新しいのを買うかの瀬戸際でした…。
マイクロソフトHPからの手動アップデートです。
どうも、一定時間無操作だとスリープ状態になる設定でしたが、それがシャットダウン中にも適応され、アップデートが終わる前に止まってしまっていたっぽい。
…こんな設定、した覚えないんだけどなぁ…。
しかもそのアップデートが終わったら終わったで、今度はブルートゥースが使えなくなる始末。
こっちは現在も原因対策究明中です。
PCは直ったし、だったらVRはスチーム入れてやればいいや。
PCの方がソフトも多いみたいだし、エスコンは最初からやり直しになるけどどの道リハビリしなくちゃいけないから問題なし。
SSDへの換装も上手く行った。
ああそうだ、PC用コントローラー買わないと。
PS4と同じ感覚で出来る奴がいいんだけど、難しいかなぁ
…さて、見苦しいところを見せてすまない。大和のお頭にも、こっちは無事だと伝えておいてほしい。増援の気配も無い。
組織立った襲撃ではなく、腹が減った鬼が先走って近付いてきただけのようだったと。
「ああ、うん…。おかげでこっちも無事だったわ。…ところで、本当にここで暮らして大丈夫なの? 今更駄目だって言われても、悪いけど私には大した事はできないけど…」
ああ、お構いなく。住めば都って言うし、結界の内側に居られるだけありがたいよ。確かに安全面に問題はあるが、そっちはどうにかする目途は立ってる。
…代わりと言っちゃなんだが、今後は共同で任務に行く事もあるだろう。その時に気にかけてやってくれるとありがたい。
…いやもう本当にね。悪い子達じゃないんだけど、いろいろ経験不足でさ…。
図体と乳がやたらでかい癖に、小生意気な子供そのものの言動が多いと思うけど、お姉ちゃんとして寛大な心で接してやってほしい。
「妹弟が沢山出来たのはいいんだけど、仮にも集団の頭領が、自分の下の人間をそこまで言う…?」
暫く接していれば、言いたい事は嫌でも分かると思うぞ…。
差し当たり、明日からは哨戒任務に一組参加させたいと思う。付き合ってやってくれるとありがたい。…必要だと思えば、遠慮なく叱り飛ばして構わないから。
…他に印象に残った事は…今日のところは無いかな?
一通り話をして、作っておいた方がよさそうだった家具を幾つか即席で据え付けて……そうそう、秘書執事チームが報告会前に何やら話し込んでいたっけ。
では、夕飯の準備も終わり、本日最後の業務。執務室に秘書執事チームと監督役3人が集まり、報告会が始まった。
さて…誰から報告する? ああ、監督役の報告は別途聞くから。
「………」
「………」
「では、打ち合わせ通りに私、天音から」
ほう、打ち合わせね。さっき話し込んでいた時の事だろうか。口を挟まず、先を促す。
「ウタカタが欲している戦力並びに役割ですが、まず桜花殿に話を伺いました。ですが何が足りないかと言えば『全てが足りない』としか言いようがないそうです。大型鬼を単独で相手取る事が可能な主力級モノノフは、桜花殿、富獄殿、息吹殿、速鳥殿、那木殿の5名。それに、昼の戦闘でいらした初穂殿は、何かの切っ掛けがあればこの領域に手が届くだろう、との事。詩乃殿の言によれば、この里の規模でそれだけの手練が揃っているのは、通常であれば戦力過多だそうです。ですが鬼達も手強く、安全性を高める為に、主力級でも2人以上で大型鬼と当たります。主力級モノノフは何らかの任を兼業している者も居ます。日常的に鬼の襲撃があるこの里では、とても人手が足りているとは思えません。
また、準主力級、並びに哨戒・偵察を主とするモノノフは、数こそそれなりに居るようですが、決して優秀とは言えません。雑魚が相手なら対処もできますが、大型鬼ともなれば容易く蹴散らされるでしょう。これを自覚している為、基本的に大型鬼との戦闘は行わず、戦ったとしても足止めと逃げ隠れに徹しています。何より、このモノノフ達は損耗が非常に激しい。再起不能になった者や亡くなった者が何人も居ます。将来有望な若手も、不測の事態に襲われて将来の芽を摘まれています。その結果、人手が更に足りなくなり、戦力の質が落ち、疲労心労を背負ったまま、命の危機を負って巡回を続ける悪循環に陥っています。
故に、ウタカタが今最も必要としているのは、主力以上に後詰めと、それを保護する為の救助部隊であると結論いたしました」
ふむ。その部隊を作り上げる事で得られる得を、大まかに述べよ。
「はっ。まず、強力な鬼との戦闘を避ける事ができます。隊員の中には、つまらないと不平不満を零す者も多いかと思いますが、我々が経験不足である事は身を以て知りました。その自覚すらなく戦場に出て、ウタカタのモノノフ達と必ずや衝突するでしょう。不満を抱かれようとも、まずは我々がどの程度の事が出来、何が出来ないのか、そして弱点を自ら知るべきだと考えます。
第二に、我々の数を活かす事ができます。質の程がどうなのかは分かりませんが、少なくとも我々はウタカタのモノノフよりも圧倒的多数になっています。四人編成で巡回を行っても、披露が抜けない程頻繁に出撃する必要はありません。ウタカタの古参モノノフを中心とし、その補佐に入るように加われば、過剰な出撃による負荷を抑えつつ、多くの事を学ぶ事ができます。
最後に…これは上手く行けば、ですが…里の中での地位を揺るぎないものにする事ができるでしょう。いざという時の為の救助部隊。この有無は、モノノフの生還率を大きく跳ね上げる筈です。もしもそれが必要な状況に陥り、その役目を全うしたならば、助けられた者達にとって我々場『命の恩人』とも言えるでしょう。命の恩ほど重い物はありません。その恩が滅鬼隊に向くか、その時助けた個人に向くかは分かりませんが、少なくとも邪見にされる事はなくなるでしょう。…我々の失敗で、多くの者が死んだという事態でもなければ。…私からの報告は以上となります」
うむ。
唇を僅かに笑みの形にして重々しく頷く。明らかにホッとした様子で一礼した。
プレゼンが上手く行って一安心、って感じだな。
対する俺としては、戦々恐々してっけど。
言ってる事に間違いはないよ? 俺から見ても、大きな穴は無い。
今までのループで俺はいつも主戦力側に居たけど、それは俺がどんなに強くなっても一個人でしかなかったからだ。もしも俺が5~6人くらい居たら……居たら………まぁ、そのくらいならウタカタの里は滅びないよな?……とにかく、俺くらいの力を持ってる奴がもう少し居たら、間違いなく斥候部隊や巡回部隊に派遣して、死傷者の軽減に努めていただろう。
じゃあ何にそんなに戦慄してるかって……。
ちょっと考えれば分かるやろ、これマジでこの子が考えたの?
目線をこっそり詩乃に送るが、冷や汗混じり表情が返って来た。そっかー、多少のヒントと誘導はしたけど、そっから先はほぼこの子が考えたのかぁ…。
これが、何していいか分からなくて、昼飯時に3人揃ってダウンしてた子か? 一体、どんな地頭持ってりゃ、こんだけ考えを飛躍させられるんだ…。
え、これマジ? マジで自力で考えたの? 同じ疑問を繰り返すけど、本気で自力で結論出した?
昼にかけた発破が、実は反応弾とか反物質兵器級のドーピング効果があったとしか思えないんだけど。
やっべぇな…いや頭のいい子なのは悪い事じゃないんだけど、俺、この子が裏で策謀でも巡らせたら、止められる気がしねぇぞ。
と言うか、このまま成長していったらもう何を提案されても高度過ぎて理解できず、「うん」「任せる」「いいんじゃないか」とか、分かってるフリして相槌してる未来が見える。
…いやいや、例えそうだとしても、憶するものではない。ウチの子が頑張って頭使って考えてくれてるんだ。
未来で分からないなら分からないと、素直に言えばいいんだ。意地を張るべきところを間違えるな。
少なくとも、今は未来の事を考えて危機感を募らせるより、頑張ってくれた我が子を褒めるべきところだ。
今すぐにでも、頭でも撫でてやりたいところだが…今はまだ、それをやってはならない。確かに天音は、俺の予想を遥かに超える働きを見せてくれた。
だが、今日の本当の課題を達成したのかは、まだ分からない。…いや、正直報告会の前に3人揃って話し込んでいたところを見ると、最低限の課題はクリアしてくれてると思うんだけど。
「では、次は私が」
ん、今度は時子か。仕事の内容は、今後の食料品使用・仕入れの計画だったな。
聞かせてくれ。
内心、この子も物凄い考えた結論出してきそうで、ちょいとビビッてる。
「はい。結論から申し上げますと、里からの買い付けは最小限にすべきと考えます。霊山の、何でしたか……九葉軍師、でしたか? からの支援を差し引いても、です」
ほう、その心は。
「他の里の事を知らないので、はっきりとは言い切れない部分もあるのですが…この里は、食料的には非常に豊かな里のようです。大きな田畑、潤沢な水、獣も居れば果実もある。ですが、決して余裕がある訳ではありません。里の蔵を見てきましたが…どう考えても、我々を養える程の備蓄があるとは思えない大きさです。それも当然でしょう。里の食料がいくら潤沢だったとしても、必要以上に収穫すれば、消費しきれず腐らせていくだけです。仮にこの里が、我々を養えるだけの農作物や肉類を生産可能だったとしても、それは今ではありません。適した季節まで待ち、苗を植え、育つのを待ち、収穫し、口に入れられるよう加工せねばなりません。…これに関しては、時期が悪かったとしか言いようがないでしょう。今、里に残っているのは、従来の里の住人を1年間飢えさせないだけの備蓄と、いざという時に備えた少量の貯えのみなのです。
それを金子や立場に任せて買い漁れば、間違いなく反発を買います。何事もなかったとしても…これは明日奈さんに試算していただいた結果で、詳細を把握できているのではありませんが…恐らく里の食料は不足します。
万が一を警戒し過ぎているのではありません。高確率で怒り得る、算術から導き出された結論です。故に、我々が取れる選択肢は三つ。
今、余裕がある内に金子を叩いて正当にウタカタの里から食料を奪い、後に主導権を握るか…これは、ウタカタの里の乗っ取りとも言えます。
徹底して計画的に食料を使い、将来に備えて備蓄を作るか……節約したところで、どれだけ保つか分かりませんが。
もしくは、我々が自力で食料を生産し、供給する事でシノノメの里と同じ立場に着くか…私はこれを推します。長期的にみれば、確実に我々だけでなく、人間の益になりましょう。
仮に一つ目の手段を取ったとしても、手に入る物はたかだか最前線の里た一つ。いつ壊滅してもおかしくありません。内側に大きな不満を呑んでいるのであれば、猶更です。
逆に…天音の提案とも被りますが、ウタカタを助力するような立ち位置に居れば、矢面に立つ事を避け、食料生産によって地力を蓄えて失う訳にはいかない集団という立ち位置を確立できます」
ふむ。
一つ目は論外。鬼とやり合う以前に、確実に内紛で内部分裂した挙句に全滅する。そのまま霊山まで攻め込まれるのが関の山だ。
二つ目、悪くない。これはシノノメの里だけで考えているから、遠からず袋小路に辿り着いてしまうのだ。徹底して消費と生産と流通を管理すれば、人間はあと50年くらいは粘れるだろう。
…精神的なものを無視すれば、だがな。自棄酒も偶の贅沢も出来んような人生じゃ、生きていたって仕方あるまいよ。
三つ目は、どうやって俺達が生産するかという問題があるが……。
いや、そこは後回しにしよう。
ウタカタの食糧事情に気を使うべきだという意見はよく分かった。
が、時子の任務は今後の食料利用の計画立案だった筈。それについてはどうなっているか?
…ああ、責めるつもりはない。さっきの報告は、本来の任務を放り出してでも、最優先で報告すべき内容だった。
ただ、そこについて報告があるなら聞きたい。同じような作業をこっちでもう一度行って、二度手間になるような事は避けたいからな。
「はい、先程報告した点に気付き、そちらを優先して調査を進めた為、多くの修正が必要になりますが…こちらになります。こちらについても、3日以内に修正を加えて報告いたします。明日明後日までは、そう大きな修正は必要ない筈です」
ふむふむ。向こう10日程度の献立表か。仕入れが必要になる物も、大体纏めてある。これが予算内に収まるかまでは、まだ未計算と。
うん、確かに受け取った。明日奈の好物や得意料理が沢山書き込まれてるが、料理はそう難しくないし、比較的安価なものばかり。
賞味期限に少々不安はあるが、そこはウタカタの人達を信じてもいいだろう。古くなりそうな物は、悪くなる前に自前で食ってる筈だからな。
時子も想像以上の結論を出してくれて嬉しい(震え声)
んじゃ、最後に災禍か。
正直、非常に曖昧な作業を振るったから、無茶振りになってしまったんじゃないかと思ってるんだが。
「いえ、若様の為であれば、このような些末事………と言いたいところですが、正直言って戸惑っています。この二人とは逆に、あからさまに問題が湧き出ていましたから…・。生活における改善点を挙げろと命じられはしましたが、何もかもとしか言いようがありません」
せやな。生活基盤がまるで整ってない状態だもの。普通の人達だったら、10日も経たずに一向一揆が起こるわ。
子供同然の滅鬼隊が、よく我慢してくれてると本気で思う。
「それは若様の人徳…だけでもないのでしょうね。では、その子供同然だからこその問題を第一に挙げます。生活の改善と言われても左程重要な事とは思えませんでしたが、まさかこのような状況だとは…若様の慧眼に恐れ入ります」
世辞はいい。いや見え見えの媚びとか大好きだけど、今は置いといて。
災禍が見つけた、最大の問題は?
「はい、それは『やる事が無い』という現在の状態です。生活において、諸々の不便な事は多くあります。ですが、それ以上に隊員達が口にするのは 『退屈』でした。]
退屈って…いや確かに、仕事をまだ割り振れてはいないけど。
「仕事だけの問題ではありません。私も最初は、暇を持て余しているのなら若様の為に鍛錬でもしろ、と思ったのですが、その鍛錬も含め、『何をすればいいのか分からない』為に退屈している者が多く居ました。
生活の為に必要な何かを確保しようとしても、その為に何を行えばいいのか分かっていないのです。鳥を捕らえる為に、聞きかじりの知識を元に生け簀を作ろうとしているようなものです。ただでさえ労力がかかる上、自分がやっている事が無駄になるのではないか、逆効果になるのではないかという意識が萎縮を呼び、無気力になっていきます。
一例としては、初日に若様が風呂を沸かすよう命じた舞華です。基本的に面倒くさがりな性格のようですが、その性格とは裏腹に、湯を沸かす時間を今か今かと待っていました。時間になると、水を得た魚のように作業に取り掛かります。…自分の役目こそが、今の滅鬼隊の心の拠り所になっているのでしょう。
この際何でもいいので、皆に「やるべき事」「やってもいい事」を与えねば、遠からず良からぬ結果を呼び込むと予測されます」
ふむ…。それ程だったか。こっちに来るまでは、何だかんだ言っても知らない物を目にしながら、指揮されて歩いていたからな…。退屈を感じる暇は無かっただろう。
無視とまでは言わないが、仕事場で一切仕事を与えてないようなものだものなぁ。楽に給料が手に入るなんて思ってられるのは最初だけで、段々居場所がなくなって、暇を持て余して辞めていく…。いかん、これパワハラだ。
こりゃ確かにすぐさま何か割り振らなきゃならんわ。
しかし、秘書執事チームの3人を見れば分かるように、滅鬼隊はとにかく経験不足、世間知らず。まずは自分達の世話…飯作りや清掃について教えていくとして…。
天音からも聞いた、ウタカタとの部隊設営……これはあっちにも話を通さなきゃいけないから、すぐには無理。
あ、待てよ? よくよく考えれば、暇を潰せればいい訳だな。
「…恐らくは、ですが。どうせ何かさせるのなら、利になる事をさせるべきではないでしょうか」
それは否定しないが、これは仕事と言うよりはメンタルケア…えーと、精神を安定させる為とも言える。
何より、生きる為に仕事を行うのであって、仕事をする為に生きているんじゃないんだ。寝てる時間と仕事してる時間以外を充実させ楽しむ為に、あれこれ努力をする。少なくとも、俺は滅鬼隊にそういう風に生きてほしい。
滅私奉公とか論外。否定はしないが、まず自分の為に生きる。愉しむ為に生きる。
だから、まずは暇を潰す方法を伝える。単純に、遊戯の類でいいだろう。
仲間内での交流を深め、意識を作るのにも相互理解にも使えそうだ。勿論、順次仕事は割り振っていくけども。
とりあえず、退屈の問題はこれで目途が立った。他に気付いた事は?
「…そうですね。本当に、何もかもが必要ですが…危急と判断したものは…何よりもまず、自衛力の確立が急務です。今日も鬼の襲撃がありましたが、我々が到着した初日にもあった事から分かるように、鬼の襲撃はこの里では決して珍しい事ではありません。幸い、今日は若様が指揮を取られ、どこからともなく取り出した銃の集中砲火で何事も無く対処できましたが、いつもそうとは限りません。ウタカタの里から駆けつけてくれた…和穂殿、でしたか? が、対処が終わってから到着したように、ウタカタからも援軍を出せるとは限らず、また出せたとしても間に合わない可能性が非常に高いと考えられます。
人間という獲物が結界の端に住み着いた以上、鬼達の襲撃はより頻繁になると予想されます。手に負えない事態に発展する前に、最低でも常駐する見張り番を割り振り、指揮系統の統一、侵入された際の対処法、必要な武装、ウタカタのモノノフへの伝令役を決めるべきです」
成程。その計画を設立する為には、やはり一人一人の性格や戦力の把握が必要だな。
とは言え、それを完了できるまで座して待っている訳にもいかん。まずは一律雑兵…数に任せて槍衾・遠距離射撃で潰すやり方を考えるか…。
あ、いや待てよ、確か打ってつけのタマフリ持ってる奴が………うん、俺の明日の予定は決まったな。
災禍、他にも色々…本当に色々と、改善しなければならない事はあると思うが、俺でなければ出来そうにない事で、急務の物はあるか? 可能であれば、神夜に限らず監督役と協力して、そちらで進めてほしい。報告は重要な部分と、俺の手や判断が必要になった時だけでいい。
「かしこまりました。………大任…!」
仕事をほぼフリーハンド状態で任せられたのが嬉しかったのか、災禍はこっそりガッツポーズしていた。見え見えだっつの。
そして時子と天音は、それを羨まし気な目で見ている。君達にも他に仕事あるからね?
さて、とりあえずの報告は異常だな? …字が違った。以上だな。実際異常でもあるが。なんだこの0歳児達。
率直に言って、脱帽したよ。想定を遥かに上回った結果を出してくれた。昼に頭抱えてた奴らが出せる結論じゃないぞ…。
若干、末恐ろしく感じない事もないが…教育は必要だけど、これなら色々な事を任せられるようになりそうだ。
3人とも、秘書・執事としても、それ以外の形でも、これから俺達を支えてほしい。
「「「はっ!」」」
褒め言葉一つで、感極まったように一斉に返答する。…いや、褒め言葉一つと馬鹿にはできんか。初めてのお遣いを済ませて、褒められた子供だ。難易度はルナティック通り越してマストダイレベルだったけど。成功体験は自分に自信をつけてくれる。言葉一つで人生が変わる事だってあるのだ。
さて、今日のところはここまでにしておこう。頭を捻って疲れただろう。
飯食って風呂入って、今日はもう休め。明日からの計画とか色々考えたいかもしれないが、根を詰めすぎてもいい結果は出てこない。
まずは疲れを取るんだ。
そうそう、監督役3人については、明日以降の打ち合わせもあるんで残ってほしい。以上だ。
名残惜し気に秘書執事チームが退室し、監督役達と俺は溜息を吐く。
…なぁ、これどこまで自分で考えだしたの?
「時子は、半分以上は自分で考えてたわ。午後から色々意見を求められるようになったけど、想像以上に呑み込みがよかった。正直、計算とかに関しては私より上ね。何が幾らで、それがどれだけ必要になって、何を使う時に何と一緒に使って…って物凄く早く計算してた」
「天音は、私を初めとして色々な話を聞いて、それをまず記録したわ。意見を求められたのは、それらの解析をする時。苦手分野だったんで、戦々恐々してたんだけど…正直、予想外の内容で口を挟む事になったわ。あの子、分析の是非はともかくとして、『ウタカタを自分達の勢力下に置くにはどうすればいいか』を考えていたの。乗っ取り計画と言ってもいいわ。求められているのはそれではないって頭を叩いたら、軌道修正したけども」
「災禍さんも、ほぼ自力で考えてましたねぇ。勿論、分からない点や参考にしたいと思った点は、私に聞いてきましたよ。ですが、何よりも評価したい点は、自分から他の二人に声をかけた事かと」
他の二人に声…って、何をやったんだ?
「多分、お昼の会話に触発されたんでしょうね。自分一人で、って意地を張ってる場合じゃないと思った為か、私に意見を求めるようになって…その時の会話の流れで、『好敵手ほど自分を高めてくれる相手はいない』って言ったんですよ」
「そこに至るまでの話の流れが気になるんだけど」
「私に困っている事がないか聞いて、強い相手と手合わせする場が欲しい、と言ったらその流れで。そうしたら、自分の好敵手って…つまり時子さんと天音さんでしょう? 途中経過と様子見も兼ねて話を聞きに行って、『報告前に全員で話をしよう』って事になったんです」
ああ、報告会前に話し込んでたのはそれか。
打ち合わせがどうのとか言ってたし、互いの結果を持ち寄って、補足が必要な事がないかとか、疑問が残ってないかとか、色々意見交換してたのか。
「はい。その発案者が災禍さんなんです。多分他の二人も似たような事が考えていたんでしょうね。すぐに承諾しました。ですが、それを提案する前に与えられた作業に集中して、災禍さんだけはその提案を優先したと」
ふーむ…優劣をつけるつもりじゃなかったが、一歩抜きんでた感はあるかな。
まぁ、暫く様子見は必要だけど、秘書・執事役は充分に任せられるって結論でいい?
「そうね。さっきの報告を聞いても分かるけど、地頭の良さは相当なものよ。事務処理とかに関しては、経験不足を差し引いても、同じ滅鬼隊の私よりも優秀でしょう。また暴走したり、評価を気にし過ぎるような事がなければ、即戦力扱いでも問題ないと思うわ」
「時子については、即戦力扱いはちょっと待ってほしいかも…。不足や不満があるんじゃなくて、料理って正しい知識が一番重要だから。種類もまだ一つ二つしか教えられてないし、仮にも料理を扱う店で働いていた身としては、もうちょっと伊呂波を仕込んでからじゃないと任せるのは不安だわ」
「災禍さんは…普通の仕事と言うか、毎日こなす習慣的な仕事なら一度教えれば問題ないと思います。今回の事で『他者に相談する』という行為の重要性も理解できたでしょうし、要所要所で確認すればいいのでは。計画を立案してもらって、それを実行前に精査する…という形なら、即戦力扱いでしょう」
要は概ね問題なしと。
贅沢な話だなぁ。やる気もあって能力もある人材が、何もしなくても3人も転がり込んできてたとか。
他の連中も、それぞれ適正は違うだろうけど使い道はありそうだし、頭領として命じればサボりの心配もほぼ無い。指示と教育が必須とは言え、信用できる人員がこれだけ入ってくるとか…幸運なんて言葉じゃ済ませられないぞ。
ともあれ、暫くは興と同じ体制で続けるか。……いや、このままじゃこっちの手が足りない。
すまないが…うん、神夜。明日は監督じゃなくて、俺の手伝いをやってくれ。詩乃は災禍と天音を監督。明日奈は時子に献立を教えるのに集中してほしい。
「構いませんけど……書類仕事では、力になれない事極まりないですよ?」
大丈夫、頼むのは別の作業だから。その後は交代でその役割を請け負ってもらう。
その他、何か報告する事は?
…とりあえずは無し、か。
じゃあ、後は風呂入って寝るだけだな。つっても風呂は皆使ってるだろうから、その前に労いの時間が待っているが。
労い、の一言に3人の芽がキュピーンと輝いた。…明日奈の中に居る木綿季の目も輝いたようだ。
ん? 情事の前には風呂に入るのが礼儀? よっぽど汚れてなければ、それはそれで有なのよ。