※この作品はR-18です。

狩りゲー世界転生輪   作:時守 暦

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キングダムハーツでアサシンクリード中。
いや広い広い。流石にアサクリには及ばないけど、お手軽かつ広大さがいい感じにチャンポンされてるね。

それはそれとして、某所からディスコードなる物に誘われました。
知らなかったので何ぞや? と思いつつインストールしてみましたが、要するに身内間での2chみたいなものでしょうか?
発現の機会は至極少ないと思いますが、色々参考になりそうなので参加させていただきたいと存じます。

が、一度はインストール・起動・ログインまで出来たのに、何故か電源を切って翌日以降は起動できず。
ブラウザから入れるようですが、なんかこれも挙動がおかしい。
お誘いいただいたのに申し訳ありませんが、暫く参加できそうにありません…申し訳ない。


ソリの合わない店長が休暇に入り、暫く顔を合わせないでいい日になりそう…と思っていたら、早々に連絡する羽目に。
どうにも反感が募る人だけど、休暇中でも連絡受けて対応する責任感とか、強引ながらも対クレーム能力とかは認めざるを得ない…。
一番惨めなのはそれに縋らなきゃならない自分で、折角の休暇に仕事の話を持って行ったのは本気で申し訳ないと思いました。


第422話

魔禍月 参拾参日

 

 

 

 はてさて、どこから記したものか。

 結論から言えば、指揮官級の鬼が唐突に登場しやがった。その鬼の名はアデダキニ。先のオオマガトキでとんでもない大暴れをして、この里では千人殺しなんて呼ばれている鬼だ。その割には、他所で名前を聞いた事はないんだが…。

 人間の女の顔に、巨大なサソリのような体。鬼の中でも強い方に分類されるであろう腕力、リーチ、タフネス。

 強い鬼だったのは間違いないだろう。

 

 

 バラバラに引き裂いてやったけどな。……引き裂いてしまった、の方が正しいか? ふと正気に戻ると、えらい惨状になっていた。

 その時のやらかしのお陰で、今の俺は危険人物として(すっごい今更だけど)牢の中に入れられています。牢と言っても、適当な小屋に閂とかをかけられているだけだが。その気になれば、誰だって力で穴を空けて抜け出せてしまうような小屋だ。

 立場的には、里に侵入した鬼を見破って撃退した功労者なんだが………まぁ、それでも無理はないか。

 

 

 

 …話が逸れた。この鬼について厄介だったのは、人の心理を利用するのに長けていたところだ。

 人間と鬼との価値観の違い故か、謀略等に関してはあまり得意ではないようだったが、人の姿に化けるような力と、どういう理屈なのか人の心を覗き込むような能力を持っているようだった。

 

 この鬼は、峡谷に戦力を配置して俺達の注意を惹き、その入れ替わりに里にやってきた。大胆な事に里人の姿に化け、正面から堂々と乗り込んだようだ。

 おそらく、次々に姿を変えて、特定できなくしていたんだろう。その証拠として、里人達の幾つかの発言がある。

 曰く、死んだ筈のお爺ちゃんが妙に素早く歩いているのが見えた。

 曰く、さっき任務で出かけていったモノノフが、何故か里を歩いていた。

 曰く、幼子が一足飛びに垣根を飛び越えていたのを見た。

 

 皆、何かおかしいと思って追いかけたりもしたが、見失ってしまって「目の錯覚か?」で済ませてしまったらしい。他にも似たような事が起きていると知っていれば、もっと考えただろうけども。

 俺達も、戻って来た時には特に何か起こっているとは思わなかった。

 

 寒雷の旦那に峡谷の調査度合いを報告し、その日は雪華に夜這いをかける予定だったので神夜と明日奈は解散。

 俺は雪華が悦びそうな物を土産にしようと、縄とか首輪とかムチとか準備するつもりだった。

 甘味も用意しようかと思ったんだが、そっちは風華がアピールしようと頑張っている。邪魔をするのもよろしくないだろう。…そもそも、風華が俺に売るのを嫌がるような気もするし。

 

 そんな事を考えつつ、夜這いの時間になるまで昼寝しようと家に向かった。

 

 

 …のだが、その時に奇妙な物を見た。輝くような笑顔の風華が、何やら器を持って走っている。ああ、新しい甘味が完成したんだな。さて、それで雪華にどれだけアピールできるか。…色ボケしたとはいえ、雪華は別に風華を蔑ろにしている訳じゃないんだけどなぁ。

 ………そして前方を歩いている雪華に声をかけて…俺はそこで違和感を持った。

 

 何でこの時間に雪華が、一人で外を出歩いてんの? 巫女としても職務中だし、護衛だって一人も居ない。先日の色欲巫女大暴走の件で、警備体制の見直しをしようって話が出たばっかりだ。

 

 

 

 と言うか、後ろ姿で分かりにくかったけど………あの姿は、雪華じゃなくて氷華じゃないか?

 俺が何かする前に、風華は雪華に…氷華?に甘味を差し出して(椅子も無い所で食えというのもどうかと思うが)、何か興奮したように捲し立てていたら。

 

 

 甘味が地面に叩きつけられた。

 

 

 

 うん、確信。こいつ雪華でも氷華でもないわ。氷華は自他に厳しい女だったらしいが、ならば猶更食い物を粗末にするような真似をする筈がない。仮にも一度は抱いた女だし、こんな事をする性格じゃないのはよーくわかっている。…結構甘えたがりだったしね。

 力作甘味を無残に捨てられた風華は、完全にフリーズしていた。フリーズって言うか絶望か。人間、本気で絶望すると表情すら変わらなくなるんだな。

 そのまま放っておくと、完全に精神崩壊しそうな気がしたし、何よりこの偽物を放置して見失ってしまっては堪らない。

 

 

 おい、そこの。

 

 

 強めの語句で呼びかけて、今度は何だと冷たい視線で振り返った偽物に。

 

 

 

 食え。

 

 

 

 

 先日の採取で見つけた、マジヤヴァイ植物を突っ込みました。

 そして鬼が正体を現した。

 

 

 …何も省略とかはしてないよ。文字通りだよ。食わせた植物の効果で、鬼が錯乱して暴れ始めただけだから。

 おかしな泣き声を出してたなぁ。ウニョラー! トッピロッキー!! キロキロー!! ムオワイデリュシニュムニャアー!!!って。

 

 ……もう少し、里の外に誘導してからにするべきだったと思う。甘味を捨てるという行為にムカッと来て、ついつい衝動的に…。

 

 

 いやぁ、大騒ぎ大騒ぎ。無理もないけどなー。結界で守られている筈の里の中に鬼が入って来て、そいつは千人殺しのアデダキニと来たもんだ。

 オオマガトキで戦ってこいつの脅威を知ってるモノノフ達が、半狂乱になった。

 

 俺? 俺はまぁ、別の意味で半狂乱と言うか……偽物だって分かっていながら、迂闊な真似をしちゃったからな。

 放置しておくのは論外だったにしても、風華が間近に居るこの状況で、鬼の正体を暴いて、狂乱させちまった訳で。

 

 もしこのまま風華に万が一の事があったら。或いは鬼の攪乱もとい錯乱で、里に被害が出たら。どんな責任追及を受けるやら。

 そんな保身に基づいた考えで、必死こいて暴れるアデダキニの腕やら尻尾やらを叩き落し、里の外に追いやろうとしていました。……外に連れ出してから、青唐辛子(アラハビカ産)を食わせるべきだったよなぁ…。

 

 フリーズしていた風華を、駆けつけてきた師範代に任せてアデダキニを里の外へ誘導する。

 さっさと斬ってしまえばいい、と思うかもしれないが、それは危険だ。死んだ鬼の体は、瘴気と化して分解される。鬼祓を行う事で瘴気となるのを防ぐ事はできるが、それでも少量はばら撒かれるのだ。里のド真ん中、しかもイマイチ正体が不明な超界石の傍で、瘴気をばら蒔くのは避けたい。何が起こるか分からない。

 だから、わざわざ里の外に押し出そうとしていたのだ。

 

 それはアデダキニも察していたのか、俺を攻撃しようとするよりも、家屋とか資材とかに狙いを定める事が多かった。中に人が居る事もあったし、どうしてもそっちを防ぐのに行動を割かざるを得ない。

 面倒なと怒るべきか、頭の回る鬼だと褒めるべきか、あるいはこの程度の策で手間取ってしまう俺の腑抜け具合を蔑むべきか…。

 

 

 途中で合流してきた、泥高丸、明日奈、神夜を初めとした手練のモノノフの協力もあり、いい感じに結界の外側近くまで押し返す事が出来た。

 こっちにも負傷者は数人出たが、アデダキニは包囲され、そう簡単に逃げられる状態ではなくなった。こいつの変身能力を考えると、範囲攻撃で雪を巻き上げて視界を奪い、小さな姿に化けて逃げ出す…なんて事も出来そうなので、油断はできない。それ以前に、千人殺しを相手に油断なんぞ出来るかってモノノフが殆どだったが。

 

 

 

 

 

 そして、そこから事態は俺の予想外の方向に動いた。

 

 

 

 アデダキニは、俺が予想したように小さくなって逃げ出すのではなく、大きくなって…或いは攻撃しにくい姿になって、逆に俺達を叩き潰してやろうと思ったらしい。

 包囲網の真ん中で、見る見る姿を変えていった。

 

 出来の悪いSF映画の変身シーンのように、腕が変わり尻尾が触手になり女の顔が単眼の鬼の顔に。二本の角、顎の下に伸びた角だがトゲだかよく分からん突起、上半身に比べて妙に小さい足。

 

 

 

 

 く     れ

               い

 

    さ   

 

                 づ

                    ち

 

 

 

 

 

 

 

 

 気が付けば、イヅチの姿をしたアデダキニは膾に刻まれ磨り潰され叩き潰され、鬼っていうかもう塵の山みたいになっていた。

 そこにはクレーターと、えらく深い亀裂が入っていた。後から聞いた話だが、突如現れた鬼がとんでもない衝撃を伴った攻撃で、返信した奴を粉微塵にしてしまったらしい。

 

 

 

 

 

 ていうか俺だ。アラガミモードの。

 

 

 

 うーむ、なんか全身痛むなぁと思ってたが、久方ぶりに鬼杭千切を繰り出していたか。更にその後、溜め切りだかチャージクラッシュだか何だかよく分からない追撃も行ったらしい。トドメに狩技・オラクル・タマフリを総動員したフルファイア。

 アデダキニの死骸を尚切り刻み、磨り潰し、滅却させて…人間の姿に戻った辺りで、ようやく我に返った。

 

 

 

 …何人に、どんな姿を見られたのかは分からない。周囲には土煙と言うか雪煙が立ち上っていて、閃光と振動にやられたモノノフ達もひっくり返っていた。

 だが、少なくとも俺が変身して飛び掛かっていく瞬間は……あー、どうだろ。アクセラレートとか使ってれば、3倍の速さで動く事は出来るし、ひょっとしたら見られても認識されてないかも?

 いやいや、それは希望的観測というものだ。

 

 現に、俺は牢に入れられてるじゃないか。実際には小屋だけど。里に被害を出した為、と言われちゃいるが、実際はな…。

 …俺は鬼の回し者と思われてるんだろうか。実際そう思われても仕方ない姿だったし、恐れられるくらいの力を衝動的に奮ってしまったが…。

 

 

 

 

「おい、今の怒気は一体なんだ? ただでさえ微妙な立場になってるんだから、妙な事を考えるなよ」

 

「……ちびるかと思った…ていうか、怒っただけで小屋が壊れかけるって何ですか…」

 

 

 あん? …おお、泥高丸と白浜君。

 悪い悪い、ついあのクサレ……………………………………

 

 

「怒気を漏らすな。変身するな。全く、何なんだその姿は。…おい白浜、起きろ。話を聞かなきゃならないって、神夜や明日奈を差し置いてまで来たのはお前だろうが。泡を吹くのはいいが、漏らすなよ」

 

「…………(パクパク)」

 

「やれやれ、意識を保って漏らさないだけでも、大した度胸だ。随分鍛えこんだらしいな」

 

 

 最初に叩き込むのは、恐怖で縛られた体を、もっと強い恐怖で無理矢理動かす事だぞ。

 …っと、人間状態に戻って。

 

 えーと、何がどうなってんだっけ? アレの姿を目にしてから、頭から色々すっ飛んでな。消し飛ばした時に色々やらかした事は分かるんだけど、その後速攻で小屋に放り込まれたし、状況が分からんのよ。

 聞いてみると心底呆れたと言わんばかりの表情を向けられた。

 

 

「呑気な奴だな、お前は…。咄嗟にお前の姿を隠した俺の機転に感謝しろよ。…実のところ、俺だってお前の正体に戸惑ってるんだ。これまでの実績を鑑みれば鬼の回し者ではないとは思うが、ならば何だと言われると言葉に詰まる」

 

「師匠…。師匠は、鬼なんですか…?」

 

 

 無理に立ち上がるな白浜君よ。

 鬼か、と言われてもな…実のところ、俺にもよう分からんのだ。

 

 そんな顔をするな、誤魔化してる訳じゃない。産まれが色々複雑でな。

 最初は人間だと思ってた。鍛えまくって「え、人間?」と言われるような人種になって、その後合意の上で体を改造されて(陰謀で暗殺されたけど)、モノノフの戦い方を学んで、いつの間にやら変身できるようになっていて、実は生れからして母親の腹から産まれたのではない事を知って、更に物質を取り込んで鬼を作り出す触媒を体に取り込んでしまって、何か知らんけど同じように取り込めるようになったから、鬼の手を具現化する為に重要な素材を取り込んで。

 

 

「それはひょっとして冗句で言ってるのか?」

 

「ちょっと何言ってるか分からないですね」

 

 

 至って真面目だ。まぁ理解されるとは全く思っていないし、俺も全く理解してないが。

 真面目な話をすると鬼ではないよ。世の中には呪いで人から鬼の姿に変えられた奴も居るが、そいつも結局は人間だった。…色々とやさぐれて、人間じゃなくなってもいいなんて事を言い出してたけども。

 あの姿は……とある地域で、アラガミと呼ばれている種族の姿だ。

 

 

「荒神? …師匠は自分が荒ぶる神、荒魂だと言いたいんですか?」

 

 

 まさか。奉られるような存在じゃねーよ。

 確かにあの土地のあの種族は、そう言われてもおかしくない事をやってたがね。(何せ、世界を丸ごと食い尽くした訳だし)

 そいつらだって、珍しい性質を持っているだけの生物でしかなかった。

 

 

「……まぁ、敵でないなら俺は何も言わん。だが他の連中がどう見るかは知らんぞ。特にあの二人は」

 

「…あの姿になる事、知っているんですか?」

 

 

 いや、里では誰にも言ってない。

 …今、生きている人で知ってる人は誰も居ない。

 

 

「……そう、ですか…。しかし、それは話しておくべきです。経緯や理由はどうあれ、あの変身を目にすれば、きっと大きな衝撃を受けます。黙っているより、信頼の証として自ら打ち明けるべきです」

 

 

 妙なところでグイグイ来るね、白浜君。まぁ、言ってる事は分かるけどな…もう手遅れだって事を除けば。見られたからなぁ。

 

 

「そもそも、何でお前はあんなに激怒してたんだ? アデダキニは確かに強力だったが、あのまま戦っていれば充分倒せただろう。俺とお前だけでも、ほぼ勝ちは確定していたくらいだ。わざわざあの姿を晒す理由がない」

 

 

 ……アデダキニは、人の心を読んで、その中にある誰か、或いは何かに姿を変える能力があるらしい。ここまでは分かるな?

 

 

「ああ。思えば、かつてのオオマガトキでの戦いの中、結界石が汚され砕かれていったのも、奴の仕業だったんだろう。人の姿に化けて潜り込み、内側から工作する。………ひょっとしたら、練の…」

 

 

 練の姉御に起きた事は知ってるよ。有り得る話だ。

 どんな手段か知らんが、結界を擦り抜けて入ってこれたなら、術なんて仕掛け放題だろうさ。

 そっちについては…色々思う所があるが、徹底的に消し飛ばしたから報復はできたと思っておこう。

 

 …話が逸れたが、アデダキニが変身しようとした鬼は、ドグサレ……もとい、イヅチカナタって鬼で、俺はそいつを追いかけてる。

 率直に言って、顔見ただけで俺の怒りが有頂天になるくらい憎い。

 奴本体が相手なら、そのまま消し飛ばす訳にはいかん理由があるんだが……偽物だったら止める理由も無いし、つい衝動のままに…。

 

 

「意外って訳でもないですけど、師匠って結構衝動的ですよね…一体何をされたんです…」

 

 

 据え膳があれば、即手を出すくらいにはな。

 何をされたって……ループの事は黙っておくとして……大事な人との記憶を奪われたり、そいつ本人を喰いやがったり、あとなんか脈絡もなくとんでもない災厄(具体的にはラヴィエンテ)を連れてきやがったり。 

 あんまり思い出させるな。また怒りのあまりに変身して暴れ出したくなる。

 

 

「白浜、首を突っ込むのはその辺にしておけ。大人しくしているように見えて、こいつ相当苛立ってるぞ。この分だと、下手に突くと話に聞いた『そこに居るだけで草木が死を選ぶような殺気』に目覚めかねん」

 

 

 …殺意の波動は勘弁してほしいなぁ。純粋な狩りが出来なくなってしまいそうだ。

 で、結局何の用だったんだ? あの姿が何なのか、聞きに来ただけか?

 

 

「大体そんなところだ。お前自身はそれなりに信用されているし、あの姿を曝したとは言え、明確に目撃できた者は少ない。とんでもない速度と余波だったからな。一応、あの鬼が真の力を発揮して暴れ出そうとしていたから、先手を打って止めた…と言う事にしてある。やり過ぎてしまった罰として隔離って事になったが」

 

「泥高丸さんが証言してくれたんです。確かに、傍目にも巨大化して、強くなっていそうな雰囲気でしたし」

 

 

 成程。礼を言っておくべきだな。ありがとう。

 

 

「ま、この前の男女の秘儀を教わった借りを返したって事にしといてくれ。あの姿を明確に見たのは、俺と、俺の直属の部下数人程度だ。お前の女二人に関しては、一瞬見えた程度だろう」

 

「牡丹様も僕も、一瞬だけなら見えました。変身の瞬間を、偶然目にしていたので…後は、寒雷さんにも報告しています」

 

 

 まぁ、牡丹に見られたなら、寒雷の旦那にも伝わるわな。里の纏め役二人だし、伝えない方が問題になる。

 で、どうする? 追放でもするのか。

 

 

「馬鹿を言え。俺達はお前を、それなり以上に信用も信頼もしていると言ったろう。大体お前を追放して、何の意味があるんだ。現状、異界を浄化できるのはまだお前だけなんだぞ。お前が居なくなったら、ようやく見えた希望が無くなっちまう。異物を排除できるかもしれんが、里の近辺から離れる事はできんだろう。素直に異界に入って行き、戻ってこない…なんて玉じゃないだろうが。どの道近くに居させるしかないなら、里の一員として扱って、援護も協力もする方が余程いい」

 

「一応、追放するべきでは?って意見も出たんですよ。まぁ、全く考慮されませんでしたし、言った寒雷さんも立場上言わざるを得なかったって感じでしたが」

 

「まぁ、あの人は里のご意見番みたいなものだからな…。無条件に信頼するのは危険、くらいには思ってなければならんだろうよ。尤も、さっきのお前を追放しても意味がない理由は、その寒雷さんから解説されたものだけどな」

 

 

 と言うか、その会議って誰が参加してたんだ?

 

 

「寒雷さん、目撃者の俺と部下一人、牡丹様とついでに白浜、雪華様」

 

「ついで…いえ確かに、本来なら出席できるような立場ではないんですが」

 

「結論から言えば、基本的にはこれまで通りだ。ただ何人かから疑いの目が向けられるのは覚悟しておけ。それと…これはそもそも通達していなかった事らしいが、霊山や他の里に接触を取れた場合のお前の立場が問題になった」

 

 

 ? どういう事だ?

 

 

「元々な、寒雷さんはお前を遣いの一人にしようと思っていたらしいんだ。外の状況の事は俺達よりも詳しいし、腕も確かだ。強さは武に生きるモノノフにとって、時に何よりも明確な身の証になる。里に住んで一か月以上経つし、明日奈や神夜の婚約者とでも言っておけば充分に里人と言えるからな。ついでに言えば、お前を里に引き留める一助になれば…とも考えていたんだろう」

 

 

 …俺が使者扱いって事か。そりゃ笑えない冗談だね。何やらかすか分かったもんじゃない。下手すると行った先の里と全面戦争なんて事になりかねないぞ。

 

 

「そこまで言いますか…。代わりに、僕が使者となる事になりました」

 

 

 白浜君が? …言っちゃなんだけど、俺以上に不適格じゃないか?

 誠実ではあるけど、人の神経を逆撫でするところがあるし、難しい事は苦手だし、機転を利かせるのも特異とは言い難い…。

 

 

「…分かってますよ。あと、まだ弱いですしね。どっちかと言うと、牡丹様が主です」

 

 

 牡丹が? 里長が使者として出向くってどうなの。重要人物を向かわせる事で、誠意を示すのは分かるけど。

 それに、前に相談していた時には、新しい里長候補が居ない限り……いや、あくまで意見の一つでしかなかったけども。

 

 

「…前里長が見つかったんです」

 

 

 

 

 

 

 何?

 

 

「例の、消える塔の所でな。その城自体、予想外な所で見かけたんだが。とは言え、まだ前里長が戻って来た訳ではない。異常が起きている事は伝えられたから、戻ってくるとは思う………が、あの人だと逆に奥に行きそうで怖いな」

 

 

 言ってる意味がよく分からんのだだ。

 

 詳しく聞いてみると、塔が発見されたのは結界石の洞窟の中。白浜君達が探索している、あの洞窟だ。

 奥へと進んでみると、何故か壁に道を阻まれた。イメージ的には、埋まっている遺跡を発見したような状態だろうか? こいつは一体何だ、何でこんな所に建築物が埋まっていると騒いでいると、壁の窓からひょっっこり人が顔を覗かせた。

 正にそれが前お頭だった訳だ。

 

 誰だと問う前里長に里の者だと返したが、信じられなかった。そりゃそうだ、前里長が行方不明になって既に5年以上経っている事を、前里長は自覚してない。

 唯一、姿形が変わらなかった牡丹の証言で信じてくれた。その塔の中に居ると浦島太郎状態になるから戻ってこい…と伝えた所で、また塔が幻のように消えたのだそうだ。

 

 またややこしい話になってるなぁ…。というか、地底にまで塔が出現するって凄いな。完全に物理法則を無視しとる。まぁ、それは鬼……に限らず、三つの世界で全く珍しい事じゃないけども。具体的にはアタリハンテイ力学とか。

 しかし、信じるかどうかはともかくとして、里、或いは自分に異変が起こっているのは伝えられた訳だ。それなら、流石に戻ってくるんじゃないか? 仮にも里長な訳だし。

 

 

「普通ならそうなんだが……あの人だからなぁ。好機は逃がせんと、欲に目が眩んだまま突っ走る可能性が否めない。或いは、保身のために大きな成果を上げないといかん、なんて言い出すかも…」

 

「何年も里を留守にして、実際に牡丹様が上手く治めてた訳ですからね。今更戻っても、前と同じ地位に居られないと思うのは当然でしょう。…頼りになる人なんですけどねぇ」

 

 

 頼りになるって言うか、評判を聞くと頼り『には』なる人って感じだな。

 そもそも、どうやって帰ってこれるのかって問題もある。予測されている通り、城が出現している間しか行動できないなら、奥を目指すにしろ一度引き返すにしろ、すぐに実行する事はできないだろう。

 

 

「そうだな。いずれにせよ、今はそれぞれに割り当てられた作業を進めるしかない。白浜と牡丹様は洞窟の調査、お前は異界の浄化、俺は里の警護と…お前が開けたオオマガトキ未遂の穴の調査」

 

 

 その節は誠に済みませんでした。

 しかし、異界の浄化か…結界石の石像、まだ見つかってないんだよな。

 霊山に通じる道に繋がってるって峡谷は超えたが、そこには配置された鬼しか居なかった。恐らく、アデダキニが俺達の注意を里から離す為に、さも『ここに何かあるぞ』と言わんばかりに囮として置いたんだろう。

 

 外に通じる道は何とか開拓できたが、異界の浄化が出来てないんじゃ片手落ちだ。瘴気無効装備を持っている人間だけが通れても、意味はない。

 とは言え、本当にどうしたものか…。それらしい場所は、殆ど探したと思うんだがなぁ。せめて目印か、手がかりでもあれば…。

 

 

「結界石の像、か…。オオマガトキ前に、結界石が置かれていた場所の地図があった筈だが」

 

 

 それならもう見た。その場所には無かったよ。

 

 

「凄く今更な事なんですけど、そもそも異界浄化に使われる結界石の像は、以前からあった像と本当に同じ物なんでしょうか? 明らかに形が違う訳ですし」

 

 

 それは………うん?

 

 

 白浜君、今のもう一回。

 

 

「はい? ええと………異界浄化に使われる結界石の像は、オオマガトキ前から結界の起点として利用された像と、同じなのかと…形が違うと言うのは、今までも不思議に思っていたんでしょうけど」

 

 

 そう、形が違う。鬼の仕業じゃない。人の手によるものでもない。

 そして変わった後の形は、フラウの胎児、俺と関係を持ったシオ。…彼女達の共通点は………そうだ、クサレイヅチに喰われたと思われる点。

 MH世界でデスワープする寸前、フラウの腹から吸い出された胎児の因果がクサレイヅチに捕らわれるのを見た。

 シオは…確証はないが、これまたデスワープする時、クサレイヅチが直接狙っていた。あの時は、何故か俺ではなくシオを狙ったように思える。

 

 となると…次に来るのは、やはり千歳か。人質にされてるからな…………イライラシテキタ

 仮にこの推測が当たっているとすると、クサレイヅチが何らかの理由で石像を彫刻した……んじゃないよな。

 

 ひょっとして、クサレイヅチから零れ落ちた因果か何かが影響を与えたのか?

 だとすると…。

 

 

「お、何か思いついたのか?」

 

 

 ああ。…つっても、因果を探すなんてどうすればいいやら。クサレイヅチの痕跡を辿るか? …出来るんだったら、デスワープ直後に即追いかけてる。

 

 

「色々気になる事はありますが、そろそろ時間です」

 

「む、もうそんなに経ったか。…俺達はこれでお暇する。謹慎は、明日の朝には解けるだろう。…それまで、しっかり納得させておけよ」

 

 

 は? 納得って?

 

 

 答えを返す事なく、泥高丸と白浜君は小屋を出ようと扉を開けた。

 

 

 明日奈と神夜と雪華が立っていた。男二人は、無言で道を譲った。

 帰り際に、白浜君がぽつりと呟くのが耳に届いた。

 

 

「…雪華様まで来られるのはちょっと予想外でしたね。……え、牡丹様が里長として許可を出しておいた?」

 

 

 …気が利いているって言うのかなぁ。ちゃんと話をしなけりゃならんのは確かだけども。

 

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