問題が曖昧過ぎたからな。もうちょっと状況を特定してから来い、と言われても仕方ない。
素人目にも分かるくらいに吹雪き始めた空を見上げて、内心で愚痴を零す。やっぱりこの吹雪は気に入らない。
神夜の家に向かいながら、こんな夜でなければもっとハッピーな気分になれるのに、と吐き捨てる。里の外れにさしかかったので目を凝らすと、数人のモノノフが平原を駆けている。…その中に明日奈が居るのが見えた。そうか、木綿季を迎えに行くのか。
恋人(の一人)が重要任務に向かうのに、俺は新しい女と関係を持とうとしているのに、ちょっとばかり後ろめたさが無いではない。まぁ、その本人が了承してるんだけども。
一応言い訳しておくと、無理矢理説得した訳じゃない。いや本当に。
そりゃ二股三股かけられるのにいい顔する筈もないが、自分だけオトコ作って幸せになる事に抵抗もあったようなのだ。元々、里でも持て余されていた二人組だったからなぁ…。
気を取り直して道を歩く。既に結界は張り直されて、里の人達の雪対策も終わり、それぞれの家からは小さな灯りが漏れている。暖を取る為に、灯を絶やさずにいるのだろう。うーん、ノスタルジック。
そんな事言ってる暇もないくらいに、物凄い吹雪がくるんだけども。
神夜の家が見えてくると、その手前に人影が見える。他ならぬ神夜だ。相変わらず寒そうな恰好で、扉の前でソワソワと落ち着かない様子で行ったり来たりしている。
何をしているのか、なんて言うまでもない。俺を待っているのだ。
三つ指ついて迎えるのではないが、家の外まで迎えに来る。…と言うよりは、吹雪で来るのを辞めるんじゃないかと思って不安で仕方なかったのかな?
とりあえず、最初にやることは決まった。風呂入れ、風呂。湯ほぼ酒マラっつーくらいだし、温まった体の方が具合がいいし、神夜だって心地よいだろ。
神夜、お待たせ。遅くなって悪かった。
「い、いえいえ、私が勝手に家の外で待っていただけですので! それよりもその、本日はよろしくお願いする事極まりないです!」
はいはい、あんまり大きな声出さないの。屋根から雪が落ちてくるから。
とりあえず家に入ろうよ。ベッドの出来栄えも確認したいし、そのままじゃ風邪を引いちまう。
そしてお風呂入って温まりなさい。…俺も、後で使わせてもらいたい。
「は、はい…」
ベッド…これからイタす所と聞いて、顔が赤くなる。その為の場所をわざわざ作って、男を誘い込むって、よくよく考えると凄いよな。
神夜の家に入ると、部屋の奥にベッドが置いてある。結構な大きさで、間取り的に生活の邪魔になるんじゃないかと不安になる程だ。うーむ、想定より3割くらいデカい。
木製の台の上に畳が敷かれており、その上に敷布団が何重にも積み上げられている。
寝台の周りには黒く塗られた柱が立ち、上部には棒が取り付けられている。その上に、透けて見えるくらいの薄布がかけられ、ベッド全体を覆っていた。
柱や土台は上品な黒で染め上げられており、白い薄布や布団とのコントラストが非常に印象的。
「如何でしょうか? 職人として、忌憚のない意見をいただきたいのですけど…」
まず職人としてか…。一通り見せてもらうから、その間に温まってきてちょーだい。
さてさて、神夜の渾身の作品、見せてもらうとしましょうか。
うん、改良が必要な点はあるけど、よくできてると思う。
造形にも拘ってるのがよく分かるし、一見しただけでも柔らかくて暖かい寝床だと言うのが直感できる。
内側からは、布に遮られて外の光景がほぼ見えない…余計な情報や冷たい風を遮る、本当に眠る為専門の場所になってるね。
雅で実用的。何というか、かぐや姫が使ってそうなベッドだな。いや神夜じゃなくて、なよ竹のかぐや姫って事ね。
「そんな風に評価してくれるなんて、喜ばしい事極まりないです。ですが、改良が必要な点とは?」
お、お風呂上り神夜。ホカホカして暖かそうだなぁ…。と言うか襦袢が肌に張り付いてエロい。
これは言ってなかった俺の失敗だけど……家の中で、ベッドが浮いてる。いきなり作ったんだから当たり前だけど、調和がとれてない。
形や置き場を家の方に合わせないと、むしろ生活の邪魔になってしまう。これは、間取りと言うか部屋の中の物を動かせばいいとして…。
次に、これ絶対に洗濯とか掃除が大変だろ…。これは本来のベッドでも同じだけど。
「ああ…それは自覚していました。天蓋の布を取るのもかけるのも大変です。それ以上に、何枚もお布団を重ねて使っていますので、取り出すのも設置するのにも手間がかかり過ぎます。天蓋の布に関しては、巻取り用の細工をつける事を考えています。滑車を上手く使えば、そう難しくはない筈です。お布団の数は……新しい、もっと柔らかいお布団を開発するしかないですねぇ」
スプリングが無いからなぁ…。タタラさんとかなら、作ってくれそうではあるんだが。
バネが無いなら、エアクッションか、いっそウォータークッション…いや流石に冷たすぎる。
単純に、羽毛を詰め込みまくった大きな布団が一番かもなぁ。
うん、その辺については、また頭を絞るとして。
とりあえず、一風呂浴びさせてもらっていい? 俺もちょっと冷えてきた。
「はい、どうぞどうぞ。ご飯も食べられますか?」
有難い。その後は………実際に使って、試してみようか。
「…………はぅ」
真っ赤になってしまった。料理中に、間違えて指を切らないようにな~。