※この作品はR-18です。

狩りゲー世界転生輪   作:時守 暦

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令和突入、ですね。
何が変わるって言われると、言葉に詰まりますけども。
前話前書きで、始まってすらいない令和を終わらせようとしたテロリストな時守です。

GWの連続投稿は、今年は無理よ…。
10話分の書き溜めなんてないよ…。
でも何もしないというのも詰まらないので、令和記念も兼ねて久々に外伝。



第441話+外伝26

魔禍月伍拾陸日目

 

 

 朝っぱらから茅場が押しかけて来た。勿論、目当ては神機である。

 俺からも色々話を聞き始めたが、やはり目の前にある実物を調べるのを優先したいようだ。

 

 異世界云々の事はあまり知られたくないので、明日奈達は部屋の外に出てもらっている。丁度いいから、色々用事を済ませてくる…と出掛けて行ったようだ。

 

 

 

 さて、話は変わるが…茅場が神機をジロジロ観察しまくっている間、俺は俺で別の事を考えていた。

 これからどう動くか……という真面目な話ではなく、欲望に直結した思考である。つまりいつもの事だ。

 

 いや、誰かを抱きたいとかそーいう話じゃなくて、技術的な問題と言うか…ぶっちゃけ、オカルト版真言立川流についてだ。

 先日図書館で見つけた、まだ完成してないオカルト版真言立川流の奥義。

 

 『烙印』と『第六天』。

 

 

 正直言って、『こんな事本当に出来るのか?』という技だ。いや、技と言うかもう術とか呪いだよコレ。既にオカルト版真言立川流は、呪いの領域に達しているけど。

 それを扱う俺としても、正直言ってこの技は胡散臭いというか、「いくら何でもそりゃないよ」と感じる。

 

 感じるんだが……。

 

 

 

 

 

 何でだろう、出来る気がしちゃってるんだよね。

 ある程度の技量があれば、自然と新しい技術を生み出したり、或いは摸倣したりできるのは珍しくない話だが…。

 それで、出来るとしても…これ使っちゃっていいものだろうか…。特に第六天。

 

 烙印については、まぁいいんだ。相手の合意を得てやればいい。むしろ、今からシノノメの里に駆け戻って、雪華に使ってしまおうかと思うくらいだ。多分、雪華も拒否しないどころか、嬉々として受け入れるだろう。

 …しかし、迂闊に使う事はできない。体に大きな影響を齎す技だし、神垣の巫女の力と影響し合って、結界が張れなくなってしまった…なんて事になったら目も当てられない。

 せめて、誰かに試してからにするべきか…。どっちにしろ、受けた人間の人生を高確率で滅茶苦茶にしてしまいそうだ。既に堕ちきっている、明日奈や神夜に使うべきだろうか…。

 

 

 第六天に至っては…いやこれ使っちゃアカン奴でしょ…。どう考えても、寝取り専用技だ。

 女の子を虜にするのは楽しいし嬉しいし気持ちいいけど、彼氏や旦那の居る女の子にどうこうしようとは思わないよ。倫理的にアカンでしょ。

 でも、出来ちゃう気がするんだよな…。封印すべきと分かってはいるんだ。

 でも試してみたくもある…寝取り趣味があるんじゃなくて、本当に可能なのか、好奇心が疼く。

 

 

 ……誰か、やっちゃってもいい相手とか居ないかなぁ…。居ないよなぁ…。

 

 

 

 

 そんな葛藤を抱えながら、約束の3時間が過ぎる。茅場は名残惜しそうに帰って行った。だがもしかしなくても、明日も朝一で来るだろう。

 さて、それはそれとして。

 

 

「師匠、ちょっとお話があります」

 

 

 ん、どうした白浜君。誰か好きな人でもできたか。

 

 

「…じ、実はちょっと気になる人ができたんですが、それはまた今度と言う事で。今後の動きについて、皆で話し合ったんです」

 

 

 ほう、俺が茅場の相手をしている間に、何か進展や決定があったか?

 

 

「はい。まず、やはり超界石については、里のお頭の決定に従う事となりました。さっき文を出してきたので、近日中に答えがくると思います。…宝玉を入れたら何か出てくる、というのも報告しておきました」

 

 

 ふむふむ。他には?

 

 

「例の施設と、滅鬼隊についてですが…これは九葉さんに全面報告する事になりました。茅場さんの話を鵜呑みにする訳ではありませんが、話の筋は通ります。九葉さんに、僕達を害する腹積もりはないと結論しました。茅場さんが言っていた通り、よからぬ目的でシノノメの里に手を伸ばそうとしている輩が居るなら、九葉さんを味方につけ、便宜を図ってもらうのが両策です」

 

 

 異界浄化を実現させれば、便宜を図るって約束だったからな。口約束だし、必要であれば破りもするだろうけど。

 じゃあ、雪風はどうする? もしも滅鬼隊の力を欲していて、戦力として取り込もうとしてきたら?

 

 

「雪風さん本人にも確認しましたが、拒否します。…が、この可能性は非常に低いと、土井さんと八方斎さんは口を揃えて言っています。例え彼女が滅鬼隊として相応の力を持っていたとしても、一人だけです。何より、戦力としての信頼性が非常に低い。危険を冒してでも手元に置こうとするとは思えないそうです」

 

 

 ふむ、道理だな。

 確かに今の雪風は、身体能力は高そうだが、実戦経験も無ければ専用に作られた道具もない、新米兵士以下だ。戦力として取り込むなら、そこら辺の中堅モノノフを取り込んだ方が余程マシだろう。

 他の滅鬼隊達は…まだ目覚めさせる事もできてないんだよなぁ。

 まずは、彼女達の統率役を起こしておきたいんだが、それも誰なのやら…。『浅黄』と呼ばれている個体のようだが、それがどの人物なのかが分からない。

 

 

「ああ、それでしたら牡丹様が、見分ける方法を考えてくださいました。それで正解なのかは、試してみないと分かりませんけど。指揮官級の、特に強い個体なのであれば、傷を受けたりしてもそうそう見捨てられるとは思えません。ですので、恐らく傷跡等が残っている人が、指揮官の『浅黄』なのではないかと」

 

 

 ほぉ…その手があったか。次に行った時、もう一度彼女達を見直してみるかね。

 奥には異界発生の原因があるようだが…。

 

 

「それを見つけたとしても、すぐには異界を消さず、滅鬼隊の人達をどうするのか…が決まってないんです。もし、迂闊に異界を消し去ったら、滅鬼隊の事を知っている人達がどんな行動に出るか…」

 

 

 異界の消失=施設が遠からず見つかる=知られたらヤバイ事がばれてしまう、か。

 

 ふむ…壱、口封じ。眠ったままの滅鬼隊を始末する為、暗殺者を放つ。

 弐、引き込む。素知らぬ顔で近付いてきて、自分達が主だと刷り込んで手駒にする。

 参、消毒。手段を問わず殺して闇に葬りだけではなく、それを知った俺達、引いてはシノノメの里まで謀殺する。

 

 

「どれも御免被ります。うーん…結局のところ、起きてもらわないとどうにもなりそうにないですね。雪風さんみたいに寝たきりになられても、僕達も世話しきれませんし」

 

 

 世話する為の人手だけじゃなくて、寝床の問題もあるしなぁ…。

 全員連れ出してきたとしたら、どんなに隠しても確実に露見する。暗殺者が放たれたとしたら、それだけの人数を警備するのはまず不可能だ。九葉のおっさんの力を借りたり、百鬼隊の人員を借りてもな。

 

 

「…机上の空論でしかありませんが…全員が同時に目を覚まし、異界を消失させると同時に、霊山から退避する…と言うのが、現状で思い浮かぶ唯一の方法です」

 

 

 退避ったって、どこに行くんだよ。シノノメの里だと補給や支援を盾に取られると従わざるを得ないだろうし、そもそも現状でも生活が破綻してないのが不思議なくらいだろ。

 超界石を手に入れようって奴まで出てきてるんだし、これ以上火薬を詰め込むのはおススメしないぞ。

 お頭…両さんの度量を込みで考えてもだ。

 

 

「…ウタカタの里です」

 

 

 ………は?

 

 

 

「……ウタカタの里です。師匠、確か行くんですよね?」

 

 

 お、おう、そりゃ行くが……っておい、俺に任せる気か!?

 

 

「言い方は悪いですけど、案としては出ています。ウタカタの里は最前線だそうですし、霊山も中々干渉できないと聞きました。滅鬼隊が力を発揮できるようになれば、ウタカタにとっても助かるでしょう。霊山から独立したという、北の方の里も比較的近い。…いざとなったら、そこに助けを求めれば…」

 

 

 北の独立した里……ああ、シラヌイの里か。どうだろうなぁ、霊山を嫌ってるけど、助けてくれるだろうか…。あそこのお頭、一筋縄ではいかないし。凛音、だったか…一度博打で勝った事があったな。

 …まぁ、それなりに考えての結論なのは理解したよ。

 全員が目を覚まさなきゃ意味ない仮定だけど。

 

 …しかし、分かった。いざと言う時、ウタカタの里に連れて行く事は考えておこう。

 あそこもシノノメの里に負けず劣らずお人好し揃いだし、戦力だって足りてないんだ。

 否応なしに命懸けの戦いに参加させる事になっちまうが、まぁ人生なんてそんなものだな。特に今の世界では、鬼が相手にしろ人間が相手にしろ、抗わなきゃ死ぬんだ。

 

 

「はい…。すみません、元は僕達の里の問題なのに」

 

 

 まぁ、乗り掛かった舟だし、滅鬼隊についてはシノノメの里っつーよりは霊山、或いはモノノフ全体の問題だろ。

 そもそも目を覚ました滅鬼隊が、俺についてくるのを希望するのかも分からない。

 

 

 ………初めてみた異性に好意を抱くように調整されてるんだっけ…。俺に好意を持って、そのままついて来るって事になるのかなぁ。

 彼女達を抱けば目覚めさせる事は可能らしいし、できなくはない…のか? 野郎を抱くのはゴメンだから、男連中だけはキーワードを探す事になりそうだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ところで、『初めて見た異性』に好意を持つそうだが、伝子さんは男女どっちとして判定されるんだろうか?

 

 

 

 

 

 

 

 

 




 はてさて、いつもの夢はいいんだが、今回はまた極め付きと言うかなんというか。一体何をしろと言うんだろうね?


 いつものように眠った筈なのに、気が付けば海岸線に佇んでいた。
 いい加減、夢で変な所に飛ばされるのにも慣れたし、どうこう言うつもりはないんだが…せめて前兆とか、或いは法則性とか感じられないものだろうか。

 とりあえず、ここは討鬼伝世界でも、GE世界でもない。雰囲気は、強いて言うならMH世界が近いか?
 大自然、としか言い表せない、広大な海。しかも物凄く綺麗で、魚も多い。
 周囲を見回せば、これまた大自然。ジャングル…と言う程ではないが、丘、森、川、そこら中に溢れる生き物の気配。

 うん、ここは滅びかけているGE世界・討鬼伝世界とは全く違う。生命に満ち溢れた場所である。


 それはいい事だが、実際何をしたものか。毎回思うが、放り出すなら放り出すで何処に行けばいいかくらい指針をくれ。
 まぁ、指針があったところで、それに素直に従うかは別問題だが。

 とにもかくにも、地形が把握できなければ話にならぬ。近場に丁度いい高さの山がある事だし、そこに上ってみようか。





 あっさりと到着。
 距離もそう長くなかったが………何と言うか……採取クエストみたいな島だな。

 いや、最初はいつ大型モンスターとか、毒を持つ虫とか、隠れている捕食者に遭遇しないか、或いはその痕跡が無いかと用心しながら歩いてたんだよ。
 でも予想に反して、居るのは牛とか豚とか、毒を持ってそうなのも精々が蜘蛛くらいか。特に襲ってくる事もないし、大型生物の痕跡も全くない。

 半面、やたらと採取ポイントは多かった。川を覗き込めば魚、その辺の石ころを蹴っ飛ばせば鉱石、そこらの木の実や草花は薬草…。
 危険らしい危険は全く見当たらず、あるのは豊富な素材ばかり。まぁ、MH世界の素材に比べると……うん、まぁ、普通のものが多いね。

 拍子抜けしながら、山の山頂に生えていた一番高い木に登り、ふくろから取り出した望遠鏡を覗き込む。





 ………うん。



 ……ほうほう。


 …なるへそ。






 ……益々もって、ここで何をせよと言うのだ。

 望遠鏡で見渡した事で、幾つか判明した事がある。

 まずはここ、絶海の孤島である。ワー、スイヘイセンガキレイダナー。海の果てまで、冗談抜きで何も見えない。しかも360度。

 更に、この島に大型モンスターは恐らく居ない。
 どこを探しても、痕跡もなければ、本体も見えない。…この島はかなり自然が豊か…と言うか物凄い勢いで木々が育ちまくっている。こんな所で大型モンスターが暮らしていれば、嫌でも木々を倒した痕跡が目に入るだろう。居ても中型が精々だ。…それにしたって、やっぱり痕跡は見つからなかったが。

 それどころか、この島はどうにも無人島くさい。
 モンスター同様に、人の気配が全くない。人工物すら見当たらなかった。
 この地形なら、恐らく川の近くに集落をつくるな…なんて考えたが、それも無し。
 この山から見えない角度の場所に街を作っている…と言う可能性も無いではないが、あまり期待しない方がいい。あの辺の地形は、周囲の状況から見て人が住むのに適した場所とは言い辛い。


 全く、こんな所で何をしろと言うのか。サバイバルに適した島だとは思うけどね。
 せめて話し相手の一人くらいは欲しいものだ。性処理は、まぁ、テキトーに自分で済ませればいいし。退屈なのは、釣りでもしてれば時間が過ぎるだろう。
 よもや、と思ってその辺の動物に話しかけてみるも、相手にもされずにさっさと逃げられた。…せめて襲ってきたら、遠慮なく食料にしたのになぁ。



 とボヤきつつも、実を言うとここがどういう場所なのか、大体見当はついてるんだけどね。
 
 そう、あれは山に登る途中、採掘ポイントを見つけた時の事じゃった…。
 周りには敵(特にイノシシ)も居ないし、差し当り急ぐ道でもないし、手元のふくろにはピッケルも入ってる。だったら採掘するよな、ハンター的に考えて。

 大した考えもなく、どんな鉱石が取れるかなーと何気なく何度かツルハシを振るったのじゃが。



 採掘ポイントが砕け散りました。



 真四角に砕け散りました。




 真顔になったよ、あの時は。採掘ポイントが、消えちまったんだぜ? 取り尽くしたからもうない、じゃなくて物理的に消えたのよ。
 そりゃハンターなら誰でもショックを受けるわ。貴重なポイントが、そして自然が自分の手によってぶっ壊されたのだ。

 正直錯乱しそうになる程驚いたが、何とか正気に戻れたのは、壊した部分が自分の手元にあったからだ。そして、真四角に砕けた地面。
 この現象に見覚えがあった俺は、近くの木に向かってツルハシを振るってみた。

 3回も殴ると、その部分だけ真四角に消えた。そしてそこから上の部分は、空中に浮いたまま。





 マインクラフトだ、これ。




 …俺、あんまり詳しくないんだけど。と言うか、某動画サイトで作った物の紹介を見て、『廃人多すぎ…』なんて感想を持ってたくらいだ。
 ……ま、詳しくなくても困るゲームじゃねーよな、多分。ストーリーとか無かった筈だし、単純に生き残って好きなようにモノを作る、くらいだろ。
 ネザーとかいう地獄みたいな場所に突っ込むならまだしも、地上じゃそうそう危険はないと思う。
 サバイバルに関しては、ハンターに向かって何を言うってなもんだしな。

 …ああ、確か暗い所だと魔物が出るんだっけ。スケルトンと……巧とか呼ばれてるサボテンダーもどき。……何か名前が違う気がするが、まぁいいや。
 そっちもそうそう後れを取る事はないと思う。スケルトンは、ハンマーでブン殴ってから鬼祓いでもすればいいだろ。


 とは言え、流石に拠点は欲しいな。その辺に適当に穴掘って、中に松明立てて、敵が入ってこないように塞げば………いや駄目だ、確かそれでダメージ受けて死ぬって何かで言ってた気がする。それに、そんな所で松明焚いて酸欠になったら目も当てられん。
 大体、どうせやる事もないんだ。最初は飾り気も何もない豆腐みたいな家でもいいけど、暇潰しも兼ねて色々凝ってみるとしようかね。

 さて、この夢から覚めた時、何か収穫があればいいんだがなぁ…。








 さて、それから暫くが経過した。と言っても、日数を数えていた訳でもないし、一日が24時間という訳でもないようだし、どれくらいかはよく分からない。
 ただ言える事があるとすれば、この島は一通り歩き回って、資材になりそうな物もそれなりに集め、豆腐ハウスが完成したという事だ。
 ちなみに、やはりと言うべきかこの島は無人島だった。

 …豆腐ハウス以外の場所?







 設計図作っても大きさとか角度とかわっかんねんだよ畜生がぁぁぁぁぁ!!!!!
 どんだけ注意して作っても、ブロック一つ分二つ分と歪んでいくんだよぉぉぉぉ!!!!!!
 これでどれだけの資材が無駄になったか…いや壊して回収してはいるんだけど、気分的にね…。


 クラフターって凄いわ。頭の中でイメージして、それを図面に書き写して、数字に直して…ってやってるんだろ。俺そー言うの超苦手。そういうアプリとかあってもまず無理。

 そういう訳で、もう面倒臭くなってきたし、作ったところで俺以外に使う人も見る人も居ないし、精々ベッドとかキッチン作る事だけ考えてようかなぁ…と思っていた頃。
 日課の物資収集ついでの散歩で海岸線を歩いていると。








         土座衛門を発見しました。




 発狂するかと思うくらいに驚いたわ。しかも、生きてる人間だぜ?
 こりゃ何かMODとか入ったか? …MODと言えば、そーいえばマインクラフトって野生のメイドさんとか居たような気が…。ひょっとしてこの人がそれ? どう対応すればいいんだろう。
 雇用契約……別に結ぶ必要はないなぁ。大抵の事は自分でやってるし、それが無くなるとむしろ暇だし。

 なんて考えてる暇があったら、救助活動救助活動。人工呼吸から…いや、胸骨圧迫が優先だった。
 …む、中々のおっぱい…いやいや邪念は後だ。
 それ、1,2,3,4,5…




 ふぅ、水は吐いたし、とりあえず呼吸は戻ったな。ここに置いておく訳にもいかん。起きるまでは家で面倒を見るとしようか。
 ……しかしこの土座衛門、どっかで見た事があるような…。








 暫くした後、彼女は目を覚ました。黒髪美人さんである。…制服着てるから、学生さんかな?
 目が悪いらしく、状況がイマイチ把握できてなかったようだ。
 それでも助けられたという認識はあったのか、冷静に対応してくれて助かった。…話が全く通じないようなら、放り出す事も考えてたからな。

 さて、何だって土座衛門になってたのかと言う話だが…彼女は大きな船で、海を進んでいたのだが、方角を見失い、燃料が尽き、動く事すら出来なくなってしまった。更には嵐にあって転覆してしまったのだそうな。
 そりゃまた大変だったなー。
 とりあえず飯を食うといい。空腹じゃ何もできやせん。


「はい、ありがとうございます…。…ところで、ここは一体?」


 無人島、としか言いようがないなぁ。俺は色々あってここでサバイバルしてる者だ。
 何とか君を帰してあげられればよかったんだが。


「いえ……私に、帰る場所は…」


 …そうか。悪いことを聞いたようだ。まぁ、体が治るまでゆっくりしてな。一人分の飯くらいは確保できるよ。
 元々やる事もないし、負担にもなりゃしない。

 彼女はあれこれ理由を挙げようとしたが、自分でも現状では何もできないと分かっているらしく、大人しく介護を受け入れてくれた。
 あと、もしも眼鏡を見つけたら持ってきてほしいと言われた。…眼鏡かぁ。とりあえず、魚を釣るついでに海岸探してみっかな…。


 さて、メガネはともかくとして…良くも悪くもやるべき事が出来てしまったようだ。
 俺はこのまま夢が覚めてしまっても構わないと思っていたが、その場合残された彼女はどうなるだろうか。見知らぬ誰かが救助に来るか。夢が覚めたら全てが無かった事になるか。
 最悪、この島で一人で生きていかなければならない。メガネが見つからなければ、ロクに物も見えない状態で。

 幾らこの島がハンター基準で危険ほぼ無しの島でも、流石にそんな状態で生きていけるとは思えない。



 残さねば。


 遺さねばならぬ。


 俺が遺さねばならぬ。


 彼女の為に環境を整え。食料を確保できるだけの設備を作り。寂しくないよう、ペットなんかも用意して。何なら、子供を作るのにも協力しちゃったりして。
 たった一人の国、独りぼっちの女王様として生きる事になるのだとしても。無念の内に死んでしまわないよう、彼女の居場所を作り上げなければならない。


 いいね。独りよがりと言われようと、目標が出来た。退屈だった日々に張りあいが出来そうだ。











 それで設計が上手くできるようになる訳じゃなかったけどな!



 結局眼鏡も見つからず、「じゃあまずは眼鏡を作れるようになればいいんだな」って短絡的に考えたが…話がそううまく進む筈もなかった。
 資材はあるが、それをどうすればそんな施設が出来るのか、道具を作れるのか。全く理解できていないし、何とか形にしてみても、やっぱりどこかでズレが出る。
 万策尽きるか、その前に資材が尽きてしまうんじゃないかと本気で心配になったものだ。


 が、天は我を見捨てなかった。…どう考えても、悪女の深情けの類だよな、この天って…。自分で地獄に突き落としておきながら、そこから拾い上げて恩人面するとか。いや、救い上げられた側が勝手に崇めているだけと言われればそれまでだけど。
 とにかく、意外な所から助っ人が入った。…意外と言っても、俺以外には一人しかいないが。

 元土座衛門の彼女は、そう言う数字に非常に強かったのだ。視力が低すぎる彼女だが、目の前の文字が読めない訳ではない。
 本人曰く、このような設計図は専門外らしいが、それでも俺がやるよりは高い精度の設計図を書く事が出来た。


「あの子が居れば、全部任せられるのに」と言っていたが、友人の事だろうか。


 まぁ、とにかく彼女のおかげで、各種製作が捗り始めたのは確かだ。
 おまけに資材の管理まで引き受けてくれた。設計図通りに作っていれば、何がどれだけ消費されていて、実際はどれだけ在庫があるのか、またその差異が生じた場合、何処に誤りがあったのか、簡単に見つけられる。…その部分の習性も、以前よりは楽になった。

 いやはや、世話になりっぱなしである。彼女の為に作っているのだが、彼女に助けられるようでは本末転倒…いやそうでもないか? 自分の生活の為に作っているのだから、彼女は自分の為に頑張っているよーなものでは? いやいや、それは助けてくれる彼女への侮辱でしょ。
 まぁ、何でもいいか。

 ともあれ、そうして過ごしていくうちに、段々と施設は形になっていき、同時に彼女も色々と話してくれるようになってきた。
 ここに来る前は、戦争に参加していた事。沢山の仲間が居た事。本来なら自分は前線で戦う役割ではなかったが、ある理由により海に出ていたところ、敵に遭遇してしまった事。以前に話したように、燃料が無くなって動けなくなっていたのは事実だが、転覆したのは嵐ではなく敵の攻撃を受けたからである事。



 …うーむ、外の世界は戦争なんかやってたのか。ここに居ると、戦争どころか人の顔すら見ないからなぁ。
 これはアレか? 今から旅立って、その戦争をどうにかしろっつー流れか?


「いやいやまさか。たった一人で戦争して勝てる筈がないじゃないですか。あなたは普通の人間なんですし」


 普通とは何ぞや。まー俺だってそんな面倒な事に関わり合いたくはない。このままマイクラ的スローライフしていたい。


「ええ、私も同感です。それに、多分外の世界は…もう何もありませんから。むしろ、ここで栄えた方がずっといい」


 何もないって、人類絶滅した訳じゃあるまいに。無くなっても精々国ってシステムくらいだろ。人は生きてる…よな?
 まぁそれはそれとして、はいこれ。
 ようやく完成したよ、眼鏡。


「ああ、本当にありがとうございます。…よし、度数もあってる…スッキリ見える視界って素敵ですね。これで、ようやく本格的に動く事ができます。………貴方には、本当にお世話になりました。二心なく、心の底から感謝しています」


 …あれ。この眼鏡かけてる人って…。


「そしてその上で……図々しい事この上ないと分かっていますが……お願いがあります。私達に、力を貸してほしいのです。…私の仲間達に、安らげる居場所を作っていただきたいのです。私にできる事なら何でもします。どうか、どうか、お願いします!」





「私達……艦娘が帰る場所を、この島に作らせてください! お願いします、提督!」




 大淀だーこの人ー! ていうかこの艦ー!
 ちょっ、MOD! 一体どんなMOD入れたのマイクラー!






外伝
マインクラフト+艦これ編

ちなみに『彼女は大きな船で、海を進んでいた』と言うのは大きな船に乗って海を進んでいたのではなく、彼女=大きな船=戦艦で海を進んでいたという意味なんやで。
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