※この作品はR-18です。

狩りゲー世界転生輪   作:時守 暦

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第424話

 

魔禍月 参拾陸日

 

 

 何やら里がざわついていると思ったら、次の練武戦に向けての準備が始まったらしい。追い詰められていた状況の割には結構頻繁にやってるな。

 今度の練武戦は、大きく期待されているそうな。何でと言われたら、お前のせいだと言われた。

 

 里最強の使い手だった泥高丸が、流れのモノノフに負けて。

 他のモノノフも大体は手も足も出せずに打ち負かされて。

 更に里のモノノフの欠点を懇切丁寧に解説されて。

 

 それで黙っていられる筈もない。

 俺が勝った当初は多少の反発はあったものの、強者には敬意を払うのがモノノフの習性だ。圧倒的な高みからのアドバイスを拒絶する事はできず、各々必死で鍛えていた。そう言えば、白浜君の訓練を見てドン引きしていたモノノフ達も、何だかんだで止めようとはしなかったし、むしろ訓練を見て何か参考にできないかと思っていたようだった。

 とにもかくにも、モノノフ達はリベンジに燃えているのだ。

 泥高丸だって、鬼纏だけでなく、基礎技術も一から練り直していたのを知っている。…まぁ、30日程度でどれ程の効果が出るかは…本人次第か。

 

 そして、何気なく注目を集めているのが白浜君である。

 万年ドベ、落ちこぼれのモノノフ、武に生きるより貸本屋の主人が天職な男と言われていた彼だが、俺が教えたハンター式訓練法によって地獄と言うのも生易しい責め苦を耐え抜いたのを、皆が目にしている。

 いや、責め苦と言うのもおかしいか。何せ、何だかんだ言っても白浜君は自分で成し遂げたのだ。一度鍛錬を初めてしまえば、逃げる事ができないよう色々な『仕込』をしておいた。逆を言えば、鍛錬を始めるまでは幾らでも逃げられた。逃げた所で、誰も責めはしなかっただろう。待ってるのは地獄と知りながら、白浜君は自分から地獄の鍛錬に挑み続けたのだ。

 みっともなくギャアギャアと喚き散らしながら、必死どころか死力を振り絞って鍛錬を続ける姿を、皆が見て来た。

 

 落ちこぼれのモノノフのレッテルは、未だ剥がれていない。侮りがある。だが同時に、今までの白浜君とは違う、あれだけの訓練を乗り越えたのだという評価もある。

 更には、何故か里長の牡丹がミタマとして力を貸している。

 白浜君が、どのような結果を残すのか。あれだけ頑張っていたのだから、成果が出るといいと願う者。他人事のように気楽に応援する者。迂闊に戦場に出すと危険なので、敗退してもいいから安全な後方に居てほしいと願う者。万年ドベにだけは負けないと気炎を上げる者。

 それぞれの思惑を持って、それは密かに関心を寄せられていた。

 

 

 

 

 

 そんな事は梅雨知らず、白浜君は「必殺技がほしい」なんて戯言を言い出したのだが。

 

 

 丁度、買って来たどら焼きで一服していた俺としては、舐めとんのかと言いたくなったが。

 必殺技と言うと………鬼を必ず殺す技、と言う事かね?

 

 

「はい、そうです。人間相手ではなく、鬼が相手です。ここ大事」

 

 

 ふむ…練武戦の為ではない、と。

 そんな物があったら、人間はここまで鬼に追い詰められてないんだよなぁ。

 

 

「ですよねー」

 

 

 ですよねー、じゃねえよ。早く強くなりたいのは分からんでもないが、いきなりどうした。

 

 

「いや、真面目に必要になりそうで…。牡丹様に言われたんですけど、そういう……何と言うか、格上に勝利する為の技を一つは持っておけ、と言われまして」

 

 

 それで必殺技か。まぁ、牡丹の言う事も分からんではないが。

 ちなみにその牡丹は?

 

 

「分かるんですか。でも、そういう技は無いんですよね? あと、牡丹様は今日は祭祀堂で里長としての仕事をしています」

 

 

 ああ、無いな。必殺技って概念からして間違えてる。

 必殺技ってのは、使ったら相手が必ず死ぬ技って事だぞ。実際に殺すかどうかはさておいて、そんなもん、技じゃなくて魔法だ魔法。タマフリだってそこまで都合のいいもんじゃない。

 

 牡丹が言いたかったのは、相手の防御をブチ抜いて致命打を与える攻撃って事だ。

 

 

「…? どう違うんです?」

 

 

 まず大前提として、鬼の生命力は桁外れだ。血管を一つ二つ斬っただけでくたばる人間とは違う。首を跳ねても平然と動く奴さえ居る。心臓っぽい所をブチ抜いてもな。

 そんな奴を相手に、必ず殺す技だなんて無茶振りが過ぎると思わんかね?

 

 相手が生物として格上だとするなら、本来ならまず勝ち目はないんだ。頑丈さ、膂力、速度。単純に性能を比べればどうにもできない。だからこそ格上だ。

 そんな奴を相手に戦おうと思ったら、何が必要だと思う?

 

 

「……人数?」

 

 

 間違っちゃいないな。数の暴力程有効なものはない。しかし、有象無象が幾ら束になったところで、使い物にならない程度の力しかないのであれば軽く蹴散らされる。

 俺の結論は、これだ。相手を仕留める為の方法。

 

 

「どう違う、としか言えないんですが」

 

 

 性能の差を覆す方法。全てが敵に劣っているのなら、一点だけを高めて一瞬だけ上回り、その一瞬を致命の物とする。

 実際できるかどうかはこの際どうでもいい。そういう切り札を持ってるってだけで大分違う。実際、勝ち目が全くないか、髪の毛一本分でも光明があるのかの違いは大きい。

 

 …話が逸れたが、技は力の中にあり、だ。基礎の基礎、身体能力を徹底的に磨き上げ、そしてそれを十全以上に扱う術を究極的なまでに磨き上げ、そしてようやく必殺技……の足元に到着する。

 

 

「そこまでやって足元ですか!?」

 

 

 足元だ。つーか、威力を求めてる時点で必殺技の範疇に入らん。

 さっきも言ったが、使ったら相手が死ぬなんてのは技じゃない。魔法どころか呪術でも奇跡でもない、もっと悍ましいものだ。具体的に言うとアカバン。

 

 俺達が鬼に対して使う必殺技は、火力が重要なんじゃない。流れを作れるかどうかだ。

 そうだな…。

 

 

 非常に極端な例を挙げよう。お前、見た事あったっけ? この…鬼の手。確か、最初の異界を浄化した時に、説明の為に皆に見せたと思うんだけど。

 

 

「遠目で見ただけですが…。これが師匠の必殺技ですか? でもこれ、体質だか道具だかの問題で、師匠にしか扱えないんじゃありませんでしたっけ?」

 

 

 そうだな。専門の道具を作る奴に接触できないからね。

 こいつ以上の破壊力を持つ切り札もある。が、必殺技はどれだと言われれば、俺はこいつを推す。

 

 

「…威力以上に重要な事がある? でも仕留められる技と言うなら、破壊力こそ前提では…」

 

 

 さっきも言ったが、相手は鬼だ。簡単に殺せると思うな。

 相手がその一撃で死なない以上、必殺技に求められるのは敵の動きを阻害し、自分に有利な流れを作る『切っ掛け』だ。

 

 …言ってる意味が分からない? 鬼葬って技なんだが…この鬼の手を思いっきり使えばな、鬼の部位を完全に破壊できるんだよ。再生する事が無いようにな。

 

 

「へ? 再生…しない? と言う事は、腕を攻撃すれば?」

 

 

 敵は片腕になる。足を攻撃すれば?

 

 

「片足になる…………両足で立てなくなる! 鬼の形にもよるけど、動きが腕が無くなった時以上に制限される!」

 

 

 そういう事。普通に潰して祓っただけじゃ、奴らは霊力っぽい物で補うからな。

 これは極端な例だが、普通のモノノフで言えば…そうだな、相手の動きを止めて、こっちの好きに行動できる時間を増やすような技、或いは連携か。

 

 白浜君、今君は手甲を使った戦い方を学んでいる訳だが、この攻撃方法を思いつく限り挙げてみろ。

 

 

「はい。まずは通常の打撃。打撃を与える瞬間に力を集中する好連携と呼ばれる技術で、効果的な打撃を与えやすくなります。次に赤熱打撃。特殊な打ち方で衝撃を打ち込み、敵に与える痛みを増幅させます。一番の特徴は百裂拳。通常の打撃と同じく、炸裂の瞬間に力を籠める事で威力の増加が見込めますが、速さが段違いの為難しいです。文字通りの連続打撃と、最後の一撃の破壊力は圧巻です。……僕はまだまだですけど」

 

 

 熟練者に比べれば話にならんが、現段階では上出来だぞ。他は?

 

 

「えっと…顎砕き。跳躍して、鬼の上部を攻撃します。それから…そう、鬼千切! 懇親の力で殴りつける、単純ながらモノノフの奥義とも言える必殺技です」

 

 

 うん、大体そんなところだな。では、その中で白浜君が一番得意なのは?

 

 

「………百裂……いえ、通常の打撃でしょうか。百裂拳は、好連携が難しくて…」

 

 

 ふむ…なら、それに合わせたミタマの使い方は?

 

 

「そこまではまだ……。任務中に、色々試してはいるんですけど。ただ、防で攻撃を防ぐとか、魂で遠距離攻撃を考えてます。痛いの嫌です」

 

 

 …ハンター式訓練を潜り抜けておいて、何を今更…。まぁ、誰だって無意味に痛いのは嫌だけども。

 防なら敵の攻撃を押し退けてゴリ押し、タマフリを使い切っても防御力を底上げする事で継戦能力が上がる。魂だと、遠距離攻撃と近距離の手甲て今一つ合わないが…。ふむ、ソルパン…か。でもあれ、確か実際には間違いだったんだよな…。

 

 

 なら、通常打撃、ミタマの使い方が防として、その効果を最も効率的に運用するには…そうだな、あくまで一例だけど。

 赤熱打撃で相手の防御を弱めるのが第一弾。味方の数が多ければ、効果は更に跳ね上がる。

 続いて好連携による打撃で部位破壊を狙い、体勢を崩したら追撃。

 立ち上がりそうになったら、今度は鬼千切で強烈な打撃を与えてスッ転ばす。

 

 これが王道だな。

 

 

「なんか…使える技を並べただけって感じなんですけど」

 

 

 間違ってはいない。一発の攻撃力に限度がある以上、連続攻撃が必要になるのは当然の事だ。そして連続攻撃を長く続けるには、敵が動けない状態を作り上げる事が重要。

 敵が動けない状態と言えば、倒れている時だ。或いは痺れている状態とかね。

 これらを淀みなく正確に行うのが、まず大前提。

 

 真の狙いは、連続した部位破壊だ。敵の部位を破壊すれば破壊する程、こちらが優位に立てるのは言うまでもない。特にこの里の戦い方だと、鬼祓いが必要ないからな。

 理想を言うのなら、相手を倒れさせる時に部位破壊一つめ。倒れた所を連続で殴りつけて二つ目。立ち上がろうとするところへの鬼千切で三つ目。仲間が居て、鬼千切の準備をしていれば、同じ流れで四つ目五つ目の部位破壊が出来るだろう。それだけ好きに殴れる時間があったのなら、更に鬼千切の準備が整えられるかもしれん。

 

 

「な…なるほど、鬼千切も好連携も、あくまで機転。鬼が抵抗できない状況を作り出し、それを継続し、そして一気に戦力を削る…。……………あの、これって言うは易しじゃ…」

 

 

 当たり前だ。必殺技なんてものが、簡単なものである筈ないだろう。

 見せておいて何だが、鬼葬みたいな技に頼るな。流れを作れ、流れを。相手が格上な時点で、真っ当なやり方じゃ勝てやしないんだ。だったら相手の力を制限して削るか、もっと強い戦力を連れてくるしかないだろう。

 

 身体を強化できるような呼吸法なら確かにあるが、お前にゃまだ早い。その手の技は、大抵諸刃の剣だ。危険の少ない鬼纏を使った方が、余程マシだよ。

 その手の業も、時期が来たと判断したら教えてやるから、今はまず基礎を磨き上げなさい。さっき言った流れも含めてな。

 

 

 

 

 

 さて、白浜君の事は置いといて、今日も探索だ。ちんこをダウジングロッド代わりに使う、見ていて珍妙な探索だ。

 寒雷の旦那の万事屋から工事道具を借りてきて、ちんこが一番反応する地点を掘り返し始める。尚、この時はガッチガチに硬くなっているというのに、ちんこが真っ直ぐ地面を指すという珍妙な現象が発生した。

 なんか治まらなかったので、一発ヌいてから作業に入る。異界の中で本番する訳にもいかず、手だけでヌいてもらったが…一人がちんちん握って、一人は見張り。どっちがどっちをやるかと、明日奈と神夜の間で激しいじゃんけん合戦が繰り広げられた。

 

 その後は、よいせこらせどっこらしょ、と地道に穴を掘り始めた。通りすがりの餓鬼が「なんだこいつら」とばかりに一目見て、そそくさと逃げて行ったのは忘れない。

 

 

 

 

 

 掘り進める事数時間。…暇だ。いや体は常に動かしているし、体力的には程よい疲れではあるし、横で掘ったり休憩したりしている美人さん二人のおかげで軽い会話もあって、別に辛いって訳じゃないんだが…。

 ただ意味もなく穴を掘ってるようで、自分が何をしているんだろうって気分になってくる。穴掘り穴埋めが拷問に使われる理由が分かった気がする。

 

 神夜も、最初は童心に帰って楽しんだり、水を流して小さな水路を作ってみたりしていたが、すぐに飽きた。

 明日奈はすぐに、もっと簡単かつ効率的に掘る方法が無いかと…ぶっちゃけて言えば、怠けられないかと考え始めた。

 

 時々襲ってくる鬼すら、暇潰しや気分転換扱いだったからなぁ…。

 

 

 

 不満も不平も多々あるが、実際これ以上は手掛かりも方法も無い。えっさほいさと掘るしかなかった。

 

 活動時間が残り少なくなった頃、もう一回ちんこを立たせて千歳の因果を探ってみたのだが、やっぱりちんこが指し示すのは真下。

 やっぱりまだまだ掘るしかなかった。

 

 

 

 

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