店長とソリが合わず、何をやっても叱責されるばかり。
会いたくないし顔も見たくないので、なるべく接する時間を減らす。
すると後から「相談しろ」と叱られる。
やっぱり会いたくなくなって、もっと相談しなくなる。
仕事が上手くいってないと、私生活も暗くなって執筆も滞る。いくえ不明。
…キングダムハーツでもやって、気分転換するかな。
エスコンはエキスパートモードでイージーをクリアできたので、今後は一日につき1ミッションずつ進めていこうと思います。
最後のミッションの狭い所の飛行が、どうしてもノーコンティニューできないけど。
赤いランプの道を目印に、できるだけ低速で軌道を合わせ、上向きに…。
……エスコンの外伝は難しいな…世界観と言うか戦闘ステージが違い過ぎる。
キングダムハーツの外伝……は危険な気がする。名前を出さなきゃなんとか行けるか?
魔禍月 弐拾録日目
さて、一休みして、雪掻きと周辺の鬼討伐と被害状況とその他諸々の確認も終わったので、先日何がどうなったか書いて行こうと思う。
予想通り…いや、予想よりも早く、雪華の護衛達は神夜の家に押しかけて来た。と言うか押し入って来た。それはもう、犯罪者を捕縛しようとする警察…いや、機動隊とかSWATの如く。
その時には既に、雪華は普段通りの姿に戻っていた。しっかりと情事の跡も洗い流し、巫女服を着こんで凛とした雰囲気……正直、雰囲気だけと言われても反論できんが……で対応した。
護衛達が来る前に、「上手く誤魔化せたら、ご褒美に虐めてくださいね」なんて言いながら股間を弄ってきた辺り、完全に雌奴隷が定着したようだ。
乱入してきた護衛達のおかげで神夜と明日奈も目を覚まし、とにもかくにも状況を確認したいと、寒雷の旦那の所へ連行された。
まぁ…手を出したの、一目瞭然だものなぁ…。雪華の言動は普段と変わりないけど、雰囲気が明らかに変わっている。一皮剥けたと言うか、艶やかさが増したと言うか。
…さっきから、扱いが準犯罪者だなぁ…。そう言われても仕方ない事をやってたし、雪華に手も口もちんこも出したが、そこは合意の上なんだが。
やはり何か、事情があるんだろう。雪華に女性の護衛しか付けなかったのと同じ理由か。
ともあれ、寒雷の旦那と牡丹の前に連行され、事の次第を説明した。
R-18部分は適当に誤魔化したが、普通にバレバレである。牡丹の面白がるような顔が印象的だった。…こういう時だけ、ハッキリ見えるようになりおって。
説明した内容は、大体は神夜の家で雪華がしたのと同じ説明だ。
それを聞いた寒雷の旦那は頭を抱えてしまった。
「生前の未練、ねぇ…まぁ、分からなくも無いわ」
話を聞いた牡丹は、意外と冷静だった。彼女もかつては神垣の巫女で、尚且つ里長という異例の立ち位置に居る訳だが…。
同意なんてしてしまってもいいのか。
「許される事じゃないけど、頭ごなしに否定できるようなものでもないわ。産まれた以上は一度くらい…と思うのも分かるし」
まぁ、ねぇ…。なまじ知識を持っちゃっただけに…か。いっそ何も知らなければ、その苦しみを知らずにいられたろうに。
それが救いになるとは思わないけど。
と言うか、何というか…本当に牡丹が冷静だなぁ。
「ん? だってね………あれ、言ってなかったっけ? いうような事でもないし…。私、子供産んだ事だってあるんだよ」
「「「えええええ!?!?!?!?!?」」」
デジマ!? もといマジで!? 本当に!? 一夜どころか出産まで経験済み!?
年齢的には……お、おかしくはない…か? 牡丹の生きてた時代が何時頃なのかよく分からんが。
「まぁ、その直後に死んじゃったんだけど…」
「おいおい、そりゃ俺も初耳だぞ」
「話すような事でもないし。…あの子が生きて、私達の血筋が続いていたとしても、里のこの状況で言うのも良くないじゃない。その子達を特別扱いするみたいで。そもそも、本当に血が繋がってるのかも分からないし」
「その…旦那様とは、どのような経緯で?」
「あ、別に結婚はしてないよ」
「…はい?」
「私が生きてた頃は、神垣の巫女も前線で戦わなきゃいけないくらいに追い詰められた…っていうのは知ってると思うけど。一緒に初陣を乗り越えた子と、ついつい…」
ああ、戦いの後に滾るのはよく分かるな。どの世界でもそれは同じだ。
それで衝動に従って経験してしまったと。
「そういう事。問題になりそうだから、暫く隠して付き合ってたんだけど、その子には異動の命令が来てね。名残惜しかったけど、それっきりだよ。そしてそのもう少し後に、妊娠してたのが分かったって訳」
「はぇ~……人に歴史あり、ですねぇ。と言うか、その状況でよく出産できましたね…」
「堕ろせっていう声も少しは上がったけど、そんな技術も薬も無いし。幸い私の次の神垣の巫女も育ってたし、最終的には皆認めてくれたんだ。…結局、あの子を産んで少しして…私も戦わなきゃいけなくなって、鈍った体に鞭打ったんだけど……結果はね」
普段から明るく快活な牡丹だが、この時ばかりは後悔を滲ませる。戦って死んだ事を後悔しているのか、その後の子供の事を案じているのか。
「…名前もつけてあげられなかったんだ…。光輪疾風漆黒、までは考えたんだけど」
……こいつ、くたばってよかったのかもしれない。時代にそぐわないトンデモキラキラネームをつけられたかもしれない子供を想うと、涙が溢れそうになる。
「まぁとにかく! 話が逸れたけど、皆の無念は解消されて成仏して、その置き土産として雪華の力が強くなったって事ね。…確かに、これは凄いね。力の強さだけなら、霊山君並みじゃない?」
「流石にそれはないと思いますが……正直な話、私も力の大小が今一つ掴めず難儀しています。普通に結界を張るだけでも、今までよりも数段強力な物が出来上がり、そして自分の体にかかる負担は全くありません」
現状の結界の強さで充分なら、命を削って結界を張る必要が無くなった訳か。それはめでたい事だな。
と言うか、霊山君ってどれくらいの力があるんだろうか。組織の象徴、トップとしての役割なのか、それとも巫女を含めたモノノフ達の長として相応の力があるのか。
…同じように力の継承を行えるなら、後世の巫女の負担も小さくなっていきそうだが…流石にそれは難しいか。
「そうですね。今回は、巫女様方の怨念と、それを解消する方法があったからこその結果です。例えば私から明日奈さんに霊力を譲渡しても、出来るのは一時的かつ効率の悪い強化のみになります」
「そうすると………木綿季や本願寺顕如様を、結界石の彫像に留めておく理由はあります? 別に邪魔と言っているのではなくて、別の事に力を貸してもらえれば…」
「木綿季はともかく、本願寺顕如様はあの結界石に留まってほしいな。こいつがやらかして作り出した、異界に通じると思われる穴の調査・監視も必要だ」
フヒヒ、サーセンw
まぁ、あそこは調査しないとなぁ…。あと、ちょくちょく現れるらしい謎の塔も。
「おう、その塔ならまた目撃報告があったぞ。吹雪が止む頃、里に近い場所に出現していたらしい。また消えたようだが」
「調査と言えば……さっきの話にあった、天然の結界石の洞窟も気になるね。里に近い場所にあるらしいけど、そんな物があったなんて聞いた事もないよ」
「…前お頭が、何かやらかした時の為の脱出路として作っていたとか?」
「有り得る…。でもそうなると、どこまで続いてるんだろう」
反響からすると、奥はえらく深くて複雑だぞ。一町(約110メートル)や二町じゃ済まないかもしれん。
入口付近しか見てないから、確かな事は言えないが…。
「…城や前お頭も気になりますが、これは最重要調査事項ですね。結界石の洞窟だからいいものの、もし鬼が通れるような洞窟が里の近くにあったとしたら…」
忍び込まれる、か。結界石だって、いつまでも効力を保っている訳じゃない。場合によっては潰さなきゃいかんかもな。
「明日奈の懸念も分かるんだけど、私はむしろ逆の事を考えてるよ」
「逆?」
「…もし、その洞窟が本当に深く長い…異界を超えて行けるんじゃないかと思ってね。出口は掘らなきゃいけないかもしれないけど」
…! 確かに…。
でも、山一つ分超えられたとして…出た先が異界かどうかは分からないなぁ。
「地理的に考えれば、山一つ越えれば近くに別の里があるんだけど……そこが残されてるかは分からないね。異界に沈んでるかもしれないし、鬼に滅ぼされたかもしれない。まだ残って抵抗しているかもしれない」
ふむ…毎度毎度のこととはいえ、重要な調査対象が次々に増えるものだ。しかも結論は出ない奴が。
全く手が足りない…いい加減にしてくれないもんかねぇ。
「…うん?」
ん?
「…言っておくが、この件に関してはお前達の手を借りるつもりはないぞ」
…あん? どういう意味だい、寒雷の旦那。
「単純な話だ。お前達の立場は何だ? 練武戦での成績で仮初に着けた役職とは言え、異界浄化を専門とする部隊だぞ。他の事は俺達でやるから、お前らはそっちに集中しろって事だ」
「ま、単純に考えても、今の里の最大戦力を投入する必要なんかないからね。塔に関しては有害無害も分からない上に、何処に出現するか予測もできない。洞窟は天然の結界石でできてるみたいだから、鬼が簡単に入ってこれるような場所じゃない。鬼の世界に通じているかもしれない穴は…現状じゃ何も現れないしねぇ。そもそも調べるなら、もっと余裕と言うか備蓄を持って、専門家を連れて行って調べるものだよ。そういうの、出来る?」
自慢じゃないが、予測とか妄想は出来ても検証なんぞ出来ん!
「難しい事は苦手極まりないです」
「…この二人と同列に扱われるのは少々心外ですけど、流石に専門的な事は…」
…しかし、確かにそう言われればその通り。絶対に俺が関わらないといけないなんて理由はない。
成果が出るかも分からない、危険があるかすら定かでない調査に関わるより、現状で最も大きな問題である異界を片付けろ…と言うのは理に叶った話だ。
しかし、そうなると誰が担当するんだ?
「…泥高丸が第一候補だ。しかし、奴も奴で里の守りの要だしな…」
「今の私なら、ちょっとやそっとでは鬼に破れない結界を張れますが」
「雪華、その認識は危ないよ。神垣の巫女の先達として言うけど、結界っていうのは強力なだけじゃなく、精密でないといけないよ。結界の強度にだけ目を取られていると、強力だけど小さな穴が沢山開いた結界が出来る。鬼って言うのは、そういう隙間から入り込むのが大得意なんだから」
むぅ、と不満げに呻く雪華。しかし浮かれている自覚はあったらしい。…色んな意味で浮かれている自覚がね。
泥高丸は、基本的に里近辺の警護とすると……他に候補は…。
「あ、兼一君はどうかな。鍛えてるんでしょ」
白浜君? …正直に言えば、無茶言うな…としか言えんな。即席で効果が出るように鍛えてるとは言え、まだ一か月も経ってないんだぞ。
…いやしかし、確かに実戦の空気を感じさせておくべき段階には差し掛かってるが…。
「好都合じゃない。洞窟の調査に参加させようよ。主力として使うんじゃなくて、あくまで経験を積ませる為に。場所は結界石の洞窟だよ。下手な場所よりずっと安全だし、鬼からの奇襲の予兆があれば分かりやすい。いい経験になるんじゃないかな」
「…牡丹様、実戦経験と言うか、肝試しみたいな感じで考えてません?」
「ん、まぁ否定はしない。でもあの子はいざとなったら肝が据わるけど、それまでは泣き喚いて悲鳴を上げながら頑張る子だからねー。早い内に慣れさせておいた方がいいと思うよ」
理由になっているようないないような。まぁ、確かに一気に奥まで踏み込むような真似をしなければ、危険はそうそう無いだろう。
体を鍛えるのと並行して、野営の技術とかも仕込んでるからな。洞窟の中で迷っても、一週間くらいは生き延びられる。
「それ、何気に凄いと思うんですけど…。と言うかいつの間にそんな技術を伝えてたんです?」
ハンター式の訓練方法だから、肉体鍛錬のやり方の中に知識伝授も含まれてんだよ。鍛えてる間に自然と覚えるって言うか。
…あ、そういやもう一つ問題があったな。白浜君、まだミタマを宿してないんだよな…。
「あ、それなら大丈夫。私が宿るから」
は?
「「「「「『はぁっ!?』」」」」」
今まで黙っていた木綿季も含めて、思わず声が出た。
「え、ちょ、ちょっと牡丹様!? 里長!? 何でいきなりそんな話に!?」
「だって、見ていて危なっかしいって言うかさー。大体、私だってミタマだよ? モノノフに宿れば戦えるんだよ? それがこうして祭祀堂に引っ込んでるって、どうなのかな」
ミタマである以前に、あんた里を纏める長だろうが。本当に白浜君に宿って、万一それで鬼に殺されでもしたらそのまま腹の中だ。そうなったら、誰が里を纏めるんだよ。
「寒雷。今後、霊山や他の里と接触できる可能性は高くなるんだから、ミタマが里長やるよりも、生きてる人間の方が話が早いでしょ」
「それは……そうかもしれんが…何もそこまで相手に合わせる必要も…」
「駄目駄目。こっちは長く孤立して、外の状況なんて全然分かってないんだから。少しでも話がうまく進むよう、手を尽くしておかないと」
むぅ……まぁ、それは…そうだが…。俺だって、最初はミタマが里長と聞いて戸惑ったからな。
それで偏見を持ったつもりもないが、組織のお偉いさんが相手だと一悶着ありそうだな。
「牡丹も、里長って意味じゃ組織のお偉いさんなんだが……と言うか、俺にこれ以上権力を集中させるのはまずいんじゃないか。今でさえ、里の流通や物資を一手に引き受けている状態だぞ」
「そもそも、白浜さん自身はどうなんでしょう? ミタマを宿していないのは知っていますが、牡丹さんで了承するんでしょうか?」
「立場を無視して考えれば、特に問題はないと思うけど…」
「と言うより、あの子が危なっかしいから私がちゃんと見ていようって事だよ。こう言っちゃなんだけど、あの子の才能の無さ筋金入りだよ。徹底を通り越して生まれ変わらせる勢いで鍛えて、ようやく…ってところだもの。あなたはこれから兼一君を鍛える時間だって減るだろうし、だったらお目付け役が必要なんじゃない」
それを言われると、反論できんな…。鍛え方こそ教えてはいるが、思った以上に中途半端と言うか放置状態になっているのは申し訳なく感じている。
うーん……分かった。
俺は条件付きで賛成。
「おいおい…本気か?」
…一応。俺達より戦略的に頭が回る牡丹がこうまで言ってるんだから、少なくとも目に見えた破綻の予兆は無いんだろう。
実際、白浜君を鍛えるにしても、経験を積ませる必要はあるし、それ以上に補助と言うかお目付け役が必要だと思ってたし。
条件…立場の問題さえどうにかなれば、むしろいい噛み合い度合いだと思うぞ。
牡丹は戦いの経験もかなり豊富のようだから、助言役には丁度いい。
で、肝心の条件だけど…次の里長を見つける事だ。
寒雷の旦那以外にな。実際、寒雷の旦那にこれ以上権力…よりも、役割を集中させるのはちと不味い。権力云々よりも、手に余るだろう。
「そうだそうだ。いくら俺でも、限度って物がある」
「…普段から余裕そうな顔しておいて、よく言うわ…」
「うるせぇ。里の連中から不満が出ないように物資を差配して、いざと言う時の貯蓄まで作ってんだぞ。簡単な訳がないだろうが」
そらそうだな。
次のお頭じゃなければ、何だったら前お頭でもいい。確定した情報じゃないが、例の消える塔の中に居るんじゃないかって話はしただろう。
とにかく代わりの纏め役を作れって事だ。
「あの、それって凄く難しい事では…。今の里で、誰が牡丹様の代わりを務められると?」
「雪華…は無理よね。慕われてるとかはともかく、神垣の巫女だもの」
「ミタマが里長になったのだから、巫女がなっても不思議はないと思いますが…」
「いえ無理です。私が里の方針を決定するとか普通に無理です。備蓄の量とか、それを何にどれくらい使うとか、そんな事全然分からないんですよ!?」
雪華は単純に不向き、と…。俺も無理だな。一応組織の長やってた事もあるけど、上手く回ってたのは俺の力じゃない。方針だけを決めるにしても、立ち去る予定の俺に任せるのは論外だ。
…いっそ、白浜君に…。
「それ駄目じゃん。足りない物があるどころか、足りてる物があると何故思えるってくらいじゃない。そもそも、私が宿ってるのに里長やってたら、結局意味ないわ」
だよなー。んじゃ木綿季…。
「里を滅ぼす気ですか?」
「寝てます。『ぼく難しいこと分かんない』って言って、さっきから寝息が頭の中で響いてます」
明日奈は木綿季につられたのか、ちょっと眠そうだった。
まぁ、流石に木綿季はねーよな我ながら。
「うーん……私は…正直、納得できません。里長は牡丹様で、わざわざ白浜さんに宿って戦う必要はないと思います」
「私も同感だけど、そもそも私達に決議権はないし…」
明日奈と神夜は、立場的には一般モノノフで、この話には偶然居合わせただけからな…。俺も本来はそうなんだけど。
「話が逸れたな。牡丹が戦うのを認めるかは、俺と二人でしっかり話し合う。お前達はこれまで通り、異界浄化に専念してくれ。塔の探索は偵察部隊、洞窟の調査は…こっちで隊員を選別する。異論がある者は? ……特に無いな。それじゃあ、この場は一旦解散だ」
へーい。
何だかんだで(セックスしかしてなかったけど)疲労も蓄積しているし、一度落ち着いた方がいいね。
今回の騒動…神垣の巫女の怨念の事も、どこまで公開するか悩みどころだ。その辺の舵取りをする牡丹と寒雷の旦那がこれまでと言うのだから、素直に従った方がいいだろう。
ゾロゾロと外に出て、それぞれにどうするのか問いかける。
「私は家の掃除です。主に寝具の」
うん、このままじゃ使えないくらいに各種液体が染みついたからね。
「私も家の様子見ね。積雪で何か壊れてるかもしれない。と言うより、まず雪掻きをしないと」
それは俺もだな。と言うより、里全体がえらいことになってるもんなぁ…。雪だるま作って遊んでる場合じゃないよ。
あと木綿季はどうすんの?
「とりあえず結界石に戻そうかと。雪華の負担が軽くなったとは言え、結界を張る協力者がいるに越した事はないし」
「私は結界の調整があります。牡丹様も言っていましたが、力に慢心せず、しっかりとした結界を張らないと。…それまでは、木綿季さんにも助太刀をお願いする事になると思います」
ああ、頑張ってくれ。…さっきの状況を上手く誤魔化した『ご褒美』は、まだ今度な。
「……はい♪」
一人だけずるい、とわーわー騒ぎ始める明日奈と神夜。そんなに虐められたいのかとからかおうとして……慌てて俺は引き返した。
数メートル程度の距離を全力疾走(鬼疾風付き)し、全力で扉を開け放つ。
寒雷の旦那ァ! 牡丹!
「うおっ!? な、なんだいきなり! 扉…と言うか家を壊す気か!」
「あ」
ぼとぼとぼとぼとぼと
…衝撃で屋根から雪が落ちて、思いっきり埋まってしまったが、それはどうでもいい。
旦那と牡丹が、密かにネンゴロな関係になっていてさぁこれから、というシーンだったら面白かったけど、それは無かった。…牡丹、体が無いしねぇ。
なぁ旦那、塔の調査にせよ洞窟の探索にせよ、絶対に絶対に絶対に絶対に! 徹底的に! 破ったらムラハチにするのも辞さないくらいの勢いで!
隊の規則とか作るなら、一番最初に刻み込んでほしい!
「何だよ、そんなに重要な事なのか」
重要だ。これで馬鹿な事をやらかしたモノノフを、俺は何人も知ってる。中には不可抗力的なのもあったけど、これ一つ念頭に置いて行動してくれれば、どれだけ話が楽だったか。
たった一言だけで済む。
絶対に、一人で先走るような真似をしないように!
「…そりゃ確かに重要な事だが……そこまで念を押す事か? 他の里はモノノフ一人で戦う事もあるだろうが、この里では最低3人、4人での戦いが当たり前だぞ。祓円陣を前提に行動してるからな」
念を押す事だ。
半人前扱いされ続ける事に反発したり、身内の仇だってんで自分の手で倒す事に拘ったり、鬼の術にかかってまんまと誘い出されたり、異界奥の活動限界時間が足りない部分に行かなきゃいけないからって自己犠牲前提で突っ込んだり、とにかくモノノフが特攻精神を発揮した例はきりがない。
意気込みと覚悟は大したもんだが、俺に言わせりゃ大抵の場合は愚の骨頂だ。
鬼一匹をモノノフ一人の命と引き換えに倒したとして、差し引きが取れるとでも? そんな訳ないじゃないか。
単純に数で考えても、人間よりも鬼の方がずっと多いんだ。一人のモノノフで100匹の鬼を倒しても、まだ足りない。
「生きて帰ってくるのが最大の勝利」と言うが、戦略的な意味でも同じ事が言える。
自己犠牲を前提に戦っていいのは、それによって得られる対価が自分の命以上に価値があり、それが自分以外には出来ないと証明できる時だけだ。
「そこまで熱く語る理由の方が分からないけど、分かったよ。白浜君だけじゃなくて、他の皆が無茶をしないかも気にしておく」
頼むよ、本当に。もう一人で突っ走った誰かさんを連れ戻すとか、面倒な事は無しにしたいんだ。
…ん、牡丹、どうした?
「ちょっとこっち来て。…あのさ、白浜君を鍛えるついでに、色々教えてあげてくれない? その…沢山の巫女達を満足させた術を」
……お前、それ……野郎にそんなもの教え込めと言われても。そもそも、これって体質的な問題で、普通の人には出来ないらしいんだが。
「別に全部教え込めって事じゃないよ。簡単な事でいいからさ。あの子も里では珍しく、『お相手』が居ないから」
そうなのか? 今後、誰かと出会った時の為に…って事か。その程度なら………ロミオの二の舞にならない程度に(←ここ重要)教えるのも吝かではないが。
しかし、随分気に掛けるなぁ。
ひょっとして、血が繋がってるかもしれないって…。
「いやいや違うよ! 孫かもしれない相手と交わろうなんて思わないって……ぁ」
………うん? 交わる…?
孫かもしれない相手? ……いや、それは否定の根拠だから、孫…血筋の者ではないというのは確定。
……さっきの要求は、普通の房中術じゃなく、『沢山の巫女達を満足させた術』を教えろって事だったよな。
お前…まさか……?
「…無理強いするつもりはないけど、まぁ、機会があればもう一回くらいは…白浜君は、個人的に好感度高いし。上手く相手が見つかって、その相手が了承してくれたら……」
……この里、肉食系が多いなぁ本当に。
多少の事は教えてもいいから、もう好きにしてくれ…色事に関して、他人を非難できるような人間ではない以上、俺からはもう何も言えない…。