棚卸や月末作業でそれどころではないッ!
そしてスティーブ峰蔵さんのクアドラプルタマネギ完結おめでとうございますッ!
サブPCまでアンチマルウェアソフトの被害(断言)にあい始めて、機嫌が悪い今日この頃です。
除外に追加しても効果なし、レジストリから永久停止させようと思ったけどなぜか表示されない。
やっぱりアップデート機能を完全に停止させることから考えるべきか。
メインPCでもIE11がほぼ動かなくなり、PCに負荷がかかって執筆どころじゃなくなったり…。
これもうサイバーテロ組織認定してもいいんじゃないかな…。
仕方ないので、クロームに乗り換えました。
EDFは続けてますが、ハーデストの序盤を超えた辺りから本気で苦労するようになってきました。
HPと武器の問題もありますが、迂闊に突っ込むと囲まれて即死かぁ…。
ソロクリアに拘れる程腕は無いし、そろそろオンラインに行きますか。
でもその前に出来る限り強化はしておきたい。
きっちり3時間後、茅場は部屋から出てきた。もう昼飯時だよ。
「失礼、お待たせした」
「何か見せてもらっていたそうですが、もういいのですか?」
「ああ、今日のところは…だが。無手で触れる事を禁じられているので、こちらに持ってくる事はできなかった。机の上に置いたままだ」
はいよ。
…ふむ、特に触れられた様子も無いか。よくぞ見るだけで我慢できたものだ。それだけでも、かなりの情報を読み取ったという事だろうが。
「…では、対価の話をしたい。私はさっさと帰って資料を纏めてしまいたいので、簡潔に話をさせてもらおう」
「随分と急な話ね。まぁいいわ。さっさと吐きなさい」
伝子さんに凄まれても平然としている茅場、マジマイペース…。
だが、茅場が齎した情報は、確かに有用だった。
一つ目、滅鬼隊の保管設備が沈んでいる異界について。霊山近くに突如発生したあの異界は、茅場が研究していた『世界想像』の副産物である技術によって生み出されたものらしい。
実際に発生させたのは茅場自身ではないそうだが、何がどうなっているのかの検討はつくとの事。
異界の中心部には異界発生の為の仕掛けのようなものがあり、それを破壊すれば異界の広がりは止める事が出来る。
また、俺が異界浄化の術の概要を伝えたところ、恐らくシノノメでやったのと同じように浄化できると証言した。
結界石の石像の代わりに、異界を生み出している『何か』を使用するのだ。
二つ目の情報。
九葉のおっさんの思惑について。と言っても茅場も九葉のおっさんに近しい訳ではなく、半ば推測になるのだが。それでも、俺達が頭を悩ませるよりも説得力はあった。
あの悪党面の狙いは二つある。といっても、一つの狙いで複数の布石をうつのが当たり前なおっさんだから、本当に二つと言い切っていいのかは微妙なところだが。
ともあれ、一つ目の狙いは、滅鬼隊の復活。滅鬼隊の背後に蠢く、後ろ暗いアレやコレやは把握しているのだろうが、それでも復活させて戦力として扱おうとしているらしい。
まぁ、確かに後ろ暗かろうが何だろうが、使える物は使わなきゃならん程人間は追い詰められている。誰だか知らんが保身の為に証拠抹消するくらいなら、自分に寄越せとでも言いたいんだろうか。
或いは、滅鬼隊の背後関係を明らかにし、霊山に潜む不穏分子の炙り出しにでも使うつもりか。…やりかねんなぁ。
そしてもう一つの狙い。茅場はこっちが本命だと考えているようだ。そして、俺も聞かされたその内容に賛同した。
あのツンデレと覚悟ガンギマリのおっさんが考えそうな事だ。
その目的とは、滅鬼隊の一員として潜り込ませていた部下の奪還。
かつて滅鬼隊が活動していた頃…つまりオオマガトキより前だ…あのおっさんは何らかの理由で部下を送り込んだ。無論、人体実験に使われる事を承知の上でだ。
何が目的だったのかは、俺にも茅場にも分からない。滅鬼隊の背後に居る何者かの正体を探り出す為か、或いはそのノウハウを盗もうとしたのか、政争の為だったのか。真正面から送り込んだのか、一般人を装ってわざと誘拐されたのかも分からない。
何にせよ、その目的が達成される前に、滅鬼隊は活動停止を強いられ、全ては異界に沈んだ。
…だが、九葉のおっさんは覚えている。ああ、覚えているだろうさ、あのおっさんが忘れる筈がない。直属の部下に限らず、流した血には必ず報いるおっさんだ。
例え目的を達成できず、ただ犠牲としてしまった苦い記憶であっても…いや、だからこそ忘れる筈がない。
僅かな余暇を絞り出し、その時間で送り込んだ部下の情報と痕跡を集め、異界を消し去るという夢物語が実現した時の為に備え続けた。もしもその時が来たら、自分の部下を奪還できるようにと。
どんな惨状になっていようと関係ない。信頼できる部下を取返し、使えるならそのまま戦力として使う、使えないなら……まぁ、身内扱いかな。扱われたとして、あのおっさんが非情な判断を下す時に雑念が混じるとは思わんが。
しかし、あのおっさんの部下が、あの中に居るかもしれないのか…。
………まぁ、なんだ、誰なのかでは特定できないが、助ける理由がまた一つ増えたと思っておこう。
三つ目の情報。これが最大の収穫だった。
眠りについてる滅鬼隊を起こす方法。
雪風の時は、何がなんだか分からない内に唐突に目覚めて、そのまま勢いで話が進んでしまっていたが…予想通り、保存されている滅鬼隊には、勝手に目を覚まさないようプロテクトがかけられているらしい。
最終的にどのように調整されたのかは茅場も知らなかったが、雪風が中々目を覚まさなかった事を考えると、これも信憑性が高い。
そして、肝心の目覚めさせる方法なのだが………何と言うか、これの研究してた奴、相当拗らせてるな…。
俺も結構な色狂いだが、これは悪趣味の領域を通り越してるぞ。いや悪趣味なの大好きですけどね、胸糞でなければ。
目覚めさせる方法は二つ。
まず真っ当な方法は、一定以上の霊力を籠めた声で、各々に定められたキーワードを囁く事。
ただし、それにはかなりの霊力が必要…らしいんだけど、雪風の時はどうだったっけ?
日記を読み返してみたが、苛立ちの籠った声が漏れた時だったようだ。…確かに無意識に霊力籠めてたかもしれないが…そこまで強いものだったか?
長年放置された事でプロテクトが緩んだのか、それとも基準自体が違うのか…。
疑問はさておき、この方法には一つ問題がある。
キーワードが分からないのだ。持ってきた資料の中にも、シリーズのスペックは記載されているが、キーワードらしきものは見当たらない。
雪風の時は…日記を見返す限り、漏れた声の中にもそれらしい言葉は無いよな。雪風の特徴や性格を連想させるような単語は使ってなかった筈。
と言う事は……一見しても連想できないような言葉がキーワードとして使われている可能性が高い。
もしそうだとすると、この方法で滅鬼隊を目覚めさせるのは絶望的だ。
まだ施設の中に、目覚めのキーワードが書かれた資料が残っているだろうか?
では、二つ目の方法は? と言うと……これがまたロクでもない仕組みになっていた。
ある意味古来の伝統に則っていると言えなくもない…のか?
まぁ、アレだ。
Q.眠りについているお姫様を起こす定番の方法は?
A.接吻では足りません。交合しなさい。
…そういう訳です。ちなみに男が相手の場合も同じらしい。ホモォ
セックスだけでなく、寝ているところにエロい事して精液を吹きかけるのであれば、何でもいいらしい。
これを知られた時、雪風と茅場を除く全員から疑いの目で見られたが、流石にやってねぇよ。
…戦闘用に改造した滅鬼隊に、どういう扱いをしとるんじゃい…。オナホ扱いしてる暇があったら、ちょっとでも性能上げる方法を見つけろよ…。
心底どうでもよさそうだった茅場曰く、「滅鬼隊は、色を使った潜入任務や暗殺と言った、所謂くノ一のような任務にも従事していたと聞く。起動と同時に性能試験でもしていたのではないか」だそうだ。仮にそうだったとしても、どう考えても後付けだよね。見た目のいい女ばっかりだし、絶対途中から(或いは最初から)欲望を満たす事しか考えなくなってるって。
更にタチの悪い情報が続く。
滅鬼隊として目覚めた者は、最初に見た人間に対して強い依存心や恋心を抱くように調整されているらしい。
茅場もこの辺は資料で流し見ただけで、実際に成功していたのかは定かではないと言っていたが……確かに、心当たりあるよなぁ。
雪風は目覚めた直後、記憶が全くないという状態で、俺に妙に懐いていたし。
そういう風に…目覚めさせた相手に好意を持つよう刷り込まれているのは、裏切りや逃亡防止の為だろう。
どんな危険な任務を割り振られても、他に行くところもなく、惚れた相手からの命令もあり、死よりも失望される事を恐れた彼女達は、文字通り全身全霊で任務に当たっていたんだろう。……どれだけ全身全霊でも、刷り込まれただけの知識では空回りしかしそうにないが。
これを聞いた雪風の表情は…ちょっと筆舌に尽くしがたいな。
何だかんだで、自分がどういう産まれなのか教えていなかったし。俺に対する好意も、刷り込みによる仕組まれたものだと言われたに等しい。
と言うか、これも明らかに作成者の趣味だよなぁ。どこのエロ漫画だっつの。
考えてもみればいい。
声による目覚めであれば、まだいい。
が、これがセックス等による目覚めだった場合は?
…何も知らない、記憶すら全く持ってない女性が、昏睡状態で襲われ、射精された瞬間に目覚め。そして強姦睡姦の被害者である女性は、加害者に対して即一目惚れ、あなたの為なら何でもします。即堕ち二コマか。
エロマンガっぽく表現すると、こんな感じか?
いつ果てるとも知れない眠りに沈みこむ美女。ある日、よからぬ企みを持った男が忍び込んでくる。
目を覚ます事なく、抵抗もできずに毒牙にかかった美女だが、最悪のタイミングで目を覚ます。見知らぬ男に体を弄ばれた上に、膣内射精される瞬間を自覚してしまうのだ。
だが、その男はなんと美女の運命の人だった。自分の名前すら持たない美女は躊躇う事なく、強姦魔である筈だった運命の男に全てを捧げ、自ら望んで愛奴となったのだ。
………なんだこの頭悪いエロ小説。…どこからともなく、室内なのにブーメランが放り投げられてきたけど、まぁそれは置いておいて。
そして自分が捨て駒だと自覚しているのかは知らないが、命懸けの任務に送り出され…ひょっとしたら、ここでターゲットに色仕掛けをするよう命じられる事もあったかもしれない…死んでしまえばそれまで、次の者が起動される。
もし生きて帰ってきたら……褒美と称して、交合したかもしれないな。愛情らしい情なんかなく、疲弊して帰って来た駒を使って性欲を処理する程度の気持ちで。
…想像しておいてなんだが、胸糞悪いってレベルじゃないな。扱いの悪さは、大体間違っていないと思うが。
…どうする、コレ。目覚めのキーワードが分からない以上、こっちで目覚めさせるしかない訳だが、流石にこれはちょっと…。
いや強姦染みた事も、同意を得ない睡姦もやった事あるけど。MH世界のセラブレス相手に。
でも流石にこれは…倫理的に受け付けないというか…いやヤッてしまえば、或いは経緯はともかく惚れられれば、それなりに相手をするようになると思うけど…。
土井さん、あんた目覚めさせてみる気ない?
美人揃いだし惚れ込んでくれそうだし、人によっては世話焼いてくれそうだぞ。男やもめにはありがたいと思うが。
「心惹かれないと言えば嘘になるが、遠慮しておくよ。酷い負い目を一生背負う事になってしまいそうだ。…手掛かりも無く言葉を探したり資料を探したりするより、まだ生き残っている滅鬼隊を探し出して聞き込みした方がいいかもしれないな。」
「何? 滅鬼隊がまだ残っているというのか? 土井、それは確かか」
「誰がそうだと目星がついている訳ではないが、恐らくは。これらの研究を行っていた者は、相当に…何と言うか、拗らせているな」
ああ、性癖だけじゃなくて性根もな。俺が言えた義理じゃないが。
「君は自分で言う程、外道ではないと思うが…。ともかく、彼女達に対して、何らかの歪んだ執着を持っていたのは間違いないだろう。行いが白日の下に晒されそうになったか何かで、無理矢理隠蔽したようだが…逆に聞くが、一人残さず異界に沈めたと思うかい?」
「これ程念入りに従属を強いる研究者だもの。根は小心者と見たわ。護衛も兼ねて一人二人くらいなら、隠し通せると踏んで手元に置いておく事も考えられるわね」
成程。まだ生き残っているかは分からないが、当時封印されずに活動し続けている者が居るかもしれないって事か…。
そういや、最初に滅鬼隊の人を見つけた部屋では、容器が一つ倒れて誰かが外に向かったような痕跡が残っていたな。あの施設が異界に沈む前に逃げ出したのだとしたら、市井の人間として紛れている事も考えられる。
「そうだね。それに、資料に書かれている人数と、君達が発見した施設に保存されている人数が、明かに合わない。『処理』されてしまった可能性もあるが…茅場殿が言うように、異界をある程度自由に発生させられるとしたら、他の場所にも保管されている人間が居るのかもしれない」
滅鬼隊の今後については後回しにするとして(興味が無かった茅場が、淡々と話を進めたのだ)、4つめ。これがとんでもない爆弾だった。
霊山は、シノノメの里に対する支援を計画している。それはいい。元々、手段を問わず霊山から援助を引き出す為に、俺達は…いや俺は一応部外者なんだけど…やってきている。
だったらいいじゃないかと思ったのだが、その裏にある意図がクセモノだ。見返りや思惑も無しに援助してくれるとは最初から思ってないが、その思惑が致命的。
霊山の狙いは、シノノメの里そのものではなく、そこにある超界石らしい。
「…あの、茅場さん。どうして超界石が狙われるんですか? あの石は、確かに世界を超える力があるなんて伝承が残ってますけど、普通の石ですよ。里の皆の心の拠り所ではありましたが」
「それは私の知る所ではないな。ただ、100年以上前の事だが、シノノメの里にある超界石が特別な力を発揮したと記録されているそうだ。どのような力なのかは聞いていないが、大方狙いはそれだろう」
…誰がそれを欲しているのか、情報はあるか?
「陰陽寮の幹部が一人か二人。誰なのかまでは特定していない。それと…実際に主導しているのは、識という軍師のようだ」
識? ………前に一度会ったな。
九葉のおっさんに負けず劣らず悪人顔で、何かでかい目的があるような口ぶりだったが…。ぶっちゃけよく覚えていない。
会ったのはクサレイヅチが襲来している真っ最中だったし、野郎の事なんかどうでもいいからね。
どんな奴なのか…同じ軍師で悪党面だし、九葉のおっさんと同類のツンデレか? それともラスボス系か? 意表をついて、凌辱用の汚ッサンみたいな小物って線も考えられる。
その軍師についてはともかくとして…超界石を、ねぇ。……みんな、どう思う?
「…私も里の軍師扱いされているが、損得だけで言えば……有りだな。超常の力を秘めていると言われていても、今では単なる石にすぎない。それを差し出すだけで大きな援助を受けられるなら、断る理由はない」
「僕と牡丹様は反対です。確かに特別な力はありませんが、あの石は里人の拠り所、象徴とも言えます。今後、霊山に限らず外の世界と関わるのであれば、里人の意思を一つにする為に必要です」
「牡丹様と白浜の意見は少々感傷が過ぎる部分があるが、儂も反対だ。本当に何らかの力を持っているのであれば、それを霊山に渡すとどうなる? …あのような人体実験を行っていた霊山だぞ?」
「まともな人間の元で研究してくれれば…と言うのは、希望的観測が過ぎるわね。ところで、霊山には軍師が何人か居た筈だけど、識はその中ではどういう位置づけなのかしら」
「結構な大物らしいわ。その上、背後に何らかの影がある…軍師以外にも何らかの権限を持っているようね。率直に言えばきな臭いわ」
「…私、そのシノノメの里っていうのの事知らないし…」
「私達の故郷なのよ、雪風。でも、超界石をねぇ…。あれが無くなると思うと…特に不便はないんだけど、こう、すっきりしないものがあるわ」
「そもそもからして、本当にそんな力を秘めているのか、不思議極まりないです。皆さん、御伽噺や昔話でも、聞いた事はありますか?」
神夜の問いかけに、一斉に首を横に振る皆。
…の中で、俺一人だけは冷や汗垂らしています。秘密にしてたからね、あの石でガチャと言うか召喚染みた事が出来るのを。
更に言うなら里を出る前、両さんが『超界石と儂が居た塔には何か関係があるんじゃないか』みたいな事も言っていた。こっちについては、根拠らしい根拠は聞いてないが…。
どうすっかな。言っちゃおうかな。おかしな力を秘めているのは確かだし…それを知らずに渡してしまうよりは、何かあると思って話し合ってくれた方が…。
黙ってたのを責められるだろうか? 責められるのは仕方ないが…いや、むしろ『そんな物から出てきた得体の知れない衣装を着せていたのか』って言われるか?
いや、責められるとしてもこの状況で黙ってるって選択肢はないんだが。
あ~、皆さん、実はですな…。
黙ってた理由を問い詰められたけど、何とかなった。
一応、神垣の巫女でる雪華には知られていたし、貴重な生活資源である宝玉を突っ込んで出てくるのが衣類なんじゃ、どうやったって割に合わない。報告すべきではあったが、その時点では重視する程のものではなかった、とされた。…まぁ、この時代にガチャ沼なんて概念は無いしな…。
むしろ、その場の勢いで支給されてた宝玉の半分を突っ込んだ事に呆れられました。
丁半博打に興じて、財布を半分にした挙句にガラクタ貰って来たようなもんだからね。仕方ないね。
「…黙っていた理由はともかくとして、何か力を持っている事は確かね。となると、それを渡すかどうかだけど」
「そのような得体の知れない力を持った石を、里に置いておくのは如何なものか」
「だけど実際、今まで何もなかったんですし」
「明日は今日の繰り返しではないのだぞ、白浜。拒否すれば支援を渋られ、或いは密かに奪う事も考えられる」
「……これは、正解のない問題ね。どちらの考え方にも一理はあるわ。となると、結論は一つね」
「どういう事ですか、山本先生?」
「私達の権限を越えるって事よ。冷静になりなさい。私達は里の代表として霊山に来ているけど、里長ではないのよ。急な話であれば私達で…白浜君で判断する必要はあるけど、これは違う。まずは里長に報せを走らせましょう」
…確かに。どっちを選んでも問題はある上、事が事だからな。
しかしあの里長…両さんを頼りにするのかぁ…。物凄く頼りになるような、破滅を呼び込むような…。
とりあえず、今回の話し合いはそこまでで終了となった。
ちなみに、一応話につきあってくれた茅場はあんまり興味無さそうに、部屋の隅の机で何やら記録帖に書き綴っていた。話しかけたり問いかけたりすれば返答してくれるが、異世界に思いを馳せているの一目瞭然だった。
話し合いで暇を持て余し、わーわー騒ぎ始めた雪風を連れて道場へ。彼女自身の出生に関係した話だったが、あまり興味はわかなかったらしい。細かいことは気にしない、大らかな(オブラートに包んだ表現)性格である。
が、それはそれとして、道場でモノノフ修行の体験会に参加した事もあり、彼女は予想外な事を言い出した。
「私も鬼と戦ってみたい!」
…あのな、雪風。何をどう勘違いしたのか知らんけど、鬼を相手にするってのは命懸けでな?
道場の訓練だって、訓練っつーか半ばごっこ遊びみたいなもんでな?
「そんな事分かってるわ。…ちょっと言い方が悪かったわね。この前来てた、あの茅場ってのから滅鬼隊の事を聞いたのよ。私もその一員だったのかもしれない、って事でしょ」
余計な事を…と言いたい所だが、会議の時に聞いてたしなぁ。理解してなかったっぽいけど。
それで?
「滅鬼隊のモノノフって、タマフリとも違う不思議な力を持ってるって言うじゃない。何かこう、私にもそういうのがあるんじゃないかと思うのよ」
まぁ確かに、あるかもしれんけど……そういや、最初に起きた時、何か道具を探すような事言ってたな。…雷銃、とか言ってたっけ。
「…そんな名前だったっけ? あれから、どうにも思い出せなくて…。でも、モノノフ体験会でも何だか銃は手に馴染んだわ」
雷銃、雷銃ねぇ…。
雷獣にでもかけたのかな? つまり鵺。…その辺の異界で寝てるのが沢山居るな。はっきり言えば雑魚枠だ。
そうでない、雷の銃と言えば…真っ先に思い浮かぶのはレールガンか。或いは命中したら電撃を撒き散らすような弾丸?
「ほら、私の記憶の手掛かりになるかもしれないし、不思議な力は使ってみたいし。鬼と戦えば、そういう記憶も自然と蘇るんじゃないかなーって思ったの」
…一理は、ある…か? しかし、記憶を取り戻したいのか?
「まぁ、思い出せるならその方がいいかなってくらいには。昔の事とか、自分がどういう産まれだとか、あんまり気にならないけどね」
思い出せたとしても、あんまりいい記憶じゃなさそうだけど…。まぁいいか。
要するに鬼との闘い云々が主目的なんじゃなくて、それに付随する事が目的な訳だ。特に、特別な力があるなら使ってみたいって。
だとしても、いきなり鬼の前に放り出す訳にはいかんしなぁ。
「そうなっても、何とかなる気がしてるんだけど」
根拠のない楽観はやめい。滅鬼隊の主な死亡原因は、多分その楽観と慢心だぞ。
戦わせるにしても、それなりに準備は必要だし、訓練だってせにゃならん。
…そうだな、どれくらいの事が出来るのか、一度白浜君と一緒に修行させてみるか。他の滅鬼隊がどれくらいの強さを持っているのか、基準くらいにはなるだろう。