※この作品はR-18です。

狩りゲー世界転生輪   作:時守 暦

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第431話

 

 

魔禍月肆拾陸日目

 

 

 予想通り、九葉のオッサンにすぐに会う事はできなかった。

 暫く時間がかかるのは分かってたが、いつになるのか分からないのは予想外だった。面会の準備が出来るまで、宿に留まる事になった。宿と言っても、百鬼隊の宿舎だけど。

 

 何だか知らんが、重要な会議で全く時間が作れないらしい。

 

 

「…重要な会議って、異界が消失した事についてじゃないんですか?」

 

 

 かもな。だったら、会議場に直接乗り込んで俺達のやった事だって宣言した方がいいかなぁ。でも、こっちでもやれるか分からないしなー。

 それ以前に、会議にカチコミかけるような真似する奴は牢獄行か。

 

 ところで白浜君、初めて来た霊山の感想はどうだ? 良くも悪くも、シノノメの里とは全く違うだろ。色々戸惑ってるんじゃないか?

 

 

「ええ、それはもう。とにかく人が多くて、眩暈がしそうですよ。色々な物がありますけど、シノノメの里ではあって当然だと思っていた物が無くて…例えば宝玉とか」

 

 

 あそこの宝玉は、その辺を歩けば転がってたからなぁ…。あんな汎用性が高くて効率のいい物が石ころ扱いって、冷静に考えるととんでもないぞ。

 初めて見た時は唖然としたもんだ。実際、霊山との取引に使えるくらいの貴重品だ。

 

 

「…そんな物がごろごろしてたんですか…。言われてみれば、昔は見かけませんでしたが」

 

 

 異界に囲まれた状況になってから見つかり始めたって言うし、そういう状況で作り上げられる特殊な鉱石なのかもしれないな。しかしその理屈で行くと、これから宝玉が出来上がらなくなるかもしれん。

 …真面目な話はこの辺にして、何か興味を惹かれるものでもあったかな?

 

 

「ええもう色々と。と言うか、里の外って、貸本はあまりしないんですね。皆、買い取っていくばかりのようです」

 

 

 最初に目についたのがそれか。仕事柄と言ってしまえばそれまでだけど。

 珍しい本を探すなら、普通の書店よりも中古の本を取り扱ってる所がいいぞ。

 

 

「正直、どの本も珍しいというか初見なので、判断がつきませんね。偶に牡丹様が『あ、これ懐かしい』って言う奴があるから、それは買ってますけど。他に興味があるのは、やっぱりモノノフの訓練ですけど、勝手に入っていいものかどうか」

 

 

 勝手じゃなくて、許可を取れば入れるよ。

 異国の人も訓練してるくらいだし、問題ないって。

 

 …っと、そういやグウェンもここに居るんだよな。時期的にどうなのかは、見てみないと分からないが。

 あの剣から呼び出される鬼に難儀してるんだっけ…。見つけたらさっさと狩っちゃってもいいよな? 恩を売る云々ではなく、一時は肌を重ねる程親密だったんだ。それが危険な目にあっているのを放置するのもな…。

 …一応、九葉に一言告げておいた方がいいか? よくよく思い出すと、あの鬼を狩った事を教えた時、手駒がどうのと言っていたが…。

 

 

「ところで、神夜さんや明日奈さんはどうしたんです? 別行動なんて珍しいじゃないですか」

 

 

 二人も情報収集中。四六時中一緒じゃ、つまらないものな。面白そうな物を見つけたら、持ち寄るようにしてるんだ。今のところ、化粧品とかしか持ってきてないけど…。

 迷子になってなければいいんだけどねー。基本的に気のいいモノノフが多いんだけど、やっぱ特権階級的な意識を持って拗らせてる奴も居るから。あんだけ美人なんだし、絡まれても不思議はないかな。

 

 

「…大丈夫なんですか、それ。最初だけでも、一緒に行った方が良かったんじゃ。……ところで、さっきから何を書いてるんです?」

 

 

 手紙。霊山に着いたら、いの一番に出そうと思ってたんだが、内容が纏めきれん…。下手な事書くと、一瞥だけして読まずに捨てかねないような奴だしな…。

 

 

「そう言えば、師匠は他の里にも知人が居るんでしたっけ。…恋人ですか? …あ、今の無しです。あの二人や雪華様が居るのに」

 

 

 少なくとも、奴とはそういう関係ではないな。実験者と協力者…かな?

 専ら博士って呼ばれてるんだが、考えてみれば本名は聞いた事が無いな。…住所だけ書いておけば届くかな。

 

 内容は…まず、前ループで「もしも次があるようなら、私にこれを渡せ」と言われた手紙。…博士が博士自身に充てた手紙かぁ。正直言って、不安しかない。傲岸不遜なマッドサイエンティスト同志が出会ったら、意気投合して化学反応を起こすか、拒絶反応で何もかもぶっ壊されるかの2択だろ。

 俺からは……うーん、何を書けばいいかな。ループの事を書いて、信じてもらえるか?

 そうだ、あっちにホロウが居るかどうかも確認してほしい。初めて出会ったのは、遺跡の中だっけか。あの後ウタカタまでついてきたけど、あいつはどうなってるのか。リセットの効果が及ぶんだろうか?

 

 博士が研究している鬼の手で、異界浄化が出来たという事は報告しなければなるまい。…結局、あの時は異界浄化は成らなかったんだよな。

 手掛かりになるかは知らんが、シノノメの里で得た情報・状況と、宝玉を幾つか同梱しよう。

 

 

 …うん、こんなもんかな。後は無事に届く事を祈るだけ、と。

 白浜君、俺は少し出てくるから、君は鍛錬を続けておくように。

 

 

「……こうして鍛錬しながらでも話せるようになってきた辺り、僕も随分変わりましたねぇ」

 

 

 武術家とかなら、ここから更に追い込んでいくんだろうけど、ハンター式の鍛え方だからな。体を鈍らせない為の訓練はしても、人間を超えようとするような訓練はしない。

 今までの訓練は、体を作る訓練。ここからは、技の精度を一つ一つ高め、動き方を学んでいく事になる。言わば、体の動かし方を叩き込む訓練だ。

 

 

「それは……今までよりも楽になる、と言う事だったりは…しませんよね」

 

 

 しないなぁ。確かにこれ以上の負荷はかからないが、やる事がはっきりしている単調な訓練と違い、どんな状況でどんな動きが必要なのかあの手この手で叩き込むから。

 訓練してない時だって、『こういう状況ならどう動くべきか』って延々と考え続けるハメになるぞ。

 ま、今日のところは、今までと同じ訓練だけだ。

 牡丹、サボらないように見張っておいてくれ。

 

 

 それじゃ、俺はちょっと出かけてくる。

 

 

 

 

 

 護衛を戻って来た伝子さんに任せ、俺は夜の霊山に出る。

 シノノメの里と違い、霊山は夜でも灯りが多い。明日奈が「明るすぎて眠りにくい」なんてボヤいていたな。

 

 電気代もとい、灯りの燃料代の無駄とも言えるが、それだけ賑わっているという事だし、灯りはそれだけで人の心の拠り所になる。一概に無駄とも言い切れない。

 それだけの暮らしを保つ為に、昼夜を問わず仕事している人も居るって事だしね。

 

 

 それはともかく…強い光は影を作る。それはこの霊山であっても例外ではない。物理的な影もあるし、社会の闇的な影もある。

 その二つにこれから潜り込みに行きます。

 

 路地裏に入って人目が無い事を確認したら、ニンジャ走りで壁を駆けのぼって適当な屋根の上へ。…よし、屋根の上までは灯りは届きにくい。イイ感じに闇に溶け込める。

 霊山…モノノフの本拠地を見れば、山と言うよりも塔、或いは城のようだ。事実、山の一部をくり抜いて改装しているらしいが。

 

 以前、何度か入った事があるが…構造的に幾つかおかしな場所があった。当時は特に気にしてなかったし、増築に増築を重ねた結果だろうと思っていたが、後ろ暗い部分があるならまずそこだろう。

 ……本当に重要と言うかヤバい資料なら、秘密の部屋に押し込めて、入り口を埋めるくらいの事はやってるだろう。そもそも残しておかないという可能性もあるが。

 

 

 さーて、どれから手をつけるかね?

 人目を避けて霊山に忍び寄り、採光用の窓から入り込む。警備は居るが、ザル…とまでは言わないものの、やっぱり油断してるな。

 モノノフは今の世を支える最後の砦だが、それに喧嘩を売る馬鹿がいないと思っているんだろうか? 実際、下手に喧嘩を売ると世が滅ぶが。

 …まぁ、忍び込む奴なんか早々居ないのは確かだから、気が緩むのも無理はない。そんな事言ってたら警備はやれないが、どっちにしろ俺が相手じゃ意味ないべ。

 

 勘の良さそうな奴には近づかず、「しむらー、うしろー」と言いたくなるような動きで中まで入り込んでいく事暫し。

 

 むぅ、目星をつけていた所の2つはハズレ。1つは入り口が完全に埋められていた。壁を斬って入り口を作る。切り取った部分を元に戻して…これで良し。寄りかかりでもしなければ気付かれないだろう。

 埋められていた部屋は埃臭く、鬱陶しい空気が漂っていた。入っているのはよく分からないガラクタ、ひどく古い擦り切れた覚書…。

 

 ハズレだな。覚書が読めれば、まだ何かの手掛かりになったかもしれんが。

 

 

 切り取った扉(壁)は糊をつけておき、次の場所へ。霊山の中でも特に厳しく立ち入り禁止区域に指定されている場所だ。

 パッと見た所、何の変哲もない、ハクやら資材やらの記録が残されている倉庫。だがその一角には、厳重に埋め立てられた地下通路があった。俺でも鷹の目を使わなかったら見逃していただろう。

 …しかし、随分と隠し通路や隠し部屋が多いものだ。どんな掘方したんだか。

 

 人通りが比較的多い場所なので、床に穴を空けると流石にバレる。…構造を予測し、比較的近い部屋は……………トイレかよ…。

 トイレの下部分からじゃないだけマシか。雪隠隠れを好き好んでやりたいとは思わん。

 

 

 …丁度、誰か使った後っぽい。クサイ。いや排泄物出す場所だから無理はないんだけど。とりあえず、また壁を斬って通過。

 予想通り地下通路に出たが……こりゃ、トイレの匂いの方がマシだったか?

 死臭…腐臭…。物理的な匂いじゃなくて、もっとこう……精神的に『嫌な気配』がこびりついている気がする。

 

 これは…当たりかな?

 

 

 

 

 灯りを灯しながら先に進んでみると、その先にあったのは世界観に似つかわしくないものだった。いや、ある意味似合っているんだろうか?

 

 

 魔法陣。

 

 

 六芒星か…。籠目の文様だけなら珍しくないが、その周囲に描かれているのは明らかに異国の文字。

 中心には、何かが設置されていた痕跡。…これは………恐らく円柱状の入れ物。……ホムンクルスでも作ってたのか?

 更に大量の血痕、何かを引き摺った跡、散らばった紙片…。

 

 殺人事件かな? みすてりーさすぺんす? と言うか、内輪揉めでもあったんだろうか。

 見られるとヤバい物があったから、慌てて始末した? それにしては、魔法陣の中にあったと思われる入れ物はしっかり持って行ってるな。結構な重さだと予測されるが。

 

 

 散らばった紙片を集めてみる。殆どは血で読めなくなっているが、残っている部分だけでも厄い厄い。

 両さんが言っていた、霊山の闇の所業にも説得力が出るってものだ。

 

 まだ読める資料を出来る限り掻き集めていると、他とは明らかに違う資料を発見した。

 地図だが、何やら走り書きがあった。日本語じゃない…こりゃ確かスペイン辺りの言語だっけ。古めかしい書体だが、大体の意味は分かる…。

 

 …移送? ここにあった物を運んだのか。

 霊山に来るまでの道で、近くを通ったと思うが…確か異界のド真ん中だな。当時はまだ異界に呑まれてなかったんだろうか? …いや、恐らくオオマガトキ前の事だな。それなら持っていくのもそう難しくはない。

 

 

 

 

 色々気になるが…今日はここまでか。これ以上ここに居ても、得る物はありそうにない。

 

 

 

 

 

魔禍月肆拾漆日目

 

 

 状況を報告しあいたいが、あまりヤバい話を白浜君達の前でするのも躊躇われる。

 少なくとも、これ以上霊山に対して不信感を持ってもらっては困る。

 

 折角霊山まで来たのに、修行漬けってのも不憫なので、白浜君には正式に一日、完全オフ日を言い渡しました。

 俺は土井さんと色々と話をしようと思っていたんだけど、今度は土井さんが何処かに行ってしまった。今日は土井さんがお休みなのか、それとも彼は彼で何かしに行ったのか。

 今日は山本先生が白浜君に(こっそり)貼り付いて護衛している。…マジで外見だけじゃ気付けない…すごい変装…。

 

 

 それはそれとして、今日の俺は明日奈と神夜の案内役。折角霊山に来たんだし、面白い所で逢引したい、と言い出したからだ。

 と言っても、そこまで詳しい訳じゃないんだよなー。確かに一時住んでたし、昨晩はヤバい所に入り込んだけど。

 

 …道場…は神夜が超絶喜びそうだけど、色気がないな。

 鍛冶屋…は明日奈が喜ぶけど、やっぱり色気が無い。

 万事屋行って、何か珍しいものでも探すか? シノノメの里に送ってやれば、外の流行とか分かって役に立つんじゃないかな。送ろうにも、まだ交流が復活してないけど。

 

 

 飯屋、風呂屋、本屋、化粧とかするところ、服屋…。

 ああ、道端で大道芸みたいな事やってる人も居たっけ。紙芝居なんかもやってた。笛を奏で、歌を歌ったり…意外と娯楽も多いもんだ。

 

 二人にも結構楽しんでもらえたから、結果的には良かったかな。

 

 

 

 

「………明日奈?」

 

「え? ………………桐人君…?」

 

 

 …なんか、予想外のイベントが発生したけどね。

 

 それは、その辺の屋台で買い食いし、腹もそこそこ満ちたし、さぁこれからどうする…と言う時だった。

 二人とも、何やら希望があるようなので聞いてみようとしたところ、突如声を掛けられた。

 

 信じられない、とでも言いたげなその声に振り替えると、そこには少年が立っていた。…何と言うか…マックロクロスケな少年だな。

 見た所、そこそこ程度には腕が立つ。恐らく、新米として実戦に出て間もないモノノフ…か。

 

 

「明日奈、無事だったのか…よ、よかった…」

 

「そ、そういう桐人君こそ…」

 

 

 …あれ、何やら気まずい空気が。え、なに? 何なのこれ?

 神夜、知ってる人?

 

 

「多分あの人、という程度ですけど…。直接顔を合わせたのは、数える程ですので」

 

 

 そうか…。……にしては、何だ? こう、甘酸っぱいというかそういう雰囲気が全くないんですけど。 

 別にそういうのを期待してるんじゃないよ。寝取られ趣味は無い。ただ、昔の知人が無事なんだったら、もうちょっとこう、普通に喜ぶもんじゃね?

 

 

「あー……えぇ、まぁ、大体の理由は察しがつきますが…とりあえず今は、余計な口を挟まずに見守りましょう」

 

 

 …それが普通なんだろうけど…なんか面白くないな。あんまり狭量な事は言いたくないが。

 

 二人は気まずい雰囲気のまま、ポツポツと途切れそうな会話を続けている。

 少し様子を見ていたが、非常にまだるっこしい。ヤキモチがどうのと言う以前に、なんか苛々してきた。

 

 思わず爪先をトントンしていると、ようやく少年…桐人君とやらは俺達に気付いたようだった。

 

 

「あ…そっちの二人も、シノノメの里の?」

 

「あ、うん。覚えてるかな。神夜と………い、今付き合ってるの」

 

「…神夜と付き合ってる!?」

 

「違うわよ」

 

 

 どうも、ご紹介に預かりました明日奈の彼氏です。

 

 

「か、彼…!? ど、どうも、桐人です…。明日奈とは、子供の頃に何度か遊んだ仲で……………ええと…」

 

 

 何か物言いたげな視線。寝取られた…と思ってる訳じゃないようだが。

 

 

「あー…その、シノノメの里で何があったんですか? 交流が途絶えてから何年も経つので、てっきり…」

 

 

 色々あって、異界を抜けてきた…ようなものだな。里の連中も、元気にしてるよ。と言っても、俺はつい先日シノノメの里に訪れたばかりなんで、君が居た頃の友人知人が誰なのかは把握してないけど。

 

 

「……そう、か…。みんな、無事だったのか…」

 

 

 それを聞くと、俯いて鼻を鳴らす。…彼がどういう立ち位置に居たのか、どう思っていたのかは分からないが、ここは口を挟むべきじゃないか。

 

 悪いけど、現状ではそれ以上の情報は流せない。現状、シノノメの里は色々と複雑な立場になりそうなんでね。俺達が霊山までやって来たのも、交流を復活させる為の使者って意味合いが強い。

 政治の話になるし、あんまり情報を漏らしたくはないんだ。

 

 

「………ああ…」

 

 

 …感極まってるな。明日奈、悪いけど今日の話はここまでだ。

 これ以上何か情報が欲しいなら、悪いけど頭をすっきりさせてから来てくれ。

 

 見た所、お役目帰りだろう? ちゃんと飯食って風呂入って寝て、それから考えな。

 …明日奈行くぞ。

 

 

「え、あ、うん…」

 

 

 明日奈の手を引いて歩きだす。一度だけ桐人を振り返ったが、泣き笑いで手を振られていた。…なんか、本気で恋人を寝取って、それを見せ付けてるような気分になってきたな…。

 神夜を伴い、明日奈を引っ張って暫し歩く。桐人君が見えなくなった辺りで、神夜が囁いてきた。

 

 

「なんだか、いつになく強引でしたね。…ひょっとして、妬いちゃってます? 明日奈さんを、桐人さんに取られると思っちゃいました?」

 

 

 …全く無いとは言わないよ。正直、面白くなかったのは確かだ。

 自分は散々好き勝手やっといて何を言ってる、と言われると返す言葉もないけどさ。

 

 

 …実際のところ、積もる話とかあったんじゃないか? 明日奈だけじゃなくて、神夜も顔見知りなんだろ? 俺はどうこう言うつもりもないけども。

 

 

「意図はどうあれ、あの場はあれで良かったと思いますよ。ね、明日奈さん?」

 

「………あの……続き…」

 

 

 …? 続き?

 何の事かと首を傾げると、明日奈は握られていた手を強く握り返し、顔を赤くして俯いた。

 

 

「…でぇと…逢引の、続きを…」

 

 

 お、おお…そうだったな。二人とも、何処か行きたい場所があるんだっけ。俺が知ってる所とは限らないけど。

 どこに行きたいんだっけ?

 

 

 

 

 

 

 え? 連れ込み宿…?

 

 ここ数日、集団行動で思いっきり出来なかったから、体が疼いてる? 今日の逢引も、本命はそれ…?

 

 

 

 全力で楽しませなくちゃ(使命感)

 

 

 と言うか、元カレ…なのかどうかは知らんけど、昔の知人と再会したのに、お構いなしにセックス優先か。楽しませてくれるメスに育ったなぁ。

 その後、元カレ(?)の事を引き合いに出しながら、神夜と二人がかりで散々に虐め倒しました。

 

 

 

 

 

 

 

 実際のトコ、引き立て役としては元カレ(?)君はあまり役に立たなかった。

 何せ最後にあったのは、第二次成長期に入る前。早熟だった明日奈は桐人君に迫った事はあったそうだが、それ以上何かがあった訳じゃなかったそうな。

 

 …いや、何かあったのは桐人君の方なんだけど。

 とにかく、付き合ってたとかじゃなくて、お互いちょっと気になってたところに、肉食獣としてのサガに目覚めた明日奈が暴走して、それを桐人君が受け止められなかったと言いますか…。

 

 要するに、俺もいつぞや喰らった蝉ドンされて、女性恐怖症になって逃げるように里から去ってしまったらしい。そしてオオマガトキで交流断絶。

 再会したと思ったら、トラウマの元凶が彼氏作ってた。

 

 多分、桐人君の女性恐怖症は完全には治っていない。明日奈に限らず、女性に対して微妙に距離を置いてる感じだったし。

 ……何と言うか…流石に不憫が過ぎる。明日奈を犯すのに、引き合いに出した事について罪悪感を感じるくらいだ。あんまり効果なかったし。…つまり、元から完全に未練ナシか。もうちょっと進展してたり、手紙だけでも交流が続いてりゃ話は別だったろうに。

 形はどうあれこっちでの伝手になる事は変わりないから、何とか利用できないかとも思ってたが…やるならせめて、女性恐怖症どうにかしてやらんとな…。でも俺がやったら、ロミオの時みたいに拗らせそうだしなー。結局仲直りしてたけどさ。

 そう重いものじゃなさそうだが、その分長引いてるって事は…うん、やっぱり肉食獣に狙われた恐怖はそうそう消えないって事か。

 

 まぁその肉食獣は、腰の辺りに充実した雰囲気を漂わせながら、俺に背負われてるんですけどね。

 隣を歩く神夜が、時々明日奈の尻を引っぱたくのは何故だろう。…明日奈に突っ込んだままのバイブで遊んでるのかなぁ?

 

 

 

 

 

 さて、つい予想外のお誘いに飛びついて時間を使いまくってしまったが、明日にはあの悪党面のおっさんに会う事ができるそうだ。

 俺の事を覚えているだろうか? 覚えていたとして、いなかったとして、協力体制を築けるだろうか。

 あのおっさんは、身内に対しては色々と(見えないように)便宜を図るからな…。是非とも味方になってほしい。

 

 

 

 

 そんな事を考えながら一眠りしたら、どこからか『ホロウよりも真ヒロインに記憶を持っていてほしい』という声が沢山聞こえた。

 …真ヒロインて誰?

 

 

 

 

 

 

 

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