…悪くはないんだけど……期待しすぎた、が正直な感想。
一週間保たなかったなぁ…。
後半はお遣いから戻ったキャラに話しかけて、お遣いに行かせてすぐ終了だったし。
隻狼は難しすぎると評判なので、ヘタレて一旦様子見します。
7月4日に進撃の巨人の追加分…それまで何してようか。
北斗が如くをトロコンしてやろうと思ってるんですが、これまた借金返済とか時間がかかる上に単調な作業が…。
ストーリーをやり直して、現在勲章の為にあれこれやってます。
進撃の巨人追加分に備えてそっちのトロコンを優先するか、或いはDMC5を買うか、それとも4月発売のEDFアイアンレインか…悩ましい。
魔禍月肆拾溌日目
さて、どっからどう話したもんか。やっぱあのおっさん、一筋縄じゃいかんわぁ…。
身内に対してはツンデレの極みみたいな性格してっけど、それ以外にはツンを更に尖らせたような奴だった。
うん、尖らせられたんだ。
率直に言うが、九葉のオッサンは俺の事など覚えていなかった…と言うより、知りもしなかった。
横浜での戦いの事も聞くだけ聞いてみたが、相当な被害が出たらしい。…俺の時だって結構な被害は出たようだったが、それ以上だ。
この時間軸では、俺はあの時あの場所に存在しなかったんだろう。当然、九葉のおっさんが俺を知っている筈も無いし、便宜を図る義理もない。
そんなもんだから、その後の交渉もメッチャ難航した。土井さんが纏めてくれなけりゃ、下手すると霊山君(一番偉い人)の所にカチコミかけてたかもしれないレベルだ。
何せ相手は『北の地を見捨てた鬼』。その意図や翻意、何よりその名と負債を引き受けて尚揺らがない、心を殺した鬼。
…そんな奴が、一度は見捨てた里を、弁護する筈もなかった。
無論、それなりの対価や交渉材料は用意した。宝玉という利便性の高い素材、異界浄化のノウハウ、鬼纏という限定的ながら戦況をひっくり返す可能性を持つ術。
牡丹の策も何重にも重ね、白浜君の善意や誠意でそれを後押しもした。
だがそれでも、いいように使われて、それでようやく交渉のとっかかりしか掴めなかった。
…つくづく思うが、霊山がやってたらしい人体実験の情報、使わなくてよかったわ。このタイミングで札を切ったら、何が起こるか分からない。
ツンデレは懐に入らないとマジウザイという事実を、里一つの命運がかかっているという状況で再認識した訳だが……どっちかと言うと、交渉事を俺達が舐めていた、と言った方が正しかったかな。
その状況からなんだから、譲歩された方…なんだろうか?
九葉のおっさんからの指令はシンプルだ。信用してほしければ、実際に異界を浄化してみせろ、と言うもの。仮に俺達が言っている事が事実だったとしても、再現できなければ意味が無い。ま、霊山に来るまでに考えた懸念を見事に突かれた訳だね。それを放置してたんだから、舐めてるって言われても仕方ないわ。
ただ、その浄化して見せろって言った異界が……先日霊山に忍び込んで見つけた地図に記されていた、あの異界なんだよな。
これは偶然か? 霊山に最も近い異界だから、そこを優先させたと言われればそれまでだ。
だが、あの腹黒が指示したのであれば、十重二十重の意味を持たせていても不思議ではない。
そこに首を突っ込んでくたばってしまえ、か。
そこにある何かを探り出してみせろ、か。
或いは適当にやっていろ、使えそうなら使ってやる…か。
そもそもかなり濃い異界なので、普通のモノノフなら動けて10分程度。あそこで何かさせるなら、間違いなく速攻任務に分類されるだろう。
そこで何かやってこい…。鬼に襲われる事がなくても、充分な危険がある。
これは、話に出した瘴気無効化の装具の効果を試してもいるんだろう。
…今のところ、九葉のおっさん以外からの接触はない。ヨタ話だと全く相手にされていないのか、それとも何らかの理由で情報を規制しているのか。
どっちもありそうだから判断に困る。しかし前者だとした場合、シノノメの里は全く相手にされてないって事か。過去に見捨てた事すら、負い目として感じてないのかもしれない。
うーむ、今更ではあるが、もっと大々的に、全滅したと思われていた里からの使者だと宣伝するべきだったろうか?
そうすれば嫌でも相手をせざるを得ない…。
宣伝…と言えば、確か新聞社があったよな。そこに持ち込んで、上手いことネタにしてもらえないもんだろうか。
ともあれ、やれと言われたからにはやらねばなるまい。お遣いイベント的に考えて。
実績が欲しかったのは確かだし、何よりずっと狩りをしてないと息が詰まる。何だかんだで、俺の生きる道はこっちである。…コトが終わった後のオタノシミは激しくなるしね。
けんもほろろに交渉を袖にされた鬱憤晴らしも兼ねて、いつもの3人で指定された異界へ。
他の面々は、それぞれ独自に行動している。人脈を再び繋ごうとしていたり、市場調査に向かったり、モノノフの鍛錬に興味を持ったり。…もう一つ、瘴気無効装備があればな…白浜君を連れて行ってやれたんだが。
「それはいいんですけど…実際、ここで何をしますか? 鬼を狩るのはいいですけど、異界の浄化は…」
「結界石の石像、ここにあるのかしら…」
どうだろうなぁ。結界石自体はあってもおかしくないけど。…そもそも、何でこんな霊山の近くに異界が生じてるんだか。
他の里みたいに、鬼の生息領域に隣接してる場所ならともかく、ここって霊山のすぐ近くだぜ? 結界の強力さと大規模さなら、どの里にも負けてない筈なんだけど。
「地図を見ても、おかしいと言えばおかしいですよね。異界がそこかしこに発生しているようですけど、何処にも繋がってないというか…まるで、そこからじわじわと滲みだしてきたみたいです」
不自然…これに九葉のおっさんが気付かん筈がない。
やはり、ここに何かあるんだろう。それが何なのか、九葉のおっさんが把握しているかまでは分からない。俺達を使って様子を見ているのか、それとも「ここにある物を探し出してみせろ」とでも言いたいのか。
とりあえず、今日のところは地形と鬼の把握に努めよう。見た所、ざっと回るだけでも半日かかるくらいの広さはある。
そして、この異界はその濃さ故に、殆どモノノフの手が入っていない。
…楽しくなってきたなぁ! 真っ白な地図に探索結果を書き込んでいくのって、どうしてこんなに楽しいんだろうな! 何も知らない女の体にあれこれ仕込むのに似てるな!
さぁ行くぞ二人とも、今夜はハンバーグだ!
「ハンバーグってなんですか?」
後で作って食わせてやる。豆腐ハンバーグになるけどな!
異界捜索は、大した事はなく終わった。と言うより、まだそこまで踏み込んでないってだけなんだが。
ただ、それでも分かった事がある。この異界の濃さは異常だ。
シノノメの里を囲んでいたような異界程じゃないが、普通の異界じゃない。大抵のモノノフは、あっという間に行動不能に陥るだろう。
…益々妙だな。霊山のお膝元に、こんな異界がちょくちょく沸く…。しかも、調べた資料を見た所、広がりもせず縮まりもせず。まるでそこに留まるように、異界はあり続ける。
ここでくらしているモノノフ達は、これに慣れてしまっていて疑問も持たないようだが…ぬぅ、俺もそうやって慣れて色々見逃してるから、あまりでかいことは言えんな。
お遣いイベントだとしても、興味が湧いてきた。
少なくともあの異界には、九葉のおっさんが…把握しているにせよいないにせよ、注目しておくべきだと思っている『何か』がありそうだ。
いいね、楽しくなってきた。探り出してやろうじゃない。
魔禍月肆拾玖日目
神夜が騒ぐもんだから、道場にやってきた。
昨日の異界探索が切っ掛けっぽいな。鬼だけじゃなく、里の外の達人達とも戦ってみたいと言い出して、止まらなくなってしまった。
ちょっとだけご飯を食べると、逆に腹が減って仕方なくなるのと同じ心理だろう。
明日奈は買い出し当番なので、今日は一緒ではない。
…とは言え、霊山のモノノフって本当にピンキリなんだよなぁ。将来を嘱望される、ガチエリート級も居れば、うだつの上がらない里に居た頃の白浜君と同レベルかそれ以下(AAで言えば福本モブ)も居る。それこどろか、第一線で活躍している現役モノノフが居る事もある。
時期的に考えると、マホロバの里で合った時継と雷蔵も居てもおかしくないな。あいつらは、間違いなく霊山でもトップクラスのモノノフだろう。
…確か雷蔵は、禁軍所属だったっけか。
上手くかち合えば、イイ感じに人脈を作れるかもしれない。
それはそれとして、折角道場に行くんだから、白浜君も連れて行かない手はない。
シノノメの里では落ちこぼれ、そして練武戦で結果を出す前に里の外に連れ出してしまったので、彼には対人経験が殆ど無い。
鬼との闘いも多少ある程度だが、この霊山ではそもそも実戦経験が全くないモノノフだって沢山いる。
…ぶっちゃけ、白浜君が霊山でどれくらい通じるのか、俺にも読めません。
そもそも彼は、現在非常に重要かつ繊細な時期に居る。自信の無かった自分を克服し始め、努力が実るのを感じ、しかし全く知らない環境に飛び込んだ。
たった一度の勝利、或いは敗北がその後の全てを決める事だってある。ロックンロールで全てが決まる事もある。ただし、悪い方向に決まってしまったらトライアゲイン。
…マジな話、ここで白浜君に一戦やってもらいたい。理想なのは、そこそこ強い奴と戦って勝利、その後にレベルが違う奴ともやりあって敗北、かな。
自分も勝てるんだ、成長してるんだという実感の後、まだまだ先が長いと鼻っ柱を適度に折っておきたい。
さぁて、どんな人が居るかな…?
道場にやってきてみたが……今日はハズレ、だな。いやハズレっていうのも失礼かもしれんが、少なくとも白浜君の腕試しには使えそうにない。ついでに、神夜の欲求不満解消にも。
だって、看板に『モノノフ修行体験会・お子様から女人向け』なんて書かれてますからネ☆
…いやなーにやってんのよ…。
「一応、開催理由に理屈は通っていますね。幼い頃から修行に触れさせて、モノノフになりやすくしよう、っていうつもりのようです」
要するに青田狩りか。…神夜、シノノメの里だとどうだった?
「大体、大なり小なり修行はしていました。ただでさえ人手が足りていませんでしたし、鬼にいつ攻め込まれてもおかしくないから、全員最低限戦えるように…って」
うーん…環境が違い過ぎるってのは、確かにあるな。
とは言え、女子供でも強い奴は間違いなく強いし。白浜君と戦わせてみようか…。
「やめといた方がいいと思います。白浜さんは、女性には絶対手を上げないって決めているようですし。慣れてからならいいですけど、初戦でそれだと間違いなく負けます」
そうだな。
んじゃ、残念ながら今日は白浜君の稽古は無しだ。代わりに、あの子達に混じってくるといい。
「はい? …あの、師匠。文字通りの意味で子供だけに見えるんですけど…お子様向けなのに僕が混じって大丈夫でしょうか? と言うより割と恥ずかしい…」
いいから行っといで。普段の修行とは全く違うやり方だから、見てるだけでも多少は参考になる。
心配しなくても、変質者扱いされないよう、ちゃんと話は通しておくわい。
さて、それはそれとして…折角来たんだし、やれる事はやっておくか。何処かに丁度いい人は……む、おっぱい大きい可愛い子発見。
すみませーん。
「はい? …私ですか?」
声をかけたのは、明日奈達よりも一回り年下の、竹刀を持った子だ。…スタイルの良さに惹かれてしまったのは否定しない。
見知らぬ人間にいきなり声をかけられたからか、ちょっと警戒しているようだ。竹刀をいつでも手に取れるようにしている…が、こりゃ一般人レベルだな。モノノフ体験をしにきたんだろうか?
それは置いといて、人を探してるんですけど、手を貸していただけないでしょうか?
この道場に…今日は居ないみたいだけど時々現れる、金髪の女性なんですが。
「は゛っ゛“!?”」
お、おぅ!? なんかいきなり凄い声が出たんだけど。
「き、金髪……ですか?」
え、ええ。前からここに居たと思うんだけど…。
「……も、もう少し特徴を…」
何にショックを受けているのか、妙に奮える声で問いかけてくる。…さっきまでとは別の意味で、警戒されているような気がする。むしろ今すぐ逃げたがっているようだ。
特徴…そうだなぁ、髪は伸ばしてるね。刀とは違う西洋式の剣を持っていて、碧「…直葉ちゃん?」……え?
背後から声をかけられて振り返ると、そこには神夜が呆然として立っていた。背負った斬冠刀を抜いてはいない…よかった、欲求不満で暴れ出しはしなかったか。
…で、なに? また知り合い?
「…………斬冠刀…? と言う事は、ひょっとして神夜さん!? え、え、え、どうしてここに? 幽霊じゃないですよね!? 無事だったんですか!」
「神夜ちゃんこそ、元気そうな事極まりないです! 里が異界に囲まれて連絡が取れなくなっていましたが、ちゃんと無事でしたよ。今は通路が開けたんで、霊山にやってきているんです!」
感極まったように抱き合い、喜ぶ二人。何だか蚊帳の外だが、ここで嘴を突っ込むのも躊躇われる。
…とりあえず、この二人は落ち着くまで放っておくか。神夜の知人なら、逃げられる事もないだろう。反応からして、グウェンを知っている可能性は高い。…別に彼女から聞き出すのに拘る理由もないけども。
白浜君が生意気なガキ共に下手糞な関節技をかけられ、痛みよりもどう対処すればいいか分からず悲鳴をあげているのを横目に、感動の再会(らしい)を眺める事30分くらい。なんか途中からガールズトークに華が咲いていたが、何も言うまい。
今日はもう何もできそうにないなーと空を見上げていたら、ようやく神夜が俺の存在を思い出してくれた。
「すみません、盛り上がってしまいました…。直葉ちゃん、この方が先程触れた、お付き合いさせていただいている方です」
「ど、どうも、直葉です。先程はどうも…」
ああいえ、お構いなく。お二人はどういう関係で?
「姉妹弟子です。シノノメの里に居た頃、一緒に剣術をやっていたんですよ」
「習ったのは、基礎の基礎だけですけど…」
「直葉ちゃんと会えると分かっていたら、預かっていた竹刀を持ってきたのに…残念な事極まりないです」
「あの竹刀、まだ持っていてくれたんですか!?」
ああ、そういや神夜の部屋に、預かり物の竹刀が一本あったっけ。あれの持ち主か。
うーん、まさか適当に声をかけた子が、そんな関係性だったとは…。
「ちなみに、先日会った桐人さんの妹さんでもあるんですよ」
ああ、あの兄ちゃんの。モノノフになったお兄さんに憧れて、修行体験会に参加しに来たのかな。
「それは…ちょっと違うと言うか、微妙に合っているというか……ええと、それでいいです、はい」
? 反応がよく分からない。照れているのではなく、何やら気付かれると都合の悪い事を隠そうとしているような…まぁいいか。
しかし、そういう関係だと、明日奈とも知り合い?
「…ええ、知ってはいますけど……ひょっとして、一緒に来てます?」
「来てます。そして先日、桐人さんとも会ってます」
「………お兄ちゃん、それで何だか怯えてたのかぁ…」
「……明日奈さんがすいません」
…本当に申し訳ない。
どうやら桐人君、女性恐怖症の元凶であった明日奈にあった事で、恐怖症が酷くなってしまったらしい。
情けないと思わなくもないが、幼心に負った傷はそうそう消えるものではない。むしろここは、明日奈の蝉ドンを喰らってその程度で済んだ桐人君を褒めるべき…と思っておこう。
どうやら明日奈ともそこそこ親交があったようだが、兄の恐怖症の元凶でもあると言う事で、複雑な感情を持っているようだ。無理もない。
「あ、ひょっとして直葉ちゃんもモノノフになるんですか? 一緒に討伐したい事、極まりないです!」
「いえ…私は、そこまでは考えてなくって…家事もしないといけませんし」
「そうですか…。残念ですけど、人の自由です。でも、いざと言う時に備えておいた方がいいですよ」
…ふむ、家事…ね。そりゃ家事くらい誰だってやるだろうけど、あの年齢の子が…? スタイルはともかく、実年齢は多分JCくらい。モノノフの年齢基準でも、まだ親元に居るべき時期だ。
この子と桐人君の両親は、恐らくもう…。オオマガトキによるものなのか他の理由かまでは分からないが。
推測と言ってしまえばそれまでだが、慣れてる人間なら一目見ただけで家族構成とか職業とか当てられる。そう外れた予測ではないだろう。……肝心な時に役に立たない事に、定評のある予測だけどね。
…それはそれとして、グウェンの事は聞けそうにないなぁ。まーここに居る事自体は確実だし、ちょいと調べればすぐに見つかるだろう。
あの子は自覚していないと思うが、目立つ容姿をしているし、度々訓練を抜け出すという悪癖もある。それはあの…なんだっけ、宝剣ナンタラから呼び出される白炎との闘いに他人を巻き込まないようにしているんだが、そんな事は他人には分からない。
武器を抱えて、急ぎ足で路地裏に、或いは人混みを駆け抜けて森の奥とかに入って行く姿…かなり印象に残るだろう。
神夜、積もる話もあるだろうし、俺は先に戻るわ。悪いけど、後で白浜君を回収してきてほしい。
「あ、はい。…白浜さん、見事に遊ばれてますねぇ」
「あ、あはははは…あの子達は特にやんちゃな子達ですから…」
つまりクソガキじゃねーか…。
とりあえず、俺はもう行くよ。晩飯用意しとくか?
「はい、お願いします。直葉ちゃん、お料理の腕は上がりましたか? 竹刀を振るのもいいですけど、腕を奮うのもいいものですねぇ」
「むしろ神夜さんこそ、料理する暇があったら木刀を振ろうとしてたじゃないですか。これでも結構自信ありますよ。今度、作りっこしましょう」
…ここに居たら腹が減るだけだな。では、撤退。
白浜君、そんな目で見ても、軽い威圧で押し返せとしか言えないぞ。それで泣かれたって、初対面の大人に関節技かけるようなガキどもにゃ、いい躾けだろ。
と言う訳で、一人の時間…と思ったら九葉のおっさんにばったり会った。…いや、ばったりじゃないな。多分、偶然を装って俺を待ち構えていたんだ。
偶然を装う…誰に対して? 俺に? 或いは……政争している誰かに?
「全くの出鱈目、と言う訳でもないようだな。あの異界に長時間潜っても活動に支障を来さない…、それだけでも大きな価値がある。数が少なすぎるがな」
そりゃしゃーない。作り方も素材も不明なんだ。と言うか、尾行でもさせてたのか? それらしい気配はなかったが。
「尾行などする必要もない。モノノフがいつ異界に向かい戻って来たのか、記録されているのを知らんのか? 持ち帰った鬼の部位を見ても、別の異界で誤魔化したのではない事は分かる」
ふぅん。…で、何ぞ用事でもあるのか? 世間話に花を咲かすような性格でもないだろう。
「無論だ。一つ忠告をしておこう。あの異界で何を見ても騒ぎ立てぬ事だ。貴様が如何に腕利きのモノノフでも、霊山そのものと事を構える気はあるまい。百害どころか、千害あって一利なしよ。増して、貴様らはシノノメの里の代表としてここに居る。交渉に際して、人質を取られているようなものよ」
ほう? 公表すれば霊山が躍起になって潰しにかかるような『何か』が、あの異界にあると。しかも知ってしまった俺達のみではなく、シノノメの里を干殺しにする事さえ躊躇わないと。
それどころか、霊山が各里やモノノフから信頼を失い、人間全体が空中分解してしまいかねないような秘密なのかもしれない。
その証言だけでも、充分すぎる程危険だと思うが…。そもそもあの異界を調べるよう命じたのは九葉のおっさん自身だ。
何を考えている?
「ふっ、隠し立てして蓋をしたところで、消えてなくなる訳ではない。ならば、単にある物は使うというだけの事だ」
使う? …公開されたら大騒動になる代物なんじゃないのか?
それを、わざわざ見つけさせるように仕向け、口留めして、しかし使えるのなら使う…使ったら色々とバレると思うが。
中途半端と言うか、ちぐはぐと言うか。中途半端である事だけは、この悪党面のおっさんに限ってないだろう。色々覚悟がガン極まりしてる人だから。
…信用、すべきか? 必要であれば何でもやるからな、この人。大して信用を勝ち得ている訳でもない今、捨て駒にされている可能性もある。
「ああ、もう一つ忠告をしておこう。霊山とシノノメの里との交流を望むのであれば、他の人間からの働きかけはやめておく事だ。見当くらいはついているだろうが、霊山の闇は貴様が思っているよりも深い。シノノメの里を、政争の場にはしたくあるまい」
…それはあんただけに頼んでいたとしても、同じ事になると思うがな。
増して、本意はどうあれ北の地を見捨てた鬼、なんて言われてるあんただ。…里の連中の反応がどうなるか、正直分からん。
「鬼の手を借りぬというのであれば、自力で歩んでみせるがいい。だがそうだな…いいだろう、信用できんと言うのなら、取引としておいてやろう。先日の話では、明確に決めてはいなかったからな。貴様は異界の浄化が出鱈目ではない事を証明する。そしてその方法を提供すれば対価として、シノノメの里に可能な限りの便宜を図ろう」
…異界の中にあるかもしれない、危険そうな物を見つけた場合は?
「物にもよるが、私が処理を引き受けよう。少なくともシノノメの里に関わりがあるとは悟らせぬ」
了解した。
…話は変わるが、シノノメの里から来たという事については疑っていないのか?
「ふん、今更何を言う。八方斎が最後に居たのはシノノメの里だ。異界が消失して通路が出来たという話も、相馬が確認を取って来たわ。貴様が本当にやったのかはともかく、少なくとも異界が突如消えるという現象が起きたのは事実。シノノメの里には、それに関係するものがあるのだろう。その一端だけでも手に入れば、値千金よ」
そういや同期とか言ってたな…。むぅ、侮れんなあのデカ頭…。