うーむ……適切な装備を選べば大体は何とかなるんだけど、ラスボスがキツすぎる。
最初にノーマルで勝った時はスナイパーライフルで緑エナジーを破壊して、後は途切れない弱い射撃武器で常に上向きで20分。
ハードはどうにもクリアできる気がしなかったので攻略サイトを見て、安全地帯の存在を知ってそこから狙撃でチクチク…。
…安全地帯使ってるから当たり前かもしれませんが、作業感が強すぎる…。
EDF4は窮地からの窮地で必死こいて走り回り、隙をついて一撃を繰り返して落とした感じ。会話の盛り上がり的には神だった。
EDF5は盛り上がりは4には一歩劣ったものの、動き回ってボスの四肢を削いで行動制限して…と躍動感があった。
今回のこれはちょっと…うーむ、HP限界まで上げて正面から突っ込めば…いやハーデストでも普通に死にそう。
と言うか、旗艦バーベナが普通の武器では傷つかないって、ラスボス戦でそれを砦にして戦ってヒントだったんだろうか。
最初の試行錯誤中に試してみたんだけど、雑魚的が群がってきてこのやり方は無理と諦めたなぁ…。
魔禍月伍拾伍日目
昨晩は、伝子さんと寝ずの番だったのでお楽しみは無し。
雪風が一人で寝るのを嫌がって、かなり本気でぐずってなぁ…。心細いのもあるだろうけど、一種のトラウマが刻みつけられているのかもしれない。
ずーっと眠り続けていたからな。一度眠ったら、もう目を覚まさないんじゃないか…そんな不安を抱えているんだろうか。
手を繋いで、慣れない子守歌なんぞ歌ってようやく寝付いてくれたが、その隣でオタノシミは流石に憚られる。起きて目撃されると、話が凄い勢いでややこしくなりそうだし…。
それに、別に気になる事もあったからな。雪風の事が無くても、どの道徹夜で起きているのは確実だった。
それはそれとして、昨日の謎の視線だが、思っていた以上に早く進展があった。
と言うか、張本人が真正面から訪ねて来た。面識は全くない人だ。俺だけじゃなく、ザー斎を含めた全員が無い。
無機質な、どこか人間離れした印象を与えるその男は………人間離れに関しては、俺が言えた義理ではないが………、前置きも早々に、俺に神機を見せてほしいと頼み込んできたのだ。
その男の名は、茅場。隠す事すらせず、陰陽寮に所属していると言い切った変人である。
…ちなみに、その変人が俺達を訪ねて来た時の第一声がコレだ。
「失礼する。私は陰陽寮の茅場。君が昨日、道場で持っていた武器を見せてほしい。無論、対価は用意してきた」
…別にこう、無意味な前置きとか時世の挨拶をしろとは言わないけども…もうちょっとさぁ…。
単刀直入すぎて、逆に話が呑み込めない。
「あの、師匠…陰陽寮って何ですか?」
率直に言えば、霊山から追放されたモノノフや研究者の集まりだ。
追放された理由は、主に非道だったり危険すぎたりする実験、研究…の為だと聞いている。
「非道な実験って…やっぱり霊山は…」
「信じられなかったのかね。君の傍にも、その証拠となるものはあるだろう」
そう言って、チラリと雪風を見る。
本能的にこの男の異質さを感じ取ったのか、雪風は既に俺の背後で縮こまっている。
「で、でも霊山から追放されている筈の、陰陽寮? がどうしてここに」
「追放されている事自体、表向きの話だ。霊山も、陰陽寮に所属する人間全てを把握している訳ではない。そもそも追放処分となったのは、陰陽寮が結成された当初の者のみ。現に私は、霊山の研究者として所属している。組織として友好的ではないのは確かだが、同様に霊山を活動拠点としている者は何人か居る」
わぁ~お、アカンやんどう考えても。いや俺だって、虚海と結託(篭絡)したり、秋水が陰陽寮の間諜だって知りながら放置したりと、ズブズブ具体じゃ偉そうな事言えないけどさ。
…で、武器って、これかい? ヌヌ剣。
「それにも確かに興味があるが、最も強く気を惹かれたのは、最後に取り出したものだ。恐らくは変形機構が仕組まれており、我々の技術とは全く違った技術で作られている」
………………ちょいと腰を据えて話そうか。
土井さん、奥の部屋使わせてほしい。…それと、悪いがこの件については明日奈にも神夜にも聞かれたくない。話が凄い勢いでややこしくなるから。
…雪風、お前もだ。
「…シノノメの里にとって必要な部分だけは、隠さず話してくれ。それが条件だ」
分かった。…と言っても、多分殆ど無いと思うけどな。
「対価として、それなりの話を持ってきた。これについては、結果に関わらず全て告げる事を約束しよう」
さて、奥の部屋に入り、茶(ほぼ白湯だが)を入れて向かい合う。
………少し観察してみたが、正面からの殴り合いなら昼寝したままでも勝てる。が、そんな愚策を取るタイプではないな。策士、搦め手使い、…厄介なタイプだ。
何より危険なのは、こいつの冷徹な態度の裏に見える狂的な熱。マッドサイエンティスト独特の気配がする。内面観察術を試しただけで、軽い眩暈まで覚えたぞ…。
自分の望みの為なら、何もかもかなぐり捨てて、或いは巻き込んで突っ走るタイプと見た。
下手にはぐらかすと、妙な事を考えそうだし…うん。
茅場、だったか。率直に言えば、神機を見せる事自体は構わない。
ただし、直接触れる事は禁じる。不満に思うかもしれないが、神機は呪いの品みたいなものだ。下手に生物が触れると、それだけで大怪我をしかねない。
「神機…と言うのか。儀式に使われる代物とも思えないが、やはり名付けた文化の形態から違うようだな。直接触れなければいいのであれば、道具を使って触れる事は?」
構わない。とにかく生身で触れない事を徹底してくれ。
…確認するが、昨日道場で見ていたのはあんただな? 何をしていた? 雪風の監視でもしていたのか。
「正確に言えば、見ていたのは私の式神だ。そして私は滅鬼隊に興味を持っていない。研究資料に目を通した事はあるが、携わっていたのは全く別の研究者だ。君達を見かけたのは、単なる偶然だ」
偶然ねぇ…。随分都合のいい偶然があったものだな。
「偶然で納得できなければ、運命とでも言えばいいのかね。私にとっては、そう表現しても差し支え無い程の幸運ではあったが」
…俺の知ってる陰陽寮の連中は、真っ当な方法じゃ叶わない望みを実現しようとしている奴らばっかりだ。
過去に遡りたい、歴史を変えたい、とかな。
お前の望みは何だ?
「私の望みは一つだけだ。異世界に行きたいのだ」
…異世界? この世界ではない何処かへ?
「その通り。未知と探求に溢れ、この世界とは違う法則の元に成り立ち、そこで暮らす見知らぬ民族、見知らぬ生物、そして文明。私が想像しているものと違う事も多くあるだろう。異世界に向かった先で、これでは何も変わっていないと思う事もあるかもしれない。だがそれでも行きたいのだ。幼い頃から私を突き動かしてきた、ただ一つの願いだ」
…で、霊山でその研究をしてるって事か。異世界ってんなら、いっそ異界にでも行ってみたらどうだ。
鬼達がやってくる元を見つけられれば、その先に異界どころか異世界が広がっているかもしれないぞ。
「それはもう試した」
…マジか。
「鬼達が溢れ出してくる穴を見つける事まではできたが、どうも一方通行のようで、その先へ進む事は現状では不可能だ」
…って、おいおいおいおい! 何をいきなりとんでもない発見してんだよ!?
鬼が出てくる穴を見つけたって、つまりそれを塞いでしまえば…!
「穴は複数見つかっている。恐らく、異界のあちこちに同じような穴があるのだろう。その全てを塞ぐ事が出来るならまだしも、一つ二つ塞いだ程度では全く意味が無いだろう。そもそも、塞ぐ以前に干渉する手段すら見つかっていない」
…それにしたって大発見だと思うけどな…。
で、話が逸れたが、あんたはその異世界に行く方法を霊山で研究している訳か。言っちゃなんだが、よく予算が出るな。
「いいや、私の研究は新たな世界の創造だ」
……? ? ?
いやあんた異世界に行きたいって…ああ、仕事とやりたい事が一致する事なんてそうそう無いわな。
「そうでもない。これは私の願いの一環でもある」
本気で訳が分からない。
表情でそう主張すると、茅場は幼稚園児に論文の内容を解説しようとするような表情で、一つ一つ語り始めた。
異世界に行きたいと、幼い頃から願い、或いは空想を続けてきた。
しかし、そんな方法は全く見つからない。
世界が異界に沈み、別の意味で異世界みたいになってしまったが、茅場の望みはそういう事ではない。
悩んで悩んで探して研究して、知識と術を求めて陰陽寮にまで入り込み、それでも全く成果が上がらず(まぁそりゃそうだよな)、それでも諦めきれなかった時、霊山から指令を受けた。
曰く、『新世界の創造の研究をしろ』。
…この時点で、ツッコミどころが満載だなぁ…。霊山は新世界の神にでもなる気か?
「単に逃げ場を模索していただけだろう。世界の滅びが避けられないのであれば、新たな世界に行けばいい。私にその研究を命じたのは…言っては何だが、私の研究も色物扱いされていたからな。似たような荒唐無稽な話なのだから、私にやらせておけばいいとでも思ったのだろう。だが、私にとってはある意味天啓であった」
異世界に行く術がないなら、異世界を作り出してそこに乗り込もうってか?
筋が通っているのかいないのか…。どう考えても、後者の方が難易度が高いと思うが。
「そうでもなかったぞ。異界という、私が望んだ形ではないとは言え、現世の法則とは違う法則に基づく空間もあった。見本としては丁度いいし、どこにあるのかも分からない世界を探るより、創造さえ上手く行けば手元で観測・管理が出来る世界の方が、形にしやすかったからな」
…まぁ、その辺は実際に研究してる人の感覚だと思うけど。
で、結局俺の神機に目をつけたのは…。
「一目見ただけで分かった。あの道具は、異世界で作られたものだ。未知の素材、見知らぬ技術、想像さえできなかった発想、そしてその完成度。断言しよう、この世界の何処を探しても、あのような道具は存在しない!」
何処か無機質だった目に、炎が宿る。確実に地獄の業火だけど。
「君の事も、一晩かけて調べ上げた。凶星月の初めの頃、シノノメの里に突如現れたモノノフ。里一番と謳われていたモノノフを一蹴し、異界を消し去り、一瞬とは言え得体の知れない鬼に変じ、神垣の巫女を初めとした…まぁ、女性関係については私が口を挟む事ではない。君は霊山で任を受け、ウタカタの里へ向かう途中に異界に入り込み、気が付けばシノノメの里付近に居たそうだな。だが、それは有り得ない。君が霊山に所属していた記録はない。オオマガトキが起きて以来、ウタカタに所属するよう命じられたモノノフも居ない。…いや、ここは関係ないな。君が何者であろうと、私にとってはどうでもいい事だ。問うべきなのはただ一つ、異世界についてのみ」
…たった一晩で、どれだけ調べ上げてやがるんだこの野郎…。シノノメの里まで、馬を使っても往復に数日かかるんだぞ。
神垣の巫女が使う、千里眼みたいな術でも使えるのかもしれない。
方法はともかく、こりゃ誤魔化すのは諦めた方がよさそうだ。
異世界なんて夢見事を本気で信じて探求している上、あらゆる手段で証拠を集め、逃げ道を塞いでくる。榊博士以上に厄介だ。
何より、この狂気すら感じる執念、執着。確信を持たれてしまった以上、何を言おうと聞き入れはしないだろう。
だが、逆にこれで得た技術や知識を、他の何かに使うとは考え辛い。この男の頭にあるのは、本人も言っている通り『異世界へ行く』という渇望だけ。
それに協力してさえいれば、この男は妙な事はやらかさない。と思う。思いたい。研究とか実験結果的なアレコレはともかく、敵対したり謀殺したりとか、そういうのは無いだろう。
何せ、俺は唯一の異世界の手掛かりだ。俺自身が何も分かってないとしても、研究材料として価値はあるだろう。
結論。全面協力。
もし本当に異世界への道が見つかったのなら、鬼をどうにかするとか、GE世界やMH世界へ行く事も可能になるかもしれないのだ。
「さて…問答はもういいかね。そろそろ、神機とやらを見せてほしい。素手で触るなという話も忘れてはいない」
…そうだな。
裏もないようだし、とりあえずはいいか。…対価として持ってきた情報は後回しでいい。
ただし、見せる時間は1日に3時間まで。放置しておくと、何週間でも調べ続けそうだからな。
異世界に関する質問は、その間に受け付ける。それでいいか?
「構わない。私とて、延々と眺めているだけで満足はできん。神機から得られた情報を纏め、考察せねばならん…!」
そう言いながらも、茅場の目付は完全にクスリを前にした薬物中毒者状態だった。
なんか不安だが、これ以上あれこれ言っても仕方ない。若干の不安を覚えながらも、神機を机の上に置く。
それを目にした茅場は、あっという間に『直接触れない』という約束も忘れて、奇声をあげて齧り付く…かと思いきや、逆に物凄く冷静だった。目付以外は。
矯めつ眇めつ、微に入り細に入り観察し、何処からともなく取り出した手帳と筆でスケッチしていく。
「この絡繰りは、戦いの為の道具か。細かい傷が幾つかある。まるで神機自体が大破したような痕跡も見られるが、修理されている。見た所、かなり頑丈に作られているようだが、その道具にこれ程の傷を与える存在が居るのか。異世界も平和という訳ではないようだ。何かしらの脅威があり、それに対抗する為に作られた技術。…ただの刀にしては、余計な部分が多い。可変機能はなんのために付けられた? 近接攻撃、遠距離攻撃、防御…それだけではない。何か他に本命の機能があるな。脅威に対抗する為の、何か特別な機能…それこそがこの神機の肝だ。だが、その反面この組み合わない素材はどういう事だ? 金属を主とした胴体部分と、原始的な何かしらの生物の牙や爪を使用した刀身。頑丈さや切れ味を求めるなら、金属を加工した方が余程簡単で、信頼性も増すだろうに。大きさが合うかどうかも分からない動物の部位を、乱獲してきて使用したとでも? そもそもこの爪の大きさは何だ。このような生物が居るのか。鬼と言われた方が余程………いや待て、モノノフも武器防具を作成するのに鬼の部位を使用するな。つまりそれと同じ理由か。脅威となる存在の一部を使用する事で、その力に肖る事が出来る、或いはそれに近い事が出来る。ふむ、異界の脅威は一筋縄ではいかんようだな。む? この部分は…締め付ける事で部品を固定しているのか。しかし外す為の機構もある。手入れの為……だけではないな。そうか、刀身を外して別の刀身をつける事を想定しているのか。それもかなり頻繁に。…刀身と一言で言っても、重心の位置も違うだろうに、何故わざわざそんな事を? 相手によって、重心が狂うのも覚悟で部品を切り替えねば、渡り合えないのだろうか。刀身が使い捨て…は無いな。丁度いい大きさの部位を揃えるだけでも一苦労の筈。しかし…この刀身、このような使い方を想定されていなかったのではないか? 長さや見える部分の柄部分からして、この神機に合一させて使うのではなく、手にもって振るうのだと思うが……むぅ、噛み合わん…。まるで二つの異なる道具を、無理矢理一つに合わせたかのようだ。しかしそれにしては完成度が…」
……うん、こりゃ充分狂乱しとるわ。騒いだり喚いたりしないだけで、中身が完全に熱狂してやがる。
ついでに言えば、この人意外と即物的と言うか、目先のモノに釣られる人種だったようだ。
確かに神機は、目の前にじつざいする異世界の産物だが、優先順位で言えば俺から情報を聞くべきだと思うんだけどね。どうやったら異世界に行けるのか、とか。まぁ聞かれても、未だに理屈が分かっていないんですが。
と言うか、さっきから神機をジロジロ観察しただけで、MH世界・GE世界の状況や文化が凄い勢いで推測されて行ってるんですが。
5分も経たずに、この武器を扱うには何かしらの人体改造が必要な事まで突き止めてしまった。
予想していた質問攻めも無かったし、神機を持ってどっか逃げるとかいう事も無さそうなので、とりあえず部屋の外に出た。
「あ…終わりましたか?」
「揉め事には…ならなかったみたいね」
ああ、神夜も明日奈も待たせたな。と言っても、茅場はまだ中で調べ物中だが。
暫く入らないでやってくれ。
とりあえず、協力関係ま築けたと思う。今後も頻繁に訪ねてくると思うが、いきなり切りかかるような事はしないように。
「師匠は僕達を何だと思ってる訳ですか。そりゃあ…陰陽寮とか、人体実験とか、そういう事は気になってますけど」
「それで、対価として持ってきたという情報は?」
そっちはまだ聞けてない。
「む? どういう事だ」
いや、あいつ、俺が持ってる珍しい道具を見せてほしいってやってきたんだけど、実際に見せたら夢中になっちまって。
話が出来るような状態じゃねーんだわ。
気になるようだったら、こっそり部屋の中を覗いてみろよ。邪魔だけはしないようにな。
「そーっと…」
既に雪風が、こっそり覗き込んでいた。茅場に怯えていたと思うんだが。
…黙って扉を閉めた。…そそくさと俺の隣に座り込んで、カタカタ震え始めた。そんなに怖かったか。いや確かにあの目付はヤバいけど。