※この作品はR-18です。

狩りゲー世界転生輪   作:時守 暦

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同人脱出ゲームをやっていて思った。
M男が集団痴女から逃げるとか、敵に接触したらこっちがダメージ受けて理性とか精力とか削られる、ってパターンばっかりだなぁ…。

プレイヤーをS男にした脱出ゲームにしたらどうなるか?
敵は基本M女。
敵から逃げ回る…のはS男的にシチュエーションに合いそうにないので、こっちから追いかけて捕まえる?
自分から寄ってくるのは、誘い受けタイプのM女。
接触したらエロシーンに発展し、ダメージは受けないけど時間が経過してしまいます。
タイムリミットまでに脱出すればクリア。
そうでなければ、延々とM女達を調教するバッドエンド(?)が待っています。

…どうせやるなら、SSの中でやるか…。


第443話

堕陽月壱日目

 

 

 ようやく新しい暦に突入。なんか普段の倍以上の日数だったような、そうでもないような。

 …ところで、何で俺は日記をつけておきながら、日付を書いてなかったんだろうか? まぁいいや。深く考えると知らなくていい事を知ってしまいそうだ。

 

 それはともかく、今日も茅場の突撃朝一番を受けた後、滅鬼隊が居る施設に向かう。

 雪風を見ていたが、体調不良が発生するでもなく、精神的に不安定…なのは否定できないが暴れ出すような事もなく、九葉のおっさんからの支援も確約できた為、もう一人目覚めさせようって事になったのだ。

 

 勿論、狙いは指揮官である『浅黄』。記憶がどれくらい残っているのかは分からないが、最悪でも雪風に仲間が出来たと感じさせる事はできるだろう。

 ……その雪風は、今朝方帰ってきてから、何故か山本先生の背後に隠れてあうあう唸ってるんだけど。

 

 …神夜、明日奈、遊びに行った先で何かあったのか? まさか直葉ちゃんに妙な事してないよな?

 

 

「してないわよ…。まぁ、その、ちょっと刺激の強い話をしたのは確かだけど。…がーるずとーく、って言うんでしたっけ」

 

「ですね。直葉ちゃんもそういう事に興味があったみたいで、お酒も入っていたのでつい色々と…最初は『こすぷれ』の話だったんですが、そこから芋づる式に…」

 

 

 ……普段ヤッてる事を話しちゃった訳ね。0歳児に春画見せて英才教育するような真似してんじゃねーよ…。

 と言うか、雪風と直葉ちゃんまで飲んだんかい。

 

 ともあれ、こりゃ顔を合わせずにクールダウンさせた方がよさそうだ。

 若いお姉さん姿の山本先生、すみませんけど雪風をお願いします。

 

 

 

 

 諸々押し付けて、再度滅鬼隊の保存施設にやってきた。念のため入り口の辺りを調べてみたが、俺達以外の誰かが出入りした様子はない。

 …ここに滅鬼隊を保存した黒幕は、俺達が出入りしているのに気付いてないんだろうか? 異界に沈めたから、誰も手が出せないと高を括っているんだろうか。或いは、俺達を泳がせているだけか。

 

 考えても仕方ないので、中まで進んできたが…さて、どれが『浅黄』だ?

 一通り見て回ったけど、似たような姿の女性が四人居る。どの人も、スペック表に書かれていた『浅黄』の特徴に当てはまる…と言うか、これ年齢が違う同一人物っていう設定でもあるんじゃないのか?

 

 

 

「茅場さんの話だと、以前に活動していた時の古傷なんかが見られる人が、可能性が高い…んだっけ」

 

 

 そういう話だな。…しかし、見た所一目で分かるような傷がある人はいないな。この容器に入ってる液体、傷を癒す効果なんかもあるのかも。

 剣胼胝なんかあれば分かるかもしれないが……駄目だ、角度的に確認が難しい。

 

 これ以上観察しようと思ったら、容器の液体を取り除いてしまいたいな…屈折のおかげで、どうしても詳細がぼやけてしまう。しかしそれをやると、多分容器の中に戻す事はできない。つまり、すぐに連れて脱出しなければならない訳で…。

 

 

「…あの、そんなに悩まなくても、あなたなら一目で見分ける方法があると思うのですが」

 

「? 神夜、いい考えでもあるの?」

 

「ええ。…多分できるだろうと思うんですけど」

 

 

 俺なら出来る…? しかも一目で?

 具体的な方法は?

 

 

「いやらしい目で見るだけです」

 

 

 …それだけで、何が分かると言うのだね。と言うか、救出の為とは言え、女性の裸体を無断で矯めつ眇めつするのはよくないって言ったのは君達なんじゃが。

 いやらしい目で見ろって言われてもな…状況が状況だし、前と同じであんまり催さないんだよな…。

 それで? いやらしい目で見ると、何が分かる訳?

 

 

「滅鬼隊の方々は、起こすのに…その、交わる必要があるんでしょう。でしたら、目を覚ました事がある方は…経験がある訳で…」

 

 

 あー……そうか、処女じゃないのか!

 

 

「はっきり言われると、また複雑な気分ですねぇ…」

 

「それは確かに大きな特徴と言えば特徴かもしれないけど、それこそどうやって見分ける気よ? その…した事があるかなんて、外から分かる訳ないじゃない。…証だって、運動とかで破れちゃう事も」

 

 

 いや、処女かどうかくらい見れば分かる。何人も破って来た経験のおかげで、場合によっては目で見なくても気配だけで確実よ。

 

 

「………今更だけど、何人の女の子としてきたんだろ、この歩く公衆猥褻物…」

 

 

 お前はその猥褻物の恋人だぞー。

 …それはともかく、神夜の画期的な考えのお陰で、すぐに発見できそうだな。と言うより、記憶を思い返せばこの場でいける。

 

 んー……うん、『浅黄』の中で、処女じゃなかったのは一人だけだ。

 ついでに言うと、他の滅鬼隊の中にも処女じゃない人は居たな。

 

 

「…提案しておいてなんですけど、本当に見分けられるとは…。変質者極まりないです…」

 

 

 分かるものは分かるんだから仕方ないにゃー。

 …最近、鷹の目と鬼の目が進化してきて、注意深く覗き込めば他にも色々と分かるようになってきてるんだ…。具体的には経験人数(同性含む)とか、絶頂した数(自慰含む)とか。…下手に覗き込むと、地獄の蓋を開ける事になりそうだけどな!

 

 さて、とにもかくにも誰が『浅黄』なのかは確定できた。これが当たっているかは、目を覚まして話を聞いてみなけりゃ分からないが。

 

 

「じゃあ、今日はその人を担いで撤退する?」

 

 

 いや、もうちょっと奥まで調べる。茅場が言ってた、異界を生み出す事になっている元凶も特定しておきたい。

 …それに、滅鬼隊員達を目覚めさせる合言葉の一覧とか、どこかにあると思うんだ。

 

 

「それは…どうでしょう? もしあったとしても、燃やしていると思われる…と、先日の会議の時に結論されていませんでした?」

 

「うーん……私も最初はそう思ったんだけど…。…偏見みたいな言い方になるけど、こんな仕組みを作った人達が………つまり、頭の悪い春画みたいな妄想を実現させて研究…なのか遊んでるのかよく分からないけど、まぁとにかく程度の低い人達よ? 証拠隠滅だって杜撰だろうし、異界に沈めるなら態々燃やす必要もない…とか思いそうじゃない?」

 

「…相手の無能に期待するようですが…確かにありそうですねぇ。加えて言うなら、『ほとぼりが冷めた頃に回収して、また使えるように』なんて考えで合言葉の記録も残しているかもしれません」

 

 

 流石にその場合、この施設じゃなくて手元に置いておくと思うけどな…。でも確かに、明日奈が言うようにこんな頭悪い事してる連中だもんな…。

 ……まぁ、合言葉表は見つかったら幸運、くらいに思っておこう。

 どっちにしろ、『浅黄』を目覚めさせる合言葉は探り当てなきゃならんのだ。

 交合は最後の手段。

 

 

「その最後の手段に出るまで、どれくらい時間がかかりますか?」

 

 

 ……………ふ、二日くらい…かな…。

 いや欲望云々じゃないよ? そっちは二人を相手に充分満たされてるよ?

 真面目な話、雪風が目を覚ましている事も『黒幕』にいつ露見するか分からないし、ここから先は極力素早く動く必要が…。

 

 

「はいはい、今更それくらいじゃ怒りませんから。言い募ると余計怪しく感じますよ。…怒りを向けるべきなのは、あなたじゃなくて黒幕の方です」

 

「じゃ、この話はここまでにして、もうちょっと奥まで進みましょう。異界での活動限界までまだ余裕はあるけど、気を緩めないようにね。白浜君も、とんでもない鬼と戦ったそうだし」

 

「そう言えば、詳しく聞いていませんでしたね。どんな鬼だったんですか? 興味深いこと極まりないです」

 

 

 その話は後でね。寝物語にでも話してやるよ。

 さて、先に進むぞ。

 

 …と言っても、施設自体は一通り見て回ったよなぁ…。

 

 

「瘴気の源らしいものは、見かけませんでしたが…実は施設の外にあるとか?」

 

「隠し通路とかあるんじゃない? 瘴気が一番濃いのは、間違いなく施設の中だし」

 

 

 どっちもありそうだな…。瘴気が濃いのは、流れ込んで蓄積された瘴気が淀み溜まっているから…かもしれない。

 でも、施設の周りはここを見つける為に一通り確認してる。隠し通路を探す方向で行ってみよう。

 

 

「わかったわ。それじゃ、単純に考えれば…特に瘴気が濃い辺りが怪しいかな。と言っても、どこも大して変わらないけど…」

 

 

 手掛かりはあるぞ。瘴気の動きって、空気や風の動きと連動してるから、そこを辿れば。

 

 

「風って言われても、ここは地下で室内ですよ。全くの無風とまでは言いませんが…。間取りを考えて、不自然な空白がある部分を探した方がいいのでは?」

 

 

 間取り…間取りか。確かに、それで検討をつけて、鷹の目で入り口を探した方がよさそうだ。

 よし、それで行こう。

 

 

 

 

 

 

 

 と言う訳で探してみたんだが…ちょいと予想外だったなぁ。

 地下にある施設に、更に地下室作ってるとは思わなかった。と言うより、その地下室の上に他の部屋を増築していったようだ。 

 施設の本命はその地下室で、それ以外の部分はついでだった訳ね。

 滅鬼隊の保管や研究も、この副産物だったんだろう。

 

 

 そして、施設の更に下にあった空洞は……見覚えがあった。

 

 

「これは……何なんでしょう? 雰囲気が一変しましたが…」

 

「それ以前に、どう見ても尋常な代物じゃないわね。壁から天井まで金属で覆われてる…素材にはそこそこ詳しい自信があるけど、こんなの見た事無いわ」

 

 

 …俺は、ある。これは箱舟だ。

 

 

「箱舟? …船、ですか? こんな山の中に?」

 

「これが船って…どれだけ大きいのよ」

 

 

 俺が見た事がある奴は、全長の半分だけでも塔みたいな大きさだったよ。マホロバの里…霊山の西にある里の近くに、思いっきり突き刺さってた。

 全体が未知の金属で構成されていて、絡繰りで動いていた。

 

 船って言っても、水の上に浮かべる船じゃない。もっと違う……なんて言えばいいのかな…時間や世界を渡る為の物、らしい。

 …茅場が飛びつきそうな話だな。

 

 

「時間や世界? よく分かりませんけど…結局、それがどうしてここに? これも同じ物なんでしょうか?」

 

 

 さぁ…間取りは似通ってるけど、そもそもあの船もどういう構造になってるのかよく分からなかったからなぁ…。

 大きな広間があって、その中に一体か二体、強力な鬼が居て…。

 

 

「…その強力な鬼って…あれかしら」

 

「あれでしょうね」

 

 

 大きな広間、その真ん中に一匹の鬼が眠っている。獣のような、トカゲのような。 

 

 

 そして背中に銃身を背負っているような。

 

 

 

 

 

 っていうか、あれMH世界のガスラバズラっぽいぞ。

 そして背中の銃身は、GE世界のラーヴァナのようだ。

 

 だが、感じる気配は鬼のもの。しかし普通の鬼でもない。外観や他の世界の生物っぽい特徴を差し引いても、普通の鬼とは一線を画す気配がする。

 

 …と言うか、こいつ俺と同類じゃね? 別に色情狂とか、のっぺらミタマ集合体とか、死んでも繰り返しているとか、そーいう事じゃない。

 こいつから、虚海が使っていた触媒の感覚がある。俺もそれを取り込んでしまってるから分かるが…間違いない。こいつ、蝕鬼だ。

 

 …大きな広間、しかも世界を超える舟の中。どう見ても生活スペースではない。むしろ何か重要な物があるぞと言わんばかりの空間。

 そのド真ん中に陣取って眠る触鬼、しかもメカメカしい部位を持っている。

 

 

 

 

 こいつ…まさか、ここにあった物を全部取り込みやがったのか? ここに保管されていたであろうエネルギー源、それを利用する為の機構、安全装置、その他諸々…ここにあった物を貪り尽くして眠っていたのか?

 そして今、何もなくなった空間の中に、新しい『何か』が入って来た訳で。

 

 

「眠ったままでいてくれればいいのに…。久しぶりに本気の戦いになりそうね」

 

「背筋が冷えます…。ですが、斬冠刀は煮えたぎっています」

 

 

 ゆっくりと体を擡げた鬼を見て、二人は得物を抜き払う。俺はもう抜刀済み。

 鬼から感じる圧力は、討鬼伝世界に来て以来…いや、フロンティアに居た頃に感じて以来のプレッシャーだ。俺でさえそれくらい感じているのだから、明日奈も神夜も本気で死の危険を感じているんだろう。それでも武者震いしているのは、モノノフのサガだろうか。

 長い時間、ここでずっと眠っていたようだ。動きは鈍いだろうが、内部の誤作動は期待しない方がいい。それだけの時間があれば、体を最適化していると思われる。

 

 ガスラバズラにラーヴァナ…毒、デッドリーヴェノムが主軸か? だが、ここにあった物を喰い尽したのであれば、単なる毒では留まるまい。

 超エネルギーによる砲撃は当然。吐き出した毒に向かって高熱を打ち込み、気化させて毒霧くらいはやるだろう。毒と薬は紙一重だし、自分に対して使った毒でドーピングしたり、回復薬の真似事みたいな事もするかもしれない。

 

 だが、真に注意すべきは背中からの砲撃や毒ではなく、蝕鬼としての能力だ。

 触れた物を何でも取り込んで、自分の一部、或いは自分と同じ存在に変えてしまう能力。流石に触れたら即座に、と言う訳ではないが、万一吸収されてしまったら即死である。

 

 逆に弱点と言えるのは…属性は当てにしない方がいい。元が何で、何に似ているのであれ、ここの材料を取り込んだ以上、元の性質とは全く違うモノに成り果てているだろう。

 背中の銃身は非常に大きくバランスが悪そうだが、それを支える為の足は異様に発達している。ちょっとやそっとでは、グラつかせる事さえ難しそうだ。

 となると……一番攻撃が通りやすそうなのは、銃身内部。つまり、こっちに銃口を向けた時に早打ちカウンターを叩き込む、か。それにしたって、超エネルギーの攻撃に耐えうる銃身である以上、致命打には遠そうだが…。

 

 

 これ以上考えても、いい突破口は見つかりそうにない。さぁて、一丁やりますか。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 いやはや、久しぶりに激戦でしたな。ついついアラガミ化した上に、鬼杭千切まで使っちゃったよ。

 全く何を取り込みやがったのやら。毒と超高熱は予想してたけど、雷、冷気、岩(と言うか金属の塊)に、各種状態異常…睡眠やら気絶やら平衡感覚がメッチャ狂うやら力が抜けてしまう毒やら、とにかく真っ当な状態で居られた時間は数える程だ。

 ステータス異常のオンパレードだよ。

 そこへきて、単純な火力もバカみたいに高い。

 

 戦いの最中、3人揃って麻痺毒・睡眠毒・物理的拘束で足を止められ、トンデモ火力の砲撃を受けた時はマジでヤバかった。拘束魔法からのスターライトブレイカーって、多分あんな感じだ。

 どうやって切り抜けたか? そりゃ、俺は物理的拘束で足だけ動かなかった訳だからね。後ろには動けない二人が居たんで、逃げるに逃げられなかったから…アバン流刀殺法・海破斬で叩き斬りました。

 あそこでなー、斬るんじゃなくて反射させられればほぼ勝ち確定だったのになー。

 

 その後も、レールガンみたいな超スピード狙撃とか、両腕を振るって起こした竜巻で攻撃とか、なんかよく分からない触手とか鞭とか、後は何があったっけな…。空気大砲、ドーピングからの超筋力、回復、地面に潜る(と言うより、あれは影を伝っていたような気が)、異様に硬くなる、etc etc…。

 一体幾つ手札があったんだろうか。多分、まだ見せてない奥の手とか、使えるには使えるけどあんまり意味なさげな機能とかもあったんだろう。

 特に、最後に繰り出そうとした攻撃はヤバかった。予備動作の時点で止めてなかったら、神夜か明日奈のどっちかが重傷を負っていただろう。あれは……ドーピングからの……原理的には、居合だったんだろうか? 力を貯め込み、爪を敢えて障害物(こいつが作り出した、硬い岩みたいなもの)に引っ掛けて、デコピンの要領で、こう…。

 繰り出される直前、久々にアクセラレータ使って3倍速で突っ込んだぞ。

 

 

 …事前情報に気付かなかったら、一人死んでたなぁ…。

 

 

 

 うん、あったんだ、事前情報。こいつに連なってるって気付かなかったけどさ。

 戦っている内に、疑問に思ったんだ。あまりにも多くの手札、次々と変わる攻撃属性と方法。幾ら何でも多すぎないか? ゲームで言えば、たった一人の敵がホイミから『混沌より溢れよ怒りの日』まで、好き放題にぶっ放してくるようなもんだ。…いやエイヴィヒカイトは流石に言い過ぎとしても。

 こいつが元々持っていた能力ではない筈。スネ夫もといアルバトリオンでさえ、使える属性は4つ程度。

 と言う事は、これらの能力は触鬼としての力により、ここにあった『何か』を取り込んだ結果得られたもの。

 

 では、その『何か』とは?

 

 

 

 

 

 

 答え。

 

 

 

 

 滅鬼隊。

 

 

 

 

 

 或いは……そうであってくれと願う……滅鬼隊に異様な力を与える為の、製造装置。

 …こいつが使ってくる能力な、多少の差異はあるが、滅鬼隊の資料に書かれていた能力と似通ってるのに気が付いたんだ。理由はともかく、相手の手札がある程度予測できたから、先読みして攻勢に出た。

 結果は見事に大当たり。全部ではないが、初めて使う攻撃方法・防御方法を先読みし、いい塩梅にカウンターを何発か叩き込めた。うまい事部位崩壊してくれたから、そこからガンガン攻めて打ち取ったって訳。

 

 

 

 

 

 で、後からこいつが滅鬼隊の術っぽいのを仕えた理由を考えてみたんだが…。

 

 幾ら人体改造するからって、タマフリという超常の力を持つモノノフをして『奇妙な力』と言わしめた術を習得できるだろうか? バカ言え、その程度で妙な力を得られるなら、ハンターは全員バビル2世か超人ロック並みのエスパーになっとるわ。…ハンターの生態自体が妙な力そのもの? ……それは人間が元々持っていたポテンシャルです。凄いね人体。

 

 ともあれ、この施設…元は滅鬼隊を『製造』するのではなく、ある程度出来上がった滅鬼隊員に常ならざる力を付与する場所だったと見た。上の保管所は、その作業が終わるまでの待機場所って訳だ。

 そんで、この地下のスペースは、力を付与する為の手術場所、ないしその為の触媒を作り出す場所。

 舟の中心部であるこの場所には、強力なエネルギーと、それを転用する為の多種多少な装置が配置されていたんだろう。そして、それを更に転用していた訳だ。

 

 それを取り込んで……或いは、手術前で放置されていた滅鬼隊員を……、こいつは異常な力を幾つも得た。

 

 

 のかなぁ?

 うーん、今までのパターンだと、そういう色んな機能をゴテゴテ付け足したような連中は、力を使いこなせずに振り回されていたと思うんだが。

 今回のこいつは、まだまだ工夫の余地はあるだろうが、振り回される事無くしっかりと使い分けていたように思う。

 それこそ、アルバトリオンみたいな…いやいや、あいつも自分じゃ制御しきれてないんじゃないかって説もあったなぁ。まさか、アルバトリオンも触鬼みたいな生れなんじゃ…MH世界でも異端な印象が…。

 

 違う、逆だろ。元々持っていた力だから、自然と動かす事ができたって考えた方が……じゃあ、あの鬼とかアルバトリオンの産まれってなんぞ?

 …いや、今考えるべきはそこじゃないか。

 

 とにもかくにも、毒を通り越してありとあらゆる物を振りまいたあの鬼は、その体を崩壊させて中にあったモノを晒している。

 見覚えのある、人の頭よりも少し大きなくらいの石。それを取り巻いている、なんかよく分からない…容器。気のせいか、滅鬼隊の人達を保存している容器に似てるな。そこには幾つものスイッチらしきものと、注意書きらしい知らない文字が書き込まれている。

 

 要するに、触鬼が取り込んでいたと思われる、舟のエネルギー源となる物が転がり出てきた訳だ。

 他には何も出てこなかった。取り込んでいたのはコレだけだったのか、それともエネルギー量がデカすぎてこれだけ消化しきれなかったのか。

 

 とにもかくにも、こいつが…こいつを取り込んでいた鬼が、この場所の異界を作り上げる原因となっている事は間違いない。

 つまり、これに術をかけてしまえば、その性質を逆手にとって異界を浄化できる訳だが…。

 

 

「………あの、これ、本当にやるの? 見てるだけで、こう…なんか色々と冷や汗が浮かぶんだけど」

 

「そうですそうです。こんな物騒な爆弾見た事ないです」

 

 

 …うん、俺も心底同意する。上手い事活用できればなー、地方単位で異界を浄化できそうな気がするんだけど…。

 

 

「『できる気がする』で異界を浄化して、オオマガトキ一歩手前の現象を引き起こしちゃったのは誰だったかしら?」

 

 

 ワタクシです。あの後の本願寺顕如=サンの鉄拳は痛いってレベルじゃなかったよ…。

 あの時と同じ事をやっちまったら、冗談抜きでオオマガトキよりひどい事になりそうだ。

 仮に上手く行ったとしても、どんな副作用が出るかなぁ…。水清ければ魚棲まずって言うし、日ノ本全土が『消毒』されちゃうんじゃなかろうか。

 

 

 

 

 うん、これの始末は後回しにしよう。まずは異界浄化と、その前準備として滅鬼隊の避難だ。

 異界浄化自体は、これを使わなくても出来る。この場所に上手く術をかけてやれば、後は放っておいても異界は消えるだろう。

 

 

 

「…ですが、これをここに放置する気ですか? それこそ、私としては不安で眠れなくなる事極まりないのですが…」

 

 

 いや、そこは考えがある。この ふくろ に入れていれば、安全な筈だ。

 

 

「? 確かに、色々出てくるし、明かに取り出し口よりも大きな物を出し入れしてるから、普通の袋じゃないとは思ってましたけど…」

 

 

 詳細は省くが、ここに入れた物は俺が取り出そうと思わない限り誰にも触れられないし、奪われる事もなくなるんだ。

 …データ化して記録・保存されるからね。……下手をすると、コピーできちゃうのが難点だけど…。

 

 

「便利な物がありますねぇ…。と言うか、いい加減本当に何者なのか、追及するべきでしょうか…。空気を読んで黙ってましたけど、謎が多すぎます」

 

 

 あーうん、色々黙ってるのは本当に悪いと思ってる。理解を超える所が多くても、話をすべきだとも思ってる。

 ただ、本当になんて説明すればいいのか、分からな……いや、言い訳か。

 

 

「はいはいそこまで。都合のいい女になってるって自覚はあるけど、それどころじゃないんでしょ。色々打算とか、誤魔化し込みなのはお互い様よ。いいじゃない、あなたは不義理を働いてるのかもしれないけど、それ以上に報いてくれてるわ。少なくとも、私はそう感じてる。シノノメの里の為に援助を引き出す事だって、本当はわざわざ付き合う義理なんてなかったんだもの。それがこうまでしてくれてるのは、私達の為…っていうのは己惚れ?」

 

 

 ……まぁ、大きな理由ではあるね、少なくとも。

 すまんな、本当に。話せるところまでは話すからさ。と言っても、俺自身どこまで把握できてるのやら…。

 

 

「とりあえず、この話はここまでにして引き上げましょう。この爆弾も、安全な場所に確保できるならそれ以上を考えるべきではありません。異界浄化の手段を手に入れた事で、よしとしましょう」

 

 

 

 …そうだね。んじゃ、とりあえず戻って、『浅黄』を確保して戻るとしよう。他の皆を連れ出すのは、九葉のおっさんに隠蔽先の準備を整えてもらってからだ。

 

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