※この作品はR-18です。

狩りゲー世界転生輪   作:時守 暦

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健康診断で肝臓の数値がひっかかり、再検査を受けている時守です。
…酒弱くなったしなぁ…。
いい加減、真面目に控えなければならんのか…。

進撃の巨人2ファイナルプレイ中。
まぁ、相変わらずの面白さではありましたが……残念な点も同じままですね。
これは仕方ないですけど、キャラクターエピソードモードで前主人公(つまり自キャラ)に全く触れられないし、死亡キャラ生存もできない。
そして壁外奪還モードでは、同じような戦闘の繰り返し。
ファイナルじゃない頃のトロコン仮定を書いたブログに、「薄めたカルピスを延々と飲んでるような感じ」とありましたが、正にそれです。
もうちょっとキャラが揃って来れば、替ってくるのかなぁ…。

そしてトロフィーが無いのは予想外。
ま、文句ばかり言っても仕方ありませんし、ゆっくりプレイしていきます。
次に注目するゲームは、モンハンアイスボーン、あと仁王2かな…。


第457話

堕陽月拾日目

 

 

 昨日のまりの一件でどうなる事かと思ったが、今のところ反乱だの不満だの、そういう物騒な兆候はない。

 まぁ、暗示を仕込んだのは俺じゃないし、解除の当てもないのにそんな事しても、待っているのは遠からず襲ってくる発作だけだ。そうなったら、発作を治める方法すらなくなっているのだ。

 …滅鬼隊はかなり短絡的な思考回路が多いから、そんな事関係なしに後先考えず…という可能性を否定できないのが辛い所だ。オツムの出来的な意味で。

 それも、人生経験が全く無いのが一因だから、今後は徐々に改善されていく…と思いたい。俺がこいつらの教育係になるんだろうか…。

 

 …四の五の言っても仕方ないか。滅鬼隊には戦力にもなってもらうつもりなんだし、そこで教育を怠れば油断してお陀仏するのがオチだ。そんな事をしたら、それこそ彼女達を捨て駒扱いしていた連中と変わらなくなってしまう。

 腹ぁ括って、思い上がらないように鼻っ柱を圧し折り続けるとしよう。

 

 

 

 さて、なんやかやあったが、夕方にはウタカタの里まであと一歩、と言う所まで到着した。

 最後の休憩を取っている時に、明日奈と神夜が寄って来た。

 

 

「…ねえ、さっきから視線を感じるんだけど。多分敵意はないと思う」

 

 

 分かってる。多分、ウタカタの斥候部隊だろ。あっちにも話は通ってる筈だから、問題はない。

 

 

「それにしては、ずっと見られているようですよ?」

 

 

 まぁ…無理もないだろ。事前通達があったとは言え、40人以上の集団だもの。万一、盗賊の集団だったらえらい事になる。

 この辺は、激戦区ではあるけどウタカタのお陰で異界や鬼の侵蝕が抑えられてるし、里の外でも暮らしていけない訳じゃないからな。

 盗賊の類は、大体ここのモノノフ達が捕まえて『始末』してる筈だけど。

 

 

「なるほどー。でしたら、あちらから出向いていただけるかもしれませんね。盗賊鴨しれない集団を、里に近付ける訳にはいかないって事で」

 

「そうね、近付かれる前に確認しに来るでしょう。こっちの子達が騒がないように、注意してみてましょうか。悪い子達じゃないけど、あらぬ疑いをかけられれば面白くないでしょうし、それを理解できても抑えられるかは不安が残るわ」

 

「…今更聞く事ではないんですけど、そもそも皆をどうやって生活させるんです? 建物だって足りるか分かりませんし、食料も…」

 

 

 

 食料や当座の資金に関しては、九葉のおっさんが援助してくれてる。

 ただ、居場所がな…。滅鬼隊の心境を考えると、見ず知らずの人間と同居してくれ、とも言い難い。

 

 

「最初の雪風ちゃんみたいに人見知りする可能性は高いですし、常識も殆ど知らないんじゃ揉め事の原因になりかねません」

 

「あとは、慣れない状況におかれて、発作の引き金になったりね」

 

 

 ああ。

 だから、場所は土地を貰えれば、そこにでっかい建物を作って、まずはそこで共同生活。徐々に施設を増設していくつもりだ。

 大丈夫、ちょっと普通じゃない手段だけど、半日もあれば建物は作れる。マイクラ的豆腐ハウスだけどな。

 

 

「豆腐……ハウス? ハウス、は確か家って意味だったから…豆腐の家? お菓子の家の亜種?」

 

「夢が広がりますねぇ。乙女としては、食べ過ぎが怖いですけど」

 

 

 お菓子の家を食ったら、家が無くなっちまうわい。どこの美食屋じゃ。

 

 

「と言うか、たった半日で建てられる家って、どう考えても手抜き工事…。正直怖いんだけど」

 

 

 ま、そこは見てのお楽しみだ。

 それより、ウタカタの人が来たようだぞ。

 

 道の先から、集団で歩いて来る人影。あれは……桜花、富獄の兄貴、それ以外は準主力級のモノノフの中でも、特に腕が立つ面々。…俺達が盗賊である事も想定し、一戦交える事も考えて来たか。

 互いが視認できる距離まで近付き、止まる。思い思いに寛いでいた滅鬼隊員もそちらに注目していた。

 

 

 

 

「我々はウタカタの里所属のモノノフ警備隊である! そこの集団、何者か! 所属と姓名を名乗られよ!」

 

 

 我々は霊山から遣わされた援軍である!

 九葉軍師より通達があった筈! 確認されたし!

 姓名及び命令書は、人数が多い故こちらに纏めてある!

 

 束になっている命令書を掲げ、桜花達に近付く。

 一瞬、滅鬼隊にも桜花達にも緊張が走るが、暴発はなかった。桜花が応じるように歩み出て、丁度中央で向かい合う。

 

 …これが命令書だ。

 

 

「うむ。……………………失礼した。どうやら本当に、霊山からの援軍のようだな」

 

 

 警戒を解き、桜花は警備隊に何やらジェスチャーで指示をした。問題なしと伝わったのか、張り詰めた空気が消えていく。

 …富獄の兄貴が、ちょっとつまらなそうな顔をしてるのは見なかった事にしよう。

 

 

「すまない。確かに援軍を送るという伝達は確認していたが、まさか本当に40人以上も送られてくるとは思っていなかった。…ああ、私は桜花。里のモノノフだ」

 

 

 これはどうも。

 ああうん、それは勘繰っても仕方ないよな…。霊山が自分のところからモノノフを出す事自体が珍しいのに。

 

 とは言え、実のところ全員が戦えるって訳でもないんだ。皆、色々と訳有りで、素質はあるんだが実戦経験が無い者が殆どでな…。

 

 

「ま、そんな事だろうと思っていた。しかし参ったな、一応迎え入れる為の準備はしていたんだが、家屋が…」

 

 

 そこらへんは、土地を貰えればこっちでどうにかするから大丈夫。

 事前に調べたんだが、結界の外れ辺りに広い場所があった筈。

 

 

「あるにはあるが…あそこは結界の効力も及びにくく、時には鬼が侵入する事すらあるんだぞ」

 

 

 侵入してきた鬼は、結界の影響で弱体化している。相手にもよるが、実戦経験を積ませるには丁度いい。

 それに、よろしくないとは言っても、これだけの人数を受け入れる場所は無いんだろう?

 

 

「う、うむ…。10人程度ならまだしも…。半信半疑ながら、何とか受け入れ先を作ろうとしていたんだが、まるで間に合ってない」

 

 

 通達が出て数日しか経ってないからね。無理もないね。

 まぁ、こっちも色々訳在りな上、霊山が大混乱しててな…。

 

 

「ふむ、その話は興味深いが…いつまでもここで立ち尽くしている訳にもいかん。ともかく、まずはお頭に面通しするのがここの流儀だ。案内しよう。ついてきてくれ。………問題ない、撤収するぞ!」

 

 

 

 桜花の声に応え、警備隊と富獄の兄貴が動き出す。…富獄の兄貴、こっちを品定めしてたっぽいな。稽古相手でも欲しかったんだろうか?

 にしても、流石に統率が取れているな。桜花の声かけに戸惑う事もなく、淀みなく動いている。周囲の警戒、進行する様も見事なもんだ。

 

 …それに対して、こっちはまんま小学校の遠足だ。まともな教育できてないんだから仕方ないが…モノノフとして戦わせる前に、集団行動ってものを叩き込まなきゃならんな。

 

 

 

 

 

 

 

 ワイワイ騒ぐ滅鬼隊を宥めながら、里に入る。

 当然と言えば当然だが、物凄く注目された。突然やってきた9割以上が女性の集団。しかもほぼ全員が美女美少女。男も居るが、これまた揃って美形。…俺? ノーコメント。

 

 里の広場で、里長…大和のお頭に挨拶となった。隣には神垣の巫女の橘花も立っている。

 …色々考えるところはあるが、まずは「ああ、ようやくここまで戻って来た」と感じるなぁ。いや本当に長かった…。 

 異界に囲まれたシノノメの里からの踏破から始まり、次は霊山で九葉のおっさんと取引したら、滅鬼隊なんて代物が出てきててんやわんや…。

 

 だが、ここからが本番だ。敵の強い弱いで言えば、大抵の鬼はもう相手にならない。いつぞやのループで出てきたような下半身のみのデカブツみたいな規格外でも出てこなければ、片手間に片付けられるだろう。

 しかし俺の標的はクサレイヅチ。奴に捕らわれている千歳と、奪われた因果の奪取。今度こそ確実に仕留める。…その下準備を行わなければならない。

 さて、滅鬼隊の面倒を見ながら、どうすりゃ上手くやれるかな…。

 

 

 

 

 

 

「よく来てくれた。俺が里長の大和だ。歓迎しよう。九葉から、多少は話を聞いている。……聞いてはいたが、こうして改めて見ると壮観だな…」

 

 

 半ば呆れ顔の大和のお頭。大和のお頭がどこまで聞いてるかは分からないが、妙な事を企む人ではないので大丈夫だろう。

 相変わらずの、腕を組んでの仁王立ちで俺達の顔を一人一人確認している。

 

 

「…来てもらって早々に不甲斐ない話だが、流石にこの人数を受け入れられるだけの家がなくてな。桜花からの話だと、結界の外れの土地を使えれば、あとは自力でどうにか出来ると言ったそうだが?」

 

 

 ええ、当てはあります。まぁ、最初は文字通り雨風を凌ぐだけの場所で、そこから拡張していくつもりですが。

 鬼の侵入も、稽古相手と考えればそれほど悪くないかと。

 こっちに鬼の侵入を防ぐ手段はあるんで、侵入経路も限定できる。後は罠でもしかけておけば、トラップタワーの出来上がり。

 里から流れる川もあるから、生活用水も確保できるしな。

 

 

「鬼を甘く見るな。とらっぷたわぁとやらはよく分からんが、奴らは意外と頭を使う。…とは言え、他に代案もないか」

 

 

 そういう事。何、気にする事はない。別の里では、外様が結界に入るだけの容量が無いんで、結界外で暮らしてるところもあるんだ。それに比べりゃ温い温い。

 

 

「永続的には流石に厳しいが、数日程度なら軒を貸してもいい、という家もある。全員を収容するには流石に足らないが、必要であれば言え。食料や金銭についても、九葉からある程度は貰っているので、その分は手配しよう。何がどれだけ必要になるのかは、お前の判断に任せる。無駄遣いしない事だな」

 

 

 そんな子供に小遣いやってるような言い方せんでも。

 いや、子供の小遣いなら大した問題にはならないが、企業で余計な金使ったらそれこそ問題になるか。

 

 

「さて、モノノフとしての働きについて話をしよう。さっきも言ったが、事情は聞いている。戦えない者も多い事は予想済みだ。今すぐに戦いに赴ける者は何人いる?」

 

 

 俺、明日奈、神夜は実戦経験ありで、今からでも動ける。

 他の連中は…こっちに来る間に一人一人出来る事を確認してきたが、班分けもしてないからまだ無理だな。得物を準備する所から始めなきゃならない。

 物自体は俺の私物を貸与すればいいから、後は何を使うかの選別だな。

 

 

「そこまでか…。境遇と、目を覚ましてからの時間を考えれば無理もないか。では、早速一仕事してもらおうか」

 

 

 

 カァーーーーン

     カァーーーーーーーーン

 

 

 …はいはい、早速襲撃ね。

 ヤバい気配は感じない。大型無し、餓鬼辺りが結界の近くまで入り込んできただけか。

 

 

「この鐘の鳴らし方は、そのようだな。…だが、数が少し多いな。2……いや、3つの部隊で対処する。一つはウタカタの常駐部隊。桜花、お前が指揮を取れ」

 

「承知。すぐに出撃します!」

 

 

 刀を手に、桜花は駆けていく。いつでも出撃できるよう、小道具の類も持ち歩いているんだろう。準主力級のモノノフの屯所へ駈け込んでいった。

 

 

「残りの2部隊は、そちらから出せ。どれ程のものか見せてみろ。…富獄、お前も行ってこい」

 

「しゃあねぇな…。雑魚に興味はねえが、新入りの出来は見といてやるよ」

 

 

 …初陣としては丁度いい、か。雪風! と……よし、骸佐!

 

 

「へひゃっ!?」

 

「俺か」

 

 

 ほれ、銃。と刀。使い方は分かるな?

 

 

「え、あ、分かるけど、これってつまり?」

 

「実戦か…。人に使われるのはいい気分じゃないが、戦えるなら行って来よう」

 

 

 こっちに来るまでに確認したが、モノノフとしての訓練、基本的な技能は問題ない。戦って来い。まぁ、大した相手じゃないとは思うけど。

 明日奈、一緒に行ってやってくれ。

 

 

「了解。無茶して突っ走らないように見ておくわ」

 

 

 神夜は、ここに残ってる連中の面倒を頼む。

 

 

「はーい。私も戦いたかったです…弱くて楽しくなさそうですけど…」

 

 

 …そーゆーところがあるから、雪風のお守につけられないんだよ。

 

 俺は…よし、浅黄!

 

 

「「私?」」

 

 

 …指揮官だった方の浅黄。若い浅黄で浅木とかややこしくて仕方ないよ…。

 指揮官を降りても、戦闘能力はそのままだろう? ちょいと確認しておきたい事もあるから、一緒に来てくれ。

 

 

「…分かったわ。双刀、ある?」

 

 

 ほれ。これも数打だけどな。

 大和のお頭、こっちには見極め役は不要かい?

 

 

「構わん。どの道、物見櫓から状況は確認するからな。では、行ってこい!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 まぁ、山場もクソもなく終わったんですけどね。餓鬼数匹程度だもの。チュートリアル戦闘だもの。

 …平和でいい事なんだけど、ここまで来るとせめて一捻りほしいよなぁ…。折角強くてニューゲーム状態なんだからさぁ…いやそんな事言ってたら、毎回毎回訳の分からない事態に発展して、最終的に脈絡もなく降ってくるラヴィエンテや巨大ミラバルカンでデスワープするんだけど。

 

 

「それで、確認したい事って?」

 

 

 ん? あぁ…。これからどうするつもりなのか、と思ってな。

 このまま滅鬼隊の一員として活動するならそれは別にいいんだが、周囲から疎んだ目で見られてないか? 或いは、負い目を抱えているから他の連中とまともに話せないとか。

 

 

「幸い、そういう視線は無いわ。…多分だけど、指揮官役だった私に無暗に反発しないよう、好意的な印象を刷り込まれているんでしょうね。封印の切っ掛けになった事に関しては、私を指揮官の地位から下した事で決着…となっているみたい」

 

 

 うーん、どこまで人の意識を弄ってるんだか…。赤子同然だから出来た事なんだろうな。

 

 

「…こちらからも、幾つか聞きたいのだけど。もしも、他に滅鬼隊を見つけたらどうする?」

 

 

 他に? 今いる面子以外でか。…まぁ、状況にもよるな。詩乃みたいにひどい扱いを受けて、逃げ出したいと思っているなら…相手にもよるけど手を貸す。

 美柚みたいに、何もかも忘れて平穏に暮らせているなら、そのままでもいいだろ。

 

 

「そういう意味ではなく、例えば…他に封印されている子が居て、それがまた40人くらい居たら」

 

 

 …居るの?

 

 

「多分、だけど。私と一緒に封じられていたのは、当時『完成』していて、活動するか、その直前だった子達ばかり。型遅れになって使われなくなったり、或いは研究途中で未完成の子も居た筈なの。私が把握しているだけでも、この3倍以上の人が居たわ。『予備』も含めてね」

 

 

 つくづく派手にやってんなぁ…。ばれなかったのが不思議で仕方ないんだけど。

 まぁ、受け入れるだけ受け入れるよ。どれだけとか、限度は…正直、その時次第だ。幸い、滅鬼隊は封印される時は、保存効果のある液体に入れられるみたいだしな。受け入れる準備が整うまで、そこで寝かしておくと言うのも…気分のいい手段じゃないがありと言えばありだろう。

 

 何にせよ、その時までにまずは今いる面子を自立させなきゃならん。

 人が増えれば人間関係は煩雑になっていくし、一人一人に声をかけて発作を防ぐのも一苦労だ。

 助けるだけ助けて、その後抱えきれずに諸共に自滅…って事態は防がないとな。

 

 

「そう…。分かったわ。色々と考え続けていたけど、私はあなたに全面協力する事にする」

 

 

 全面…?

 

 

「…起こされた時から、ずっと考えていたのよ。また、いいように利用されて捨てられるんじゃないかって。あなたは私達を起こし、面倒を見ているけれど、必要とはしていない。違う?」

 

 

 そうだな。戦力として仕立て上げる事を考えてはいるけど、それは滅鬼隊の皆が自分の立場を確立する為だ。

 お前達の為…って恩着せがましく宣うつもりはないが、確かに俺個人の目的の為には不要だな。どっちかと言うと、一度犬猫拾ったんだから、中途半端に捨てる訳にはいかないって責任感に近い。

 目を覚まさせる為なんて理由で、一度は手を出したんだしなぁ。ヤリ捨ては心が痛む…。

 

 

「犬猫に対する責任感で結構。それで私達は充分助けられている。皆を連れてここまで逃げてこられたし、将来の事まで考えてる。…と言うより、単なる責任感でここまでやれるなら、そっちの方が凄いわ。私達を使い捨ての道具にせず、衣食住を確保しようと奔走し、かと言って限度を顧みず抱え込み続けるのでもない。簡潔に言えば、頭領として理想の存在なのよ」

 

 

 ……理想、ねぇ…。求めている要求水準が低すぎるだけのような気が…。

 

 

「私の知る中では、だから。…前の運営元が酷すぎたからね…。ともかく、植え付けられた感情に関係なく、私はあなたを『主』として動くわ。…実を言うと、起こされてからずっとあなた達を観察してたのよ。もしも以前の連中と同じように、滅鬼隊を使い潰す気でいたら、後がどうなろうと寝首を掻いてやる、ってね」

 

 

 はっ、できるモノならば、辞めてくれるがいいわ!

 

 

「できそうにないし、する必要もなさそうだったけどね。…あの時は、植え付けられた感情に縋りついて、皆を破滅させた。同じ事だけは、絶対に繰り返さないと誓っていた」

 

 

 怖い怖い。ま、寝首を掻かれる程に耄碌したなら、その時は仕掛けてくれればいいさ。老害になるより、綺麗さっぱり終わってしまいたい。

 

 

「もうしないわ。…もしする必要がありそうなら、手段を問わずに方向修正する。腹心面できる程、有能ではないけど…改めて、これからよろしくね。『お頭』」

 

 

 ウタカタのお頭は、大和のお頭なんだけどなぁ…。里に二人お頭が出来るようになっちまうぞ、これ。

 妙な事にならない内に、立ち位置表明しとした方がいいな。

 

 

「そういう考えができるから、私より集団を統治するのが向いてるのよ。…ああ、そうそう。それと…」

 

 

 ん?

 

 

「全面協力する、と言ったでしょう。『発散』したくなったら、いつでも呼んでちょうだい。明日奈さんや神夜さんにするのが躊躇われる事でも受け止めてあげる。私を道具と思って遊べばいいわ」

 

 

 …ま、その内な。その時は、協力がどうの立場がどうのなんてどうでもよくなるくらいに、蕩けさせるよ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 さて、襲撃の結果ですが。

 

 俺と浅黄、当然無傷。相手が雑魚だった事を差し引いても、浅黄は充分に強かった。

 流石は経験を下手ハイエンド個体、といった処か。

 指揮官するより、敵の目の前に放り出して大暴れさせた方が有効な戦力になりそうだ。

 危なげなく餓鬼達を一蹴する強さに、物見櫓から見ていたお頭もホッコリ。

 真面目な話、餓鬼の群れって下手な大型鬼より面倒くさいからね。油断もせず気負いもせず、扱くアッサリと殲滅したので、戦力評価としては良しとされたと思う。

 

 

 次、桜花が率いた準主力級部隊。

 軽症者は出たものの、こちらも問題なく敵を殲滅。準主力級と分類されているとは言え、地獄の激戦区・最前線のウタカタで戦い続けている猛者達は伊達ではない。シノノメの里のエース級と張りあう事だってできるだろう。…泥高丸が相手だと、ちと厳しいか。

 桜花に頼りきりになる事を良しとせず、前衛・後衛・索敵その他を淀みなく行う姿は、統率の取れた軍隊を彷彿とさせる。…ていうか、モノノフって実際鬼を相手にした軍隊だものな。

 とにもかくにも、頼りがいのある味方が多いのは良い事だ。

 彼らの事を学ばせれば、滅鬼隊の失敗の原因である慢心やら経験不足も、大幅に改善される事だろう。

 

 

 最後に、明日奈・雪風・骸佐・富獄の兄貴の部隊だが。

 

 

「…すまねぇ、刀を壊しちまった」

 

 

 帰ってくるなり、見事にグチャグチャになった刀を差しだされました。

 それを黙ってみている大和のお頭と、一緒に行った筈の富獄の兄貴。何故か明日奈は居なかった。…いや帰ってきてないんじゃなくて、なんか桜花に連れられて外に行ったんだが。

 

 

「骸佐ってば下手糞ねー。私なんて傷一つ付けずに武器を持って帰ったわよ。餓鬼だって何体も撃ち抜いたんだから」

 

 

 ほら、と差し出された雪風の手には、確かに新品同様の銃がある。何発か撃っているようだが、確かに丁寧に扱っていたようだ。

 が。チョップ。

 

 

「あいたっ!?」

 

 

 雪風、ちょっと黙ってろ。

 武器が壊れた事自体はどうでもいい。重要なのはどうして壊れたかと、無事に帰ってこれたか、だ。

 受け取った打ち刀を掲げ、よく見分する。

 

 

 

 ふむ。

 

 

 無茶な扱いをした形跡はない。刃筋も立ててるし、力ではなく技で斬ってる。身に付けた技法からして力圧しの傾向があるが、それも無理を通すものではなく術理の範囲内。まぁ、そうでなければこの状況で戦わせないけど。

 この折れ方は、無理に斬りつけたからじゃない。敵の攻撃を受けて咄嗟に盾にしたのでもない。

 つーか、刀身より先に柄が壊れとる…。握り壊したのか。しかし、この切り口は素手のものじゃないな。指の形…ではあるが、金属と見た。

 つまるところは、これが骸佐、お前の『タマフリ』か。

 

 

「…ああ、そうだ。詳細が把握できてなかったんで、まだ使うつもりはなかったんだが、実戦でつい、な…」

 

「ほぉ…。突然腕が変化したように見えたが、そういう事か。面白れぇもの持ってんじゃねーか」

 

「そう大仰な代物じゃない。所詮は体を固くするだけのものだ。防御力が高くなるのは結構なんだが、その分動きが阻害されてな…」

 

「はん、そんなもんお前が未熟だからだ。鎧を着こんだままの闘法なんざ、幾らでもある」

 

「…よければ、その闘法とやらを…」

 

 

 …ま、本心であっても、俺の反応を見ようとしたのでも、どっちもでいい。

 富獄の兄貴も強さを求める傾向が強いし、武辺者の骸佐と一緒にすれば何かしらの感銘を受けるかと思ったが、正解だったな。

 槍使いの権佐を選ぼうかとも思ったんだけど、あいつは良くも悪くも骸佐程素直じゃないからなぁ…。性格で言えば、息吹の方が合いそうかな。

 

 ふむ。

 

 ともあれ、そういう理由なら怒る必要はない。

 思わず無用なタマフリしちまったってのは問題だが、この理由なら同じ事は繰り返さないだろう。

 それより得物の耐久度が問題だな。今のままじゃ、骸佐の力を十全に発揮できない。握っただけで壊れる武器なんぞ論外だ。…今回は、使い手が規格外だったって事で酌量の余地はあるが。

 

 …心当たりは幾つかあるが…大和のお頭、確かウタカタの里には、霊山でもかなり有名だった鍛冶師が居たな?

 

 

「たたらの事だな。腕は保証しよう」

 

 

 骸佐に限らず、彼等の武器は順次依頼したい。

 今回は幸い無傷で済んだが、戦いの最中に得物が無くなるようじゃ、とても前線には出せない。

 

 何はともあれ、よく無事で戻った。…想定外とは言え、実用に耐えられない武器を渡したのは済まなかった。この通りだ。

 

 

「いや…構わない。戦いの最中、武器が無くなるなんてそう珍しい事でもないだろう。状況が急だったし、これ以上責任追及しても益はない。この辺りで収めよう」

 

 

 ああ。ありがとう。

 …雪風。

 

 

「何よ」

 

 

 あら、ちょっとご機嫌斜め。失敗した骸佐を横に、自分は褒めてもらえると思ってたのかね? そういう意味での競争意識はよろしくないが…。

 まぁいい。後で話がある。部屋…つっても、まだ住処用意できてないな。

 とにかく、後で少し付き合え。

 

 

 一連の話を眺めていた大和のお頭は小さく息を吐いて頷いた。

 

 

「ただ武器を無くした事を叱責するなら論外だったが、状況を見る目はあるようだな。いいだろう、彼女達はお前の直属とする」

 

「お頭、いいのか? 里の中で大きな派閥が出来るのでは…」

 

「構わん。人が集まれば自然と出来上がるものだ。特にこいつらは、良くも悪くも仲間意識が強いようだ。散らせたように見えても、密かに集まるだけだ」

 

 

 それは同感だけど、こいつらに『密かに』なんて出来ないと思うけどな。

 ま、いいや。

 神夜、こっちは特に問題なかったか?

 

 

「自分達も戦いたい、と言い出したのが何人か居ましたが、武器の用意もできてませんでしたからねぇ。無手でやるかと聞いたら大人しくなりました」

 

 

 そうか。…今回は無理だったが、それぞれ道具と役割は割り振る。

 それまでは、こっちでの生活基盤を安定させるのに尽力してくれ。

 

 さて、大和のお頭。色々と話し合っておかなきゃならない事は多いが、まずは寝床の確保に向かいたい。例の場所を使わせてもらおう。

 

 

「うむ。後で様子を見に行くからな」

 

 

 

 

 

 

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