※この作品はR-18です。

狩りゲー世界転生輪   作:時守 暦

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第434話

 

魔禍月伍拾弐日目

 

 

 

 どえりゃあもんを見つけちまっただぎゃ。

 いやこれ本当にどうしよう。九葉のおっさんとの取引の事もあり、何となく背後関係は想像できてしまったが…。

 

 うん、引き渡すのは…ヤバいな。んじゃシノノメの里への便宜はどうするって話だが、下手な事すると便宜どころか…。

 

 

 

 …よし、まずは情報を整理しよう。

 異界にあからさまに何かあるぞと示唆されて、場所の検討をつけて調べ始めたのだが、2つめの予測が見事にヒット。隠されていた地下施設を発見した。

 その施設の入り口は、正直言って雑に封じられていた。土砂で埋め立てられた洞窟の中、地下に通じる階段の上に大きめの岩が置いてある、それだけだ。カモフラージュさえされてないので、周囲の色とまるで違う。素人でも一発で「あ、何かおかしい」と思うような偽装工作。

 …偽装する気が大してなかったのか、それとも埋め立てるだけ埋め立てて、何らかの理由で作業が出来なくなったのか。

 いや、そこはこの際どうでもいい。

 

 あからさまに怪しい階段を下ると、そこから続いていたのは木張りの廊下。壁面は土が丸見えだが、崩落しないように補強もされているようだった。

 ここ数年以上、人が通った様子はない。…が、床や壁に非常に重いナニカを引き摺った跡が残っている。相当急いでいたんだろうな。随分と乱暴に引っ張り回したようだ。

 

 

「…何なんでしょう、ここ? なんだかちぐはぐですし、嫌な気配を感じるんですけど…鬼は居ないみたいですし」

 

「そうね。一見した以上に手間がかかってるわよ、この施設。地下を掘り返して、補強して、床を用意して…しかもかなり広い…。でも、何に使う施設だったのか分からない」

 

「色々物資が運び込まれていたそうですし、倉庫でしょうか?」

 

「じゃあ、その運び込まれた物資はどこに消えたの? 倉庫にしても…例えば横領した資材を保管する倉庫にしても、交通の便が悪すぎるわ」

 

 

 んー………お、扉発見。通路はまだ奥へ続いているが、こっちも気になるな。重い物を運んだ痕跡は…奥に向かってる。

 …鍵がかかってる。が、こんなもん無意味である。

 

 ていっ。

 

 

「…そこは錠前を開ける所では?」

 

 

 めんどい。蝶番を斬った方が早い。まぁ、中にとんでもない厄ネタが居た場合、扉を閉めてなかった事にできなくなるのが欠点だが。

 さて、御開帳…。

 

 

「「げほっ、げほっ!」」

 

 

 毒!? …あ、単なる埃か。びっくりした…。

 中を覗いてみれば、乱雑に積み上げられた…いや、積み上げられたのが崩れ落ちたのか…本と巻物と書類っぽい物の束。

 大したものは無さそうだ。

 

 

「保存状態はともかく、凄い量の本…。白浜君が喜びそうね」

 

 

 …読めれば、な。ほれ、異国の文字だ。

 

 

「…本当ですね。読めますか? …うぅ、帰ったら水浴びしないと…埃だらけで痒くなってしまいます…」

 

 

 俺も読めない字だな…。見た事も無い。

 流し見してみたが、何かの専門書…か? 図解らしきものが幾つか乗っている。何についての図解なのかは分からないけども。

 

 

 

「ここに居ても、読める本一つ見つかりそうにないですね。奥に進みま………?」

 

 

 ん、どうした神夜?

 

 

「いえ、足元の床に何か模様が……あったような気がしたんですけど、気のせいでした。進みましょう」

 

 

 

 

 適当な書を一冊失敬して、先へ進む。同じような部屋が幾つか見られ、そこにはやはり見た事も無い文字で書かれた本が積み上げられていた。

 …妙だな。あるのは本ばかりで、運び込まれていたと思われる物資の痕跡が殆ど無い。食料とかなら消費したんだと分かるけど、金属やら何やらは一体どこへ消えたのか。

 

 そんな疑問を持ちながら進んでいくと、変化が一つ現れた。

 扉や壁に、怪しげな落書きが施されるようになったのだ。…これは…モノノフが使う経文唱で浮き出る文字に、何となく似てるな。

 

 

「梵字…のようですが、これもちょっと違う…。明らかに何らかのまじないだと思います。…あっ、あそこの扉に、引き摺った跡の一つが続いてますよ」

 

 

 神夜の言う通り、一際落書きが多い扉に、引き摺った跡が続いている。

 さて、明かにここに何かあるようだが…予想に反して、鍵はかかっていなかった。それどころか半開き状態だった。

 単純に考えれば、ここに何かを運び込んだ者が、扉を閉める事もせずに大慌てで去って行った…?

 

 

「さて、鬼が出るか蛇が出るか…。出来れば鬼であってほしいですねぇ」

 

「どっちが相手でも、斬り伏せる事に変わりはないわ。二人とも、準備はいい?」

 

「いつでも」

 

 

 同じく。

 

 

「それじゃあ……そーっと…」

 

 

 勇ましい事を言いつつも、扉の隙間から中を覗き込む俺達。

 そして俺は二人に即座に目を塞がれました。

 

 

「「見ちゃ駄目(です)!!」」

 

 

 いやそんな事言ってる場合か! …幸い敵は居ないようだけど!

 見るなと言うのも分かるけど、調査は必要でしょうが!

 

 一頻ギャースカ騒いだものの、本当に敵は居なかったらしい。…こういう時は、天井にひっついている大蜘蛛とかがお約束だと思うんだが。

 

 それはともかく、咄嗟に目を塞がれるのも分からんでもない。そこに居たのは…素っ裸で隠すもの一つない、3人の美女美少女だったのだから。

 

 

 

 

 

 ただし、魔法陣の中央に設置された、円柱状のケースの中で、培養液っぽい液体に浮かんで眠っているものとする。

 

 

 

 

 …真面目に、そういう目で見る気にならんなぁ…。おっぱいもまんこを丸出しだけど、状態が状態だから催さないわ。

 とりあえず一端部屋の外に出て、どういう事なのか考える。

 

 

「…人間、ですよね。生きてるんでしょうか?」

 

「人間だとして、いつからここに居るのかしら…。異界の中に居るんだから瘴気は吸い込んでる…いえ、あの柱が密閉されているなら……と言うか、どう考えても溺れ死ぬわね」

 

 

 ホムンクルスとかは、ああいう容器の中で育てられる印象があるが…これは創作の話だな。

 しかし、仮に死んでいるとしても、これって明らかに訳アリだろ。九葉のおっさんが見つけさせたかったのって、これなのかな。

 

 

「見つけさせて、どうするつもりかしら。…隠したのは、九葉さん…?」

 

「それは違うと思います。隠していたものを、わざわざ見つけさせる必要なんてあります?」

 

「一時は必要なくなったけどまた必要になったとか、隠した場所に異界が発生して取りに来れなくなったとか、色々考えられるわ」

 

 

 九葉のおっさんは、見つけた物は引き取るって言ってたな。引き取ってどうするとまでは聞いてないが…あのおっさん、必要であれば何でもやるから、下手な事はできんぞ。受け取って即始末………可能性は否定できない。

 とにかく、状況を把握する為にも、もっと情報が必要だ。

 下心とか無いから、部屋に入って調べるぞ。

 

 

「「本当かなぁ…」」

 

 

 信用ないね。仕方ないけど。

 もう一度部屋に入り、まず全体を見回す。

 

 大きな魔法陣と、その中央には3つの円柱状の容器……いや、4つめがある。だが4つめの容器は倒れ、容器は粉々になっていた。容器の欠片に降り積もった埃を見ると、もう何年も前からこのままのようだ。

 …死骸の類は見当たらない。この4つ目の容器だけ、人が入っていなかったとは考え辛い。割れた事で意識を取り戻し、どこかに出て行ったのかもしれない。扉が半開きだったのは、その時開けられたもの…と考える事もできるな。

 

 地面に書かれている魔法陣には、何の意味があるのかよく分からない。西洋風の文字、日本の文字、見た事もない記号。…気のせいでなければ、僅かに何らかの力を感じ取る事ができる。

 単純に考えれば、筒の中の彼女達を生存させておく為の仕掛けか。…或いは、目を覚まさせない為の封印か。どっちもありそうな話だ。

 

 他にはこの部屋には何も無さそうだ。魔法陣は部屋いっぱいに描かれているし、下手な物を置いておく事は出来なかったのか。これ程の規模の魔法陣、書き上げるのにそれなりに手間と時間がかかるだろう。…この円柱と中の女性達は、外部から運び込まれたもの…と言う事は、彼女達を『保管』する為に予め用意された部屋か。

 

 

 さて、いよいよ肝心の女性3人だが…目を向けた途端、ジトッとした目で見られたが、これまで部屋をちゃんと観察していた為か、何も言われなかった。と言うか、君らも気付いた事があったらちゃんと言ってよね。

 

 

「気付いた事……3人とも、明かな手練です。体付が、一般人のものとは明らかに異なります。戦う為に作り上げられた肉体です」

 

「でもそれにしては、傷跡一つないわよね。掌にも、胼胝(タコ)の一つも見当たらない。鬼と戦い続けていれば、薄くても傷跡の一つ二つはある筈なのに」

 

 

 傷一つつかず、武器も使わない…ってのは考え辛いな。…意図的に削り落としたり、傷跡を消し去る事もできない訳じゃないが…。

 顔付を見てみると、妙な印象を持った。3人揃って全くの無表情だから、猶更分かりやすい。年齢・髪型・髪の色・体格で全くの別人に見えるが、顔付が非常に似通っている。姉妹だろうか? それにしたって似すぎている気がする。

 と言うより…そもそも整い過ぎだ。顔だけではなく、体全体が。染みも黒子も見当たらないと来た。

 美人が多いのは個人的に嬉しい事だが、生気が無さすぎる事もあり、よくできたマネキンが並んでいるように見える。

 

 よく見ると、ゆっくりと呼吸していて、生きている事は確信できた。…が、正直それ以上の事はよく分からない。

 素っ裸と言うのは、逆に手掛かりが少なくなるなぁ。せめて服の一つもあれば、そこから生活様式を想像する事もできるのに。

 

 

 

 …仕方ない。この部屋の調査はここまでだ。もう少し奥に進むぞ。

 

 

「えっ!? この人はどうするの!? まさか放っておくなんて」

 

 

 救出手段は考えるさ。ただ、現状では助けようにも方法が無い。

 理屈は分からないが、あの筒の中に居る間は瘴気も無効化されているし、食べ物とかも必要ないようだ。救出が遅れても、致命的な事にはならない筈だ。

 

 

「明日奈さん、気持ちは分かりますけど、ここの瘴気の濃さを考えると、あの筒から出しても外に出るまで保つとは思えません。無理に助けようとすれば、最悪の事態を招きます。…それに、重い物を…この筒と同じものを運んだと思われる痕跡は、まだ奥に続いているんですよ」

 

「! ……そう…だったわね。まだ他にも、同じような人達がいるかもしれない。まずは全体の把握が先よ」

 

 

 そういう事だ。焦るな。

 連れ帰ったら連れ帰ったで、この人達を匿う方法も必要だ。どう見ても超絶危険厄介ごとだもの。

 

 

 明日奈を落ち着け、まずは先に進んでみる。

 引き摺った跡を追いかけて行けば、似たような光景が待っていた。大きな部屋と扉、描かれた魔法陣と、その中央に4つずつ設置された容器。

 ただし、グロ画像にも遭遇。容器の中に居る人全てが無事だったのではない。

 

 濁った培養液の中で、水死体のような状態で浮いている者。割れた容器のすぐ傍で、朽ちた人骨と成り果てた者。力を感じない魔法陣に接地されていた容器の中では、4つの容器に入っている者全員が死骸となっていた。鬼と人が入り混じっているような容姿の者も居る。

 まともな形で残っていた…生死は問わず…人達の姿形は様々だったが、同じ場所に接地されている者同士は、最初の部屋同様に極めて似通った顔をしていた。

 ちなみに9割以上が女性。残った1割は……まぁ、何だショタからオッサンからフタナリまで色々だ。

 

 ここまで来れば、俺だけでなく明日奈も神夜も、ここがどういう場所なのか理解できた。

 

 

 

 人体実験、人体錬成、或いはそれに近い何かの保管場所。

 

 

「…ですね」

 

 

 反吐が出るとでも言いたそうな表情で、神夜が言葉短く同意する。

 

 

「でも、一体誰が…」

 

 

 具体的には分からん。分からんが、霊山が関わっている事は間違いない。

 両さん…前村長が、密かに仕入れた情報だ。霊山で、胸糞悪くなる行為が行われているってな。こいつをネタにして、霊山を脅してでも援助を引き出せって話だったんだが。

 

 

「いやそれはちょっとどうかと…でもあの人なら言いそう…」

 

 

 ま、本人も喜んでやれって言ってる訳じゃないよ、多分。やれとは言われたが、あまり楽しそうではなかったね。

 シノノメの里も大分追い詰められてるし、背に腹は代えられんってな。

 

 

「でも霊山が…仮にも私達モノノフの総本山なのに…でも確かにシノノメの里を見捨てたって言われて…」

 

 

 この際、誰がどうして行ったかは後回しだ。生き残っている人数を把握して、引っ張り出す手段を見つけ出すぞ。

 ついでに言えば、九葉のオッサンがわざわざ掘り返そうとするくらいだ。単なる人体実験じゃないのかもしれん。

 

 

 

 そういう訳で色々見て回ったが、思っていた以上に生き残っている人の数が多い。いや悪い事じゃないんだけど。それでも20人に満たない程度だ。

 うーむ、こりゃ一遍に引き出すのは無理かな…。仮に助け出したとして、この人達の生活をどうするって話だし。

 

 

「…そうね。嫌な想像になるけど、本当に人体実験とかの被害者なら……普通の生活が送れるか怪しいし。物語でよくあるのは、急に暴れ出すとか、忘失しているとか、そもそも理性が残ってないとか…」

 

「明日奈さん、結構そういう話を呼んでましたね。白浜屋の常連でしたし。とりあえず、一人か二人を連れ出してみて、その人を観察してここに居る人達をどうするか決める…ですかね」

 

 

 そうだな。連れ出した事を隠すにしても、一人二人が限度だろう。九葉のオッサンが、全面的に味方してくれると仮定してもな。

 さて、そうなると逆に候補を絞らなきゃならんな。一人だけなら、俺が担いで持って帰れる。

 …一応言っとくが、背負えば色々堪能できるなんてちょっとしか思ってないぞ。

 

 

「正直に言った事に免じて、許してあげます。でも弾むように走ったりしたら、まとめて斬っちゃいますから♪」

 

 

 斬れるもんなら斬ってみんさい。ま、それはともかくとして…これで大体のところは回った。

 まだもうちょっと奥があって、鍵がかかってるからそこは後でブチ破るとして。

 

 容器の中で生きている人を、引っ張りだすだけなら特に問題はないようだ。

 魔法陣の効果は、主に『停滞』。容器に備わっているカラクリと培養液があって初めて効果があるようだが、要するに容器の中に入れた生命体を、その時の状態のままにさせるものだ。死んでいる者を強引に生き永らえさせるものでもなければ、そこでしか生きられない生物を保管するものでもない。

 つまり、容器の中で生きている以上、引っ張り出しても同様に生き続けるのだ。……多分。………目に見えない、内臓の傷とかあったら分からんが。

 そもそもここの結論自体、お陀仏している人達の周辺の状況を観察して類推したものでしかないし。

 

 さて、どの人を連れ出したものか。このまま放置しておくと死んでしまいそうな人を最優先とすべきだが、生き残っている人達の状況はほぼ同等だ。…と言うより、経年劣化でどうにかなってしまうような保存状態なら、これまでの間に朽ちて死んでしまっていたという事だろう。

 現状、一番重要そう…なのは、連れ出しに失敗したときのリスクがでかいか?

 

 救出の方法としては、出入口に近いところまで何とか容器を引っ張っていき、そこで中の人を取り出して異界の外までダッシュ…となるが。

 

 

 

 

 ふむ…。

 

 

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