いつもの後書きの短編ではなく、狩りゲー世界転生輪 異伝に同時投稿させていただいています。
是非ともご覧くださいませ。
魔禍月伍拾日目
山本先生(お婆ちゃんバージョン)が、土井の胃を痛めるような情報を拾ってきた。……あの胃痛は、ウチケシの実でも回復しそうにないなぁ…。精神的なもんだろうし、常態化してるし…。
どこから記したものか………そう、今俺達が調べ、浄化しようとしている異界についてだ。
霊山に非常に近い場所にあるこの異界だが、数年前に突如発生したそうだ。原因は今でも不明。巷では、大物の鬼が密かに潜り込み、モノノフの精鋭部隊に討伐されたが、その冥途の土産とばかりに瘴気をばら蒔いていったのだ…と言われているが、信憑性は低い。
まぁ、ここまでであれば…霊山の結界に侵入されるという大問題はあるが、土井の胃は痛まないだろう。
山本先生は、その噂の裏にある事実を、裏付けと一緒に持ってきたのだ。
この異界、突如発生したのだが……その付近には、ある施設があったのだと言う。公的に記録されたものではない。当時を知る人々の間で、『あそこには何かがある』という噂が、まことしやかに囁かれていた。
そしてその近辺の記録を調査したところ、物資の流通量におかしな部分を発見した。この近辺を通った一部の交易商等の取引記録に、虚偽の痕跡が認められたのだ。
要するに、この場所に密かに何かを運び込んだ可能性があるって事だ。
更にキナ臭い事に、ここに異界が発生した直後、霊山の中で大きな逮捕劇があったと来ている。
何やら不心得者と言うか、不正をやっていた幹部が何人か捕縛され、失脚したようなのだが…この連中も既に死んでいる。獄中での自殺だの、裁きを受けての死刑だの、理由は様々だが…。
……ここまでやらかした連中が、そう簡単にくたばるとは思えんなぁ。
トカゲのしっぽ斬りか、それとも影武者か、そもそも敵対していた者に罪を擦り付けたのか。
何にせよ、首謀者やそれに近い連中は生きていると思っておくべきだろう。
この二つを結び合わせると…。
「…自分達に禁軍が迫っていると知った首謀者達が、証拠隠滅としてその施設ごと異界に沈めた…」
…土井、無理に口にしなくていいよ。胃痛するならこれ呑んでおけ。
「す、すまん…。しかし、痛がっている場合じゃないな、これは…。せめてもの救いは、九葉殿が味方らしいという事だけか…」
「半助、それは確かなの?」
「まず間違いなく…。…あの、伝子さん、あんまりこっちによらないで…」
「どういう意味よ!?」
女慣れしてないから、照れてるんでしょー。独身なのを察してあげなさいよ、いい女なら。
「あら、そういえばそうね。すまなかったわね、半助」
「……礼を言うべきなのか、胃を抑えるべきなのか…」
ともあれ、九葉のおっさんが味方なのはわかったが…どういう意味合いで? ああ、最終的に味方に出来るのは俺も同感だ。だが、今の俺達にそこまでの繋がりはないだろう。
「…あまり愉快な結論ではないが、彼の狙いは大体読めた。異界調査に関してのみは、だけどね。と言うより、その部分は敢えて私達に悟らせようとしている風に見える。詰まる所、鍵は……恐らく君だ」
俺?
「そうだ。本来なら部外者…知り合って1年にも満たないのに、我々の信頼を…うん、良くも悪くも勝ち得て、そして去っていく。行き先は激戦区として名高いウタカタの里。恐らく、この一点に関しては異界浄化が成功しようがしまいが、どうでもいいんだろう」
「回りくどいわね。……うん? …ああ、そう…つまり?」
「山本先生? 何か分かったの?」
「伝子さん、つまりはね…」
おーい、俺にも教えてくれぃ。
…ふむふむ。
九葉のおっさんの狙いは、異界の中から『何か』を持ち出す事…か。
その『何か』は異界の中にあるだけなら問題ないが、人に知られると色々な意味で危険が迫る。
異界が消えるという現象が確認された今、どうにかしてそれを再現し、霊山の近くにある異界…つまり俺達が調べている所を消し去ろうとするのは目に見えている。ひいては、そこに隠された『何か』も知られる事になる。
ならば、先手を打って確保してしまおう…と言う事か。
「そうだね。加えて言うなら…いや、これはあくまで推測なんだけど、『それ』は九葉殿にとって、都合が悪いだけのものではないんだろう。何かしら関係があり、手元に置いておけるなら置いておきたい…」
うーん、分からないな…。
しかし、そういう事なら探しようもある。それなりの規模の物資が運び込まれているのであれば、それを格納できるだけの場所が必要だ。異界を歩き回って、大体の地形は把握できた。候補となる場所は、あまり多くない。
2,3日あれば調査しきれそうだ。
…白浜君に、正念場が近いって言っておくべきかな…。
魔禍月伍拾壱日目
異界探索を行ったが、目星をつけた場所の一つ目はハズレだった。
とは言え、物資を運んだらしき轍の後は発見できた。次の探索で、隠されている物を発見できるだろう。
それはそれとして、どうせ異界を探索するんだからと、お役目を幾つか請け負った。
お役目と言っても、里で言う……なんだ、受付を通して受理される、モノノフの正式な任務ではない。一般人から頼まれる、『○○を幾つ調達してくれ』『○○を10体倒してきてくれ』とか、そういうサブミッションだな。
公的な受付の他に、そういう民間からの依頼が集まっている集会所もあるのだ。
今回受けた依頼は、物資の収集。そう珍しい物じゃない。…が、これを持ってきてくれってのは珍しいな。
青銅の剣。
さして珍しい物でもない…モノノフであれば、武器として扱う事すらない素材だ。剣として見れば脆すぎる事もあり、世界的に見ても武器として扱われる事は珍しいと思う。
ついでに言えば、武器防具の素材として、その辺の万事屋とかで売っているものでもある。だったらそっちで買えよ、って話だが、この依頼には一つ条件が付けられていた。
曰く、手渡された絵になるべく似ている青銅の剣が欲しい、と。
そこに書かれていたのは、僅かな曲線を帯びた片手剣。…見栄えはともかく、バランス悪いな。これ、実際の持って振り回したら、確実に重心狂うぞ。
何に使うのかという疑問はあるが、依頼は依頼だ。
それっぽい物を幾つか見つけて、軽く磨いて削ったりして加工。
これでどうよ、と集会所の受付担当に見せてみたんだが。
「確かに似てると思うけど、これでいいのかは私には分からないなぁ。依頼人に確認するしかないから、持って行っておくれ」
だそうな。…まぁ、確かに満足するかどうかは、本人に確認させなきゃ分からんわなぁ。
本来、依頼人の情報を教えるような事はないんだが、今回は特殊な依頼だし、予め許可を取っていたとの事で、依頼人の所まで出向く事になった。
日が沈む頃、道場で待ち合わせ。
…道場か。この前は何だかんだで、グウェンを探す事もできなかったっけ。
金髪で探せば、すぐに見つかると思ってたんだけどな。あの…なんだっけ、直葉ちゃん? はどうしてあんなに慌てていたんだろうか。俺とグウェンが知り合いだったとしても、意外ではあるかもしれないが、不都合はないと思うんだけどなぁ…。
なんて事を考えながら、道場を覗いてみる。気配を探るが居るのは一人だけのようだ。日中は色んな人が来てるけど、もう晩飯時だし閉館寸前なのだろうか。
…この人が依頼人なのかな…。すいませーん。
「えっ!? あっ、はい何でしょう!?」
滅茶苦茶キョドられた。…俺、何かやったっけ。
…ん? この声は…。
…神夜の友人の、直葉さん?
「え? ……あっ、この前の人…」
こんな所で何やってんの? 周囲はもう暗いし、年若い女の子がこんな人気のない所に居るのは、あんまり感心できないぞ。
「お仕事ですから。私、ここの道場の管理人なんですよ」
管理人? …師範、って意味じゃないよな。
掃除とか修理とか、そういうのの手配をしてるって事か。
「はい、後は開館と閉館も。両親が、ここの道場の関係者だったので…今はそれを受け継いでいるんです」
へえ…。
自分達で生活費を稼いでるのか。凄い子だ。
ああ、ところで人を探してるんだけど。
「…き、金髪…の人、ですか?」
それもあるけど、今は別。集会所の依頼で青銅の剣を持ってきたんだけど、欲しい形状が独特なんで、これでいいか確認しないといけないんだ。
この時間にここに来るらしいんだけど、何か知らない?
「…あ、それ、私です」
…? 君が? それが事実なら、別にいいんだけど…。何に使うのかも、詮索はしない。
とりあえず、これが依頼の物。気に入るか分からなかったから、予備を幾つか持ってきた。
背負ってきた青銅の剣を渡すと、えらく真剣な顔で眺め始めた。…依頼人、と言うのは本当らしいなぁ。
しかし、彼女は本当にここで何をしていたんだろう? いや、依頼人として俺を待っていたというのは分かるんだが。
よくよく見てみれば、えらく変わった格好をしている。俺としては珍しくないんだけど、討鬼伝世界ではちょっとお目にかかれない。
緑と白を基調とした、明かに西洋風の服。可愛いっちゃ可愛いが、典型的な日本人顔の彼女には、ちと違和感が付きまとう。
……ちゅーか、さっき懐にしまったのは……金髪のカツラ?
……………んー?
カツラを使って何をしようとしていたのか…周囲に人も居ないし、宴会芸的なサムシング? しかしそういう空気でもない。全力で隠そうとしてたし。いや隠し芸なら隠すのは当然なんだけど。
つーか、最初に会った時の会話を思い出すに……俺はグウェンじゃなくて、カツラを被っていた彼女を探していたと思われた?
…ふむ。
考え込んでいると、青銅の剣をためつすがめつしていた彼女が一段落して息を吐いた。
「………はい、大丈夫です。想像以上…ありがとうございます。あ、対価は受付の人に預けていますんで、そっちから…」
はいはい。…ところで話は変わるんだけど、この前話してた金髪の人、知ってる?
「!?」
グウェンって名前なんだけど。
「え? し、知り合いなんですか?」
いや、一方的に知ってるだけだ。ただ、あの子が持ってる剣について、ちょいと力になれるかもしれないというか、あの…なんだっけ、竜剣……ね、ネイリング? だっけ。
あれの関係で……本人じゃなくて、死んじまった爺さんとの繋がりで。(嘘だけど)
「えぇ…ひょっとして、探していた金髪の人って?」
グウェンです。…ここでカツラについて突っ込むべきか、グウェン以外に金髪の人に心上りがあるのかと思ったが、ちょっと聞きに徹してみた。
グウェンの事になった途端、直葉ちゃんが物凄い勢いで喋りだしたからだ。
どうやらこの子、グウェンに憧れているらしい。
何で? と思ったが、まぁ分からなくもない。異国人と言う事で、色々フィルターがかかっているんだろう。
見た目で言えば、気品を持った女貴族、或いは騎士だもんな。実際戦い方はそんな感じだし、血筋的にも貴族の筈だが。
強さで言っても、同年代の人間より頭一つ抜けているだろう。モノノフとしての訓練を受け始めたのは最近だが、それ以外のバイタリティが桁違いだ。何せ、ビャクエンに追いかけられながら、ヨーロッパ辺りから日本まで遥々旅してきたくらいだ。人生経験だって、色々積んでいる。少なくとも、言葉すらロクに通じない土地で、旅費と生活費を稼げるくらいには逞しい。
そのような事を口にして適当に同意してみると、我が意を得たりとばかりに更に語りだす。
数か月程前、直葉ちゃんはグウェンに助けられた事があるらしい。
ちょっとした用事の帰り道、森の中を通り抜けようとしたところ、巨大な鬼に襲われた。モノノフでもない、武器も持ってない直葉ちゃんに対抗する術などなく、どうしてこんなところに鬼がと疑問を持つ余裕もなく、ただ死んでしまうのだと動けなくなった。
鬼の足に踏みつぶされる正にその時、茂みから駆け出してきたグウェンが直葉ちゃんを掻っ攫い、必死に連れて逃げたのだ。
何が何だか分からなかったが、グウェンに怒鳴られて必死に走った。グウェンの言葉は聞いた事も無い言葉だったが、逃げろと言ってくれているのは分かった。
直葉ちゃんは震える足で逃げようとして、しかし鬼の方が圧倒的に移動速度が速い。追いつかれて殺されそうになる度に、グウェンが体を張って守ってくれたのだ。
何とかかんとか逃げ続け、鬼の姿が見えなくなった時には、グウェンは疲労困憊、傷だらけとなっていた。
そんな恩人を放ってはおけぬと、直葉ちゃんはグウェンを診療所に運び込んだ。異人と言う事で少々嫌がられたそうだが、そこは直葉ちゃんが自腹を切って料金を多めに渡す事で解決。
暫く療養している間、カタコトながら色々と会話を重ね、グウェンが日本に至るまでの旅路の話を聞いたりして……気付けば憧れの人となっていたのだそうな。
成程、この子にとってグウェンは、命懸けで大ピンチから助けてくれた、白馬の王子様みたいに見えたんだろう。実際、それに近いのは間違いない。
ところで、その鬼って火を噴いて空を飛ぶ、西洋竜……は分からないか…えーと、ぶっといトカゲみたいな奴だった?
「そうです。『どらごん』で分かりますよ。グウェンさんに教えてもらいました。強い鬼…外国では悪魔って言うんでしたっけ? 他にも、文字とかもちょっと教わってるんです。はぁ~、凄いなぁ、憧れちゃうなぁ…。とっても強くて物知りで、見ず知らずだった私を庇って戦ってくれたあの勇気…。きっと滅鬼隊ってあんな感じなんだろうなぁ…」
め、メッキ隊? なんだか化けの皮とか塗装が剥がれそうな名前だな…どっかの精鋭部隊の事か?
…しかし、やっぱりビャクエンか。
目の前の少女のピンチを放っておけなかったのもあるだろうけど、自分が呼び出してしまった鬼との争いに巻き込んでしまったって負い目もあるんだろう。
ビャクエンがグウェンの傍に度々現れる事を、この子は知っているんだろうか? 言っちゃ悪いが、疫病神扱いされても文句は言えない。実際、旅の途中でそれが原因で船が沈んだ事もあったらしいし。
うーん…わざわざ口にする事はないか。それが原因で憧れや友情に罅が入ったらと思うと、余計な事は出来ない。
しかし、前ループの時はこの子の話は全く聞いた事が無いな…。口にする機会がなかっただけか、それともバタフライ効果ってヤツか。同じ事件が起こる前に、前ループでグウェンと会って連れて行ったのか…。
まぁ、そこは考えても仕方ないか。
ところで、依頼の剣とそのカツラに関係はあるのか? 金髪のよーだが。
「え゛」
グウェンについて語るのに夢中で、いつの間にか傍らに置いていた剣とカツラ。
…流石にこれを見て見ぬフリは…。いやしてもいいんだけどさ、話すのに夢中で気付かなかったとでもしとけばいいんだし。
でもついつい言いたくなっちゃうよ。
指摘されて、ようやくカツラと…日本ではあまり見かけない恰好をしている事を思い出したらしく、あわわわわとリアルに口走りながらパニックに陥っている。
ふむ、しかし説明されなくても何となく予想はつくんだな、これが。
心配するな直葉ちゃん、君のコスプレはそう珍しい事じゃないから。
「こ、こすぷれって何ですか!? これはその、ちょっと珍しいのは確かですけど普通の服で」
いやこの辺の服屋に、そんな服売ってなかったし。むしろ、グウェンが着ていそうな服だもの。
なおコスプレと言うのは、異国の言葉…グウェンの国の言葉とも違うがコスチュームプレイの略で、特定職業や人物の恰好をして、色々と楽しむ行為を指す。
分かりやすく言えば、そこらの子供が木刀とか模造刀を持って『モノノフだぞー、強いんだぞー』とごっこ遊びしているようなもんだ。
「そ、それと同じと言われるのも複雑なんですけど! あ、でも確かに反論できないし」
…まぁ、要するにそういう事だ。
多分、この服はグウェンのお下がり。旅の途中で得た物が、背丈が合わなくなったか何かで不要になったんだろう。捨てようとしていると直葉ちゃんが興味を示したので、こんなので良ければとプレゼント。
そして憧れの騎士様のお下がりを来て、異国情緒なんかも堪能していた直葉ちゃんは、それだけでは我慢できなくなってきた。
『強い異国の騎士様』に憧れて、髪の色を変える為にカツラを被り、異国の言葉を覚え、誰も居ない夜の道場で騎士様っぽい動きや言葉を楽しんで満足していたが、今度はもっとそれっぽい剣が欲しくなった。次は盾も依頼するつもりだったかな?
「ななななんんんあななんなんでそこまででででおにいちゃんにもしられてててなかったのにににおに、おにですか!? こころをよむおにですか!?」
読心能力持った鬼なら何匹か知ってるな。ついでに、心を読めるって言うのも完全には否定できない。だって、内面観察術とか殆どサトリの領域だもの。俺のはまだ充分習熟したとは言えないが、この子の性格や言動、状況を組み合わせれば大体の予測はできる。
「普通はできませんよぉ! 誰かにばれないように、必死で隠れてあれこれ準備してたのに、こんな事でばれるなんて…ちなみに名前は『りーふぁ』って言いますぅ…」
名前までつけるか。いやそう悲観せんでも…。俺だって別に言いふらそうとは思ってないし。
そういう遊びにも興味があると言うか、理解はあるよ。
そう言っても口先の慰めにしか聞こえないのか、さめざめと泣きながら座り込んでしまう。
これって俺が悪いのか? …やっぱりカツラの事は口に出すべきではなかっただろうか…。しかしそれを言っても今更だし…。
…そうか。こんな時にピッタリの言葉があったね。
この世界では通じない言葉だけど。
赤信号 みんなで渡れば 集団自殺。
この言葉、茶化しているようにしか見えないが…こう考える事もできるのではないか。
みんなで渡『れば』集団自殺。つまりこの時、赤信号を渡っている人達の目的は移動であって、自殺ではない。信号無視という行為により、意図せずそれが自殺と化してしまう。
だが、もしも自殺が目的であったらどうだろうか?
自殺なんぞするものではないという倫理は一旦置いといて……みんなで自殺をする利点。
一人ではないという歪んだ安心感、複数人で行う事により逃亡する雰囲気を抑え込む、その他諸々…。
つまり…何が言いたいのか自分でもよく分からなくなってきたが、つまりこういう事だ。
赤信号 みんなで渡『ろう』 集団自殺。
なお、この『集団自殺』には『恥を掻こう』というルビを振るものとする。
まぁ、恥と思うのは俺じゃなさそうだが。
では直葉ちゃん、いい事を教えてあげよう。
先程言った、コスチュームプレイだが……君だけが行っているのではない。
神夜も明日奈もやってるぞ。それも、もっと過激な衣装で。
「…………え?」
観客は俺と、シノノメの里に残った友人(愛奴)。身内での遊びみたいなものだけど、これが結構本人達にも受けがいい。
具体的な衣装は、そうだなぁ………絵にすると分かりにくいけど……最近だと、こんなのとか?
「…あっ、これ可愛いっぽい…」
通称マギュル装備(女性用)だ。作ってもらった時、女装癖にでも目覚めたのかって言われたっけなぁ。
他にもゴスロリ装備やら本物の騎士っぽい装備やら、色々あるでよ。
そして過激なのの一例は……キリンでいいか。
「はぇ~……これを、神夜さん達が…」
この格好で甘えてくれたりすると、そりゃーもう可愛くてなー。
衣装が本格的だと、(くっ殺プレイにも)演技にも力が入る入る。
ちなみに神夜のお気に入りはセーラー服、明日奈はメイド服だ。率直に言えば犯罪くさいと言うか、夜の商売にしか見えないぞ。特に神夜が。
「???」
…言われても分からんか。まぁ、何だ、明日奈達は他人に見られる事は考えてないから、一緒に…とは言えないけど、そう珍しい事じゃないのは分かってくれたかな。
確かに大っぴらにできるような趣味でもないけど、恥じ入る事もない。
「は、はぁ…。…他の人もやってるってだけで、恥ずかしいのは変わらないんですけど…」
そらそーだ、結局自分の羞恥心の問題だもの。どんなに仲間や同類が居たって、割り切れなけりゃ恥ずかしいままさ。
「じゃあ、どうして神夜さん達が私と同じ事をしてるってばらしたんです?」
………その場の勢いで。
…すっごい軽蔑した顔されたけど、気のせいかなぁ。精々呆れた顔程度だよなぁ。
ハァ、と大きく息を吐いて、直葉ちゃんは立ち上がった。
「なんかもう色々と面倒くさくなってきました…今日は帰って寝ます」
おう、そうしろ。心配せんでも言いふらすような真似はしないから。
色々騒がせた詫び…と言うのもなんだが、また何か必要になったら手を貸すよ。見た目のいい装備なら、幾つか揃えてるからな。
「…覚えておきます。私も色々手間をかけさせちゃいましたし、グウェンさんに会いたがっている人が居るって言うのは伝えておきます。…実際に会うかどうかは、グウェンさん次第ですからね」
あのこなら、特に警戒もなくあっさりと会うような気がするが…まぁいいか。
…あ、ちゃんと着替えて帰れよー。目立つぞ。
ふむ、直葉ちゃんの意外な側面を見たな。と言っても、直接会話した時間なんて2時間にも満たない相手なんだけど。
まーどうのこうのと言うつもりもない。恥ずかしい趣味云々を言うなら、俺の女漁りだって充分に恥ずべき行為だし。やめるつもりはないけども。
夜の一人歩きは危険だし、送って行こうかと申し出たが遠慮された。